とまり木の下に影は差し
●ホテル『ハミングバード』の怪談
ハミングバード島に聳えるこのホテルも、元はSSWに存在した宇宙ステーションだった。宇宙船の往来、取引など、様々な人間が出入りしたこの場所には、もちろん相応の歴史がある。
そこには、商船同士の諍いや争い、銀河帝国による圧制などといった、暗い出来事も大いに含まれており――中でも最も悲惨なだったのが、『輝けるカモメ号事件』だ。
推進機能に問題を抱え、このステーションに一時身を寄せた『輝けるカモメ号』。しかし修理用の部品を取引しようにも、時期が悪く、他の船が全く現れず……長い停泊期間の中、乗員達の抱えていた問題が徐々に浮き彫りになり、突如宇宙鮫が襲ってくるなど様々な出来事の末、殺し合いを始めてしまったのだという。
この辛く悲しい事件は、ステーションにも深い傷痕を残していった。
そのためだろうか、毎年この時期になると現れるのだ。
――乗員達と、宇宙鮫の幽霊が。
●という設定でお送りします
「平たく言うと、ホテルで肝試しイベントをやるから是非来てほしい、ということだよ」
手にしたパンフレットを広げてみせて、八津崎・くくり(虫食む心音・f13839)が言う。
ハミングバード島。猟兵達によって解放されたこの島は、現在交易の中継点を兼ね、船乗りのためのホテルとして営業している。元は宇宙ステーションだったという特徴を活かし、水中客室やトラクタービーム機能による空中浮遊などを売りにしているようだが。
「ステーションの崩壊区域を修復、再建する内に、ホログラム機能まで復活したそうでね。早速それを活かして集客用のイベントを起案したとのことだ」
何とも商魂たくましい話ではないかね、と彼女は笑う。
期間中は、宿泊客を驚かせるために、ホテル側が色々と仕掛けてくる。周りのものが勝手に動いたり、鏡に妙なものが映り込んだり、果ては水中客室の窓をぶち割って鮫が追いかけてきたり――重力操作とホログラムを駆使した仕掛けは多岐に及ぶだろう。
それに対して身構えたり身構えなかったり、驚いたり驚かなかったり、思い思いに楽しんでほしい。
「肝の太い諸君らも、少しくらいはひんやりできるかもしれないよ」
そう言って、くくりは再度折り畳んだパンフレットを猟兵達へと手渡した。
つじ
こちらは、水上ホテル『ハミングバード』です。
当館では現在、夏の肝試しキャンペーンを開催しております。いつもよりも、少しばかりスリリングな休暇を過ごしてみませんか。
●できること
水中客室と水上客室がありますので、ご宿泊はご自由に。ホテルの管理人こと、ステーションの制御AIに頼めば、トラクタービーム機能による疑似無重力や海上散歩、空中散歩などが楽しめます。
また、今回は、ホログラムも駆使して色々と宿泊客を驚かせようとしてきます。
ホテルのロビーで、ホテルの廊下で、海上散歩中に、客室にて、などシチュエーションは様々ですので、ご指定があればプレイングでどうぞ。お任せでも構いません。
●ハミングバード島
つじの運営したシナリオ『とりはうたう』にて解放された島です。元はSSWの宇宙ステーションでしたが、一度半壊した上で修復が進んでいるので、特に読まなくても問題はありません。
●グリモア猟兵
お声掛けがあれば、出てくるかも知れません。
●ご注意
・このシナリオは既に猟兵達によってオブリビオンから解放された島となります
・このシナリオは【日常】の章のみでオブリビオンとの戦闘が発生しないため、獲得EXP・WPが少なめとなります
以上です。それでは、ご参加お待ちしております。
第1章 日常
『猟兵達の夏休み』
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POW : 海で思いっきり遊ぶ
SPD : 釣りや素潜りを楽しむ
WIZ : 砂浜でセンスを発揮する
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
花邨・八千代
【徒然】
別に怖くねーし?どうせホログラムだし?
でも水場はなんかほら、やべーっていうから俺水上部屋がいいなー!
あと震えてねーし!ねーし!
うぐぇえええ何かもう雰囲気がやだぁあああ
ひん……怖くない、怖くないけど布静は俺から離れんな…!
がっつり布静の腰にしがみ付きつつ、客室に行くぞ
ぅえっ、今!今なんか窓に!窓にー!
ビビり散らして廊下を歩いていれば後方に気配
振り向けば後方!血塗れ乗員!
ッア゛ーーー!?
(反射的に出る右ストレート!しかし空振り!)
ッァア゛ーーー!!
(とんぼ返りして彼氏に両手両足でしがみ付く)
だって!なんか居たんだもん!嘘じゃないもん!!!
俺もうこっから離れないぃ…!布静ンとこ居るぅ…!
薬袋・布静
【徒然】
その割には随分と声が震えとるやんけ
水ン中やとお前無力やもんな
おーおー、チワワのようにぶっるぶるやなー
素直に『怖いから傍に居って』言うたらかわええんやけど
(ま、無理な話やな…)
八千代の頭を幼児をあやすよう撫で回す
気のせいや、気のせい。ほら、行くぞー
うっっっっっるさ!!!
お前のそのクソデカボイスで鼓膜破れるかと思ったわ、ド阿保ッ!
はぁーーーーー………
自分で最初にホログラム言うたんやんけ
もう忘れたんか…
未だにジンジンと痛む両耳をあーあーと声を出し調節
何とか誤魔化すとしがみついて離れない鬼を再度あやす
その手は優しい
このまんまでええし、見たくないなら見んでもええ
大人しゅう抱っこされとれボケナス
●ターゲッティング
いらっしゃいませ、お客様。
ホテルに辿り着いた花邨・八千代(可惜夜エレクトロ・f00102)と薬袋・布静(毒喰み・f04350)を、このホテルの管理人こと制御AIがわざとしわがれた声で歓迎の言葉を述べる。
『この時期は『彼等』も活発になります故、お気を付けください……』
盛大な前振りをしつつ、客室の希望を問う。水上客室と水中客室がありますが、ご希望は?
「ま、別に怖くねーし? 幽霊ってもどうせホログラムだし? でも水場はなんかほら、やべーっていうから俺水上部屋がいいなー!」
「その割には随分と声が震えとるやんけ」
「震えてねーし!」
ねーし! もはや挙動不審としか言いようのない様子で、八千代は鍵を受け取った。9Fの13号室。何それやべーよ奥の方じゃね?
「おーおー、チワワのようにぶっるぶるやなー。ま、水ン中やとお前無力やもんな」
「そういうことじゃ……ああ、まあそれも確かにあるか……?」
ロビーを出て、エレベーターを抜けて客室区画へ。先頭に立って廊下に踏み出した八千代の歩みが早速鈍る。
「うぐぇえええ何かもう雰囲気がやだぁあああ」
綺麗に整えられた無人の廊下。抑えられた明かりの中、空調からのひんやりとした風が頬を撫でる。館内スピーカーからは格調高いような、それでいて時折不協和音の混じる音楽が流れていた。
「ひん……怖くない、怖くないけど布静は俺から離れんな……!」
「わかった、わかった」
素直に『怖いから傍に居て』とでも言えればまだ可愛げがあるのだが。まあそれは無理な話かと嘆息して、布静は幼児をあやすように、彼女の頭に手を伸ばして――。
「うわっ! あー! 触る時はちゃんと予告! 予告をしろ!!」
うわ、めんどくさい。
「ぅえっ、今! 今なんか窓に! 窓にー!」
「気のせいや、気のせい。ほら、行くぞー」
結局布静の腰にがっつりとしがみついた八千代をあやしながら、二人は廊下の奥へと進んで行く。長い廊下はそこそこ見通しもよく、奇襲には向かないように思われたが。丁度T字路になっていた箇所で、八千代は見た。双子だろうか、人形めいた二人の少女が、角の先からじっとこちらを見つめている。
「ああああ何か居た!! ていうか知ってる映画で見たやつじゃん!!!」
「はあ? どうしたんや何も居らんぞ?」
悲鳴の声量がやばいな、と耳を押さえながら布静が言う。八千代が指差す方を覗き込んではみるが、無人の廊下が続く限り。
「だって! なんか居たんだもん! 嘘じゃないもん!!!」
ああ、これ完全に標的絞られとるな、と布静が確信した矢先、来た道を振り返った八千代は目の前に立つ血塗れの乗員と目が合った。
危機に陥った時の反応は人によって様々だが、彼女の場合はまず最初に手が出た。
「ッア゛ーーー!?」
岩をも砕く渾身の右ストレート。しかし幽霊(ホログラム)には通用せず、逆に血塗れの顔を歪ませたそれは、さらに一歩踏み込んでくる。
「ッァア゛ーーー!!」
さらなる奇声を上げてとんぼ返りで急速離脱。引っ張り込んだ形の布静に、彼女はそのまま両手両足でしがみついた。
「うっっるさ!! 落ち着け、ド阿保ッ!!」
鼓膜が破れる、と文句を言いつつ様子を窺うが、八千代の方は完全に顔まで埋めて何も見ない聞かない体勢に入っている。
「俺もうこっから離れないぃ……! 布静ンとこ居るぅ……!」
「自分で最初にホログラム言うたんやんけ……」
はぁ、と盛大に溜息を吐いて、布静は再度その頭に手を置く。
「このまんまでええし、見たくないなら見んでもええ。大人しゅう抱っこされとれボケナス」
乱暴な言葉に反して、優しくその髪を撫でて。顔すら上げられなくなった羅刹を抱えたまま、目指す客室へと歩いていった。
出足からこんなんだけど、ほんとに一晩耐えられるの?
