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迷宮災厄戦㉑〜魔道列車と卵のスフレ

#アリスラビリンス #戦争 #迷宮災厄戦 #猟書家 #レディ・ハンプティ

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 蒸気を勢いよく吹き上げる機械建築が立ち並ぶ街並み。魔導列車がガタンゴトンと、いくつも街を走っていく。
 そんな蒸気文明にて活動しているこの国は、アリスラビリンスに位置する多元世界のひとつでありながら、アルダワ魔法学園がある蒸気世界に酷似していた。

「ああ、父様、父様、見ていてくださいませ……。わたくしがきっと父様の無念を、世界への怨恨を晴らしてみせます…。」

 魔道列車の出発する駅のホームにて佇むひとりの女性がそう呟いた。
 黒を基調とした英国風の衣服に身を包む貴婦人は、一冊の本を手にしていた。もしも魔力を感じ取れる人間がここにいたならば、その本から発せられる禍々しい力を見ることが出来ただろう。
 一見すると華奢な女性のようであるが、肩からは蒸気を吐き出すパイプ機関が覗いており、ただの人間ではないことが分かる。───アリスラビリンスの支配者、『オウガ・オリジン』の力を奪った7人の猟書家、その一人。
 『レディ・ハンプティ』が、その女の名だ。
「父様……わたくしにもその正体を見せてくださらなかった父様……。わたくしがしたためたこの侵略蔵書『蒸気獣の悦び』さえあれば、アルダワ魔法学園など容易く滅ぼせます! 父様の災魔と、わたくしの力で! 」
 ギシリ…。レディ・ハンプティの手に力が入り、侵略蔵書が音をたてて軋んだ。

 ガタンゴトン、ガタンゴトン…プシーッ……。魔道列車が彼女のいる駅のホームへと到着する。レディ・ハンプティは立ち上がると、そちらへ向かって歩き出した。
 彼女が乗り込んだ魔道列車の中は、他に人の気配は欠片もしない。運転手すら存在しないようだ。それにも関わらず、その魔道列車はドアを閉め、ガタンゴトンと煙を上げて動き始める。猟書家を乗せ、列車は一体何処に向かうのだろうか……。
 レディ・ハンプティは微かに笑う…すると、胸の下に隠されていた巨大な口もまた牙を向いて大きく笑みを浮かべるのだった。
 彼女はレディ・ハンプティ。彼女の父親の名は、アウルム・アンティーカ。───かつて、アルダワ魔法学園の地下に封印されていた『大魔王』だ───。

 。。。。。。。。。。。。。。。。。。

「……迷宮災厄戦、遂に我々は猟書家の元へとたどり着きましたね。」
 かかしの姿をしたグリモア猟兵の少女、ペパシア・ドロキペが言う。
「奴がいるこの世界は、わたくしの故郷アルダワ魔法学園とよく似ています。もちろん、偶然ではないでしょう。」
 何故なら、奴はアルダワ魔法学園を我がものにしようとしているのだから…と、ペパシアは眉間に皺を寄せて息を吐く。
「彼女は『レディ・ハンプティ』という名前で、どうやらアルダワの大魔王とは……血縁があるようです。……どういうことでしょうね?」
 オウガ・オリジンから力を奪い作り上げた侵略蔵書。そこから召喚される蒸気の力を持った悪霊は、アルダワの災魔の姿をしているという。
 父親の凶悪な能力を再びアルダワ魔法学園へと向けようとしている彼女を、なんとかここで止めなくてはいけない。ペパシアは猟兵達に強く訴えかける。
「皆様、なんとかして彼女をやっつけてください! オウガ・オリジンの力を奪った猟書家である彼女はとても強いです。でも、皆様ならなんとかできると信じていますわ!」
 災魔の霊を呼び出す侵略蔵書、『蒸気獣の悦び』。彼女自身が受け継いだフォーミュラのパワーを宿す、乳房の下の巨大な口。レディ・ハンプティは、猟兵をはるかに超えた戦闘力を手にしている。
 それによって放たれる強力な先制攻撃ユーベルコード。これに対処をしない事には、猟兵の勝利は危ういだろう。

 猟兵の強さは知恵だ。猟兵の強さは千差万別のユーベルコードによる臨機応変な戦い方だ。彼女の先制攻撃を制し、勝利をもぎ取るのだ! ペパシアは右手をおおきく振りあげて猟兵達を鼓舞した。
「皆様、頑張ってくださいまし!」


森の人
 こんばんは。森の人です。
 猟書家は、オウガ・オリジンから奪った力を使ってフォーミュラ無き世界を我がものにしようとしています。やっつけましょう。
 戦闘エリアは、魔道列車の中です。実はこれ自体が彼女のユーベルコードで召喚されたものなので、猟兵達は不利な戦場へと乗り込む形になります。

 敵の先制攻撃ユーベルコードに対処するプレイングには、プレイングボーナスが与えられます。どう対処すればいいんでしょうね?皆様が持つ多種多彩なユーベルコードならば、きっと切り口が生まれるはずです。

 それでは、よろしくお願いします。
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第1章 ボス戦 『猟書家『レディ・ハンプティ』』

