迷宮災厄戦⑯〜林檎の国のはらぺこねこ
●アップル・バトル・フィールド
シャリシャリ。シャリシャリ。
果実を食む軽やかな音が、あちらこちらに響いている。
周囲に転がるは、巨大な林檎達。赤林檎に青林檎、見事な艶したそれらは今――オウガによって蝕まれていた。
『Naa……』
『Apple……』
幼子の如き声を上げるのは、不気味な黒猫シルエットの風船で。それは牙の並ぶ口でもって、林檎をむしゃむしゃと食べ進んでいく。
『Niii……』
鳴き声は、みるみるうちに林檎の中に潜っていって。このオウガを首尾よく倒すには、この巨大林檎をどうにかする必要があることは、明らかだった。
●林檎の国のはらぺこねこ
「皆様、お疲れ様です! 次は『アップル・バトル・フィールド』……巨大な林檎の国へ、行っていただけますか!」
集う猟兵へ、ぺこりと一礼。アリア・アクア(白花の鳥使い・f05129)はそう告げると、持参した真っ赤な林檎をずいと突き付けた。
「この林檎が、それはもうとっても大きく実る国です。そして何とも不思議なことに、この林檎はいくら食べてもお腹がいっぱいにならないのです!」
不思議な不思議な、林檎の国。お腹の具合を気にすることなく林檎を食べられるなんて、夢のよう――うっとりとアリアは語るけれど、今は非常事態なのである。
「ですが、この国は今オウガの群れに襲われています。『はらぺこねこばるーん』と言うオウガの群れで、食いしん坊の彼らはこの巨大林檎をむしゃむしゃと食べ、その中に潜んでいるようです」
正面から戦いを挑んだ場合、外へ出てきたと思ったら林檎の中に潜り込まれたり、戦闘は長引くことだろう。けれど、彼らは林檎の中を安全地帯と思っているから――それを利用するのだと白花のグリモア猟兵は語る。
「オウガの潜んでいる林檎は、近付けば猫のような鳴き声がします。どれに潜んでいるかは簡単にわかるので……皆様も、林檎を食べ進んでその中に潜り込んでください!」
お腹がいっぱいになる心配はないから、後は食べ飽きない工夫が必要だろうか。調味料を持参したり、猟兵達の力で焼いたり、凍らせたり。様々な味を楽しんでいれば、自ずとはらぺこねこばるーんまでの道も拓けるだろう。
「ちょっと変わった戦闘になりますけど……この林檎はとっても美味しいとのことですから! ぜひ、たっぷり楽しんできてください!」
味わった感想は、ぜひ戦いの後に聞かせてほしい。楽しそうに言葉続けたアリアは、微笑みながらグリモアを起動する。
大きな大きな、美味しい林檎。それを満喫できた者が――この国では勝者となる。
真魚
こんにちは、真魚(まな)です。
●お願い
プレイングの受付につきましては、マスターページの「お知らせ」ならびにTwitterにて都度ご案内します。
期間外に届いたプレイングは不採用とさせていただきますので、お知らせをご確認の上ご参加ください。
●シナリオの流れ
第1章:集団戦(はらぺこねこばるーん)
当シナリオは第1章のみです。
●戦闘について
戦場となるのは、「巨大な林檎の国」です。複数の巨大な林檎がごろごろと転がっています。
この林檎は食べ進めることによってトンネルを掘ることが可能で、はらぺこねこばるーんはこの方法で林檎の中に潜んでいます。同じように林檎を食べて進むことで奇襲すれば、戦闘が有利になります。
なお、特殊ルールとして『林檎はいくら食べてもお腹いっぱいになりません』。調味料を持参したりして簡単なアレンジも可能なので、林檎を堪能することに重点置いたプレイングも可能です。
奇襲を狙わない場合、はらぺこねこばるーんが林檎から飛び出してきたところでの戦闘となります。
●プレイングボーナス
このシナリオフレームには、下記の特別な「プレイングボーナス」があります。これに基づく行動をすると有利になります。
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プレイングボーナス……林檎を食べ進み、奇襲する。
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●その他
・ペアやグループでのご参加の場合は、プレイングの冒頭に【お相手のお名前とID】か【グループ名】をお書き下さい。記載なき場合は迷子になる恐れがあります。プレイング送信日を同日で揃えていただけると助かります。
・許容量を超えた場合は早めに締め切る、または不採用とさせていただく場合があります。
それでは、皆様のご参加、お待ちしております。
第1章 集団戦
『はらぺこねこばるーん』
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POW : I’m Hungry
【食欲】の感情を爆発させる事により、感情の強さに比例して、自身の身体サイズと戦闘能力が増大する。
SPD : I’m Angry
【口から刺し貫く棘】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ : I’m Lonely
【犠牲になったアリス】の霊を召喚する。これは【武器】や【呪い】で攻撃する能力を持つ。
イラスト:透人
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●林檎の国の猟兵達
猟兵達が降り立つと、そこは瑞々しい林檎の香りに満ちていた。
あっちにごろごろ、こっちにごろごろ。赤や黄色、緑の林檎が、猟兵達より遥かに大きなサイズでもって転がっている。
そして、猟兵達はすぐに不気味な声を聞くことになる。
『Naa……』
林檎の中より、響く幼な声。それこそが、オウガ――『はらぺこねこばるーん』の所在を伝えるもの。
どの林檎を選ぶかは、猟兵次第。きっとたくさん食べることになるから――ここは、好みで選ぶのが正解だ。
カフェラテ・ホーランド
林檎食べ放題と聴いてやって参りました
わ・た・く・し・で・す・わ!
