1
迷宮災厄戦㉑〜Envy

#アリスラビリンス #戦争 #迷宮災厄戦 #猟書家 #レディ・ハンプティ

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#アリスラビリンス
🔒
#戦争
🔒
#迷宮災厄戦
🔒
#猟書家
🔒
#レディ・ハンプティ


0




「出てきたな、二人目の猟書家だ」
 淡々とユウキは言い、資料を広げた。
「色気はまぁまぁ、これで人間ならミステリアスな美女で済むんだがな」
 広げた資料から一枚の写真を取り出し見せる。
 乳房の位置、服の模様のような部分が大きく開いて、哀れなアリスを噛み砕く。
「見た目に騙されるなよ、下心で胸なんかに手を伸ばしたら、一瞬で食い千切られるからな」
 機械に変わった左腕をプラプラと揺らし、こうなりたくはないだろうと笑う。
「ま、幹部連中への対策などいつもと変わらん。相手の初撃を如何に捌くか。それだけだ」
 そう言いながらユウキの目は真剣になる。
「やつの狙いはアルダワ魔法学園。大魔王の後釜だ。まだ半年足らずしか平和を謳歌していないあの場所に再び災魔の影を落とすのはあまり気分の良い物ではないだろう? したがって諸君には猟書家、レディ・ハンプティの排除を依頼したい」
 いつも通りの幹部戦。
 いつも通りの戦争。
「だが、忘れるな。猟書家を倒すという事は、それだけオウガ・オリジンの強化に繋がる。そして、おそらく完全に強化されたオウガ・オリジンが我等に立ちはだかる場合、今までのフォーミュラ共とは比べ物にならない本物の怪物との戦いになりかねない……そして、我々の敗北はカタストロフ。いいや、難しい言い方をして誤魔化すのはやめよう。我々の敗北はすなわちアリス・ラビリンスという世界そのものの消滅に繋がる。それを忘れるな」
 自分で自分の首を閉める戦い。
 それが、猟書家との戦いだった。
 勝てば勝つほど後の戦いが苦しくなり、負ければ負けるほど各世界に災いが降りかかる。
「まぁ、最終的な猟兵の派遣については我々グリモア猟兵が決断する。たとえ君たちが世界を見殺しにする結果となってもそれは我々の責任だ。だから、お前達はいつも通り戦って、奴らを叩き潰して来ればそれで良い」
 そう言ってゲートを開くと、ユウキは猟兵達を送り出す。
「下手な考え休むに似たりだ。行ってこい。そして、必ず勝ってこい、猟兵!」


ユウキ
 はじめましてこんにちわ。
 (´・ω・)bはじめちわ!
 ユウキです。
 服の模様だと思ってたら牙でした。
 ある意味おっぱいに包まれて死ねますよ。
 ……と、冗談はさておき、ここからは注意です。
 【強敵戦】です。
 相手はどんな理屈をこねようが先制攻撃してきます。
 自動発動カウンターUCを使うと言う方もいますが、基本的に無効化できず、カウンターが決まる前に負けると思ってください。
 先制対策についてはプレイングと技能が物をいいます。
 また、十分な対策無しの場合失敗(🔴🔴🔴)も十分にありえますし、敗北(🔴が必要数に達する)もありえます。
 普段甘いユウキさんも鬼畜になりますので十分にご注意を。
「それでは皆さま、良い悪夢を……」
51




第1章 ボス戦 『猟書家『レディ・ハンプティ』』

POW   :    乳房の下の口で喰らう
【乳房の下の口での噛みつきと丸呑み】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
SPD   :    アンティーカ・フォーマル
【肩の蒸気機関から吹き出す蒸気を纏う】事で【武装楽団形態】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    侵略蔵書「蒸気獣の悦び」
【黄金色の蒸気機関】で武装した【災魔】の幽霊をレベル×5体乗せた【魔導列車】を召喚する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 偉大な魔王たる父の跡を継ぐ。
 まぁ、結局はその魔王という座に憧れていただけなのかもしれないが。
 どっちでもいい。
 その玉座は目の前にある。
 目と鼻の先に、彼女の望んだ玉座が待っている。
 だけれど彼女は知りはしない。
 堀から落ちたハンプティ・ダンプティ。
 高慢ちきな卵は誰にも元には戻せなかった。
 哀れなハンプティ・ダンプティ。
 自分がいかに脆いのか、それを知るには遅すぎる。
パラス・アテナ
せっかく平和になったアルダワを危険に晒したりはしないよ

