3
迷宮災厄戦㉑〜蒸気都市の戦い

#アリスラビリンス #戦争 #迷宮災厄戦 #猟書家 #レディ・ハンプティ

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#アリスラビリンス
🔒
#戦争
🔒
#迷宮災厄戦
🔒
#猟書家
🔒
#レディ・ハンプティ


0






「幾人かの猟書家達にたどり着いたようじゃな」

 ガングラン・ガーフィールド(ドワーフのパラディン・f00859)は、喜ばしい事実であるが笑顔はない。ある意味で、ここからが今までの積み重ねを活かすかどうかの瀬戸際だからだ。

「今回、おぬしらに挑んでほしいのは猟書家『レディ・ハンプティ』じゃ」

 レディ・ハンプティがいるのは、魔導列車が走り回り、蒸気建築に埋め尽くされた、大都会のような国だ。アルダワ魔法学園世界へ行こうと企んでいる猟書家に、ふさわしい国と言えるだろう。

「向こうは、こちらが国に入り込めばすぐに反応するじゃろうな。この蒸気都市が戦場となる――」

 レディ・ハンプティは、強敵だ。その力は圧倒的であり、必ずこちらを先制してくる。これに対処できなければ、一方的にこちらが蹂躙されて終わりだ。

「だからこそ、対策が必要じゃ。レディ・ハンプティが攻撃に使うのは、黄金色の蒸気機関で武装した災魔の幽霊の群れを乗せた魔導列車を召喚する侵略蔵書「蒸気獣の悦び」と、乳房の下の口での噛みつく攻撃じゃな」

 これに武装楽団形態に変身する自己強化能力も持っている。数による蹂躙、一撃の破壊力、強化――高いバランスで整った強敵だ。だからこそ、これらが先制攻撃で行われる時、こちらの対処法一つで大きく変わる。

「こちらの実力を大きく超える強敵じゃ。事前の対処法、連携や協力、あるいは起死回生のアイデア……必ず、『何か』が必要じゃ。頼んだぞ」


波多野志郎
蒸気都市へようこそ――どうも波多野志郎です。
今回は、蒸気機関で溢れた都市で猟書家『レディ・ハンプティ』と戦っていただきます。

プレイングボーナスは、『敵の先制攻撃ユーベルコードに対処する』というものになります。耐えるか、回避するか、それとも……? ユーベルコードやアイデアの勝負となります。ソロでも団体でも、ふるってご参加ください。


それでは蒸気都市にて、皆様をお待ちいたしております。
258




第1章 ボス戦 『猟書家『レディ・ハンプティ』』

POW   :    乳房の下の口で喰らう
【乳房の下の口での噛みつきと丸呑み】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
SPD   :    アンティーカ・フォーマル
【肩の蒸気機関から吹き出す蒸気を纏う】事で【武装楽団形態】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    侵略蔵書「蒸気獣の悦び」
【黄金色の蒸気機関】で武装した【災魔】の幽霊をレベル×5体乗せた【魔導列車】を召喚する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

シャルロット・クリスティア
障害物の多い市街地での戦闘……地形は戦いやすいですが、単純な戦闘能力は厄介ですね……。
強化を防ぐことは出来ない。何とか凌いで見せなくては。

まずは牽制に弾丸をある程度ばら撒きつつも、逃げを最優先に。
アンカーショットも使って、立体機動で飛び回りましょう。追わせます。
振り切るのは流石に無理でしょうが、それでも『追い方』『牽制弾の避け方』くらいは学ばせて頂きますよ。

十分にデータが集まったら、反撃開始です。
跳弾による死角からの攻撃、弾幕での回避誘発、あらゆる手を使って『反応しようとも避けようのない位置』へ誘導し、致命弾を入れる……!

焦っては駄目、その間にやられても駄目……難しいですが、やるしかない!


リアナ・トラヴェリア
新しいフォーミュラ?
せっかく魔王を封印させたまま倒したのに、そんな事はさせやしないよ!
あなたが次の魔王になりたがっても、その野望はここで止めてみせる!

