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迷宮災厄戦⑲〜夕火の刻、黒き悪意を錐穿て

#アリスラビリンス #戦争 #迷宮災厄戦 #猟書家 #サー・ジャバウォック

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●グリモアベース
「みんな、集まってくれてありがとう……幾つもの不思議の国をみんなが頑張って踏破してくれたおかげで、猟書家の一人への道が拓けたわ」
 人形の少女、アリス・レヴェリー(真鍮の詩・f02153)は迷宮災厄戦線における各戦場が示された地図……『ザ・ゴールデンエッグスワールド』及び『ハートの女王が住んでいた城』に制覇を示すようにピンが立てられた物を広げながらこの場に集った猟兵達に礼を述べ、微かに眉を顰めて言葉を続けた。
「今回集まってもらった理由ももちろんそのことなのだけど……いえ、まずはその猟書家についてお話するわね。彼の名前は『サー・ジャバウォック』。予知で垣間見えた猟書家の中ではヒーローズアースを狙っていて、『書架の王』に次ぐ実力を自負しているみたい。彼についても彼の持つ侵略蔵書についても測りかねる所は多いけれど、間違いなく一筋縄では行かないはずよ」
 架空にも関わらず襲い来る不可視の怪物、竜をも切る青白い剣、そして黒き悪意。しかしこれらを乗り越えて尚厄介な点があるのだと彼女は語る。
 前提として猟書家達の力は今回の戦いの大目標、『オウガ・オリジン』から簒奪したもの。
 故に他世界へと手を伸ばさんとする彼等を打ち倒すことはこの世界を脅かすオウガ・オリジンへと力を回帰させ強化することに繋がってしまう……しかし、大本である彼女を先に倒せば猟書家達はその瞬間それぞれの世界へと散ってしまうのだ。
 明確な正解を見つけるのが難しい戦いになるでしょう。とアリスは一息つき、グリモアベースに映し出された風景を指差した。

「……『サー・ジャバウォック』が待ち受けるのはこの焼け焦げた森……ゆうとろどきの森が広がる国よ。此処には地形自体に特殊な性質を持っていたり、邪魔をしてくる存在はいないから純粋な実力での勝負になるでしょう。それに、彼は自分のもとに猟兵達がやってきた瞬間すぐさま攻撃を仕掛けてくるはずよ。まずは最初の一手をどう凌ぐかが要になるわ」
 そこまで語り終えた所で彼女は猟兵達を見渡すといつものように笑みを浮かべ、胸元にグリモアを浮かべる。
「でも、そんなに不安は感じてないわ。みんなならきっと、なんとかしてくれるって信じてるもの!……それじゃあ、転移が終わって辿り着いたらそこはもうすぐに敵地よ。みんなの凱旋を此処で待ってるからね」
 グリモアが放つ真鍮色の輝きが猟兵達を包み込む。
 数多の足音が、焼け焦げた森をざわめかせた。


真鍮時計
 ごきげんよう、真鍮時計です!
 今回の相手は猟書家『サー・ジャバウォック』。いきなり四天王の一番強いのみたいなのが現れましたね……!

 彼は自身が持つ侵略蔵書「秘密結社スナーク」と、青白き斬竜剣「ヴォーパル・ソード」で戦う戦闘スタイルの実力者です。
 初撃もこちらのユーベルコードを待たずに差し向けてきますので、故にまずはそれを凌ぐことができれば、一歩有利に立てるでしょう。

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 プレイングボーナス……敵の先制攻撃ユーベルコードに対処する。
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 詩にてジャバウォックを貫くヴォーパルの剣を相手が持っているのなら、皆様の信じる物で彼を打倒してしまいましょう!

