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迷宮災厄戦㉑〜獣悦の猟書家レディ・ハンプティ〜

#アリスラビリンス #戦争 #迷宮災厄戦 #猟書家 #レディ・ハンプティ

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●アリスラビリンス・蒸気建築に埋め尽くされた国
「ああ、父様。魔女の肚から私を造った父様。私にも正体を見せなかった、いとしい父様。あなたの無念、このわたくしが果たします」
 このアリスラビリンスには似つかわしくない世界の中で、妙齢の女性は法悦の溜息を溢す。彼女の名前はレディ・ハンプティ。現在、この世界のオブリビオン・フォーミュラであるオウガ・オリジンから力を簒奪し、各々の世界に侵攻しようとしている猟書家の一人である。
「父様を想い、わたくしはこの『蒸気獣の悦び』をしたためました」
 その手元にある侵略蔵書を掲げ、レディ・ハンプティはこの魔導列車が走り回り、蒸気建築に埋め尽くされた、大都会のような国を睥睨する。
「わたくしの狙いは、『アルダワ魔法学園』の西方、諸王国連合。魔導列車が横断し、蒸気魔法文明最も華やかなる、あの世界の要となる地。わたくしはその地で、父様の災魔を『蒸気獣』に変え、放ちます」
 その瞬間を夢想し、彼女の中に喜びの感情が満ちる、そして溢れ出してくる感情の波は、レディ・ハンプティの表情を自然と緩ませる。
「きっと、大事故が起こりましょう! その被害を利用すれば、わたくしでも新たな災魔を産めるようになります」
 それこそがレディ・ハンプティの望み。猟書家となり、成し得たい大望。あの強大無比なオウガ・オリジンを相手取る危険を犯してでも、実現すべき彼女の存在理由である。

「ああ、父様。あなたの無念を思うだけで、乳房の下の口がわななきます。どうか、見守っていてくださいね、アウルム・アンティーカ父様……!」

●グリモアベース・ブリーフィングルーム
「そんなことはさせるわけにはいかないよ!」
 自分勝手な欲望を成就させようとしている猟書家レディ・ハンプティにグリモア猟兵見習いエィミー・ロストリンク(再臨せし絆の乙女・f26184)もお冠だ。何としても彼女を止めて欲しいとその瞳は訴えている。
「猟書家の一人のレディ・ハンプティは侵略蔵書の『蒸気獣の喜び』の力と胸のある口のような牙で攻撃してくるから注意してね!」
 レディ・ハンプティは魔導列車が走り回り、蒸気建築に埋め尽くされた、大都会のような国で来たるべき刻を待ちわびている。さらにこの国での動向を知り尽くしているのか、先制攻撃を必ず仕掛けてくる。その攻撃の対策も必要だろう。
 魔導列車や蒸気機関などは有効に使えればいいが、ここはレディ・ハンプティのフィールド。無理をしてリスクを犯す必要は猟兵次第、というわけだ。
「アルダワ魔法学園に戻った平和を、絶対守ってね。約束だよ?」
 強敵の元に送る不安がありながらも、エィミーは転移術式を発動する。大魔王の娘と呼ばれるレディ・ハンプティ。その実力は如何程か、猟兵の挑戦が始まる。


ライラ.hack
 問題の大魔王の娘案件でございます。
 どうも皆様こんにちわ、ライラ.hackです。

 このたびはオウガ・オリジンの力を簒奪し、オウガ・フォーミュラとなって他世界に侵攻しようとしている猟書家の一人、レディ・ハンプティとの決戦です。
 難易度は普通より高めなのでご注意ください。

 彼女がいる国はアルダワ魔法学園を狙う猟書家がいる、魔導列車が走り回り、蒸気建築に埋め尽くされた、大都会のような国です。猟書家は、「蒸気獣の悦び」と、がばっと開く牙だらけの「乳房の下の口」で戦います。
 なお敵は必ず先制攻撃をしてきますので、その点を注意して行動をお願いします。先手を取るのは不可能です。

 以下、特殊ルールとなります。
 プレイングボーナス…… 敵の先制攻撃ユーベルコードに対処する。

 以上です。猟書家は2人目となりますが、蒸気獣という騒乱はアルダワ魔法学園の新たな脅威になふかもしれません。猟兵の力で阻止しましょう。
 それでは皆様の素晴らしいプレイングをお待ちしております。
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第1章 ボス戦 『猟書家『レディ・ハンプティ』』

POW   :    乳房の下の口で喰らう
【乳房の下の口での噛みつきと丸呑み】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
SPD   :    アンティーカ・フォーマル
【肩の蒸気機関から吹き出す蒸気を纏う】事で【武装楽団形態】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    侵略蔵書「蒸気獣の悦び」
【黄金色の蒸気機関】で武装した【災魔】の幽霊をレベル×5体乗せた【魔導列車】を召喚する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

佐伯・晶
あの魔王の娘か、気を引き締めて戦おう

スピードと反応速度が増加するという事は
攻撃力は強化されないという事だね

近接か遠隔か攻撃方法はわからないけど
自分の周囲を覆っている神気で
攻撃の時間を停滞もしくは遅延させて防御
これは僕なりのオーラ防御だよ
停めきれなかった場合はワイヤーガンを使って回避しよう
蒸気の配管とか引っ掛けれる物が多くてありがたいね