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ルーチェ・ムート
クレア(f20600)と
アドリブ歓迎
肝試し…って、確か怖いやつだよね
う、うん
大丈夫!クレアはボクが守るから!
驚き過ぎて、うっかり返り討ちにしないように気を付けないと…
わあっ
綺麗だね!水の中の部屋って不思議な感じ!
ふふ、かわいい
今度海に行こっか
ボクの力でクレアを人魚姫にしてあげる
微笑ましい気分で眺めていたら
クレアの悲鳴にびくり
肩が跳ねて背筋が凍る
なっなになになに!?
へ!?おばけ!?いや、人!?
だだだいじょうぶ
(ぎゅっとしながら震えが止まらない)
に、にげよう!ね!
これは人、あれも人、人間だから
おばけなんていないし、平気だもん
うええええん
なにこれー!?
こわいー!
(一緒に仕掛けに引っかかって泣き叫ぶ)
クレア・オルティス
ルーチェ・ムート(f10134)と
アドリブ歓迎
肝試し…?(肝試し知らないので涼しい顔)
大丈夫だよ~、お楽しみくださいって言ってるんだからきっと楽しいものなんだ…!
それに仕掛けるのは人なんでしょ?おばけじゃないなら怖くないもんね…!
水中客室
海の中のお部屋だ…!わぁ~見たこともない生き物がいる!
幻想的だなぁ…自分も人魚姫になった気分(部屋の中を泳ぐようにくるくると)
まさかこんな客室まで仕掛けがあるわけ…
あれ…?今何か…うにゃーー何かいるーー!!
うわぁん怖いようルーチェ!
離れないで離さないでぎゅってしてて~~!!
ぴゃーー!!どうなってるのこれぇー!!
(仕掛けにはよく引っ掛かりよく叫びよく泣く)
●みなぞこのまいご
「肝試しキャンペーン中……?」
ホテルのパンフレットを広げたクレア・オルティス(天使になりたい悪魔の子・f20600)が、そこに記載されている一文に首を傾げる。彼女にとっては聞き慣れない単語だ、それは一体何なのか。
「肝試し……って、確か怖いやつだよね」
こちらはちゃんと聞いたことがあったのだろう、ルーチェ・ムート(十六夜ルミナス・f10134)が確認するようにそう口にするが。
「大丈夫だよ~、ほら『お楽しみください』って書いてあるんだから、きっと楽しいものなんだ」
「う、うん」
押し切られた。素直なクレアの言葉をわざわざ否定するのも忍びなくて、ルーチェはその代わりに、決意を込めて頷いた。
「大丈夫! 何かあっても、クレアはボクが守るから!」
「またまた~、驚かせるって言っても仕掛けるのは人なんでしょ? おばけじゃないなら怖くないもんね……!」
「そうだね、驚き過ぎて、うっかり返り討ちにしないように気を付けないと……」
そんな風に、むしろ仕掛ける側の心配までしながら、二人はホテルのあるハミングバード島へ旅行に出かけた。
そうして二人が訪れたのは、ホテル『ハミングバード』の誇る水中客室。元は宇宙船だったという気密性を活かしたその部屋は、窓から海の中が見えるのだ。夕暮れの海を泳ぐ色とりどりの魚の群れと、波に揺らめく夕日の光が、複雑な模様を描いて部屋を飾っている。
わあ、と歓声を上げた二人は、部屋を見渡して、それから窓辺に寄って、その場所を堪能する。
「綺麗だね! 水の中の部屋って不思議な感じ!」
「わぁ~見たこともない生き物がいる!」
クレアにとってはまだまだ見慣れない水中の光景、初めて見る姿の海中生物達に瞳を輝かせて、「あれは何て言うの?」などとルーチェに問うていく。傍らに並んでそれに答えていた彼女は、ふとパンフレットの別の言葉を思い出して。
「そうそう、こういう仕組みもあるのよね」
ホテルの管理AIに声をかけることで、自由に重力制御を行うことが可能。つまり――。
「へえ……すごいね、人魚姫になった気分」
ふわりと、自分も水中に居るかのように身体が浮かんで、泳ぐようにくるくると回りながらクレアが言う。
「今度海に行こっか、ボクの力でクレアを人魚姫にしてあげる」
「本当? でも、泡になっちゃうのはいやだな~」
ふふふ、と二人微笑み合って、楽しい休暇の時間は過ぎていく……はずだった。
「……ん? 今のなに?」
ふと、クレアが視界の端を過ぎったそれに気付く。輝く宝石のような小さな魚達に、力強く泳ぐ巨大な魚、そんな魚影の中に、長い髪の毛が映ったような。
徐々に緊張感を孕んで行くクレアの様子に、ルーチェも「え? 何?」と周りを見回す。そんなちょっと怖い顔しなくても、窓の外には変わらぬ光景が――。
「ひっ」
「うにゃーー何かいるーー!!」
突如はっきりと、窓の外に見えた長い黒髪の少女の姿に、二人は各々その身を固くする。その姿はすぐに見失ってしまったが、海中に漂う長い髪の間から見えた、不気味な微笑みが目に焼き付いている。
「なっなになになに!?」
へ、おばけ? いやそんなまさか、人でしょう? いや、人だとしても、何でこんな海中に……?
「こ、怖いようルーチェ!」
「だだだいじょうぶ、おばけじゃなくてあれも人、人なのよね!?」
身を寄せてきた彼女の肩を抱いて、自分に言い聞かせるようにして、ルーチェは周りを確認する。そう、クレアの事を守ると決めたのだから、ちゃんとしなくては。
「ま、まずはにげよう! ね!」
震えを押さえながらも、少なくとも窓から離れるべきだと部屋の入口へ目を向けて。
「へえ!?」
変な声が出た。何の変哲もない、自分も通ってきた部屋のドアから、子供のものらしき腕が突き出している。
「ななな何? なんなの!?」
「うわぁん入ってきた! ドアすり抜けて来たよどうしようルーチェ!?」
「えええええそんな、こっちきてる!? に、逃げないと!?」
ざ、と部屋に据えられたスピーカーから雑音が聴こえて、照明が明滅する。
そんな中で、じわじわと伸びてくる両腕。肘を過ぎて、肩が見えて、同時に長い黒髪を振り乱した少女の顔が浮かび上がると、それはあの不気味な笑みを――。
「ぴゃーー!! どうなってるのこれぇー!!」
「うええええん! こわいよー!」
というわけで、ホテルのAI渾身のホログラム映像により、水中客室の一つから、一際大きな悲鳴が館内に響き渡った。
――お楽しみいただけて、何よりでございます。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
オズ・ケストナー
アヤカ(f01194)と
ほんとうだ、あるけるっ
ぴょん
ジャンプしてもおちないよ、すごい
アヤカ、きらきらだっ
もっと海の中心へと歩いていきたくなって
こっちこっち
え?
なんか?
自分の足元は自分の姿が見えるだけ
なんかはアヤカ?
うん、血まみれじゃない
頷く
指されても見えなくて
うーん?
輝けるカモメ号のゆうれいかな?
もしもーし
ゆうれいさん、はいってますかー?
海面をもっとよく見ようとして
わあ
突然手を引かれ、並んで尻餅
避けるためと気づいたのはその直後
ぽかんと開いた口
宇宙ザメっ
消えた海面を指さしてアヤカを見る
笑い声響けば笑顔につられて
ふふ、ざばーばっしゃーんだってっ
飛沫を表すように両手あげ
うんうん、もういっかい見たいっ
浮世・綾華
オズ(f01136)と
ちゃんと歩ける歩ける
海の上の散歩。すげー
あぶな…ほんと、だいじょうぶだな?と軽く跳ね
見上げる空はきらきらと星が煌いて
それを映す海も
あ、先行くなよ。俺も行く
って、ええ…
オズ、今海面になんか映ってた
いやいや、俺じゃないよ
血まみれの…
俺血まみれじゃねーもん
此処、此処――あれ…いねえ
嘘じゃないぞ、マジで
出てこーい
んー、ホログラム…ってやつか?
