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迷宮災厄戦㉕〜書架の王はかく語りき

#アリスラビリンス #戦争 #迷宮災厄戦 #猟書家 #ブックドミネーター

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 ……絶対零度に凍てつきし、孤高なる王の居城――時間凍結城。
 針を止めた懐中時計を胸に抱き、彼の王は封印されし美しき天の牢獄へと思いを馳せる。アックス&ウィザーズの何処かに存在するはずの未だ知られざる大陸。
 天上界。
 書架の王『ブックドミネーター』は戦いの時を悟り、薄っすらとまぶたを開いた。
「いずくんぞ求めんや、我が答えを得るためならばこの命すらも賭けよう。六番目の猟兵たちよ、私に挑むならば同等の覚悟が要ると知るが良い」

「書を司り、あらゆる書の力を扱えるという書架の王『ブックドミネーター』――その居城である時間凍結城への侵攻が可能になった」
 どうする、とサク・スミノエ(花屑・f02236)は尋ねた。
「とはいえ、選択肢は多くない。ゆくか、ゆかないか。二つに一つだ」

 ブックドミネーターは自ら宣言している。
 『私は強い』、と。
 『何を守り誰と戦うか、常に考え続けるが良い』とも。

「書架の王はこの戦争よりも先を見据えている。アックス&ウィザース。そこに彼の求める答えがあるという。それはいったい何なのか? そして天上界は真に存在するのか? 全ての鍵を握る王に自ら退くつもりはなく、城を覆いつくす氷から造られたオブリビオンと時間を凍結させる能力をもって迎撃に出る」
 他の猟書家と同じく、書架の王の手によるユーベルコードの発動は絶対的な先制攻撃となって襲いかかるだろう。
「さすがに無策は避けたいな。ただでさえ城攻めは守る方に有利だ。何かしらの対応策が欲しい」

 グリモアがリスラビリンスに秘められし氷の城へと繋がる道筋を示した。書架の王は遥か遠き世界に思いを馳せ、かく語る。
「来るならば来い。書架の王たる私の大志、そうたやすく阻めるなどとは思わぬ事だな」


ツヅキ
 プレイング受付期間:公開時~8/16 朝8:30頃迄。

 リプレイはまとめて判定・執筆します。
 共同プレイングをかけられる場合はお相手の呼び名とID、もしくは団体名を冒頭にご記載ください。

 書架の王『ブックドミネーター』の先制攻撃への対応策が考えられているとプレイングボーナスです。
185




第1章 ボス戦 『猟書家『ブックドミネーター』』

POW   :    「……あれは使わない。素手でお相手しよう」
全身を【時間凍結氷結晶】で覆い、自身の【所有する知識】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。
SPD   :    蒼氷復活
いま戦っている対象に有効な【オブリビオン】(形状は毎回変わる)が召喚される。使い方を理解できれば強い。
WIZ   :    時間凍結
【自分以外には聞き取れない「零時間詠唱」】を聞いて共感した対象全てを治療する。
👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

月夜・玲
君がブックドミネーターだね…
ふーん、興味深い
その時間凍結能力ってやつ、私にちょっと解析させてくれない?
駄目?
駄目かな?


要するにノータイムで回復してくるって訳だ…
いやズルくない?常時オートで回復入ってるようなもんじゃん
ズルいー
ま、それならそれで対策はし易いか
《RE》IncarnationとKey of Chaosを抜刀
二刀流による『2回攻撃』をしながら【光剣解放】を起動
回復をするなら、それ以上の手数で凌駕してやればいい!
850本の光の剣による攻撃と私自身の斬撃
光剣はブックドミネーターを最も効率良くダメージが与えられるよう『吹き飛ばし』ながら攻撃

誰と戦うかだって?
決まってるでしょとりあえず全員!


