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迷宮災厄戦㉑〜孝行娘と災魔の書

#アリスラビリンス #戦争 #迷宮災厄戦 #猟書家 #レディ・ハンプティ

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●父と子
 私が産声を上げたのは、彼が捕らえた魔女の胎の中。
 絶対至高の大魔王として君臨した彼のまことは、私にも決して明かされず。

 嗚呼、だとしても。
 彼の願いが潰えたのなら、私がそれを引き継ごう。
 何故ならば。

「父の無念を晴らすのは当然ですもの……ねえ、アウルム・アンティーカ父様……!」


「皆様、お集りいただきありがとうございます。世界コードネーム:アリスラビリンスにて、オブリビオンの出現が確認されました」
 シスター服に身を包んだグリモア猟兵が、自分の呼びかけに応じてグリモアベースに集った猟兵達へ語りだします。

「ええ、いよいよ本番と言ったところでしょうか。此処にお集まりいただいた皆様には、猟書家の一角、『レディ・ハンプティ』と戦っていただきます」
 予兆にも姿を現していた、禍々しいアギトを持った女書家。
 遠い異世界、アルダワ魔法学園にて猟兵たちと戦った大魔王の娘を名乗る彼女は、自らが執筆したという侵略蔵書の力を用い、父が果たせなかったアルダワ制圧を目論んでおりました。
「最も危険な状態であるのがアリスラビリンスではありますが、フォーミュラを討ち平和を取り戻した世界へ侵攻をせんとする彼女たちもまた、我々が戦わなければならない相手であることに変わりはありません」
 もちろん、一つの世界を手中に収めようとするレディの力は恐ろしいものです。
 近づいた者を一瞬で食いちぎってしまう、まさしく必殺の牙に、そのスピードを跳ね上げる蒸気の力。
 そして、災魔を乗せた蒸気機関車を呼び出す侵略蔵書。
 いずれも猟兵であってもまともに受けては命の危険があるものであり、転移してきた猟兵の隙を突く彼女は、此方の行動前にそのユーベルコードを差し向けてくることでしょう。

「これまでの、猟書家へたどり着くまでのような、戦況を変える仕掛けもありません。彼女と我々の純粋な戦いとなるでしょう」
 説明を終えたグリモア猟兵が、お気をつけてと猟兵たちへ頭を下げます。
 その傍らでは、宙に浮くグリモアが、一層その輝きを増して。
 光の向こうから聞こえてくるのは、蒸気が機械を動かす動作音と女の笑い声。
 強大なオブリビオンが待つその先へ、勇敢な猟兵たちは足を踏み入れ始めました。


北辰
 OPの閲覧ありがとうございます。
 親孝行な人は好きです、北辰です。

 そういうわけで幹部戦の始まりです。
 相手は猟書家『レディ・ハンプティ』、お胸の牙がチャーミングなお嬢さんですね。
 待ち受けるのは蒸気列車が街中を走り、大きな建物がいくつも立ち並ぶ大都会のような不思議の国。
 有効に使えるかは皆様次第ですが、遮蔽物などには困らなさそうです。
 もちろん、幹部戦ですのでプレイングボーナスはいつものアレ。
 =============================
 プレイングボーナス……敵の先制攻撃ユーベルコードに対処する。
 =============================
 今までの幹部同様、強力なオブリビオンであります。お気をつけて。

 それでは、父を想う魔女の子との戦い。
 彼女と大魔王の野望を打ち砕く皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 ボス戦 『猟書家『レディ・ハンプティ』』

POW   :    乳房の下の口で喰らう
【乳房の下の口での噛みつきと丸呑み】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
SPD   :    アンティーカ・フォーマル
【肩の蒸気機関から吹き出す蒸気を纏う】事で【武装楽団形態】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    侵略蔵書「蒸気獣の悦び」
【黄金色の蒸気機関】で武装した【災魔】の幽霊をレベル×5体乗せた【魔導列車】を召喚する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

フロッシュ・フェローチェス
レディ・ハンプティ、発見。悪いけどその企みは、全て蹴り潰す……アルダワの皆の、ためにも。

遠間からダッシュを開始。加速式を励起させつつスピードを徐々に引き上げ、戦闘機を超えた超速移動までこぎつける。
だけど離れたところから近づくんだ……それに相手は、幹部クラス。どれだけ速かろうと、アタシの姿なんか、普通に目視されるのがオチ。
だからこそ真正面から突進だ。
ここで、超えろ、限界突破だ……!早業回避、残像に喰らい付け、レディ・ハンプティ!

カウンター&背後からのだまし討ち、スライディングで転ばせ、衝撃波で空中から飛び蹴りの一撃を叩き込み、そのままUCを発動。
砕け散れ!!