話していれば突然の水音に思わずオズの手を引き
そのまま海面に尻餅
見上げれば大きな宇宙鮫が宙に跳ねて
――ふ、あははっ
めっちゃびっくりした!
オズの動きに余計に楽しくなって
いや、もっとすごかったよとオズより高くを指し
面白かった
な、もう一回来ねーかな
●星空に跳ねる
ハミングバード、そう名の付いたホテルに声をかければ、不可視の力場が二人を包む。そういう仕組みだと説明を受けてはいたが、やはり実際に体験してみると、また違うもので。
「ほんとうだ、あるけるっ」
「すげー、これが海上散歩ってやつか」
オズ・ケストナー(Ein Kinderspiel・f01136)の踏み出した足が海面ギリギリで止まる。浮世・綾華(千日紅・f01194)のそれも同様で、おそるおそる体重をかけてみれば、二人は海の上に立つという不思議な状態になっていた。
それなら早速、とばかりに、海面を蹴ってオズが小さくジャンプする。
「うお、あぶな……」
「大丈夫っ、ジャンプしてもおちないよ、すごい」
「……ほんと、だいじょうぶだな?」
綾華も軽く跳んで、奇妙な足元を確認すると、二人は夜の海へと視線を向けた。
波の穏やかな夜の海は、瞬く星を映して、空と海が混ざり合い、水平線などなくなってしまったかのよう。
「アヤカ、きらきらだっ」
そうだな、なんて頷く綾華を置いて、オズはもう沖の方へ、海と空の中心へと歩き始めていた。
「ほらアヤカ、こっちこっち」
「先行くなよ、俺も行くから――」
今にも駆けだしそうなオズを追って、綾華が足を踏み出した矢先に。
「ええ……」
不穏なものが見えて、口元を引き攣らせる。
「オズ、今海面になんか映ってた」
「え? なんか?」
げんなりした表情の綾華に従って、オズも足元を見下ろしてみるが、そこには夜空と、彼の姿が映るばかり。
「なんかって、アヤカ?」
「いやいや、俺じゃない。血まみれだったんだよそれ……」
「血まみれの?」
「そう、俺血まみれじゃねーよな?」
「それは、うん」
どうにも要領を得ない。それは綾華が完全に水面から目を逸らしているためだろうか。
「どこにいたの?」
「此処だよ、此処――あれ……いねえ……」
気乗りしない表情で視線を戻すが、ほとんど凪に近い海には、そんな不吉なものは影も形もなくて。
何だかヘタな嘘を吐いたみたいになってしまったが、オズは勿論、その辺りを疑うはずもなく。宇宙船にすんでた幽霊かな? と首を傾げて、もう一度まじまじと、海の底を透かすようにして、足元を見つめた。
「もしもーし、ゆうれいさん、はいってますかー?」
「出てこーい」
二人してそう覗き込んではみるが、返事は無いし、気配もない。
「んー、ホログラム……ってやつだったのか?」
首を傾げながらそう呟いたところで、綾華はその目を大きく見開く。凪いでいた水面が揺れて、泡立って、大きく波打ち、浮き上がる。きっとそれは一瞬の事だったけれど。
「うおっ!?」
「わあっ」
咄嗟にオズの手を引いて仰け反ったところで、二人は揃って尻餅をついた。呆然と空を見上げる綾華と、ぽかんと口を開けるオズ。二人の視線の先には、海中から飛び出してきた大きな鮫が、輝く水飛沫と共に宙を泳いでいた。
「わ、宇宙ザメっ」
夜空を遮るような巨体を捻って、海面に着水。もう一度、先程よりも盛大な水飛沫が上がった。
文字通り、瞬く間の出来事。また静かになった水面をしばし眺めてから、二人は尻餅をついた姿勢のまま、互いの顔を見合わせた。見た? と海面を指差すオズの顔に、綾華が頷いて。
「――ふ、あははっ」
自然と湧き上がる衝動のまま、声を上げて笑う。すると、オズの顔にも笑みが零れる。
「あー、めっちゃびっくりした!」
「ふふ、すごかったね、ざばーばっしゃーんだってっ」
身振り手振りであの迫力を再現しようとするオズに、「いや、もっとすごかったよ」と高く高く指差して、綾華はオズと二人、星空の下で笑い合う。
「いやー、面白かった」
「うんうん、もういっかい見たいっ」
「な、もう一回来ねーかな」
一頻り笑って、弾む言葉を交わしてから。笑い過ぎて目尻に滲んだ涙を拭いながら、立ち上がった綾華は、大事な友人へと手を差し出した。
「それじゃ、行こうぜ」
「うんっ」
その手を取って腰を上げて、オズはもう一度水平線のある方へと歩み出す。闇の中に散りばめられた、無数の星。暗いけれど光に満ちた、あたたかな光景。
見上げたそこと、見下ろした海に、星が一つ流れた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
霄・花雫
【SSFM】
わぁっ、見て見て!
空中にも海中にも泊まれるんだって!
泊まる時は空中客室が良いなー
此処でなら灯くんも空飛べるねぇ
それより今回は肝試しだよね!
幽霊ってどんなのかなー
アウラちゃん、鏡何か映ってる?
うーん、見えないねぇ
って、きゃぁぁっ!?
ま、窓、窓突き抜けて目の前にサメ出て来るのはどうなのかなぁっ!?
もう反射的にこわいんだけど!!
幽霊怖くないけど!サメは!普通にこわいー!
魚にサメはNGだから!共演拒否!
もーっ、着いて来るし!
灯くんもアウラちゃんも逃げるよー!
こういうのはほら、ノリと勢いだから!
あははっ、灯くん話が分かるー!
ひゃっ、ホログラムなの分かってても迫力満点すぎてこわいんだけどーっ!
アウレリア・ウィスタリア
【SSFM】
空中、海中?
ボクは飛べますけど、空中の客室って面白そうですね
そっか、灯は飛べませんでしたね
でも力を入れずに飛べるのは楽ちんです
肝試し……?肝試しって何をすればいいのでしょうね
あれ、こんなところに鏡?
……なんでしょう、これ
ボクじゃない誰かが映ってる?
あぁ、花雫
何でもないですよ
窓に、サメ?
サメ……ですね
サメが、窓を突き抜けて……?
あ、花雫どこに行くんですか?
えっ?灯、待ってください
これ殺気を感じませんから、ホログラムってやつですよね?
なら、心配することないんじゃ……
って、ただ走るだけですか?
え?え?灯、花雫、待ってください!
あー、もう足で追いかけるには二人とも早すぎます
本気で飛びますよ
皐月・灯
【SSFM】
オレは空中でも海中でも構わねーけど。
……飛べる? ああ、トラクタービームで空中散歩ができるんだったか。
看板に偽りなし……結構本気だな、このホテルのオーナー。
肝試しったってアレだろ。幽霊とか、驚かせる系のやつ。
……いや、なんでもねー。
(そういうのは平気なんだが。まあ、付き合ってやるか……)
花雫、止まれ。そこの窓――あ。
すげー勢いで回れ右したな、あいつ……。
おい、アウラ……だっけか。追っかけるぞ。
待て花雫、ありゃ本物じゃねーよ。気配とか生臭さとかもねーだろ。
……その言い方、ほんとに怖がってるわけじゃねーんだな。ノリと勢い……か。
ったく……わかったよ、付き合いついでだ。走ってやるよ!