雨咲・ケイ
あなたが何者なのか?
とても興味深いところではありますが、
それを知るのは今ではないようですね。
尋常に勝負願います。(礼)

【POW】で行動します。

敵の先制攻撃に対しては、ルミナスから
サイキックエナジーを放ち
僅かでも威力を減衰させてから
【オーラ防御】と【盾受け】を併用して
凌いでいきます。
後手に回りつつも、【学習力】で
敵の攻撃の動きやタイミングを覚え、
ダメージはスノーホワイトの薔薇の香気で
緩和します。

そして、敵の最も甘い攻撃に対し
先程覚えたタイミングで【カウンター】の
【光明流転】を放ちましょう。

私が守るものはいつだって変わりません。
それは、これからも……。

アドリブ歓迎です。


メンカル・プルモーサ
……ふむ……書架の王か……
その知識にも興味はあるけど…倒さないとだな…

…まずはブックドミネーターの攻撃を障壁で防いだり箒に乗って回避したりしつつ術式装填銃【アヌエヌエ】で射撃…
…ふむ、なるほど……確かにすぐに治療されるな…
…それは「聞いて」共感した対象…まあ自分だけだろうけど…を治療する…つまり…
【鳴り止まぬ万雷の拍手】を発動…知覚…視覚と『聴覚』を一時的に麻痺させて動きを止めるよ…
…さて。今のうちだ…銃撃を撃ち込んで…遅発連動術式【クロノス】により
銃弾に刻んだ印から爆破術式を起動…内部から破裂させてダメージを与えるとしよう…


箒星・仄々
私達も遥か先の未来を見つめて
歩み続けています

容易いとは思っていませんが
遠くばかり見ていると
足元を掬われますよ

凍結させた時間の中で詠唱しているようですが
怪我が回復している=未来へと時間が進んだということ

即ち時間凍結に綻びがあることの証

ならばやることはシンプルです

弦を爪弾き
シンフォニアの歌声響かせ
時を消費して未来へ進む、世界の正しき有り様を願い
世界へ助力を請い
魔法の根源から魔力引き出し炎の矢を放ちます

世界そのものの力を秘めた矢で
時間の凍結を中和・解除します

…世界そのものとは言え
器である私の力不足から
凍結解除は長い時間ではないでしょう

けれどその刹那に三魔力の矢
王様にはお還りいただきます

終幕に鎮魂の調


黒玻璃・ミコ
※美少女形態

◆行動
辿り着きましたよ、ブックドミネーター
貴方の代わりに私達が天上界に向かいます!

念動力を以て私も空を飛び
積み重ねた戦闘経験と五感を研ぎ澄まして攻撃を捌き
重要な臓器はその位置をずらした上で即死だけは避けましょう
そして飛び散った体液を使い反撃開始です

時間凍結氷結晶で全身を覆ってるのに自身は格闘戦を挑めると言うことは
任意に凍結を解除しているのでしょう
それならば既に揮発し、更には念動力により空間に充満した
不可知の猛毒を吸わずにいられますか?

以上を持って【黒竜の邪智】の証明とします
きっと竜の残骸に埋もれるのは貴方に相応しい最後なのかもしれませんね

※他猟兵との連携、アドリブ歓迎


ウィリアム・バークリー
ブックドミネイター、凍気の使い手はあなただけじゃないんですよ。ぼくの力がどこまで届くか試させてもらいます。

「氷結耐性」で氷結晶の拳打のダメージを少しでも緩和。打ちのめされても、意識ある限り反撃の意思は捨てません。

トリニティ・エンハンス発動。スチームエンジン、影朧エンジン、起動。Spell Boost、詠唱開始。原理砲を核に積層立体魔法陣展開。仮想砲塔形成。

“書架の王”の飛翔を「見切り」、Elemental Cannonを「全力魔法」氷の「属性攻撃」「衝撃波」で発射し、撃ち抜きます。
撃墜出来たら、駆け寄ってルーンソードで「串刺し」にします。

ああ、全力使い切ったなぁ。意識のあるうちに撤収しなきゃ。


城島・侑士
・先制対策
召喚で手数を増やされるのは面倒だな
そいつを戦場に居座らせると俺が滅茶苦茶不利になるから即戻ってもらおうか
召喚されたオブリビオンが此方を視認し反応をする前に
早業からの乱れ撃ちで弾丸をひたすらぶち込み続け息の根を止める

先制対策に成功したなら後は本命の書架の王を攻撃
城内の氷に身を潜めつつ奴の死角から攻める
いきなり撃ったら即バレるだろうからその時を待つ
殺気を潜め
気配を殺し
書架の王が他の猟兵の攻撃に気を取られた一瞬の隙を突きヴァルカンの鉄槌を発動
狙うは既に負傷している箇所…特に出血の多いところがいい
命中したらそのまま部位破壊で継続ダメージで体力を奪う
悪いね
でも此方も負けるわけにはいかないんでな