POW   :    乳房の下の口で喰らう
【乳房の下の口での噛みつきと丸呑み】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
SPD   :    アンティーカ・フォーマル
【肩の蒸気機関から吹き出す蒸気を纏う】事で【武装楽団形態】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    侵略蔵書「蒸気獣の悦び」
【黄金色の蒸気機関】で武装した【災魔】の幽霊をレベル×5体乗せた【魔導列車】を召喚する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 ガタンゴトン…ガタンゴトン…。
 発車した魔導列車はレディ・ハンプティを乗せたまま進んでいく。
 魔力と蒸気動力の融合技術で動くこの列車はかなりのスピードで走っていく。だが、中にいる者にその感覚は微かなものだ。椅子に腰掛けていれば実に心地よい……。うたた寝しているうちに目的地へ着いていて、せっかく買った駅弁も残っているし読もうと思っていた本も読んでいない、慌てて列車を飛び降りるような……そんな旅路を予想させる。

 まぁしかし、猟書家であるレディ・ハンプティの乗り込む車両がそんな優雅な模様になるはずがない。
 静かに佇んでいたレディ・ハンプティは後方の車両に何かが乗り込んできた感覚を覚えてピクリと眉を動かす。グリモア猟兵に送られて乗り込んできた猟兵達によるものだ。
 この魔導列車はただの列車ではなく、レディ・ハンプティの貸し切り列車。無断乗車を試みる者をそのままにしておくわけには行かない。
 レディ・ハンプティは重たい腰を動かすと、後方車両に向けて歩き出すのだった。
アイリ・ガングール
子細お任せ。いやぁ。怖いねぇ怖いねぇ。せやったら出現した災魔を引き寄せようか。UCを使って一瞬こっちに注意を引くよ。
そしたら、金狐霊糸つかって飛び上がり、中空で《冥門開錠・飢狼強襲・赤狼衆/シヲコエ・クライコロセ・ワガキバドモヨ》でも使ってやろうさ。空から強襲する武者の軍勢を、捌けるかね?



 魔道列車の最後車両。グリモア猟兵によって直接内部へと乗り込んだ猟兵たちは、中の様子を見て驚愕する。
 レディ・ハンプティのみが乗っていると思われていた魔道列車の内部であるが、ほぼ全ての席が満席だ。ここから戦場となる場所であるというのに、このまま放っておいて大丈夫なのだろうか。
「いやぁ……大丈夫じゃろ。こやつら皆、人間ではないのぅ。」
 長い髪を持つ妖狐の女性、アイリ・ガングール(f05028)がクックッと笑う。
 言われて乗客たちの顔を覗き込んだ猟兵たちは、それら全てが金色の髑髏の顔を持った災魔の霊であることに気づく。これこそが、レディ・ハンプティの持つ侵略蔵書『蒸気獣の悦び』によって生み出された無限の兵隊、蒸気獣だ。霊はこちらには注意を払うことなく、ただ沈黙を貫いている。
 どうやら、既に敵はユーベルコードを発動済みであるらしい。気を引き締め、前方の車両へと進んでいく。

 猟兵達が前方車両へ乗り込むため扉に手をかけた時であった。後方の軍勢がザワりと突然動き出す。
 レディ・ハンプティが侵入者の存在に気がついたのであろう。金色の髑髏たちは蒸気機関で動く武装を手にし、侵入者を排除しようと立ちあがった。

「いやぁ、怖いねぇ怖いねぇ。猟兵諸君、先に進みや……。ここはみどもが引き受けるわ。」
 ぼやぁ……。アイリの体が二重にぼやけて見える。体から発せられたとてつもない熱量によって現れた、蜃気楼というやつだろうか。
「みどもの姿を捉えられるかい? 亡霊ども、ここから先へは行かせないよ。」
 その言葉が引き金になったかのように、黄金の武装をした災魔達がアイリへ向かって押し寄せてくる。列車の通路というやつはとにかく狭い。武器を振り回せるような間隔は無いのであるが、霊である蒸気獣にとっては関係ないようだ。仲間である蒸気獣が潰れようと列車が破壊されようと問題にしない。椅子を蒸気で吹き飛ばしながら、我先にとアイリへ向けて殺到する。
「おっと、何処を見ておるのだ? みどもはとうにそこにはいないなぁ?」
 霊たちが殺到した箇所に見えていたのは、アイリの作り出した幻霊であった。打ち倒すべき標的を急に見失った災魔達は、勢いを殺せず列車の扉へと衝突する。
 自在に動く金狐霊糸を伸ばして飛び上がっていたアイリは、列車の天井へ張り付いて目下の有象無象を目を細め見つめていた。
「一箇所へわざわざ固まってくれて助かるわぁ。……さて、やってしまえ、赤狼衆よ。」
 アイリは天井に張り付いたまま、ユーベルコード【冥門開錠・飢狼強襲・赤狼衆(シヲコエ・クライコロセ・ワガキバドモヨ)】を発動させる。
 すると、アイリの背後、天井のある部分の空間が裂けるようにして冥府へと繋がり開く。そこから現れるはかつての英雄、勇敢な猛将達である赤狼衆達だ。
 現れた赤狼衆の一人が放つ弓の一撃が、黄金の髑髏の眉間へと突き刺さり、そのまま霊を穿ち殺す。
 飛び降りた鎧姿の別の赤狼衆が、抜いた刃を災魔の頭上から重力に任せるまま振り下ろし蒸気武装を破壊する。
 冥府から蘇り襲いかかるアイリの軍勢は、たかがひと車両に乗り込んでいた災魔と比べると物量で圧倒的に勝っていた。そしてまた、戦士の霊としての質も明らかに勝っている。天井から強襲した赤き戦士たちは、その牙をもって金色の髑髏を喰らい尽くしていった。
「くはははは、なんじゃなんじゃこんなものか! 他愛ないのぅ!」
 霊糸を解き、床へと降り立つアイリ。そして、破壊し尽くした敵の目の前に立つと、ため息を吐いた。
「とは言え……これは。はぁ…。」
 扉の前は、砕き散った金色の蒸気武装で山ができている。先へ進むならまずこれを片付けなければいけない。面倒くさいが瓦礫掃除をする必要があるようだ。
 赤狼衆に手伝ってもらってもいいが、戦士にさせる仕事としては忍びない。それにこの狭い車両にこの数の戦士達…少々呼び出し過ぎたな? ちょっと暑苦しい……。大変な後片付けになりそうやなぁ…。
 と、アイリは困った表情を浮かべたまま、瓦礫の元へ近寄っていった。