攻撃を凌いだら邪神の涙を使用
スピードがあっても範囲内全てを冷やす
極低温物質を躱すのは無理だよね

ここまで冷やせば蒸気機関の効率は落ちるし
噴き出した蒸気も氷になって落ちるから
そう簡単に範囲外には逃げ出せなくなると思うよ

僕は冷気耐性で耐えて
ガトリングガンでダメ押ししよう


ハロ・シエラ
なるほど、娘さんですか。
どの魔王のでしょうか……どの形態のお子さんにせよ、油断はできなさそうですが。

さて、相手の噛み付きは強力ですが、リーチは短い様子。
下手に動いてうっかり間合いに入るより、動かず待ち構えましょう。
他の攻撃を【武器受け】でいなしつつ【第六感】で噛み付きの気配を察知し、歯の動きを【見切り】、回避します。
胸で噛み付かれるなんて初めてですが、巨乳の方は回りに大勢います。
乳房の動きは不本意ながら【学習】済みです。
回避できたら【カウンター】として【早業】でダガーを抜き、ユーベルコードで攻撃します。
ダガーを【隠し】レイピアをちらつかせておけば【だまし討ち】出来るでしょう。


七那原・望
大魔王の娘?
親も恐ろしいですけど子も恐ろしいのですね。
ここで食い止めないとですね。

スケルツァンドに【騎乗】し、【空中戦】。

敵のユーベルコードの射程に入ってしまえば回避は困難でしょう。

【第六感】と【野性の勘】で敵の動きや攻撃を【見切り】、常に動きは止めず、周囲の蒸気に紛れながら、敵の有利な射程に入らないように間合いを保ちつつ遠距離攻撃を回避します。

攻撃回数重視の【全力魔法】【Lux desire】と分離させたセプテットによる【誘導弾】【スナイパー】【一斉発射】【制圧射撃】で遠距離から一方的に沈めます。
この時、乳房の下の口の内部に命中した時の反応に合わせて、そこを狙うか、避けるかを決めます。



「猟兵、来ましたか。愛しき父様を殺した怨敵。ならばわたくしも全力で参りましょう」
 そしてレディ・ハンプティの肩の蒸気機関から吹き出す、その蒸気を纏うことで武装楽団形態へと変化する。そうなれば高速機動が可能になり、あっという間に晶との距離を詰め蒸気銃で攻撃しようとするレディ・ハンプティ。
 その高速は予想していた晶。思った以上ではあったが、攻撃力が変わるわけではない。ただスピードと反応速度が増加するだけということは事前情報通りであった。
「なら、やりようはあるよ」
 晶が纏う神気は邪神が纏うオーラである。その防御方法は特殊で攻撃の時間を停滞もしくは遅延させてる効果を持つ。さすがに猟書家の力が及ぶこの国で停滞は無理なので、遅延することで銃弾が範囲内に入った瞬間に速度を遅延させてぎりぎりで避ける。
 さすがのレディ・ハンプティも虚を突いたと思った銃撃が避けられたことに驚きを隠せない。晶もうまくいってよかったと内心は安堵しているが、不敵に微笑む。
「これは僕なりのオーラ防御だよ」
「なるほど、それでは直接攻撃致しましょう」
 そう言って高速化した攻撃の方が早いと判断したレディ・ハンプティは細身のレイピアを持ち出し、晶の身体を突こうとする。だが今回はよけきれないと判断した晶もまたワイヤーガンを咄嗟に取り出す。
 ここは蒸気文明の建築物が多数存在する場所。つまりは取っ掛かりはたくさんある場所である故に、ワイヤーもひっかけやすい。蒸気の配管に射出し、レイピアの高速突きが到達する前に離脱する。
「逃がしませんよ」
 だがその蒸気建築を跳ね回るようにして晶を追跡するレディ・ハンプティ。スピードの反応速度の強化は伊達ではないようだ。だがそれが今回は仇となると晶は思った。
 なぜならば能力「邪神の涙(ゼロ・ケルビン)」の影響が徐々に周囲を蝕み始めたからだ。晶の身体も凍り付いていき、範囲内に極低温の物質をまき散らす。
「これは……!」
「もう遅いよ。蒸気というのが裏目に出たね」
 極低温物質の展開を躱すはいかに早くても無理がある。レディ・ハンプティの蒸気機関も効率が落ちるほど凍結し、纏った蒸気や噴き出した蒸気もまた氷となって落ちる。
 ここにいては蒸気が剥がされると察したレディ・ハンプティは地面を蹴ってこの場を離脱しようとする。だが凍っていく身体を動かし、晶が追撃に出る。
「逃がすか!」
 予め用意していたガトリングガンでレディ・ハンプティを攻撃する晶。身体を翻して回避するするものの、その身体にわずかながらに被弾する。
 だが深刻な被害を出したのは肩にある蒸気機関だ。凍り付いたところを狙い撃たれたようで、かなりの破損状況に陥る。レディ・ハンプティは晶の狙いを察して顔を歪める。

