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迷宮災厄戦⑪〜鏡の国のおおかみさん

#アリスラビリンス #戦争 #迷宮災厄戦

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●真実の鏡の国
「猟書家ともぼちぼち戦えるようになってきて、迷宮災厄戦も終盤にかかってきたのかな。時間はまだ半分は残ってるからできるだけいい感じにやっときたいよねー」
 のんびりとした調子のシャチのキマイラ、ヴィクトル・サリヴァン(星見の術士・f06661)はうんうんと頷きながら猟兵達に話しかける。
「今回予知したのは真実を告げる鏡の間って国でね、オウガ・オリジンに戯れに殺された忠臣である『鏡の女王』の怨念が籠った国……どこかで聞いた事のある話だね。そこにいるおおかみさんってオウガが見えたから倒してきてほしいんだ」
 怨念とか怖いねーとか言いながら、ヴィクトルは予知の詳細について説明する。
「この国の特徴はあちこちに生えた鏡だね。誰であろうと鏡に質問すればこの国内部の事限定でなんでも答えてくれるみたい。例えば敵の位置、例えば死角、弱点……この国以外の事には無反応だけど凄く便利。けれどこれをオウガの方も有効活用してくるみたいなんだ。具体的にはこっちの位置を質問して把握した所で仕掛けてくるとか。奇襲はお互いよっぽど上手くやらないと厳しいかもね」
 そして彼の説明は戦場についてのものへと移る。
「戦場については迷路のようになった広大な庭園。高低のない平面な迷宮だけど、不思議なガラスが空……天井? を覆っているから空飛んで攻略とかは無理みたい。ただ壁のようになってる生垣はそこまで頑丈じゃないからその気になれば突っ切る事もできるかもしれない。それからさっき言った鏡なんだけど、この生垣をかき分ければ割と簡単に見つかるみたい。利用するなら生垣の中を探って、ってことだね」
 そしてヴィクトルは説明を続ける。
「そんな迷宮でおおかみさんがどう仕掛けてくるかというと鏡の情報と生垣を利用した奇襲がメイン。いきなりがぶりと丸のみにしてきたり、知り合いのふりをして近づいていきなり加速して引き裂いてきたり、生垣越しに強烈な息を吹きかけたり逆に吸い込んできたりするみたい。奇襲をどうやり過ごすか、逆に利用するかがポイントになりそうだね」
 そしてヴィクトルは首にかけた鍵のグリモアへと手をやると、猟兵達を転送する準備を開始する。
「大変な戦いもまだ中ほど。ここからさらに激しさを増してくだろうけども皆ならきっと大丈夫」
 頑張ろうと締め括り、ヴィクトルは猟兵達を鏡の国へと転送したのであった。


寅杜柳
 オープニングをお読み頂き有難うございます。
 真実いいものわるいもの。

 このシナリオは真実を告げる鏡の間のおおかみさんと戦うシナリオとなります。
 生け垣の中のあちこちに生えた鏡を探して質問すると『この不思議の国内部の事』限定でなんでも答えてくれます。
 ですがおおかみさん側も当然のように鏡を活用して猟兵達の正確な位置を把握して襲い掛かってきます。
 また、下記の特別なプレイングボーナスがある為、それに基づく行動があると判定が有利になりますので狙ってみるのもいいかもしれません。

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 プレイングボーナス……鏡に有効な質問をする。
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 それでは、皆様のご参加をお待ちしております。
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第1章 ボス戦 『おおかみさん』

POW   :    それはね、お前を丸飲みするためさ!
小さな【アリスなら丸飲みできる大きな口】に触れた抵抗しない対象を吸い込む。中はユーベルコード製の【腹の中で消化されるか救出されるか】で、いつでも外に出られる。
SPD   :    ほら○○さんだよ。
【チョークを食べ視線】事で【その人の知り合いの声】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    そんなもの吹き飛ばしてやる
【凄まじい肺活量で、吹き付けまたは吸い込み】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は尾守・夜野です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