成功 🔵​🔵​🔴​

御形・菘
はっはっは、父の遺志を受け継ぎ世界征服を目論む!
テンプレな動機、だからこそ清々しい!
ならば妾はその美しき野望の前に立ち塞がる試練となろう、邪神の名においてな!

列車の突撃とは素晴らしい攻撃ではないか! 真正面から受けてやろう!
…と、見せかけて油断させよう
衝突の瞬間に全力で後方に飛び、更に撥ねられた勢いに逆らわず吹き飛ぶぞ
邪神オーラを予め全身に纏い衝撃を緩和、痛みは我慢だ!

右手を上げ、指を鳴らし、さあ来い魔法陣よ!
はーっはっはっは! 花弁と蒸気、世界観のギャップが美しい!
頭数が多いほどに映える奥義に感動するがよい、そして埋もれ果てよ!
もちろん舞い落ちる花々を目くらましにしつつ、本体は左腕でボコる!



 扉を抜け、次の車両へと乗り込んで行った猟兵達。
「なんてこと。なんてこと…。なんてこと…!! こんなにも大勢の猟兵が乗り込んでいたなんて。わたくしを邪魔しようというのですね? ふふふ……身の程知らずにも程があります。この数の『蒸気獣』に勝てると言うのですか?」
 ……この車両には、既にレディ・ハンプティが大量の災魔の霊を連れて待ち受けていた。
 なんとなくレディ・ハンプティは一番先頭の車両にて猟兵が来るのを待っている展開なのだと予想していた猟兵達は、先手を取られていたことに顔を顰め、武器を構える。
 そんな中でもキマイラの戦士、御形・菘(f12350)は顔に邪悪な笑みを浮かべて一歩前へ出る。
「はっはっは! 父の遺志を受け継ぎ世界征服をしようとしているそうだな? テンプレな動機だが、だからこそ清々しい! お主のその野心、気に入ったぞ!」
 菘は爬虫類を思わせるキマイラめいた腕で、目の前のレディ・ハンプティをびしりと指さす。
 レディ・ハンプティは、狼藉者に指さされ不快そうな表情をつくる。
「ならば妾はその美しき野望の前に立ち塞がる試練となろう。………邪神の名においてな!」
「わたくしと父様の何を貴方が知ってると言うのですか? ……邪神? 知らない名ですが……貴方が試練となると言うのなら、捩じ伏せてわたくしは先へ向かいましょう。」
 そう言って、レディ・ハンプティは災魔の霊『蒸気獣』達へ合図を出す。
 大勢の蒸気獣に体当たりを喰らわせられた菘は、列車の窓へと押し付けられ、その勢いのままにガラスを割って外へと押しやられる。
「う、うおおおおおお!?」
 列車の外へと飛び出した菘は、爪を列車の窓枠へとくい込ませ、落下を防ぐ。そして、外の風景を見て驚愕した。魔導列車が走っているのは明らかに蒸気文明世界を構築する巨大な線路網ではない。
「(そ、空だ! この列車、空を走っておる!)」
 レディ・ハンプティの侵略蔵書『蒸気獣の悦び』。その本質は大量に召喚される災魔の霊「蒸気獣」の脅威ではない、この魔導列車そのものだ! 凶悪な獣を大量に、どこへでも運搬できる侵略兵器。菘はこれがアルダワに攻め込んでくることを想像して、舌打ちをするのだった。
 菘は空中で蛇の下半身をくゆらせ、眼下の街並みをちらり眺める。自分を押し出し一緒に外へと飛び出した蒸気獣とその武装が、大きな建物に激突して砕け散っていくのが見えた。菘はもう一度舌打ちをする。
 菘はこれ以上列車から離され落とされないよう、大きな爪をくい込ませる。しかし、列車は体についた虫をはらい落とすかのようにぶるりと振るい、手が離れた。菘は宙を舞う。思わず手を伸ばすが、ただ宙をかくだけだった。