「なるほど、娘さんですか。どの魔王のでしょうか……どの形態のお子さんにせよ、油断はできなさそうですが」
「大魔王の娘? 親も恐ろしいですけど子も恐ろしいのですね。ここで食い止めないとですね」
 そして晶の凍結領域から離脱したと思ったレディ・ハンプティを待ち受けていたのは、ハロ・シエラ(ソード&ダガー・f13966)と七那原・望(封印されし果実・f04836)の二人だ。追撃するには絶好のタイミングである。
 レディ・ハンプティの身体は凍結の影響で動きも鈍く、蒸気機関は使い物にならない。だがそれでも乳房の下の口は動く。牙を持ち上げて、不用意に近づく敵をかみ砕き、丸呑みする恐るべき魔王の口である。
「相手の噛み付きは強力ですが、リーチは短い様子」
「ですね。こちらはハロさんにお任せしました」
 だがハロも望もレディ・ハンプティに自ら近づく気は全くなかった。それこそ凍結して動きが鈍くなっている今こそ、虚をつくチャンスでもある。ハロはレイピアを構えて待ち構える。
 そして望は宇宙バイク「スケルツァンド」にすぐさま騎乗、空中へと飛び立つ。こちらの動きに捕捉されないように周囲の蒸気に紛れながら、レディ・ハンプティの動きを警戒するように常に機動を続ける。
「あちらの方は難しいですね。ならばそちらのレイピアの方、試し合いといきましょう」
 レディ・ハンプティの噛み付きの有利な射程に入らないように間合いを保つ望を蒸気銃で牽制し、まずはハロを潰すべく接近戦を挑む。細身剣同士の打ち合いが始まる。
 身体能力は侵略蔵書の力を受けているレディ・ハンプティの方が上回っている。だが技量と戦闘経験に関してはハロが上だ。それを活かしつつ、力に押されないように受け流し、狙いすましたように繰り出してくる乳房の口の噛み付き攻撃をしっかりと見切っていく。
「不本意ですが乳房の動きは学習済みです」
 胸で噛み付かれるという経験は初めてではあるが、それでもハロの動きは手馴れている。それは巨乳と呼ばれる存在がハロの周りにいるからだろうか、胸を押し付ける行動は読みやすかった。
 そして回避と受け流しが同時に決まり、決定的な隙ができた時にハロが動く。「剣刃一閃」の強烈な切断攻撃だ。しかもレディ・ハンプティの身体を引き裂いたのは、ハロがレイピアとは逆に持つダガーだった。
 レイピアはあくまで防御しやすいのと、間合いを相手に思い込ませる為。いきなり急接近してダガーでの斬り裂きはさすがに想定外だったのか、レディ・ハンプティも態勢を崩す。
「全ての望みを束ねて……いきます!」
 斬り裂いたと同時にハロがレディ・ハンプティの間合いから離れたのを見て、空中旋回していた望が動く。これまで練り上げてきた魔力と能力「Lux desire(ルクス・デザイア)」発動による膨大な光の奔流が手に掲げた黄金の林檎「真核・ユニゾン」から放たれる。
 威力ではなく射撃回数を重視した光の雨にレディ・ハンプティは成す術もなく巻き込まれる。さらに合体銃「セプテット」も分離させて、手数による空中からの制圧射撃を敢行する。
「くっ……この程度では沈みませんよ」
 ハロからの傷の出血に耐えながらも乳房の下の口で光の奔流を飲み込みながら、蒸気建築の壁を蹴って望に近づこうとする。その間にもセプテットの射撃や飲み込み漏らした光の奔流によるダメージを受けていたが、それでも構わないと言わんばかりだ。
 その際下の口に飲み込まれた光の奔流の反応を見ていた望。どうやら内部でダメージを与えるのではなく、ブラックホールのように何かに飲み込まれている感じのようだ。これはまずいと言わんばかりに、乳房の下の口を避ける望。
「無理はしませんよ?」:
 攻撃を中断し、再びスケルツァンドによる空中飛翔で戦域を離脱する望。すでにこの派手な射撃でハロも晶も離れることができた。仕事は十分と言わんばかりに、レディ・ハンプティを置き去りにする走りを見せる。

 その様子を見送り、レディ・ハンプティは内心歯切りする。いい様に猟兵に翻弄され、蒸気機関にも深刻なダメージを受けた。この後のことを考えると致命傷にもなりかねない。
 そしてその戦果を挙げた晶・ハロ・望の三人は賛辞を贈られるべきであろう。万全の準備を整えたレディ・ハンプティにまず楔を打ち込み、手傷を負わせることができたのだから。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

メンカル・プルモーサ
レディ・ハンプティ……大魔王の娘(自称)かぁ……
……学園とは別のところで事を起こすつもりらしいけど、まあ迷惑掛けるわけにも行かないし打倒しよう…

…列車による轢き逃げアタックは…箒に乗って建造物の合間を縫うようにして空中戦での回避…
さらに浄化復元術式【ハラエド】を使って列車に乗っている幽霊を浄化してしまうよ…
…追撃が弱まったら【夜空の光は全て星】を発動…ハンプティを中心に列車も巻き込んで立体魔法陣を形成…
…即興冬寂術式【フィンブル・ヴィンター】…魔法陣内に吹雪の嵐を巻き起こしてダメージを与えるとしよう…
…その蒸気機関や蒸気獣には冷気は堪えるだろう……?