●魔王殺しの猟兵たち
 蒸気の国にて猟兵を待ち受けるレディ・ハンプティ。
 彼女の目にまず最初に飛び込んだのは、線路の遥か彼方に見える小さな緑色の点でした。
「……なるほど、転移時の隙を突かれまいと遠くに現れたのですね。ええ、わたくしとて、何の策も弄さぬ敵に父様が敗れたなんて思ってはおりませんとも」
 喪服を思わせる黒いヴェールの向こうで薄く微笑むレディ。
 その乳房の下にズラリと並んだ牙は、ギシギシと互いを打ち鳴らして猟兵を待ち受けておりました。

「レディ・ハンプティ、発見。悪いけどその企みは、全て蹴り潰す……アルダワの皆の、ためにも」
 大きな建築物が並ぶ街並みを器用に、しかし空を征く戦闘機すらも超える圧倒的な速度で走るのは緑髪のキマイラでした。
 名を、フロッシュ・フェローチェス(疾咬スピードホリック・f04767)。
 向かう先に待ち構えるオブリビオン。たとえその根底にあるのが父を想う娘の心だとしても、ようやく平和を手に入れたアルダワに再び混乱を招き入れる所業を見過ごすわけにはいきません。
 猟兵としての使命感を胸に駆ける彼女は、どうせ看破されるだろう小細工もかなぐり捨てて、その全霊を持って猟書家へと向かっていきます。
「あら、奇襲でもされるかと思っておりましたが、真っすぐに向かってきてくださるのですね」
 レディが呟く間にも、フロッシュの速度はもう一段階、さらにもう一つ上の次元へと加速していきます。
 猟書家であるレディがどれほど強大な力を持っていようとも、これだけのスピードで迫りくる相手を目で追いきるのは不可能でしょう。
 しかし、所詮は真正面から突っ込んでくる相手。
 仮にも大魔王を滅ぼした者とは思えぬ愚直な特攻、これならば、レディは大きな口を開けて相手を喰い止めてしまえばよいだけです。
 単純に突っ込んでくるフロッシュへレディもまた、ただ大きな牙を剥き。

「……あら?」
 いざ食い千切ろうとしたその時、フロッシュの姿が掻き消えます。
 速度に長けたフロッシュの更に限界を超えたその脚力は、残像すら残すスピードでのステップすら可能です。
 たぐいまれな胆力でギリギリまでレディに迫ってからの、背後を取るその早業。
 残像へと食らいつく相手の隙だらけの背に痛烈な蹴りを浴びせようと、低い姿勢で着地した彼女の脚に更なる力が込められます。

「──貴女には聞こえていなかったかもしれませんが。わたくしとて、何の策も弄さぬ敵に父様が敗れたなんて思ってはおりませんとも」

「ッ!」
 背後を取ったはずのフロッシュへ、隙も無く振り返ったレディが笑います。
 フロッシュの特攻は大魔王を倒した者のそれとは思えぬ無策さで、事実レディは無策とは考えませんでした。
 父を倒した相手ならば、何かの策はあって当然。その、一種の信頼を持って猟兵を見ていた彼女は、正面から迫るフロッシュへ全力で噛みつくことはせず、十分な余力を残していたのです。
 真っすぐに蹴るはずだった脚を待ち受ける大きなアギト、咄嗟に右わき腹を蹴る形に軌道を変えたフロッシュの蹴撃を、レディは軽やかな動きで躱します。
 足払いも、衝撃波も、正面から放たれるそれはレディの反応速度を超えることは無く、ひらりひらりと躱されるばかり。
「ふふ、そろそろ終わりかしら? それならば、最後に貴女自身を味わいたいですね……」
 衝撃波の反動で宙に跳んだフロッシュですが、待ち受けるのはレディの牙。
 飛び込んでくる相手をそのまま喰らってしまおうと目論むレディに対して、空中でユーベルコードの準備に入ったフロッシュは何もできません。
 その翠と蒼の瞳は、ただ猟書家を。
 いえ、その『背後』を見つめて。

 どん、という小さな衝撃がレディの背中を襲いました。
 彼女が背中に背負っていたのはこの不思議の国に立ち並ぶ大きな建築物の一つ。
 知らぬ間にその傍まで下がっていた──下がらされていた彼女が衝突により崩した体勢の隙は極めて些細なもの。
 けれど、フロッシュという速度に長けた猟兵の前では、致命的なミスでした。
「しまっ……!」
「遅いよ」
 わずかに開くのが遅れた乳房の口へと叩き込まれるフロッシュの跳び蹴りに押し込まれたレディは、本格的にその動きを封じられてしまいます。
 間髪入れずに放たれるのは、衝撃波と碧の炎を伴う蹴りの嵐。
 何発もの蹴りに背後の建造物が耐えられずに崩壊したならば、解放されたレディの身体には痛々しい打撲と火傷の痕。