セルマ・エンフィールド
この世界にいる今なら、私のことも分かる、と。
どこまでが知れる範囲なのか気にはなりますが、今は細かい検証をしている暇はありませんね。

まずは鏡を見つけましょう。生け垣をかき分け迷路を捜索します。見つけるのはそう難しくないとのことでしたが……
見つけたら質問を。声が聞こえたらそれが本物かどうかを聞こうかと思いましたが、敵が奇襲より先に声をかけてくる保証もなし。「オウガと私の距離」を質問します。

敵との距離が50m程度まで近づいたら【絶対氷域】を。反応速度もスピードも、空間全てを凍てつかせる冷気の前では無意味です。
来ることが分かっている奇襲など、恐ろしくもなんともありません。


天王寺・薫
ここって、生け垣な迷宮なのね。
それにしても、狼ね。
エッジ(ヤマアラシ)や、七海姉さん(シャチ)なら、狼程度、軽く捻ることができる相手ですわね。
でも、あたしはスカンク。そこまで大きい生き物じゃないから。
姿見ただけで警戒されるけど、奇襲の場合には関係ないわね。
なら、来るってことだと思うわね。

じゃあ、鏡よ鏡、狼がこちらに来るまであと何分?
そして、どの方向から出てくるかしら?

1分もしなければ、速攻で離れるわよ。
それ以上なら、準備時間あるし、指定時間きたら、呼んだ霊体と共に、おおよその方向にスカンクガス吹っかけるわ。
狼って、鼻が効くでしょ?
食らわせたら、生け垣を見て狼を噛み付くわよ。

アドリブ絡み歓迎


涼場・応為
シャーリーさん:f26811と共闘!アドリブOK

迷路を彷徨う時間を使って思考する(ユーベルコード

「鏡さん、おおかみさんの足の長さを教えて下さい」

シャーリーさんの質問を踏まえた、袋小路の通路部分、
絶妙な弁慶の泣き所ポイントに鋼線を張る。

談笑しつつおおかみさんを待ち構える。見つかった時怯えたふりを
して気を引きつけつつ誘導。

誘導にて鋼線でおおかみさんが転んだタイミングで、打刀で戦闘開始。

このタイミングでシャーリーさん側の作戦発動。
作戦になるべく気づかれないように派手な大立ち回りを行う。

最終段階にてシャーリーさんと挟み撃ちする形で二人掛かりで仕留める。


シャーリー・クラーク
応為さん:f27148さんと共闘!アドリブOK

ん~、私は考えるの苦手だから頭の良い応為さんの助けになる質問をしようかな!

生垣をかき分けて見つけた鏡さんに、
おおかみさんの攻撃の射程距離を教えて下さい!
と質問しよう。

二人で迷宮を歩きながら質問の回答を共有、談笑しながら
袋小路になった通路でおおかみさんを待ち構えよう。

おおかみさんの誘導は応為さんにお任せして、注意がそれている間に
私は体を水に変化させ天井に張り付きながらゆっくりとおおかみさんに近づこう。

えーいっ!
タイミングを見計い元に戻した体で天井から体当たり。
すかさずUCを発動。

みんな、お願いねっ!

召喚したサメさん達でおおかみさんに一斉攻撃!