相手は胸の口で飲み込もうとしてくる…?
なら死中に活ありだよ、むしろそのまま飛び込んで中から黒竜の翼で黒剣を掲げて反対側に飛び出すよ!
タイミングが命、でもその攻撃は大きな隙だから。

敵の体から飛び出したら翻って加速してそのまま高速で体当たりして転倒させてから、剣を突き立てる。
ここであなたのその望みはお終い、例え貴女の部下がその計画を引き継いだとしても、私が止めてみせる。
さよなら。


黒鵺・瑞樹
アドリブ連携OK
右手に胡、左手に黒鵺(本体)の二刀流

一応存在感を消し目立たないように動きながらも、あえて懐に飛び込み大口あけた攻撃に胡での攻撃を行う。攻撃方法はシンプルに突き入れ。噛みつきを誘う。
幾ら胴体部分の口とはいえ、伸ばしきった腕と刀と。
そんな状態ならさすがに俺を丸呑みは出来んだろ?討つためなら腕ぐらいくれてやる。
そしてその状態なら胸の口の攻撃は封じたも同然。至近距離でマヒを乗せたUC陽氷を喰らわせる。

基本敵の攻撃は第六感で感知、見切りで回避。
回避しきれないものは本体で武器受けで受け流し、カウンターを叩き込む。
それでも喰らってしまうものはオーラ防御、激痛耐性で耐える。


春霞・遙
召喚された災魔の全てさばききる自信はないので、蒸気の中に勿忘草色ノ使蝶を紛れ込ませて鱗粉による「催眠術」=幻覚を見せつつ戦います。
同士討ち、位置の誤認、攻撃を避けたはずなのに当たったという錯覚などをさせ、その間に杖で刺突や殴打で確実に倒していきます。
魔導列車を含めて敵の位置には常に気を配り、轢かれないように注意します。

災魔を処理できたら同様にレディ・ハンプティにも味方から攻撃されたり弱い攻撃で硬い胸に傷がつくなどの幻覚を見せ、疑問の感情を与えて【謎を喰らう触手の群れ】で攻撃します。

ハンプティダンプティなら塀から落ちて割れるのが筋ですよ。


ルカ・ウェンズ
つまり大魔王第四形態ラクリマ・セクスアリスの娘でもあるのよね

食べられたくないから【オーラ防御】で身を守り対オブリビオン用スタングレネードこれを使い、光で【目潰し】音で【恐怖を与える】のを狙ってその隙にユーベルコードを使い【空中戦】を仕掛けるわ。

豹獣人、イカ獣人、バッタ獣人と仲良くなれそうだったのに貴方の父が子供たち無理矢理戦わせたせいで仲良くなれなかったし、魔女と呼ばれた人達も死んでしまったし貴方も善良なタフガイや善良な美少女を殺そうとしているから真の姿になった私の【怪力】で殴る蹴る切るそれに持ち上げて空高く飛び上がり地面に叩き落したりしてやらないと。


上野・修介
※アドリブ・連携・負傷歓迎

相手は強者。
チャンスはそう多くないだろう。

――為すべきを定め、心は水鏡に

「推して参る」

調息、脱力、先ずは観る

視線と殺気から攻撃軌道とタイミングの予測、タクティカルペン投擲よる牽制と視線誘導、遮蔽物を利用し常に姿勢を低く動き回り、可能な限り被弾を減らしながら相手のUC有効外から脚部と死角をヒット&ウェイで攻撃し削る。
攻撃時UCは使わない。

そのまま押し切れるなら良し。
相手がこちらの動きに対応するようなら、敢えて上記を続行し、ヒット&ウェイに合わせて相手にUCを使わせるように仕向ける。
UC発動に合わせて地面を打撃して加速し、飛び込んで丸呑みにされ、内部からUC攻撃を行う。


黒鋼・ひらり
蒸気機械の街…向こうのホームなんでしょうけどこっちとしても好都合な戦場ね
…OK、喰らいたいならたっぷり喰らわせたげる…ありったけ

先ずは敢えて『武器庫』は温存、噛み付きを誘い…どうせ義手、右腕一本くれたげる
機械の腕に敢えて噛みつかせ磁力を右腕にたっぷり流込みつつカウンター気味に『武器庫』発動
投剣、斧槍に鋼鉄板、それから鉄球も…出せるだけありったけの武器を口内…右腕越しに転送
其の儘喰われた右腕無理矢理引きちぎりつつ、磁力反発で自身を吹き飛ばし無理矢理間合いを離しながらのUC発動