司・千尋
連携、アドリブ可

何を守り誰と戦うか、か
一先ず自分を守り敵と戦う、かな

それより天上界ってどんなとこ?
俺まだ行った事ないんだよね


敵の先制攻撃は治療か…
消失したモノも治療できるか試してやるぜ
敵の防御の固い部分や治療の邪魔が出来そうな部位を狙い攻撃

攻防は基本的に『子虚烏有』を使う
範囲内に敵が入ったら即発動
範囲外なら位置調整

死角や敵の攻撃の隙をついたりフェイント等を駆使
確実に当てられるように工夫
深追いせずダメージ蓄積を狙う


敵の攻撃は細かく分割した鳥威を複数展開し防ぐ
割れてもすぐ次を展開
オーラ防御も鳥威に重ねて使用し耐久力を強化
回避や『子虚烏有』で迎撃する時間を稼ぐ
間に合わない時は双睛を使用
無理なら防御


フェルト・ユメノアール
ボクには難しい事は分からない
でも、キミたちを放っておいたら大勢の人が笑顔を失う事になる
それだけはさせる訳にはいかないんだ!

『トリックスターを投擲』してオブリビオンを迎撃
さらに帽子の中に隠していた鳩姿の『ハートロッド』を放つ事でその攻撃を妨害、回避する

長期戦は不利、手下は無視してブックドミネーターを討つよ!
投擲攻撃を行いながらその中に『ワンダースモーク』を混ぜ、煙幕を発生させる事で視界を奪う
この攻撃、キミに見えるかな?カモン!【SPアクロバット】!
アクロバットなら視界の無いこの状況でも、音を頼りに攻撃する事が可能!
手札を全て捨て、加速した攻撃でブックドミネーターを撃ち抜くよ!


ヴィクティム・ウィンターミュート
『六番目』がどういう意味か、聞きたいところだが…
どうせ答える気はないんだろう?なら仕留めるだけだ
『現在』は人の世だ、お前らはお呼びじゃない

なるほど、回復か…面倒だな
一発は許す、問題はそれからだ
ニューロン【ハッキング】、サイバネオーバーロード
奥歯のコンバット・ドラッグを噛み潰して【ドーピング】
ここまで強化し、攻撃の回避を優先して立ち回る
隙を見てナイフ、仕込みショットガンを叩き込む

──頃合いだな
Void Link Start
食い潰せ、『Void Sly』
展開、方位、殺到
こいつに触れたものは、任意の過去を削ぎ落される
俺が削ぐのは『時間凍結による治療』を全てだ
さぁ、結果はどう変わるか──見てみようぜ


紫・藍
藍ちゃんくんでっすよー!
歌うのでっす! 踊るのでっす! 演奏するのでっす!
藍ちゃんくんの全てを込めて!
零時間詠唱、驚異的なのでっす……。
ですが何やら聞き取り共感するのが大事なようでっすので。
ドミネーターさんには共感できないような猟兵さん大勝利のお歌を大音量で歌って聞き取り共感阻害!
ダンスの方も上手く詠唱できないよう、舌を噛んじゃうくらい、激しいパフォーマンスで振り回すのでっす!
たとえ回復が阻害できないにしてもダンスによる振り回しは平衡感覚を奪う・視界を定まらせないという狙いもありましてー。
他の猟兵の皆様の作戦の手助けになればと願う藍ちゃんくんなのです!
これが藍ちゃんくんなりの戦い方なのでっす!


アイン・セラフィナイト
(真の姿に変身)
同様にあらゆる書物と記録を格納する大書架を管理する身、お前の横暴を許すわけにはいかない。

『天照』を使う。書架の王周辺の時間の揺らぎを観測し、零時間詠唱の音波を解析、すぐに逆位相で打ち消す音波を出すプログラムを予め『早業』で作成しておく。俺たちと同じく聞こえなければ、治療できないはずだ。

UC発動、この書は俺自身が生み出した空想の書にして全智の書。
魔導書にはこう記そう。『書架の王の時間凍結は打ち破られ、猟兵から受けた傷からおびただしい鮮血が流れ出していた。もはや再起不可能だった』と。

『境界術式』展開。魔導書たちよ、炎の魔弾によって『全力魔法』で対象を『蹂躙』、鏖殺せよ!