ええ、戦場であることは承知の上
しかしながら、うさぎたるわたくし…
いいえ、わたくし達にとってはまさに楽園!
【うさぎ王国民】の皆様!
今こそ、うさぎの底力を見せる時ですわ!
皆でお食事を楽しみつつ
オウガに退場願いましょう!
食事の間も気を抜きませんわよ
しっかり『聞き耳』を立て
敵のいる方角を感知
接近の際には気付かれぬよう
よりお上品に林檎をいただきますわね
敵を取り囲むように位置取って…突撃!
群れでなだれ込んで押し潰しますわ
敵の攻撃は『野生の勘』も頼りに
『見切り』で躱します
うさぎって素早いんですのよ?
さあ、もふもふに抱かれて
安らかにお逝きなさい!
●
小さな体の彼女にとって、巨大林檎はより大きく。
その迫力に怖気づくことなく、カフェラテ・ホーランド(賢い可愛いうさぎのプリンセス・f24520)はうさぎの鼻をひくひくさせて、林檎の芳香を感じていた。
「林檎食べ放題と聴いてやって参りました、わ・た・く・し・で・す・わ!」
言うや否や、興奮気味に巨大林檎へぴょーんと近付く。
――ここが戦場であることは、承知の上だけれど。目の前に広がるのは、ごちそうの山なのだから。
「そう、うさぎたるわたくし……いいえ、わたくし達にとってはまさに楽園!」
見定めた真っ赤な林檎に、前足で触れて。さあ、とカフェラテはユーベルコードを発動する。
「うさぎ王国民の皆様! 今こそ、うさぎの底力を見せる時ですわ!」
紡ぐ言葉で呼び寄せるのは、賢い可愛いうさぎの仲間達。彼らはぴょんぴょん戦場へ降り立つと、ぴっと背筋伸ばしてカフェラテに従った。
「さあ、皆でお食事を楽しみつつ、オウガに退場願いましょう!」
声掛け、自身も林檎へ噛り付き。自慢の前歯でしゃりしゃり食べ進めれば、うさぎ王国民達もそれに続く。
しゃりしゃり。しゃりしゃり。食事中は会話もせず、上品に。黙々と食べ続ける仲間達のおかげで、あっという間に巨大林檎の中に道が出来上がっていく。
彼らは皆真剣だけれど、その表情は穏やかで。口の中いっぱいに広がる美味を堪能している――そんな状況の中でも、カフェラテの耳はぴんぴん動いて敵の声を拾っていた。
『Niii……』
(「近いですわね」)
猫のような鳴き声は、すぐそこに。仲間達に注意を促し、より上品に林檎をいただいて――。
しゃり、ともう一口齧り取れば、その先は空洞。更に先には後頭部を見せてふわふわ浮いているはらぺこねこばるーんが見えて――うさぎの姫と王国民達は、それを取り囲むように林檎を食べ進める。
気付かれぬように、静かに静かに。そうして位置を確保したら、カフェラテの円らな瞳がキリッと敵を見て。
「……突撃! なだれ込みますわ!」
号令一下、うさぎ達は林檎を齧り取り猫風船へと殺到する。ある者は鼻をつんつん、ある者は後ろ足でげしげし。その愛らしい奇襲に、オウガは驚いたように声上げる。
『Naa……!?』
かと思ったら、その不気味な瞳が吊り上がった。現れるのはかつて犠牲となったアリスの霊、無感情のそれはカフェラテ目掛けて呪いの力を揮う。けれど。
「うさぎって素早いんですのよ?」
言葉と共に、軽やかに跳ねて。鮮やかに攻撃を躱したうさぎの姫は、再び仲間達を集めて。
「さあ、もふもふに抱かれて安らかにお逝きなさい!」
ぴょんぴょん飛び込み、猫風船に飛びついて。多数のうさぎの前、浮いていることさえできなくなったはらぺこねこばるーんは――。
『Rabbit……』
最後はうさぎの爪で空気を抜かれ、弱々しい鳴き声上げながらゆっくり消滅していったのだった。
大成功
🔵🔵🔵
クレア・オルティス
す、すごい…視界に収まらないほど大きなリンゴを見るのは初めてだよ…
リンゴを食べ進みながら複雑な迷路を作ってはらぺこばるーんを惑わせてみよう…!
そしてスキをついて後ろからわっ!と驚かせられたら指定UCでおねんねしてもらう…
うん、この作戦でいこう…!
林檎は好きだからいくらでも食べられるけど…
お腹いっぱいにならないとはいえさすがにこの量は飽きちゃうね…
なら…トッピングの出番…!
生クリームや蜂蜜、メイプルシロップやチョコスプレーにベリー系のフルーツ。
ホットケーキも用意したよ…!これをいろいろ組み合わせて食べればきっとあっという間だね
飲み物は林檎をミキサーでジュースにしちゃう!ゴクゴク飲める…!
