3
迷宮災厄戦⑪〜帽子屋は気が狂っている

#アリスラビリンス #戦争 #迷宮災厄戦

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#アリスラビリンス
🔒
#戦争
🔒
#迷宮災厄戦


0




●帽子屋は気が狂っている
「猟兵か……」
 少年は鏡を眺め不敵に笑う。
「こんな物に頼らなくても大丈夫なのだけどね。
 けど、楽でいいか」
 なんでもないことのように言った。彼が今見ている鏡のことだ。
 もう鏡への用は済んだので、歩いてその場所を後にする。
 彼は帽子屋のアルフレッド。オウガである。
 十代前半のあどけない顔立ち、瀟洒な洋服に身を包んだ姿。赤い薔薇があしらわれた黒い帽子が印象的だ。
 その立ち居振る舞いは客観的に見て理性的と言えた。
 だが、そんなものは表面上の特徴に過ぎない。
 彼は戦いを好んでいた。
 そして、戦いによって喪うものが無かった。
 彼が何も持っていないというわけではない。
 倒されても骸の海に還るだけだということを、知っていたから。
 だから彼は戦いをゲームのように捉えていた。
「じゃ、試しに、ちょっと戦ってみようか」
 軽い気持ちで。
 自分を滅ぼしうる存在は、ただ一人しかいないのだから。

●エルフは正常です
「フハハハハハ! 吾輩はマッドハッターである!」
 アノルルイ・ブラエニオンはふざけた事をぬかした。マッドハッターと言うよりは、悪魔だった。
「狂った帽子屋ってこんなイメージだよなあ! だがまあ狂人にも色々いるよな!」
 それはさておいて、アノルルイはグリモアが告げた予知について語る。
「今回は『真実を告げる鏡の間』だぞ。
 敵は鏡を持ち歩いており、また鏡が設置されている場所を予め知っていて、君達の正確な位置を知った上で攻撃を仕掛けてくる!
 奇襲し放題というわけだが……心配は無い。
 君達が問題なく使えるぐらいその場所には鏡が豊富に生えてるからだ」
 よって、条件は同じ。
 あとはその状況をいかに上手く使えるかだ。
「鏡に映った自分の顔に見蕩れるような奴はいないな?
 それでは、健闘を祈る!」
 角笛が高らかに鳴り響いた。


デイヴィッド
 ショタオウガに興味はありますか?
 デイヴ デス!

 以下、この戦場の説明です。

 オウガ・オリジンに戯れに殺された、かつての忠臣「鏡の女王」の怨念が籠もった国です。あちこちに「真実の鏡」が生えており、鏡に質問すると「この不思議の国内部の事」限定で何でも答えてくれます。強力なオウガがこれを利用して「猟兵の正確な位置」を把握し襲ってくるので、こちらも適切な質問によって有利を確保しましょう。
 鏡は、敵の位置や死角、ユーベルコードの弱点など、この国の内部にあるものの情報ならなんでも答えてくれます。が、あまりに猟兵個人のセンシティブな質問は避けてください(胸の大きさや身長を聞くなど)。

 プレイングボーナス……鏡に有効な質問をする。

 以上。皆様のプレイングをお待ちしております!
29




第1章 ボス戦 『11番街の帽子屋・アルフレッド』

POW   :    ハット・トリック:イレヴン・フィールド・ノヴァ
【シルクハットから撃ち出した蒼色の火球】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を11時を指した食人花の花時計に変え】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
SPD   :    ハット・トリック:セヴン・シルヴァー・ウルヴズ
【シルクハット】から【7体の銀色に光る狼のエネルギー体】を放ち、【噛み付いて組み伏せること】により対象の動きを一時的に封じる。
WIZ   :    ハット・トリック:グリーン・インフェルノ・ネード
【シルクハットから翠色の業火の竜巻】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠カグラ・ルーラーです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 生えている木に鏡が『成っている』。
 鏡台ごと生えていたり、鏡だけが地面から生えていたり、その形状は様々だが。
 アルフレッドはその中の一つを覗き込み、たずねた。
「さあ、鏡さん。僕に猟兵の位置を教えて?」
ジェイムス・ドール
ねぇねぇ鏡君、帽子屋さんはどこから来るかな?
帽子屋さんの帽子は輝くかな?帽子屋さんは痛みに強いのかな?
帽子屋さんは戦うのが好きなのかな?いつ攻撃を仕掛けてくるかなぁ?