 ――吐く息さえ凍り付くほどの、絶対的なる氷結世界。月夜・玲(頂の探究者・f01605)は怖じることなく玉座の王を見据え、確かめるように呟いた。
「君がブックドミネーターだね……」
「いかにも」
 指先で懐中時計の鎖を弄びながらの、物憂げな返答。
「第六の猟兵よ、君らが来ることは分かっていた。なぜ邪魔をする? できればあの美しき天上界にて会いまみえたかった――と、愚痴を零しても詮無きことだが」
「天上界、ね。どんなとこなんだ?」
 緊張感をまるで感じさせない、司・千尋(ヤドリガミの人形遣い・f01891)の問いだった。
「俺まだ行ったことないんだよね。その名の通り、雲の上に広がる神々の世界って感じなのかな」
 ふっと王が笑う。
 少年らしい、一途な微笑だった。
「ヴァルギリオスのおかげで、いまや美しき牢獄だがな。よもや私を倒して君らが代わりに向かうとでもいうのか、第六の猟兵たちよ?」
「その通りです!」
 黒玻璃・ミコ(屠竜の魔女・f00148)が指を鳴らせば、その身がふわりと浮遊する。
「ようやくここまで辿り着きましたよ、ブックドミネーター。貴方の野望もここまでなのです!」
「ああ……『現在』は人の世だ、お前らはお呼びじゃない」
 ヴィクティム・ウィンターミュート(End of Winter・f01172)が言い放ち、フェルト・ユメノアール(夢と笑顔の道化師・f04735)が頷いた。
「ボクには難しい事は分からない。でも、キミたちを放っておいたら大勢の人が笑顔を失う事になる――それだけはさせる訳にはいかないんだ! 絶対に!」
「ええ、尋常に勝負願います」
 雨咲・ケイ(人間の學徒兵・f00882)は一礼し、戦いの構えをとった。肌を刺す冷気が更に温度を下げたような気さえする。
(「いや、実際に冷えている……」)
 まるで、王の心象に呼応するがの如く。
 玉座に座る王は目を細め、「そうか」と呟いた。
「やはり戦う他ないようだな。私の全力を持ってお相手しよう。それが、彼の世界に捧げる私の“本気”だと思うが良い!」
 一瞬にして、書架の王『ブックドミネーター』の全身が時間凍結氷結晶によってびっしりと覆われた。自身の所有する知識に応じた戦闘能力の強化――無限に近い蔵書を誇る書架の王のそれはあまりにも底なしで、キリがない。
「く……ッ」
 飛翔能力を得たブックドミネーターの羽搏きによる超衝撃を、ケイはルミナスより放つサイキックエナジーによって減衰を試みる。
「こ、れは――……!」
 あまりにも、強大な――!!
 バチッと激しい音がしてサイキックエナジーの膜が破れた。だが、その裏側にケイは更にオラ―を展開して盾としていた。
 凌ぐ。
 そうしながら、身体で覚える。
 ブックドミネーターの攻撃の癖を、タイミングを。
「……耐えてみせます」
 その時、胸に刺した白薔薇の気高き香りがケイの鼻先を掠めた。大丈夫、まだいける。ブックドミネーターの唇から感心の呟きが漏れた。
「受け止めたか。だが――!」
「! なんの……!」
 急所を狙った一撃を、ミコは己の五感を頼りに間一髪ですり抜ける。
「しつ、こいッ、ですね!」
 脇腹を掠めた拳が体液を飛び散らせ、心臓を狙った指先が肉を抉り出す。にもかかわらず、ミコは致命傷を避けていた。
「もしや――」
 ブックドミネーターが空振った指先を見つめ、確かめる。
「その姿、擬態か?」
「ご名答!」
 ミコは取れかけた首を戻しつつ、やれやれと言った。
「なんとか即死だけは免れましたが、見事なまでのスプラッタにしてくれましたね。これかなりのリソースを費やしてるんですが――」
「……つまり、本気ってことか……」
 メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は眼鏡を押し上げた。
「……書架の王の知識、興味深い素材だね……」
「うん、非常に興味深い」
