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猫と海と花明かり

#グリードオーシャン #お祭り2020 #夏休み

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●夏の桜と猫の島
 満天の星空の下、紺碧の海に浮かぶとある島。
 咲き乱れる桜の花びらの舞は、訪れる者を歓迎し、目を楽しませてくれる。
 さらに、この島に訪れた者を迎えてくれるのは、桜の花びらだけではなくて。

 星明かりの中、舞う花びらを興味深々に追いかけるのは、アイスブルーの瞳。
 その瞳の主は、耳と尻尾をぴくぴくと動かしたかと思えば、ぴょこんと飛び跳ね宙を舞う。
 そうして。訪れたあなたの姿に気がつけば、嬉しそうな声で「にゃぁ」と鳴いた。

 ――ようこそ、ようこそ花猫島へ。
 ――私と、仲間と、一緒に遊びましょう?

●グリモアベースにて
「今年も、星見がてら猫と遊んでみない?」
 影見・輪(玻璃鏡・f13299)は、集まった猟兵たちへ向け、そう言葉を切り出した。
「場所はグリードオーシャン。 花猫島と呼ばれてる島になるよ」
 サクラミラージュから落ちてきたと言われ、幻朧桜の花を年中楽しむことができるその島には、人よりも猫の方が多く住み着いていて、訪れる者を歓迎してくれるのだという。
「猫たちはとても人懐っこいから、近づいても逃げない。 気が向いたら猫たちの方から近寄ってくれるんじゃないかな」
 星空の下、桜を眺めて猫たちと遊びながらのんびりと過ごすひと時は、日々の戦いの疲れをきっと癒やしてくれる。
「猫と遊ぶなら砂浜が中心になるかな。 桜の花を楽しむこともできるから、食べ物や飲み物を持ち込んで、夏の花見会とかするのもいいと思うよ」
 無人島ではないものの、夜のため住民と会うことはほとんどない。特別な店などもないから、花見を楽しむ場合は、必要なものを持ち込んだ方がよいだろう。
「花見とあわせて花火をするのもいいし、水着を持ってきて泳ぐのもいいと思うな」
 それ以外にも、夜の海らしい楽しみ方はいくつもあるから、いろいろ楽しんでもらえると嬉しいな、と輪はほほえんで。
「そんな感じで、思いっきり楽しんできてね。 それじゃ、行ってらっしゃい」


咲楽むすび
 初めましての方も、お世話になりました方もこんにちは。
 咲楽むすび(さくら・ー)と申します。
 オープニングをご覧いただき、ありがとうございます。

 このシナリオは既に猟兵達によってオブリビオンから解放された島となります。
 また、このシナリオは【日常】の章のみでオブリビオンとの戦闘が発生しないため、獲得EXP・WPが少なめとなります。

 戦争シナリオの最中ではありますが、夏休みのお誘いをさせていただきます。
 星空の下で、猫と戯れたり泳いだり花見や花火をしたりの、まったりほのぼのなシナリオになります。
 公共良俗に反しない範囲で自由に楽しんでいただけますと幸いです。

 それでは、もしご縁いただけましたらよろしくお願いいたします!
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第1章 日常 『猟兵達の夏休み』

POW   :    海で思いっきり遊ぶ

SPD   :    釣りや素潜りを楽しむ

WIZ   :    砂浜でセンスを発揮する

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

木常野・都月
海だー!
潮の香り!波の音!気持ちいい風!
去年は海に入るのにおっかなびっくりだったけど、今年の俺は一味違うぞ!

なにせ、サーフパンツがある!
仕立屋さんにお願いしたお気に入りだ!

チィは…そうか、月光浴しておいで。
チィはご飯も食べられるけど、1番は月光浴なんだよな。

俺は、浅瀬で小魚か、カニ、タコあたりを探して食べたい。
多分岩場あたりにいると思うんだよな。

取らなければ、砂浜に不貞寝して、寄ってきた猫と遊ぼう。

獲物を捕まえたら、そのまま…

いや、今年の俺は一味違う!
ダガーで魚を捌いて、狐火で軽く炙って食べたい。

あ、炙ってたら猫が寄ってきた。
[動物に話す]で食べますか?って聞きたい。
食べるならお裾分けしたい。




 海を初めて見たのは、一年前の、こんな夏の日の夜だった。
 何もかもが初めてづくしの中で、訪れた海。
 目の前に広がる海の大きさにとてもびっくりしたっけ。
 あれから一年。
 あの海から出発して、色んな任務と初めてを重ねて、今俺はここに居る。

「海だー!」

 月と星の光でキラキラと輝く、紺碧色の海を前に。
 木常野・都月(妖狐の精霊術士・f21384)は楽しそうな声を上げながら、波打ち際へと駆け寄った。
 寄せる波がさらりと都月の足を濡らせば、その波から逃れるように少し下がって、都月は笑った。
 鼻孔をくすぐる潮の香りと、寄せては返す穏やかな波の音、そして、頬をなでる気持ちいい風。
 それらが心地よく、楽しく感じられるのは、きっとあの時よりも都月が大人になったからかもしれない。
 海風を受け、黒の狐尻尾をぱたぱたと揺らして、都月が笑みを浮かべれば、
『チィー!』
 都月の肩に乗った月の精霊「チィ」もまた、嬉しそうに月色の尻尾をぱたぱたと揺らす。
「俺、去年は海に入るのにおっかなびっくりだったけど、今年の俺は一味違うぞ!」
『チィ?』
 こてん、と小首を傾げた仕草をするチィに。都月は頷いて、自身の着ていた水着を示した。
「なにせ、サーフパンツがある! 仕立屋さんにお願いしたお気に入りだ!」
 森を思わせる落ち着いた緑色をベースに、茶のベルトをアクセントにした、都月の魅力を最大限に引き出すデザインである。
 そんなお気に入りのサーフパンツを着て、素敵な相棒と共に海へ遊びに行くことになるなんて、一年前の自分は思ってもみなかった。
『チィ!』
 楽しそうな都月の様子に、チィも嬉しそうに一声鳴いて。それから、ぴょこんと都月の肩から飛び降りた。
 何だかそわそわと空を見上げたチィの様子に、都月も空を見上げる。
 星空の中に浮かぶ月の輝きを目にすれば、合点がいったと言うように、都月は目を細めてほほえんだ。
「チィは……そうか、月光浴しておいで」
 こんなに美しい月の夜なのだ。降り注ぐ月の光を浴びることは、月の精霊であるチィにとってはどんな食べ物よりも嬉しいごちそうだ。
 いつもお世話になっている相棒へ、癒やしの時間を提供する。
 こんなことができるのも、一年前の自分とは一味違うからこそだ。
『チィ!』
 都月の言葉に、目を輝かせて嬉しそうな声を上げたチィが、絶好の月光浴ポジションを探しに行くのを見送って。都月もまた、自分の食事を調達しようと、ぐるりと辺りを見渡した。
 輝く星の光と、どこからともなく現れ踊る桜の花びらの世界。
 その景色を楽しみながら、都月が歩き出せば、いつの間に一緒に歩いていた白猫が、都月の前をてってけと歩いていく。
 まるで案内役を買って出てくれたかのような白猫についていくと、辿り着いたのは、静かな波が寄せる、岩場だった。
「ここは浅瀬になってるんだな」
 ぽつ、とこぼれた都月の言葉に応えるように、にゃあんと白猫が鳴く。
 足場に注意しながら都月がそっと水面を覗き込めば。なるほど小さな魚がそこかしこに泳いでいて。
 こんな岩場ならカニもタコも捕れるかもしれない。
 この土地の専門家(?)がそう言うのなら、漁場としてはきっと間違いないのだろう。
 納得した都月は、星空の下での漁を開始する。
 ほどなくして、手頃な大きさの魚を何匹か捕まえれば、都月の表情に嬉しそうな色が浮かんだ。
 それでは早速、とばかりにそのまま食べようとしーー、
「……いや! 違うぞ俺!」
 思わず自分ツッコミをする都月。
 確かにそのままはおいしい。だが、それでは一年前の自分とそんなに変わりないではないか!
「今年の俺は一味違う!」
 そう、一年前と同じように楽しむのはもちろん悪いことではない。
 けれど、今年は食べることにも少し工夫をしてもよいと思うんだ。
 思い立ったら即実行とばかりに、都月は岩場の中でも座りやすく眺めの良い場所へ移動する。見渡せば、すぐ近くに桜の木々も見える、まさにベストポジションだ。
「よし、それじゃあ……」
 うん、と頷いて。都月は自分の鞄からダガーを取り出せば、慣れた手付きで魚をさばいていく。
 切り身をそのまま食べてもおいしいけれど、ここはもうひと工夫。
 そう考えれば、都月は自分の手の中に【狐火(キツネビ)】の炎を召喚する。
 戦闘の時とは違う、普段からすると幾分か小さい炎を器用に操作して、切り身の魚を炙っていく。
「火力はいつもより控えめに、だな」
 あくまでも表面のみ焼き色をつけることが重要だ。
 そうして、香ばしさと生の食感の味わいの両方を楽しむ。それが、魚を食べる上での大人の楽しみ方なのだ。
 そんなことを思いながら切り身を炙っていると、食欲をそそるいい匂いがしてきた。
「そろそろいいかな?」
 この匂いを前に、これ以上待ってなどいられない。
 まずはとばかりに、都月は炙った切り身をぱくりと一口。
「……!」
 すごい、そのまま食べるのとは違う、なんとも言えないおいしさが口の中を駆け巡っていく。
 思わず尻尾をパタパタとさせ。二口目を食べようとして、都月は気がついた。
「あ、さっきの猫」
 魚を炙る匂いにつられたのだろう。白猫が、いつの間にか都月の前に座っていた。
 白猫だけではない。白猫に並ぶように、茶トラの猫と、三毛猫もちょこんと座って、都月をじぃっと見つめている。
「ええと……」
 都月はぱちくりと瞬きする。これは一言聞いてみなければなるまい。
『食べますか?』
 ここは技能をフル活用。「動物と話す」で問いかけてみれば、
『にゃぁ! 狐のお兄さん、食べてもいいの? いいの?』
『食べてもいいなら食べたいにゃぁ!』
 茶トラと三毛が目を輝かせながら、はしゃいだ声でそう言った。
『こらこら、あんまりねだっちゃダメだよ。 ……でも、もしよかったら、一切れずつもらえると嬉しいねぇ』
 二匹をたしなめつつも、言葉を返す白猫に、都月はくすりとして。
『もちろんです。 よい場所へ案内してくれたお礼もあるし、おすそ分けさせてください』
 白猫に丁寧にそう言って、都月は炙った残りの魚を猫たちの前に差し出した。
 捕ってきた魚はまだたくさんある。
 それに、空は星と月が綺麗で、桜だって見頃だ。こういう時こそ、みんなでご飯を食べるのがきっとおいしい。
 これを食べたら、月光浴を楽しむチィと合流して、海遊びをしよう。
 そんなことを思いながら、都月は空を見上げる。
 満天の星空の下、薄紅色の花びらがひらりと空を舞っていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