 それでは、皆様のプレイングをお待ちしています!
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第1章 ボス戦 『猟書家『サー・ジャバウォック』』

POW   :    侵略蔵書「秘密結社スナーク」
見えない【架空の怪物スナーク】を放ち、遠距離の対象を攻撃する。遠隔地の物を掴んで動かしたり、精密に操作する事も可能。
SPD   :    ヴォーパル・ソード
【青白き斬竜剣ヴォーパル・ソード】を巨大化し、自身からレベルm半径内の敵全員を攻撃する。敵味方の区別をしないなら3回攻撃できる。
WIZ   :    プロジェクト・ジャバウォック
【人間の『黒き悪意』を纏いし竜人形態】に変身し、武器「【ヴォーパル・ソード】」の威力増強と、【触れた者の五感を奪う黒翼】によるレベル×5km/hの飛翔能力を得る。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

尾守・夜野
■鉛とアスカと共に
女性人格の私が行くのだわ

鉛がくれたチャンスを逃しはしないわ!
初擊は…五感が奪われるのはどうでも良いの
痛みで意識を失ったりしなくなるのだもの
むしろ私にとっては良い効果ね!
常に埋めてる所、痛むし…

攻撃見えないけど…まぁ一動作する間くらいなら黒纏で全身覆って防ぐか身代わりの宝珠で受けられると思うの
その間に触媒から彼らを…バジリスクを呼び出しましょう

彼らなら視界が無かろうと霧が出てようと問題ない筈よ

だって…ピット器官あるし
…温度は五感には含まれないの

石化させたり毒で動きを止めたり霧に紛れアスカの狙いやすい所に誘導して貰うわ
霧があるから同士討ちは避けられるでしょう


鉛・鐵斗
●アスカ、夜野と共闘

うわ、見るからに強そ……
怖ぇから最初っから防具:戒鎖を具現化させとくぜ

●攻撃対応
戒鎖を壁状にして攻撃を受け、その瞬間、霧を発生させる。
ぶっちゃけ受けきれる自信ねぇけどやんなきゃ真っ二つだし?
味方に向けられた攻撃も戒鎖で防ぐ!

●アイテム:霧
霧は方向感覚を鈍らせる。
視界は勿論、匂いや音も広がって方向が解り難くなる。
でもこれは俺のだからよ、俺自身はそんなに影響ねぇし味方は念動力で誘導する。


霧の中、サー目掛けて四方八方から戒鎖を放つ。
当たるか、叩き落として呪いを増加させるか……

霧が払われた瞬間、残りの戒鎖で一斉に襲って縛りつけてやる。
今だぜアスカ!


アスカ・ユークレース
ワンダレイ
テット、夜野と共闘
◆合図が出るまで霧に紛れて目立たないように潜む、必要ならば迷彩回路も使用。攻撃は視力で見切ってジャンプ、地形の利用でかわす

◆テットと夜野が生み出した隙に乗じbinary starの逆噴射砲撃で接近、クイックドロウで反撃からの正面突破…っていうのは囮、本命はUCでの騙し討ち。間合いの内に機械鳥を、死角に猫を、足止めに蛇を置く二重三重の罠を仕掛けましょう。

◆絶対に通さない、通してなるものですか、貴方達の企みを!