周囲の機械や金属は勿論、しこたま喰らわせた武器や義手
…外からだけじゃなく体の内側からも『流星群』の一斉掃射、喰らいなさいな


備傘・剱
綺麗な花には棘があるってか?
怖いもんだ

乳房
使う前兆を予測して、念動力で敵を動かして回避、それができない時は、自身を空中浮遊で動かし、敵は結界術で捕縛して体を遠ざける

フォーマル
オーラ防御を全面に広く展開し、触れた感覚があったら、そこに、誘導弾と呪殺弾の弾幕を張り、回避行動をとったら、衝撃波でカウンターを合わせる

蒸気獣
召喚されたら、オーラ防御展開し、呪殺弾、衝撃波、誘導弾とブレス攻撃で迎え撃ち、接近されたら、二回攻撃で確実に仕留める

全てを防いだら、青龍撃発動、水弾でフェイントをかけつつ、グラップルで戦闘を仕掛け、体を浮かせたら、乳房下の口めがけて爪と呪殺弾、衝撃波、誘導弾、水弾を零距離射撃してやる



●蒸気都市

 その不思議な国は、蒸気技術によって支えられた国だった。蒸気の白煙を上げるビル郡、街を走る蒸気機関車。異世界のはずの、アルダワ魔法学園世界を思わせる光景がそこにはあった。

「蒸気機械の街……向こうのホームなんでしょうけどこっちとしても好都合な戦場ね」

 ビルの屋上からその光景を見下ろし、黒鋼・ひらり(鐵の彗星・f18062)が呟く。その視線は蒸気都市の中心に立つ、一人の女へと注がれていた。

「ようこそ、猟兵の皆様。この光景は、お気に召してくださったでしょうか?」

 一礼し、顔で唯一覗く口元に笑みを浮かべて女――猟書家『レディ・ハンプティ』
は告げた。レディ・ハンプティへ問いかけたのは、リアナ・トラヴェリア(ドラゴニアンの黒騎士・f04463)だ。

「あなたが新しいフォーミュラ?」
「ええ、遠からずそうなるかと」

 リアナの問いに、レディ・ハンプティは微笑みを崩さない。リアナはその返答に、凛と言い返した。

「せっかく魔王を封印させたまま倒したのに、そんな事はさせやしないよ!あなたが次の魔王になりたがっても、その野望はここで止めてみせる!」
「ああ、ああ。もしかして、あなたはアルダワ魔法学園の――」

 その瞬間、空気が変わった。笑みはそのまま、レディ・ハンブティが冷たい空気を――静かな怒りと殺意をまとう。

「そう、アウルム・アンティーカ父様の仇――!」

 ガキリ、と何かが軋む音がした。その音がレディ・ハンプティの胸元からした事に気付き、備傘・剱(絶路・f01759)が言い捨てる。

「綺麗な花には棘があるってか? 怖いもんだ」
「ああ、父様! 見ていてくださいませ――」

 レディ・ハンプティが身構える。スカートが大輪の花のように広がった瞬間、その姿がかき消えた。

「ッ!」
「――父様の仇は、わたくしが討ちます」

 リアナの背後、刹那で回り込んだレディ・ハンプティの乳房の下の口がその牙を剥いた。

●魔王の娘

「今よ!」

 リアナの声と同時、一つの小さな影がレディ・ハンプティの目の前に飛んできた――スタングレネードだ。

「つまり大魔王第四形態ラクリマ・セクスアリスの娘でもあるのよね?」

 ルカ・ウェンズ(風変わりな仕事人・f03582)がタイミングを合わせて放ったスタングレネードが、閃光を放つ! レディ・ハンプティが反射的に目を瞑る――それに合わせ、リアナは振り返りざまに黒鱗剣をくり出した。

 ギィン! と火花を散らし、レディ・ハンプティが吹き飛ばされる。牙が文字通り食い止めた事で、吹き飛ばされるだけで被害を抑えたのだ。タ、タンッ、と手で地を叩き、身を翻しで着地する。

 その着地点に、上から弾丸が撃ち込まれる――シャルロット・クリスティア(彷徨える弾の行方・f00330)のマギテック・ショットガンによる散弾だ。だが、レディ・ハンプティは着地と同時に既に横へ跳んでいる。その身のこなしは、身体能力の高さを物語っていた。

(「障害物の多い市街地での戦闘……地形は戦いやすいですが、単純な戦闘能力は厄介ですね……。強化を防ぐことは出来ない。何とか凌いで見せなくては」)