●ノリと勢い
「わぁっ、見て見て! 空中にも海中にも泊まれるんだって!」
「へえ、空中の客室って面白そうですね」
パンフレットを広げた霄・花雫(霄を凌ぐ花・f00523)の言葉に、アウレリア・ウィスタリア(憂愛ラピス・ラズリ・f00068)が頷く。どこにそんなことが書いてあるのか、彼女の手元を覗き込んで。
「まあ、ボクは普段から飛べますけど」
「此処でなら灯くんも空飛べるよ?」
「……そっか、灯は飛べませんでしたね」
突如二人の視線が集まるのを感じて、皐月・灯(喪失のヴァナルガンド・f00069)は居心地悪そうに身を揺する。空を飛べないのをここまで言われることなどそうはないだろう、とはいえ。
「……飛べる? ああ、トラクタービームで空中散歩ができるんだったか」
最初に聞いた時は「妙な使い方をしている」と、呆れと感心の半々くらいの気持ちになったものだが。
そうしてふと目を向けた壁掛けの絵画が、ふわりと浮き上がるのを見て、灯がほう、と息をつく。
「……結構本気だな、このホテルのオーナー」
「え? その絵がどうかした?」
花雫が同じ絵に視線を向けた時には、既に元の壁に戻っていて。
「いや、何でもねーよ」
「ふーん?」
首を傾げながらも、花雫は再度パンフレットへと視線を落とす。
「それより今回は肝試しだよね! 幽霊ってどんなのかなー」
「肝試し……? 肝試しって何をすればいいのでしょうね」
「そりゃあアレだろ、幽霊とか、驚かせる系のを待つだけの」
多分さっきのもその一環だろうとあたりを付けて、灯が答える。趣向は分かった。その手のものに一切動じる事のない灯だが、付き合ってやってもいいかと胸中で呟きながら。
一方、まだいまいち内容を理解しきれていないアウレリアは、廊下の途中にあった鏡へと目を向ける。何故こんなところに、というのが第一印象だが。
「アウラちゃん、鏡何か映ってる?」
「いえ、何でもないですよ」
ボクじゃない誰かが映り込んでいるくらいで。その程度はわざわざ言うまでもないだろうとアウレリアは切り捨てる。
「ふーん、まだ出てくるには早いのかなぁ」
それなら良いかと読み終えたパンフレットを畳みながら、花雫もそれを素通りする。その先にあるのは、丁度ビーチを見下ろせる大窓だが。
「花雫、止まれ。そこの窓――あ」
「って、きゃぁぁっ!?」
灯の警告はほんの少し間に合わなかったか、窓を突き抜けて鮫が飛び込んでくるのを目の当たりにして、花雫が踵を返して走り出す。
「魚にサメはNGだから! 共演拒否! 帰って!!」
幽霊ならともかく、サメだけは。そんな悲鳴を上げて走り去る彼女を、こちらは目で追いながら。
「すげー勢いで回れ右したな、あいつ……」
「花雫はどこに行くんですか?」
というか何でサメ? 純粋に首を傾げるアウレリアを促して、灯は花雫の後を追うことにする。何しろ、ここではぐれてもろくなことがない。
「おい、アウラ……だっけか。追っかけるぞ」
「えっ? 灯、待ってください」
相変わらず空中を泳ぐ謎の鮫に追い回されている彼女と合流し、二人が声をかける。
「待て花雫、ありゃ本物じゃねーよ。気配とか生臭さとかもねーだろ」
「これ殺気を感じませんから、ホログラムってやつですよね?」
「えー、でもこういうのはほら、ノリと勢いだから!」
ああ、本気で怖がってるわけじゃないんだな、と灯は嘆息する。
そもそも、肝試しはそういうものだと言えなくもない。怖いとか怖くないとか個人差はあるだろう。その中で大事なのは、きっとこの時間を共有することなのだと。
「ったく……わかったよ、付き合いついでだ。走ってやるよ!」
「あははっ、灯くん話が分かるー!」
そう言って本腰を入れて走り出した灯に合わせて、花雫も笑って速度を上げる。そうすると一人、若干置いてきぼりになったアウレリアが、戸惑いの声を上げる。
「え? ただ走るだけですか?」
「アウラちゃんも逃げるよー!」
「え? え? 灯、花雫、待ってください! 二人とも早すぎますよ!」
本気で飛びますよ、と翼を広げて、地を蹴って。彼女もまたスピードを上げて、二人の後を追いかける。
「ひゃっ、ホログラムなの分かってても迫力満点すぎてこわいんだけどーっ!」
そんな楽し気な悲鳴を響かせながら、三人と宇宙鮫の幽霊との追いかけっこは、しばし続いた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
冴島・類
こくうさん(f16107)、ぬこ様と海上散歩へ
夏に人の子がよくする催しとは知ってますが
僕らも試されに行きましょう!
何が仕掛けられるかわくわくですね
こくうさんとぬこ様は
鮫と人の幽霊、どっちが出てきた方が驚きます?
成る程、通じれば未練とか聞けますしね
え。
ありますよ、準備もなく海に投げ出されたり
海水の魔人とかがきたら…はっ
起こりそうだから今のなし
落ちやしないとわかってても、数歩はそろり
すごい…!
跳ぶとはまた違う感覚ですかね
熱帯魚だ、あちらは海月?
つい心許なくて、もう大丈夫
楽しそうな姿を追いかける
鮫や何が飛び出てきても
それVSぬこ様の展開の方に驚き
なんか……違う物語になってません?
応援と行きましょうか
天元銀河・こくう
ルイ(f13398)、ぬこ様と【海上散歩】
ぬこ様はPCの頭の上に
驚かされるために催しを行うとは
ニンゲンはよほど退屈しているとみえる
…が、面白そうなことはわたしも大歓迎だ!
昨今のユーレイとやらは
電子の世界も活用するとか聞いたぞ
意思の疎通ができないという点で、鮫の方がめんどくさそうだ…
まー、ぬこ様にかかれば丸呑みだがな!
そういうルイも、驚くことはあるのか?
ジャンプは得意だが、水上を歩くのは初めてだ
臆せず走り回りながら、見つけた魚に飛びかかろう
ルイなにをしている、腰が引けているぞ!
仕掛けが出てきたら、ぬこ様にお願いしよう!
さあ、勝負だホログラム鮫!
※ぬこ様はブラックホールな口で何でも丸呑みにできます
●ぬこ様が勝つわ
「ふむ、肝試しか」
「夏に人の子がよくする催しですね」
天元銀河・こくう(黒猫・f16107)の言葉に、冴島・類(公孫樹・f13398)がそう答える。
「驚かされるために催しを行うとは、ニンゲンはよほど退屈しているとみえる……」
そういう言い方をされるとものすごく不毛なイベントに聞こえてくるが、ニンゲンとは得てしてそういうものなのかもしれない……と、そんな思考があったかは定かでないが。
「――が、面白そうなことはわたしも大歓迎だ!」
「では、僕らも試されに行きましょう!」
こうして二人は、揃ってハミングバード島へと旅立った。
「鮫と人の幽霊、どっちが出てきた方が驚きます?」
ビーチを歩く道すがら、類がこくうと、その頭上に乗っかったぬこ様に問う。
「意思の疎通ができないという点で、鮫の方がめんどくさそうだ……」
まー、ぬこ様にかかれば丸呑みだが。付け加えられたそんな注釈も踏まえて、類はそれに頷いた。
「成る程、話が通じれば未練とか聞けますしね」
「昨今のユーレイとやらは、電子の世界も活用するとか聞いたぞ」
メッセージアプリで連絡取れるかも知れんな、などと言われ、思わず笑みを浮かべたところに、こくうからの問い返しが。
「そういうルイも、驚くことはあるのか?」
「え」
それは勿論、と首肯して。
「……ありますよ、準備もなく海に投げ出されたり、海水の魔人とかがきたら……」
思い付くままそう答えたが、何か盛大なフラグになってしまう気がして、口を噤んだ。
「そうか、我々はこれからその海に踏み込むわけだが――」
大丈夫か? などと言いながら、こくうは会場へと一歩を踏み出した。するとトラクタービームによる重力制御を受けた体は、海面を境としてぴたりと止まる。
「ジャンプは得意だが、水上を歩くのは初めてだな」
未体験のそれに臆することなく、こくうはそのまま海の上を走り始めた。
その一方、類はおそるおそるといった様子で海面を踏む。仕組みの説明は受けているし、それこそ海中に投げ出されるようなことはないとわかっていても――。
「ルイ、なにをしている、腰が引けているぞ!」
「すいません、つい心許なくて……」
海面から跳ねる魚を追いかけ始めたこくうの言葉に、背を押されるようにして沖へと歩み始めた。
「すごい……!」
恐怖を押し退けて、足元を透かしてみれば、海中を泳ぐ宝石のような輝きをいくつも見つけられて。
「熱帯魚だ、あちらは海月?」
しばし、それに見惚れる。
「ルイ! 置いていくぞー?」
いつの間にそんなに進んでたのか、沖合から呼ぶ声に顔を上げて、類は彼女の背を追いかけることにした。
そうして、飛び跳ねる魚を追いかけていた二人の前に、一際大きな水飛沫が上がる。
現れたのは、先程までの魚達とは比べ物にならない威容。サメの身体に筋肉質な両腕を生やしたようなその姿は、サメの魔人とでも呼ぶべきだろうか。
「これは……!」
驚きの前に、「さっきの会話を中途半端に盛り込んで来た」と妙な悟りを得てしまい、「そういうことじゃないんだけどな」と首を捻りたくなってしまうが、ともかく。
「現れたなサメ魔人よ! 中々の肉体美だが、このぬこ様に勝てるかな!?」
こくうの宣言に合わせて、彼女の頭に乗っかっていたぬこ様が、意外と長い身体を伸ばして敵を威嚇する。
「なんか……違う物語になってません?」
急展開についていけていない類が思わずそう問いかけるが、両者は既に戦闘態勢に入っていた。
かぱっと口を開くぬこ様。驚くなかれ、ぬこ様はその口でブラックホールのように何でも丸呑みにしてしまうのだ。たとえホログラムで再現された宇宙鮫魔人の幽霊とかいう属性てんこ盛りの存在であろうと、そこから逃れることは不可能……!