●
金髪を揺らして、クレア・オルティス(天使になりたい悪魔の子・f20600)が前方を見上げる。そこにあるのは――大きな大きな真っ赤な林檎。
「す、すごい……視界に収まらないほど大きなリンゴを見るのは初めてだよ……」
感嘆の声上げるクレアだけれど、その耳には確かにオウガの声が聞こえている。
『Naa……』
そう、この林檎の中にもはらぺこねこばるーんは潜んでいるのだ。ダンピールの少女は意を決して、巨大林檎の中に潜り込んだ。
切り取り、齧る味は芳醇で。クレアは頬を僅かに緩めながらも、どんどん林檎を食べていく。時に立ち止まり、耳を澄ませ、思い描く進路を目指して――。
(「林檎は好きだからいくらでも食べられるけど……」)
しゃり、ともう何口目になるかもわからぬ果肉を齧り、クレアは考える。どれだけ食べてもお腹いっぱいにならないとは言え、さすがにこの量は飽きてしまう。
「なら……トッピングの出番……!」
言葉零して、取り出したのは様々な調味料。生クリームや蜂蜜、メープルシロップにチョコスプレー。ベリー系の様々なフルーツ、更にはホットケーキまで。これだけあれば、組み合わせは無限大だ。
生クリームのせた林檎は蕩ける甘さ、チョコスプレーかければ食感も変わる。ホットケーキに蜂蜜、ベリーと林檎を一緒にのせれば、とっておきのデザートが完成する。
さらに、金髪の少女はミキサーも取り出す。これに切り出した林檎を入れて、電源入れれば――あっという間に、新鮮な林檎ジュースの完成だ。
(「ゴクゴク飲める……!」)
ジュースにすることで、クレアの歩みは加速する。風船猫の声を聞きつつも、近付いたり、離れたり。それは、敢えて最短距離を取らない彼女の作戦で――。
(「いた……!」)
見つけたのは、ふわふわ浮くはらぺこねこばるーん。退屈そうにしているそれに気付いてもらえるよう、クレアは小石を投げてすぐに身を隠す。
『Niii……?』
警戒したオウガが、物音聞きつけやってくる。彼が入り込むのはクレアの作ったトンネル道――複雑に入り組んだ、迷い路で。
『Maze……』
幼子の如き声が、戸惑うように鳴く。どう行けば進むのか、また戻れるのか。最早完全に迷った様子の猫風船に、隠れていたクレアは攻撃を仕掛ける。
背後取って、構えるステッキ。それはユーベルコードの力を注ぎこむと、たちまち薔薇の花弁へと姿を変えていく。
「薔薇の香気に包まれて……安らかに眠って……」
紡ぐ言葉、敵を包む深紅の花弁。その芳香は林檎の香りと溶け合いより芳しく――はらぺこねこばるーんを、優しく眠りへと誘っていって。
『Sleep……』
鳴き声一つ、大きな欠伸。狭い迷い路なら催眠の効果も抜群だ。
ふわふわ林檎の中に浮いたまま、眠りに落ちるはらぺこねこばるーん。クレアの作戦を前に無力化されたそのオウガは、それきり目を覚ますことはないのだった。
大成功
🔵🔵🔵
ニオ・リュードベリ
チョコレートを持参して赤林檎の中へ
この光景が既に楽しくてわくわくしちゃう
スプーンやフォークはないけれど大きなアリスランスがあるよ
これで少しずつ林檎を削っていこう
そうすれば適度にやわこくなった林檎が食べられるはず……!
一口食べればもう幸せだね!
でも……流石にずーっと林檎だけは飽きちゃうかな
そこでチョコレートと一緒に食べる!
この組み合わせ良いよね、美味しい……
ミルクにビターにホワイト
チョコの種類もちょっとずつ変えていこう
オウガ退治もしっかりしなきゃ
敵の気配を感じたらランスを構えて壁を【貫通攻撃】
オウガごと貫いてUCを発動だよ
林檎でお腹いっぱいでしょ?
食欲が爆発する前に薔薇の棘に刺されちゃえ!