 アンカーショットでビルとビルの間を移動しながら、シャルロットは牽制の射撃を続ける。その銃弾の雨に、レディ・ハンプティは不意に足を止めた。

「いらっしゃいな」

 掲げた本が、ひとりでに開いていく。黄金の輝きを本が放った直後、そこに魔導列車が召喚された。魔導列車に優雅に降り立ったレディ・ハンプティは魔王がごとく命じた。

「蹂躙しなさい」

 その上で黄金の蒸気機関を身にまとった災魔達は、次々と猟兵達へ蒸気による砲弾を撃ち込んでいく。

「漆黒の魔弾はいかな物も退ける。罠も、敵も、死の運命さえも!」

 フォトンガントレットを眼前に構え、オーラを込めた防御で砲弾を弾いた剱が迫る列車へ黒魔弾(ルイン)を撃ち込んだ。ドドン! と衝撃が魔導列車を揺らす――そして、その進行上にいた上野・修介(吾が拳に名は要らず・f13887)が呼吸を整えた。

(「相手は強者。チャンスはそう多くないだろう。――為すべきを定め、心は水鏡に」)

 調息、脱力、先ずは観る――そして、大きく跳んだ。

「推して参る」

 魔導列車の上へ、修介が着地する。即座に災魔が修介へ、襲いかかる。それを身を低く沈めてからの水平蹴りの回転で、災魔達を薙ぎ払った。

「これを全てさばききるのは無理ですね」

 春霞・遙(子供のお医者さん・f09880)も列車の上に降り立ち、木の杖を振るう。振り下ろされる刃をかいくぐり、勿忘草色ノ使蝶を引き連れて走り出した。

「失礼するわよ」
『オ、オ――!?』

 ひらりもビルの壁を蹴って、列車に飛び乗る。次々と列車へと集ってくる猟兵達へ襲いかかろうとした災魔達が、不意に崩れ落ちた。

「さて、と。ここからが本番か」

 気配を消した黒鵺・瑞樹(境界渡・f17491)が、投擲した柳葉飛刀で蒸気機関の隙間を刺し貫いて仕留めたのだ。

 白煙を吐きながら、魔導列車が蒸気都市を駆け巡る。その列車の上の攻防は、激しさを増すばかりだった……。

●終着点

 最後尾に立つレディ・ハンプティはクスクスと鈴の音のように笑みをこぼした。

「本当、楽しそうですこと」

 猟兵達と災魔達の戦いは、ただただ苛烈を極めていた。何せ、レディ・ハンプティはいくらでも追加戦力を呼べるのだ――まさに、魔王と呼ぶにふさわしい力だった。

 しかし、それだけで楽しいとは彼女は笑わない。その理由は、もはや敵味方の区別なく暴れまわる災魔がいたからだ。

 それは遙の蒸気に勿忘草色ノ使蝶を紛れ込ませて鱗粉による「催眠術」――幻覚による異常だった。しかし、レディ・ハンプティにとってはこの混乱も愛おしい。ただ災いとして暴れまわる方が、彼女にとっては好感が抱けたのだ。

 この災魔達が、諸王国連合を蒸気獣となって破壊し尽くす。そのリハーサルだと思えば、心躍る光景だった。

『ガ、アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!』

 一体の災魔が、レディ・ハンプティへ襲いかかる。レディ・ハンプティは余裕を持って、それを食い千切――ろうとして、歯応えがない事に目を丸くした。

「あら?」
「ハンプティダンプティなら塀から落ちて割れるのが筋ですよ」

 何故? という疑問――謎を餌に、遙の謎を喰らう触手の群れがレディ・ハンプティを絡め取っていく。そう、勿忘草色ノ使蝶の鱗粉が見せた幻覚に知らず知らずかかっていたのだ。

「面白いですね――!」

 ガ、ガガガガガガガガガガガガ! とレディ・ハンプティの肩の蒸気機関が変形、白煙がその身を包んだ。アンティーカ・フォーマルによって武装楽団形態に変身したレディ・ハンプティは伸びる触手を高速で掻い潜っていった。

(「焦っては駄目、その間にやられても駄目……難しいですが、やるしかない!」)

 シャルロットは呼吸を整える。好機は一瞬、一秒すらない。疾走する列車の上、しかも高速で動くレディ・ハンプティが相手なのだ。だからこそ――これは、紛れではない。

「――ッ!」

 ビルの壁を、看板を、列車の上を――シャルロットの放った跳弾が、次々と跳ねていく。そして、レディ・ハンプティが駆けたそこへコンマ秒のズレもなく同時に着弾した。

 レディ・ハンプティが蒸気機関を展開して銃弾を受け止める。生身や急所部分への着弾を防いだ。そこへ、剱が右手をかざす――!