『爪をたてるなんていけない子ね。』
 レディ・ハンプティの声が列車から響く。可笑しげに笑うような響きだ。そして魔導列車は、ぐるりと方向転換を行い宙に浮かぶ菘の方へと進路を変える。
『念には念を。跳ね飛ばして差し上げましょう。』
 ガタンゴトン、勢いよく列車はスピードを上げていき、菘は正面衝突必至である。
 菘は、不敵にニヤリと笑った。両手を目の前でクロスし、衝撃に耐える姿勢をとる。禍々しいオーラで菘を包み込み、少しでも衝撃を和らげようという心づもりだ。──次の瞬間、とてつもない衝撃が菘の体を襲った。ばきばきと体から何かひしゃげるような音が聞こえる。菘はその衝撃に耐えられず吹き飛んだ……。
 ──のではない!電車の衝撃を利用して、自分から後方へと吹き飛んだのだ。体の痛みはあるが、邪神オーラの力で我慢出来る。菘は前方に見える魔導列車を見てカラカラと笑い声を上げた。
「はーっはっはっ!げほっ………くっくっく!この立ち位置がいい! 最高だ! 妾が上、汝が下! でかい列車に乗ってるからと油断をしたな。これを見よ!【花驟雨(ヘリオガバルス)】!」
 菘は空高く右手を上げ、指を思いっきり鳴らす。
 すると、空いっぱいに巨大な魔法陣が姿を現す。そして、魔法陣から召喚され吹き荒れるは無数の花弁。花弁は弾丸の様に撃ち放たれ、列車へ向けて殺到した。
「はーっはっはっは! 花弁と蒸気、世界観のギャップが美しい!……頭数が多いほどに映える奥義に感動するがよい、そして埋もれ果てよ!」
 うち放たれた無数の花弁は、列車の壁を穿ち飛来する。そして、中に集まっていた蒸気獣達を的確に狙い撃ちしていく。レディ・ハンプティは憎々しげな表情を浮かべ、対応に専念するのだった。
「はっはっは!………お邪魔するぞ!」
 その隙に列車へと取り付いていた菘は、窓枠をこじ開け中へと入っていく。花弁を蒸気武装にて受け止めていたレディ・ハンプティが、驚きの声を上げた。
 菘はそんなレディ・ハンプティの元へとゆっくり近寄っていく。左腕に渾身の力を込めて、今までのお返しとばかりに強烈なフックを叩き込むのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

大豪傑・麗刃
先制対策だが、近づかれなきゃ大丈夫だろって単純な考えで気合入れてダッシュして逃げユーベルコード解禁まで粘る。とはいえ列車の中だし、そうでなくてもこういう相手はたぶん近づくの得意だろうし追いつかれるんだろうなあ。その時は噛みつかれる瞬間を見切り直前に早業で脱衣し服をデコイにして噛ませわたしは生きる!こんなトコでパフォーマンスで身に着けた早着替えが役に立つとは。

ユーベルコード解禁後は

えっときみはたしか

ハワイアンティーちゃん

だっけ?違う?ごめんごめん

ハーブティーちゃん

まあそう怒るな

セイロンティーちゃん

とわたしのギャグで相手に喜怒哀楽恐の感情を起こさせ普段の実力発揮できなくなったところで二刀流で斬る。



「……くっ!」
 強烈な攻撃を受けたレディ・ハンプティは身を翻し、次の車両へと走っていく。逃げている訳では無い。そもそもこの列車の中にいる以上猟兵たちは蒸気獣の腹の中にいるようなもの。体勢を建て直し、消化し直すまでだ。車両内への蒸気獣へ指示し、猟兵達の元へと向かわせていく。
 そこへ───。
「うおおおおおおおおお!! 一着はわたしがもらうのだ!!!!」
 走るレディ・ハンプティを追い越して、一人の猟兵が車両の先頭へと走っていく。
「くっ、先回りをして挟み撃ちというわけね…。」
 レディ・ハンプティが身構えるが……その猟兵は扉をこじ開けると更に向こうの車両へと走っていってしまった。
「うおおおおおお!!」
 猟兵の名は大豪傑・麗刃(f01156)。目的は挟み撃ちではなく、とにかく距離をとって逃げるためであった。
「……うおおおおおお!?」
 開けた扉の先には大量の蒸気獣がいて、麗刃はキョロキョロしながら大いに驚く。どう考えても多勢に無勢。くるりとUターンをして、元来た道を走っていく麗刃であった。