「が、がんばってください、ぬこ様ー」
とりあえず応援することにした類の声に続いて、こくうが大きく腕を振るい、ぬこ様がそれに応える。
「さあ、勝負だ!!!」
肝試しなど今は遠く。ハミングバード島の海上にて、世紀の決戦の幕が上がった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
九之矢・透
へへー、また来ちゃった!
ちょっとぶりだな、ハミングバードサン
何かイベントやってるんだって?楽しみだ
先ずは、ンー
この前は展望台に行ったしホテルの中を見て回ろうっかな
内装もキレイじゃん?
鏡もピカピカで……
――ピカピカなのになんてアタシ映ってねぇの??
マジックミラーとかだよねそうだよね!
室内なのにシャンデリアが揺れてる理由が分かんないケドさァ!?
何か聞こえるけど気のせいです!
小さな「アイツら」もポケットや帽子から出てくる気配ないし
そうだ、アイツに来てもらう!
……隅っこでぶるぶる震えて借りて来た猫みたいなんですけど
ライオン、お前もか?
逃げ込んだ部屋には鮫の乱入
今日イチの絶叫
少しひんやり……所じゃない!
●心よりの歓迎を
「へへー、また来ちゃった! ちょっとぶりだな、ハミングバードサン」
『いらっしゃいませ、九之矢様』
ホテルのロビーにて、九之矢・透(赤鼠・f02203)の声に『管理人』が応える。ホテルになる前を含めれば三度目の訪問になるだろうか、ここは日々変わっていくなあと、補修の進んだ建物を見上げて。
「そうだ、何かイベントやってるんだって?」
『ええ、お楽しみいただければ幸いです』
ふーん、楽しみだ、と笑って、透は客室の鍵を受け取った。
「ンー、展望台にはこの前行ったしなぁ」
最新の館内マップを眺めて、今回はホテルの客室区画を見て回ってみることに決める。以前……前に訪れた時には、錆色の水晶に侵され、真っ赤な鳥がやたらと居たはずの場所だ。
「随分綺麗になったもんだなあ」
補修し塗り直され、内装も整えられた廊下は、全く別世界のように見える。あの時は穴だらけで、潮風さえも感じたものだが……。
「……?」
生温い風を感じて、首筋を押さえる。空調か?
訝し気に立ち止まった彼女は、傍らに飾られた鏡に目を向けた。
「へー、高そうな鏡だな、ピカピカに磨かれて……うん……?」
綺麗に映った廊下の光景に、何故アタシが映っていない? マジックミラー的な? それともだまし絵?
でも映った廊下の、シャンデリアが揺れて動いてるから、やっぱり絵ではないはずで。
「――えっ?」
むしろ何でシャンデリアが揺れてるの? 振り向けばそこに、赤い羽根が一枚落ちてきて――。
「いやいや、アイツらはもう、ここには居ないはず……」
気配を探りながら、じり、と後退る。緊張感を察したのか、ポケットと帽子の中で小鳥と栗鼠が身を縮めているのがわかる。しかも何か、いつの間にか館内放送がおどろおどろしい音楽になってない? この空気を、何とかできるのは……。
「そうだ、来てくれライオン!」
『ライオンライド』、求めに応じて現れた雄々しき黄金の毛皮の獅子は、早速廊下の隅っこで丸くなった。
「えぇー……」
意外と臆病? とにかく借りてきた猫みたいになったそれを宥めすかして。
「よ、よし今日の探索はここまで!」
撤収! 速やかに宿泊する客室に駆け込んで、鍵をかけた。
これで一安心と肩の力を抜いた、そこで。
「は?」
窓の外に迫る巨大な鮫の姿を目の当たりにする。
なんで? ここ地上階では? 当然の疑問が上滑りしている内に、立体映像と音響機構を最大限に生かした、窓をぶち割る鮫の突撃が237号室を襲う。
今日一番の絶叫が、客室区画に響き渡った。
大成功
🔵🔵🔵
リル・ルリ
【迎櫻館】
海の上を泳ぐなんて不思議な気持ちだ
櫻と零時は?
ちゃぷりと波打つ水面を見ながら不思議そうに小首を傾げ
櫻宵の様子に可愛いなぁと頬を緩めて手を握る
大丈夫
僕が支えてるよ!
え?!
おばけ?!水からおばけ出てくるの?!
余裕の笑みから一転、ぶるりと震えて身を寄せる
零時、お化けだって!君は大丈夫なの?
ぴいいぃー!!!手が!!やだやだ、櫻っ
助けてよ!(飛び上がり、しがみつき巻き付く)
零時、気をつけ―あっ!!鮫!
でっかい鮫がきたよ!
ひぇ
早く逃げなきゃ食べられちゃうし、腕に捕まっちゃうよ!
鮫の上にお化けもいるーー!
櫻にしがみつき必死に逃げる
もう海の上なのか陸なのかわからない
あはは!でもこういうのも
楽しいね
誘名・櫻宵
【迎櫻館】
海上散歩ができるなんてロマンチックじゃないの
さぁ、リル、零時!
準備はいいかしら!
え?私が震えているって?……む、武者震いよっ
私はあまり泳げないから水上が怖いとか、そんなんじゃないからねっ
あ、リル。しっかり私の手を握ってて頂戴
いざと言う時の人魚様
零時、何処かに飛んでいかないようにしなきゃって、きゃあ!
海中から無数の腕が!?引きずり込まれちゃうわー!(楽しい)
あっちに見えるのは幽霊船かしらー!
リル!?飛び跳ねすぎよっ(とても楽しい)
ギャーー!鮫?!
ま、私むり!!泳げないんだから、
ちょっ、零時?!
鮫の上に霊だなんて!!
鮫に腕に追われながら海上をかける
悲鳴は笑顔に
そんな一時の、いと楽しきこと
兎乃・零時
【迎櫻館】
海の上を…こんな魔術使えねぇかな…
ん?俺様は海中歩くこと在っても海上はねぇな(海中で呼吸できる子
おぅ、準備は良いぜ!…なんで櫻宵震えてんの?
おば、ひぃ、なんか出たー!?
は、はっは、はー!
おお俺は大丈夫だだぞ!(大丈夫ではない
腕―!?引きずり込まれるのやだぁ!(宝石髪が明滅してる
幽霊船は戦うときで十分だよぉ!!!
って、てかそうだよ二人とも気をつけろよここやべぇって鮫――?!
たた、食べられるもんか!負けるもんか!どどどっからでもかかってこいやぁ!!
……いやだからって鮫の上におばけ乗ってくるなよぉ!!
ゴースト鮫ライダーかよぉ!!
割と必死に走りながら
…皆といんのは、楽しいけどさ!!
