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迷宮災厄戦⑲〜蒼黒き竜人、サー・ジャバウォック

#アリスラビリンス #戦争 #迷宮災厄戦 #猟書家 #サー・ジャバウォック

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●虚構であるがゆえ、最強
「一片の真実も記されていないがゆえに、内容を否定し尽すことができない、ねぇ。ははは、よく考えたものだ」
 その声色に少しの怒りを滲ませてグリモア猟兵、アメーラ・ソロモンは笑っていた。書を管理し書と共に生きる彼女にとって、“猟書家”という存在は受け入れがたいものだろう。
 特に虚構を逆手に取った『サー・ジャバウォック』は侵略蔵書も含め、彼女の仇敵と言っても過言ではない。
「書とは、歴史を記し事実を遺し、真実を導くためのものだ。虚構で彩られた物語は大変結構。しかしそこにだって、真実は含まれている。それをこのように愚弄するだなんて―――はは、久しぶりに血管がぶち切れそうだ!」
 彼女の中の英傑たちもそう叫んでいるのだろう。淡々と怒りながらアメーラは予言書、グリモアを開く。
「猟書家『サー・ジャバウォック』はオウガ・オリジンの力を奪った猟書家たちの中でも最強の座を持つ男だ。書架の王とやらに次ぐ力を持つ強敵。心してかかってくれたまえ」
 投影魔法にて映し出されるのは焼け焦げた森の国だ。アリスラビリンスに広がる数多の国のひとつだろう。そこにて佇む半竜半人のサー・ジャバウォックは、まるで猟兵たちを待ち構えているようですらあった。
「そして侵略蔵書『秘密結社スナーク』。彼の書から生まれる架空の怪物はなかなかに厄介だ。なにせ“架空”だからね。目にも見えない……どころか、姿形がそもそも“ない”。しかもジャバウォックが細やかに操ることができるときたものだ。もし先に召喚されてしまったら、いかにこの怪物を避けるかがカギになるだろうね」
 そのほかにも手にしている青白い大剣による攻撃や、竜人形態へ変化しての攻撃が予測される。相手は猟兵たちより明らかに格上だ、どうしても後手に回ることになるだろう。ならば彼の攻撃をどういなし、どう対応するか。その策を立ててからの突撃が推奨される。
「私も乗り込んで行って戦いたいところだが……討伐は君たちに一任しよう。それこそ書に記されるような―――そんな戦いを、期待しているよ」


夜団子
 出遅れましたが戦争シナリオです!! 思いっきり暴れてやってください!
 今回はいただいたプレイングをできるだけ全てリプレイにしていきたいと思います。

●補足
 このシナリオには特別な「プレイングボーナス」があります。これに基づく行動をすると有利になります。
 今回の条件は「敵の先制攻撃ユーベルコードに対処する。」です。
 また、このボスは必ず先制攻撃をしてきます。その対処を怠ると必然的に苦戦判定となるのでお気を付けください。

 それでは、皆さまのプレイングをお待ちしております!
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第1章 ボス戦 『猟書家『サー・ジャバウォック』』

POW   :    侵略蔵書「秘密結社スナーク」
見えない【架空の怪物スナーク】を放ち、遠距離の対象を攻撃する。遠隔地の物を掴んで動かしたり、精密に操作する事も可能。
SPD   :    ヴォーパル・ソード
【青白き斬竜剣ヴォーパル・ソード】を巨大化し、自身からレベルm半径内の敵全員を攻撃する。敵味方の区別をしないなら3回攻撃できる。
WIZ   :    プロジェクト・ジャバウォック
【人間の『黒き悪意』を纏いし竜人形態】に変身し、武器「【ヴォーパル・ソード】」の威力増強と、【触れた者の五感を奪う黒翼】によるレベル×5km/hの飛翔能力を得る。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ガルディエ・ワールレイド
姿形すらしない架空の存在スナーク
だが少なくとも、この戦場でこの瞬間においてスナークは存在する
確かな殺意をもって攻撃を仕掛けてくる事が、その証明だ
そして存在しているのならば、やりようは有るさ

◆先制対策
聴覚と《第六感》を使い大雑把にでも良いからスナークの位置を把握。
敵は強敵だ。ある程度のダメージは覚悟して《ダッシュ》しつつ、敵を《なぎ払い》ながら強行突破を試みるぜ。

◆戦闘
《怪力/2回攻撃》を活かす魔槍斧ジレイザと魔剣レギアの二刀流。
《見切り/武器受け》での受け流しや弾き返しで防御。
UCが発動可能状態になれば、【竜撃】も使用して切り込むぜ。
仮に不可視のスナークが盾になっていても纏めて粉砕するまでだ。