「……戻ってきたのですね? いえ、いい心がけですわ。痛みはありません、ひと口で飲み込んで差し上げますよ。」
 レディ・ハンプティはそんな麗刃に向けて乳房の下にある大きな口をガパリと開ける。どうやらこれ以上逃げることは出来なさそうだ。麗刃も覚悟を決めたのか、むむむ…と唸りつつも足を止め攻撃に備え構える。
「それでは、いただきます。」
 レディ・ハンプティは巨大な口を開き、牙を向いて麗刃へ襲いかかる。父親である大魔王から受け継いだ大口だ。受けてしまえば対抗のしようもなくお陀仏となるだろう。
 ガブリッ! そんな強烈な攻撃が目の前の人影を毟り喰らった。もぐりもぐりと口を動かし、その味を確かめるレディ・ハンプティは……違和感を感じて口内のものを吐き出した。これは……服だけだ! 中身の人間が消えてしまっている!
「そおいっ! ほっ! 着地っ!」
 服を身代わりにして牙をすり抜け飛び避けた麗刃が着地をきめる。褌一丁のなんとも締まらない姿になってしまってているが、命が助かればこそである。
「ふう…こんなトコでパフォーマンスで身に着けた早着替えが役に立つとは。」
 レディ・ハンプティはわなわなと牙を振るわせる。コケにされたように感じているのだろう。
 麗刃は姿勢を立て直すと、レディ・ハンプティに顔を向けて声をかける。
「わっはっは、芸は身を助けるとは本当なのであるな! えーーと…きみはたしか………ハワイアンティーちゃん?」
 みしり。レディ・ハンプティが持つ侵略蔵書が力強く握られて音を立てる。
「だっけ? 違う? ごめんごめん!……ハーブティーちゃん?」
 レディ・ハンプティは返事をせず近寄ると、大きな口で褌姿の猟兵を丸呑みにしようとかぶりつく。麗刃はわっはっはと笑いながらそれをゴロゴロ転がって回避する。
「まあそう怒るな! セイロンティーちゃんっ!」
「ハンプティです! ハンプティです! ハンプティです! 父様から授けられた大切な名前をここまでコケにされたのは初めてです。絶対に許しませんわ! 粉々に噛み砕いてアルダワの大地にばらまいて差し上げます!」
 怒りで顔を真っ赤にして手を伸ばすレディ・ハンプティ。せっかく車両には蒸気獣が沢山いるのだから一斉に襲わせれば猟兵ひとり容易く捉えられるだろうに、怒りで思考が働かず我を忘れているようである。
 これこそ麗刃の思惑通りだ。渾身のギャグを連発し、相手は落ち着きを失っている。ゴロゴロと転がってハンプティの掴みかかる右腕を回避した麗刃は、背中に隠していた刀を抜刀すると、その右腕を勢いよく切り付ける。
「きゃーーっ!!」
 痛みに顔をゆがめるレディ・ハンプティ。麗刃はさらにゴロゴロ転がって距離を離すと、さらに大きな刀を抜き放ち二刀流の構えをとった。
「てやっ! いざ尋常に、勝負勝負っ! ショーブの節句は5月なのだ!」
「グゥ…グオオオオオオオオオッ!!」
 理性を失って大口を開き飛びかかる獣の如き突撃。それは、麗刃にとってはやりやすいことこの上ない攻撃であった。麗刃は二刀を思いっきり振り上げると、強烈な2連攻撃をその口へ叩き込んだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

イサナ・ノーマンズランド
【目立たない】ように【迷彩】色のポンチョを被って風景に紛れて視認性を下げつつ相対。噴き付ける蒸気の熱風は合法アヘンを決める【ドーピング】と【激痛耐性】、【環境耐性】で痩せ我慢しつつ、接近。抱きつかれそうになったら、機動歩兵装甲強化服を盾代わりに【武器受け】、噛みつかれ、飲み込まれている最中の強化服に積んだありったけの銃器をUCと同時に【一斉発射】させ、【武器改造】で仕掛けた爆薬を作動、【破壊工作】で内側から【吹き飛ばし】てしまう。

……悪いね、おっきいおっぱいにはそんなに興味ないんだ。
お人形が気に入ったならそれはあげるよ。
Bon Appetite! ハンプティ・ダンプティみたいに割れてしまえ!



「グ、グアアアアア!」
 レディ・ハンプティの肩口のパイプから勢いよく蒸気が排出される。レディ・ハンプティの体内の熱が外へと排出され、当然列車内部は高熱の蒸気で唸るような暑さへと変貌する。
 イサナ・ノーマンズランド(f01589)はそんな中でも身動きひとつせず、蒸気で炙られる体の痛みを合法アヘンで誤魔化しながら、大きなポンチョの下に息を潜めてじっとチャンスを待っていた。
「(なんだい、ありゃあ…)」
 イサナの目の前で、音を立てながらレディ・ハンプティの姿が変形していく。レディ・ハンプティが吐き出した蒸気がレディ・ハンプティへとまとわりつき、間もなくして晴れるその霧の中からは蒸気機関の武装が現れた。
 その金色の武装は、楽器の形をしていた。巨大なパイプオルガンを背負っているかのような武装。先のアルダワ魔王戦争に加わった者なら、その姿が大魔王アウルム・アンティーカに酷似していることに気づいただろう。

 イサナは、ポンチョで体を隠しながら匍匐前進をしてレディ・ハンプティへと近づいていく。
 突如、レディ・ハンプティが蒸気と共に爆音を吐き出して呻き声を上げた。列車の窓が衝撃にて破壊され、篭っていた蒸気が緩和される。イサナは歯を食いしばって動かないようその場で耐えるが、顔を苦痛で歪めている。
「ググググアアァァ! 父様! トウサマ! 貴方の無念必ずやわたくしがぁ!」
「(……錯乱してるのか? なら撃ち込むなら今のうちか。)」
 イサナは伏せたまま銃を構えると、銃口をレディ・ハンプティへ向けて狙いを定める。
 ところが、武装楽団形態へと変貌し感覚が異常に研ぎ澄まされていたハンプティは気配の動きを敏感に感じ取っていた。ギラリとイサナのいる方向を確実に見定め、手を伸ばしてこちらへとものすごい勢いで駆け寄ってきた。
「ァァァアアアア!!」
 声にならない叫びとともに、乳房の下の大口を広げたレディ・ハンプティは、ガシリとイサナを被っていたポンチョごと掴みあげる。
 そして、容赦なく広げた大口の中奥深くへと、それを押し込み入れた。