楽しみ!
投擲、敵のいる方に向けて小さな丸鋸刃を投げ付ける。
貴方、戦いが大好きなんでしょう?私も大好きなの!
念動力で丸鋸を操り、帽子屋に当てて『永続戦線』

そんな離れた所にいないでさぁ!もっと近くで戦いましょう!
怪力で鎖を引っ張って引寄せる。

戦いが好きなんでしょう?大丈夫!死なせないから!
いっぱいいっぱい楽しみましょう?
食人花を大斧でなぎ払い、火球を喰らいつづけながら、鋸で傷口をえぐり
痛みを楽しんで継戦能力が続くまで戦闘を継続させる。


御形・菘
大切なのは、如何に魅せるバトルを繰り広げられるか!
はっはっは、狂人であるかどうかなど、妾の動画にとって問題となるポイントではない!

とゆーことで、鏡に尋ねるのは、
「攻撃を仕掛けてくるのが何秒後か、どちらの方向からか」だ!
位置も何も、こちらから動くつもりはないよ
飛んできた火球を、左腕でもって打ち返す!
特にトリッキーでもなく、軌道は真っすぐなのでであろう?
ならば綺麗に打ち返せば当たるわけだ!

はーっはっはっは!、「素手でホームラン」は妾の得意な持ちネタの一つ!
そして怪人相手ならば必殺のピッチャー返しとなる! 手が熱いことは全然大したことではない!
さあ、どんどん撃ち込んでくるがよい、お主の決め球をな!



(3……)
(2……)
(1……)
「今だ!」
 御形・菘(邪神様のお通りだ・f12350)は振り向き様に左腕を振りぬいた。
 狙いは……自分めがけて飛んできた火球。
 目で存在を確かめなかったがそれは確かにあった。確かな手応えと熱を感じる。
(全然大したことではない!)
 狙い通り。過たずに炸裂した自らの持ちネタ――『素手でホームラン』!

「うわっ?!」
 火球を放ったアルフレッドはまさか打ち返されるとは――それも素手で――思ってもみず、せいぜいが避けられる程度だと思っていたので、緊急回避し直撃は免れたものの自分の腕に当たって爆ぜた。
「はーっはっはっはっは! 真実を告げる鏡の間に、妾参上!」
 そして高笑いする。
 菘は無防備を装い、敵の攻撃を待っていたために名乗りを上げるのは自重していたが、目的を果たした以上、自重する必要はない。
 菘は鏡に聞いたのだ。敵の攻撃がどの方向から、何秒後に来るかを。
 この世界の事であれば未来すらも例外ではなく、果たしてそれは聞いたとおりになった。

「火球を打ち返すなんてお姉さんデタラメだね、びっくりしたよ」
 アルフレッドは体勢を立て直す。
「それも素手で! 熱くないの?」
「無論熱い! だがそんな事は問題ではない!
 大切なのは、如何に魅せるバトルを繰り広げられるかだ!」
 左腕を掲げ、菘は高らかに言った。
 自らの肉体を敵の攻撃に勢い良くぶち当てるのだから損害を受けないはずはない。
 だが、それも狙いだった。彼女は使ったのだ、敢えて不利な行動をすると、身体能力が増大するユーベルコードを――その理由は自身の【素晴らしい動画を創り上げるという固い信念】の為に!
「逆境とは――即ち山場!」
「お姉さん、逆境を楽しむタイプ?
 僕は楽に勝つ方が好きだな! だからそのまま逆境に立っててよ!」
 アルフレッドは踊るようにシルクハットを振ると、そこから蒼い火球を出す。
「四番バッター、御形・菘!
 さあ、どんどん撃ち込んでくるがよい、お主の決め球をな!」
 そうして左腕を構える菘。
 だが、今度の火球はストライクゾーンど真ん中ではなかった。
 菘の周りに着弾し、食人花の花時計に変じる。
「さあ、お茶会の始まりです! 僕は11時に始めてるよ。ところがいつまで経っても11時なんだからいつまで経っても終わらないんだ!」
 食人花の花時計による茶会の『お茶請け』にされた菘。その花時計は11時で止まっている。
「そして、君も混ざりに来たかな!」
 アルフレッドは続け様に、菘とは別の方向に火球を発する。
 その方向に居たのは――。
 