エリアス・アッヘンバッハ
悪逆たる魔女滅ぶべし。
死者の仇討ちは否定しないけど、これは迷惑だから止めないとね。

武装した幽霊が大量に来るなら対応は一つ、錘を放り投げよう。数で来る相手にはこれが一番、範囲攻撃万歳だ!
幽霊が癒されて成仏……は無理でも動きを止めるなら十分だ、憂いなく猟書家に相対できる。

猟書家への攻撃は狙いを定めた矢を眉間に放つ。
腹部の口がある以上は近寄って戦うと何が起こるか分からないからね。遠距離から安全に確実に戦わせてもらうよ。

弓矢だけでは決め手に欠ける場合は……どうしよう。
戦闘が長引いて幽霊が起きだしたら元も子もないしなあ。
よし、その時は気合いで乗り切ろう!唸れ技能1の気合い!正直唸らない気の方がするぞ…!


死之宮・謡
アドリブ歓迎

中々愉快な奴だな…面白い、蒸気機関と言うものはよく解らないが面白い
アウルム・アンティーカと言えば確か第一形態だったかな?だが、魔女の胎と言えば第四形態だった筈…解らん、如何いうことなんだ?

「呪詛」と「全力魔法」、「属性攻撃:炎熱」で蒸気機関の冷却機構を阻害して熱暴走を起こさせる
魔導列車は距離を取って飛翔しながらクレイアスターを軸に「砲撃」
その後【大空を我が悪意で覆う】で纏めて粒子に変換して攻勢開始
粒子を奴に向かわせながらパルチザンに変化させた闇呪宝玉で「鎧砕き」の一撃を叩き込む



 猟書家レディ・ハンプティは肩にある蒸気機関に視線を移す。やはりというべきか、ほとんどが機能不全を引き起こし、しばらくは使い物にならなくなっている。
 そのことにため息を漏らしながらも、まだ自身の猟書家としての力の源である侵略蔵書「蒸気獣の悦び」を持ち上げる。この侵略蔵書が大魔王の故郷への道を切り開いてくれる。
「ああ、これも試練。アウルム・アンティーカ父様、見守っていらっしゃるかしら?」
 そしてアルダワ魔法学園の世界に災魔を蒸気獣に進化させ、再び災魔を生む存在となりうる。それこそが大望。命を懸けるに値する、レディ・ハンプティの意志。
「レディ・ハンプティ……大魔王の娘かぁ……」
 内心では自称という言葉をつけたのは、あの大魔王が子供を残すとか思えなかっただろう。メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)はかの存在と多く戦った経験故にそう口にする。
「……学園とは別のところで事を起こすつもりらしいけど、まあ迷惑掛けるわけにも行かないし打倒しよう…」
 だがレディ・ハンプティが強敵であるには変わりはないし、アルダワで災害を起こすならば容赦はしない。明確な意志を出して警戒するメンカルに、エリアス・アッヘンバッハ(元・元魔女狩り・f26364)と死之宮・謡(狂魔王・f13193)も頷く。
「悪逆たる魔女滅ぶべし。死者の仇討ちは否定しないけど、これは迷惑だから止めないとね」
「中々愉快な奴だな…面白い、蒸気機関と言うものはよく解らないが面白い」
 エリアスは魔女を滅ぼすという使命感に燃えあがっている。魔女退治特化のハンターである以上、レディ・ハンプティは世に災厄を齎そうとしている魔女なのでなお見過ごすわけにはいかない。
 一方の謡はレディ・ハンプティに興味を抱いていた。蒸気機関という己がわからない文明を使いこなす上に、あの大魔王の娘というのだから興味を持たないわけがない。
「アウルム・アンティーカと言えば確か第一形態だったかな? だが、魔女の胎と言えば第四形態だった筈…解らん、如何いうことなんだ?」
 かつて戦った大魔王の情報を整理すると現在のレディ・ハンプティがどの形態の娘なのかはわからなくなる謡。だがそんな疑問に答えるようにレディ・ハンプティは微笑む。
「どの形態であろうとも父様は父様ですよ。それでは皆様、さようなら」
 それと共に侵略蔵書「蒸気獣の悦び」の力を解放するレディ・ハンプティ。召喚するは黄金色の蒸気機関で武装した災魔達を乗せた魔導列車である。
 その災魔の数ももはや軍団と呼べるほどの数を揃えており、実力もまた蒸気機関でブーストしている状態。さらに魔導列車のスピードの乗った突撃も厄介なものだ。
「さあ、お行きなさい蒸気獣の雛達。父様の敵を屠るのです」
 魔導列車にはレディ・ハンプティが飛び乗り、蒸気獣と化した災魔の亡霊達は三人に襲い掛かる。魔導列車もまた轢き殺そうと狙っている。
 まずは近場にいるメンカルから轢こうとする魔導列車であったが、それを読んでいたメンカルは箒を取り出して魔力で飛翔を開始する。万が一の為に建造物の合間を縫うようにして空中を行い、突撃してこれない場所へと逃げ込む。
「……それじゃ、突破口を開くよ……」
 そう言って次の対処は魔導列車に乗り込んでいる蒸気獣だ。例え機械で武装しようとも亡霊には変わりない。ならばメンカルの浄化復元術式【ハラエド】を展開し、迫ってくる蒸気獣達の亡霊部分を浄化し蒸気機関のみを残して消し去っていく。
「くっ、やりますね……!」
「おっと、こちらも忘れないで欲しいな」
 レディ・ハンプティが歯噛みする中で、蒸気建築の上で魔力を練っていた謡が動き出す。呪詛の込められた全力の魔法を発動し、蒸気機関の冷却機構に術式をピンポイントで付与する。
 それは炎熱の呪詛が込められた呪術術式で、冷却機関の能力を阻害し熱暴走を引き起こすものだ。蒸気機関にとって排熱は重要な機関であり、それが駄目になることはつまりは走行能力の低下に当たる。