 玲は好奇心に目を輝かせ、玉座の上空に戻ったブックドミネーターに提案する。
「その時間凍結能力ってやつ、私にちょっと解析させてくれない? 駄目? 駄目かな?」
「…………」
 ブックドミネーターは少しの間思案してから、
「駄目だ」
「ケチー!」
 可愛らしい反応にケイは傷の痛みも緩んで、
「確かに、彼が何者なのかはとても興味深いところです。残念なことに、それを知るのは今ではないようですが」
「ああ、聞いたってどうせ答える気はないんだろうしな」
 ヴィクティムは舌を打ち、やけに耳に残るあの言葉を舌に乗せた。
「『六番目』、か……一体どういう意味なんだ?」
「気になりますね」
 蒼き竜の尾を揺らめかせ、アイン・セラフィナイト(全智の蒐集者・f15171)は眼前に白翼の杖を掲げた。
「さて、うまく解析できるといいのですが――」
 ブックドミネーターの周囲に蒼氷の氷柱が生み出されてゆく。いま、戦っている対象に有利なオブリビオンの召喚術式。
「させるものか」
「いけ、トリックスター!」
 その出現を待ち構えていた城島・侑士(怪談文士・f18993)とフェルトは一斉にそれぞれの得物で攻撃を放った。
「!!」
 掃射の余波から身を護るようにブックドミネーターはマントを引き上げ、顔を庇う。
 砕け散る氷柱。
 産声を上げると同時に殲滅されるオブリビオン。
「はいっ!」
 曲芸用のダガーを投擲し、フェルトはオブリビオンの額、喉、胸の三か所をビンゴ。さらに帽子の中に隠していた白い鳩を瞬く間にロッドへと変えてオブリビオンによる礫のような雪嵐をパッと打ち消してしまった。
 一方、侑士の対策も抜かりがない。
 召喚で手数を増やされ、しまいにはそいつらが戦場に居座るようなことになれば滅茶苦茶不利になることはわかっていた。
 なら、どうする?
「――こうするんだよ、坊や」
 息つく暇もなく、装填した弾丸を撃ち尽くすまで引き金を引き続ける。蜂の巣になったオブリビオンが再び氷の結晶となって消えゆくのをブックドミネーターは横目で見届けた。
「全く、私のいとし子たちをよくもやってくれる――……」
 刹那、視界の端から飛来した弾丸が彼の耳を掠めた。飛び散った鮮血は絶対零度の冷気によって緋色の結晶と化し、足元に零れ落ちる。
「――」
 だが、ブックドミネーターが一瞥しただけでそれらは瞬く間に血液へと戻り、千切れた肉は綺麗に治っていった。
「……ふむ、なるほど……確かにすぐに治療されるな……」
 硝煙を吹く回転式拳銃を手に、メンカルが呟いた。
 玲が唇を尖らせる。
「要するにノータイムで回復してくるって訳だ……いやズルくない? 常時オートで回復入ってるようなもんじゃん」
「……うまい言い方だね……そう、これだと発動とほぼ同時に効果が発生する……」
「厄介な技ですね」
 箒星・仄々(ケットシーのシンフォニア・f07689)は神妙に頷き、懐中時計のボタンを押して蒸気機関式竪琴をその手にとった。
「ですが、怪我が回復しているということは時間が変化したということ。即ち、時間凍結には綻びがあることの証かと」
「ハッ、例え時間を凍結しようが『永久』なんてもんはねぇってことだな。確かに面倒な代物だが……果たして俺たちに二度通用するかな?」
 ヴィクティムはがり、と奥歯のコンバット・ドラッグを噛み潰し、ニューロンをハッキング。サイバネオーバーロード――限界を、突破しろ。
 前振りなく投げつけてやったナイフで気を引き、左腕に仕込んであった散弾銃を音もなくお見舞いする。
「無意味だな」
「果たしてそうかい?」
 にやりとヴィクティムが笑った。
 時間凍結によって回復を図るブックドミネーターを、一瞬にして光の幾何学模様が取り囲んでいたからである。
「これは――!?」
 混沌と、再誕。
 それが玲の手にする剣に課された意味だった。
「850本もの光剣による包囲攻撃と私自身の斬撃、避けきれるものならやってみなよ!」