 紅色の燕尾服に白いズボン。
 髪の色はピンクで、頭の上には碧色の帽子が乗っている。
 蒼い火球を受けて燃え上がり、周囲に食人花を生やされながら、
  
 ――笑っていた。

「あんまり楽しみだから、こっちから来ちゃった!」
 ジェイムス・ドール(愉快な仲間の殺人鬼・f20949)は攻撃を受けてなお笑う。
 服が燃えているにも関わらず手にした鋸状の刃を持つ大斧で邪魔な食人花を薙ぎ払って進んだ。
 彼女にも、アルフレッドにも言えることだが、鏡に聞いて互いの位置をあらかじめ知っていた。
 それゆえにアルフレッドはジェイムスに攻撃することができたし、ジェイムスもアルフレッドの位置が解ったのだ。
 さらにジェイムスは『自分が攻撃を受けるの順番は菘の後』とも聞いたので、自分から出向いてきたわけである。
「貴方、戦いが大好きなんでしょう? 私も大好きなの!
 貴方の帽子は輝いているわね! 私の帽子はもう輝かないけれど」
 ジェイムスは言った。これらも鏡に聞いて解ったことだ。
「ごきげんよう、エメラルドのお姉さん。じゃあ君の願いに応えるね!」
 ジェイムスに一礼してアルフレッドは答え、さらに火球を撃ち込んでいく。
 ジェイムスはそんな事には構わずに大斧を構えたまま突っ込んだ。
 だがそれよりも早くアルフレッドに何かが当たり、爆ぜた。
「んっ? 本体は囮?」
 ――念動力で操られた丸鋸。
 それが当たって爆ぜた。
「つかまえた」
「あっ?!」
 アルフレッドは自らの左腕に鎖が絡みついているのに気がついた。それは、ジェイムスの左腕に繋がっている。
「そんな離れた所にいないでさぁ! もっと近くで戦いましょう!」
 ジェイムスは鎖を引っ張って引寄せる。アルフレッドはその怪力には抗せず、肉薄する距離まで引き寄せられた。
 そして至近距離で丸鋸を浴びせる。
「こうなったら小細工無用。どっちが先に倒れるかな?」
 アルフレッドも乗り気で火球を次々と帽子から出していく。
 飛び散る血飛沫、燃え上がる蒼炎が闘争の宴――或いは狂ったお茶会――を彩る。
「大丈夫! どっちも死なないわ!」
「本当だ、鋸で傷口をゴリゴリ抉られてるのに意外と傷が浅いや」
 それは互いを繋ぐユーベルコードの鎖【永続戦線】が与える超再生力だった。
「もっと……もっと頂戴!」
「うん、熱いの、いくよ……!」
 2人は、睦みあうように痛みを与え合う。
「2人だけでずるいではないか。妾も混ぜよ!」
 菘の蛇身が背後からアルフレッドに巻きついた。
「近くでこのような光景を見せ付けられては黙ってはいられぬ」
「ふふっ……欲しがりやさんだなぁ」
 ジェイムスと菘、2人でアルフレッドを挟む形となった。
「もう、どうなったって構うもんか♪」
 アルフレッドはシルクハットを上に向けた。
 そこから夥しい数の火球か放射される。
 それは、夏の夜空に咲く花火のように美しい、地獄絵図。
 そして地上には食人花が咲き乱れ、まるで嗜虐的な向日葵畑だ。
 3人は、激しく燃え上がった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