距離を取りまず観察
戦闘知識と世界知識で情報収集しながら相手の挙動を読むよ

攻撃タイミングを読むために挑発
アンタの父親が大魔王だか小魔王だか知らないがね
奴はアタシ達が倒した
魔王でもフォーミュラでもない小娘が
アタシ達に勝てるとでも思うのかい?
思い上がりも甚だしね

UCが来たらタイミングを図ってフェイントで身を沈めて敵に踏み込む
足を狙って体当たり
胸元の口で丸呑みにするなら重心は高い位置にある
同時に口の攻撃も回避して転倒させる
体勢を崩させ振り返り指定UC
間を置かずに予め最大値にしたアイギスのマヒ攻撃を2回攻撃、一斉発射、鎧無視攻撃で絶え間なく叩き込むよ



「へぇ⋯⋯」
 少し暑苦しい蒸気に満ち溢れた世界。
 遠くに走る魔導列車が汽笛を上げるその世界に降り立って、待ち受ける魔王の遺児にパラス・アテナはすぅと目を細めた。
 この世界はアルダワ魔法学園の世界と非常に似通っている。
 ただ違うとすれば、そこにはただの一人もおらず空虚な都市しか存在ないということだ。
 学生たちの笑顔も、教員たちの熱弁も、あの環境を取り巻くすべてが存在しない空虚な世界。
 そこに佇む魔王の遺児。
 もしこれが彼女の望みだというのなら。
「ほっとくわけにはいかないねぇ⋯⋯⋯⋯」
 折角手に入れた平和をこんな空虚な世界に邪魔させるわけにはいかない。
 手にした銃の装填を確認する。
 静かに、だがそれでいて素早い動き。
「あら、隠れてないで出ていらっしゃい?」
 ふとレディ・ハンプティはパラスを呼んだ。
「ふん、気付いてたんならとっとと潰しにくればいいんじゃないのかい?」
 どうせ情報収集は終わっている。
 奇襲を仕掛けるにしてもこの化け物相手にどこまで有効かなんて知れたものだ。
 彼女の前に姿を現すパラスを見てレディ・ハンプティは聞く。
「どうかしら、この世界は?」
「悪趣味だね。人間の営みが微塵も感じられない」
 周囲を見渡し吐き捨てるパラスにハンプティは静かに笑う。
「それはもちろん⋯⋯こうやって作り変える前に、元居たものは全て喰らってしまいましたもの。当然ですわ」
 ⋯⋯⋯⋯きっとこの世界にもアリスや愉快な仲間たちが居たのだろう。
 反吐の出る話だ。
「アンタの父親が大魔王だか小魔王だか知らないがね、奴はアタシ達が倒した⋯⋯魔王でもフォーミュラでもない小娘がアタシ達に勝てるとでも思うのかい?」
 向こうが挑発を掛けてくるのならばこちらも挑発で返す。
 先に怒りを見せた方が⋯⋯冷静さを欠いた方が負ける。
「フフフ⋯⋯確かに貴女方は父様を倒した。ですが、それはまったくの偶然に他なりません。父様はお目覚めになったばかり⋯⋯全力を出せなかったのだとしたら、それも致し方のない事。我が父、アウルム・アンティーカが完全な復活を遂げていれば貴女達のような⋯⋯」
「待ちな」
 パラスはハンプティの言葉を遮る。
 彼女は父をアウルム・アンティーカと言った。
「なにか?」
「ははっなんだい、少しは警戒するべきだなんて考えた私が馬鹿みたいじゃあないか」
大魔王アウルム・アンティーカ。
大魔王の第一形態。
三位一体の魔王。
「何がおかしい!?」
 ⋯⋯食い付いた。
「教えてあげるよ小娘。あんたの親父はフォーミュラですらない。真の大魔王たるウームー・ダブルートゥーを守る噛ませ犬さ!!」
 ハッタリだ。
 アウルム・アンティーカは大魔王の一つの形態。
 別たれた姿の一つ。
 だが。
「ウームー・ダブルートゥー?」
 おそらくこの小娘はなにも知らない。
「そう、それが大魔王の真の名さ。あんたの親父は出来損ないの雑魚にしか過ぎない!」
「黙れ!!」
 がばりと乳房に並ぶ牙が開いて、ハンプティは雄叫びを上げる。
「黙れ⋯⋯違う⋯⋯父様は⋯⋯違う、嘘だ!!」
「違わないさ、だったら他の猟兵にも聞けば良い! 真の大魔王が誰だったのかってね!!」
「えぇ⋯⋯そうですね」
 落ち着いたようにハンプティは呟く。
 パラスは全神経を続く動きに身構えさせた。
「父様を侮辱した貴女を殺してからそうさせて貰うわッ!!」
――来るッ!!
 開いた胸部の大口が突っ込んでくる。
 ただ避けるだけでは続く第二手に狩られるだけだろう。
 パラスはその口目掛けて飛び込んでいった。
「殊勝な心掛けだことッ!!」
「そうかいッ!!」
 目の前に迫る大口。
 そこから漂う異臭がパラスの鼻腔に届いたその時、倒れるように身を屈めたパラスはハンプティの足へと飛び込んだ。
 体当たりと共に転倒させ、素早く抜いた拳銃を放ちながら距離を取る。
 撃ちきった拳銃を投げ捨て抜いたのは、本命の相棒。