灰神楽・綾
【梓(f25851)と】
人より猫の方が多いだなんて凄いよねぇ
島についた途端に聴こえてくる
小さく可愛らしい鳴き声が心地良い

…おや、早速足元に一匹の猫
梓のランタンの光に当てられて
茶トラの猫だということが分かった
不思議そうな顔で見上げてくるから
しゃがみこんで軽く手を差し出してみたら
猫の方からスリスリしてくれて
ふふ、本当に人懐っこくて可愛いね

その猫と軽く遊んだあとは浜辺へ
持ってきたレジャーシートと飲み物とつまみを
広げてお花見会の開始
あれ、匂いにつられたのか何匹か猫達が寄ってきた
君達もジャーキー食べる?
あらら、残念
ごめんねーと軽く顎の下を撫でつつ謝る
でも焔と零は人間のものも何でも食べちゃうよね?


乱獅子・梓
【綾(f02235)と】
島の名前に猫が入っているくらいだもんな
UDCアースに猫カフェという店があったが
ここならいつでもどこでもそんな感じだろうか

夜でも猫の色や柄がよく見えるように
優しい光のレトロなランタンを用意
何となくサクラミラージュの雰囲気にも合っている気がする
それを綾の足元に近づいてきた猫に向かってかざす
はは、余所者の俺達もちゃんと歓迎してもらえたようだな

さて、花見と洒落込むか!
夏の浜辺で桜を見ながら酒盛りだなんて
サクラミラージュ由来の島だからこそ出来る贅沢だな
あ、コラコラ!猫に人の食べ物をやるんじゃない!
焔と零は…ドラゴンだからな、いいんだ
マイペースにつまみを食べ漁る焔と零を横目で見つつ




 満天の星空に月が浮かび、桜の花びらがひらりひらりと舞っている。
 そんな美しい空の下、島に着いた灰神楽・綾(廃戦場の揚羽・f02235)と乱獅子・梓(白き焔は誰が為に・f25851)を迎えたのは、かわいらしい声で挨拶をするいくつもの影たちで。
「人より猫の方が多いだなんて凄いよねぇ」
 聴こえてくる鳴き声のかわいらしさは、耳に心地よく響いて。
 綾が赤レンズの奥の細い目を、いつもよりさらに細めて楽しそうに笑えば、梓も同意を示すように口元に笑みを浮かべる。
「島の名前に猫が入っているくらいだもんな」
 花猫島、などという名で呼ばれているくらいなのだ。
 ある意味、猫は島に住む人間よりも住民としての地位を確立しているのかもしれなかった。
「そういえば、UDCアースに猫カフェという店があったが、ここならいつでもどこでもそんな感じなのかもしれないな」
 UDCアースの猫カフェが、人の手によって作られた猫たちとの触れ合いの場であるならば、自由に猫と触れ合えるこの島は、ある意味天然の猫カフェとも言えるのかもしれない。
 それはいいねぇと柔らかく笑う綾が船から降りたところで、甘えたような鳴き声とともに影がすり寄る気配があって。
「……おや、早速足元に一匹」
 どんな子が来てくれたのか見てみたい気はするけれど、さすがにこの暗がりでは影ばかりでその姿はよく見えない。
 ほんの少し残念そうに肩をすくめて見せた綾に、
「まぁ、せっかくの猫たちだしな。 このまま鳴き声と影ばかりってのも面白くないだろ」
 そこでこれの出番ってな、と。梓が手にしていたランタンに光をともせば、たちまちレトロな雰囲気漂う、優しい光が闇夜を照らした。
「ほら、綾のところに来てくれた猫もこれで見えるだろ」
 言いながら、梓はランタンの光を綾の足元へ向けてかざす。
 空の星の瞬きはほんの少しだけ薄らいだけれど、その分足元の猫たちの姿形はよく見えて。
「ああ、本当だ。 君、そんな姿をしていたんだねぇ」
 突然向けられた光にきょとんと瞬きをしたのは、茶トラの毛並みにかぎしっぽを持った猫だった。
 身体はそれなりに大きいようにも見えるけれど、どことなく幼さを残した顔立ちをしているから、もしかしたらまだ子供なのかもしれない。
 不思議そうな色を覗かせながら見上げたゴールドの瞳が綾をとらえれば、綾はくすりとほほえんで。
「こんばんはで、初めましてだね。 ほんの少しの間、この島でお世話になるよ、よろしくね?」
 猫に目線を合わせるようにしゃがみこんだ綾が、言葉とともに手を差し出せば。猫は、にゃぁんとひと鳴きして、その手にスリスリと。
「はは、余所者の俺達もちゃんと歓迎してもらえたようだな」
 甘えるように綾にすり寄る猫の様子に、梓は楽しそうに笑った。
「ふふ、本当に人懐っこくて可愛いね」
 猫のあごの辺りを、綾が指先でちょいちょいとなでれば、猫はごろごろと嬉しそうに喉を鳴らした。
 梓の言うように、自分たちを歓迎してくれたというのなら。この友好的な子と、少しの間遊んでみるのも悪くないだろう。