(超怖い)
●ゴーストシャークライディング
波打つ海面を見下ろして、リル・ルリ(『櫻沫の匣舟』・f10762)は不思議そうに小首を傾げる。陸と海を分ける境界線、その水面の上を泳ぐことになるなんて。
「何だか、不思議な気持ちだ。……櫻と零時は?」
「ん? 俺様も海上歩いたことはねぇからなー」
「でも、海上散歩ができるなんてロマンチックじゃない?」
兎乃・零時(其は断崖を駆けあがるもの・f00283)と誘名・櫻宵(貪婪屠櫻・f02768)がそれぞれに答えて、広がる海を眺めた。これからここに、踏み込んで行くわけなのだが。
「さぁ、リル、零時! 準備はいいかしら!」
「おぅ、準備は良いぜ! ……なんで櫻宵震えてんの?」
「え? ……む、武者震いよっ」
「ああ、そうか……」
そんなに気合入れる必要ある? と零時は首を傾げる。たとえば仮に、泳ぐのが得意でないとしたら、海面に立てるとしてもその一歩目に躊躇が生まれるだろうが。まあ、これは飽くまで仮の話だ。
「あ、リル。しっかり私の手を握ってて頂戴」
「うん、大丈夫、僕が支えているよ!」
そんな様子に可愛いなぁと頬を緩めて、リルは櫻宵の手を取った。
意を決して足を踏み出せば、波打つ水面はまるで大地と変わらぬように、その身体を受け止める。地面を離れて海の上を、そのまま何歩か歩いて。
「……こんな魔術使えねぇかな……」
零時も思わずそんな風に呟く。彼方まで広がる海、空の星を映すそれが地続きとなれば、また普段とは違って感じられるだろう。
ほう、と溜息を吐いた櫻宵は、その手に触れる感触を確かめながら。
「やっぱりいざという時に頼りになるわね、人魚様は。この調子ならお化けが出ても大丈夫そうね」
「え?」
今なんて? にこにこと、緩んでいたリルの頬が強張る。同時に、零時の肩もびくりと震えた気がしたが。
「おばけ?! 水からおばけ出てくるの?!」
自然と、支えるように握っていた手を引き寄せながらリルが問う。
「ええ、多分……」
「零時、お化けだって! 君は大丈夫なの?」
「は、はっは、はー! な何を言ってるんだ、おお俺は大丈夫だだぞ!」
気持ち海風がひんやりとしてきた気がする。さらに言うなら、大分沖合まで歩いて来てしまった気がする。どちらにせよ、今から引き返すなんて言い出せないだろうが。
「その昔、この辺りを訪れた海賊が、嵐で全滅してしまったそうよ。もう島のすぐそばまで来ていたのにね。無念のあまり彼等は今でも――」
即興で語り始めた櫻宵が、ハッと顔を上げる。指差したそこには。
「海中から無数の腕が!? 引きずり込まれちゃうわー!」
「腕――!? 引きずり込まれるのやだぁ!」
「ぴいいぃー!!! やだやだ、櫻っ、助けてよ!」
水底から現れた青白い無数の手。何かを探すようにゆらゆらと蠢く指。それから逃れるように飛び退いた零時の髪が、動揺を示すように明滅する。一方のリルも、水面から距離を取ろうと飛び上がって、櫻宵にその尾を巻き付けていた。
「リル!? 飛び跳ねすぎよ、落ち着いて――あっ、あっちから幽霊船きてるわ」
「えー?!」
「幽霊船は戦うときだけで十分だよぉ!!」
海面からゆらめく無数の腕をかき分けて、骸骨の乗った朽ちかけた船が浮上してくる。カタカタと威嚇するように歯を鳴らしている骸骨に、混乱しながらも零時は前に出て。
「れ、零時!?」
「ふふ二人とも気をつけろよ、ここは俺様が何とかって鮫ェ――!?」
今度は幽霊船を粉々にしながら巨大鮫が現れた。ひぇ、と息を呑んだリルを抱きかかえている櫻宵も、それはちょっと、と悲鳴を上げる。
「ギャーー! 鮫?! ま、私むり!! 泳げないんだから!!!」
「早く逃げなきゃ食べられちゃうし、腕に捕まっちゃうよ!」
「たた、食べられるもんか! 負けるもんか! どどどっからでもかかってこいやぁ!!」
「零時、零時! 鮫の上にお化けもいる!!」
「は!? 何でいっぺんに来るんだよ! ゴースト鮫ライダーかよぉ!!」
「むりよ、むり! 撤退するわよ!!」
もう何が何だかわからなくなってきたが、イソギンチャクみたいな海面の手を踏みつけて、お化け達の乗った巨大鮫に追いかけられながら、三人はどこまでも続く海の上を駆けていく。
どっちが陸なんだっけ? それに、肝試しにしてはダイナミックすぎない? 割と本気で走っていると、悲鳴もやがて笑顔に変わって。
ふふ、と思わず綻んだ櫻宵の笑みに、リルもつられるように。
「あはは! でも、こういうのも楽しいね」
その声に振り向いた零時は、まだちょっと、上手く笑える気分ではないようだけど。
「まあ、楽しいには楽しいけどさあ!」
夜の海の追いかけっこは、もうしばらく続くだろう。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
エンジ・カラカ
【エレル大】
アイネ、ヨシュカ、お化けダー!
空中散歩を楽しむ楽しむ。
シーツを被っておく
お化けが来ても平気サ
ガタガタ音が聞こえてくるくる
コレの耳はとーってもイイ
目だってとーってもイイ
うんうん、コレは賢いカラなァ。
アァ……アッチに何かいたいた……。
二人とも行くゾー。おー!
シーツが暑いケド仕方ないのサ。
ギャーーーーー!デターーーー!!!
あ、コレだった。うんうん、鏡に映った自分に驚いた。
いけないいけない、尻尾が飛び出た出た
しまっとく。うんうん
ギャーーーーー!ホンモノダー!!!
今度はホンモノ、ホンモノ
髪の長いヤツが映ってた!アイネじゃない!
ヨシュカでもない!!!!
逃げろーーー!
二人を引き連れて走れー!
アイネ・ミリオーン
【エレル大】
空中散歩、初めて、です
わ、わ、安定感、が
ヨシュカ、エンジ、ちょ、ちょっと待ってください
コードも髪もふわふわ、浮いてしまって、その、絡まりそう……
ヨシュカ、網で鮫、捕まえるんです、か?
あっち、ですか?
幽霊さん、どんなでしょう、か
……っっ!?
び、びっくりした……!
エンジの声に、びっくり、した……!
エンジ、しっぽあったんです、ね
ひゃっ!?
え、エンジ、だからびっくりする、って……わぁぁあっ!?出た!
ほ、本物、……ヨシュカ逃げます!よ!早く!
って、エンジ、速い!
ふ、あは、もう……っ、あはははっ!
お、おっかしい……わ、笑いながら走る、の、疲れるんです、けれど!
もうっ、ついて来ないで、ください!
ヨシュカ・グナイゼナウ
【エレル大】
重たいわたしでも泳いでるみたいで無重力は良いですねえ
エンジさまのシーツとアイネさまコードもふわふわして
何だかクラゲみたいと虫取り網をもったわたしは思うのです
これはですね、宇宙鮫幽霊を捕まえる為の網です
成る程あちらに幽霊が?
行きましょう!おー!
叫び声に振り向いて網をさっと構えます
あはは、エンジさまでした。残念。や、尾っぽが出てます。あ、引っ込んだ
中々本物は出ませんね、むむむ
わー!!本物ですか!!アイネさま見てください!本物です!(きゃっきゃ)
……困りました、この網では捕まえられそうにありませんね
むむ、戦略的撤退です!あ、お待ちくださーい
あはは!ついて来る!
●きっとくる
元は宇宙船だったホテルの放つ力場によって、廊下に立った彼等の身体が浮き上がった。
「アイネ、ヨシュカ、お化けダー!」
「わ、わ、安定感、が」
お化け対策にシーツを被ってきたエンジ・カラカ(六月・f06959)の横で、初の空中浮遊に戸惑うアイネ・ミリオーン(人造エヴァンゲリウム・f24391)がふわふわと漂う。
「ちょ、ちょっと待ってください、コードも髪もふわふわ、浮いてしまって、その……」
「絡まるゾー」
「ああ、エンジ、今は近くに来ない、で」
そんな二人の様子を、ヨシュカ・グナイゼナウ(明星・f10678)は微笑ましいものを見る目で眺めていた。
微妙に既視感のある光景。ふわふわと踊る白い傘に、うねうねとした――ああ、水族館で見たクラゲに似ている、と気付いて、何だかにこにこしてしまう。
「ヨシュカ、その網、は?」
髪とコードを束ねながら、アイネがヨシュカの手元を指差す。そこに握られているのは、そう、虫取り網だ。
「これはですね、宇宙鮫幽霊を捕まえる為の網です」
「それで、鮫を」
「はい」
なるほど? わかったけどわからない、微妙な返しになってしまったが、質問を重ねる前に、シーツの塊の方から声がする。
「アァ……アッチに何かいたいた……」
その耳で、小さなガタガタ音を捉えたエンジは、自慢の目と耳でそれを追う。
「あっち、ですか?」
「幽霊ですかね」
その先に続くのは、何の変哲もないホテルの廊下だが。
「二人とも行くゾー。おー!」
「行きましょう! おー!」
「幽霊さん、どんなでしょう、か」
ふわふわと浮かぶシーツを先頭に、三人はホテルの奥へと進んで行った。
「重たいわたしでも泳いでるみたいで、無重力は良いですねえ」
「確かに、移動は楽、です」
ヨシュカの言葉にアイネが頷く、そんな二人に警戒を促しながら、エンジは慎重に歩みを進めていった。
それにしてもシーツにくるまっていると暑い。けれどこれは必要なことなのだから、仕方がない。だがついでに言うなら音も聴こえ辛いし、匂いも分かりにくいし、前だってよく見えない。これもう脱いだ方が良いのでは?