 IGSーP221A5『アイギス』

 電荷を帯び、対象を感電させる実体弾を叩き込んでいく。
 出し惜しみ無しの全段発射。
「ナメるなァッ!!」
「クッ!?」
 だが、完全に仕留めるには弾丸が足りない。
 UCの効果で強化されているといえど、目の前の娘は魔王の遺児。
 ダメージこそ与えられてもその命はいまだに強く燃えている。
 再びの特攻を飛び退いて避け、素早く身を隠す。
 流石に身体が麻痺したのだろう。
 身を隠したパラスを探す素振りこそ見せているが、その動きはどこかぎこちない。
 かといって、二度も同じ手は通じまい。
 ましてや奇襲を仕掛けるにしても弾薬が心もとない。
 一度撤退するべきだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルヴァイド・レヴォルジニアス
◎アドリブ



●心情
でかいッ!揺れるッ!
よっしゃぁ――!!あの双丘を掴めるか?掴んでみせる!

だが、その前に
あの厄介な『牙』を潰さないとなッ!

●対策
【オーラ防御】で自身を保護して戦闘開始するぜッ!
超高速で接近する相手を【第六感】で察知して、噛みつき攻撃を【見切り】回避だッ!
致命傷を【早業】で避けてどんな状況でも【気合】で反撃できる様に【継戦能力】を高めるぜ

●反撃
ここから反撃だ!UCを発動させながらインファイト、拳で決めるぜッ
拳にはオーラを纏わせて硬化させる事によって【怪力】を発揮して
拳(パンチ)の威力を【鎧砕き】【地形破壊】できる位高めるぜ

狙いは――『牙』
オレはその牙を…【部位破壊】で叩き潰すぜッ!



「クソ……クソ……ッ!!」
 取り逃がした。
 痺れる身体が幾分軽くはなったが、煽るだけ煽って逃げていった猟兵への怒りが混み上がる。
「おぉっ!!」
 喜び、或いは感嘆か。
 酷く幼い声が響いてそちらを見やれば、その声に相応しい子供が居た。
 だが、見た目はどうあれあの子供が猟兵なのは分かる。
「すげぇ! でけぇ!!」
 ……身体自体はそこまで大きくはないはずだが?
 いや、なるほど。
 ずいぶんとませたガキらしい。
 ハンプティは小さく微笑んで見せた。
「ふふ……ボウヤ、触りたい?」
 来るなら来い。
 お望み通り包んでやろう。
 ここに居た連中と同じように。
 ゆっくりと近づいてくる子供。
 その手が、レディ・ハンプティの乳房に伸びる。



