●黄金の魔王の娘
魔導列車が走り回る蒸気建築の街。
街を見下ろせるビルの縁に、真っ黒ずくめの女が腰かけていた。
とても美しい女ではあったが、胸元が牙で覆われていて、肩からは真鍮の歯車と蒸気を噴出する煙突のようなものが飛び出ていた。
女は、ビルの屋上で風を感じながら、手元の分厚い本に視線を落としていた。
「ああ、父様。魔女の肚から私を造った父様。
私にも正体を見せなかった、いとしい父様。
あなたの無念、このわたくしが果たします」
侵略蔵書「蒸気獣の悦び」を愛おし気に捲りながら、女は言った。
彼女はこの猟書を使って、「アルダワ魔法学園」の西方、諸王国連合を地獄へと変えるつもりだ。その被害を利用することで、彼女は災魔を産めるようになるらしい。
「ああ、父様。あなたの無念を思うだけで、乳房の下の口がわななきます。
どうか、見守っていてくださいね、アウルム・アンティーカ父様……!」
パタンと本を閉じて女が立ち上がる。
そして、蒸気建築の建物が立ち並ぶ、大都会の国へと消えていった。
●黄金魔王の娘を討て
「猟書家を見つけたの!皆には至急、蒸気建築のある大都会の国へ行って欲しいのよ!」
グリモア猟兵の夢咲・向日葵(魔法王女・シャイニーソレイユ・f20016)は、大きな声で猟兵たちを呼び止めると、珍しく真面目そうな表情で依頼の説明を始めた。
「ひまちゃんが予知したのはアルダワ魔法学園を狙う猟書家、レディ・ハンプティ。
ひまちゃんも殴ったことがある黄金の魔王、アウルム・アンティーカの娘だよ。
彼女は、侵略蔵書「蒸気獣の悦び」を使って、アルダワ学園にある国を、
えらいこっちゃにするつもりなんだって!」
向日葵は、グリモアを操作して石のスクリーンを創り出すと、レディ・ハンプティの姿を映し出した。
「レディ・ハンプティは、侵略蔵書と乳房の下の口で攻撃してくるよ。
気を付けてね。
分かってはいると思うけど、【先制攻撃】をしてくるから【必ず対策】してね」
念を押すように向日葵は言う。
相手はかなりの強敵だ。対策なしに挑むのは自殺行為であろう。
使うユーべルコード等のデータは、スクリーンに映し出されているので、参考にしていただきたい。
「それでは、しっかりと対策ができた人から転送するのよ」
ゴゴゴゴゴゴゴと地響きを立てて、向日葵の花で飾られた石の転移門が現れる。
「じゃあ、いってらっしゃーいなの!」
大きく手を振って、グリモア猟兵は猟兵達を送り出すのであった。
しろべびさん
しゃちーっす。白蛇さんなの。
と言う訳でレディ・ハンプティ戦です。久々の強敵戦ですね。
今回は体調とスケジュールの関係で【可能な限り書く】という感じになります。
ご了承ください。
それと、猟書家戦なので『成功』か『大成功』のみ書かせていただきます。
☆=============================☆
プレイングボーナス……『敵のユーベルコードへの対処法を編みだす』。
(敵は必ず先制攻撃してくるので、いかに防御して反撃するかの作戦が重要になります)
☆ =============================☆
難易度は【やや難しい】なので、判定はやや厳しめにさせていただきます。
皆さんのプレイングを待っております。
第1章 ボス戦
『猟書家『レディ・ハンプティ』』
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POW : 乳房の下の口で喰らう
【乳房の下の口での噛みつきと丸呑み】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
SPD : アンティーカ・フォーマル
【肩の蒸気機関から吹き出す蒸気を纏う】事で【武装楽団形態】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ : 侵略蔵書「蒸気獣の悦び」
【黄金色の蒸気機関】で武装した【災魔】の幽霊をレベル×5体乗せた【魔導列車】を召喚する。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ウィルトス・ユビキタス
敵は強大だがここで打ち倒さねばアルダワの無辜の民に被害が及ぶ。故に退けぬのだ。
その為にかつて封じたガジェッティアの力を解き放とう。
魔導列車の質量は純粋に脅威だ。だから敢えて魔導列車に飛び乗ることで一先ずは無効化させて頂こう。
そして魔導列車の上にいる災魔をイクリプス・フリティラリアで凪ぎ払う。余裕があるのなら【スチームエンジン】で蒸気エンジンを搭載して戦う。