●
ごろごろ転がる林檎の中から、猫鳴く赤林檎を見つけ出して。
「この光景が既に楽しくてわくわくしちゃう」
ニオ・リュードベリ(空明の嬉遊曲・f19590)は弾む声で呟くと、手にしたアリスランスを林檎目掛けて突き出した。
優しく削ればころんころんと、食べやすい大きさの果肉になる。さっそく一口ぱくりと頬張れば、幸せの味に表情が緩む。
そうして削り出し、食べながら、奥へ奥へ。進む薄青色髪の少女は、次第に飽きを感じてくる。どんなに美味しい林檎だって、食べ続けるのは大変だ。
そこですかさず取り出すのは、用意してきた様々なチョコレート。
まずはミルクチョコレートと林檎を、一緒にぱくり。チョコレートの濃厚な風味と、林檎の爽やかな味が合わされば、それは新鮮に感じて。
「この組み合わせ良いよね、美味しい……」
うっとりと言葉紡ぐニオは、続けて別のチョコレートを合わせていった。
ビターにホワイト、抹茶にナッツ入り。
少しずつ種類を変えて試していけば、飽きることなく食べ進んで。普段ならこんなに何通りもの味を試す前にお腹が満たされてしまうところだけれど、この不思議な国ではいくら試したっていいのだ。
ついつい、食べることに熱中してしまうけれど。そんなニオの意識を引き戻すのは、林檎の壁の向こうから響く幼き声。
『Naa……』
(「オウガ退治もしっかりしなきゃ」)
金の瞳に真剣な気持ち滲ませて、アリスの少女は槍を構える。握る手で編み上げるのは、彼女のユーベルコード。そしてその力を槍に載せて――短い呼吸と共に、前方の壁へと突き出した。
『Niii……!?』
ぼろぼろと崩れ落ちる林檎の壁、その先にいたのは果たしてはらぺこねこばるーん。ニオの槍は壁ごとオウガを貫きその風船みたいな体に穴空けて――けれど、それだけでは止まらない。
「林檎でお腹いっぱいでしょ? 食欲が爆発する前に薔薇の棘に刺されちゃえ!」
言葉に応えるように、猫風船貫いた槍の先端が薔薇と変形する。開く美しき花と、伸びる棘。それらはオウガの体を内側から刺して、更なる傷を生んでいく。
『Rose……!』
上げる鳴き声は、断末魔のように。空気の抜けたはらぺこねこばるーんは、そのままゆっくりと消滅していくのだった。
大成功
🔵🔵🔵
ティクルス・ディータ
【いおにとくー】
りんご、好き。おいしそうなのが、いい
けど、オウガも倒さないと。依頼、だから
音がして、おいしそうなの。ん、あれにする
いくら食べても、おなかはいっぱいにならない。それは、いつもと同じ
でも、だからいっぱい食べる。おいしいから、楽しい
あ、音が近くなってきたらゆっくり食べる。危ないのは、やだ
後ろから【感電】させて杖で刺せばいい、かな
「…誰?ニトロ、知り合い?じゃない?」
じゃ、いい。危ないことしないなら、どうでも
僕は生きていたいだけ、おなかいっぱいご飯を食べたいだけ
あとは、どうでもいい
…なに、これ。べたべたする。けど、甘い。から、いい
ちょっとしかないから、大事に食べないと
ニトロ・カルヴァディアス
【いおにとくー】
林檎って何?このいっぱい落ちてるやつ?
お腹いっぱいにならないって言ったってさぁ、食べるのって疲れる…
とりあえず一つ食べてみる
甘い…シャリシャリする…。嫌いじゃ、ない
ってうわ。クーすごい食べるね
なんか話しかけられたけど。いや、俺の知り合いじゃないし
「あんた誰?ふーん、伊織ね」
「俺の名前…ニトロ。好きに呼べば」
うわ、あんたもすごい食べるんだね
その味変ってやつのお陰?
じゃあ食べるのは2人に任せるから
あんたらさぁ、林檎に夢中で忘れてないよね
敵が現れたら【指定UC】で瞬時に翼を生やし回避して体勢を立て直す
空に逃げたって無駄だから
【オンブラ】で全部飲み込んであげる
花城・伊織
【いおにとくー】
林檎を食べても満腹にはならないそうですが、一人では心許ないと思ってたら、少年が二人。
なんだか放っておけないし、よかったら一緒に食べませんか?
私は花城伊織。
どうぞよろしくお願いしますね!
熱中症と低血糖の人用に塩と蜂蜜の小瓶は常備です。
ふふふ、これが大人の知恵「味変」です!
さあ、お二人もどうぞ使ってくださいね。
沢山食べましょう!
もぐもぐ、ごくん。
幾らでも食べられちゃいそう。
拠点の人たちに少し持って帰りたいななんて思ってたら、にゃー?
…あっ!いえ、忘れてませんよ!ええ、忘れてませんとも!
実は忘れてましたけど!
心の中で言い訳して、猫さんに【指定UC】で攻撃を。
…まだ食べたかったですね!