「やはり、来ましたか。異邦より訪れる世界の守護者……できることなら、ヒーローズアースにて、戦いの歴史を繰り返す駒として対峙したかったところですが」
 くつくつと笑いながらサー・ジャバウォックはその余裕を崩さない。己と猟兵たちの力量差を明確に認識しているのだろう。その手にある侵略蔵書、『秘密結社スナーク』もその自信を高めるひとつの理由かもしれない。
「しかし……どう私に打ち勝つおつもりで? スナークはその全てが虚構……ふふ、姿形がなければ滅することもできないでしょうに」
 侵略蔵書がパラパラと捲りあげられる。仄暗く輝いたそのページが落ち着いたのとほぼ同時に―――今までなかった殺気が、先鋒のガルディエ・ワールレイド(黒竜の騎士・f11085)に突き刺さった。
「姿形すらしない架空の存在スナーク……だが少なくとも、この戦場でこの瞬間においてスナークは存在する」
「ほう?」
 愉し気に笑って先を促すサー・ジャバウォックに、ガルディエも甲冑の下で笑みを浮かべた。目に見えない怪物の位置を、放たれる殺気で特定しながらガルディエは言葉を紡ぐ。
「確かな殺意をもって攻撃を仕掛けてくる事が、その証明だ。そして存在しているのならば、やりようは有るさ」
 虚空からガルディエへ向けられる殺気。それがその鋭さを増した瞬間、ガルディエは勢いよく地を蹴った。襲ってくるであろうスナークの存在を、完全に見分けるのは難しい。だが、相手の出す音と殺気を感知することで大雑把に場所を把握することはできる。それならば、あとは手にした武器で大きく薙ぎ払ってやればいい。
「うおおおおっっ!!!」
 ブンッ、と振り回した魔槍斧ジレイザは大きく空ぶったが、即座に振るった魔剣レギアの刀身がなにかの手ごたえを捉えた。そこより敵の位置を特定しガルディエはさらに踏み込む。振り抜いたジレイザを回し戻し、力任せに架空の敵スナークへ叩き込んだ。
 ガルディエの体にも多くの傷が生まれ赤い雫が滴る。だがその痛みは彼の足を止めるには足らなかった。そして、その怪力のままスナークを捉えた武具を大きく振り抜く! 勢いに負けた架空の怪物は横に薙ぎ払われ、ガルディエとサー・ジャバウォックの間に障害はなくなった。
「ほう―――想定よりもやりますね」
「ハッ! 一応、騎士を名乗ってんだ。簡単には退けねぇな!」
 迫るガルディエにサー・ジャバウォックも剣を抜いて応戦する。だがスナークを退け、彼の怪物が追い付いてくる前にサー・ジャバウォックへ肉薄したガルディエの勢いは、その程度で受け止められるわけがない。振るわれた斬竜剣はレギアによって受け流される。
「消し飛びな!!!」
 刀身に念動力を宿し、ガルディエは大きく魔槍斧ジレイザを振りかぶった。一度剣を受け流され隙を作ったサー・ジャバウォックはその一撃を回避するすべがない。苦し紛れに、スナークを自身の前へと滑り込ませるが。
「盾にしようが、関係ねぇよ。纏めて……粉砕するまでだ!!!」
 その叫んだ宣言通り。ガルディエの振り下ろした一撃はスナークを打ち砕きサー・ジャバウォックへ届いた。強烈な初撃を喰らったサー・ジャバウォックはその顔を歪ませ―――それでも不敵に笑う。
「成程、成程。これは御美事……少々、見くびりすぎていたようです」
 サー・ジャバウォックとの戦いの火蓋は、切って落とされたばかりだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

ナイ・デス
完全な虚構、故に否定し尽くすことが、できない……?
だから……何なのでしょう?
倒せない……?

【第六感】で怪物、感じ取ってみようと、集中して
【覚悟、激痛耐性、継戦能力】耐えて【カウンター】を狙い
怪物の厄介さを、全てでなくても、理解して
けれど

私も、ここにいて、ここにはいない、です

『フェイタルムーブ』

私を倒すには、どこかの世界にはある筈の、本体を
怪物を倒すには、あなたを、ですね……!

【怪力】で地を蹴って
【念動力】で背を押して【ダッシュ】
怪物も攻撃も無視、受けても『未だわたしは此処にいる』再発動
止まらない
【限界突破】繰り返し
止まらない、逃がさない、故に必殺の動き
【鎧無視攻撃】刃をあて【生命力吸収】喰らう