 そしてレディ・ハンプティの魔導列車が苦戦する中で地上に降り立った蒸気獣を相手にするのがエリアスだ。大軍を引き付けるように逃走し、その攻撃目標をこちらに向けさせることにあった。
 その作戦は成功し、地上部隊のほとんどがエリアスの方へと向いていた。だがこの蒸気獣を何とかしなければ、レディ・ハンプティには届かない。
「武装した幽霊が大量に来るなら対応は一つだ!」
 そう言ってエリアスは能力「国唯一の紡錘(クニユイイツノツム)」を発動させ、紡ぎ車の錘を集団のど真ん中に投げ込む。この錘こそ範囲対象の睡眠攻撃のキーとなる呪物だ。
 本来は生者を憎んで襲い掛かってくる亡霊達がたちまち眠りへと落ちていく。その眠る様子はこれから成仏するのではないかというほど安らかであった。
「癒されて成仏……は無理か。でも動きを止めるだけでも十分だ」
 こうして地上部隊が眠りにいれば、それだけレディ・ハンプティを狙う機会が増える。エリアスは彼女が乗る魔導列車を追いかけるために、蒸気建築の中を飛び跳ねながら移動する。

 当てにしていた地上部隊がエリアスによって眠らされるなど露とも思わずにレディ・ハンプティは熱暴走で動きが悪くなってきた魔導列車に焦りを感じる。だがそのチャンスを見逃すほどメンカルは甘くない。
「闇裂く光よ、奔れ、描け。汝は光芒、汝は閃画。魔女が望むは夜空彩る星の華」
 発動するは「夜空の光は全て星(スターライト・ドローイング)」。空中を飛翔する星剣が描き出す立体魔法陣からの術式が展開される。その軌跡は幾何学文様を描き出し、列車を包囲するような大魔方陣を魔導列車を中心に作り出す。
「これは……」
 立体魔法陣から繰り出されるのは即興冬寂術式【フィンブル・ヴィンター】。魔法陣内に吹雪の嵐を巻き起こす、残酷なる冬を厳しさを再現する魔法術式だ。
 これは蒸気機関を凍らせるだけはなく、熱暴走を巻き起こした部分が急速冷凍して脆く崩壊させることを助長した。
「…その蒸気機関や蒸気獣には冷気は堪えるだろう……?」
 蒸気は凍りつき、機関は停止していく。残った蒸気獣達は残らず氷漬けにされ、魔導列車も完全に運転をストップさせるほどの損壊と不具合を発生させることになる。
 そしてその魔導列車にとどめをさすべく、謡が遠距離から攻撃を開始する。凍り付いた装甲を破壊するべく、穢煌葎弓クレイアスターの砲撃と見間違うばかりの射撃が敢行される。
「ここで狙撃、ですか!」
「逃げ場はない。すでに先手を射らせてもらったからな」
 そう言って謡は最後の詰めと言わんばかりに能力「大空を我が悪意で覆う(イヴィル・スカイ)」を発動させる。破壊に撃ち込んだ矢があらゆる物質を蝕む黒い粒子に変換していく。
 その粒子に嫌な予感を感じたレディ・パンプティが魔導列車から離れる。その予感は正解で、謡ですらそのデータは解析不能・詳細不明の危険粒子なのだから。
「だが逃げ場はないと言った!」
 謡はそれも想定していたかのように闇呪宝玉シュヴェルツェをパルチザンに変えて、渾身の一撃をレディ・ハンプティの身体に叩き込む。えぐり込まされた呪詛の刃がさらにその身体を内部から蝕む。
 盛大に吐血しながらも、レディ・ハンプティはその柄を乳房の下の口で噛み切る。だが次に彼女の頭に衝撃が走る。