 軽く猫と戯れた後は、本日のメインである花見の会場へ。
 ランタンの優しい明かりとともに。薄紅色の花びらに導かれるまま、歩く綾と梓が辿り着いたのは、白の砂浜。
 見渡せば、星がたゆたう紺碧の海。さらに向こう側には星明かりに照らされた桜の木々が静かに揺れていて。
「さて、花見と洒落込むか!」
 砂浜へ足を踏み入れ、うきうきとした声とともに準備を始める梓。
 綾もそんな梓を手伝い、持ってきたレジャーシートを広げ、ランタンをセット。それから、つまみを並べていく。
 花見イコール酒盛り。
 言葉にこそ出てはいないものの。並べられたつまみは、ビーフにポークにベーコンをはじめとしたジャーキーに、濃厚な味付けが施されたおつまみプレッツェル。さらには塩味のきいた各種ナッツにするめ、さきイカだ。きっと飲み物だってアルコール類に違いない。
「相も変わらずのチョイスだねぇ、梓」
 とあるパジャマパーティーでもこんなチョイスを披露していなかったっけか、とかぽつりとこぼれた綾の言葉などどこ吹く風だ。
「夏の浜辺で桜を見ながら酒盛りだなんて、サクラミラージュ由来の島だからこそ出来る贅沢だな」
 用意したヤツもサクラミラージュ風に小洒落たチョイスにしたしな、とか言いながら。梓が綾へ見せたのは瓶ビールだった。
 桜のマークが描かれたものをはじめ、確かにレトロな雰囲気の漂うラベルが貼られている。
「小瓶だからな。 そのままラッパ飲みするのがいい飲み方ってもんだぜ?」
 今日は特にな、と笑って、器用にコインを使って栓を抜けば、ほい、と綾へ手渡す梓。
「へぇ。 確かに夏の夜だし、グラスに注ぐよりも直接の方が喉ごしよさそうだよね」
 綾が乾杯とばかりに受け取った小瓶を掲げれば、梓も手にした小瓶を掲げる。
 カラン、とガラスのぶつかる澄んだ音。
 それから、喉を鳴らしてビールを飲む音が、ランタンの光で和らいだ闇の中へと溶けていって。
 スッキリとした喉ごしの良さに、口元からビール瓶を離せば、綾と梓は互いの顔を見合わせてくつくつと笑った。
「……あれ、」
 不意に近くでにゃぁん、という声が響けば、綾は周囲を見渡す。
 サバトラに、キジトラ、グレーに黒。
 匂いにつられてやってきたのだろう、何匹かの猫たちの色とりどりの瞳が、興味津々に綾と梓を見つめていて。
 思わずふ、と口元を緩めて、綾はビーフジャーキーに手を伸ばした。
「君達もジャーキー食べる?」
 一つつかめば、猫へと差し出そうとしーー、
「あ、コラコラ! 猫に人の食べ物をやるんじゃない!」
 とっさに放たれた梓の声に、思わずビクリ。
「え、ダメなんだ?」
「ああ。 特に人間用の酒のつまみは塩分が強いからな」
 猫用までは頭が回らなかったな、と苦笑しながら答える梓の言葉に、
「あらら、残念」
 綾も思わず苦笑いして。
「ごめんねー。 また今度機会あったら何か持ってくるからね」
 えー、くれないのー?とちょっぴり不満げな猫たちに、今日はこれで勘弁してね、と言いながら、猫たちの顎の下をなでて謝ってみたり。
「……でも焔と零は人間のものも何でも食べちゃうよね?」
 そういえば、と。ふと思いつけば、綾は梓のドラゴン二匹へと視線を向けた。
 梓の連れている仔ドラゴン、炎竜【焔(ホムラ)】と氷竜【零(レイ)】は、先ほどの猫を巡っての綾と梓のやりとりにもどこ吹く風で各種つまみをパクパクとやっている。
「焔と零は……ドラゴンだからな、いいんだ」
 一般の猫とドラゴンが同じってこともないだろう、と。マイペースを崩さない二匹の仔竜を横目で見ながら、しみじみとした口調で言う梓。
「……まぁ、もしダメって取り上げたとしても、この仔たちが訴えたら、梓、勝てないだろうしねぇ?」
「……いや、焔も零もドラゴンだから大丈夫だが、食べたらダメなものの場合は、俺だってしっかりとだな」
 自分たちのことが話題になっていると気がつけば、ぱちくりと瞬きをしながら梓を見つめる焔と零。
『キュー?』
『ガウ?』
 ダメなの?と問いかけるように一声鳴いたと思えば、こてんと首を傾げた二匹の、つぶらな瞳を前にして。
「……いや、今はダメとかじゃないからな? 焔も零もどんどん食べろ」
 二匹の頭をなでながら、つまみを勧める梓。
「ふふ、親ばかもいいけど、ほどほどにね?」
 そんな梓を眺めて。綾は傍らで拗ねたようにころんと転がった黒猫をなでながら、くすくすと笑ったのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

シビラ・レーヴェンス
露(f19223)と。
黒のワンピース。コルク底のサンダル。

今年は水着を着て浜辺で何かするのは十分だ。
だからこの島では防波堤を散策しようと思う。
…猫が多いと聞いていたが確かに多いな…。
歩き疲れたら防波堤の縁に腰掛け海を眺めよう。
気が付いたら私の両隣や脚と膝上に大量の猫が。
手にすりつく子まで…人懐っこいのも話通りだ。
私の何が好かれる要因なのかいまいちわからん。
がこれほど好かれるとはもの好きな子が多いのか?
「私が怖くはないのか? …ん?」
撫でて聞く。納得のいく返事はないだろう。

背後から何時もの声。
そういえば露と共に来たんだった。
露から非難の声。
「猫なら君にも寄って来ているだろう?」
…避難は猫にか…。


神坂・露
レーちゃん(f14377)と。
白色のワンピースにビーチサンダル。

防波堤を一緒にお散歩。
えへ♪服もお揃いにし…あれ?
レーちゃんどこ?むぅ~。一人で…。
探して漸く見つけたらあー!ずるいわずるい!!
「レーちゃんの膝に乗っかって、撫でられてるわ!」
最近やっと頭を撫でてくれるようになってきたのに。
あたしだってまだまだ膝に乗っかったことないのに。
あー!!頬すりまで…それは…まだなのにぃ~。
いいなー。いいないいなー…あたしもされたいわ~。
って思いながら寄ってきた猫さん達を撫でたり抱っこ。
レーちゃんの隣にいた猫さん抱き上げて隣に座って…。
「…あたしも頬すりすりしたいわ」
っていったら呆れられたわ。むぅ!むう!!




 シビラ・レーヴェンス(ちんちくりんダンピール・f14377)は、島の防波堤をのんびりと歩いていた。
 薄紅色の花びらは、優しく吹いてくる夜風に乗って、シビラの髪や頬をなで、身にまとう黒のワンピースをひらりと揺らしていく。
(「今年は水着を着て浜辺で何かするのは十分だ」)
 コルク底のサンダルで足元の防波堤をコツンと鳴らして歩きながら、シビラは今年の夏を振り返っていた。
 気がつけばもう夏も後半戦。
 海に出かける機会にも恵まれ、水着を着る機会も多かったように思う。
 だが、海は何も浜辺であれこれするだけのものでもない。
 だから今回は、こうして星と桜を愛でながら、島の中を散策しているのだ。
 最初は真っ暗だと思っていた視界も、闇に慣れてしまえば思いの外気にならない。
 サクラミラージュから落ちてきた島だからか、桜以外にもそこかしこに大正ロマンの雰囲気があって、歩いているだけでもなかなか楽しい。
 そして、この島のもう一つの主役の存在も。
「……猫が多いと聞いていたが確かに多いな……」
 島の呼び名に猫が入っているくらいだから、それなりにはいるだろうとは思っていたけれど。
 そうはいっても、行く先々に一匹以上の猫がいる光景は、なんだか不思議な感じだ。
「人間の住民もいるとは聞いているが、実は猫しか住んでいないと言われても納得してしまうな、これは」
 しみじみとそう言ってから。休憩とばかりにシビラは防波堤の縁に腰掛け、海を見つめた。
 見下ろす海は、紺碧色。ほのかに明るい星空を水面に映して、まるで宝石箱のようにキラキラと輝いている。
「花に星か……確かに綺麗ではあるな」
 笑むように金の瞳を細めて海を見つめていたシビラは、やがて膝の上にもふりとした何かが乗っかってきたことに気がついた。
「む?」
 思わず視線を向ければ、シビラを見上げ、見つめる金の瞳と目が合う。
「……もしや君は黒猫か?」
 膝上の金の瞳の主へ問いかければ、にゃあという、のんびりとした鳴き声が返ってきた。
 無下にどかすのもな、と思ったのもつかの間。
 そういえば、自分の両脇にも、もふもふとした感触があるような気がして、シビラがぐるりと自分の周りを見渡せば、そこかしこに猫猫猫。
「……いつの間に……」
 びっくりするやら呆れるやらの声とともに、シビラがふぅ、と息をつけば、傍らの猫がにゃーんと鳴いて、シビラへとそっとすり寄ってきた。
 話に聞いた通りの人懐っこさを目の当たりにして、シビラはふ、と瞳を細める。
 確かにこれは愛らしい。
(「しかし、これほどまでに好かれる要因は、私にはないと思うのだが」)
 自分の愛想があまりよろしくないことは、他ならぬシビラ自身が一番良く知っているから、どうにも腑に落ちない。
 もの好きな子でも多いのだろうか。
 そんなことを思いながら、シビラは相変わらず膝の上に乗っかったまま動かない黒猫の頭をそっとなでて。
「私が怖くはないのか? ……ん?」
 にゃぁん。ゴロゴロと喉を鳴らす音とともに黒猫は甘えるようにそう鳴いた。
 その仕草は確かにかわいいが、その答えはシビラにとって到底納得のいくようなものでもない。
 そんな風に、シビラが猫の頭をなでていると。