 焼け焦げた森が三つの足音を受け入れた直後、樹々が倒れる振動と金属があげる絶叫のような音が響き渡り……止まる。
「怖ぇな、おい……!」
「ほう、加減をした覚えはないのですがね」
 音の主はこの森にて待ち構えていた『サー・ジャバウォック』であり、それを止めたのは先程此処に足を踏み入れた鉛・鐵斗(星望む幽鬼・f28410)であった……厳密に言うならば、ジャバウォックが振るう巨大化した『ヴォーパル・ソード』と、鐵斗が壁状に張り巡らせた霊力の鎖『戒鎖』というのが正しいだろうか。
 その青白い斬竜剣が振るわれたであろう森は樹々が鋭利な断面を晒して扇状に倒れ、それを受け止めた戒鎖は幾本もが罅割れている。
「ふむ……それでは、重ねましょうか」
 その様子を見たジャバウォックはもう一度巨大な斬竜剣を構え、暴なる勢いで振り下ろす。鐵斗もまた自身の霊力と戒めの呪いの具現体である鎖を重ねることで対処するも、防ぎ切るには些か足りない。
「そら、耐えきれますかな?」
 一度で罅割れ、二度で千切れ、三度は――
「――そんなに呪われてぇんなら、お望み通り呪ってやるよ……!」
 衝突と共に遂に破れた戒鎖の向こうから、鼻の先すら見ることが困難な程の濃霧が溢れ出す……そも、彼の戒鎖の本領は防壁の役割を果たすことではないのだ。形作る呪いは戒めであり、それはそのまま本質となる。攻撃を受けるほど、抗いを受けるほどにその力を増す戒めの呪いは相手を縛るもの。ならば、森をそのまま両断する程の斬撃を三度受けた呪いは如何程か……それを声高に主張するように、数多の鎖が擦れる音が霧中のジャバウォックを取り囲んで縦横無尽に這いずり回る。
 濃霧の中に剣と鎖の衝突音が断続的に響き、鎖の音はその度に増えていく。

 ……そして、この森に足を踏み入れたのは鐵斗だけではない。
「不死という毒を喰らい、進まぬモノよ。永遠を、己の尾を喰らうモノよ。同胞よ。呼び声が聞こえたならば来い!――」
 極端に白い肌を霧に溶かし込みながら、辰砂、汞、金、鉛、砒素、鳥兜……数多の不死の側面を持つ毒を触媒とし、謳い上げる青年、尾守・夜野(墓守・f05352)。彼は鐵斗が生み出す機会を信じて潜み、準備を整えていたのだ。その結果が此処で今、実を結ぶ。
 鎖の音が鳴り止まぬ森の中に、落葉を掻き分け枝を圧し折る靭やかな鱗の擦れる音が加わる。
 それは大いなる蛇に連なるもの。それは毒を食らうもの。
「――バジリスク!」
 名を呼ばれた大蛇は静かに剣と鎖の音のする方角へと首をもたげ、瞼を開いた……瞬間、白い霧が灰色へと染まって落ちていく。バジリスクの視線を受けて霧を構成するきめ細やかな水粒が石へと変わり、砂のように流れ落ちる。
 それは霧を払うことなく強引に孔を開き、霧がその狭間を満たすまでのほんの一瞬にジャバウォックを姿を捉まえ、彼の衣と翼の端を石へと変えた。
「……睨み殺す怪物、ですか。ならば!」
 対するジャバウォックもまた己が身体をより竜に近づけながら黒い靄のような悪意を纏い、霧を染めて視線を遮りながら飛翔した。狙うは先程自身を睨んだバジリスクと夜野。
 彼は一瞬の視線から居場所を割り出すと霧を掻き分けながら触れた者の五感を奪う黒翼を広げ、両者を双翼で打ち据える。しかし、頑強かつ巨大なバジリスクはともかく、夜野を打つ際の感触に衣により威力を阻まれた事を確信し、五感を奪った隙により鋭さを増した斬竜剣を以て仕留めようと振り上げ……その巨体からは想像できない程の速度で牙を剥いて躍りかかるバジリスクに後退を余儀なくされた。
「その瞳、もはや見えては居ない筈――」
「……温度は、五感に含まれないの」
 今も尚自身を認識しているバジリスクを警戒するジャバウォックは、種明かしをするように言葉を零した夜野へと視線を向けて口を開こうとし……やめる。
 微かに焦点の合わない瞳から彼の五感はもはや無く、今の言葉は自身の声を聞いた結果の返事ではなく反応を予測された結果だということを察し、ただ不快そうに眉を顰めてバジリスクへと意識を向けた。
 かの大蛇は瞼を閉じながらもピット器官……蛇種の持つ相手の体温を感知する独特の器官によって、この焼け焦げた森でなお一際目立つジャバウォックを正確に付け狙う。彼は後方から先程振り切った鎖の音色が聞こえてきたことにより不利を感じ上空へと退避する事を選んだ。
「霧さえ晴らしてしまえば……!」
 翼を広げ、霧のない空へと。
 高く高く、樹を越えて、霧を抜けて……開けた視界には、まるで籠のように縦横無尽に天地を駆ける無数の鎖。
 幾度となく叩き落され、その度に増幅して報復の瞬間を待っていた鎖達がジャバウォックへと殺到して戒める。
「なんと、これほどまでに……っ!」
「今だぜ、アスカ!」