 大魔王を下した彼女たちは、必ずオブリビオンの予想を超えてくる。
 分かっていたはずなのに、と表情を歪めるレディの胸元では、ひびの入った牙がぎしりと噛み締められておりました。

成功 🔵​🔵​🔴​

シーザー・ゴールドマン
【POW】
やあ、レディ。父君の見果てぬ夢を継ぎたいようだね。
健気なことだ。
君の父、アウルム・アンティーカはなかなか愉快な存在だったよ。
そして、強大でもあったね。
ああ、そうだ。私も彼を討伐した猟兵の一人だよ。
父と娘が同じ存在に討たれる。これは悲劇かな?

先制対策
UCの特性上、必ず接近してくるのでそれを閃光破で迎撃
(属性攻撃:光×衝撃波)
これの真意は目眩まし。一瞬視界を奪った隙に分身(残像×存在感)を残してやや後退。自身はオド(オーラ防御)の輝きを調節。光の屈折を利用して透明化。

分身が敵UCを喰らった瞬間に『バベルの消失』の一撃を叩き込みます。

アドリブ歓迎



●紳士淑女の武闘
「やあ、レディ。父君の見果てぬ夢を継ぎたいようだね。健気なことだ」
「ありがとうございます。そう思ってくださるのなら、是非とも応援していただきたいですわね」
 黒いドレスを身に纏う淑女へ、紅い軍服の男が微笑みかけるその光景。
 此処が柔らかな蝋燭の灯に照らされる広間でもあったなら、ダンスの誘いでもしているのかと錯覚してしまいそうな美しい情景でありました。
「君の父、アウルム・アンティーカはなかなか愉快な存在だったよ。そして、強大でもあったね」
「愉快、ですか。わたくしには見せて下さらなかったお顔をご存じならば、少々嫉妬してしまいます」
 しかし、ここは世界の存亡を賭けた戦いが巻き起こる不思議の国であり。
「ああ、そうだ。私も彼を討伐した猟兵の一人だよ。父と娘が同じ存在に討たれる。これは悲劇かな?」
 男は、シーザー・ゴールドマン(赤公爵・f00256)は、女を討ち、この世界を守らんとする猟兵であり。
「そうですわね……もっとも、此処でお見せできるのは、娘が父の仇を討つ英雄譚だけですが」
 女が、レディ・ハンプティが男と世界を喰らわんとするオブリビオンである以上、此処で演じられるのは演舞ではなく、命を奪い合う戦いでしかないのです。

 剣や牙を届かせるには、もう一つ間合いを詰める必要がある。そんな距離感を保ち、猟兵とオウガは睨み合います。
 もちろん、シーザーは間合いなどに拘らずとも敵を滅ぼすだけの術を持っており、レディもまた、一息で彼へと肉薄し、その乳房の牙で引き裂いてしまうだけの力を有しております。
 けれど、術を使う為の僅かな動作、相手へ近づく為のたったの一歩。
 相対する相手は、そこに生じる隙を見逃すほど愚かではない……二人とも気づいているのです。
「(取るべきは後の先……如何に『それらしく』後手に回れるか)」
 何度も蘇るオウガと、あくまで今を生きる猟兵。
 互いの命の価値が異なる以上、大胆に飛び込んでくるのはレディだとシーザーは結論付けます。
 つまり、それを受けてから反撃に転じる事が正攻法ではありますが、簡単ではありません。
 そんな事はレディとて分かっているのですから、二重三重に策を巡らせて初めて成功の可能性が生まれるのです。
「(では使うべきは……これだね)」
 考えをまとめたシーザーが、その身に魔力を滾らせます。
 それを察知したレディもまた、たおやかな四肢に力を込めて……短い膠着は終わりを告げます。

 シーザーの予測に違わず、先に踏み込んでくるのはレディ。
 オウガとしての強靭な身体能力を十全に活かした彼女は、すさまじい勢いでシーザーへと接近し、その乳房の下の口を大きく開きます。
 しかし、シーザーも大人しく獲物となるつもりはありません。
 身に宿した魔力を光に変えて、それも、物理的な破壊力を伴った閃光波としてレディへとぶつけてその牙を押し返します。
「ふふっ、攻撃ではなく光が主体……存外にお優しいのですね」
「それはもう、道理をわきまえたレディを前にしているのだからね」
 ──ここまでが、両者が共通して認識していた予定調和。
 レディはこの攻撃が成功するとは思っておりませんし、シーザーもその思惑を含めて行動を起こします。
 光による目晦ましを受ける形になったレディも、その体勢を完全に崩したわけではなく。
 型に嵌った舞踏のようにここまでの攻防を演じた彼らにとっては、次こそが本番。
 シーザーの反撃をレディが見切れるかどうか、この戦いは初めから、その点が勝敗を左右するのです。