「あー! ずるいわずるい!!」

 背中から聞こえてきた、聞き覚えのある声に、シビラはようやく思い出す。
「そういえば露と共に来たんだった」


「レーちゃんどこ〜?」
 真っ白なワンピースを身にまとい、ビーチサンダルをパタパタとさせながら、神坂・露(親友まっしぐら仔犬娘・f19223)は、共にこの島へ訪れた親友を探してさまよっていた。
 最初は、一緒に防波堤を散歩していたのだ。
 星空の下、桜舞う世界で大好きな親友と散歩だなんて、まさにデートそのものではないか。
 だから、色違いながら、おそろいの服まで用意していたというのに!
『えへ♪ 服もお揃いにしちゃった♪』
 とか言いながらうきうきしてたというのに!
 まさかはぐれてしまうなんて!
 そりゃあ、確かに親友の黒いワンピースは、この夜の闇の中では気をつけなければ見失ってしまうだろうと思っていたけれど。
「こんなことなら、レーちゃんに白いワンピースを着てもらうんだったわ!」
 そしたら暗闇でもすぐに見つけられたのに……などと言ってみたりする。
 とはいえ、親友が黒以外の服に袖を通すことなんてないだろうことは、もちろん知っているから、これはただの悔しい叫びで終わってしまうのだけれども。
 そんな風にぶつぶつと独り言を言いながら、露が親友を探しさまよい歩くこと、しばらくの後。

「あー! ずるいわずるい!!」

 暗がりの中、ようやく見つけた親友らしき背中を見つけた露は、思わず叫んでしまった。
 だって、これは酷いではないか!
 ビーチサンダルをパタパタとさせながら、露は走って親友の背中へと近づいて。
 おもむろに、その膝の上で寝そべる黒猫へ向けて声を放った。

「レーちゃんの膝に乗っかって、撫でられてるわ!」

 思わずかくりと肩の力を落とすシビラ。
「何やら非難めいた声が聞こえたと思えば……猫になのか」
 非難するポイントは他にもあるだろうに。
 例えばうっかり露の存在を忘れて一人散策を楽しんで、あまつさえ猫をなでてまったり過ごしていた私に対してとか。
 一応悪いことをしてしまったかもという自覚はさすがにあったらしいシビラは、そっとため息をついて。
「……あー、猫なら君にも寄って来ているだろう?」
 表情や声色にこそ出てはいないものの、極力優しい言葉を選びながら、露へと声をかけるシビラ。
「むぅぅ、そうだけど〜」
 そんなシビラの言葉に、不満そうに頬を膨らませながら、すり寄ってきた猫たちを、なでなでとする露。
 それでもその内心は不満だらけだ。
(「最近やっと頭を撫でてくれるようになってきたのに」)
 それなのに、そんなさらっと頭をなでなでされちゃって。
(「あたしだってまだまだ膝に乗っかったことないのに……!」)
 それなのに、そんなに簡単に膝の上に乗ってくれちゃって。
(「あー!! 頬すりまで……それは……まだなのにぃ~」)
 それなのに、そんなあっさりと頬すりまでしちゃうの〜?!
 ……などなど。
 ちなみにすべて、シビラではなく、猫に対しての非難である。もう半分以上嫉妬だ。
(「いいなー。 いいないいなー……あたしもされたいわ~」)
 猫たちをなでたり抱き上げたりしながら、ちらっちらっと視線をシビラと猫たちへ向ける露。
 内心うらやましくて仕方がなかったから、シビラの隣ですりすりとすり寄っていたシャム猫を、ひょいと抱き上げてそっとどいてもらえば、露はシビラの隣に座った。
「……ね、レーちゃん、あたしも頬すりすりしたいわ」
 シビラの肩に寄りかかりながら、そっと希望を伝えてみる露。
 猫さんたちにもしてくれてるんだもの、あたしだってちょっとくらい……なーんて、淡い期待を寄せてみたりしたのに。
「……まったく君は……」
 期待に反して返ってきたのは、シビラの呆れた声とため息。
「むぅ! むう!! レーちゃん、あたしにももうちょっと優しくしてぇ〜」
 シビラにぴとーっとくっついて叫ぶ露の甘えた声が、桜舞う星空の中、賑やかに響き渡ったのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

オズ・ケストナー
紅(f01176)と

ねこさんがいっぱいだっ

笑顔で手を取ったら
星と桜の世界はぜんぶわたしたちのあそび場
ね、クレナイ。砂浜にいこっ

鞄の中にはたくさんのおかし
夏のお花見ははじめてだからはりきっちゃった
広げたレジャーシートにぴょんと飛び乗ってきた一番乗りは
ねこさん
顔見合わせて笑って

うん、クレナイっ
頷いてショータイム

光る猫じゃらしを出して
ぴょんと跳ねさせれば流れ星のよう
いっしょにあそぼうっ

わっ
猫じゃらしをキャッチすれば猫の勢いに後ろに倒れて
ぷにっと頬を押されたりして
ふへはい(クレナイ)

クレナイが笑えばつられて笑顔
猫を撫でながら

一面の星と桜
クレナイとねこさんといっしょに空に浮いてるみたいで

うん、きれいだね


朧・紅
オズさん(f01136)と紅で

オズさんっ
ねこ、ねこさんいっぱーい!

思わず手を差し出して
沢山の猫に誘われて桜の中オズさんと躍る様に駆け行けば
瞳に桜舞う夏星の砂浜

夏なのに、桜満開なの
摩訶不思議ですてきっ

すごーい!
僕もっ
夏ですから海色ソーダゼリーを…
うやっ一番乗りは君ですか
ふふと笑って猫さんを一撫で
ねこさんのもあるですよぅ
猫用あげて一緒にパクリ

肉球でつつかれ見上げる眸にあそぼうの文字
オズさん
目配せすればショータイム!

二人の流れ星にじゃれる猫
悪戯思いついて
猫さんミサイル~♪
オズさんへと光猫じゃらしを放ればぴょーんと殺到する猫
ぅや~♪
隣へ倒れ込み一緒に猫まみれ
もふほわですぅ
お空は星が煌いて桜舞う

きれー…




 見上げた空にはたくさんのキラキラ星。
 薄紅色の花びらが、どこからともなく、ふわりゆらり。
 そんな星と桜の世界をゆらり歩くは、たくさんのもふもふたち。

「オズさんっ、ねこ、ねこさんいっぱーい!」
 アメジスト色の瞳をキラキラと輝かせながら、朧・紅(朧と紅・f01176)が、思わず手を差し出したなら、
「ねこさんがいっぱいだっ」
 その名を呼ばれた、オズ・ケストナー(Ein Kinderspiel・f01136)も、キトンブルーの瞳をキラキラとさせて、笑顔で紅の手を取った。
「星と桜の世界はぜんぶわたしたちのあそび場」
 目の前に広がる世界は、まるでおもちゃ箱をひっくり返した時のような、ワクワクであふれている。
「ね、クレナイ。 砂浜にいこっ」
 キラリ、といたずらを思いついた子供のようにオズの笑顔が輝けば、集まってきていた猫たちも、誘うようににゃあんと鳴いて。
「うん、いこう、オズさん!」
 魅力的なもふもふからの誘いを受けない理由など、もちろんなくて。
 ぴょん、と跳ねれば、紅は踊るようにオズの手を引いた。
 桜舞う星の下、二人頷き、走り出したのはほぼ同時。
 駆け出して向かった先に広がるのは、桜舞う夏星の砂浜で。
「夏なのに、桜満開なの! 摩訶不思議ですてきっ」
 空を、海を、砂浜を。ぐるぅりと見渡しながら、わぁ、と紅が声を上げれば、オズもまた、ワクワクいっぱいの表情を浮かべ、楽しそうに笑った。


 星と桜と猫を愛でる、夏のお花見の楽しみは、その準備の時間からスタートしていて。
「夏のお花見ははじめてだからはりきっちゃった」
 はにかみながらもほほえんで、オズは、持ってきた鞄を開けて見せる。
 ちょっぴり大きめの鞄の中から顔を覗かせたのは、たくさんのお菓子たち。
 チョコレートのかかったプレッツェルに、色とりどりのロリポップキャンディー、ふわふわマシュマロ。
 ころんとかわいらしいマカロンやカップケーキがあると思えば、桜の花や星、猫の形をしたアイシングクッキーまで。
「すごーい!」
 宝の山を見るように鞄の中のお菓子たちを見つめ、瞳を輝かせた紅に、オズはほほえみながら、持ってきたレジャーシートを広げていく。
「僕もっ! 夏ですから海色ソーダゼリーを……」
 持ってきたんですよぅ、と。
 嬉しそうにそう言いながら、紅が振り向いたその時。