 この森に踏み入った三者の最後の一人、今の今まで機を窺い耐え忍んでいた射手。宝石のような青い瞳を絶好の機に煌めかせるアスカ・ユークレース(電子の射手・f03928)は霧に満ちた森を駆ける。
 鐵斗の念動力に背を押され導かれることで迷うこと無く、バジリスクの撓らせた尾に跳ね上げられるように空へ、張り巡らせられた鎖を足場により高く、自身の手にした対物用大型光線弩『binary star』を大地に向けて砲撃することで推進力を得て霧のその先へ。
 霧の尾を引きながらも上空へと躍り出たアスカは、鎖に戒められたジャバウォックと視線を交わしながらも持ち前の技術で素早く二の矢を番え、狙いを定めた。
「その狡猾さ、見事。しかし人の悪意に際限はありません。このような鎖など砕き、私はあの地へ……!」
「絶対に通さない、通してなるものですか、貴方達の企みを!」
 膨れ上がった呪いを内包する鎖に戒められてもなお黒き悪意を滾らせ引き千切ろうと力を込める彼の翼を、アスカの下方の霧中から四百羽近い機械の鳥達が飛び出しその鋭い翼や爪で傷つける。強引に斬竜剣を振るおうとした竜の腕を、鎖を辿り昇ってきた機械の大蛇が締め上げる。それらはみなアスカのユーベルコード【ナヴィガトリア//金緑石の終わらぬ夢】により召喚された機械仕掛けの獣達。
 その隙に、アスカは十分な溜めを終えた『binary star』からの砲撃を放った。光は撃ち出された瞬間に反作用により彼女を再び霧満ちる森へと弾き飛ばし、その威力を物語る。
 この一撃を受ければただでは済まないと悟ったジャバウォックは強引にでも身を捩ろうとし……すぐ近くから聞こえた無数の猫の鳴き声に硬直した。
 アスカが喚んだ機械獣達の最後の一種、隠密性に非常に長けた彼等こそが二重三重の罠の最後のピース。 
 まるで神出鬼没な三日月嗤いを浮かべる猫を想起させるような身軽さで鎖を足場に取り囲む彼等はジャバウォックから抵抗の余地を奪い去り……遂には彼のその体を、激しい光が錐穿った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

富波・壱子
武器は刀の二刀流を選択
どちらを先に。それを考えるのは今すべきことではありません
グリモア猟兵が殺せと指示した標的を殺す。今はただそれだけを考えます

標的を発見しました。これより戦闘を開始します

標的からの先制攻撃は【第六感】による【見切り】と【残像】で回避
多少のダメージは【激痛耐性】と【落ち着き】で無視し、大きなダメージを回避しきれないものは両手に持った刀による【武器受け】で受け流します