「……悪いね。おっきいおっぱいにはそんなに興味が無いんだ。」
 イサナはポンチョから抜け出して脱出を試みる。というのも、1枚のポンチョの中に隠してあったのはイサナひとりだけではない。イサナより一回り大きな機動歩兵装甲強化服…これを着用したまま隠れていたのである。一回り大きなサイズであるがゆえ脱ぎ捨てるのは簡単であった。
 イサナはユーベルコード【Full Metal Jacket 2nd】を発動させることで、強化服を自動操縦モードへと切り替える。動き出した強化服は、レディ・ハンプティの牙をこじ開けようと力強く動き出した。
 レディ・ハンプティは逃がしてなるものかとばかりに乳房の下の口へと力を加え、噛み砕きにかかる。2つの力が拮抗し…歯と歯の間には僅かに隙間が生まれた。
「……お人形が気に入ったならそれはあげるよ。」
 イサナは強化服がこじ開けてくれた歯の隙間から、外へと向けて飛び出す。と、同時に、自分が入っていた強化服をレディ・ハンプティの乳房の下の口の中へと蹴り込んだ。
 イサナが装着していた強化服。その中にはたくさんの銃器、銃弾、火薬が装備として搭載されていた。だから、レディ・ハンプティの口から飛び降りるイサナは、空中にて手にしたスイッチを思いっきり押し込む。
「Bon Appetite! ハンプティ・ダンプティみたいに割れてしまえ!」
 ポチッ!
 大爆発が背後にて起きる。レディ・ハンプティの口の中で起こった爆裂は小さいものではなく、列車全体を揺らすその衝撃が、敵へと与えたダメージの大きさを猟兵達へと知らせてくれた。
 爆風に吹き飛ばされたイサナは、体を丸めて衝撃へと備える。そしてそのまま列車内の柔らかい革張り座席へと体をうちつけ、無事に生還を果たしたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ラブリー・ラビットクロー
クロゼf26592と

ししょーが視界を悪くしてくれてるのん
その隙にらぶ達は座席の影に隠れるなん
らぶは毒ガスに換装したラビットブレスを使うぞ
ししょーもらぶもマスクをつけてるから毒ガスはヘーキ
毒ガスで満たせば敵の動きも鈍ると思うなん
そうすれば敵のUCも躱せるかも

車内がモクモクになったらUCを発動なん
描いたのはらぶが今まで出会った猟兵さん達
のハリボテ
かっこよくて可愛くて綺麗で素敵なみんな!
らぶに力を貸してほしーなん
一緒にセカイを救うんだ!
煙の中から猟兵が突然現れたらきっとびっくりなん

バットで窓を割って換気すれば隙だらけのハンプティ
見つけた
ざんねん
らぶ達はホンモノなんな!
これがらぶのホームランなん!


クロゼ・ラビットクロー
ラブリー(f26591)と
ラブリーのことはラビィと呼び普通の口調
他の人には敬語。混ざっても問題無し

魔導列車ちょっと欲しいな。僕の戦車にしたい。
冗談はさておき、正面から戦って勝てる相手じゃないから
今回も搦め手で行こう。“アイテム”の【グレネード】から
煙幕弾を投げて相手の視界を奪う。
煙に紛れて攻撃…とかしない。僕はその辺の椅子の影に隠れよう。
相手が超速で所構わず攻撃したとしても、
近づかなければいきなりやられたりはしないんじゃないかな。

あれ…密室なのに煙が晴れてきたぞ。
ってラビィさんなに換気してくれてんの!?
仕方ないので“UC”【投擲弾】を使おう。
煙幕弾じゃなく普通の爆弾でね。



「魔導列車かぁ…ちょっとほしいな。僕の戦車にしたい……。」
 ガスマスクをした猟兵の男性、クロゼ・ラビットクロー(f26592)が列車のシートを撫でながらふと呟く。隣に立つ同じくガスマスクをつけた少女、ラブリー・ラビットクロー(f26591)は首を傾げた。彼が持つ男のロマンをあまり感じ取れなかったようだ。
 クロゼはこほんと咳払いをする。
「冗談はさておき。」
「冗談だったのん?」
「…もちろん。さぁ、正面から戦って勝てる相手じゃなさそうだ。予定通りの作戦でいこう。」
 2人の目の前では、ユーベルコードを発動させ既に武装楽団形態へと変形しているレディ・ハンプティが強大な力を解放して暴れている。
 レディ・ハンプティは武装の排気パイプから大量の蒸気を吐き出して、列車内を高熱で包み込んでいる。暑くてたまらない……が、2人はそんな過酷な環境には慣れている。
 ラブリーは後ろを振り返って、クロゼへと話しかける。
「ししょー、既に煙でいっぱいなのん。作戦ミスってやつなんな?」
「いやいや、これは湯気だから直ぐに晴れるよ。それにこれは相手に有利な環境ってことだ。だから僕らに有利な環境にするために、変わらず作戦決行だ!」
「ラジャーなんなー!」
 ラブリーは列車に並ぶ椅子の陰へと飛び込み隠れた。クロゼはそれを確認すると、手に持っていたグレネードを前方へ思いっきり投げ込む。
 すると、レディ・ハンプティは投擲物に当然のように反応し、高速で手を伸ばすとグレネードを受け止める。そしてそのまま握りしめ、信じられない握力で破壊した。
 ブシューーーッ! グレネードから大量の煙が吹き出す。先程から作戦作戦と言っているように、このグレネードは攻撃用のものではなく煙幕弾だ。受け止められたのは驚いたが結果オーライ。列車内に煙幕が立ちこめた。
「やるのんししょー。らぶも頑張るぞー!」
 ラブリーは隠れていた椅子から姿をのぞかせると、背負っていたボンベから伸びるホースを手に構えて中の物体を放射する。火炎放射器のような形をしたこの武器は『ラビットブレス』。火炎以外でも中身を入れ替えれば様々な物体を散布できる。
 そして今回吹き出したのは生体へ悪影響を及ぼし動きを鈍らせる、強力な毒ガスだ。作戦は猟兵達にも通達済みなので、安心して列車内に撃ち込める。もちろん2人は普段からガスマスク装着済みなので吸い込むことは無い。
 やがて、煙幕の中で猟兵を探し暴れ回るレディ・ハンプティの音が緩やかになっていくのがわかる。2人は煙の中顔を見合わせ、ニヤリと笑いあった。