●
周囲を見渡せば、ごろりごろりと転がる果実。
その香りをそっと吸い込んで、ティクルス・ディータ(海雪・f27190)は憂い顔に僅かに喜色滲ませ林檎の国を進んでいく。
「りんご、好き。おいしそうなのが、いい」
「林檎って何? このいっぱい落ちてるやつ?」
巨大林檎を吟味するティクルス、その背に問いかけたのはニトロ・カルヴァディアス(常闇・f27205)だ。彼は紫の瞳でしげしげと林檎を見て、ふぅんと声漏らす。
ニトロがついてくるのを確認して、セイレーンの少年は耳を澄ませた。そう、巨大林檎ならどれでも食べていいわけではないのだ。これは、依頼。オウガを倒せる、林檎でなければ。
(「音がして、おいしそうなの」)
声はすぐに聞こえてきた。幼子の如き、猫の鳴き声。
『Naa……』
「ん、あれにする」
ぴっと指差しそのまま進んで、巨大林檎に噛り付く。ぱくり一口食べればティクルスの青い瞳が一瞬煌めいて、それから更に、もう一口。
「お腹いっぱいにならないって言ったってさぁ、食べるのって疲れる……」
気だるげに呟くニトロだが、ティクルスに任せきりにするつもりもない。とりあえず一つ、と口に運べば、初めての味に瞳を瞬かせて。
「甘い……シャリシャリする……。嫌いじゃ、ない」
ため息のような声に、返るのは黙々食べる少年の頷き。
「ってうわ。クーすごい食べるね」
ニトロが驚き声上げた通り、ティクルスはどんどんと巨大林檎を食べ進めていた。この国の林檎は、いくら食べてもお腹がいっぱいにならないのだと言う。食欲旺盛な彼にとって、それはいつものこと。でも、だから。
「いっぱい食べる。おいしいから、楽しい」
言葉紡ぐと、再び林檎へと向き直る。そんなティクルスを少しでも手伝おうと、ニトロも次のひとかけらを手に取った時――二人の背後、外側からひょいと覗き込む影が、彼らに声を掛けてきた。
「そこのお二人、よかったら一緒に食べませんか?」
少年達が振り返れば、よいしょと林檎の中へ潜り近付いてくる。黒い髪に黒い衣服、友好的な笑顔――。
「……誰? ニトロ、知り合い? じゃない?」
「いや、俺の知り合いじゃないし」
二人は戸惑い会話交わすけれど、相手の女性も同じ猟兵だ。誘いが罠とは思えない、と考えるうち、女性――花城・伊織(死滅回遊魚・f27225)は眉尻下げて言葉を続けた。
「林檎を食べても満腹にはならないそうですが、一人では心許ないと思ってたんです」
なんだか放っておけないし、そう思ったことは口に出さずに。それ聞いたティクルスは、興味を失ったように彼女に背を向け、再び林檎を食べ始めた。
「じゃ、いい。危ないことしないなら、どうでも」
彼はただ、生きていたいだけで。お腹いっぱい、ご飯を食べたいだけで。
(「あとは、どうでもいい」)
黙々食べて、道を作る。そんな少年をちらと見てから、ニトロは伊織に向き直った。
「あんた誰?」
「私は花城伊織。どうぞよろしくお願いしますね!」
「ふーん、伊織ね。俺の名前……ニトロ。好きに呼べば」
簡単な会話、これで共闘は成立だ。そして二人はティクルスに追いつき、共に林檎を攻略していく。
ひたすらに食べるティクルス、ペースは遅いながらも安定して食べ進めるニトロ――そして、伊織は工夫もして、ティクルスにも負けぬ速さで林檎を消化する。
「うわ、あんたもすごい食べるんだね」
驚嘆の声上げるニトロに、口に入れた林檎をもぐもぐ、ごくん。得意げな顔して、伊織は持参した小瓶を披露する。
「ふふふ、これが大人の知恵『味変』です!」
小瓶の中身は、塩と蜂蜜。熱中症と低血糖の人用に、常備しているそれの出番がまさに今なのだと。
「その味変ってやつのお陰?」
「そうです! さあ、お二人もどうぞ使ってくださいね。沢山食べましょう!」
笑顔の伊織は、少年二人に塩と蜂蜜をお裾分け。ティクルスはきょとんとしながらも、試しに林檎に蜂蜜を絡めてみて。
「……なに、これ。べたべたする。けど、甘い。から、いい」
とろりとした黄金色は、林檎を極上のデザートに変えて。その味が気に入った少年は、ちょっとしかないから大事に食べようと考えるのだった。
伊織の味変の甲斐もあり、林檎の中の道はどんどん奥へと堀り進められていく。
じゃあ食べるのは二人に任せるから。そう言いニトロは途中で離脱したが、ペースは衰えず。
(「幾らでも食べられちゃいそう。拠点の人たちに少し持って帰りたいな」)
思いながら、芳醇な林檎を堪能する伊織。おいしくて、楽しくて。林檎に夢中な彼女は――近くから聞こえる声も、耳に届いているのかどうか。
『Naa……』
「ん、にゃー?」
首を傾げ、辺りをきょろきょろ。そんな伊織の様子を見て、ニトロは呆れたように言葉紡いだ。
「あんたらさぁ、林檎に夢中で忘れてないよね」
「……あっ! いえ、忘れてませんよ! ええ、忘れてませんとも!」
慌てて言い繕う伊織だけれど、実際のところは忘れていた。そう、林檎を食べる、その先――オウガを倒すことが、猟兵達の目的なのだ。
音の方向を特定し、ティクルスは用心深く少しずつ林檎を齧り取る。危ないのは、やだ。そうして、先の様子を伺いながら進めば――しばしの後に、道は空洞へと繋がった。
覗き込めば、そこはオウガの作り出した穴。彼らに背を向け浮いているのは、三体のはらぺこねこばるーん。まだ、こちらには気付いていないようだ。
「いた」
呟くティクルスは、二人をちらと見た後で両掌を突き出す。パチリ、音立て生まれる電流は、彼の操るユーベルコード。それは林檎の壁を走るように風船猫へと近付いて、下がる紐を伝って駆け上がりオウガの体を襲った。
『Electric……!』
突然の奇襲に倒れる仲間見て、もう一体のはらぺこねこばるーんは上空へ逃げようとする。しかし、そこにはニトロがいる。
「空に逃げたって無駄だから」
背に生えた闇色の翼は、己の影。そして手にした大鎌『オンブラ』もまた、彼の影より生まれしもので。
「全部飲み込んであげる」
囁く声、揮う鎌。それは風船猫を切り裂き、空気抜けたオウガはよろよろ地へと落下していく。
『I’m Angry!』
残る一体。鳴き声に篭められるは怒り、口から放たれるのは棘。しかしそれが到達する前に、伊織が素早く文庫本を開く。すると頁からは情念の獣が現れて、棘を喰らい、そのまま駆けて、はらぺこねこばるーんに牙を突き立てた。
『Naa……!』
最後の鳴き声は、悲鳴のように。そうして消滅していく三体のオウガを見つめながら、伊織は少年二人にこう声掛けた。
「……まだ食べたかったですね!」
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
境・花世
綾(f01786)と
みずみずしい果実の匂いに思わず跳ねて
あのね、いい食べ方を考えたんだ
颯爽と取り出したる瓶は、
ひんやりしゅわりな炭酸サワーベース
あは、おんなじこと考えてた!