本・三六
アドリブ等歓迎

鏡が生えてる……さすが不思議の国。
帽子屋とは、オウガも洒落が効いてるね
しかし奇襲し放題とは参るよ、彼の庭のようなものか。
大きな君に聞こう、『彼の好きなゲームで、よく好む手は?』
試しにもうひとつ、『今日のボクにとって、一番幸運なことは?』

現れた彼に対し、『鉄芥』の【咄嗟の一撃】で応戦
素早く数も多いが君が彼らを飼っていることは鏡から聞いてたよ
食いちぎられる鉄芥を【早業・武器改造】で補強しつつ
急所を突き鈍らせる

動きを奪われそうになったら、やむ得ない
忍ばせていた『バトルキャラクターズ』に援軍を頼むよ
多勢に無勢だが、お互い様だ!

配下を取り払い、少し一騎打ちといきたいね。楽しもうじゃないか。


セルマ・エンフィールド
はた迷惑な存在ですね。まぁ、骸の海に叩き返すくらいはやりましょう。

木に鏡がなっているというのは不思議な光景ですが……これくらいならばもうこの世界では見慣れたものです。
向こうからやってくるのであれば、こちらは迎え撃つのに適した場所を取るだけです。鏡に伏兵を忍ばせておけるような場所を聞き、そこに移動します。

移動したら【氷の獣】を召喚、伏兵を忍ばせられる場所……森なら茂みや木の陰でしょうか、そこに忍ばせます。
敵が私の位置を聞いて襲ってくるのであれば狼たちの位置は把握できない。こちらに仕掛けてきたところに逆に横から狼たちに奇襲をさせましょう。
目には目を、奇襲には奇襲を、狼には狼を、です。



(鏡が生えてる……さすが不思議の国)
 本・三六(ぐーたらオーナー・f26725)は実際に目の当たりにしたアリスラビリンスの風景に驚きを覚えつつも、その使い方を教わったとおりに実践してみることにした。
「大きな君に聞こう、『彼の好きなゲームで、よく好む手は?』」
 鏡は答えた。
「圧倒的な戦力で蹂躙することです」
 三六はもうひとつ聞いてみた。
「試しにもうひとつ、『今日のボクにとって、一番幸運なことは?』」
 鏡は答えた。
「素敵な出会いがあるかも。ラッキーカラーは青!」

「……なるほど、解りました」
 そしてその後本当に出会った青い瞳の猟兵、セルマ・エンフィールド(絶対零度の射手・f06556)にその事を話すと、彼女は堅い口調でそう答えた。
「共闘の申し出をされて断わる理由はありません。真実の鏡が言うならそうなのでしょう」
「どうでもいいけど堅いねぇ君」
 グータラな口調で三六は言った。セルマはこれには答えずに言う。
「鏡から迎え撃つのに適していると思われた場所を聞いています。これからそこに向かいます」
「わかった。ついて行こう」

 木々が多く、茂みのある場所に来ると、セルマは足を止めた。
 二人はそこで敵が来るのを待つ。

「ごきげんよう、猟兵の諸君。僕はアルフレッド」
 ――果たして、それは現れた。
 不敵にも帽子を取って一礼している。
 身構える三六とセルマに対し、アルフレッドは帽子を手にしたまま言った。
「そして、茶会の仲間を紹介しよう!」
 シルクハットに手を突っ込んで何かを取り出す仕草とともに現れてくる、銀色に光る狼のエネルギー体。
「彼はヤマネ。彼もヤマネ。彼もヤマネ。彼もヤマネ。彼もヤマネ。彼もヤマネ。彼は三月うさぎ」
「バランスが悪いなあ」
 アルフレッドが呼んだふざけたネーミングに三六は思わずこぼす。
 しかも名前と見た目がまるで合っていない。すべて銀色の狼のエネルギー体が、全部で七体。
「さあ! お茶会を始めよう!」
「ちょっと洒落が効きすぎじゃないかい?!」
 戦いを茶会と言い換えてしまうセンスに三六は引いた。
 セルマは何も言わなかった。
 さておき七体の狼は、猛スピードで三六とセルマに迫る。