余裕がなくともやることに変わりはない。
災魔を一匹残らず刈り取る。
だが残念なことに俺の限界はここだ。
レディ・ハンプティへの道を切り開いて後続に託そう。
アドリブ・連携可
●魔王の娘討伐戦① 初戦!ウィルトスvsレディ・ハンプティ
街中の至る所から蒸気が吹き出す音と、それによって歯車が稼働する音が響く。
ガシャン、ガシャン、ガシャン、ガシャン。小気味よく、リズミカルに響く音は、人々の生活の営みの音だ。
そんな歯車と蒸気の街を、全身黒ずくめの美女が歩いていた。
彼女は、騒がしい街の様子を何処か懐かしむようにしながら、何処へ行くでもなく、街の中をぶらぶらと歩いていた。
そうしてしばらく歩いていた彼女であったが、ふと、足を止めると徐に背後を振り返って、にっこりと笑うと、
「ああ、懐かしいわ。この音。故郷を思い出します。
貴方もそう思いませんか?」
向日葵の花が飾られた石の転移門から、現れた男へと話しかけた。
「ああ、そうだな。だが、お前はここで討たせてもらおう」
漆黒のローブを纏いフードを被った、ウィルトス・ユビキタス(戦場の荒らし屋・f01772)は、変形機構付きの大鎌『イクリプス・フリティラリア』を構えながら、レディ・ハンプティに返事をした。
「おや、まるで死神のようなお姿。恐ろしいわ。
ですが、わたくしにもやらねばならないことがあるのです。
なので、わたくしは貴方に殺される訳にはいかないのです
どうか、見逃してはいただけないでしょうか?」
「敵は強大だがここで打ち倒さねばアルダワの無辜の民に被害が及ぶ。
故に退けぬのだ」
「成程、平行線ですね。ならば、殺し合う他にはありません」
レディ・ハンプティが右手で持った侵略蔵書「蒸気獣の悦び」が、黄金の輝きを放ち、ひとりでにパラパラと捲り上がる。
黄金色に輝く本は、プシューッ!!という音と共に蒸気を放つと、そこから真鍮のレールが飛び出した。
レールは、鎌を構えた猟兵の元へと真っ直ぐに伸びている。
「では、轢き潰してさしあげましょう」
猟兵の女が言った。
次の瞬間、侵略蔵書から黄金色に輝く巨大な魔導列車が、街中に響くような大音声の汽笛を響かせながら姿を現した。
その列車は、真鍮のレールを通って真っ直ぐに、ウィルトスの元へと駆け出した。
「チッ」
舌打ちをしたウィルトスは、レールから外れようと走り出す。
だが、レールは不思議なことに蛇行しながらも、しっかりと彼を追尾していた。
ならばと、次に彼がとった行動は乗り込むことだ。
ギリギリまで魔導列車を引きつけ、ビルの壁面に向けてダッシュすると、勢いそのままに壁を蹴って跳ねる。
その勢いで宙返りをしながら、背面から襲い掛かる魔導列車の屋上へと着地すると、振り落とされないように屋上の縁へと指をかけた。
「おや、お見事。
ですが、魔導列車の内部は黄金色の蒸気機関で武装した大量の災魔がいます。
果たして生きて帰れるのでしょうかね」
客室の窓をぶち破り、列車の中へと入っていったウィルトスを見上げながら、猟書家の女は嗤っていた。
「かつて封じたガジェッティアの力を解き放つ」
イクリプス・フリティラリアに【蒸気エンジン】を搭載し、破壊力を増強させたウィルトスは、列車の各所から現れる黄金色の蒸気機関で武装した災魔と、交戦を始めた。
プシューと蒸気を放出しながら、蒸気エンジンが稼働し、ウィルトスの振るう赤い刃の大鎌を加速させる。
円の軌道を描いて大鎌が踊り、襲い掛かる災魔たちを次々と切り伏せていく。
だが、多勢に無勢である。
数の暴力というモノは恐ろしい。1体、2体、3体が斬られているうちに、別の個体が攻撃を仕掛けてくるのだ。
そのダメージが、ウィルトスに少なくない消耗を強いる。
「余裕がなくともやることに変わりはない。災魔を一匹残らず刈り取る」
しかし、ウィルトスのやることは変わらない。
愚直に鎌を振るい、襲い掛かる災魔を切り伏せる。それだけだ。
「はあっ…。はあ。片付いたか。後は…」
ウィルトスは、先程蹴破った車窓から地上を見下ろす。
丁度、真下辺りに猟書家の女が残っている。
ウィルトスは、悪そうな顔を浮かべると、魔導列車の壁面を鎌で切断し、そのまま地面に向けてダイブを敢行した。
「きゃっ。空から先ほどの猟兵が」
「残念なことに俺の限界はここだ。だが1太刀入れさせてもらうか」
地面に着地したウィルトスは、最後の力を振り絞ってイクリプス・フリティラリアを振うと、レディ・ハンプティの左手に斬撃痕を刻み込んだ。
ざっくりと斬られた黒いドレスからは、真っ赤な血が流れ落ちている。
「くっ。魔導列車よ、轢き殺しなさい」