「完全な虚構、故に否定し尽くすことが、できない……?」
 グリモア猟兵の言葉を反芻しながらナイ・デス(本体不明のヤドリガミ・f05727)は思考する。姿形のない、虚構である“スナーク”。その在り方はどこか、ナイと似ていた。
「だから……何なのでしょう? 倒せない……?」
 それ故に―――ナイは知っていた。たとえ姿形が無く不明瞭でも、“終わりがない”ということはないのだと。
「次の敵は貴方ですか、おチビさん。貴方は私にどんな力を見せてくれるのですか?」
 戦場に立つナイへサー・ジャバウォックは鷹揚に微笑む。敵意がまるでないような素振りをしていながら、彼はさらりと侵略蔵書を開いた。怪物“スナーク”が、召喚される。
「…………」
 ナイは答えない。全身の神経をサー・ジャバウォック……否、サー・ジャバウォックとナイの間にいるであろう“スナーク”に向けて集中させる。様々な世界を、戦場を巡り培った第六感でその怪物を読み取ってみようと大きく息を吐き―――
「!」
 直感の赴くまま、咄嗟に防御態勢をとった。
「おや、スナークの攻撃を読みましたか」
 虚空から繰り出される打撃、斬撃。そのひとつひとつがナイの体を裂く。防御態勢ではあるもののその攻撃を完全に防げているとは言い難く、誰から見てもナイのジリ貧であることは明らかだった。
(怪物の厄介さを、全てでなくても、理解できた……けれど)
 突如、ナイが庇っていた顔を上げた。防御態勢を急に解いたことにサー・ジャバウォックは違和感を覚えたものの、スナークがそれを見逃すはずもなく。ナイの頭部はぐしゃりと打ち潰された―――はずだった。
「私も、ここにいて、ここにはいない、です」
 ―――発動、『フェイタルムーブ』
 美しい対の短剣がサー・ジャバウォックの“背中”を切り裂いた。背後に新たに生まれたナイはその剣を容赦なく振るう。
「なっ……!? 先ほど、そこで死んだはず、」
「私を倒すには、どこかの世界にはある筈の、本体を」
 ナイは死ねなかった。だが終わりはある。いつかどこかの世界に置き去りにされた本体が壊れてしまったその日が、ナイの終わりの日だ。―――だからこそ時折、壊れないで、と願う。
「怪物を倒すには、あなたを、ですね……!」
 サー・ジャバウォックにはじき返されようとも、新たに召喚されたスナークが襲い掛かってこようとも。ナイの刃を止めることはできない。怪力で地を蹴り、念動力も稼働して体を押し、足を進める。スナークに殴り倒されようとも、また新たな仮初の体が生まれるだけだ。
 止まらない、逃がさない、故に―――必殺。
「ぐ、はァッ!?」
 繰り返された斬撃はサー・ジャバウォックに深手を与えた。傷口だけでなく、切り裂かれるたびに生命の力を奪われ、彼の竜人も肩で息をし始める。
「架空には架空を、ですか……成程、一本取られましたね」
「まだ、終わらない」
 ナイの体がスナークに握りつぶされ、また新たなナイが生まれる。死角をつくナイの攻撃を剣で受け止めながら、サー・ジャバウォックは口に溜まった血を地面へと吐き捨てた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

御剣・刀也
遠距離戦もできるのか
遠、近、中と隙は少なさそうだ
こういうオールラウンダーは厄介だな。ま、それでも俺のやることは変わらない
前に出て、斬り捨てるだけだ

侵略蔵書「秘密結社スナーク」による遠距離攻撃が先にやってくるのはわかっているので、勇気で被弾を恐れず、ダッシュで一気に間合いを詰め、避けれるものは第六感、見切り、残像で避けつつ、避けきれないものは武器受けで弾き、一気に距離を詰めて、捨て身の一撃で斬り捨てる
「近付く迄は苦労したが、ここは、俺の距離だ!」