そう視線を上げたところで。
「ギャーーーーー! デターーーー!!!」
「……っっ!?」
「エンジさま!?」
エンジの挙げた叫び声に、アイネがびくりと肩を震わせて、ヨシュカが虫取り網を構えながらそちらを振り向く。
「あ、コレだった」
「……エンジさまでしたか」
「うんうん、鏡だった」
白いシーツを被ったまま鏡を前にした結果、自分の姿に驚いてしまったようだ。
「尻尾が出てますよ」
「アア……いけないいけない」
「あ、引っ込んだ」
「エンジ、しっぽあったんです、ね」
先程の拍子にシーツの下から飛び出していた黒い尻尾が、またシーツの中に消えていった。まあ、それよりも、とアイネはひとつ咳払いをして。
「エンジ、突然大声を出される、と……」
びっくりしますから、と注意を入れる。お化けよりも余程、そっちの方が心臓に悪い。
「ギャーーーーー! ホンモノダー!!!」
「え、エンジ、だからびっくりする、って……」
早速の大声に、アイネの眉根が寄せられるが。
「……ホンモノ?」
「今度はホンモノ、ホンモノ。髪の長いヤツが映ってた!」
もちろんアイネじゃないし、ヨシュカでもない。エンジの指差す方を、今度こそ確と見れば。
「わー!! 本物ですか!! アイネさま見てください! 鏡から這い出して来ましたよ!!」
「わぁぁあっ!? これが、本物……!」
真っ黒な海藻みたいな長い髪、そして土気色の肌をした女性が、鏡の向こうからこちらへと這い出てきている。そして前髪の間から覗くぎょろりとした、濁った瞳がアイネの方を向いた。
「えっ、何してるん、です? ブリッジ……?」
「わっ、そのまま近づいてきますよ」
先程からめちゃめちゃはしゃいだ様子のヨシュカだが、虫取り網をああでもないこうでもないと角度を変えて構えつつ。
「んー、この網では捕まえられそうにありませんねぇ」
「でしょう、ね」
「捕まるゾーー! 逃げろーーー!!」
「あっ、エンジ、速い!」
「戦略的撤退ですね! お待ちくださーい」
先頭を切って走り出したシーツを追って、二人もそちらへ駆け出した。
「あはは! ついて来ますよ!」
「ふ、あは、もう……っ、あはははっ!」
しかもあの姿勢なのに意外と速い、と楽しそうに言うヨシュカにつられて、アイネも笑いだしてしまう。
「お、おっかしい……わ、笑いながら走る、の、疲れるんです、けれど!」
もうついて来ないでください、と訴えても聞く様子はない。悲鳴というには余りにも明るい声を響かせながら、三人はホテルの廊下を駆け抜けていった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ロカジ・ミナイ
【エレル小】
肝試しって何!?聞いてないよ!
えっ!?パンフレットに!?はぁ、
…マジで?いや別に平気だけどお化けとか全然
……
僕はメトロと共に優雅に水中客室で無重力ゴロ寝をきめていたのだけど
ふと眺めてたパンフにデカデカと踊る肝試しの文字に気が付いた辺りで
お約束みたいに照明が落ちたり
頬を冷たい何か(多分風)が撫でていったりする
分かってる、分かってるよ、これは演出よ
騙すのも騙されるのも慣れてる僕は騙されたりしない
けどね、お化けってのは「そういう話」をしてるとこにやって来るって
言うじゃな、ああ出たぁぁ!!
今そこのあっちのとこになんかいたぁ!
うわぁぁ次はここのそっちのアレが勝手に!
ずっと傍にいてくれメトロ!
メトロ・トリー
【エレル小】
およ?およよ?ロカジくんがいつになく変な眉毛!
ハ!ぼくは察してしまったよ!
だってぼくは仕える使えるウサギだからね!
ロカジくんたら!大人の御本を読んでるんだワワワ
そ、そんな!ふたりっきりのお泊りだなんて!
ワンナイトラブ!?
ということでぼくはロカジくんとぷかのぷかぷかだよ
ち、ちら…もじ。あ、暗くなったご、ごくり。
ぎゃあ!
ぎゃあ!耳は引っ張っちゃだめだよロカジくん!
もっと誘い方ってのがあるじゃんエ?え、演出!?
ハ!愛を育む…?そ、そっかあ…大人だ!そういう話ってええ、っと
ロカジくんはピンクでかわいいと思うよ、え、騙してないよ!
え!?お化け!?…肝試しって
ラブロマンスじゃないのかい?!
●挟まるお化け
ここに至るは束の間の休暇。早々に客室に陣取ったロカジ・ミナイ(薬処路橈・f04128)とメトロ・トリー(時間ノイローゼ・f19399)は、部屋無重力状態にして、浮遊しながらのごろ寝を決め込んでいた。窓から見えるのは、光揺らめく海の中。泳ぐ魚達を見下ろしながら、優雅で怠惰で贅沢な時間が過ぎていく。
そんな中でロカジの様子を横目にして、おやおやおやとメトロは訝しんでいた。どこがどうとは言えないが、少なくとも眉毛がおかしい。
「――ハッ」
いつになく変な眉毛を眺めていると、使えるウサギで仕えるウサギなメトロは敏感にそれを察知した。
(「大人の御本を読んでるんだね、もう、ロカジくんたら!」)
そうならそうと言ってくれれば良いのに! 空気の読める賢いウサギは、ロカジに背を向けて目を瞑ってあげることにした。
あれ? でもこの状況って、もしかしてふたりっきり? しかもお泊り?
そんな思考を遮るように、ロカジの方からページを捲る音が聞こえた。
一方、メトロの気遣いなど知りもせず、ロカジは口元を引き攣らせていた。何の気なしにページを捲って広げたパンフレットには、でかでかと『肝試し』の文字が踊っている。――いやいやそんな話聞いてないからね、何かの間違いだろう。一度目を瞑って、もう一度開けば、『あなたの客室にもお化けが現れるかも!』などという文面までもが目に入り、頭を抱える。
まじで? ここも安全地帯ではない?
「メトロ……」
「何だいロカジくん」
どうしたものかと声をかければ、何故かもじもじした感じの声音で返事が来る。それに「なんで?」と疑問を差しはさむ間もなく、部屋の照明が、一度にばつんと落ちた。
「そんな……明かりを落とすなんて……!」
「大丈夫、これは演出。ただの演出だ……」
じり、と嫌な汗をかきながらロカジは言う。ただその緊張感は、メトロにも伝播したようで。
「演出……? そんな、ムードを盛り上げて、僕と愛を育もうって……?」
さすが大人だねロカジくん、それに僕も、ロカジくんはピンクでかわいいと思うよ。
「僕は、そんなに騙されたりしない……!」
「そんな! 嘘じゃないよロカジくん!」
うん? と暗闇に落ちた部屋の中で互いの気配を探る。どうにも話が、噛み合っていないような……。
「「さっきから何を言って――」」
と、そこで。
「うわっ、背中に何か触れた!?」
「ぎゃあ! 耳は引っ張っちゃだめだよロカジくん!」
もっと誘い方ってのがあるじゃんエ? とメトロがロカジを追求するが、ロカジの方はそれどころではない。
頬を撫でる冷たい気配、暗闇の中目を凝らせば、さっき手元にあったパンフレットが、部屋に置かれていたサボテンの鉢が、勝手に飛び回っているのがわかる。やはり何かいる、間違いない。確信と共にロカジは衝動に負けて、隣のメトロにしがみつくように。
「うわぁぁ! ずっと傍にいてくれメトロ!!」
「わあ! そんな情熱的に迫るなんてロカジくん大胆!! でもまずお髭は剃った方が良いよすっごいチクチクする!」
すっごいチクチクするそれを押し退けようとしたら手までチクチクしてきて、アレ違うなこれロカジくんじゃなくてサボテンだわ。
さっきまで部屋の隅に飾ってあったはずのサボテンを投げ捨てて、メトロは部屋の電気を点けた。すると部屋の反対側で抱き着いた姿勢のままのロカジが見えて。
うん? 何に抱き着いている? ぎゅっと目を瞑ったロカジの前には、やたらと顔色の悪い、ぎょろぎょろとした目の女が――。
「ろ、ロカジくん!!!! 誰よそのオンナ!!!!??」
「ええっ、知らないよ!! ほんとに誰!!!!!??」
不気味な笑みを浮かべたその影は、二人の悲鳴を背景に、すーっと消えていったという。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
千家・菊里
【花守】先日の客室へ
ええ、今宵はまた一味違った体験が出来そうで楽しみですねぇ
おや、伊織の目は節穴ですか?
それなら傍らにちゃんといるじゃないですか?
こわーい鮫の気配に、うるうると潤んだ上目遣いで君を見つめるとっても可愛らしい――亀さんが
あ、ぴよこさんならまた俺の懐で良い子は寝る時間に入っているのでご安心を
情けない悲鳴等あげて安眠妨害しちゃ駄目ですよ?