 ぴょこん。

「「あっ」」

 オズが広げたレジャーシートに飛び乗って、一番乗りを決め込んだのは一匹のシャム猫。

「「ねこさん」」
 思わず声まで重なれば、紅とオズは、互いの顔を見合わせくすくす。

「うやっ一番乗りは君ですか」
 真ん中に陣取り、ミントブルーの瞳をぱちくりとさせているシャム猫に、紅はふふと笑ってその頭を優しくひとなでする。
「ねこさんのもあるですよぅ」
 持ってきたお菓子を、オズと一緒にレジャーシートいっぱいに広げながら、紅がシャム猫の目の前に差し出したのは、猫用のお菓子。
 勢いよくぱっくりとするシャム猫に、ふふと笑った紅は、すり寄ってくる他の猫たちにも、うりゃうりゃと猫用お菓子を振る舞っていく。
 それから、オズと一緒に、持参した海色ソーダゼリーをぱくり。
「クレナイ、海のゼリー、しゅわってしておいしいっ」
 しゅわりと口に広がる食感に、オズが楽しそうに笑えば、紅はくすぐったそうに笑みを返す。
 そうしてオズが持ってきたマシュマロへ手を伸ばせば、ソーダゼリーと一緒に、もう一度ぱくり。
「ぅや〜、オズさんのお菓子も、ゼリーと最高にあうのです!」
 口の中に広がるふわしゅわ食感に、紅がきゃあきゃあしていると。
 おもむろに紅の手をぺちぺちとするのは、やわらかな肉球の感触。
 見れば、小首を傾げ、くりっとした瞳で紅を見上げる黒猫の姿があって。
 目は口ほどに物を言うとはよく言ったもの。その金の瞳にありありと映る「あそぼう」の文字を見て取れば、
「オズさん」
 アメジスト色の瞳をきゅぴんと光らせ、目配せする先はキトンブルーの瞳の主。
「うん、クレナイっ」
 キトンブルーの瞳にわくわくとした輝きが宿れば、二人でこくりと頷き合う。

「「レッツ、ショータイム!」」

 重なる声とともに、互いのユーベルコードから生み出したのは、キラキラの光を放つ、ふわふわな猫じゃらし。
 ぴょん、と跳ねさせ、オズが流れ星を作り出せば、オズの周りでのんびりしていた猫たちの視線が、一斉に集中した。
「ねこさん、いっしょにあそぼうっ」
 ぴょん、ぴょん、ぴょこん。
 リズムよく動かすオズの手の中で生まれたのは、いくつもの流れ星。
 星をつかもうと、じゃれて飛び跳ねる猫たちは、さながらダンスを踊るかのよう。
 そんな猫たちの愛らしさにほほえみながら、オズも飛び跳ね、猫たちと共に流れ星のダンスを踊る。
 紅もまた、オズと同じく流れ星を操って、戯れ踊る猫たちと遊びながら、ぴょん、ぴょん、くるりんと。
 そうして、同じように猫と遊ぶオズを見やれば、
(「あ♪」)
 ひらめいたいたずらに、きゅぴんとアメジストの瞳を光らせた。

「猫さんミサイル~♪」

 思いついたら即実行とばかりに、オズへ向けて、ぽーんと光猫じゃらしを放る紅。

「わっ」

 飛んできた光猫じゃらしを、オズが反射的にキャッチすれば、

 にゃぁぁん♪

 紅の光猫じゃらしを追ってぴょーんと跳んできた猫たちが、勢いよくオズへと体当たり。

「わわわっ」

 猫たちの勢いに押されてぽふん、と後ろに倒れ込んだオズへ、にゃふにゃふ殺到する猫たち。

「ぅや~♪」

 ふわふわしっぽに、いくつものやわらかい肉球が、オズを巻き込み、もみくちゃにしていくのを見れば、すかさず紅は満面の笑みでオズの隣へ倒れ込んだ。

 もふもふ、ぷにぷに、ぺたん、ぺろりん、ざらり。

 もふもふしっぽに、前足のぷにぷに肉球のぺたん攻撃。
 ついでにぺろんと頬や額をなめられれば、猫特有のざらりとした舌の感触が、オズと紅の肌をくすぐって。

「ふへはい(クレナイ)」

 肉球ぷにりの攻撃を頬に受けながら、オズが紅へささやかな抗議めいて名前を呼べば、

「ふふ、もふほわですぅ♪」

 ものともせずといった様子で紅は楽しそうに笑った。
 そんな紅の笑みに、オズもつられて笑顔になる。

 そうして、猫まみれになりながら、オズと紅は、寝転がったまま空を見上げる。
 視界に広がるのは、空を埋め尽くす星々と、舞う桜の花びらたち。

(「クレナイとねこさんといっしょに空に浮いてるみたい」)

 幻想的な光景に、オズがほぅ、と感嘆の息を漏らせば、同じ吐息は、隣からも聴こえてきて。

「きれー……」
「うん、きれいだね」

 同じ気持ちを共有しあえば、顔を見合わせ、二人はくすくすと笑った。

 星と桜の世界。
 今だけは。このきれいな世界は、ぜんぶわたしたちのもの。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

旭・まどか
あきら(f26138)と

猫は大きな音と追われる事が嫌いだそうだよ
――とはいえ、此処の子たちには関係無いみたいだね

賑やかな君の声を気にも留めず寄って来る子を見留め
空を眺めようと思っていたら膝の上に感じる重み

気付くと乗っていた白い子に瞬くも誘われる侭に背を撫で
はたり、はたり。揺れる尾に正解を知る

いのちあるぬくもりに暑さは感じれど
潮風があるからか街中で感じる程の不快感は無い

持っていたアイスに手を伸ばそうとする悪戯っ子を片手で制して
君は、こっち
代わりに君たち用のおやつをあげよう

静かな夜空に猫たちの鳴き声
夏の夜空に桜花舞う違和は何処かへ消えて
季節外れの花見も、悪く無い
いつもとは違い、観客の居る星見も、ね


天音・亮
まどか(f18469)

ひゃー!
星空に桜!星と一緒に夜桜なんて贅沢だねまどか!

えっ
思わず口元を手で覆うけれど、構わず近寄ってきた猫達にほっと一安心
ふふ、まどかのお膝も占領されちゃったね?
隣に座れば茶虎の猫が足元に手を置き一鳴きするから
遊ぶように喉元を撫でるところんと仰向け

あはは、何?ここも撫でて欲しいの?
それとも遊んでほしいのかな?
擽る様に胸元に指先を伸ばす
茶色の前脚がてしりと戯れるのが楽しくてうりゃうりゃと夢中

見上げるきみの横顔をなぞって視線は空を見上げる
星空と桜と猫とアイス
ふふ、うんと贅沢な夏の過ごし方だね
静寂を好むきみが隣を許してくれるのが嬉しくて
またひとつ笑顔を浮かべ
一緒に空を見上げた




 視界に広がるのは、満天の星を映した紺碧の海と、桜の彩り。
「ひゃー!」
 はしゃいだ声を、歌うように星空へ響かせたかと思えば。
 空と海へ向けていた視線を、振り返って白の砂浜へと移して、天音・亮(手をのばそう・f26138)は、楽しそうに声を立てて笑った。
「星空に桜! 星と一緒に夜桜なんて贅沢だねまどか!」
 夏の日差しのような明るい笑顔が向けられたのは、砂浜に座って静かに海を眺めていた少年だった。
 名を呼ばれば、少年ーー旭・まどか(MementoMori・f18469)は、わずかに首をかしげて見せるも。どこか大人びた、バラを思わせるピンク色の瞳を細めて、そっと口を開いた。
「猫は大きな音と追われる事が嫌いだそうだよ」
「えっ」
 亮は思わず口元を手で覆う。
 気持ちのままに感動を声に紡いだことを、ほんの少し後悔してしまったけれど。

 にゃあん。

「――とはいえ、此処の子たちには関係無いみたいだね」
 鳴き声とともに亮へ近寄ってくる数匹の猫たちを見留めれば、まどかはふ、とその口の端を上げて小さく笑った。
 話には聞いていたが、本当に怖がらない猫たち。
 この島は、よほど安全なのだろうと素直な感想を抱きながら、その視線を空へ向けようとしたまどかは、ふいに自身の膝の上にある重さに気がついた。
「ふふ、まどかのお膝も占領されちゃったね?」
 まどかを見やって、小さく笑った亮の言葉に。ようやくといった様子で、まどかは自分の膝の上にのっている存在へと視線を向けた。
 星明かりの中に浮かぶのは、真っ白な姿を持つ猫。
 猫は、まどかの膝の上で気持ちよさげに丸まっている。
「……」
 まどかは思わず瞬き一つ。
 この島がどんなに安全でも、はたしてこんなに無防備でよいものか。
 それでも、その尻尾は何かを誘うようにはたりと揺れているものだから、まどかは、誘われるままにその丸まった白の背を、頭をそっとなでてやる。
 はたりはたりと揺れるしっぽとともに、ごろごろと猫の喉が鳴る。
 その様子に、正解を知る。
 ーーどうやらこの子は、頭と背中をなでられるのが好きらしい。
「まどかにすっかり心許してるみたいだよね?」
 くすりと笑った亮の言葉に、猫をなでる手を止めることはしないまま、まどかは頷いて見せる。
「ん……少し暑いけどね」
 ぽつ、と素直な感想が思わずこぼれてしまったけれど。
 夜の涼しさとあわせ、潮風が吹いているからだろうか。この、いのちあるぬくもりの暑さに、街中で感じるほどの不快感はない。