(遠距離戦もできるのか。遠、近、中と隙は少なさそうだ)
 他の猟兵とサー・ジャバウォックの戦いを観察しながら、御剣・刀也(真紅の荒獅子・f00225)は腕を組んだ。戦場において相手の技量・戦術を見極めるのは大事なことだ。気を高ぶらせるのは、その後。
「次は貴方と。どうも近接戦が多いですね」
「てめぇみたいなオールラウンダーは厄介だな。ま、それでも俺のやることは変わらない。前に出て、斬り捨てるだけだ」
 互いに殺気をぶつけ合いながら、刀也は日本刀『獅子吼』を構える。それを一瞥してサー・ジャバウォックも侵略蔵書を開いた。
「……剣士ですか。いいでしょう。強者揃いのヒーローズアースを統べるための、良い練習になりましょう」
「練習台になってやれるかはわからないな。ここでてめぇを斬り捨てるんだからよ!」
 駆けだす刀也、光り輝く侵略蔵書『秘密結社スナーク』。刀也が肉薄するよりも早く、スナークの召喚は終わった。だが刀也は駆けるスピードを落とすことなく間合いを詰めていく!
 当然、スナークの妨害が刀也を襲う。戦いの中で培われてきた直感でいくつかは避けるものの、やはり無傷とはいかない。致命傷になりそうな頭や腹部などの急所はしっかりと刀で弾き返しつつ、それでも刀也は駆けるのをやめなかった。
 肉が裂かれ血が噴き出し、残像となって舞う。刀也の速さに置いていかれたそれらは、遅れて戦場の地面へと叩きつけられた。それを刀也と見誤ったスナークの攻撃が大きく空ぶったようで、刀也は怪物の攻撃範囲からすり抜け、障害のなくなった戦場をただ駆ける。
 己が傷つくことも厭わない、まさに修羅。ただ強き者と戦えればそれが本望、そう言わんばかりに、刀也は笑みを浮かべて走り抜いた。血みどろになりながら浮かべたその表情に、一切衰えることのないその勢いに、さしものサー・ジャバウォックもぞくりと肌を粟立たせて―――
「近付く迄は苦労したが―――」
 傷口からは血が流れ、あざだらけになりながら。それでも刀也の目は爛々と輝く。一瞬呆けた隙に目の前まで躍り出ていた刀也に、サー・ジャバウォックはチッと舌を打ち剣を握った。しかし、そのスピードが刀也の勢いに勝るはずもなく。
 カチリ、と柄を浮かせ、刀也は獅子吼を抜き放った。
「―――ここは、俺の距離だ!」
 大きく上段に振りかぶり、持てる力全てを込めて、刀を振るう。
 雲耀の太刀―――それはその言葉の通り、一刀両断の必殺剣。
「くッ!!」
 負けじとサー・ジャバウォックも斬竜剣を振り抜くも、今更斬られたところで止まる刀也ではない。獅子吼の一撃は、サー・ジャバウォックを袈裟懸けに斬り捨てる!
「ぐ、ぅぅッ……ッ!」
 後ろに跳び、距離を飛びながら傷口を抑えるサー・ジャバウォック。なかなかやりますね、と呟くその顔には蓄積した疲労と苦痛が、少しずつ滲み始めていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

クロノ・ライム
「人の悪意を利用するとは、なんと卑劣な行いでしょう。
誰にでも心の弱い部分があるのは当然のこと。それを乗り越えて人々が信頼しあえることがどれだけ尊いか」

というのがクレリックでもある僕の基本的な気持ちなのですが、相手が「人間の『黒き悪意』を纏う」という使い方をするのなら、いっそ利用し返しましょう。
彼が人間の悪意を纏うことで身体や影には闇の部分が増えるはず。
僕は黒のコオトを纏って闇の中に紛れます。五感を奪われたら大変なので翼以外の部分ですね。

なんとか闇に紛れることで敵の剣を凌いだら、「エレメンタル・ファンタジア」で光の嵐を発生させて攻撃します。
「闇より強い光であなたの利用する悪意を消し飛ばします!」



「少々遊びすぎましたね」
 傷を庇いつつもサー・ジャバウォックは未だしっかりと立っている。流石は猟書家最強の男、まだまだ撃破には至らないだろう。
「サー・ジャバウォック、そのお命、ここで頂戴いたします」
 竜人に立ちはだかる新たな猟兵、クロノ・ライム(お菓子に目がないクレリック・f15759)。その姿を見下ろし、サー・ジャバウォックは一度その侵略蔵書を閉じた。
「侮るのはやめましょう。しかし、スナークに頼りすぎているのもまた事実。私の本当の姿でお相手いたしましょうか」
 ズズ……とサー・ジャバウォックの足元から黒い澱みのようなものが生み出される。じわりじわりとそれは彼の体を包んでいき、姿を変えていった。人からより竜に近く。斬竜剣ヴォーパル・ソードもまた黒に覆われ、サー・ジャバウォックの背中より生える黒翼が、バサリと広げられた。
「人間は弱い……どんな聖人であろうともこの澱みを生み出すことを止められません。さあ、『黒き悪意』を纏った私に勝てますかな? 若きクレリック殿」
「……人の悪意を利用するとは、なんと卑劣な行いでしょう」
 信念を持ってクロノは答えた。羽織った真っ黒なコートをはためかせ真正面からサー・ジャバウォックに相対する。
「誰にでも心の弱い部分があるのは当然のこと。それを乗り越えて人々が信頼しあえることがどれだけ尊いか」
「では、是非ともご教授願いたい。……貴方の、力でね!」
 強化されたヴォーパル・ソードを振りかぶり、クロノの体を真っ二つにせんと斬りかかる。ブンッと振りぬかれた斬竜剣は、確かにクロノに直撃した。その体を叩き斬ってやったはずなのに―――斬った手ごたえがない。
「……? どこに消えました」
 まるで霞となったように、消えていった少年をきょろきょろと探す。翼を広げ空を舞えど、クロノの姿は一向に見当たらなかった。
「一撃で消し炭……というには痕跡がなさすぎますね。一体どこに……」
「……先ほど語ったのが、クレリックでもある僕の基本的な気持ちなのですが」
「!」
 姿の視認できない相手の声がすぐそばに聞こえ、サー・ジャバウォックは焦ったように振り返った。しかしどれだけ見渡せど、彼の姿はない。
「あなたが、“人間の『黒き悪意』を纏う”という使い方をするのなら、いっそ利用し返そうと思いまして」
 振り返ったところで見つかるはずがない。なぜならクロノは―――サー・ジャバウォックの体に張り付いているのだから。ブラックタールの体を活かして、コートで隠れ、黒き悪意に紛れたクロノはそのまま精霊の力を集約させる……!
「闇より強い光で、あなたの利用する悪意を消し飛ばします!」
「『黒き悪意』に紛れていただと……!? まずい、この強い光は―――」
 至近距離で発生した光の嵐にサー・ジャバウォックも息を飲む。まばゆい光は黒い澱みを吹き飛ばし、サー・ジャバウォックの体を容赦なく包み込んだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