呑兵衛ふたりでくすくす笑いながら
実を刻んで擦ってとろ~り混ぜよう
お酒と混ざれば白はいっそう鮮やかに薫り、
赤は濃厚に、サワーは甘酸っぱさが際立つみたい
甲乙つけがたい杯は次々と重なって
おいしくて、いいきもちだねえ
にゃー、ねこも一緒に飲もう?
ふわふわくすくす笑いながら猫たちの後ろへ
舞い荒ぶ花の嵐はきっと微かに甘い匂い
そのままころんと転げて落ちたのは、
あったかい誰かさんの腕のなか
ふふ、きみからも、林檎の匂いがする、にゃー
都槻・綾
f11024/花世
たっぷり贅沢に味わえる機会だもの
逃す手はないですよね
澄まし顔で
両手に掲げたのは
白と赤のワイン
同じく
彼女が得意気に取り出した酒精へ破願
やぁ
以心伝心ですねぇ
すりおろしたり
刻んだり
食感を変えて
各種酒と組み合わせ
いざ飲み比べ!
笑み綻び乍ら進む林檎の路
白ワイン漬けの果実はまろやかで
しゃりしゃりの歯応えも楽しく
サワーのすっきりした酸味に
霙風のすりおろしもぴったり
あぁ、其れから…
いとけなき声が間近で聞こえたなら
あなたも如何と猫さんへお裾分け
木天蓼酒ではなく林檎酒だけれど
ころころ笑い止まぬ花世は
もしかしなくても
酔っているのかしら
よろめく彼女を支えつつ
猫さんを馨遙で一撫で
美味しい夢に眠りなさい
●
真っ赤な巨大林檎の中に潜り込めば、鼻をくすぐる瑞々しい果実の香り。
心地好さに思わず跳ねて、境・花世(はなひとや・f11024)は隣の人へと悪戯っぽい笑みを向ける。
「あのね、いい食べ方を考えたんだ」
言葉紡いで取り出したのは、涼やかな色の瓶が一つとグラスが二つ。瓶の中身はひんやりしゅわりな、炭酸サワーベースだ。
それ見た都槻・綾(糸遊・f01786)は、ゆるりと微笑み頷いて。
「たっぷり贅沢に味わえる機会だもの。逃す手はないですよね」
同意しながら、両手に掲げるのは白と赤のワイン。澄まし顔の男に、花世は可笑しそうに声上げ笑った。
「あは、おんなじこと考えてた!」
「やぁ。以心伝心ですねぇ」
くすくすと二人で笑いながら、その手は素早く林檎の実を切り出していく。果肉を刻んで、すりおろして。持ち込んだ酒と組み合わせて、飲み比べを――いくら食べてもお腹がいっぱいにならないのなら、お酒だって溺れぬ限り飲み続けられるはず。
まずは白ワイン。軽やかな香りが魅力の果実酒に林檎の芳醇が加われば、香りも、しゃりしゃりの食感も楽しくて。
赤ワインの深い味わいを堪能したら、次はサワーだ。すりおろした林檎が炭酸の中でしゅわしゅわと踊る姿は、季節にもぴったり。口に運べばすっきりした甘酸っぱさが爽快で――ああ、こんなのいくら飲んでも止まらない。
「おいしくて、いいきもちだねえ」
花世が赤らむ顔でふわふわと音を零せば、綾も頷き杯を重ねるけれど。ふと、近くで声がしたようで――林檎と酒に夢中なうち、随分と奥まで進んでいたことに彼は気付く。
『Naa……』
『Apple……』
聞こえる声は、一枚隔てた林檎の壁の向こうからだろう。この美酒を彼らにもお裾分けできればと綾は思うけれど――残念ながら、それでは奇襲の意味がない。戦闘仕掛けた後でも杯を受けてくれるなら、その時はぜひにもと考え直して。
壁壊そうとする綾だけれど、それより花世が動く方が早かった。
「にゃー、ねこも一緒に飲もう?」
くすくす笑いを続けながら、彼女ははらぺこねこばるーんの背後へするり滑り込む。一体、二体――そのどちらもが気付くより先、手の中の武器を花弁へと変えて。
「おやすみよ、おかえりよ」
上機嫌なその声は、きっと素面の時より弾んでいる。巻き起こる花嵐は微かに甘い匂い纏って、猫風船のふわふわな体に傷を刻み付けた。
舞う花弁をなぞるように指滑らせて、ころりころりと笑いを零す。そんな花世を見つめる綾は、僅かに首を傾げて。
(「もしかしなくても、酔っているのかしら」)
思うとほぼ同時に、牡丹の娘の体がよろめく。瞬時に近寄り腕で支えれば、とろんと蕩けた顔が彼を見上げた。
「ふふ、きみからも、林檎の匂いがする、にゃー」
擦り寄る仕草はまさに猫のようで、少し飲み過ぎたのだろう。手早く終わらせた方がよさそうだと、綾はユーベルコードを発動する。
「神の世、現し臣、涯てなる海も、夢路に遥か花薫れ、」
現れるは、いくつもの『馨』。それらは二体のはらぺこねこばるーんの体を優しく撫でて、眠りへと誘っていく。
『Niii……』
「美味しい夢に眠りなさい」
唇に載せる声も、優しく眠りへ誘って。落ちるようにオウガ達が消えた時――支える花世もまた、とろとろと夢の世界に身を浸しているようだった。
大成功
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呉羽・伊織
【花守】
――ホントお前にゃお誂え向きだな!