「甘いのよ、ボウヤ?」


 一気に加速し、牙を叩き折ろうとしたルヴァイド・レヴォルジニアスの腕がレディ・ハンプティに掴まれる。
「くそっ!」
 その瞬間にがばりと開いた乳房の口から漂う臭気に思い切り腕を引いて飛び退いた。
「ふふ、そんなにカチカチにしていたら、嫌でも気付いてしまいますわ?」
 ルヴァイドが万一に備え纏っていたオーラ防御を見抜かれたらしい。
 流石に強者といった所か。
「へ……まぁ、不意打ちで砕けるなんて思っちゃいねぇさ」
 今度は構えて戦闘体勢に移る。
 確かにあの胸に飛び込み包まれるならば本望と言えるが、どちらにせよ無粋な牙が邪魔だ。
――叩き割らせて貰うッ!
 微笑みを浮かべたままふらりふらりと不規則な動きで接近して来るレディ・ハンプティの一挙手一投足に目を凝らす。
 例え最後に頼るのは第六感などという不確かな物だとしても、相手の動きを分析すればその精度は比例して高まる。
 下手を撃てば敵の攻撃はたったの一撃が即死級の技なのだ。
 自身の持てる全てを持ってその攻撃に備えるのは当然の事。
 開いた大口。
 その一撃目をかろうじて見切り躱す。
 ……早い。
 やはりただのオブリビオンではない強者の力に戦慄さえ覚える。
 だが、それでもルヴァイドとて猟兵だ。
 甘ったれた過去の自分との決別を経て、自分は強くなったのだ。
 だからこそ。
 自分は失った代償に見合う力を手に入れたのだと、それを証明する義務がある。
 こんなところで惨めな醜態を晒すわけにはいかないのだ。
「ふふふ、ちょこまかと……目障りなボウヤだこと?」
 開いた乳房の口と顔の口。
 両方から舌が伸びて舌舐りのような動きを見せる。
 男の劣情に訴えかけるような媚びた見た目とは裏腹に、薄気味の悪い女だ。
 鳴きたいのなら好きなだけ鳴けばいい。
 最後に笑うのはこの俺だ。
「能書き垂れてねぇで掛かってこいよ! 俺はまだぴんぴんしてるぞ!!」
 相手を挑発し、次の攻撃を誘う。
 一発目は回避出来たが、そう何度も出来はしないだろう。
 次だ。
 次の攻撃で決める。
 再びレディ・ハンプティの動きに集中し身構える。
 飛び込んでくるレディ・ハンプティ。
 動きは見切った。
 ……筈だった。
「ガァッ!?」
 一瞬伸びた舌がルヴァイドの身体を絡めとり、開いた牙がその肉を掠めた。
 例え機械の身体とて、残した痛覚が仇になる。
「くそったれェ!!」
 反撃に放った拳もレディ・ハンプティの牙を数本へし折るに留まった。
 自分は甘さを捨てた筈だった。
 だが、捨てきれていない。
 大切な人に触れる暖かみ。
 それを捨てられなかったのが敗因とでも言うのか……?
「くっ……」
 だが、当初の目論見ほどのダメージとはいかずとも、放った衝撃波はレディ・ハンプティの身体を大きく吹き飛ばしてルヴァイドに撤退の機会を与える。
 撤退か、死か。
「ちくしょう……」
 まだ、死ぬわけにはいかない。
 まだ、こんな場所で果てる訳にはいかないのだ。
 自分の弱さを認めたくはないが、生きてこそ次がある。
 ……例えまだ弱いのだとしても。
 それでも俺は……






 愚か者ではない。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

化野・花鵺
「先制攻撃された後にできることぉ?うーんうーん、頭がぁ」
狐、知恵熱?を起こした

「回復と悪夢はワンセットだしぃ、封印は1体しか封じられないしぃ、敵の数は管狐や狐火より多いしぃ…ハッ」
「汽車が不幸にも爆散したらぁ、災魔や口胸女にもダメージいくかもぉ!」