「残念。ナイスなタイミングだ」
ポオオオオォォォーという汽笛を鳴らして、真鍮のレールを辿り魔導列車が、彼の背面から物凄い勢いで迫る。
だが、列車が来るよりも早く、石の転移門が現れる。
「後は、後続に任せる」
そう言うと、ウィルトスは、石の転移門へと飛び込んだ。
魔導列車は、誰も居ない場所をただ、通り過ぎていく。
「逃がしましたか…」
斬られた左腕を止血するために押さえた猟書家の女は、忌々し気に呟いた。
大成功
🔵🔵🔵
雷田・水果
POW
●対策
猟書家から十分な距離をとり、アリスランスを予め自動追尾光線銃(サイコガン的なヤツ)に想像力で進化させる。
●行動
人派ドラゴニアンの水果は上空から様子を窺う。
「情報によれば、この方法が効きそうですね」
猟書家の攻撃は【オーラ防御】をしつつ【見切り】で回避を試みる。
ユーベルコード「アリスナイト・イマジネイション」で無敵の戦闘鎧を想像から創造し、猟書家との接近戦をしてもらう。
その間自分は空からの【援護射撃】を試みる。
「私のお母さんの方が大きくて美しいです(キリッ)」
●魔王の娘討伐戦② 第二戦!水果vsレディ・ハンプティ
「ああ…斬られた腕が痛みますわ。ですが、わたくしは諦めません。
お父様の無念を晴らすまでは。ですので、どうか見守っていてくださいまし。
いとしのお父様」
黒ずくめの女が呟いた。
女は、先ほどの戦闘において大鎌によって斬られた左腕の傷口に、斬り落とされたドレスの袖を巻き付けて止血をしている。
場所は蒸気建築の街にある公園。ベンチに腰かけて治療をしていた。
治療を終えた女は溜息を1つ吐くと、先ほどの戦闘を思い出しながら呟く。
「成程、あれが猟兵の戦い方ですか。厄介ですわね。
予知をしたかのように正確に位置を掴んで転移をしてくる。
で、あれば、そろそろ…」
そう、言いかけた時だった。
ベンチに座っていた彼女目がけて、光線のようなものが飛んできた。
間違いなく猟兵の攻撃だと、レディ・ハンプティは確信する。
「ああ…やはり。今度は隠れ鬼でございますか」
猟書家の女は、脇に置いていた侵略蔵書「蒸気獣の悦び」を右手で掴み、小脇に挟むと、スカートの裾を両手で持ちあげ、ヒールで大地を踏みしめると、光線の出所目がけて蒸気建築の街を駆けていった。
時を少し戻して。
グリモア猟兵が作り出した石の転移門が現れたのは、公園を見下ろせる背の高いビルの上だった。
そこから現れたのは、人派ドラニアンの少女、雷田・水果(人派ドラゴニアンの姫騎士・f19347)である。
彼女は、暗緑色の竜翼をばさりと広げると、気流に乗って、空へと舞い上がる。
そして、上空から地上を見下ろすと、公園のベンチで左腕の治療をしている猟書家の姿を見つけた。
「情報によれば、この方法が効きそうですね」
そう呟いた水果は、アリスランスを自動追尾光線銃へと想像力で進化させた。
敵の猟書家は、グリモア猟兵からの情報によると、遠距離攻撃に乏しい。
故に、敵が近づけないような上空から、一方的に攻撃を仕掛ければ有利になれると考えたのだ。
そのアイデアは正しい。近づきさえされなければ、猟書家の強力なユーべルコードであっても全くの無力だ。
だが、それだけで倒せるほど、猟書家は弱くない。
「お父様にはしたないと笑われないかしら」
ビルの配管や剥き出しになった歯車、ベランダの柵、蒸気建築の街にあるありとあらゆるものを足場にして、レディ・ハンプティは上空に居る水果に迫る。
迫りくる光線銃を躱し、時には体を掠らせるように受けながらも、光線銃の軌道を辿ってどんどんと距離を詰めていく。
「速い。そして、地の利は向こうにあるようですね」
水果は、レディ・ハンプティが光線銃に貫かれて地面に堕ちる様を想像しながら、自動追尾型光線銃の引金を引き続ける。
攻撃は確実に当たっている。だが、戦果は思うほどには上がらない。カン、カン、カンと、リズムよくヒールが金属を叩く音が響いて、猟書家がジグザグ上下左右にと三次元機動で迫って来る。
いっそ、猟書家から見えないくらいまで高く飛ぶ‥‥と言うのもアリと言えばアリだ。だが、そうすると、光線銃でレディ・ハンプティを撃ち落とすという想像が曖昧になる。
想像して創造した光線銃は、水果の想像した通りの軌道と威力で猟書家に炸裂する。故に、最低限は、相手を視認している必要がある。
想像は、具体的であればあるほど、現実にしやすいものだ。
「ふふふ。補足しましたよ。あとは捕まえるだけですね」
「そうはさせない」
高層ビルから生えた排気用の真鍮の煙突を足場にして、猟書家の女が跳躍する。
竜翼を羽搏かせて逃れようとする水果を目掛けて。