今だ嘗てなくその食気が頼もしく見えるワ~ハハハ
ちょこニャンもやる気満々過ぎて、最早俺は奇襲担当だけで良い気がしてきた!
とりあえずしゃりしゃりと食べつつ――前行く狐と猫の勢い見てるだけで腹一杯な気分に!
時々器用に兎型に切り出したりして気分転換
聞き耳と第六感で索敵も常に
限界まで近付けば、UC使い先制攻撃で林檎ごと一気にぶち抜き奇襲
さて、悪食な上に妙なモン放つあの口はさっさと封じるに限るな!
敵の口へ、動き鈍らす呪詛や毒込めた風切や烏羽食らわせ部位破壊
早業や2回攻撃で手数重ね数減らし
不意に残像やフェイントも混ぜ撹乱し回避
さて最後の晩餐ももうお開きだ、失せな!
千家・菊里
【花守】
ふふふ、実に腹が――いえ、腕が鳴る戦場で
食べ放題だなんて最高ですね
ではいざ美味しい林檎を、もとい敵の山を平らげに
まずは素の味を堪能
次はUCで焼林檎や氷属性霊符でシャーベット
すりおろしジュースも味わい深い
以下略
――と存分に
おやちょこさんは流石わいるどですねぇ
聞き耳で敵位置察せば御馳走様
美味しい林檎で英気は万全
名残惜しいですが、一斉に林檎打ち崩し奇襲
早業で雷属性霊符を範囲展開し麻痺攻撃
更にUCも重ね2回攻撃で焚き上げ
霊も最早救えぬならば――せめて一刻も早く敵を屠り、鎮めましょう
護りはオーラと結界張りつつ、フェイントで目眩ましも
ええ、敵の狂宴は終わらせ――俺達は帰って打上焼肉と致しましょう
鈴丸・ちょこ
【花守】
林檎も敵も食らい付くしてやりゃいいんだな?
俺は肉の方が好みだが、偶には林檎も良かろう(貧困街出身で腹は丈夫な上、突然変異してるので何でも容赦なく貪る猫)
んじゃ行くぞ、野郎ども(ぞろぞろお供の動物達も引き連れむしゃり!)
俺達は野生のモンだからな
そのまま食って食って食いまくるだけだ
ほう、伊織は随分可愛い事をするなぁ?(しかしやはり遠慮なく兎も齧る)
聞き耳や野生の勘で敵との間合いや奇襲の機を掴めば即戦闘態勢
※覇気ぱんちで林檎砕き、早業UCで敵に食らい付き奇襲
弱った奴から確実にがぶりと
飛び出すモンは※で叩き込落とす
おう、林檎は良かったが、不味いモン(敵)まで齧っちまったからな
早いとこ口直しだ!