「行けぇ管狐!魔導列車に不幸の連続プレゼントだぁ!」
野生の勘での回避
衝撃波で弾いて敵や敵の攻撃の軌道をずらす
オーラ防御で攻撃を受ける
上記を組み合わせ敵の初撃を最小限に抑えたら列車に「狐の呪詛」
進行方向に進めず急に車輪が外れる
下ろした災魔や口胸女を巻き込む
突然操縦不能になる等の不幸を連続プレゼント
敵の効率的な行動を邪魔して他の仲間が攻撃する隙を作る



 蒸気を上げながら滑走する魔導列車。
 最初から見えているそれらにおそらくは人は居ない。
 ……が、狐は居た。
 どっかの誰かさんからかっぱら……もとい、貰った戦闘服に身を包み、無人で走り回る列車内で頭を抱える。
「う~ん……うぅ~ん……」
 実際、先制攻撃を免れないのでそれを対策せよと言われたのは初めての経験だ。
 ガタゴト走り回る列車内であまりよろしくない頭を必死に回転させて対策を練る。
「回復と悪夢はワンセットだしぃ、封印は1体しか封じられないしぃ、敵の数は管狐や狐火より多いしぃ………」
 UCの先制に対し、UCでの対抗策を考えてしまっている時点でその不慣れさが分かる。
 なんとか対抗しなくてはと深く考える内に、頭も回るが世界も回り始めていた。
「うぅ……頭がぁ……」
 だが、往々にして深く考えすぎないようにしてみればシンプルな対抗策という物も案外いくらでもあるものだ。
 単純に、災魔の霊が乗った列車を召喚すると言っても一度に全て下ろすのでは列車を召喚する意味がない。
 おそらくは召喚後、複数回に分けて様々な位置から霊を下ろして波状攻撃を仕掛けると見るのが妥当だ。
 ならば、その最初の攻撃さえ凌いでしまえばこちらのUCで敵の列車を利用するという策もまた十二分に通用する筈である。
 ……アレ?
 ぴよぴよとヒヨコが回る頭にすうっと考えたこともない戦術論が浮かんでくる謎の現象に、首を傾げる化野・花鵺。
「まぁ、いっか」
 しかしながら対抗策さえ考え付けば此方のものである。
 小分けに出された攻撃を凌ぐだけならいくらでも策はあるのだ。
 走り回る魔導列車を飛び降り、レディ・ハンプティの元へと向かう。
「ふっふーん……待ってろぉ、口胸女ぁ……」
 なかなかどうして敵の特徴の掴み方が雑である。



「出たな! 口胸女ぁ!!」
 ビシィと突き付けた指。
 だが、レディ・ハンプティは余裕の表情で現れた狐を笑う。
「ずいぶんと列車を楽しんでいた様子ですけれど、答えは何か出たのかしら?」
 もし、最初から此方の存在に気付いて居たのならやはり強者といった所だろう。
 だが、それならばなぜ先に打って出て来なかったのか。
 花鵺はただ単に強者の余裕と見たが、実際は先の戦闘のダメージを癒していたに過ぎない。
 立て続けに現れる猟兵の波状攻撃は、確かにダメージを蓄積させていた。
「ふふん、それは自分の目で確かめれば良いんじゃないかなぁ!」
 実際の所、初手の対策に関しては半分以上行き当たりばったりではある。
 だが、霊体相手であれば曲がりなりにも天狐の血筋。
 引けを取る道理がない。
「ふふ……では、災魔によるゴースト・ダンス。特とお楽しみ遊ばせ?」
 ドレスの裾を掴み、頭を垂れる姿はまさに貴婦人。
 漂う不気味さと相反するその立ち居振舞いは、かえって男達の心を虜にするものだ。
 だが、花鵺はそんな物には惑わされない。
 制服は大好物だが、ただ着飾っただけのドレスには興味などないのである。
 もしレディ・ハンプティが何らかの制服に身を包んでいたならば脅威であったかもしれない。
 耳をすます。
 最初から走っていた魔導列車に混じり、新たに現れたハンプティの魔導列車が来る筈だ。
――……来るッ!
「そこぉッ!!」
 野生の感が告げる。
 掲げた右手から放つ破魔の衝撃波が、現れた災魔の霊を強烈に弾き飛ばした。
――頼んだよぉ、管狐!
 初手の防御にあわせて衝撃波で吹き飛ばした竹筒。
 管狐を住まわしたそれが、魔導列車へと飛び込んでいく。
 狐の呪詛。
 管狐が一撃浴びせられれば、後は放っておいても不幸のオンパレード。どうとでもなるというものだ。
「あら、なかなかやるものですね?」
 飛び込んでくるハンプティ。
 それを、別の管狐が飛び出して迎撃する。
「くッ……畜生風情がっ!!」
 管狐が四肢に噛みつき、動きを止めたハンプティ。
 一瞬の隙を見逃す手はない。
「もう一発ッ!!」
 今度は左手。
 管狐を振り払ったハンプティに、直接衝撃波を叩きつける。
 殺傷力こそ微々たる物だが、ハンプティの身体を吹き飛ばすには十分だ。
「小娘がァッ!」
 だが、威力の低いそれはまるでレディ・ハンプティをおちょくるかのようである。
 怒りに震え、冷静な判断力を鈍らせるには都合が良い。