「(拳に込められた魔力……それを叩き込む算段……いいえ!)」
 光でかすむレディの視界では、拳に紅い魔力を収束させたシーザーが迫ります。
 その拳の輝きはまことに強いものですが、強力なオウガであるレディは、目晦ましを受けてなおその像の揺らぎを見落としませんでした。
 目の前のシーザーは偽物。ならば、本物は自分の死角から攻撃を仕掛けるはずです。
 そう確信したレディは、もっとも大きな死角となる背後の気配を一瞬探り……。
「──ッ、きゃあ!?」
 その選択の誤りを、蒸気機関への衝撃で悟るのでした。
 肩の痛みをこらえ、レディが素早く後ずさりをすれば、シーザーの姿は前方に。
 しかし、先ほどの姿は間違いなく虚像でしかなかったはず。
 そう困惑の色を浮かべたレディが、ふと笑みを浮かべ。

「死角から、背後からと決めつけた私の誤りでしたね……」
「ああ、淑女に近づく男は下心を隠すが……女性が思うよりもずっと、隠し方は素直なものさ」
 最初から目の前に、分身の後ろで透明になっていたシーザーもまた、やんわりと笑みを浮かべるのでした。

成功 🔵​🔵​🔴​

ソナタ・アーティライエ
父の願いを継ごうとするその意志に対してだけは
わずかばかりの理解を覚えます
しかし……それは許されないことです

数多の幽霊を乗せた魔導列車の威容に
身の竦むような怖気を感じずにはいられません
でも戦うと、立ち向かうと決めてこの場に立ちました
だから目を背けず、自分に出来る何が有効かをしっかりと見極め対処します

アマデウスの変化した竪琴を爪弾きながら
祈り捧げる歌声にこたえるように顕現するのは清浄なる幻創庭園
この庭園へと侵入した列車は光となって解け害をなすは能わず
そして光は、この瞳に宿した[破魔、浄化、除霊]の力を付与されて
死者を滅する聖なる光の小鳥たちとなって
幽霊の群れを、そしてレディ・ハンプティを襲撃します



●鳥の終わりに竜が吠え
「やはり、父様のように身一つで猟兵と渡り合うのは難しいですね……」
 猟兵との交戦で少なくない手傷を負うレディは、その口元を歪め呟きます。
 父のような絶対的な力は自分にはない……けれども、彼女にはまた別の力があるとその手の本をそっと撫ぜるのです。
「……ええ、分かっていた事。だからわたくしは貴方をしたためたのですから──『蒸気獣の悦び』よ!」
 そう、その手に収められるのは彼女を猟書家たらしめる侵略蔵書。
 呼び出されるのは黄金の蒸気災魔と威容を誇る魔導列車。
 アルダワの地を手に入れんとする魔王の娘は、いよいよその真価を発揮せんとしておりました。

「……父の願いを継ごうとするその意志に対してだけは、わずかばかりの理解を覚えます」
 しかし、それを許すわけにはいきません。
 ソナタ・アーティライエ(未完成オルゴール・f00340)が呟くその言葉は、彼女自身を猟兵として奮い立たせるためのものでもありました。
 煙を吐きながら駆ける魔導列車に乗りこむ数多の幽霊たち。
 大きく速い列車はそれだけで脅威となりますし、蒸気機関で強化を受けた災魔の幽霊たちも、強力な力を有します。
「…………」
 ソナタも、これまでも多くのオブリビオンと戦ってきた猟兵であることに違いはありません。
 ですが、うら若い少女であることもまた変わりない彼女の身は、恐るべき敵の軍に竦み……それでも、その瞳は逸らされること無くレディたちを見つめておりました。
 そう、レディ・ハンプティを取り逃がせば、彼女は新たなフォーミュラとしてアルダワの平和を脅かすことでしょう。
 此処で、ソナタたち猟兵が止めなければならないと知っている彼女は、その華奢な身体に秘められた勇気を奮い立たせ、立ち向かいます。