 それはエアリスが遠くから放った気合の入った弓の一射であった。謡との激突に間に合ったエアリスは弓矢による狙撃にすべてを賭けたのだ。
 その射撃は見事で、レディ・ハンプティの眉間を貫いていた。ここで脳の破壊で意識を失っていれば、レディ・ハンプティはこのまま終わっていただろう。
「ここで、果てるわけにはいかないです!」
 だが強烈な思いがレディ・ハンプティの意識を覚醒させ、逃走の為に再び侵略蔵書「蒸気獣の悦び」から蒸気獣を放ち、謡とエアリスを襲わせる。さすがに反撃を予測できなかったのか、二人はその蒸気獣の対処に手一杯になってしまう。
 ならばメンカルが動こうとしたが、魔導列車の完全破壊まで術式の維持が必要ではあるし、エアリスが眠らせた蒸気獣達が覚醒してこちらに向かっているのを感知していた。やれやれとため息をつきながらも、そちらの対処をするしかないと決意したのだった。

 レディ・ハンプティは度重なる幸運と偶然によって三人の猟兵の猛攻をしのぎ切り、窮地を脱した。だが相応の力を使い、さらに致命傷に近い傷まで負わされた。
 やはり大魔王を滅ぼした猟兵は侮りがたいと判断した彼女は態勢を立て直す為に、蒸気施設の深部まで撤退を図る。だが猟兵もそれを逃がすほど愚かではない。レディ・ハンプティを撃滅する為に、猟兵の強烈な追撃が始まる。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

シーザー・ゴールドマン
【POW】
これはこれは、アルダワの様な国だね。
レディの郷愁が具現化したようだ。
さて、父の夢の続きを見る、それは残念ながら叶わない。
代わりに父上と同じ場所に送ってあげよう。
ハハハ、我ながら悪役の台詞だね。

先制対策
UCの特性上、必ず接近してくるのでそれを閃光破で迎撃
(属性攻撃:光×衝撃波×範囲攻撃)
これの真意は目眩まし。
一瞬視界を奪った隙に分身(残像×存在感)を残してやや後退。自身はオド(オーラ防御)の輝きを調節。光の屈折を利用して透明化。

分身が敵UCを喰らった瞬間に攻撃により態勢を崩しているところに『カーリーの鏖殺』の痛撃を。

アドリブ歓迎


リジューム・レコーズ
アウルム・アンティーカの残滓?
なんでこんな所に…

【POW・アドリブ連携歓迎】

胸の顎による攻撃は射程は短いものの当たれば一撃ですか
絶対に接近されないようにしないと
空中に逃げて相対距離を離しましょう
蒸気都市上での戦闘なので建造物の影に急反転で回り込んだり大通りの直線路で最大加速する等して間合いは取れるだけ取ります
こういった戦術の為の高機動セッティングです

目標は接近戦に固執している…それなら!
逃走中の間にブレイキングドーンの発射準備を完了させます
ビルの角を曲がった瞬間に反転
追撃してくる目標を視認した直後に発射します
この状況で稼働エネルギーの全損失は非常に大きな代償です
だからこそ決定打の威力となります


烏羽・シノノメ
淑女としての慎みが足りんな。
ちょっとマナーを躾けてくるか。

魔導列車をダッシュ、空中浮遊で乗り継ぎながら移動。
レディ・ハンプティを確認したら煉獄唐傘の引き金を引き、その爆撃による反動で吹き飛んで一気に距離を詰める。

大きく開いた口には煉獄唐傘を吹き飛んだ反動と怪力で力任せに振り抜いて武器受けしたら引き金を引いて爆撃。そのどさくさに紛れて私は傘を手放しバックステップで距離を取る。

まったく、人々を混乱させる外道は許さん。次はこちらの番だ。
UC【焔の誓い】を発動させ、燃え盛る鴉の化け物に変異。
赤熱する灼熱分銅を怪力で振り回し、その重量に任せてその口のついたぶら下がっている物に思いっきり叩きつける!


肆陸・ミサキ
アドリブ絡み苦戦怪我ok

悪食な姿だ
うーん、か弱い僕には荷が重そうだし、程々に気を引いて、仲間の手助けをする、位の気持ちでいよう

あの下品にでかい胸部は厄介だけど、まあ、間合いでいえばこちらが有利なわけだし、近付かないのが得策だよね
黒剣を槍形態に変えて、こちらの範囲で攻撃させて牽制しよう

とはいえ、僕じゃ時間稼ぎが関の山
本命の一撃は皆に任せて、注意を惹くのを第一に考えて動くよ

ただ、もし、噛みつかれたり、丸呑みなんてされたら
差し出せるのは腕一本だけにしておきたいし、内側に身体を入れられるなら
中からウェルダンになるくらい焼き尽くしてやりたいね