 なぜならば。

 体勢を立て直したレディ・ハンプティに、魔導列車が突っ込んでいった。
「なっ!?」
 なにも、呪詛を与える管狐が一匹だとは誰も言っていない。
 魔導列車とレディ・ハンプティ。
 後は互いの不幸が絡み合って、花鵺はただ見ていれば良い。
 ただそれだけでカタがつく。
「何をしているッ!?」
 正確にはなにもしていない。
 ただ、コントロール不能になった列車が、災魔を吐き出そうにも扉が開かず"不幸にも"目の前に現れたレディ・ハンプティを轢いてしまっただけの事だ。
「うぅ……後は勝手に片付くはずだからぁ……」
 しかし、花鵺もここに来てフラフラとし始める。
 普段使わない頭をフル回転させた弊害か、知恵熱を出しているようだ。
「う~ん……」
 このまま不幸に苛まれ続けるハンプティを見届けたいのは山々だが、頭がフラフラする。
下手にこんな場所で倒れでもしたら、おそらく二度と目を覚ませないだろう。
「ぐぬぅ……これはぁ、逃亡ではないぃ……」
 戦略的撤退である。

大成功 🔵​🔵​🔵​

緋月・透乃
本来弱点なはずの胸が武器になっているとは変な奴が相手だねー。こりゃ厄介で戦う甲斐がありそうだね!

敵は先制攻撃のために近付いてくるよね。間合いを離すと近距離戦の得意な私は反撃しにくいし、何より技の性質を考えると敵は逃げる敵を追うことに慣れていそうだね。
それならいっそ敵の攻撃を恐れずに近付いてみよう!
やることは単純にシンカーキャロットを構えて全速力で敵へ突撃!
距離が縮まってきたら胸の口目掛けて右手でシンカーキャロットを押し込んで敢えて食わせたいね!
そのまま勢いを殺さずに突っ込んで昂破滅命拳をぶち込むよ!
右腕がかなり危険だけれど、何かあっても気合いで耐えて左腕に全てをかけるだけだね!