先制攻撃を防いだらUCを発動
先程の攻撃と未来予知による【情報収集】で得た情報から【学習力】によって標的の攻撃パターンを把握し、以後の攻撃に対処します

私はもう、あなたのことを知りました。もうあなたの攻撃は当たりません



「標的を発見しました。これより戦闘を開始します」
 冷徹な表情を浮かべながら二刀を構える富波・壱子(夢見る未如孵・f01342)は、焼け焦げた森に佇むジャバウォックへと何の感慨も抱いた様子も無くそう告げる。
 対する彼は、瞳に微かに悪意に滲ませて語りかけた。
「よいのですかな?此処で私を打ち倒さんとすれば、それはつまり――」
「――それを考えるのは今すべきことではありません」
 問答は無用。そう言外に伝えるように叩きつけられた通告に彼は肩を竦め、青白き斬竜剣『ヴォーパル・ソード』を構え、巨大化させる。
「やれやれ……真実や虚構すらも捨て置くとは、これでは語りがいがありません」
 口調だけは残念そうに。然程そう思っていないことを隠そうともせずに彼は大きく横に斬竜剣を振るう。大木をもケーキを切るように両断していくそれが動き出した瞬間、壱子は刀を構えて駆け出した。
 初撃は半ば直感に従って樹を駆け上り、幹を足場に跳躍することで刃を飛び越えて躱す。次ぐ袈裟斬りの一撃は残像を残すほどの高速機動で距離を取る。その際打ち据えられた大地が捲れ上がり砕けた岩塊などが散弾のように身を叩くが、致命的なものだけを躱し痛みを抑え込むことでジャバウォックのみを注視……初撃と次撃を回避した隙を狙う最後の叩きつけるような一撃を、真っ向から受け止めるのではなく手にした二振りの刀剣……かつて同期であった者の形見である『カイナ』とそれと同型の未知の金属で造られた『オース』を滑らかに傾けることで受け流して危機を脱した。
「ほう、大した身のこなしです。それならばこれは如何かな?」
 三度の破壊を終えて元のサイズへと縮小した剣を構えるジャバウォックは、体勢を整えどこか遠くを見るように瞳を揺らす壱子を切り裂かんと剣を振り上げ――
「は、これはまた……」
 ――振り下ろせない。
 振り上げた瞬間には、それが既知のことであるように距離を詰めた壱子が剣に二刀を重ねることで抑え込んでいた。
 彼が一歩下がればそれと同時に一歩進み、剣を振ろうとすればその力が乗り切る前に刀を添える。

「私はもう、あなたのことを知りました。もうあなたの攻撃は当たりません」
 先程彼女が見ていたものは比喩でなく未来そのものであったのだ。
 そしてそれを為した彼女の【ビジョンリポート】の恩恵は防戦のみに留まらず……吸い付くような軌道で、『カイナ』が竜の身を裂いた。

成功 🔵​🔵​🔴​

ルネ・プロスト
『安寧』介し空中浮遊&空中戦、周囲の風景を模した幻でルネを覆い迷彩代わりに
次いでルネの姿を模した幻を投影、敵の注意を其方へ逸らして初撃を凌ぐよ
投影体は可能な限り回避行動をとらせて敵の隙を見切るまで時間稼ぎ
幻術バレたら全力で投影体(デコイ)大量生成、更に時間稼ぎ

敵が隙を見せたらUC発動
視覚、聴覚、嗅覚。情報量の多いこの3つさえ押さえれば十二分
君の黒翼には及ばなくともルネにも似たようなことはできるんだよ
さて、ここからは此方の手番だね?
『安寧』介した魔術で風の刃を連続曲射、全方位攻撃を仕掛けるよ