終夜・還
やーアメーラ達があんな怒ってるの見たの初めてかも
俺もこういうの好きじゃないしねェ、キッチリ仕事してきましょかァ


相手のやる事を眺めつつ俺も戦闘準備で本を召喚
飛ぶでも攻撃するでもお先にどうぞ?俺を攻撃する際の予備動作を【見切り、高速詠唱】で即死霊召喚しよう

なァに、一発貰おうと五感奪われようと詠唱は可能さね
こちとら慣れた口の動きくらいなら感覚が無くても出来っから

視覚聴覚嗅覚触覚…これくらい奪われようとも喚び出すだけ出来れば十分だ

無効化してやんよ
デバフなら解除すればいいしねェ?

あとは飛ぶ敵を銃を召喚し【範囲攻撃として制圧射撃】
下手な鉄砲数撃ちゃ当たるってね
あとは環境耐性(慣れ)でガンガン見切ってこー★



(やーアメーラ達があんな怒ってるの見たの初めてかも)
 マジギレモードの恋人とその家族の様子を思い出しながら終夜・還(終の狼・f02594)は苦笑する。
(俺もこういうの好きじゃないしねェ、キッチリ仕事してきましょかァ)
 本に対しては、還だって思うところがある。ここはキッチリ仕留めて、彼女の怒りも己の思いも収めていきたいところだ。
「ふ、ふ、次は死霊術士、と。生憎ですが、今の私はだいぶ気が立っておりますよ……?」
 『黒き悪意』を身に纏い、強化した斬竜剣『ヴォーパル・ソード』を構えるサー・ジャバウォックは、ぎろりとその竜の瞳で還を睥睨した。度重なる戦闘で蓄積したダメージが、彼の余裕を崩しかけている。おーおー無様だねェ、と還はくつくつ笑った。
「飛ぶでも攻撃するでもお先にどうぞ? 大物ぶって、ボロボロのご老人に先はくれてやるさ」
「……ずいぶんと生き急ぎたいらしいですね」
 翼を広げたサー・ジャバウォックに対し、還も召喚した記憶の書を開く。しかし流石は格上、サー・ジャバウォックの肉薄の方が、還よりも早かった。
(チ、流石に間に合わねェか……!)
 冥府とこの世を繋ぎ、術を紡ぎながらも還はサー・ジャバウォックから目を離さない。黒翼を広げて襲い掛かってくる竜人が、振り下ろされる剣が、確かに還の瞳に映る。
「グッ!」
 予備動作を見切り後ろに跳ぶもサー・ジャバウォックの方が速かった。斬りかかってくるその斬撃を、結界術でどうにか受け止めるが。
「いただきますよ」
 黒翼が還に触れ、五感を根こそぎ奪っていく。目も耳も鼻も利かない、何も感じ取ることが出来ない状態。そんな状態では戦えるはずもないだろう。サー・ジャバウォックは勝利を確信して口端を吊り上げた。
「……なァに、一発貰おうと五感奪われようと詠唱は可能さね」
 だから。還が未だ不敵に笑って書を構えるのを見て、目を大きく見開いた。
「こちとら慣れた口の動きくらいなら感覚が無くても出来っから。視覚聴覚嗅覚触覚……これくらい奪われようとも喚び出すだけ出来れば十分だ」
 その宣言通り、還はそのまま即座に死霊を召喚した。至近距離で召喚された死霊たちの攻撃に、サー・ジャバウォックは対応できない!
 死霊たちの牙が、爪が、乱舞がサー・ジャバウォックを食い荒らす。翼を広げて距離を取ろうとも、一度接敵した死霊たちの穢れは容赦なくサー・ジャバウォックを包んでいた。ボロボロッ、と黒い澱みだったものが、崩れ落ちていく。
「何……!?」
「全部無効化してやんよ。デバフなら解除すればいいしねェ?」
 パチンと指を鳴らして、還はその目を開く。奪ったはずの五感も穢れによる無効化で還の元にもどり、変身状態もほとんど解除された。残った翼で空こそ飛んでいるものの、それも時間の問題だろう。
 記憶の書を消した還の右手に、新たに魔銃が召喚される。カチリ、と撃鉄を起こし銃口をサー・ジャバウォックへ向けながら、還は今日一番の笑顔を浮かべた。
「下手な鉄砲数撃ちゃ当たるってね。ガンガン見切ってこー★」
 魔力を最大まで込めた魔弾が次々と撃ちだされていく。被弾するが早いか変身が切れて落下するが早いか。どちらにせよサー・ジャバウォックにとって不利な戦いが始まった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