水果は、突進の軌道を見切り、体を捩じりながら回避をする。
「ふふふ。ここまで近づけば」
攻撃を躱されたはずの猟書家の女が嗤う。
ギパリと乳房の下の口が牙をむいた。
「喰らいつけるのですよ」
「ええ。それは想像していました」
水果と猟書家の女が30cm以内になったことで猟書家の女のユーべルコードが発動。
物理法則を無視した超高速かつ大威力の噛みつきと咀嚼攻撃が、水果に喰らいつく―――筈だった。
「…これは!?」
「無敵の戦闘鎧さんです」
猟書家の女が抱擁したのは、水果が【アリスナイト・イマジネイション】で想像して創造した無敵の戦闘鎧だ。
戦闘鎧もまた、猟書家の女を離さないように猟書家の女を抱きしめ返す。
こうなってしまえば、そのまま地面に堕ちる他ないだろう。
「私のお母さんの方が大きくて美しいです(キリッ)」
よく分からないことをドヤ顔で言った水果は、自動追尾光線銃の引金を引き、光の雨を猟書家の女に降らせ続けた。
大成功
🔵🔵🔵
アリス・セカンドカラー
お任せプレ。お好きに。
汝が為したいように為すがよい。
ギャグ補正(結界術/リミッター解除/限界突破/継戦能力)の耐久力と再生力を頼りに自ら乳房の下の口に飛び込む。我々の業界ではご褒美です☆
ま、悪霊なので肉体は飾りなんですけどね。咀嚼され流れ出た血を代償にサイキックヴァンパイアとパラサイトテンタクルの封印を解く。そして、そのままレディ・ハンプティに寄生(降霊)するわ。脳弄り吸精形態とくと御堪能あれ♡
さ、私の肉体を傷つけた神罰よ♪と脳を弄り倒しつつ情熱の炎でじっくりと料理して快楽エナジーを捕食するわ☆精神を直接蹂躙されるのってたまらないでしょ♪魂まで略奪してあげる☆
えっちなのうみそおいしいです♡
●魔王の娘討伐戦③ 第三戦!発禁ピンクvsレディ・ハンプティ
「けほっ。けほっ。くっ。ドレスに汚れが」
軽く咳き込む音と共に、土埃の中から猟書家の女は現れた。
全身に纏った黒の衣装は、光線銃に撃たれた所為で所々焦げ付き、左袖の部分は切り取られ、止血の為に結ばれていた。
戦闘で負ったダメージは少なくないと言った所だ。
彼女は、パタパタと黒いドレスについた埃を叩き落とすと、最後に侵略蔵書「蒸気獣の悦び」についた土埃を払い、ふっと息を吹きかけた。
「見苦しい格好をしていたらお父様に笑われてしまいますからね」
身だしなみを整えたレディ・ハンプティは、蒸気建築ビルの窓に反射した自分の姿を確認すると満足げに頷いた。
淑女たるもの見苦しい格好で居るべきではない。例え戦闘中であってもだ。
「しかし…喰らい損ねましたか。
猟兵は厄介ですし、1人でも多く減らしておきたかったのですが…」
と、溜息を吐いた時だった。
ビルの窓に見慣れない人影が写っているのを、レディ・ハンプティは見つけた。
彼女はすぐに後ろを振り返ると、現れた人影を確認する。
そこに居たのは、ピンク色のエプロンドレスを纏った(見た目だけは)可愛らしいダンピールの少女だった。
「あら、お腹が空いているのかしら?だったら、わたしはどうかしら♡
性的な意味でも物理的な意味でもバッチコーイよ☆」
「はい??」
アリス・セカンドカラー(不可思議な腐敗の魔少女・f05202)は、蠱惑的な笑みを浮かべると、当たり前のように妄言を吐いた。
レディ・ハンプティの方は困惑といった様子だ。まあ、無理はない。見た目(だけ)は可愛らしい少女が、あらゆる意味でドン引きするような事を言い出したのだ。困惑するのも無理はない。
見た目からは、中身が度し難いド変態であることは見えない。初見殺しの化身みたいな存在だな、このサイキックヴァンパイア。
「…まあ、いいです。
実際に噛み砕かれた後も同じこと言えるのか見物です」
「敢えて言いましょう。我々の業界ではご褒美です☆」
ギパリと開いた乳房の下の口に、良い笑顔でアリスが飛び込んでいく。
異様なまでの耐久力と再生力による継戦能力があるアリスだからできる荒業である。普通だったら確実に死ぬので、絶対にやってはいけない。
「…本当に飛び込んできた」
バリ、ゴリゴリ、グシャアア!!アリスの体が嚙み砕いて摺りつぶされて咀嚼されていく。
嚙み砕かれたアリスの体から鮮血が飛び散り、蒸気建築の街の石畳に流れていく。
「一体何がしたかったのか…」
(ま、悪霊なので肉体は飾りなんですけどね)
困惑するレディ・ハンプティとは対象的に、肉体を細切れの肉片へと変えられたアリスは、まだまだ余裕と言った感じでユーべルコードを発動させた。
「ぐっ…これは…!?」
猟書家が胸を押さえて苦しそうに身をよじる。