へたれなりに何とか頑張って亀さんに男を見せてあげてください
ところで伊織、後ろ後ろ
――早速血走った瞳で君に猛アタック一直線の肉食系女子🦈も迫ってますよ
いやぁ、もてもてですねぇ
これは間違いなく、伊織待望の刺激的な一夜になるのでは?(全く動じずにこにこ)
呉羽・伊織
【花守】
へぇ、こんなにがらりと雰囲気が変わるとはなぁ
こーいうトコで心細げに袖をぎゅっと掴んでくる女の子とか最高だよネ――なのに何でまたオレの前には肝が太過ぎる野郎しかいないんだろ(遠い目)
…いや、ウン、まぁ脅えた状態で放っとくのは忍びないし守るケドさ?そんな期待交じりの目で見られても困る!
(とりあえず亀を抱き上げガード――どさくさに紛れてまたあらぬ方向に誘導されないよう、自分の身の安全も然り気無く確保し)
ぴよこも安心してな、オレがついて…ってまたー!
失礼な!誰がへたれだ!
――は?え?
いやまってそんな強烈な肉食女子(鮫)とか刺激とか求めてないんだケドうわー!!(若干何かがズレた悲鳴)
●もてもて
「へぇ、こんなにがらりと雰囲気が変わるとはなぁ」
照明を抑えたホテルの廊下を見回して、呉羽・伊織(翳・f03578)が感心したような声を上げる。特に水中客室近辺の廊下は月の灯も差し込まず、光の届かない物陰に落ちる闇が、どこか不安を煽ってくる。
千家・菊里(隠逸花・f02716)もまた、その変化を認め、頷いて。
「ええ、今宵はまた一味違った体験が出来そうで楽しみですねぇ」
とはいえ……落ち着いた笑みを浮かべる彼の姿を一瞥して、伊織は溜息を一つ。
「こーいうトコで心細げに袖をぎゅっと掴んでくる女の子とか最高だよネ――なのに何でまたオレの前には肝が太過ぎる野郎しかいないんだろ」
もはや人生で何回言ってるのかわからない台詞を口にして、どこか届かぬ遠くを眺める。そんな彼を、菊里は「はいはい」と宥めながら。
「おや、伊織の目は節穴ですか? それなら傍らにちゃんといるじゃないですか? こわーい鮫の気配に、うるうると潤んだ上目遣いで君を見つめるとっても可愛らしい――亀さんが」
そうだね、知ってる。
「……まぁ脅えた状態で放っとくのは忍びないし守るケドさ? そんな期待交じりの目で見られても困る!」
視線をこちらに向けられない形で、ついでに妙な誘導をされないようにと、伊織は亀を抱き上げた。
「ぴよこも安心してな、オレがついて……」
「あ、ぴよこさんならまた俺の懐で良い子は寝る時間に入っているのでご安心を」
「ってまたー!」
「ほら、情けない悲鳴等あげて安眠妨害しちゃ駄目ですよ?」
肩を落とす伊織をにこにこと見遣ったまま、菊里は言う。
「へたれなりに何とか頑張って亀さんに男を見せてあげてください」
「失礼な! 誰がへたれだ!」
分かりやすく奮起してくれるのもいつも通り。だが、と菊里は廊下の向こうを指差した。
「ところで伊織、後ろ後ろ――早速血走った瞳で君に猛アタック一直線の肉食系女子も迫ってますよ」
「――は? え?」
振り向けば、空中を泳ぐサメが、伊織の後頭部目掛けて突っ込んできている。情熱的で、食べてしまいたいと言わんばかりの突進。とりあえずあれは雌ということにしておこう。
「いやまってそういうのは求めてないんだケドうわー!」
もてもてですねぇ、と微笑みながら、菊里は全力で逃げ回る伊織の悲鳴を聞き流した。
これならば、きっと今夜は間違いなく、伊織待望の刺激的な一夜になるのでは? 肝試しのためのホテル巡りは、まだまだ始まったばかりである。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
乱獅子・梓
【綾(f02235)と】
なるほど、この島にはそんな悲しい過去が……
って肝試しの為のストーリー設定かい
少ししんみりしてしまった俺の気持ちを返してほしい
ああ、そうだな
またあの贅沢な気分を味わえるなんてな
そこは素直に楽しみだ
水中客室は相変わらずの幻想的な美しさ
ガラスの外には色とりどりの魚が泳いでいる
お、前回見たサメと同じ奴だろうか?
ほら、焔、零
お前達よりもずっと大きいサメだぞ
仔竜達とほのぼのと眺めていたら……
!!!??
サ、サメがー!?ガラスをぶち破って侵入してきた!?
思わずユベコを放ちそうになったが
綾の言葉で落ち着く
ホラー系は平気な方だが
吃驚系は普通に心臓に悪い
焔と零もすっかり腰を抜かしてるな……
灰神楽・綾
【梓(f25851)と】
遊園地のお化け屋敷とかでも
細かい裏設定が考えられていたりするもんねぇ
それにしてもハミングバードにまた泊まれるなんてね
前に訪れた時の水中客室、すごく居心地が良かったなぁ
というわけで今回も水中客室をチョイス
偶然にも前回と全く同じ部屋で
何だかマイホームにでも帰ってきた気分
まぁもちろん俺の家はこんなに立派じゃないけどね
ベッドでゴロゴロしていたら
何やら梓の叫び声が…
ああなるほど、これも肝試しの演出の一つかぁ
割と冷静に分析して梓達を落ち着かせる
梓、ひっひっふーだよ
ほらよく見て見て
焔と零もすっかり怯えちゃってるし
気分転換に散歩でも行こうか
散歩の途中にも色んな仕掛けにあったとか何とか
●シャークアタック
「なるほど、この島にはそんな悲しい過去が……」
ぱら、とパンフレットのページを捲って、乱獅子・梓(白き焔は誰が為に・f25851)がしみじみ頷く。人に歴史ありとはよく言ったもの、この優雅なホテルにだって、紐解けばそんな血みどろの来歴が――。
「一応、そういう設定ってだけみたいだけどね」
「……」
パンフレットの裏側を覗いた綾の言葉に、梓はバツが悪そうに口元を歪めていた。
「なんだよ、少ししんみりしちまったのにな……」
「まあまあ、遊園地のお化け屋敷とかでもよくある事だよ」
肩の力を抜くように、と促す綾と共に、梓はまたホテルの水中階へと向かっていった。
「それにしても、ハミングバードにまた泊まれるなんてね」
「ああ、またあの贅沢な気分を味わえるなんてな」
そこは素直に楽しみだと梓が頷く。鍵を受け取って辿り着いたその客室は、偶然だろうか、先日泊まったのと全く同じ部屋だった。
青く輝く窓辺から、室内を照らす水紋と、色とりどりの魚達。幻想的な光景もまた相変わらずで。
「何だかマイホームにでも帰ってきた気分だよ」
「馴染みすぎだろ……」
まぁ、実際自宅がこんなに立派なわけではないけれど。綾の感想に、嘆息混じりに一言入れながら、梓は二匹の竜――焔と零を従えて窓辺による。宝石のような魚群にはしゃぐ竜達とは別に、梓はまた外を泳ぐサメと目が合った。
部屋も同じだが、このサメももしや前回見たのと同じ奴だろうか。
「ほら、焔、零、お前達よりもずっと大きいサメだぞ」
水族館に来た子連れの父親みたいだ、とベッドに寝転がりながら、綾が小さく微笑む。そんなのどかで平和な時間は、しかし梓の悲鳴によって断ち切られた。
「うおっ、サメがガラスをぶち破って侵入してきたッ!?」
めちゃくちゃである。分厚いはずのガラスを突き抜けて、先程の巨大鮫が鼻面を部屋の中へと突っ込んできている。
戦士の性として咄嗟に迎撃態勢に入った梓に、こちらは寝転がったままの綾が声をかけた。
「梓、ひっひっふーだよ」
「は? ラマーズ法?」
「落ち着いて。ほら、よく見てみてよ」
恐らくは深呼吸するように言っていたのだろうと理解して、梓はユーベルコードを引っ込めてそのサメを観察し始めた。
「……立体映像か」
「そういうこと」
「はた迷惑な話だな……」
ホラー系は余裕で受け流せる梓も、この手の吃驚系は同じようにはいかないようで。一息ついて周りを見れば、焔と零もすっかり腰を抜かしており……。
「すっかり怯えちゃってるね……気分転換に散歩でも行こうか」
また幽霊絡みで酷い目に遭わせてしまったような気がしないでもない。微妙な胸の痛みを覚えつつ、綾の提案に頷いて、一行は一度、客室の外へと歩き出した。
結局のところ、気分転換に向かった先でもゾンビや船幽霊に遭遇したり、鮫幽霊に追い掛け回されたりする事になるのだが、それはまた別のお話。
こうして、訪れた人それぞれに、色んな意味で胸の高鳴る休暇は過ぎていく。
大成功
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