 現在の猟書家レディ・ハンプティの状況は最悪といっても過言ではない。肩の蒸気機関はほとんどの機能を失っている状況、さらに侵略蔵書「蒸気獣の悦び」の力もかなり消費した状態となった。
 ならばこそ今は危険な状態だ。レディ・ハンプティの肉体ダメージも蓄積されている状況下で、畳みかけらればそれこそこの国の主である猟書家であっても生命の危機であるのだ。
 だからこそレディ・ハンプティはこの蒸気建築と魔導列車が走る世界で、猟兵の追撃を躱そうとしている。だが猟兵というのは、こういう時こそ真の力を発揮し、嗅ぎつける嗅覚を持ち合わせている。
「これはこれは、アルダワの様な国だね。レディの郷愁が具現化したようだ」
「淑女としての慎みが足りんな。ちょっとマナーの躾けが必要か」
 魔導列車に乗って奥へと引いているレディ・ハンプティをシーザー・ゴールドマン(赤公爵・f00256)と烏羽・シノノメ(濡羽色の死神・f27990)が捉える。その目はまさしく狩人のそのものであった。
 特にシノノメは地獄の獄卒としての務めの一環としてか、それとも東方の妖怪の気質であるのか。冷酷にして、規律に厳正になっている節があり、レディ・ハンプティの佇まいは鼻につくようだ。
「猟兵……もう捉えてきましたか」
「さて、父の夢の続きを見る、それは残念ながら叶わない。代わりに父上と同じ場所に送ってあげよう」
 シーザーの物言いはまさしく上位の者が下位の者に告げる死の宣告のようだった。レディ・ハンプティはあえてその言葉に反発したりはしない。
 その血を想起させるのな真紅の公爵にはそれだけの力があるということも納得できる感じがした。それを受け止め、冷静に生き延びようとする強大な猟書家に、シーザーもまた侮れなさを感じ取る。
「ハハハ、我ながら悪役の台詞だね」
「まったくだ。では行くか」
 シーザーとシノノメはそのやり取りを機に動き始める。撤退が優先の為にレディ・ハンプティは蒸気銃を持って応戦するが、隙があれば乳房の下の口で容赦なく噛み切ってくるだろう。
 まずはシノノメが距離を詰める為に魔導列車に乗り継ぎながら移動する。蒸気銃の銃弾も空を飛ぶシノノメにとっては訳はない。
「まったく、人々を混乱させる外道は許さん」
 そしてレディ・ハンプティが視界に入る位置まで移動すると、煉獄唐傘『烈火』の引き金を引き、その爆撃による反動で吹き飛んで一気に距離を詰める。
 爆音と共に急接近してきたシノノメに若干驚くものの、乳房の下の口でその身体を噛み切ろうとするレディ・ハンプティ。だがシノノメは吹き飛んだ反動と怪力で力任せに振り抜いて、その牙を受け止める。
「そう簡単には食われんぞ?」
 そう言ってシノノメは再び引き金を引いて爆発を起こす。そのどさくさに紛れて煉獄唐傘を手放し、バックステップで距離を取ることで乳房の下の口から逃れることに成功する。
 そして発動するのは「焔の誓い(ホムラノチカイ)」。罪なき者を仇なす外道は必ず滅する、その誓いが強ければ強いほど、真の姿を解放する能力だ。
「次はこちらの番だ!」
 燃え盛る鴉の化け物に変異したシノノメは、赤熱する灼熱分銅を怪力で振り回す。狙いはこちらを喰い呑もうとしている下の口の顎にあたる部分。
 その重量に任せてフルスイングした一撃は、顎をかち上げる形でレディ・ハンプティのボディに突き刺さる。その反動で身体が持ち上がり、空中へと吹き飛ばされる。

「くっ……」
「覚悟は良いかね?」
 身体が軋み、灼熱分銅が身体を焼く感覚を味わったレディ・ハンプティであるが、空中浮遊するシーザーの追撃が襲い掛かる。だがさせまいとカウンター気味にその牙がシーザーに迫る。
 しかしシーザーもそこはしっかりと対策済みだ。練り上げたオドの魔力を目がくらむまでの閃光波を生み出すのに使い、レディ・ハンプティの視界を潰す。
「この程度の目眩ましで……」
 黒の帽子で閃光を遮断したレディ・ハンプティであるが、それでもシーザーの身体を噛み切る。だが肉体を抉ったはずなのに、肉の感触がない。
 それもそのはず、その姿はシーザーが一瞬の隙をついて残した質量のある残像だ。そして自身はオドの魔力で光を調節し、光の屈折を利用して透明化することでやや後退した位置にいるのだから。
「ああ、いい態勢だ。叩き込みやすくなったよ」
 肉をえぐり取った噛み付いた態勢のレディ・ハンプティはとても拳が叩き込みやすい態勢となっている。なればこそ、シーザーの能力「カーリーの鏖殺(デウス・プーグヌス)」の餌食だ。
 『破壊の魔力』を込めた攻撃が開いた脇腹に突き刺さり、その骨と組織を容赦なく破壊する。強烈な衝撃が口を血で満たし、勢いよく蒸気建築を突き抜けるくらいまで吹き飛ばされる。