 本来、生物において胸部とは弱点の1つだ。
 こと人間においては肺と心臓という生命活動において重要な臓器が格納されている。
 その部位が最大の武器とは……。
 奇妙な相手だと素直な感想を緋月・透乃はこぼす。
 しかし。
「こりゃ厄介で戦う甲斐がありそうだね……!」
 大抵の者が釣られて微笑んでしまいそうな朗らかな笑顔の奥に確かに宿る戦士の魂。
 それが、新たな強敵との逢瀬に昂るのだ。
 相棒とも言える重戦斧【緋月】を肩に担いで歩き出そうとしてふと止まる。
「う~ん……」
 もちろんこの戦斧の威力に疑問を持った訳ではない。
 だが、彼女の怪力を持ってしても【緋月】の一撃には若干の隙が残る。
 また、得てして斧とは豪快に振るえば良いという物でもない。
 まして長柄の戦斧となれば、重く分厚い刃を当てる繊細なコントロールを必要とするのだ。
 向こうが胸部という自身の身体の一部を武器とするならば、それは極至近距離における肉弾戦を意味する。
 こうなれば、普段は利点となる長柄のリーチが振り回す際に枷となるのは明白だった。
「うん、今日はお休みにしよう」
 【緋月】を片付け、右手に握ったのは……ニンジン。
 が、食物と侮るなかれ。
 長い葉は柔軟性と強度に富み、太く大きな根は、生半可な金属など容易く叩き砕く程の重量と強度を誇る。
 シンカーキャロット。
 むしろ食用にするほうがどうにかしているようなこの大地の恵みは、彼女にとってはフレイルや棍のような物である。
 むしろ相手が突っ込んでくるのなら、此方の方が最適という事か。
「ふふふふふ……」
 だが、当たらずとも遠からず。
 彼女の本当の狙いは別にあった。
 頭の中で敵の動きと対策。
 続く反撃の動きをシミュレートしていき、自身の思い描く戦法が相手に通用する筈だという確信を持つ。
 ただ、敵の完全な実力が未知数であるのがただ1つの不安要素と言えるだろうか。
 だが、例えどんな時でも気合いで乗りきって見せる。
 確かな技術とそれを実行できるだけの鍛え上げた肉体。
 そして、最後の踏ん張りと勇気をもたらす心。
 彼女はその全てを完璧なまでにストイックに鍛え上げてきた。
 裏付けされた確かな自信と共に、透乃は歩き出す。
 さぁ、心踊る真剣勝負の時だ。

「あらあら、少しは休ませて頂きたいものなのですが……」
 幾分余裕が無くなってきているようにも見える。
 あと一押しで、彼女を骸の海へと押し返すことも可能な筈だ。
「残念だけど、あんまり休まれちゃっても困るんだよね!!」
 戦いは手段であり、目的は勝利だ。
 ならば、絶え間ない連続攻撃的
で敵を削るのが上策というものである。
「問答無用っ……行くよッ!!」
 ハンプティは読み通り、大きな乳房の牙を開いて突進してくる。
 それと同時に、透乃は大地を蹴った。
 全速力の透乃に、気でも触れたかと笑うハンプティ。
 だが違う。
 互いにぶつかり合う瞬間、右手のシンカーキャロットをハンプティの大口へと捩じ込み、勢いを殺さず強引に押し込んでいく。
「モゴッ!?」
「このままぁッ!!」
 ハンプティをその勢いで押し返し、空いた左腕に力を込めた。
――昂る闘志で殺し、滅ぼす……
 シンカーキャロットを手放す。
 今まで全力で押し込んでいた右手から一気に反発が消え、透乃の身体がその勢いのままくるりと回った。
「昂破滅命拳!!」
 敵に背を見せる姿勢から放つ一撃。
 裏拳と言ってしまえばそれまでだが、加速を加えたその一撃はまさに必殺必滅の一撃。
「ギイッ!?」
 無様な悲鳴と共に飛んでいくハンプティを尻目に、呟く一言は酷くのんきなものだった。
「あ、私のニンジン!?」
 一緒に吹き飛ばしてしまったシンカーキャロットを取りに行こうかとも思ったが、いちいちニンジン一本を広いに行くのも面倒だった。
「……また収穫すればいっかー」
 ぐぐっと伸びをして引き返していく。
 緋月・透乃のたった1つの小さなミスを挙げるとすれば。
 それは本当に止めを刺したのかを確認しなかった事だ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ラモート・レーパー
「正直言って今のあなたの生死はお姉さんにとってどうでも良い」
 お姉さんの姿で挑む。
 UC対策
 黒剣を捨てて角を折る。角をナイフとして構え、敵の意識を角に集中させる。
 近接格闘を繰り広げて、敵のUCを誘発。ナイフを持った腕を食わせる。
敵は勝ち誇るだろうけど、これはこっちの罠。生命体じゃないからこの程度ダメージにはならないし、死の概念だから敵にとって良い毒になる。
 でも罠は前座で本当の目的は至近距離で接近すること。残った腕を敵の後ろに回して引き寄せてそのまま接吻。接吻中にUCを発動し病魔を敵の体内に流し込む。
病魔は敵の蒸気とか高温化で活発に活動する殺人バクテリアにしておきましょう。