吉備・狐珀
信じる力ですか。それは確かに強大な力を生みますが…。

UC【破邪顕正】使用。
姿が見えないのならわざわざ探しはしない。けれどそこに「ある」のなら。
私達を狙う殺気、攻撃を仕掛ける気配、物を掴んだり操作した時に発生する音、それらを(第六感)を研ぎ澄ませ(見切り)つつ(激痛耐性)の(オーラ)でつつまれた(結界)で防ぐ。
ウケ、結界の強化に力を貸して下さいね。

スナークの攻撃をやり過ごしたら(破魔)の力をこめた御神矢をジャバウォックに(一斉発射)。
月代、ウカ、矢の速度を速めるために(衝撃波)で(援護射撃)をお願いしますね。

私にも信じているものがあるのですよ。
それは「猟兵には貴方達を打ち砕く力がある」ことです



「信じる力ですか。それは確かに強大な力を生みますが……それをこのように利用されるとは」
 眉に皺を寄せながら吉備・狐珀(狐像のヤドリガミ・f17210)は厳しい目をサー・ジャバウォックへ向けた。変身を解かれ地面に降りたった彼は、改めて狐珀に立ちふさがる。
「信じる心が反対に疑惑を呼び、そして疑惑がまた味方を信じる動機となります……歴史は繰り返されるのですよ、お嬢さん」
「繰り返そうとしている、の間違いでは?」
 そうとも言いますね、と肩をすくめるサー・ジャバウォック。これ以上の会話は無駄だろうと、狐珀は白と黒の狐と共に臨戦態勢に移行した。
「しかし、どうしますか? 確かに『黒き悪意』は奪われましたが……まだ私には、この『秘密結社スナーク』がありますよ」
 ぱらり、ともう一度開かれた侵略蔵書が光り輝き始める。その輝きを見据えながらも、狐珀は退かなかった。姿が見えない『怪物スナーク』。ならば、わざわざ探しに行く必要はない。
(けれど、そこに「ある」のなら……!)
 肌に、耳に、空気に。神経を集中させわずかな気配を聞き分ける。姿かたちがなくとも、今ここに狐珀を害さんとする“スナーク”が存在するのならば。その存在を、視覚以外をもって待ち構える。
「…………! ウケ!」
 狐珀の言葉に応じて、白狐が結界を張る。ガキィンッと物々しい音と火花が狐珀のそばで散った。姿はない、透明ななにかが、狐珀たちの結界を打ち破ろうと何度も何度も結界を殴り、引っかき続ける。ギィギィと嫌な音を立て、結界が軋んだ。その正体の見えなさ、不気味さは、まさに“怪物”であった。
「っ、ですが、スナークさえ防げばこちらのものです。ウケ、そのまま結界の強化に力を貸して下さいね」
 巻物を持った白狐は小さく鳴いて狐珀に応える。それにうなずいて、狐珀はその手に光り輝く御神矢を生み出した。破邪の力を持つそれはまっすぐに―――サー・ジャバウォックへ向けられる。
「月代、ウカ、矢の速度を速めるために援護をお願いしますね」
 宝玉を手にした黒狐が飛び跳ね、月白色の仔竜が狐珀の懐から飛び出した。二匹はそれぞれの力を用い、主人の補佐をせんと構え始める。
「……その矢が、果たして私を貫けますかな?」
 サー・ジャバウォックは斬竜剣、そして竜人部分の鱗で防御姿勢に入る。それらを貫き、彼に追い傷を負わせることができるかどうか。それは狐珀にもわからないことだった。
 ―――だけれど。
「……私にも信じているものがあるのですよ」
 キリキリ、キリキリ。狐珀は全力をもってその弓を引き絞る。隣で結界が悲鳴をあげているのを聞きながら、渾身の一撃が放てるその時まで耐え続けた。
「それは、『猟兵には貴方達を打ち砕く力がある』ことです。さあ、ご覚悟!」
 その言葉と共に、御神矢は撃ち放たれた。神の加護を得、邪を打ち払う力を得たその矢はその数を増やし、一斉にサー・ジャバウォックへ襲い掛かる!
「グッ、がッ!」
 剣に跳ねのけられいくつかは地へと落ちたが、剣を振るった隙をついた一矢がサー・ジャバウォックの脇腹へ突き刺さった。鱗を避け突き刺さったその一矢。それが始まりとなり、またひとつ、またひとつと矢がその体を貫く。血を流しながら、サー・ジャバウォックは苦悶の表情を、はっきりと浮かべていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