 光の剣閃が、城を覆う氷の結晶に乱射してプリズムのように踊り狂った。回復されてしまうのならば、それ以上の手数で凌駕してやればいい――!
「ち……――ッ」
 傷が治るごと、玲の剣戟が新たな損傷を刻み付ける。しかも、光剣はブックドミネーターに最も効率よく攻撃が与えられるようにただ『斬る』のではなく『吹き飛ばし』ながらダメージを与えていった。
「ッ!」
 遂に、ブックドミネーターが体勢を崩した。
 そこへ響き渡る、明かるかなるシンフォニアの歌声。
「あなたにとってアリスラビリンスは天上界へ到達するための礎に過ぎないのかもしれません。けれど、遠くばかり見ていると足元を掬われますよ」
 仄々は弦を爪弾き、未来へ進む世界の正しき有り様を祈って歌い上げた。世界よ、どうか助力を。私達が歩み続ける遥か先の未来のために。輝かしき旋律が魔法の根源より引き出した魔力を炎の矢に変え、一直線に迸る。
 それは、世界そのものの力を秘めた矢。
 ブックドミネーターの視線が己の懐中時計に注がれた時、その双眸が驚きに見開かれた。
「時間が――」
 止まっていたはずの時計の針が今、動き始める。
「――トリニティ・エンハンス発動。スチームエンジン、影朧エンジン、起動。Spell Boost、詠唱開始。原理砲を核に積層立体魔法陣展開。仮想砲塔形成」
 ウィリアム・バークリー(“聖願(ホーリーウィッシュ)”/氷聖・f01788)の詠唱が凍て付いた戦場の空気を振動し、最適なる力場を形成。
「ブックドミネイター、凍気の使い手はあなただけじゃないんですよ。ぼくの力がどこまで届くか試させてもらいます」
 極限まで高めた集中、科学と魔法の融合術式――その名をElemental Cannon。衝撃波と氷結嵐が混然一体となってブックドミネーターを侵襲してゆく。
「……まさか、この私を氷結魔法で圧倒するとはな。六番目の猟兵の名は伊達ではないという事か」
 凍り付いた上着を手で払い、片頬を氷に侵されたまま立ち上がるブックドミネーターの視界をワンダースモークの煙幕が覆った。
「この攻撃、キミに見えるかな? カモン! 【SPアクロバット】!」
 ダガーの投擲を警戒していた相手の裏をかく形で、フェルトの召喚した蝙蝠型のユニットが音を頼りに急降下。
「間に合うものか」
 ブックドミネーターが氷柱を紡ぎ、オブリビオンを盾に――するよりも先に、フェルトは持っていたカードをぱっと全て宙に放り捨ててしまった。
「アクロバットは手札を捨てることでさらに身軽になって加速する! いけ、アクロバット!」
「キキッ!」
 まるでマスコットのようにポップな見た目のアクロバットだが、その体当たりの威力は並大抵の攻撃を凌駕する。
 頭と頭でごっつんこ。
「あ、つっ……!」
 書架の王も、さすがにこれは効いたようだ。
「いまなのでっす! 歌うのでっす! 踊るのでっす!」
 当然、ブックドミネーターの力を持ってすればダメージを受けた瞬間に癒すことが可能となるはずだった。
 それを阻んだのは戦場にそぐわない楽器セット一式を持ち込んでギターをかき鳴らす紫・藍(覇戒へと至れ、愚か姫・f01052)の仕業に他ならない。
「零時間詠唱、驚異的なのでっす……ですが何やら聞き取り共感するのが大事なようでっすので、あー、あー、盛り上がっていこうぜー!!」
 激しいギターリフのイントロから始まった猟兵賛歌のハイテンションロック。
「さあ、どうでっす!? この歌詞、曲調、ラップもろもろドミネーターさんには共感できないでっしょー!」
 しかも、掟破りのステージはそれで終わらなかった。
 同じく、相手の聴覚を麻痺させることで詠唱の効果をキャンセルしようと目論んだメンカルが絶妙なタイミング――ちょうど曲が終わり、藍が「みんな、ありがとなのでっす!」と飛び跳ねた頃合いを見計らって戦場中に万雷の拍手を鳴り渡らせたのである。
「信じられん……」
 あまりの力技による介入にブックドミネーターは手で顔を覆い、よろめいた。閃光と喝采の幻影は彼の視覚と聴覚を麻痺させ、虎の子の時間凍結を無効化してしまったのだ。