 それでは一転攻勢に移るか……というとそんなことはしない。弱りはすれど強力なオブリビオンだ。様子は見すぎて困ることはない。クロゼはじっと煙幕の様子を見つめていた。
 反対に、ラブリーは隠れていた場所から立ち上がると何やら準備をし始めた。手を懸命に動かし、立てたパネルに何かをペタペタと塗りあげていく。
「できたのん!」
 彼女のユーベルコード、【頭の中のセカイの全て】は、見たもの、出会ったもの、ラブリーの思い出の全てを筆先に込め精巧なイラストとして描き上げる技だ。
 ラブリーがパネルに描いたのは、今までに出会った何人もの印象深い猟兵たちの姿だ。かっこよくて、可愛くて、綺麗で素敵な最高の仲間たち。ラブリーは手に持った筆を振り上げる。
「みんな、らぶに力を貸してほしーなん! 一緒にセカイを救うんだ!」
 このユーベルコードは精巧なイラストを描き上げるもの。神秘的なパワーでラブリーをサポートしたり、魔法的なパワーで動き出したりはしない。
 たがら、こうする。ラブリーはバットのような鈍器を取り出すと、列車の窓へ向かって思いっきり振り下ろした。
「そりゃー!」
「ラビィさん何してんの!? 窓が割れたら煙幕が消えちゃうよ!?」
 ガシャーーン! 焦るクロゼを横目に、ラブリーは笑顔で窓ガラスをぶち破った。空を飛ぶ魔導列車、気圧差により内部の空気がたちまち外へと吹き飛ぶ。毒と煙幕も列車から掻き消えて、レディ・ハンプティが目前へと現れた。
 レディ・ハンプティは毒にて充血する瞳をこちらに向ける。
「これを見るのなん!」
 そして、レディ・ハンプティはたくさんの猟兵達が勢揃いしている光景を見た。煙幕と毒にて鈍った感覚では、それを本物の光景だと誤認するには十分で、レディ・ハンプティは体をびくりと震わせ怯んでしまう。
 クロゼは、ラブリーの意図を理解すると同時に生まれた好機を存分に生かした。ユーベルコードにて強化を施したグレネードのピンを抜くと、ハンプティのいる方向へと思いっきり投げ込む。
「これでも喰らえ!!」
 グレネードの中身は煙幕ではなく、今度こそ破壊力抜群の火薬をたっぷりと詰め込んでいる。
 投擲弾の衝撃を受けないよう、クロゼはラブリーを連れて、耳を伏せてしゃがみこむ。眩い光とともに爆炎と爆風が車両内を吹き荒れた。
「ぐ、ぐぐぐ……」
 苦しそうに声を上げるレディ・ハンプティ。ガシャンと音を立てて、砕け散った蒸気武装の一部が床へと転がり落ちた。
「引っかかったなん、レディ・ハンプティ!」
 ラブリーはそんなハンプティへと飛びかかる。自身の描き上げたトラップが上手く動作したことにより顔が紅潮しており、やる気満々だ。
「ざんねんな! らぶ達はホンモノなんな!」
 そして、ラブリーはバット状鈍器を大きく振りかぶり、ハンプティへ向けて振り回した。
「これが、らぶ達のホームランなん!!」
 グワッシャーン! 黄金の蒸気武装が、再び削り飛ばされてくるくると宙を舞った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

神代・凶津
おっと、物騒な姉ちゃん。アルダワには行かせねえぜ。
そうだよな、相棒ッ!
「・・・ここを魔道列車の終点にします。」


敵の先制攻撃をありったけの『結界霊符』をばら蒔いて結界術で防いでやる。
防ぎきれなくても僅かな時間さえ稼げれば構わねえ。
鬼神霊装を展開できる時間さえ稼げればなッ!
いくぜ、相棒ッ!
「・・・転身ッ!」

この列車は敵の物だ。大暴れしても構わねえ。
高速移動しながら引き上げた反応速度で敵の攻撃を見切って避けつつ、右手の妖刀に収束させた雷の斬撃の放射を叩き込んでやる。
災魔の幽霊を呼び出してきたら左手の破魔の暴風を纏った薙刀でなぎ払ってやるよッ!