ジェイ・ランス
【POW】※アドリブ、連携歓迎
架空、架空ねえ。悪魔の証明やシュレディンガーの猫を味方につけたような技だなあ。でもなあ、それってつまり、「証明」しちまえばいいんだろ?
簡単… ああ、実に簡単な証明だ。
【世界知識】から怪物の【情報収集】、そして世界への【ハッキング】。

『Ubel:Code Nibelungen Dame.』

あんたの蔵書から歴史を奪い、秘密結社スナークは"存在しなかった"ことにする。存在しないものは勝利し得ない。
所詮はあんたの妄想の産物だ。仮説は仮説に、猫は小箱戻り、悪魔は無いと立証し、全て無に還ってもらう。
―――証明終了。あんたはただの半竜半人になり、かくして【蹂躙】は始まるのさ……



「架空、架空ねえ。悪魔の証明やシュレディンガーの猫を味方につけたような技だなあ」
 ジェイ・ランス(電脳(かなた)より来たりし黒獅子・f24255)は侵略蔵書『秘密結社スナーク』をそう評した。まるで論理的思考の隙間をついたような、でたらめな技。だというのに否定しきれないというのはなかなかに厄介で。
 だからこそ、ジェイはその厄介さを鼻で笑いとばす。
「でもなあ、それってつまり、『証明』しちまえばいいんだろ?」
 『否定し尽すことができないゆえ、消し去れない』のならば。無理やりにでも『スナークは存在しない、と証明』してしまったらどうなるのだろう?
「ッ、ははは! 簡単に言いますね猟兵風情が。一時的にでも『スナークの不在』を証明すると! 吠えたものです。よろしい、否定できるのならば示してください。その前に倒れると思いますがね!」
 召喚される『怪物スナーク』。姿形を持たないそれは、己の存在を否定しようとするジェイへ容赦なく襲い掛かった。衝撃によって怪我を負い、痛みを受けながらもジェイは演算を止めない。口の中が切れて溜まった血を地面へ吐き捨てる。
 激痛に対する耐性でどうにか立ち上がりながら、冷静沈着にジェイはある概念兵装を顕現させる。電脳の力で“概念”を刀の形に固めた『事象破断刀』。その柄をしっかり握り、ジェイはまっすぐとサー・ジャバウォックを見据えた。
 おそらくは、スナークがどこかからジェイへもう一度襲い掛かってくる。だからその前に……ジェイは、その事象破断刀を、力強く“投げた”。
「……ッ!」
 事象破断刀が一点を通り過ぎたとき、サー・ジャバウォックがぴくりと眉を吊り上げた。おそらくはそこにいたスナークを刀がすり抜けたのだろう。そして事象破断刀はサー・ジャバウォックに、侵略蔵書『秘密結社スナーク』へ、突き刺さる―――
「……。ハハ、なにも、起こりませんが?」
 衝撃に備え体をこわばらせていたサー・ジャバウォックが嘲るような笑いを漏らす。痛みも傷も、サー・ジャバウォックには訪れない。ならば、スナークがこの猟兵を蹴散らして終わりだと、勝利を確信して。
 ……サー・ジャバウォックが度重なる戦闘で疲労していなければ、ダメージが蓄積されてなければ、見抜けていただろう。もしくは、ジェイの事象破断刀に斬られることもなかったかもしれない。
「……あんたの蔵書から歴史を奪い、秘密結社スナークは"存在しなかった"ことにした。存在しないものは勝利し得ない」
「なにを! 見ての通り私もスナークも無事ですが? やはりスナークを否定することなど―――」
 そこまでのたまって、サー・ジャバウォックは気が付いた。侵略蔵書の様子がおかしい。どのページを開いても、そこに広がるのは空白だった。運命改変力を込めた刃は、確かに本来あるべき運命を捻じ曲げ反転させたのだ。
「『Ubel:Code Nibelungen Dame.』。所詮はあんたの妄想の産物だ。仮説は仮説に、猫は小箱戻り、悪魔は無いと立証し、全て無に還ってもらう」
 ―――証明終了。侵略蔵書『秘密結社スナーク』はたったいま、ただの紙の束と化した。そこに残るのはただ少し強い、半竜半人のサー・ジャバウォックだけだ。
 今まで猟兵たちが彼を疲弊させてきたことでジェイの反証明は成り立った。最も厄介な力は封印され、あとはサー・ジャバウォック本体に、トドメを刺すだけだ……!