まあ、あれだけ、灰汁が強いやつを喰らったんだ。胸焼けもするわな。
さらに、アリスの血を吸って封印が解かれたサイキックヴァンパイアとパラサイトテンタクルという2種の触手たちがレディ・ハンプティへと襲い掛かった。
『脳弄り吸精形態とくと御堪能あれ♡』
「どうして…わたくしの中から声が…まさか、わたくしに」
『ええ、寄生したわ♡』
「最悪…ですね」
乳房の下の口を開いて慌ててアリスの肉片を吐き出そうとするも、もはや手遅れ。
『さ、私の肉体を傷つけた神罰よ♪
精神を直接蹂躙されるのってたまらないでしょ♪魂まで略奪してあげる☆
えっちなのうみそおいしいです♡』
「いやあああああああああ!!お父様あああああ!!」
蛍光ピンクな触手たちがうねうねと猟書家の女に襲い掛かり、アリスはお楽しみの時間を過ごしたような。
アリスだった肉片はスタッフ(グリモア猟兵)が回収しました。
大成功
🔵🔵🔵
ニール・ブランシャード
猟書家さん、お父さん思いなんだね。
でも、悪いけどその気持ちは汲んであげられれないや。
ぼくは人間とは体の作りが違うけど、当たりどころが悪ければ死んじゃうのは同じ。
…だからって、ここで「勇気」を出さずに怯えてるだけじゃ猟兵になった意味がない。
敵が距離を詰めて来たら、最初は武器で応戦しつつ、あえて隙を見せて左腕に喰いつかせる。
喰いつかれた瞬間に
右手で「怪力」でもって猟書家さんを掴む!
ねぇ、ぼくってどんな味がする?
タールだし、あんまり美味しくないんじゃないかな!
噛み付かれた状態のまま、UCを発動。口の中の左手から毒を放出して内側から攻撃するよ!
当然敵は離れようとするだろうけど、ぜっっったい離すもんか!
●魔王の娘討伐戦④ 第四戦! ニールvsレディ・ハンプティ
「うう…ひどい目に遭いました」
ふらふらとした足取りで猟書家の女が蒸気建築の街を歩いていた。
何か悪いものでも食べたのだろうか、ただでさえ白い顔が更に青白くなっている。
黒いドレスも心なしか乱れているように見えた。
「何か、口直しになるようなものを喰らいたいのですが…」
ビルの窓ガラスに映る姿で、身なりを整えながら猟書家の女が呟いた。
先ほどの戦闘で喰らったピンクは、何かもう最悪だった。話に聞いた大魔王の第四形態かと思うような凄まじい敵だったとレディ・ハンプティは思う。
「まあ、気を取り直して戦いに備えましょうか」
身なりを直し終えて、一息ついたレディ・ハンプティは、ビルとビルの間の大通りを北に進もうと歩き始めた。
すると、道の反対側から1人の騎士甲冑を纏った猟兵が歩いてくるのが見えた。
「猟書家さん、お父さん思いなんだね。
でも、悪いけどその気持ちは汲んであげられれないや」
「そうですか…。
では、残念ながら殺し合うほかにはありませんわね」
ニール・ブランシャード(うごくよろい・f27668)が、長柄の戦斧の切っ先を突き付けながら紡いだ言葉を、猟書家の女は微笑みながら返した。
猟兵とオブリビオンの道は交わらない。父の為と言えば聞こえはいいが、やることは大量虐殺と災魔の生産だ。
見逃してしまえば、戦争を経て平和になったアルダワ魔法学園に未曽有の災害を齎すことは、確実だ。
だからこそ、仕留められるうちに仕留めなければならない。
「では、参ります」
「ぼくはまけないよ!!」
猟書家の女はスカートの裾を摘まむと、舗装された道路を蹴って加速する。
予知されたユーべルコードからも分かるように、この女猟書家は、割と近接戦が得意だ。
トン、トン、トンと、小気味よく石畳を叩く音が響き、ジグザグとした軌道で加速しながらニールの元へと迫っていく。
「やああああっ!」
迎え撃つニールは懐に入り込ませないように長柄の戦斧を円の動きで振るい、急接近からのユーべルコード発動を牽制する。
(ぼくは人間とは体の作りが違うけど、当たりどころが悪ければ死んじゃうのは同じ。…だからって、ここで「勇気」を出さずに怯えてるだけじゃ猟兵になった意味がない)
ニールは、戦斧のスピアヘッドを猟書家の方へと突きつけ刃は下に構えつつ、少しずつ後ろに下がりながら、一定の距離を保っていた。
お互いにタイミングを図っている状態だ。少しでも隙を晒したら一瞬で食われる、そんな緊張感が両者を包み込む。
そして、先に動いたのはニールの方だった。
「おや、隙を晒しましたね。まずは左腕をいただきます」
「しまった!?」
不用意に動いたニールの斧を掻い潜り、猟書家の女がユーべルコードを発動する。
下乳房の牙に覆われた口がぎぱっと開き、身をよじって躱そうとしたニールの左腕に食らいつく。
――バキッ!ゴリゴリッ!