「さて……このまま轢き潰す事ができれば嬉しいのですが……」
 列車に乗りこんだレディが、ソナタへと狙いを定めます。
 竪琴を持った猟兵の身体は小さく、列車が接触すれば抵抗する間もなく撥ね飛ばされる事でしょう。
 ……それで終わる相手ではないと、レディは確信を持っておりますが。
「──いつかは醒める幻、誰もが見る夢」
 ソナタが奏で謳う、儚い造り物の歌。
 顕現する清浄なる光の庭園。その中で街の煉瓦や蒸気配管が変じるのは、光で形作られた小鳥たちの姿です。
 ソナタと同じく誰かに造られた彼らは、しかしソナタよりも遥かに短い時間しか与えられてはおりません。
 それでも、彼らは。
 アリスラビリンスを、アルダワ魔法学園を。
 そして、そこに生きる人々を守らんとするソナタの祈りに応え現れる彼らは、その貴い願いを叶えるためにこそ、その力と命を振るうのです。

 ソナタと光の鳥たちが待ち構える庭園へと侵入する、レディの魔導列車。
 そこに生じた異変に真っ先に気付いたのは、やはり猟兵の力を警戒していたレディです。
 庭園に踏み込んだ部分から、光となって解けていく列車や蒸気機関。
 素早く列車から飛び降りたレディは無事に庭園へと降り立ちますが、脱出が遅れた災魔霊たちは無防備に放り出されてしまいます。
「これは……相性の悪さが出てしまいましたか……!」
 顔を歪めるレディの言葉は、分解された列車だけを指すものではありません。
 蒸気機関を失い、弱体化した霊たちに襲い掛かる光の鳥は、一方的に霊の数を減らしていきます。
 彼らに与えられたのは、ソナタの瞳に宿された死者を祓う浄化の力。
 その力を遺憾なく振るう鳥たちへ、レディの幽霊は碌な抵抗もできずに追いやられていくのです。
「……いえ、惑わされず、術者本人を叩くべきでしょうね」
「……ッ!」
 しかし、レディもまた強力なオブリビオン。追い詰められようとも冷静さを残しておりました。
 骸の海から現れたオブリビオンといえど、霊としての特性が強いわけではないレディ本人に対しては、鳥たちの攻撃も特別有効ではありません。
 強引に鳥を振り切り、ソナタへと迫るレディの胸元では、大きな牙がぎしぎしと軋みます。
 接近を許せばあの牙に引き裂かれることは容易に想像がつきますが、既に庭園を造ったソナタに、すぐさま別のユーベルコードを使う余裕はありません。
 どうにか手を打たねば、そう思考を巡らせる間にも、レディはぐんぐんと迫ってきて。

 ぴぃ、と鳥の鳴き声が辺りに響きました。

 はっと表情を変えたソナタが、その歌を、演奏を打ち切ります。
 ユーベルコードの力を解かれた鳥たちが次々に無機質な瓦礫へと戻る中、ソナタの視線が一羽の鳥のそれとぶつかりました。
 自身の終わりを知りながらもソナタの背を押した小さな命に別れと感謝を込めながら、彼女は友の名を呼びます。
「──アマデウスッ!」
「なに……!?」
 役目を終えた竪琴が、光と共に元の姿……銀の竜へと変じ、ソナタとレディの間に躍り出ます。
 友人を守るため、その祈りに答えた造り物の命たちに応えるために竜は吠え。
 その鮮やかな飛翔から繰り出される突進は、レディの首元に突き刺さり、その魔牙を吹き飛ばしていくのでした。

成功 🔵​🔵​🔴​

トリテレイア・ゼロナイン
お父上の敵討ち…いえ、遺志を継ぐことが貴女の原動力ですか
ならば私は、騎士として大魔王と呼ばれたかの存在を討った者の一人として。
そして、アルダワの安寧の為に立ち塞がらせていただきます

初撃は胸部の顎へ向かって大盾を●投擲し●盾受け
一瞬で喰われるでしょうが目的は盾による下方への●目潰し
その陰に隠すように射出したワイヤーアンカーを●操縦し●ロープワークで脚部拘束、●怪力でバランス崩させ攻撃中断

淑女として、その食事の作法は如何なものかと
魔王流であれば矯正するまでです

先の攻防でセンサーでの相手の挙動の●情報収集は完了
挙動を●見切り、相手を誘うステップ等のUCの動きで顎を誘導
躱してすれ違い様の一刀で斬り捨て



●ワルツをあなたと
 死者の想いを受け継ぐことは、美徳でありましょう。
 少なくともトリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)が学習してきた物語の多くでは、そのように描かれておりました。
「お父上の敵討ち……いえ、遺志を継ぐことが貴女の原動力ですか」
 では、レディが語る父への想いも同様なのでしょうか?
 それを論じるには多くの人々の言葉と時間が必要となるでしょうが、今此処でハッキリしていることもありました。
 レディの野望が成就すれば、アルダワの人々の暮らしが破壊されてしまうであろうという、その事実。
 トリテレイアは、それをよく理解しておりました。
「ならば私は、騎士として大魔王と呼ばれたかの存在を討った者の一人として。そして、アルダワの安寧の為に立ち塞がらせていただきます」
「ええ、わたくしはそれを越え、父様の宿願を果たしましょう」
 故にこそ、彼は父を討った騎士として。
 子の願いを打ち砕くべく、その盾を構えるのです。