君の計画に興味はあるのだけどね
それ、死人が出る類のものだよね?
ならダメだ
余計な事される前に潰させてもらうよ



「君の計画に興味はあるのだけどね」
「おや、それならば後程、実際に目にすることをおすすめしますよ」
 焼け焦げた森の上空で銀の髪を靡かせる幼い人形の少女、ルネ・プロスト(人形王国・f21741)は、外見よりも遥かに大人びた……しかし大人というにはどこか幼い雰囲気を滲ませながら眼下のサー・ジャバウォックと言葉を交わす。
 彼女は月長石の飾られた月の魔力を宿し、蒼白き月と鍵の意匠を持つ身の丈をも超える長杖『安寧』を介した魔術により己の身を空に浮かべながら、確信を持って問いかけた。
「それ、死人が出る類のものだよね?」
「さて、どうでしょう。やはり確かめてみるのがよいのでは?」
「――ならダメだ、余計な事される前に潰させてもらうよ」
 表面上は穏やかながらも滲む黒々とした悪意に、ルネはもう十分といった様子で会話を打ち切ると杖を構える。
 対するジャバウォックもまた、青白い斬竜剣『ヴォーパル・ソード』を構え……突如爆発的に巨大化させた。
「えぇ、えぇ、そういたしましょう。余計な事をされる前に、ね」
 青白き月を落とさんと、青白い剣が空を衝く。

 彼が突如剣を巨大化させた瞬間、ルネは『安寧』を介して自身へと幻を重ね、欠けきった月のように空へ溶け込みその姿を消した……そこに自身を精巧に模した幻を残して。
 残された幻はルネと遜色がつかない極めて自然な動きで、辛うじて振り下ろされた斬竜剣の一撃目を躱してみせる。
 二度目の横薙ぎは一撃目で崩れた態勢ゆえに紙一重で。しかし三撃目を躱すことは叶わず、巨大な剣がルネを捉まえ……彼女の体が、石を投げ込まれた水面に映る月のように朧気にぶれた。
「……!幻、ですか」
 そして次の瞬間、微かに目を見開くジャバウォックへ正解とでも言うようにルネの幻がその数を増やし、彼の周りを取り囲む。不可視の虚構を操る者を、可視の幻惑が煩わせる。
 そうして暫しの間視線を巡らせていたジャバウォックが、それらをまとめて薙ぎ払わんと斬竜剣を再び振り上げ――

 ――光阻む霧が、音塞ぐ声が、香隠す臭気が、焼け焦げた森を埋めつくした。
 空へ溶け込んだ彼女が今まで何をしていたか。それは当然緻密な幻の操作や数多の虚像の維持に集中していた……わけではない。虚空に潜み、虚妄を映してジャバウォックに隙が生まれる時を静かに待っていたのだ。

 そうして練り上げられた彼女の幻術は視覚を奪い、聴覚を苛み、嗅覚を冒涜する。夢幻の織り成す幻葬世界。
 突如五感の内三つを失ったジャバウォックはほんの僅か一瞬という、あまりにも致命的な隙を晒す。

「君の黒翼には及ばなくともルネにも似たようなことはできるんだよ」
「ぐぅっ、不快な……!」
 自身の声が聞こえていないのを理解した上での彼女の呟きと共に、彼女が魔術により作り上げた数多の風の刃がジャバウォックへと殺到した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アコニィ・リード
ヒーローズアース……わたしのルーツの一つ
楽しい世界だったよ。それに戦争だって終わった。なのに
また、大きな災いを齎そうとするなら……止めなきゃ

強力な武器と五感を奪う竜人になるのね
きっとこのまま立ち向かっても耐えきれるかどうか……
シン・デバイス限定起動。ドーピングでリミッター解除
痛覚を一部麻痺させて継戦能力と地形の利用で逃げ回るわ
逃げながら罠を配置して、兎に角生き延びる事を優先する
きっとわたしは使い物にならない――でもね

さあイルカ海兵隊の皆! やっちゃって!
無数の仲間に思いつく限りの重武装
ネット弾、電撃弾、機関銃、爆弾――
アイツの動きを封じさせて空陸から攻め立てるのよ!
わたしはもう一人じゃないッ!