金属製の甲冑がまるで煎餅をかじるようにバリバリと砕かれていく。
カランという音を立てて、長柄の戦斧が石畳の上へと落下した。
「っ!!これは…!」
異常に気付いた猟書家が慌てて距離を取ろうとする。
だが、そうはさせまいと、ニールが猟書家の肩をガシッと掴んだ。
「ねぇ、ぼくってどんな味がする?
タールだし、あんまり美味しくないんじゃないかな!」
「またゲテモノですか…。これだから猟兵というやつは…!」
噛み砕いたニールの左腕から猛毒が出ていることに気づいたレディ・ハンプティは、身をよじり、両手を使って距離を取ろうとする。
左腕を吐き出すにしてもある程度の距離は必要だからだ。
「くっ…離しなさい」
「ぜっっったい離すもんか!」
もがくレディ・ハンプティを逃がさまいと、ニールが懸命にしがみついた。
だが、結局は逃げられてしまった。左腕が食われ、右手でしがみつくという体勢はどうしても無理があり、いくらニール怪力だからと言っても抑え続けることは困難だったからだ。
ただし、ニールの与えた毒のダメージは非常に大きい。
猟書家レディ・ハンプティを倒すまで、あと少しだ。
大成功
🔵🔵🔵
トリテレイア・ゼロナイン
貴方がお父上の遺志を継ぐというのであれば、私は騎士としてアルダワの人々の安寧の為に阻みましょう
大魔王と呼ばれた彼の者を討った数多の猟兵の一人として、責任を以て相対させて頂きます
大盾を●投擲し●盾受け
喰われても構いません
胸の下の顎は開いた際、下方への視界に制限が掛かる筈
盾の陰に隠すように射出し●操縦するワイヤーアンカーでの●ロープワークで足首絡めとり攻撃妨害、回避
もう一方の剣で牽制し、空いた手に握ったUC充填開始
センサーでの●情報収集で高圧高圧の機関●見切り
再度噛み付く彼女の肩の蒸気機関へ格納銃器での●スナイパーだまし討ち破壊工作で蒸気噴出による●目潰し
その一瞬の隙を付き巨大光剣を●なぎ払い
小雉子・吉備
大魔王の娘が復讐に……方向は違うけど桃太郎の後日談にも似たのはあったね
〖先制UC対策:POW〗
【先制攻撃】の【高速詠唱】で【属性攻撃(爆弾)】を込めた〖時の愚鈍「スロウフールハウル」〗を【早業】で【オーラ防御】と【盾受け】併用で【第六感】で【見切り】密集させ【弾幕】の盾を展開
喰わせ
距離を低空【空中戦】で素早く取り〖なまり〗ちゃんと〖ひいろ〗ちゃんに【動物使い】で撹乱
その隙にUCを【高速詠唱】此処で出来た友達を召喚
チケちゃんは【怪力・2回攻撃】を〖黒蜜かけキビダンゴアイスバー〗で
キビは〖従雉「フェザントファミリア」〗を【高速詠唱】で【団体行動】の【集団戦術】で決める
〖アドリブ絡み掛け合い大歓迎〗
●魔王の娘討伐戦(終) ~決戦!~
「はあ…はあ…げほっ!ごほっ!…っぐ…うぅぅ…」
ボロボロの女が蒸気建築の街の大通りを、ふらふらと歩いていた。
豊満な肢体を覆っていた豪奢な黒いドレスは、度重なる戦闘によって既にボロボロで、綺麗なレースもすっかり穴だらけになっている。
先ほどの戦闘で受けた毒の影響で顔色は真っ青で、口許には吐き出した血を拭った跡が薄く残っている。
ポタポタポタと流れ出た血の痕が、彼女の足跡となって残っていた。
まさに満身創痍と言った所だ。
「まだ…です。まだ立ち止まれません。
お父様の無念を果たすために。お父様の為し得なかったことを為すために。
そのためにわたくしは生まれてきたのです。
志半ばで止まることなど許されません。
お父様、お父様。いとしいアウルム・アンティーカお父様。
ハンプティを見守っていてください」
斬られた左腕が痛む。光線銃で撃たれた痕が痛む。触手によって奪われた体力が体を重くする。喰らった毒が全身を蝕み、意識を朦朧とさせる。
それでもまだ、魔王の娘は膝を屈しない。
「大魔王の娘が復讐に……方向は違うけど桃太郎の後日談にも似たのはあったね」
レディ・ハンプティが進む大通りの反対側から現れた雉鶏精の少女、小雉子・吉備(名も無き雉鶏精・f28322)は、猟書家の行き先を遮るように立ちふさがった。
満身創痍のレディ・ハンプティは、足を止めると吉備に話しかける。
「復讐…復讐ですか。わたくしは父の無念を晴らしたいだけなのですが…。
そう、わたくしはただ孝行したいのです。親の為しえなかったことを為す。