●煙突直下の熱湯鍋のように誘い込み
 真実の鏡の生える庭園に猟兵達は転移する。
 討つべき敵はおおかみさん、この国特有の鏡を利用して立ち回る難敵との事。
 そんな狼を倒す為に二人の猟兵が庭園の中を歩いていた。
 考えるのはちょっと苦手なシャーリー・クラーク(大空を遊泳する鮫天使・f26811)、質問するなら探偵で頭の良い涼場・応為(驚天推理の脳筋探偵・f27148)の助けになる質問を考えている。
 一方、思索に耽りながらシャーリーについて歩く応為は既にユーベルコード発動中。
 その思索の時間が長ければ長い程に次の行動の成功率を増す力、最大限に発揮するには少しの時間も惜しいのだから。
 そんな彼女を連れるシャーリー、何となく野生の勘が働いた生垣にがばっと飛び込んでみればそこにはきらきら輝く鏡が一枚。
 引っこ抜くには抵抗がっちり、なのでこのまま質問をすることにする。
「おおかみさんの攻撃の射程距離を教えて下さい!」
『はい、水のお嬢さん。最大10メートルです』
 こんな風に返してくれるのか、とシャーリーがちょっぴり感心していると、その横から応為が頭を潜らせ質問する。
「鏡さん、おおかみさんの足の長さを教えて下さい」
『はい、桜のお嬢さん。72センチメートルです』
 その答えを聞いた応為はおおかみさんの脛の高さを計算。
 そしてシャーリーの質問を上手く利用できる袋小路を探す事にした。

 庭園の中をおばあさんの格好に扮したおおかみが歩いている。くんくんと鼻をひくつかせ、鏡を探り当てて質問する。
『猟兵とやらはこのまま真っ直ぐ一分進めばいるんだな?』
『はいおおかみさん、そのまま真っ直ぐ一分です』
 その答えを聞いておおかみさんはにんまり悪い笑顔を浮かべる。
 最初の質問は一度に多く食べるにはどちらにどのくらい進めばいいか、その答えに従って歩いてきたおおかみさんは所々で鏡の力を借りて標的へと近づいていた。
 そしてとうとう、談笑して呑気に歩いている二人の猟兵を発見。
 こんな油断しているならいきなり丸呑みも勿体ない。たっぷり脅して怖がらせた後の方が美味しいのだから。
 そんな風に考えたから、おおかみさんはがばっと飛び出し二人の猟兵の前に立ち塞がる。
 びっくりした二人の猟兵、シャーリーと応為はそんな狼に背を向け逃げる。
 けれどその速度は狼を引き離せない程度、そして遂に長い直線の末の袋小路へと追い込まれてしまう。
 すっかり絶望したような表情の二人に満足したのか、おおかみさんが駆け出して――そして丁度脛の高さ辺りに張られた鋼糸に足をひっかけてしまった。
 ピンと張られた鋼糸は応為の仕掛けたもの。丁度脛を――関節の関係で膝と足の間の足首に引っかかっているが怯える二人を直接食べてしまおうと勢い付いていたおおかみさんは見事にすっ転び。
 そのタイミングで演技を止めた応為、逸者因果繋の退魔刀を抜き狼の首を落とさんと一気に駆け出す。
『騙したな!』
 けれどおおかみさんは即座に起き上がり首元まで迫っていた刃を爪で受け止め弾き飛ばす。
 しかし応為も然るもので、吹き飛ばされても即座に狼に再び斬りかかりその爪と牙とを回避しながら時間を稼ぐ。
 そう、時間稼ぎ。応為が切り結んでいる最中、シャーリーは水の姿となり空の硝子に張り付きゆっくりと移動していた。
 セイレーンであるシャーリーの体は特別製、ソーダ水でできているから形も質感も透明度も自由自在。
 そんな彼女は庭園の空の硝子にぴったりと張り付いてそろそろと応為とおおかみさんの戦う真上へと移動していく。
 そして、
「えーい!」
 とおおかみさんの真上から声がし、上を向けば元の姿に戻ったシャーリーが空から体当たりの奇襲。
 フライングプレスが見事に決まり、くぐもった声を漏らすおおかみさんに構わずシャーリーはすかさずUCを発動。
「普段じゃ見れない特別なシャークショーをお見せするね!☆ さぁみんな、出番だよっ!♪」
 そして召喚されたのはシャーリーが鮫魔術で使役している彼女のサメ達、その体には無数のソーダ水の刃が生やされている。
「みんな、お願いねっ!」
 飛び退くシャーリーのその号令の下、サメ達がおおかみさんに一斉に襲い掛かる。
 喧嘩っ早いホオジロザメのラルフが真っ先に切り込んで、オナガザメのアレックスがジャンプしてから空より奇襲。他の性格も種類も様々なサメ達がソーダ水の刃で狼に斬りかかるけれど、中々致命打には至らない。
 しかし、おおかみさんがサメに気を取られているうちにその左右にシャーリーと応為がいつの間にか移動、呼吸を合わせた二人が同時に斬りかかる!
 サメの連係プレーに加え猟兵二人のコンビプレーは流石のおおかみさんも避け切れず、その胴にぱっくりと大きな刀傷が刻まれて。
『二対一は分が悪い! こんな所はおさらばだー!』
 けれどおおかみさん、とてもとても生命力が強いようで、これだけ斬り裂かれてもまだ逃げようとする気力がある。
 思い切り息を吸い、それを生垣に向けて吐き出せばそこにぽっかりと大穴が開いてしまう。
 応為とシャーリーはその余波で吹き飛ばされてしまい、逃げるおおかみさんを追うのが一瞬遅れてしまう。
 慌てて駆け出すが逃げ足が速いのか、既におおかみさんの姿はない。
 けれど十分な打撃は与えたはず。二人で協力したからこそのその成果だった。
 確実に止めを刺す為に、二人は所々の鏡に質問しながら狼を追いかけていく。