「こ、こんなやり方で……私の魔術の賜物である零時間詠唱を破るとは……」
 それに、と横目で見つめる先には天照を装着したアインの姿がある。
「先程から逆位相の音波で詠唱を相殺しているそれ……実に目障りだ」
「いくら時間を凍結して詠唱時間を零にしようと、俺たちと同じく聞こえなければ治療できないだろうからな」
 書架の王たるブックドミネーターの矜持と同様、アインにもあらゆる書物と記録を格納する大書架の管理者としての責任がある。
「お前の横暴を許すわけにはいかない」
 アインは一冊の書を取り出した。
「この書は俺自身が生み出した空想の書にして全智の書」
 表紙を捲り、高々と掲げて宣言する。
「こう記そう。『書架の王の時間凍結は打ち破られ、猟兵から受けた傷からおびただしい鮮血が流れ出していた。もはや再起不可能だった』と」
 ――それは、対象の存在証明すらも編纂する全智なる書物。書架の王の戦闘能力を書き換え、記された通りの現実を齎す禁断の魔術。
「なッ……」
 血を吐き、膝から崩れ落ちるブックドミネーターを駆け寄ったウィリアムの剣が刺し貫いた。反撃の拳打は氷結の耐性で凌ぎ、さらに刃を深々と突き込む。
「おのれ……!」
「意識ある限り、この手は放しませんよ……!」
 細身のレイピア剣はブックドミネーターの胸を貫き、氷の翼を赤々と染め上げていた。
 それが、目印。
 城内の氷の陰に潜み、気配を殺し。王の死角に回り込んでいた侑士からすればこれ以上なく目を引く目標物だった。
 蒼氷に覆われた玉間にただ一点、咲き誇る緋色に狙いを定め。
「――ッ!!」
 白い喉が逸らされ、押し殺した悲鳴が漏れた。
 撃ち抜いたのは既に負傷している箇所――刃に貫かれた両翼の間。侑士は問答無用で更に銃弾を撃ち込む。
 少年姿の敵に背後から鉛玉をぶち込む行為に罪悪感を覚えないでもなかったが、此方も負けるわけにはいかないので悪しからず。
「やったか?」
「く――……」
 玉座に縋り、ブックドミネーターは血のあふれ返る胸元を抑えながら氷翼を震わせる。
 ――その血染めの羽を、千尋の放った光剣が消し去った。
「な――」
 まるで穴が開いたかのように、刃の触れた部分だけが丸く消失している。
「何を守り誰と戦うか、か。一先ず自分を守り敵と戦う、かな。この場合、敵っていうのはひとまずお前のことだよ、書架の王?」
 糸を繰るのと同じ要領で空中に散らばった光剣を操る千尋は、飄々と微笑んだ。
「そら、消失したモノも治療できるのか試してやるぜ」
 その耳を覆う帽子を弾き飛ばし、マントを削ぎ、ひとつずつ相手の武装を剥がしてゆく。
「よくも、まあ……知恵の回るものだな」
 ブックドミネーターは先程から常時フル稼働で時間凍結を試みているが、不完全な発動を示すかのように詠唱途中で崩れ落ちた魔力の残滓が彼の周囲で微かに爆ぜるばかりだ。ぼろぼろになった上着を自ら脱ぎ捨て、足元からせり上がる氷の結晶を鎧代わりに纏わせて。
「時間凍結が効かぬなら、命の持つ限りこの拳を振るうとしよう。さあ、かかってくるが良い」
「言われなくたって!」
 玲は腕を振るい、千尋の光剣と連携することで戦場全体に精密かつ巨大なる幾何学模様を描き上げた。
「誰と戦うかだって? 決まってるでしょとりあえず全員!」
 眩いばかりの剣閃がブックドミネーターを足止める。その時、メンカルの電子型解析眼鏡が遅発連動術式の設定完了を告げた。
「……さて。今のうちだ……」
 撃ち込んだ銃弾がブックドミネーターの纏う氷結晶にめり込み、その弾頭に刻まれた印が一瞬で解き放たれる。
 轟音を伴う爆発を、メンカルは箒に乗って天井近い上空から観測。間を置かず、仄々は三魔力を練り上げた矢雨を降り注いだ。
「魔導書たちよ、書架の王を蹂躙し、鏖殺せよ!」