●
周囲に転がる巨大林檎達は、甘い香りで食欲をそそる。
その瑞々しい果実見つめて、笑み浮かべるのは千家・菊里(隠逸花・f02716)。
「ふふふ、実に腹が――いえ、腕が鳴る戦場で」
食べ放題だなんて最高ですね――そう続けて呟き前のめり気味に歩み進めれば、そのすぐ後ろでは呉羽・伊織(翳・f03578)が可笑しそうに笑っている。
「――ホントお前にゃお誂え向きだな! 今だ嘗てなくその食気が頼もしく見えるワ~ハハハ」
その言葉は、激励かからかいか。背後からかかる声を気にも留めず、菊里は見定めたひとつの林檎に手を伸ばした。もちろん、奥からは幼子の如き声が不気味に響いてくる。
「ではいざ美味しい林檎を、もとい敵の山を平らげに」
言って、鮮やかに切り出す林檎を、そのまま口へと放り込む。巨大林檎に道拓き始めた菊里と、それについていく伊織。それから更に、艶やかな体毛の黒猫がひょっこり。
「林檎も敵も食らい付くしてやりゃいいんだな?」
ならば簡単とばかり、とことこと林檎のトンネルを進む鈴丸・ちょこ(不惑・f24585)は、果実の香りにふんふんと鼻鳴らした。
「俺は肉の方が好みだが、偶には林檎も良かろう。んじゃ行くぞ、野郎ども」
ぞろぞろとお供の動物達を引き連れて、壁へと近付けばそのままむしゃり。
――猫に林檎なんて、と言うなかれ。彼は貧困街出身のハングリー精神の持ち主で、何といってもただの猫ではなく『賢い動物』なのだから。
「おやちょこさんは流石わいるどですねぇ」
「俺達は野生のモンだからな。そのまま食って食って食いまくるだけだ」
言葉交わして、黙々と食べ続ける。そんなちょこに微笑んだ菊里は、素の林檎は堪能したと次の手を繰り出す。それは彼の操るユーベルコードの炎であり、氷属性の霊符であり。焼林檎、シャーベット、すりおろしジュースだって工夫で作り出し、彼は巨大林檎を堪能する。
そんな大食いな一人と一匹を、後方でゆるゆる見守る伊織は。
「ちょこニャンもやる気満々過ぎて、最早俺は奇襲担当だけで良い気がしてきた!」
笑いながらしゃりしゃりと林檎を食べているけれど――妖狐と黒猫の食べっぷりを見れば、正直それだけでお腹はいっぱいになりそうだった。この国の林檎はお腹いっぱいにならないと聞いたけれど、気持ちの問題はまた違うのだから。
それでも、眼前にはひたすら林檎の果肉が立ち塞がる。気分転換に林檎を兎型に切り出せば、ちょこがぴくりと金の瞳向けて。
「ほう、伊織は随分可愛い事をするなぁ?」
言いながら、遠慮なく噛り付いた。見る間にちょこの胃袋へと消えていく、兎型林檎。特に気にしない伊織は、更に兎型を切り出そうとするけれど――その時、猫の鳴き声を彼の耳が拾う。
『Naa……』
反応したのは、皆同時。林檎を堪能しながらも耳と感覚のリソースを索敵にも割いていた、彼らがそれを聞き逃すはずはない。
戦い察知した菊里は、静かに手を合わせご馳走様を。
仲間にアイコンタクトとって、伊織が壁に阻まれた行く先へと近付く。少しだけ林檎を削れば、ここが空洞と繋がっていることがわかる。――そこには、間違いなくオウガ達がいる。
限界まで近付けば、素早く先制攻撃してこその奇襲。伊織はユーベルコードを纏って、自身の能力を増強して。
「――何処までも飄々と」
言葉と共に、繰り出すは研ぎ澄まされた一撃。それは林檎の壁と共に、その向こうにいたはらぺこねこばるーんまでもを貫いて、そのまま骸の海へと還していった。
残りは、二体。突然の奇襲に驚きふわふわ浮いているだけの敵に、ヤドリガミの男は暗器を構えて。
「さて、悪食な上に妙なモン放つあの口はさっさと封じるに限るな!」
言葉と共に、『風切』や『烏羽』を風船猫達の口へと放つ。ダメージ受けて怒り顔のオウガには、警戒して瞬時に距離を置いて。
『Niii……!』
はらぺこねこばるーんが、癇癪の子供のように鳴き声上げる。その口は棘を放とうと大きく開かれる、けれど――。
「――痛い目みても知らねぇぜ?」
渋い声を響かせて、林檎を砕くのはちょこだ。彼は林檎の壁を蹴って上空の風船猫へと飛びついて、容赦なくその牙を突き立てた。
『Cat……!』
オウガの風船のような体が震える。食い込む牙は風船の空気を抜いて――みるみる小さくなったはらぺこねこばるーんは、そのまま静かに消滅した。
残るは、一体だ。勢いのまま倒してしまおうと、菊里は霊符を展開して戦場に雷の力をもたらす。
(「美味しい林檎で英気は万全。名残惜しいですが――」)
想いは胸の内へ、掌の上に生むは狐火。無数のそれを操って、風船猫取り囲んだ菊里はそのふわふわ浮く体を狐火で包み灼いていく。
「霊も最早救えぬならば――せめて一刻も早く敵を屠り、鎮めましょう」
その涼やかな言葉は、祈りにも似て。
『Fire……!』
声上げながらもなお抗うはらぺこねこばるーんに、菊里は炎を強め、伊織は暗器で傷付け、ちょこは牙立てその力を奪っていく。
それは全て、この戦いを終わらせるため。
「さて最後の晩餐ももうお開きだ、失せな!」
「ええ、敵の狂宴は終わらせ――俺達は帰って打上焼肉と致しましょう」
「おう、林檎は良かったが、不味いモン(敵)まで齧っちまったからな。早いとこ口直しだ!」
交わす言葉は、どこまでも明るく。例えば彼ら以外の人間がここにいたら、この国を出てもまだ食べるつもりなのかと驚いただろうけど。
風船猫には、彼らの大食いらしい会話を理解できるはずもなく。鮮やかな連携見せる二人と一匹を前に、力削られた最後のオウガはゆっくりと消滅していったのだった。
●
こうして、猟兵達はそれぞれが巨大林檎を攻略し、はらぺこねこばるーんを見つけ出し、討伐した。
それは確かに戦いだったのだけれど、多くの猟兵の残す感想は、きっとこれに尽きるだろう。
――ああ、おいしかった。ごちそうさまでした!
大成功
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