●白黒のお母さん
 そして迷路のような庭園を一匹の小柄なスカンクがたたっと走っていた。
 時折分岐で悩みながら進む彼女は普通の動物にしては妙に理性的で。
「ここって、生け垣な迷宮なのね」
 喋った。
 賢い動物である彼女、天王寺・薫(スカンク母さん・f25649)は生け垣中に飛び込み、その中にあった鏡の前に頭を近づける。
 普通の人間では素通りするには難しいけれども小柄なスカンクの体の彼女なら場所を選べばその中を通り抜けることも出来るのだ。
(「それにしても、狼ね。エッジや、七海姉さんなら軽く捻ることができる相手ですわね」)
 彼女は一家全員が白黒生物に関係した何らかの改造実験の実験体、ヤマアラシやシャチ――弟や姉なら軽く捻る事も出来るのだろうけれども、彼女自身はそこまで大きな動物ではないからそうはいかないだろう。息子達でも微妙かもしれない。
 とはいえスカンクは知っているなら肉食動物にも恐れられる存在、姿を見られただけで警戒されるはず。しかし奇襲であるならこちらを襲ってくる可能性も高いだろう。
 それならば、と彼女は鏡に問いかける。
「鏡よ鏡、狼がこちらに来るまであと何分? そして、どの方向から出てくるかしら?」
『はい黒と白の艶やかなお方。……狼はあと二分、貴女の今見ている方向の右斜め後ろからやってきます』
 そしてその方向へと振り向けば其方は生垣、これを突っ切ってくるのか壊すのかは分からないけれども準備時間は十分。
 そのまま薫は生垣を通り抜けて狼のやってくる生垣から十分距離を取ると、
「かつて飲み込まれた【あたし】だったスカンクの魂、今、ここで出てきて敵をやっつけておいで」
 ユーベルコードを起動すれば、彼女の四倍は大きなスカンクの霊が出現する。
 そしてよくよく耳をすませば足音が聞こえる。
 ――来た。そして薫と呼びだした霊は生け垣に向かって共にスカンクガスを吹っ掛けた。