 だが、それらを遮るように茂みから影が飛び出した。
 こちらも七体。
 正面から狼を阻止したのは狩人――ならぬ『バトルキャラクターズ』。
 三六がユーベルコードで呼び出したものだ。
「多勢に無勢と思ったかい?!」
「へえ、援軍か? だが数は同じでも質はどうかな!」

「いいえ」
 セルマの冷たい声が打ち消した。
「数は同じではありません」
 突如として周囲の茂みから飛び出してきた白い何か。
 それも――狼だった。
 こちらは銀色ではなく、白い。ただしそれは冷気を帯びていて、周囲の水分を結露させているからだ。
「目には目を、奇襲には奇襲を、狼には狼を、です」
 セルマのユーベルコード、その名も『氷の獣』によって実体化され、あらかじめ茂みなどに潜んでいたものだ。
 氷の獣達は銀の狼達を背後から襲う。三六のバトルキャラクターズと挟撃する形になった。
「おっと、これは少し不利かな?」
 アルフレッドは不安とは思えない様子で呟いた。
「逃がしはしないよ」
 銀の狼から離脱した三六が直接、アルフレッドに打ちかかる。
「一騎打ちは戦争の花って言うじゃないか」
「えー? 同じ戦力で戦うの好きじゃないんだけどなあ」
 一騎打ちを申し込んだ三六にアルフレッドは渋るが、もはや逃げ腰では一方的に打ち込まれる距離まで三六は迫っている。
 メカ鈍器『鉄芥』で打ちかかる三六。アルフレッドは白兵武器は持っていないが、帽子を被り直してオウガの卓越した身体能力で応戦する。
 アリスを捕えて引き裂けるオウガの爪が振るわれ、何度も三六は傷を負う。しかしノーモーションからの咄嗟の一撃はアルフレッドに何度かの有効打を与えた。
 しかしアルフレッドは何度目かの三六の攻撃をいなし鉄芥を受け止めると、怪力で粉砕した。
 その一瞬。
 三六の姿がアルフレッドの視界から消えた。
 鉄芥は破壊されたのではない。パーツを分離させてそう見せかけただけだ。三六は早業の武器改造で軽量化・鋭さを増した形状に組み替える。これが鉄芥の本領だ。
 ――脇腹に一撃。
 だが、倒しきるに至らない。体勢を崩さず踏みとどまったアルフレッドは、両手で三六の頭を鷲掴みする。
 その筋力であれば首をねじ切ることもできるだろう。
「君はお茶会から脱落だ」
 横柄な帽子屋のように言って、アルフレッドはさらに腕に力を込める。

 ――銃声が響いた。

 帽子に穴が開き、帽子屋は倒れた。
 セルマだ。マスケット銃フィンブルヴェトによる狙撃だった。
「一騎打ちだったのにね?」
「遊びではありませんので」
「堅いねぇ君! 冗談だ。正直、助かったよ」
 三六の抗議めいた冗談にも表情を崩さず、セルマは倒れているアルフレッドに歩み寄り、銃口を向けた。
「ここまでか……」
 アルフレッドは口を開いたものの、立ち上がりはしなかった。
「情報は戦いを制する。面倒臭がらずに私達が取る戦法も聞いておくべきでしたね」
「そういうことさ。残念だったね」
 セルマと三六は言った。
 その言葉からアルフレッドが学ぶかどうかは……わからない。
 そもそも過去の存在であるオブリビオンが、成長することがあるのか。
 過去は変わらないのが普通だ。
「次はきっと負けないからね。
 ……それでは、またお会いする日まで……ごきげんよう」
 アルフレッドはそう言っただけだった。
 そして、銃声が一つ。
 11番街の帽子屋・アルフレッドは、最後まで不敵なまま骸の海へと還った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年08月16日


挿絵イラスト