「天よ、祝え! 青龍、ここに降臨せり! 踊り奏でよ、爪牙、嵐の如く!」

 ドォ! と剱が放った水弾が一直線に災魔達を噛み砕きながら、レディ・ハンプティに迫った。レディ・ハンプティは新たに召喚した災魔達を壁に、その水弾を受け止める!

「オ、オオオオオオオオオオオオッ――!」

 その間隙に跳んだ剱のフォトンガントレットに宿る水爪の一撃が、零距離での黒魔弾(ルイン)に合わせ炸裂した。

「やってくれますね!」

 レディ・ハンプティはその威力に逆らわない――吹き飛ばされ、高速で後方へ。だが、そこには瑞樹が待ち構えていた。

「――ッ」

 それに気付いたレディ・ハンプティが身を捻り、乳房の下の口で食らいつこうとした。それを、瑞樹はあえて懐に飛び込み大口あけた攻撃に胡を突き刺した。

「幾ら胴体部分の口とはいえ、伸ばしきった腕と刀と。そんな状態ならさすがに俺を丸呑みは出来んだろ? 討つためなら腕ぐらいくれてやる」

 直後、レディ・ハンプティの口から青き清浄の炎がこぼれた。陽氷――瑞樹の三宝荒神による浄化の炎が、レディ・ハンプティの内側から焼いていく!

「か、は……!?」

 たまらず口を開け、レディ・ハンプティが距離を取ろうとする。そこへ、修介が駆け込んだ。

「――シュッ!」

 右の水平打ちから始まる、断ち斬る連続攻撃。それをレディ・ハンプティは極限まで強化した速度と反射神経で迎え撃つ。ギ、ギギギギギギギギギギギギギギギン! と肉と肉ではなく、刃と刃の激突のような音を響かせ、火花を散らし――。

「――――」

 不意に、修介が身を低く沈めた。その動きにレディ・ハンプティが対応しようとするより速く――リアナが、飛ぶ!

「飛び立って! 私の翼!」

 地を離れゆく黒竜の翼(エンシェントウィング)の飛翔、リアナの黒鱗剣を突き出す突撃がレディ・ハンプティを貫き、列車から落下させた。

「ここであなたのその望みはお終い、例え貴女の部下がその計画を引き継いだとしても、私が止めてみせる」

 ダン! と地面にレディ・ハンプティを貫く事で縫い止め、リアナは告げる。

「さよなら」

 リアナが飛び去った瞬間だ。ダン! と降り立ったひらりが、その右腕をレディ・ハンプティの乳房の下の口へと叩き込んだ。

 それと同時、ひらりは『武器庫』を開放する――それに気付いたレディ・ハンプティが、させじとひらりの腕に牙を突き立てた。

「あ、なた、この腕……!?」
「……OK、喰らいたいならたっぷり喰らわせたげる……ありったけ」

 どうせ義手、右腕一本くれてやるつもりでひらりは磁力を展開。投剣、斧槍に鋼鉄板、それから鉄球……出せるだけありったけの武器を口内の右腕越しに転送した。

 そして、バキバキバキ……! と自身の右腕を引きちぎり、ひらりは大きく後方へ飛ぶ。

「……ああ」

 轟音を立てて、レディ・ハンプティの周囲が暗くなった。その理由は、一目瞭然だった。

 ひらりが磁力によって、魔導列車を空中へ浮かばせていたのだ。そして、その上にはルカの姿があった。

「豹獣人、イカ獣人、バッタ獣人と仲良くなれそうだったのに貴方の父が子供たち無理矢理戦わせたせいで仲良くなれなかったし、魔女と呼ばれた人達も死んでしまったし貴方も善良なタフガイや善良な美少女を殺そうとしているから――」

 ルカが、真の姿に変わっていく。その姿が闇に包まれ、血よりもなお鮮やかに赤い瞳を輝かせ牙を剥いて――言い放った。

「これが正義よ」

 ボーイ・ミーツ・ガール――そのユーベルコードによって強大な力を得たルカが、空中の魔導列車を振りかぶり、投げ飛ばす! それと同時に、ひらりも磁界流星群(マグネット・メテオストーム)を発動させた。

「……外からだけじゃなく体の内側からも『流星群』の一斉掃射、喰らいなさいな」

 内側からの武具の一斉掃射、外では魔導列車の巨大質量の圧殺――地面に縫い止められ、身動きできないレディ・ハンプティにとって、それが止めとなる。

 蒸気都市を、盛大な爆発が揺るがした。それが、レディ・ハンプティと彼らの戦いの終わりを告げる合図となった……。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年08月17日


挿絵イラスト