『小さな猟兵とやらはこのまま真っ直ぐ一分進めばいるんだな?』
『はいおおかみさん、そのまま真っ直ぐ一分です』
 小声で狼のオウガが生け垣の影に隠れた鏡に問いかければ望んだ答えが返ってくる。
 二人の猟兵を何とか振り切り、次に鏡に欠けた質問は狙い易い小さな猟兵はどの方角にどれ位進めばいるか、その質問の答えに従い彼は走ってきていた。
 生け垣をその凄まじい肺活量の吹き付けでところどころ破壊しつつ進むオウガは、手痛い反撃を受けた後でも自分が狩るものと疑っていない。
 そして鏡の答え通りの時間、目の前の生け垣の向こうに猟兵がいる。
 生け垣越しに吸い込んで、そのまま丸呑みにしてしまおうとおおかみさんは大きく口を開けて息を吸い――臭いを感じてしまった。
 声にならない絶叫が迷宮中に響く。
 一部でとても有名なスカンクの最臭兵器、それを口からとはいえ思いっきり吸い込んでしまったのだからたまらない。
 のたうち回る狼に、生け垣の向こうから二つの動物の影が飛び出してきて狼の尻尾に噛みついて。
 ――まずい! まずい! そう考えた狼は思いっきり息を吐き出すと生け垣の迷宮を全力ダッシュで逃げていく。
 その風圧に吹き飛ばされて生け垣に飛び込まされてしまった薫とスカンクの霊、けれど狼も苦し紛れだったからか無傷で這い出して来た。
 ぶんぶんと首を振った薫は気合いを入れ直し、狼の逃げた方へと駆け出した。

●氷の猟師
 そしてそこから離れた別の場所。
 生垣の迷宮をセルマ・エンフィールド(絶対零度の射手・f06556)は静かに走る。
(「この世界にいる今なら、私のことも分かる、と」)
 その範囲がどこまでなのかは少々気になる。使用する得物や戦闘スタイル等ももしかしたら答えられているのかもしれないが――迷宮災厄戦最中の今は細かい検証をする余裕もないだろう。
 ふと、生垣の中からきらりと一瞬だけ光が見えた気がする。セルマはその生垣をかき分ければそこには手鏡程度の綺麗な鏡が地面から生えていた。
 さて質問をしようか、とかける言葉を頭に思い浮かべれば、迷宮に奇妙な悲鳴が響き渡る。
 ――間違いなく知り合いではない、しかし距離は意外と近そうにも思える。
「鏡よ、オウガと私の距離はどのくらい?」
『はい涼やかな猟師さん、直線距離で八十メートルとなります』
 猟師さん。マスケット銃を持っているからだろうか。
 彼女のユーベルコードの射程距離には入っていて、声からも方角は概ね分かっている。けれど逃げられる可能性を考えるのならばもう少し引き付けた方がいいか。
 それから数度鏡に狼との現在距離を問いかけ、五十メートルを切った瞬間にセルマはユーベルコードを起動する。
 強烈な冷気が生垣を凍らせ、硝子のように砕けていく。氷の生垣が崩れ、拓けた視界の向こうには凍り付いたおおかみさんが一匹。
 チョークを震える手で口に放り込み速度を強化するも、この冷気は空間全てを凍てつかせるもの。
 逃げるにはもう手遅れだ。
「この領域では全てが凍り、停止する……逃がしません」
 例え知り合いに声を似せて騙し討ちをやってくるとしても、来ることが分かっているならば恐ろしくもなんともない。
 氷のような鋭き銃剣を狼に向け、そしてマスケット銃の引鉄を引く。
 猟師――ではなく狙撃手の彼女の氷の銃弾は過つことなく狼を穿ち、その身体を凍らせていく。
 そこに合流した二人と二匹、セイレーンの号令にけしかけられた空泳ぐサメ達の水の刃がまず斬り裂き、次いでスカンク達がその凍り付いた首に牙を突き立てる。
 そして、桜の探偵が凍り付いたおおかみさんをその刀で真正面から縦に斬り裂くと、氷の狙撃手の銃弾が連続で撃ち込まれる。
 そしてすっかり凍り付いてしまったおおかみさんは、乱暴に触れられた氷の華の様にぱあんと弾け、砕け散った。

 倒すべき敵を打ち倒した猟兵達は、次の戦場へと向かう為にグリモアベースへと帰還したのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年08月17日


挿絵イラスト