 アインの周囲に数えきれないほどの魔導書が次元を超えて現れた。一斉に頁が捲れ、炎の魔弾が迸る様はまるで最後の審判を思わせるほどの苛烈さだった。
「……まだ……」
 ぽつりとメンカルが告げ、
「あと少しです。頑張りましょう」
 仄々が歌声を張り上げる。
「止められるものか……!」
 素手によって繰り出される氷の打撃を、千尋は細かく分割した鳥威を展開して防いだ。割れては次を出し、足りない分は気膜を張って凌ぐ。
「甘い」
 捨て身で迫るブックドミネーターの指先が最後の鳥威を砕いた。
「――甘いのは、そちらだったようだな」
 千尋を穿つはずだった裏拳を受け止めた懐鏡の表面にひびが広がる。この機をケイは逃さなかった。攻撃直後で空いた懐目がけ、放つは一撃必殺の光明流転――!! 氣の流れを読みきった返し技はブックドミネーターの小柄な体を浮かせ、背中から床へと叩き落した。
「猟兵の皆様、すっごくかっこいーのでっす!」
 興奮した藍がぴょんぴょんと跳ねては、リズミカルなターンで舞い踊る。マイクを掴み、魂の底から歌声を浴びせる。
「面妖な……」
 ブックドミネーターから舌打ちが漏れた。
「これが藍ちゃんくんなりの戦い方なのでっす! ほら、ドミネーターさんも踊りたくなってきましたでしょ?」
「いや、全く」
「意地っ張り! だってさっきからリズムに合わせて体が揺れてるのでっす!」
 藍はいっそう激しく身体を動かし、戦場の華となって端から存分にステップを披露した。
「さー! 藍ちゃんくんのステージも佳境なのです!」
 藍のダンスと仄々の旋律が少しずつ寄り添い合い、ひとつの音楽となる。ヴィクティムの口笛が合いの手を入れた。
「――頃合いだな」
 Void Link Start。
 ヴィクティムの指令を受けたシステムが一挙に現実を浸食。
「食い潰せ、『Void Sly』」
 展開、方位、殺到――瞬く間に城を呑み込んだボイド=空白は中心座標に指定したブックドミネーターから“任意の過去”を削ぎ落とす。
「任意の過去だと?」
 繰り返す王にヴィクティムは片目を閉じて曰く。
「俺が削ぐのは『時間凍結による治療』を全てだ。さぁ、結果はどう変わるか――見てみようぜ」
「!?」
 ヴィクティムの目の前で、ブックドミネーターが血を吐いた。
「ば、かな……治療したはずのダメージが、いまになって……時間を凍結する私、から……その過去を奪った……だと……?」
 それだけではない。
「これは――!」
 ボイドの浸食と同時に不可知の猛毒が彼の周囲を満たしていたのである。
 既に揮発し、念動力によって空間に充満させた猛毒。混沌より出でし竜の残骸が老獪な動きで鎌首をもたげた。
「時間凍結氷結晶で全身を覆ってるのに自身は格闘戦を挑めると言うことは、任意に凍結を解除しているのでしょう?」
 仕掛けの主であるミコは人差し指を顎に添え、確信を持って語りかける。
「揮発した猛毒を吸い込んでしまったその事実を持って、【黒竜の邪智】の証明とします」
 まるで影絵めいた竜の残骸がブックドミネーターに絡みつくと、彼は動きを封じられるままに埋もれていった。
「あと少しで、届いたというのに……――」
 天上へと伸ばされた指先までもが、最後には飲み込まれて。
「ああ、全力使い切ったなぁ」
 ウィリアムは胸を喘がせ、疲労困憊で言った。
「早く撤収しましょう。このままだと意識を失ってしまいそうです」
「ええ、そうしましょう」
 仄々は最後に一小節だけ鎮魂の調べを奏でる。どうか、お還りくださるように。手の届かぬ天上に焦がれるのではなく、己の眠るべき場所へと。
「お相手、ありがとうございました」
 最後に玉座を振り返ると、ケイは戦いの前と同じように礼をする。守るものはいつだって変わらない。
 それは、これからも……。
 毅然と顔を上げ、主のいない玉座に背を向けて歩き始めた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年08月16日


挿絵イラスト