それこそが大魔王の娘であるわたくしのつとめ。やるべきことなのです」
穏やかな口調で魔王の娘が言った。
まるで自分は正しい事をしているのだと言わんばかりに、堂々と。
ボロボロの死に体であっても優雅な仕草で。
「貴方がお父上の遺志を継ぐというのであれば、私は騎士としてアルダワの人々の安寧の為に阻みましょう。
大魔王と呼ばれた彼の者を討った数多の猟兵の一人として、責任を以て相対させて頂きます」
と、トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)が言った。
彼が現れたのは、レディ・ハンプティの4mくらい後ろだ。
吉備と猟書家が話始めた直後に現れた向日葵の花で飾られた石の転移門から、彼は蒸気建築の街へと降り立った。
立ち位置としては、吉備とトリテレイアで、レディ・ハンプティを挟み撃ちにしているような状況となっている。
「ふふふ…そうね。わたくしたちと貴方達はいつも平行線。
決して交わらない。ならば、殺し合う他ないのでしょう。
けほっ!けほっ!失礼。
わたくしは、大魔王のアウルム・アンティーカの娘、レディ・ハンプティ。
アルダワ魔法学園に血と惨劇を齎し、災魔たちの母となるもの。
わたくしを止めたくば、実力で殺してみなさい。忌々しい猟兵どもよ…!」
魔王の娘が吼え、最後の舞踏会が始まった。
「まずは、雉の小娘から喰らいつくします」
口許から流れ出た血を掌で拭った猟書家が吉備に向かって駆けだした。
人数差というディスアドバンテージがあるならば、まずは各個撃破によって数を減らしていくのが定石だ。
挟み撃ちは厄介極まりない陣形ではあるが、逆に考えれば1人1人は、離れているため各個撃破を狙いやすいという利点もある。
そこで、比較的に倒しやすそうな体格の小さな女の子である吉備の方から攻めることにしたのだ。
「させないよ!〖時の愚鈍「スロウフールハウル」〗展開!!」
元気な掛け声と共に、雉鶏精の少女が展開したのは弾幕の盾だ。
爆発属性を宿した弾の周囲の時間のみを鈍重にする誘導弾を、空中機雷のように彼女を要とした扇状に展開している。
「くっ。小癪な。ですが…その程度、食い破って見せます」
下乳房の口を大きく開けた猟書家は、弾幕の盾を無理やり食らって破壊し、猟書家は吉備目がけて進む。
弾幕の盾を噛み砕くたびに爆発が起き、ずらりと生えそろった牙に皹が入っていく。だが、それでも彼女は止まらず、吉備との距離を着実に詰めていく。
「させません!!レディ・ハンプティ!!」
わざと大声を上げたトリテレイアが大盾を投擲する。
グルングルンと風をきり、回転しながら進む大盾の行く先は、女猟書家の背中。
「くっ。これは流石に無視できません…ね」
背中から襲い来る大盾を、レディ・ハンプティは振り返りながら下乳房の口で受け止めた。
バキッ、バキッ、ベキッという音と共に、金属製の盾が噛み砕かれていく。
(盾を噛み砕いている間は、視界に制限がかかります。ならば…)
その隙を縫ってトリテレイアが距離を詰めていく。
レディ・ハンプティに見つからないように可能な限り重心を落とし、姿勢を低くしながらスラスターを噴かせスライディングをするように低く進み、ワイヤーアンカーを射出して彼女の足に巻き付けると、手前側に来るように巻き取りをかけた。
「きゃあっ!?」
足を取られたレディ・ハンプティが転倒する。
石畳に強く背中を打ち付ける。
このままだと、背中を引きずられたまま機械騎士の懐まで引き寄せられると考えた猟書家は、腹筋運動の要領で上体を起こすと、下乳房の口でワイヤーを切断した。
「くっ」
巻き取っていたワイヤーを強制切断されたトリテレイアが、少しバランスを崩してよろける。
その隙をついて、魔王の娘が反撃を入れようと体勢を立て直し、駆けようとした。
その時だった。
「なまりちゃん!ひいろちゃん!」
「くっ。機械騎士に注意が行って雉の方の注意が…」
トリテレイアに対して注意が向いて無防備になった背中側から、青色の狛犬が右足のふくらはぎに噛みつき、赤い猿が背中を引っ掻いた。
魔王の娘は忌々し気に、2匹を振り払う。
なまりとひいろの2匹は、息の合ったコンビネーションで、レディ・ハンプティを攪乱するように攻撃を仕掛けていく。