 まず響くのは、大きな破砕音。硬い金属が無残に砕かれる音が周囲に鳴り響きます。
「あら、よろしいのですか……? 身を守るための盾を手放してしまって……」
「どうせ、貴女の牙には通じませんからね!」
 それは、牽制として投げられたトリテレイアの盾が、レディの乳房の下の口で噛み砕かれる音でした。
 3mに迫ろうかという巨躯を誇るトリテレイアが扱うそれは彼の身の丈ほどに大きく、頑丈な金属を持って作られた故の強度と重量を誇ります。
 しかし、レディがその鋼を咀嚼するのに難儀する様子はまるでなく。
 トリテレイアの言う通り、彼女の牙を持ってすれば、ウォーマシンの頑丈な体であっても盾ごと喰い千切られてしまうのでしょう。
「……っと、あら?」
 だからこそ、まずはレディの攻撃の出鼻をくじく必要があるのです。
 トリテレイアが盾を投げつけたその真意、陰に隠すように打ち出されたワイヤーアンカーが彼の操作通りに蛇のように這い、レディの脚へと絡まります。
 ぐいっと引かれたワイヤー、たたらを踏むように体勢を崩したレディの胸元の口が閉じるのを確認したのなら、トリテレイアは素早くワイヤーをほどき、手元へと回収していきます。
 このまま拘束しておけばレディの動きを制限することはできたでしょう。
 しかし、貴婦人のような姿をした彼女は強力なオブリビオン。
 そして、その乳房に隠されるのは一撃必殺とすら呼べる牙です。怪力を誇るウォーマシンであっても、万一力負けして引き寄せられてしまった時のリスクを考えれば、深追いはできませんでした。
 結果として、レディに与えられたダメージは何もなく、トリテレイアも無傷ではありますが盾を失い、ワイヤーという仕込み武器を晒すこととなってしまいました。
 では、トリテレイアの行動に意味はなく、オウガに身を引き裂かれる時をわずかに先延ばしにしただけなのでしょうか?
 盾もなく、大きな長剣を両手で握るトリテレイアへと、仕切りなおすように再び迫りくるレディ。

「これは……速くなった……!?」
 ですがそこからは、先とは全く違う攻防が始まるのでした。
 レディの大きな牙での噛みつきが、何故だかトリテレイアには当たることなくひらひらと躱されていきます。
 猟兵の動きが加速したのかと勘繰るレディですが、目で見る限りはそうとも思えません。
 それはその通りで、トリテレイアの身のこなし自体は先ほどと同じ速度です。
 ですが、彼にはウォーマシンとしての頭脳、優れた情報処理の力と、それを反映させる優れた身体がありました。
 先ほど、盾を犠牲に凌いだ攻防の中でレディの動きを分析した彼ならば、オウガの攻撃を予測して身を躱すことは決して不可能ではありません。
「くぅ……動きさえ止められれば……」
「丸かじり、ですか? 淑女として、その食事の作法は如何なものかと……魔王流であれば矯正するまでです」
 焦りを募らせるレディに対して、トリテレイアがその攻撃を許すことは一度もなく。
 彼女が大きく踏み込んだその一歩、誘導通りに近づいてきたその牙を最小限の動きで躱したトリテレイアは、いよいよその剣を構えなおして。

 すれ違う、ただ一度の交差。
 その牙は騎士に届くことは無く──その剣は、確かに深い傷を女へ刻むのでした。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アリス・レヴェリー
どこか懐かしいようで、遠い気がする不思議な場所だわ。こんな状況でもなければあちこち探検してみたかったわね

初手は変身する彼女に注意しながら思いっきり距離を取るわ。初動で追いつかれそうになったら『刻命の懐中時計』の結界で阻んで、水や風属性の『世界の雫』を投げたり置いたりして足止めと、可能なら身に纏う蒸気を吹き飛ばして一瞬でも不調をねらいましょう

体格差を活かして街中の狭い道を通ったり、走る蒸気列車に飛び乗ったりしながら近くで一番高い建物まで行ってその頂点へ
辿り着いたら【交響鈴舞曲『真鍮』】を発動。街中に歌声と音色を響かせて彼女を縛るわ
その状態なら、そこら中に落としてきた結晶でも少しは痛いでしょう?


亞東・霧亥
俺に何が出来るか見極める。
先達の与えた傷、皸割れた牙。
砕いてみせる!