【技能・結界術、見切り、破魔、なぎ払い】
【アドリブ歓迎】



「こんな、こんなはずでは…。」
 猟兵との連戦により傷だらけになったレディ・ハンプティが体を引き摺って移動していく。
「ああ……父様、父様…。わたくしに力をお貸しください……。」
 レディ・ハンプティが向かうのは列車の先頭だ。そこまで向かえば、邪魔な猟兵達を乗せた車両を全て切り離し、何の憂いも無くアルダワへと向かうことができる。
「父様よ無念を晴らし、必ずや蒸気獣による大混乱を起こすのです……。そうすればわたくしは……!」
「……いいや、物騒な姉ちゃん。アルダワには行かせないぜ。そうだよな、相棒ッ!」「……ここを、魔導列車の終点とします。」
 巫女服姿の女性と、その顔には被さる一枚の鬼の面。ヒーローマスクの神代・凶津(f11808)が、レディ・ハンプティの進路へと立ちはだかっていた。
 レディ・ハンプティはわなわなと体を震わせる。乳房の下にある牙をガチガチと鳴らして威嚇する。
「そこをどきなさいっ!」
「通すつもりは一切ないッ!」
「ならば……押し通りますわっ!!」
 レディ・ハンプティは一瞬で、再びユーベルコードを発動させる。ボロボロになりながらもなお起動するは武装蒸気楽団形態。ジェット噴射による音速の体当たりにて、凶津ごと車両の出入口を吹き飛ばし、前方へ進もうと激突してくる。
「相棒ッ! 衝撃に備えろーッ!」
 凶津は懐から取り出した結界霊符をありったけ前方へと投げつける。印を着るとそれは霊符は全て輝きを放ち、何重もの結界障壁が出来上がった。
 そこへ、オブリビオンの体当たりがぶつかる。結界が破裂し、砕け散る。巨大な牙にて食い破られた決壊がバリバリと音を立てて消滅する。傷を負ってなお、レディ・ハンプティは強力なオブリビオンであった。
 ──そして、最後の障壁が砕け散った。
 レディ・ハンプティの体当たりを受け、破壊された車両の扉ごと凶津の体が後方へ吹き飛ばされる。ハンプティはべろりと大きな舌で瓦礫を舐め除けて、こちらへ向けて足を進めた。
 だが、結界には確かに意味があった。。ほんのわずか、ほんのわずかであるが時間を稼いでくれていた。
 空中を舞う凶津の体を、風と雷のエネルギーが包み込む。霊装の展開は、生まれたわずかな時間にて完了していた。凶津は装着者の少女、桜に向けて叫ぶ。
「いくぜ、相棒!【鬼神霊装(オーバードフォーム)】ゥーーーッ!!!」「………転身ッ!」
 雷神、風神。2つの神の名を持つ霊装の力を、鬼面の力にて強引に合体させる。吹き叫ぶ力の嵐が車両の中へ轟き荒れる。そのあまりのエネルギーに、凶津の体内も無事では済まない。口から溢れそうになった血溜まりを、凶津はゴクリと飲みこんだ。
 黒く変色した鬼面を付けた少女は着地すると、右手に刀、左手に薙刀を静かに構え、レディ・ハンプティを睨みつけた。
「グギャーァ!!」
 車両へ乗り込んでいたレディ・ハンプティが呼び覚まし災魔の霊、蒸気獣が両脇から襲いかかる。
「……この列車は敵のもの。大暴れしても問題ないってのは嬉しいねぇ!」
 凶津は薙刀をひと振るいしてそれらを両断する。破魔の力有する霊刀の、魔を切り払う風の刃は暴風となり、容赦なく蒸気獣を細切れにしていった。暴風はそのまま収まることなく、列車内の備品を巻き込みながら大きくなっていく。
「わたくしは決して諦めないっ! 見ていてください父様ぁぁァァアアッッッ!」
 レディ・ハンプティは口の中から一際大きく蒸気を吐き出し叫ぶ。あの女の中にはどれだけの熱量と力が渦巻いているのだろうか。凶津は妖刀を強く握り直した。
「アアアアアアーーッ!!」
 ハンプティが両手を大きく広げ突撃してくる。乳房の下の口を大きく開け、人の目には捉えられないスピードでの突進だ。暴風も、列車の残骸も気にせずただ真っ直ぐ突っ込んでくる。
「はぁぁっ!!」
 類まれなる集中力を発していた凶津は、汗だくになりながら身を翻し、これを間一髪回避する。
 そして、右手に構えていた妖刀を振り上げる。
「あんたの旅はここにて終了だァァーーッ!」
 雷撃を込め、それ自体を刀身とした妖刀の斬撃がレディ・ハンプティへと振り落とされる。
 雷が列車へと落とされるとんでもない音。窓が割れ、車内の明かりが全て落ちる。
 雷撃にて眩んだ目をゆっくりと開けると、地面に倒れ伏すレディ・ハンプティがそこにいた。

 。。。。。。。。。。。。。。。。。。。

 空を行く魔導列車が、蒸気世界へと墜落していく。
 レディ・ハンプティが倒されると同時に、蒸気獣も全て掻き消えた。この列車も、地面に激突するより先に消えて無くなってしまうだろう。
 アルダワを狙った大魔王の娘。……これにて野望を完全に断ち切ることは出来たのだろうか?
 ──それはまだ、猟兵達にはわからない。
 いずれまた、何らかの戦いが待ち受けている。その予感だけが猟兵の心に確かなものとして感じられるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年08月16日


挿絵イラスト