 戦闘の余波で樹々が倒れ、大地が捲れた焼け焦げた森で青髪の少女アコニィ・リード(偽神暗姫・f25062)は一瞬の間瞼を閉ざし……造られた自身を構成する起源の一つである世界『ヒーローズアース』で見た風景、そして世界の存亡を賭けた激しい戦いから勝ち取った平和へと思いを馳せる。
 そうして開かれた瞳には強い意志が宿り、その視線は傷つきながらも手にした青白き斬竜剣『ヴォーパル・ソード』を構えて不敵な微笑を浮かべる『サー・ジャバウォック』を射抜いた。
「また、大きな災いを齎そうとするなら……止めるわ」
「歴史は、繰り返されるものです。それが戦いの歴史ならば尚更……たった一人で何が出来ると?」
 これは対話の為ではなく、決意を告げる為の言葉なのだと言外に表すかのように構えを取るアコニィにジャバウォックは肩を竦め……竜人と化すと同時に背中を突き破るように大きく広げた翼を羽撃かせてアコニィへと突撃する。
 対する彼女はジャバウォックの五感を奪う黒翼を強引に身体を捩ることで躱すと、自身の腕輪に仕込まれた注射器『シン・デバイス』を起動して一時的に潜在能力を引き出す特殊製剤を投与。運動能力に限界を定める己のリミッターを解除するとともに、無理な動きの代償として襲い来る痛みを麻痺させてジャバウォックから距離を取るために森の奥へと駆け出した。

 飛翔する彼が最高速を発揮できない樹々の狭間を縫い、倒木の下を潜り、時に罠を配置することで時間を稼ぐ。多少の傷は考慮せず、彼女はとにかく間合いの外を保ち続ける。
 しかし、逃走の最中に仕掛けた罠ではジャバウォックの強靭な身体に傷を与えるの事は能わず……彼も数度の体験からその事を感じ取り、強引かつ狡猾に攻勢を強め始めた。
 徐々にアコニィとジャバウォックの距離は縮まっていき……遂に森の一区画をぐるりと巡る頃には青白い刃が彼女の青い髪の端に掠るほど。
 次は当たる。そう確信を得たジャバウォックが、彼等が最初に言葉を交わした地点に繋がる茂みを越えたアコニィを追って茂みを突き破った瞬間、開けた視界に映る想定外の光景に動きを止める。

「なんと、これは――」
「――さあイルカ海兵隊の皆! やっちゃって!」
 そこに居たのは無数のイルカ達……それも全個体が高い技術力を要する武装を備えている上にそれらが自在に空中を遊泳しているという異様な光景であった。

 アコニィが逃げていたのは、罠での打倒を期待していたわけでも彼の攻撃に場当たり的に対処していたわけでもない。彼女は逃走しながらの時間稼ぎの最中、彼女のユーベルコードである【戴竜虹娘】によって召喚した海魔……イルカ達に最初の地点を包囲させていたのだ。
 逃げて、逃げて……遂に辿り着いた彼女を脅かそうとするジャバウォックを、彼女の指示に従うイルカ達の全火力が打ち据える。

 ネット弾が翼を絡め取り、電撃弾が剣を握る腕を痺れさせ、機関銃が翼膜を喰い千切り、爆弾がその巨躯を叩き落とす。
 一糸乱れぬ連携を見せるイルカ達はまさに兵と言えるだろう。
「――わたしはもう一人じゃないッ!」
 それらは何よりも雄弁な、彼の問いへの答えであった。


 ……砲火に晒され、更に焼け焦げ荒んだ森の大地に膝をつくジャバウォックの身体が、炎に巻かれた写真のように焼け崩れて消えていく。
 彼は青白い光を零しながら自身と共に消えていく剣を一瞥し、笑みを浮かべた。
「なるほど、見事。凱旋のギャロップを踏むのはあなた方だったようだ……あぁ、しかし、しかし!何を信じ、誰と戦うか……努々、お忘れ無きよう」
 そう最後に不穏な言葉を遺し、夕火の空に散るように彼は完全に消え去っていく。
 それが苦し紛れの捨て台詞なのか、気紛れな忠告なのかは知る由もないが……しかし恐れることは無い。
 猟兵達は確かに……あの悪意を纏う怪物を打ち倒したのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年08月20日


挿絵イラスト