・ダッシュ、忍び足、残像、見切り、カウンター
緩急自在の歩法で数多の残像を作り、タイミングを計るカウンターを織り混ぜつつ、残像を餌に牙攻撃の見切りに努める。
多少の傷は無視する。

【UC】
後の先によるカウンター。
全力の雷撃。(布石)

例え今の牙がフェイントで拳は届かずとも、迸る無限竜の雷は貴様に巻き付き行動を阻害する!

・足場習熟、グラップル、部位破壊
刹那の硬直が最大の好機。
一歩踏み出し、大地を踏みしめる震脚。
全身を巡る螺旋のエネルギーを拳に集約。
狙うは牙の破壊!

「砕け散れ!!」

※絡み歓迎



●凱旋歌/鎮魂歌
 蒸気が煙り、煤汚れがついた配管があちらこちらを覆った世界。
「こんな状況でもなければ、あちこち探検してみたかったわね」
 それは、狭くなった空を見上げるアリス・レヴェリー(真鍮の詩・f02153)にとって、どこか懐かしくも遠い不思議な場所でありました。
「確かに、興味深い場所ではあるが……来るぞ」
 一方で、張り詰めた表情の亞東・霧亥(峻刻・f05789)が見つめるのはレディ・ハンプティ。
 隣に立った懐中時計のヤドリガミにこくりと頷くアリスも視線をそちらに向けたのならば、視界に飛び込んでくるのは、これまでとは様子の異なるオウガの姿でした。
「『蒸気獣の悦び』は……災魔霊が枯渇してしまいましたね。よろしい、それならば己が身を削るまで……!」
 ひびの入った牙を打ち鳴らしながら、レディの姿が変容します。
 甲高い音を鳴らす肩に装備した蒸気装置から噴き出す蒸気が彼女の体を覆えば、それらはやがて黄金の楽器へと変じていきます。
 肩の装置とは異なる、音を生み出すための管。円を描くようにレディの周りに浮遊するのは、ピアノの鍵盤に他なりません。
 これこそが、レディの真価でもある武装楽団形態。
 いよいよ真の姿となって戦意を滾らすレディへと、霧亥は警戒を強めますが、その横でアリスは目をわずかに見開きます。
「……やっぱり、貴女はあの魔王の娘さんなのね」
「? ええ、当然ですが何故それを……?」
 思わず口に出た、というようなアリスの呟きに、戦闘に入る直前のレディが反応します。
 問われた少女はすぐには答えず……思い起こされるのは、迷宮で対峙したあの黄金の魔王です。
「見たからわかるの……似ているわ、貴女と、アウルム・アンティーカは」
 挑発だとか牽制だとか、そのような思惑はアリスには無く。
 ただ、そうだと思った言葉を返しただけの少女に、レディは柔らかく微笑んで。
「そうですか……敵であっても、ありがとうございます」
 その笑みと言葉が、何を意味するのか。
 問う間もないままにレディが駆けだしたその時に、最後の戦いの火ぶたは切って落とされました。

「速いな……俺が前に出る!」
「分かったわ、気を付けて!」
 蒸気によって強化されたスピードを持って襲いかかるレディに対して、刀を構えた霧亥が前へ躍り出ます。
 素直に後ろへと下がるアリス。彼女がレディへと投げつける結晶は猛烈な風を生み出し、レディを押し返そうとしますが、猟書家たる彼女の歩みを止めるには至らずに、その乳房の牙はギラリと開かれます。
 大きな音と共に閉じられるその顎が霧亥を捕らえ……しかし、その姿はたちどころに消えて、霧亥は五体満足で後ろへと跳び下がります。
「(やはり、先の猟兵との戦い通りこちらの反撃を警戒してか全力では来ない……だが!)」
 霧亥の観察眼は狂うことなく、レディの噛みつきが此方の反撃を警戒して加減されたものであることを看破します。
 しかし、それで彼女の牙の鋭さが鈍るわけでもなく。余力を残したその攻撃でも、まともに当たれば一撃で戦闘不能まで追い込まれるだけの威力を有しているのです。
 先ほど後ろに下がらせたアリスは、そのまま建物に飛びついて上方へと向かっていっておりました。
 レディの上を取れる位置から援護をするつもりなのでしょうか。
 どちらにしても、霧亥がまず目指すべきは、彼女が戦闘に参加するまでのわずかな時間を凌ぐことであります。
「さあ、逃げるだけでは私を倒すことは叶いませんよ?」
「そちらも、当たらなければ俺は殺せないぞっ!」
 蒸気機関で加速するレディの拳を抜き放った刀で逸らしながら、霧亥が吠えます。
 その身体のあちこちには血のにじむ傷跡。一撃必殺の牙は決して食らうわけにはいかないのですから、そこに織り交ぜて放たれるレディの攻撃を捌ききれないのも無理はありません。
 それでも、霧亥は怯むことなくレディと斬り結んでいくのです。
 すべてを完璧にこなすことなど出来はしない……だからこそ、何ができるかを見極めて自分に掴めるものだけを見据えて戦う意思と覚悟。
 その霧亥の強靭な意思こそが、強大なオブリビオンであるレディとの真っ向からの攻防を可能にしておりました。