成功 🔵​🔵​🔴​

茜崎・トヲル
ふふは。予知の人ガン切れだ。たいへんだなあ。おれもがんばろー。
ていってもやることいっしょ、いつもと変わんないんだけどねー。おれそんなんばっかなの。
攻撃受けるよ。一回でも三回でもおんなじ。おれはね、死なないんだ。二百回死んでも直ったし、かみさまでも殺せなかった。三回じゃ足りないなー。
攻撃くらったら、傷を敵の人と竜切り剣と本に一回分ずつ“移植”するよ。肉片でも意識はあるから使えるんだ。痛みは感じないしね、おれ(激痛耐性 限界突破 継戦能力)
あっちがズタボロになったら、怪力ハンマーで剣ごと折ってやろ。あと本も破る。
猟書家なんだろ。なら本重要だよな。超破る。
あとはーなんだろ。他の人の盾になるよ。



「……ふふは。予知の人ガン切れ。たいへんだなあ。おれもがんばろー」
 思い出してころころと笑いながら茜崎・トヲル(白雉・f18631)はウォーハンマーを持ち上げる。よいしょ、とのんびり持ち上げる様はおおよそ戦場には不釣り合いな様子だった。へらへらと笑いかけながら一歩ずつサー・ジャバウォックへ近づいていく。
「本、壊れちゃったねー。もうおしまいにしよー?」
「ぐっ……侵略蔵書がなくとも、私は戦えます。貴方程度、この斬竜剣があれば十分……!」
 残った力を注ぎ、斬竜剣『ヴォーパル・ソード』がぐんぐんと巨大化していく。サー・ジャバウォックの手元から禍々しい光を受けながら刀身を伸ばした斬竜剣は大きな影を作り、トヲルを覆い隠していた。
「おーすっげえー」
 ぱちぱちとトヲルは手を叩く。煽っているわけではなく純粋な賞賛なのだが、余裕を失ったサー・ジャバウォックにはそう捉えることができなかった。ギリ、と歯を軋ませて、青筋を立てながら笑う。
「さあ、どうしますか? 貴方など簡単に挽肉にして差し上げますよ」
「んー。どうっていっても、やることいっしょ、いつもと変わんないんだけどねー。おれそんなんばっかなの」
「ほう、大した自信で! では、遠慮なくいきますよ!」
 いまいち噛み合っていない会話にも気が付かず、サー・ジャバウォックは苛立ちのまま斬竜剣を振るった。トヲルどころか、その周囲を全てまとめて薙ぎ払う怒涛の一撃。トヲルは特に何をするでもなく、その一撃であっけなく上半身と下半身を真っ二つに裂かれた。
 しかしサー・ジャバウォックは攻撃の手を緩めず。容赦なくその刃を返し即座に二撃目を振り抜いた。そして続けざまに―――トドメと言わんばかりに、既に断たれたトヲルの体に、真上から斬竜剣を叩きつける!
 グチャッ、と音を立てて、トヲルの体は肉片と化した。
「……っ、他愛ない……」
 肩で息をしながら肉片になったトヲルを見下ろし、小さく息を吐く。流石にここまで痛めつけた相手が反抗してくることなど―――
「ッッ!?!?」
 そんなサー・ジャバウォックの体に大きな傷が走った。ごぽッ、と血を吐き出し、傷口を押さえる。まるで“巨大な剣に斬られたかのような”傷は今のサー・ジャバウォックだけではなく、斬竜剣と侵略蔵書にもぱっくり刻まれていた。
「肉片でも意識はあるから使えるんだ。痛みは感じないしね、おれ」
 サー・ジャバウォックがよろめいたのと同時に、“肉片”が動き出す。体が元の形を取り戻し、トヲルに、戻っていく。変わらずへらへらした笑顔を浮かべながら、トヲルは無傷の姿で立ち上がった。
「おれはね、死なないんだ。二百回死んでも直ったし、かみさまでも殺せなかった。三回じゃ足りないなー」
 えーい、と。間の抜けた掛け声とは裏腹に、その一撃は重く。咄嗟に振り上げられた斬竜剣がその軌道を阻もうとするも、ダメージを受けていた青白いその剣はぽっきりと折れてしまった。
 ぐしゃり。
「おわったあ」
 静かになった戦場で、トヲルはパッとハンマーから手を離した。そしてそばに転がる本、侵略蔵書『秘密結社スナーク』をとりあげる。
「猟書家なんだろ。なら本重要だよな。超破ろー」
 ビリビリ、ビリビリと。持ち主が失われた侵略蔵書はあっけなく破壊され、サー・ジャバウォックもまた戦場のシミと化した。猟書家『サー・ジャバウォック』。彼との長い死闘は、こうして幕を閉じたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年08月17日


挿絵イラスト