 そんな白猫とまどかのやりとりに、ふふと笑った亮にも、猫からの誘いはやってくる。
 まどかの隣に座った亮が、ふいに足元に感じたのは、ぷにりとした感触。
 思わず自身の足元へと視線をやれば、構って欲しいと言わんばかりににゃあと鳴く茶トラの猫。
「ん? なあに?」
 問いかけとともに、うりゃ、と亮が喉元をなでたなら。茶トラは、亮の前にころんと寝転び、仰向けになる。
「あはは、何? ここも撫でて欲しいの?」
 外を歩く猫が、無防備に仰向けに寝転ぶ姿など見たことがない。
「それとも遊んでほしいのかな?」
 どっちかな?と。問いかけながら、亮がネイルで彩られた指先を、茶トラの胸元へ、くすぐるように伸ばしたならば。
 茶色の前足が、そんな魔の手をてしりと弾く。
「おっ」
 これは遊びだなと判断すれば、さらに亮は別方向から指伸ばし。
 やはりてしりと弾かれれば、ここからはもうじゃれあいの攻防戦の始まりだ。
 負けないぞと言わんばかりに、前足で軽く猫パンチを仕掛けてくる茶トラ。
 その動きのかわいらしさに、亮も夢中になってうりゃうりゃと。

 そんな風に隣で繰り広げられる、亮と茶トラのたわむれを、持参したアイスを手に、観戦を決め込んでいたまどか。
「……おっと、」
 まどかのアイスに興味を持ったらしい三毛猫が、じゃれようと前足を伸ばすのに気がつけば、
「ダメだよ、悪戯っ子」
 もう片方の手でそっと制してから、まどかは自身の持ち物から、小さな包みを取り出した。
「君は、こっち。 代わりに君たち用のおやつをあげよう」
 おやつ、という言葉の意味を知っているのか。まどかのアイスへちょっかいを出すのを止めて、三毛猫は、ちょうだい、と言わんばかりににゃあと鳴く。
 そんな三毛猫におやつをやり、それから隣の亮へ向けて、まどかはアイスを手渡した。
「これは、あきらの分だよ」
「ありがと、まどか」
 アイスを受け取り礼を言って、亮は早速とばかりに一口目を口に入れる。
 甘くひんやりとしたバニラと、パリッとしたチョコの食感が、口の中で溶けていくのを感じれば、知らず口元には笑みが浮かんで。
 ちらと隣を見れば、空を見上げる、まどかの端正な横顔。
 その横顔をなぞって、亮は視線を空へと向けた。
 空いっぱいの星たちが、こぼれ落ちそうなほど輝く中を、薄紅色の花びらが舞う光景は、やっぱりとても贅沢だと思う。
 何より、静寂を好むまどかが、隣を許してくれるのが嬉しくて。
「星空と桜と猫とアイス。 ふふ、うんと贅沢な夏の過ごし方だね」
 思ったままをそのまま口にすれば、亮の顔に笑みが浮かぶ。
 そんな亮の言葉に、そうだねと。空を見上げたまま、まどかは頷いた。
 静かな夜空に聴こえてくる猫たちの鳴き声はどこか心地よく響く。
 最初は感じていた、夏の夜空に桜花舞う違和も、いつの間にかどこかへと消えていて。
「季節外れの花見も、悪く無い」
 満天の星々と、舞う桜の花びらを眺めながら、まどかはピンク色の瞳を細めて、柔らかくほほえんだ。
「いつもとは違い、観客の居る星見も、ね」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

雛瑠璃・優歌
(水着着用)
【永歌】
何だか親しみを感じる
あたしが暮らしてるのがサクラミラージュだからかな
潮の香りはちょっと新鮮
そして…
「ほ、本当にいっぱいいるんだね、猫…」
うーん、触った事無い訳じゃないし可愛いとは思うんだけど
「うちのお猫様(異母弟の事)と一緒にしちゃだめだし…」(←犬っぽい方)
どうしようかなと思いながら砂浜に座ったら猫の方から来てくれた
「ほぇ、こ、こんにちは…?」
っていうか1匹じゃない…!?
「ひゃ、くすぐった…あっ、逢海さん!」
助けてくださーい><
「あ、あの、すっごく懐こい子たちなのでこう…」
あたしの隣にでも座って頭とか体とか撫でてあげたらいいと思います…

「…はい、それに温かい。命…ですね」


逢海・夾
【永歌】
夏の桜、か。なんとなく慣れねぇが、ま、何事も経験だろ
しかし、猫か…どう扱えばいいか分かんねぇんだよな
ま、なるようになるだろ。海を見に行くか

桜に海、なかなかいいもんだな。海は何度見てもいい
…で、猫に群がられてるのは最近よく見る顔、と
「大丈夫か、優歌」
ま、襲われてる訳じゃねぇからな
「助けろと言われてもな…悪いが、猫の扱いは分からねぇんだ」
しかし、人懐っこいってのは本当なんだな
普段なら逃げられる距離なんだが
「座る、か。分かった」
驚かせねぇように、静かに座る
なるほどな、立ったままより様子も見やすい
そっと手を近づけて触ってみるぜ
力加減に気を付けて、と
「…やわらかい」
不安になるな、壊しそうで




 季節は夏で、この世界には海がある。
 せっかくの海だからと、雛瑠璃・優歌(スタァの原石・f24149)がはりきって身にまとうのは、瞳の色と同じ、瑠璃色を基調にした愛らしい水着だ。
 星満ちる海にその身をゆだねたら、きっと身も心も癒やされるに違いないとばかりに、優歌は島の砂浜めざし、満天の星々の下を歩いてゆく。
 歩くたびに揺れる瑠璃色のパレオスカートは、さながら海の波のよう。
 そんな優歌を目的地へと誘うのは、ひらりゆらりと舞う、幻朧桜の花びらで。
 舞い踊る薄紅色を視線で追いながら、優歌はほほえんだ。
 親しみを感じてしまうのは、この桜が自分にとって、なじみある世界のものだからだろうか。
 けれど、花びらを乗せて頬をなでる風に感じとったほのかな潮の香りは、優歌にとって少し新鮮で、心が躍る。


「夏の桜、か」
 夏夜の涼を帯びた風に乗り舞う薄紅色を、自らの手の平で遊ばせながら。逢海・夾(反照・f10226)は、周囲の景色を楽しむようにのんびりと歩いていた。
 夾にとっての桜は、一年を通して咲くようなものではなく、春の季節を彩るものだという認識だ。
 ゆえに、夏色の空に舞う桜には、ほんの少し違和感を覚えてしまう。
「なんとなく慣れねぇが、ま、何事も経験だろ」
 違和はあれど、それ以上に勝ったのは興味。
 こういう面白い経験などそうそうできるものでもないから、この島へ来たことは間違ってなかったといえよう。
「しかし、猫か……」
 どこからともなく聞こえてくる鳴き声。今もこの近くにいるのであろう、この島の名にも含まれている住民たちのことを思えば、夾はふむ、と空を見上げながら考える。
「どう扱えばいいか分かんねぇんだよな」
 見たことがないわけではないが、これまでは近づくとすぐに逃げられてしまっていた。
 いくら人懐っこいと言っても、誰も彼もに近寄ってくるわけでもないだろうし、仮に近寄ってきたとしても、どうしていいのかさっぱりわからない。
 そんな風に思考を巡らせながら満天の星の中を舞う桜を眺めていた夾だったが、
「ま、なるようになるだろ。 海を見に行くか」
 これ以上考えても詮ないことだと判断すれば、海へと向かい、歩き出して。


「ふふ、到着♪ ……と、」
 気持ちを弾ませながら辿り着いた砂浜で、優歌は足を止めた。
 星明かりに照らされた砂浜を、機嫌よさげに尻尾を立てながら歩くのは、グレーの猫。
 その近くでは、黒と白のハチワレ猫と茶トラ猫が、砂の上でごろんと転がりながら、楽しそうに遊んでいて。
「ほ、本当にいっぱいいるんだね、猫……」
 思わず声をうわずらせ、一歩引いてしまう優歌。
 話には聞いていたが、視界の至るところに猫のいる光景は、そうそう目にするものでもなかったから、正直なところ、驚きの方が勝ってしまった。
 そりゃあ、かわいいとは思う。触ったことがないわけでも、怖いというわけでもない。
 けれど、猫は犬と違って、距離感がつかみづらい。
 下手をすると怖がらせて逃げてしまうかもしれないし、正直どう接していいのやら。
「うちのお猫様と一緒にしちゃだめだし……」
 猫といって、優歌が真っ先に思い浮かべるのは、異母弟だが……あの子はどちらかといえば犬っぽい気がするから、同じように接するのは違う気がするし。
 どうしたものかと思いながらも。ひとまずといった様子で優歌が砂浜へ座れば、