「助かりました」
「ううん。こちらこそ。ところで、それは時間がかかりそうなの?」
トリテレイアの持つ刀身のない柄だけの剣を見ながら吉備が言った。
柄からはエネルギー充填用の管が伸びていて、機械騎士の胴体に繋がっていた。
「そうですね。魔王の娘を倒すとなるとそれなりに充填はしておきたい所です」
「そっか。なら、キビたちに任せて!ばっちりと時間を稼ぐから」
「…では、お願いします」
「うん!」
吉備はトリテレイアに手を振ると、キラキラと輝きを放つ1枚のカードを手に、2匹の友達が、攪乱攻撃を続けている所へと飛んで行くのであった。
「なまりちゃん。ひいろちゃん。お待たせっ!」
「げほっ、げほっ。くっ。飼い主が合流しましたか」
口許の血を拭いながら、レディ・ハンプティは上空から現れた吉備を見上げた。
彼女の周囲では一定距離を保ちながら、円を描くような軌道で青い狛犬と赤い猿が駆けずり回っている。
「アリスラビリンスからの縁と絆に基き、チケちゃん力を貸して!召符「雉鶏精の着ぐるみな愉快な仲間」っ!」
『吉備ちゃん、お待たせりっ』
吉備の力で生成した召喚カードがキラキラと輝き、雉鶏精の着ぐるみの愉快な仲間、チケが現れた。
「くっ…さらに増えた。ですが関係ありません。全員、喰らいつくします」
「さあ、みんなで一斉攻撃だよっ!」
『うん!!』
吉備の呼びかけに仲間たちが応える。
黒蜜かけキビダンゴアイスバーを装備したチケが前衛として猟書家と斬り合い、速度に優れる2匹が、的確に背後や側面から攪乱を仕掛ける。
ユーべルコードの有効範囲、猟書家の正面から30cm以内の間合いに入らないように、気を付けながら的確に攻撃を仕掛け、着実にダメージを蓄積させる。
そこへ吉備が追撃を仕掛ける。
「従雉「フェザントファミリア」!」
「くっ。さっきからちょろちょろと‥‥!」
狛犬、サル、着ぐるみが一斉に後ろに跳び退ると同時に、吉備の周囲にいる雉鶏精の霊魂たちが一斉に猟書家へと襲い掛かった。
それらは時が凍る程の霊障を与え、心身共に凍らせる。
「くっ‥しまった」
「今だよ!トリテレイアちゃん!」
「ありがとうございます。キビ様!」
儀礼長剣を投げ捨てて、巨大な光刃を右手に持ったトリテレイアは、スラスターを噴かせながらレディ・ハンプティへと迫る。
エネルギーの充填は充分。後は、光刃を叩きつけるだけだ。
「これで終わらせます」
「いいや、まだよ!」
正面から迫る機械騎士を下乳房の口での噛みつきによるカウンターで迎え撃とうとする女猟書家。スラスターを噴かせて迫る機械騎士との距離を目測で測る。
だが、そうはさせまいと、トリテレイアは左腕の格納銃器で、女猟書家の右肩にある高圧蒸気機関を狙撃した。
「くっ‥これでは…!」
プシューという蒸気が吹き出す音が響き、彼女の周囲が高温の蒸気で包まれる。
蒸気の噴出音で周囲の音が聞こえなくなり、真っ白い蒸気によって視界が塞がれる。
「ごほっ。前が‥見えない。聞こえない」
「いっけえええええ!!トリテレイアちゃん!!」
真っ白い蒸気を突き破って機械騎士が魔王の娘の前へと現れる。
その手に携えるのは巨大な光刃。
頭上に両手で剣を構えたその姿は、ドイツ流剣術でいう「日/屋根より」の構え。
そこから相手の上体に向けて袈裟懸けに強く斬り付けた。「怒りの斬撃」と呼ばれる強烈な一撃だ。
「さあ、大魔王の娘よ。これで終わりです!」
「あああああ!!お父様!!お父様ああああ!!!」
巨大な光刃が煌めき、魔王の娘の断末魔が蒸気建築の街に響いた。
上体を袈裟に焼き斬られたレディ・ハンプティは、地面に背中から倒れ落ちると、瞳孔が開いて焦点の合わなくなった瞳で空を見上げ、何かを掴もうと右手を伸ばす。
そして、そのまま身体を光の粒子へと変えて、骸の海へと消えていった。
●エピローグ
斯くして、平和になったアルダワ魔法学園を狙った、黄金の大魔王のアウルム・アンティーカの娘、レディ・ハンプティによる西方、諸王国連合への襲撃は未然に防がれることとなった。
猟兵たちは、そのことに安堵をすると、気を引き締めて他の猟書家やアリス・オリジンへの戦いへと身を投じていくのであった。
大成功
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