「よいしょ、よいしょ……焦って落ちたら台無しだけど、急がなきゃ……!」
 一方で、霧亥の働きにより自由な行動を許されているアリス。
 狭い路地を抜け、軽い体重を活かして配管をよじ登り、ひたすら上を目指していきます。
 そんな中、ふと目に入るのは遠くの蒸気機関車。
 着々と近くの線路に近づくそれは、行く先を見ればこの不思議な国の最も高い建物を突き抜けるかのように進路が伸びております。
 あれに飛び乗ることができれば、自力で走るよりずっと早く目的地まで行けるでしょう。
 ですが、万一失敗して猛然と動く蒸気機関に巻き込まれようものなら、アリスは戦えない程の傷を負うのは容易く予想ができます。
 そうなれば、追い詰められて全力となったレディへ霧亥一人で勝ち切ることも難しくなるかもしれません。
「…………」
 握りしめるのは、いくつもの幻獣の素材で彩られた真鍮の歯車。
 レディと今も戦っている霧亥はもっと危ない目に遭っているでしょう。
 それならば、アリスだってこの程度の危険は勇気を持って踏み越えねばなりません。
 轟音を立てて迫る機関車。
 その上方から、決意と勇気で顔を引き締めた少女が、一気に飛び降りるのでした。

「──此処だっ!」
 レディの牙をすれすれで躱し続ける霧亥も、一気に勝負を仕掛けます。
 踏み込んできた相手に合わせるように繰り出されるのは紫電を纏う右こぶし。
「ッ、これしき、でェ!!」
 それはレディの左肩の蒸気機関を破壊して、彼女の身体に流れる電流がオブリビオンの動きを止めます。
 やはり、カウンターを警戒したレディを仕留めきるには至らず。ですが、ユーベルコードという最大の切り札を切った霧亥は、意を決して追撃のため踏み込んでいきます。
「(……駄目だ、浅い!)」
 ですが、それに気づくのはわずかに遅れてしまいました。
 地を揺らすほどの踏み込みから放たれる霧亥の拳は確かに必殺の一撃となり得ます。
 ですが、その構えを見たレディに浮かぶ微笑。
 本体ではない、蒸気機関に命中したのが災いしたのでしょうか、彼女はすでに電流の硬直から抜け出しつつありました。
 極限状態とよべるまでに研ぎ澄まされた思考の中、自分の拳が届くより先にレディがその顎を開くだろうことを理解する霧亥。

 それでも、一人で戦っているのではないと知っている彼は。
 瞳を揺らすことなく、その拳を振り抜く覚悟を決めるのです。

 聞こえてきたのは、金管の美しい音色。
 それを彩る鈴の音と、透き通るような少女の歌声が二人に届いた途端、状況は再び一変します。
「な、これ、は……まさか!」
 再び硬直する身体、それでもどうにか音が聞こえてくる方角へ視線を向けたレディの遥か彼方に彼女は居りました。
 奇しくもレディと同じように、その身体を包むような楽器たちを呼び出したアリス。
 戦場全体へと響かせるべく最も高い場所へとたどり着いた彼女の奏でる輪舞曲は、オブリビオンたるレディの力そのものを囚えてしまいます。
 動きを完全に制限された彼女に、霧亥の拳を迎撃する術は残されておらず。
「……さようなら、レディ・ハンプティ」
 歌声の中に乗せられたアリスの声で、彼女は己の敗北を悟ります。
 父の野望を果たせない後悔が、完膚なきまでに封じられた無力感が。
 そして、偉大な父を下した相手の強さに、どこかで感じる安堵が。
「──砕け散れ!!」
 その全てを混ぜたような微笑みを浮かべたレディへと突き刺さる霧亥の拳。
 牙を砕かれ、心臓を貫かれたオブリビオンは、たちどころにその形を失い、骸の海へと帰ります。

 敵が倒れたことを確認した霧亥、満身創痍の彼がその場で立ち尽くす蒸気の街。
 そこには、勝者を讃えるような、父を想った子を送るような人形の歌が、いつまでも響いておりました。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2020年08月21日


挿絵イラスト