 にゃぁん。

 優歌の心配をよそに、機嫌のよい鳴き声を響かせ、グレーの猫が近づいてきた。
 なるほど、人懐っこいとはそういうことかと思いながら、優歌はほっとした様子で声をかけようと口を開いた。
「ほぇ、こ、こんにちは……?」
 近づいてきてくれた一匹とまったり過ごしてみようなどと思っていたら、その考えはどうやら甘かったようで。
 気がつけば、先ほど目にしたハチワレ猫に茶トラ猫、それから、白、黒、三毛に、ぶち猫までもが、優歌の元へと近づいてきた。
「……っていうか1匹じゃない…!?」
 想定よりもはるかに多い猫たちは、人懐っこそうな瞳を向けて甘えた声で鳴いたかと思えば、優歌にすりすりとすり寄ってきて。

「ひゃ、くすぐった……っ!」

 すりすりとする猫はかわいいけれど、洋服の時ならまだしも、今の優歌は水着姿なのだ。
 もふもふな毛の感触が、素肌にダイレクトに伝わってくるのだから、くすぐったくて仕方がない。
 何という恐ろしい攻撃なのだろう!
 しかも猫たちに悪気などまったくないのだから、驚かせるわけにもいかない。
 優歌、絶体絶命(?)のピンチ……!


 のんびりと歩を進め、ようやく辿り着いた海。
 空の星々の輝きを映してゆれる紺碧に、薄紅色の桜の花びら舞う光景を眺めやった夾は、楽しそうに赤の瞳を細めた。
「桜に海、なかなかいいもんだな」
 海は何度見てもいい。どの季節の海もいいものだが、夏の海に舞う桜もなかなか乙なものだ。この景色を見れただけでも、この島に来たかいがあったというものだ。
「……で、」
 ふと、視界の端に見知った顔があるのに気がついて、夾は視線を向けた。
 あれは、最近よく見る顔だ。……なぜだか猫に群がられているわけだけれども。
「大丈夫か、優歌」
 群がられてはいるが、襲われてるわけではない。
 一瞬そのままにしておいてもいいのかと思ったが、一応声はかけた方がいいだろうと思い直し。夾は見知った顔の娘ーー優歌の名を呼び、近づいて声をかけた。
「……あっ、逢海さん!」
 夾の声と、姿に気がついたのだろう。優歌は、夾の名を呼び、手を伸ばす。
「た、助けてくださーいっ」
 襲われていないはずなのだが、何だか必死な様子の優歌に、夾はうーんと考え込む。
「助けろと言われてもな……悪いが、猫の扱いは分からねぇんだ」
 実際のところ、どう助けていいのやら。
 さらに近づいて優歌の手をとり、猫たちから遠ざければいいのか。
 いやしかし、優歌はそれを望んで助けを求めているわけでもないだろうし、何より自分がこれ以上近づけば、猫たちを驚かせ、怖がらせてしまうことになるかもしれない。
「あ、あの、すっごく懐こい子たちなのでこう……」
 皆目見当がつかないといった様子で、肩をすくめて素直に白状した夾に向け、優歌は『助ける方法』について説明する。
「あたしの隣にでも座って頭とか体とか撫でてあげたらいいと思います……」
 すり寄る猫たちにくすぐったそうにしながらの優歌の言葉に、夾はなるほどな、という顔をした。
「座る、か。 分かった」
 優歌の言葉に従い、夾は優歌の隣へと近寄る。
 さすがに逃げ出すかと思いきや、優歌の周りにいる猫たちは、夾が近づいても動じる気配もない。
(「しかし、人懐っこいってのは本当なんだな。 普段なら逃げられる距離なんだが」)
 そんなことを思いながら。夾は、近づき。そうして、優歌の隣にそっと座った。
 驚かさないよう、静かに座れば、猫たちがさらに近くなる。
(「なるほどな、立ったままより様子も見やすい」)
 すると。夾に興味を持ったらしい三毛猫が、近づいて夾の膝へとのっかってくる。
 そうして、くりっとした瞳を覗かせながら、にゃぁ、と挨拶めいた声で鳴いた。
 手を伸ばせば簡単になでられるほどの距離。
 こんなに猫と近くなったのは、夾にとって初めてのことで。
 思わずといった様子で、夾は膝の上にのった三毛猫へ触れようと、手を伸ばした。
 そっと、静かに。力加減に気を付けながら、夾は三毛猫の頭に、背に触れる。
 手の平に触れたふわふわとした毛の感触は、何だかとてもくすぐったい。
「……やわらかい」
 ぎこちなく三毛猫をなでる夾に、優歌は小さくほほえんだ。
「……はい、それに温かい。 命……ですね」
 やわらかくて、とても小さくて。ともすれば、うっかり壊してしまいそうな、命。
 命、という優歌の言葉に。そうだな、と、同意を示すように、夾は頷く。
「不安になるな、壊しそうで」
 敵と対峙する時には感じることのない不安だ。
 これも、『何事も経験』の一つになるだろうか。
 なでられた三毛猫が、ごろごろと喉を鳴らしながら、礼を言うように夾の手をぺろりとなめる。
「逢海さんに懐いちゃったみたいですね、その子」
 ふふ、と楽しそうに優歌が笑えば。
 その笑顔につられるように、夾の口元にも、かすかな笑みが浮かんだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アカネ・リアーブル
エリシャ様・f03249と輪様と
猫様です!
今年もやりますよー猫乱舞!
すちゃっと猫じゃらしを掲げて猫とダンス
輪様もエリシャ様もしませんか?猫ダンス!

遊び疲れたら飲み物を片手にのんびりと
輪様はどなたかに恋などされたことはございますか?
先日パジャマパーティーでそのような話が出まして
輪様はどうなのかと!
ワクワクしながらお言葉を待ちますね

エリシャ様と猫談義
エリシャ様は猫は飼われないのですか?
猫がお好きなのに、ご自身の猫は飼わないのかと思いまして
アカネはちょっとそこまで手が回りません
ですがご縁がありましたら全力で可愛がります!
都合が良すぎるだなんてそんなことは決して!

星空の下、三人でお喋りを楽しみたいです


エリシャ・パルティエル
アカネちゃん(f05355)と

猫ちゃんがたくさんの島…なんて素敵なの!
ふふ、アカネちゃんもやる気満々ね
去年を思い出すわ
あたしも猫ダンスを研究したのよ
リボンつき猫じゃらしを取り出し
くるくるさせながら猫ちゃんと一緒に踊る

飲み物はレモネードを持ってきたわ
え、なになに輪の恋バナには興味あるわ!
輪の今の姿は近くにいた人のものだったりするの?
その人のこと特別だったりする?
輪のこといろいろ知りたいのよ

猫ちゃんは飼いたい気持ちもあるけど…
猟兵としてのお仕事もあるし
父さんにお世話を任せるのも悪いし
猫ちゃんを連れ回すのもね…
こんな風に時々可愛がれたらいいの
…都合良すぎるかしら?

星空の下今年も素敵な思い出ができそう




 見渡す限りの星空と紺碧の海、そして、人懐っこいたくさんの猫たち。
 一年前に訪れた場所と似た、何とも癒やされる光景を前にして、エリシャ・パルティエル(暁の星・f03249)は嬉しそうに頬をゆるませて、満面の笑みを浮かべた。
「猫ちゃんがたくさんの島……なんて素敵なの!」
 猫は猫好きがわかるらしく、エリシャの周りにはすでにたくさんの猫たちが群れていて。
 なでて欲しそうに足にすり寄ってみたり、自らの肉球でぺちぺちと猫パンチをしかけながら遊べとせがんでみたりと、積極的なアピールを展開している。
「猫様です!」
 そして、同じく猫たちに囲まれ、やる気満々の笑顔で彼らを見渡すのは、アカネ・リアーブル(とびはねうさぎ・f05355)。
「今年もやりますよー、猫乱舞!」
 猫たちが遊ぶ気満々ならば好都合とばかりに、ぴょこんとツインテールを跳ねさせながら、すちゃりと取り出したのは、羽飾りのついた、ふわふわの特製猫じゃらし。
 すでに猫たちの視線を集めるそれをゆっくりと動かせば、その動きにあわせて猫たちも右に左にくるんくるんと頭を動かしていく。
「さぁ、準備は万端です! エリシャ様もしませんか? 猫ダンス!」
「ふふ、アカネちゃんもやる気満々ね」
 そう、去年もこんな風に猫ダンスをしたのよね、と。思い出すようにほほえんだエリシャもまた、その金の瞳にキランとやる気の光を輝かせ。
「あたしも猫ダンスを研究したのよ」
 ちゃきんと取り出したのは、リボンつきの猫じゃらし。
 潮風にゆらと揺れる、長めのリボンをくるりくるりと動かせば、エリシャの近くにいた猫たちの視線が、一斉に集中。今にも飛びかからんとばかりに、しっぽを立てて、お尻をフリフリとさせ始めた。
「さすがはエリシャ様!」
 グッジョブです!とばかりにサムズアップしたアカネは、今度は輪へとキリッとした視線を向けた。
「さぁ、輪様も!」
「そうよ、輪も一緒に猫ダンスよ!」
 ここは一緒に踊ってこそでしょ、と。エリシャも、さぁ、と促す。
「なるほど、二人が準備万端なら、僕も負けてられないかな」
 くつくつと笑う輪の手にも、釣り竿を模した形の猫じゃらしを認めれば、アカネは満面の笑みを浮かべて。
 手にした自分の猫じゃらしを天高く掲げながら、高らかに宣言した。