● The Reaper

 死に損ないの惨めな身体でゆらりと立ち上がる。
 目の前に見えていた筈の魔王の玉座が砕け散っていくような錯覚を覚えた。
「違う……」
 まだだ。
 まだ終わっていない。
「そうかしら?」
 不意に響いた声。
 見れば丸腰の女だった。
 ……丁度良い。
 こいつを喰らって少しでも体力の回復を。
 頭部の黒い角を折って構える女。
 その程度の武器がなんになる。
「正直言って今のあなたの生死はお姉さんにとってどうでもいい」
 何を今更。
「そうですわね……」
 獲物の命など。
「どうでもいい……ッ!!」
 一瞬にして距離を詰める。

 瞬発的な攻撃だった。
 身構えていたとはいえ、這う這うの体だと油断していた自身を恨む。
「くっ!」
 一瞬にして接近され、放たれた喰らい付きをラモート・レーパーは間一髪で避けた。
 腕の一本や二本ならいくらでもくれてやれるが、一撃で丸飲みにされてはいくらなんでも生き残れるという保証がないのだ。
 流石にオブリビオンの腹の中で終わりの無い一生を過ごすなど、間違っても御免である。
 だが、かろうじて避けた矢先に続いての突進。
 ……だが、レディ・ハンプティはラモートの寸前で一気に軌道を変えて逃げるように転がる。
――あまりこの手は使いたくなかったのだけど……
 ハンプティの額から汗が流れ出る。
 ラモートが発した強烈な殺気に恐怖を覚えたハンプティは、一瞬にして攻撃を中断したのだ。
 だが、これはラモートにとっても苦肉の策である。
 相手が食い付いて来なければ、奥の手が使えない。
 だが、かといってそう何度も完璧な回避は不可能だ。
 もし、このままレディ・ハンプティが逃げの姿勢を取れば追い掛けるのは難しい。
 ……だが、幸運の女神というやつは死神にも微笑むらしい。
 レディ・ハンプティも回復しなければ次がない状況で、撤退という手を封じられていた。
 今、獲物を喰らわねばそのまま自然消滅する可能性も大いにある。
 戦って生きるか、戦わずして死ぬか。
 その二択を迫られていた。
 それでも次が最後のチャンスだ。
 ミスをすれば喰われ、避ければ此方の殺気を厭わず連続で飛び掛かってくるだろう。
 集中し、身構える。
 静かな空気が世界を満たす。
 この世界で今動く者はたったの二人。
 魔王の遺児と、その魂を狩りに来た死神。
 数奇な物だ。
「……ッ!!」
 レディ・ハンプティが覚悟と共にラモートへと飛び掛かる。
「しまったッ!?」
 避けきれない。
 ニヤリと笑うレディ・ハンプティ。
 だが、笑顔を作ったのはなにも彼女だけではない。
「なっ!?」
 腕を喰いちぎった身体が熱い。
 フラフラと倒れたハンプティに、ニコニコとした笑顔のラモートが近づいていく。
 その身に宿る呪詛は、殺しきるには不十分でも足止め程度なら役に立つ。
「何を……したの……!?」
 "ラモートは"なにもしていない。
 ただ、呪詛の宿る己が身を喰らわせただけの事。
 一瞬見せた驚愕の演技が稚拙ながらも効果を発揮したのは幸運だった。
「では……『』の役目を持って、生命の均衡と調停を行う」
 不意に回された腕。
 強引に引き寄せられた唇に、ラモートのそれが重なった。
「むぐぅ!?」
 驚愕の表情と共に、無力な抵抗を行うハンプティ。
 それは毒。
 甘く甘美な猛毒を、唇から体内へ。
 それは憐れな魔王の遺児を蝕み、殺す。
 徐々に抵抗は薄れ、そして。
「カ……ハッ……父様…………」
 その動きを止めた。
「ふぅ」
 ゆっくりと死体から離れるラモート。
 溶けるように崩れゆく魔王の遺児に一瞥を送り、空を見上げた。
 灰色の空に浮かぶ蒸気。
 この街1つがこの遺児の玉座だったのだろう。










 だが、それも今や空虚な墓碑でしかなかった。
 

成功 🔵​🔵​🔴​



最終結果:成功

完成日:2020年08月19日


挿絵イラスト