「ガハッ、ゴホッ……」
 シーザーとシノノメの両者の猛攻により身体に深刻なダメージを負うことになった。だがまだ致命傷には至っていない。なればこそここで畳かける。
 そんな猟兵側の意志を現すかのようにリジューム・レコーズ(RS02・f23631)と肆陸・ミサキ(DeityVamp・f00415)は姿を現す。血を吐きダメージを受けているレディ・ハンプティではあるが、侮ることはできない。
「アウルム・アンティーカの残滓? なんでこんな所に…」
 その姿はわずかではあるが、大魔王アウルム・アンティーカを想起させると思ったリジューム。だが強烈な乳房の下の口の牙がこちらへと向けられると察知した彼女はすぐに戦闘態勢に移行する。
 胸の顎による攻撃は射程は短いものの当たれば一撃。なればこそ、絶対に接近されないようにしないと空中に逃げて相対距離を離すリジューム。
「悪食な姿だ。うーん、か弱い僕には荷が重そう」
 一方のミサキは気軽にそう言いながらもその場に留まっている。黒剣を槍形態に変えて、間合いを取ることで乳房の下の口の攻撃の牽制とするつもりだ。
 とはいえ、レディ・ハンプティの強大さは身を染みてわかっているつもりだ。だからこそ、程々に気を引いて、仲間の手助けをする、位の気持ちでいるミサキ。
「……では貴方から始末致しましょう」
 建造物の影に急反転で回り込み、最大加速をして機動戦を仕掛けようとしているリジュームを追うのは困難と考えたレディ・ハンプティは、待ち構えるミサキへと狙いを定める。高機動セッティングを施したリジュームを捉えるのは骨と考えたからであろう。
 狙い通りとなったミサキではあるが、怪力で黒槍を振るいながらも、そこまで状況を楽観視している状態ではない。
(あの下品にでかい胸部は厄介だけど、まあ、間合いでいえばこちらが有利なわけだし、近付かないのが得策。とはいえ、僕じゃ時間稼ぎが関の山)
 自身の実力は過小評価し、敵を過大評価するのはミサキ自身の生き残り戦術でもある。そうすることで敵を侮ることは決してない。
 だからこそ黒槍の間合いを一気に潰し、身体が傷ついてもこちらに接近を果たすという戦法を取って来た時もミサキに驚きはなかった。そしてミサキを丸呑みにしようとその口を開ける。
「腕一本なら差し出してもいいけど、それなら覚悟するといいね……!」
 だが乳房の下の口を両腕で受け止めるミサキ。牙が両手を貫通し、血が噴き出るものの構いはしない。能力「白夜(オールライトナッシング)」を発動させて、白い灼光を纏うドレスと日輪で覆っていく。
 レディ・ハンプティの牙がミサキを食い破るのが先か、ミサキが口を押し返すのが先かという勝負。だが際限なく上昇していく体温はレディ・ハンプティの肉体をも焼き、日輪が口内をも焼き尽くしていく。
「あああああああああああ!」
「こっちを食べようとしたんだ。ウェルダンになるくらい焼き尽くしてやるよ!」

「目標はミサキさんに固執している…それなら!」
 ミサキの注意を惹くという作戦は見事に成功していた。今ミサキを噛み砕こうとしている状況で、リジュームのことなど意識はない。
 なればこそ最大の痛打を与えられるチャンスである。リジュームは「AFPC1Xブレイキングドーン(アンチフォートレスプラズマキャノン)」の発射態勢に入る。
「プラズマ・リアクター直結、EMチャンバー内正常に加圧中、ライフリングサークル最終加速、発射準備完了……」
 こちらを気取られないように蒸気建築を旋回している間に準備をを整える。そして建物の旋回が終わり再びミサキとレディ・ハンプティを捉えた瞬間、リジュームは極大の一撃を放つ。
「ディスチャージッ!」
 視認した目標に向かって要塞を破壊する程の莫大な荷電粒子を籠めた一撃が放たれる。さらに言えば、ミサキを巻き込まないようにレディ・ハンプティの上半身だけ吹き飛ばすまで光線を圧縮した一撃であったが。
 高機動を維持できないほどの稼働エネルギーの全損失のリスクを込めた破壊の一撃。なればこそ当たれば、レディ・ハンプティといえども無事では済まない。
(ああ……父様)
 だがミサキが口を抑え込んでいるが故にレディ・ハンプティは逃げることができない。己を飲み込む光が迫る中で、最後に思い浮かべたのは最愛の父である大魔王の姿であった。

「いてて……やっぱり牙が食い込むのは痛いね」
「無茶しすぎです。ご自愛なさってください」
 結果的にレディ・ハンプティは胸から上がすべて吹き飛んで骸となっていた。そしてその身体は緩やかに滅びようとしている。
 リジュームの狙いすました一撃はミサキに掠ることもなかったが、それでも牙がめり込んで穴が開いた両手は無事ではない。ミサキは血を流しながらも再生しようとしている。
 そして追撃を行っていたシノノメやシーザーとも合流し、その撃破を確認して安堵する二人。勝利を喜びつつ、撃破に力を使い果たした二人に肩を貸し、蒸気建築が立ち並ぶ国を後にするのだった。

 猟書家レディ・ハンプティは結局、敬愛する大魔王の世界に侵攻することなく、このアリスラビリンスの地にて散った。だが何もなさなければ、彼女自身の存在意義もなかったであろう。
 その命を懸けた行動を全力で止め切った猟兵達の実力が凄まじかった。その一言に尽きる。蒸気建築が立ち並ぶ国は、侵略蔵書「蒸気獣の悦び」の消滅と共に緩やかに消滅していくことだろう。大魔王の残滓と共に。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年08月17日


挿絵イラスト