「さぁ、お二人とも! アカネと一緒にレッツ猫ダンスです!」

 こうして。
 星明かりと桜舞う中、一年前に引き続いての大猫乱舞大会が、砂浜で盛大に繰り広げられるのであった。


 めいっぱい猫たちと戯れた後。
 海と桜がよく見える砂浜の一画を陣取れば、星空の下の催しは、猫ダンス大会から一転、夏の花見おしゃべり会へと移行していて。
「今年の飲み物はレモネードを持ってきたわ」
 思いっきり動いた後だから最高においしいと思うわよ、と言いながら、エリシャはアカネと輪に持参した飲み物を振舞う。
「エリシャ様、ありがとうございます!」
 レモネードの入ったタンブラーを受け取れば、アカネは早速とばかりに一口飲んだ。
 ひんやりとした喉ごしと、口の中に広がる爽やかな酸味と甘さが、ひと遊びして熱を帯びた身体に心地よく染み渡る。
「ふふ、おいしいです。 レモネードの甘酸っぱさは、夏という感じがいたしますね!」
 アカネが感想を述べれば、エリシャは嬉しそうに笑った。
「ありがと。 そういえばレモンのイメージって夏よね」
 独特の酸味と爽やかさが夏の気候によく合うからか、それとも夏に乾燥した地域での育成に適しているという栽培特性によるものか。詳しくは知らないが、なんとなくレモンと夏の季節はセットになっているような気がして。
 エリシャが、そんなことを口にすれば、アカネも同意するように頷いた。
「はい。 そしてレモンの甘酸っぱさは、なんと、夏の恋……初恋の味なのだそうですよ!」
 これを聞いたのは、確かUDCアースの日本でだったか。スッキリとした爽やかなレモンの風味は、せつなくも甘酸っぱい夏の恋、とりわけ初恋のようだとか何とか。
 そこまで言ってから、アカネはふと思いついたように、レモネードを飲んでいる輪へと顔を向けた。
「輪様はどなたかに恋などされたことはございますか?」
「……え、僕?」
 赤の瞳を瞬かせて、輪は不思議そうな顔をする。
 なぜ今の話の流れから、しかも自分に恋バナを振られることになったのだろうと、言いたげな表情だ。
「先日パジャマパーティーでそのような話が出まして。 輪様はどうなのかと!」
 ちなみにエリシャ様の話は先日伺ったので、今回は輪様なのです!
 そう言ってから、アカネはワクワクとした様子で、輪を見つめた。
「えー、僕の話なんてそんな……」
 面白いものなんてないよ、と。さらりと逃げようとしたところへ、
「え、なになに輪の恋バナには興味あるわ!」
 すかさずエリシャの声。逃さないわよと言わんばかりに、金の瞳を輝かせながらずい、と近づいた。
 甘いものとおしゃべりと恋を愛する乙女たちを前にして、恋の話をせがまれれば、一介の男子が逃げられるはずもなく。
 んー、と困り顔で考え込んだ輪は、
「……あるといえば、あるかなぁ」
「わ、ございますか!」
「え、知りたい! どんな人?」
 わぁ、と思わず湧き上がった乙女二人を見つめ返せば、
「……でも、内緒」
 人差し指を口元に当て。そう言って、ごめんねと笑った。
「そうなのですか……ちょっと残念です」
 聞いてみたかった、と残念そうにするアカネに対し、エリシャはそれくらいじゃめげないとばかりに、
「それじゃ、輪、もう一つ教えて?」
 せっかくの話す機会なのだから、輪のこと、いろいろ知りたいのよ、とウィンク。
「輪の今の姿は近くにいた人のものだったりするの? その人のこと特別だったりする?」
「……何気に質問二つになってるけど、エリシャさん」
「そう? でもほら、関連質問ってことで、ね?」
 愛嬌たっぷりに笑ったエリシャに、輪はふむ、と頷いて。
「……この姿は、僕を箱から出してくれた人の姿を借りたんだよ。 特別何かとかはないけど、まぁ、恩人だね」
「輪様の恩人?」
 どのような方なのでしょう、と。きょとりと瞬きをするアカネに、
「……僕の恩人は、君たちもよく知ってる人だよ」
 だから、興味あったら探してみてもいいかもねと。そう言って、輪はくすりと笑ってみせた。


 猫ダンス大会で遊び疲れてお休みモードだった猫たちは、再び元気を取り戻した様子で。

 にゃあん。

 そろそろ構ってよう、と言いたげに。話を続ける三人へと近づけば、すりすりと身体をすり寄らせていく。
「ふふ、遊ぶのはもうおしまいだけど、その分なでてあげようかしらね」
 すり寄ってきたシャム猫に、ほほえみながら頭をなでるエリシャを、アカネはしばし眺めて。
「エリシャ様は猫は飼われないのですか? 猫がお好きなのに、ご自身の猫は飼わないのかと思いまして」
 一年前も今年も、こうして海で楽しそうに猫と遊んでいたし、先日のUDC-Pを保護するために猫カフェへ行く依頼だって、率先して参加してくれていたから、きっと猫は好きなはずなのだ。それだけ猫が好きであれば自分の猫も飼っていそうなのに。
 素直に浮かんだ問いをそのまま口にしたアカネに、エリシャは確かにそう思うわよね、と、困ったように笑った。
「猫ちゃんは飼いたい気持ちもあるけど……猟兵としてのお仕事もあるし、父さんにお世話を任せるのも悪いし。 だからと言って猫ちゃんを連れ回すのもね……」
 エリシャは猟兵であり、グリモア猟兵でもある。通常の猟兵の仕事にグリモア猟兵の仕事が合わされば、さすがに忙しく、そうそう家に帰ってもいられない。
 基本的に猫は家に居着き、環境の変化に弱い動物だ。連れ回すのは、身の危険の問題だけでなく、メンタル的にも厳しいだろう。だからと言って、家に預けっぱなしでは、猫にだって寂しい思いをさせてしまう。
「こんな風に時々可愛がれたらいいの……都合良すぎるかしら?」
「都合が良すぎるだなんてそんなことは決して!」
 ふるふると首を横に振るアカネに、ありがとう、とエリシャは言葉を返してほほえんだ。
「そうそう、都合が良すぎるとかってことはないよ。 何より、責任とか、色々考えた上での判断なんだしね。 大切なのは、そういうことだと思うなぁ」
 近づいてきた白猫の顎をなでながら言う輪に、アカネも頷いて。
「そうですよ! アカネも、今のところはちょっとそこまで手が回りませんから、猫様をお迎えすることはできてませんし」
 だから今は、こうやってお会いする子たちと全力でお相手しているのです、とアカネは言って、再び猫じゃらしを構えた。
「ですがご縁がありましたら全力で可愛がります!」
 今目の前にいる子たちと遊ぶこともだが、もし何らかの縁がつながり、猫を迎える機会ができたのならば、その時においても全力で迎えようとそっと心に誓って。
「だからもしその時が来たら、エリシャ様、可愛がってあげてくださいね!」
 そう言って立ち上がれば、アカネは、構えた猫じゃらしを再びぱたぱたと振る。
 飛びついてきた茶トラとサバトラの子猫が、じゃれるように前足をてしてしするのを見れば、アカネは笑って。
「さぁ猫様! アカネとのダンス勝負、受けてくださいませ!」

 そうして、星明かりが照らす中。
 二匹の猫と共に再び踊り始めた少女を慈しむように、薄紅色の花びらをのせた潮風が、優しく吹いていくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年08月22日


挿絵イラスト