Anges de la Mer:Rouge
●
一番最初の星がひそやかに輝き、水平線が茜色に染まる。
透きとおる蒼の海が夜の眠りにつくほんの少し前、ひとときの間。白い砂浜によせる穏やかな波が、光の帯となって淡く輝くという。
この砂浜の白砂は宝石でできていると誰かは言う。
波間に群れる小さな海月が命を繋ぐために光ると誰かが言う。
何故光るのかは結局のところ、誰も知らない。知らずとも、真夏の数日だけ訪れるその瞬間を見届けるため砂浜に集う。
誰かが呼んだのは『天使の足跡』。空に憩う天の使いが、地上を数歩歩んだ軌跡。
今年も天使が地上に降りる季節が巡ってきた。
●
「美しいものは、理屈抜きに価値があると思わないか?」
夏のシャツに羽織物、普段に比べたなら軽装のユエ・イブリス(氷晶・f02441)は、薄氷の翅で宙を漂う。水晶にも似た氷のグリモアに冷気を纏わせて、くるりと指先で弄んだ。
グリードオーシャンのとある島に、虹色の波が打ち寄せる浜があるという。
昼間はダイビングで賑わう海も、日が暮れる頃に人々は引き上げる。浜辺にあるリゾートレストランが砂浜にテーブルを出し、席を作るのを待ちかねるように。
キャンドルのささやかな光で昼と夜の境を待つ。その頃には風も穏やかに、爽やかに吹き抜ける。
饗されるのは新鮮な魚介と、南国の果物をベースにした黄昏色のカクテルだ。
海老を香草のオイルに絡めたカルパッチョや、具だくさんのブイヤベースが名物という。小細工などせず、焼いた海老や塩ゆでの蟹をそのまま、豪快に殻を剥いて食べるコースもある。
「スパイスの利いた、辛みの強いソースも人気があるよ」
身の詰まった大型の蟹爪に、香草と香辛料を纏わせたなら、夏らしい刺激的な美味だろう。
島に住む巨人の一族が漁に協力しており、人間の身の丈ほどもある巨大な甲羅を持つ蟹まで揃っている。島らしいおおらかさで、どの種族でも美味を存分に楽しめるだろう。
幻のように光る波打ち際に入ることはできない。島の人々が神事として守ってきている神秘であるからだ。美しい夕暮れの海を眺めながらの食事は、強い陽射しと泳ぎ疲れた体にもきっと癒しとなる。
遠浅の海はどこまでも澄み渡り、昼間はウミガメと泳ぐこともできるらしい。
「知り合いに誘われたが、陽射しの下に出歩く趣味が無くてね」
唇の端を絡げ、興味があるならそちらで、と視線で示す。
水平線に隠れてゆく夕日に、淡く輝く波打ち際を眺めながらのディナータイム。日頃の喧噪から離れて、バカンスを楽しむにはもってこいのロケーションだろう。
一人でも、友人や恋人を誘ってでも。
「君はどうする?」
ユエは目を細め鮮やかに笑ってみせた。
高遠しゅん
高遠です。夏もそろそろ後半戦でしょうか。
バカンスのお誘いにまいりました。
【本シナリオについて】
本多志信MSの『Anges de la Mer:Bleu』と同じ島での一日、夕暮れ時から夜のディナータイムとなっております。
オブリビオンは既に掃討されており、【日常】章のみのシナリオです。戦闘が発生しないため、獲得EXP・WPが少なめとなります。
【できること】
景色を肴に海鮮料理をお楽しみ下さい。メインは海老蟹ホタテ、グリードオーシャンらしく豪快で大雑把な料理を全力で創作します。
料理サイズはフェアリーさんから巨人さんまで。細かいことを気にせず、お任せ下さい。
未成年PCさんにお酒はお出しできません。果物のジュースとなります。
【NPC】
ユエがふわふわしています。お声がけがありましたら、お邪魔するかも知れません。
それでは、楽しいディナーとなりますように。プレイングをお待ちしております。
第1章 日常
『猟兵達の夏休み』
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POW : 海で思いっきり遊ぶ
SPD : 釣りや素潜りを楽しむ
WIZ : 砂浜でセンスを発揮する
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
灰神楽・綾
【梓(f25851)と】
綺麗な夕日と海を間近で眺めながら
美味しい料理を食べる、最高の贅沢だねぇ
黄昏色のカクテルで梓と乾杯
酔っ払いすぎると記憶が無くなるから
美味しいけど飲み過ぎないようにセーブ
料理の味を忘れちゃうなんて勿体ないもんね
沢山の料理があって迷っちゃうけど
まず口にしたのは具沢山ブイヤベース
具はもちろん、魚介の旨味たっぷりのスープも
ぐいぐいと飲み干せちゃう美味しさ
これにご飯やパスタを入れて食べるのもイケてそう
普通にブイヤベースを楽しんだ後は
香辛料を増し増しに(激辛料理好き
うん、この刺激たまらないね
梓から受け取った海老と蟹も食べれば
ああ、このシンプルな素材そのものの味もいいなと
乱獅子・梓
【綾(f02235)と】
見事な黄金色に染まった空と海を眺め
このカクテルも、夕日と同じ色をしているな
と夕日に向かってかざしてみる
綾と乾杯してグビッと飲み干せば
甘酸っぱい爽やかな味が口に広がる
さて、こんな豪勢な料理
俺と綾だけで楽しむのも勿体ないよな
そう言って呼び出すのはドラゴンの焔と零
漫画のように目をキラキラ輝かせる二匹に
さぁいくらでも食っていいぞとGOサイン
食いやすいようにと海老と蟹の殻を剥いてやったら
殻ごと食ってるコイツら…!?
剥いてやったものを綾にも振る舞う
…なんか甲斐甲斐しいオカンみたいになっているな俺
ふと空を見れば
紺色のグラデーションがかかっていて
完全な黄金色の空とはまた違った絶景だな
●楽宴
乾杯とグラスを合わせれば、水平線と同じ夕暮れ色の酒精が揺れる。
島の果物は太陽を宿したようにどれも甘く、黄金色の柑橘できりりと引き締めた後口のよいカクテルは、強い陽射しのあとには丁度良い。
綺麗な海と美味しい料理、甘くてとろける酒。
「最高の贅沢だねぇ」
吐息混じりに、灰神楽・綾(廃戦場の揚羽・f02235)は微笑した。
「ああ、いい味だ」
乱獅子・梓(白き焔は誰が為に・f25851)もまた、ボーイに酒の追加をしながら笑う。
グラスを空けながら、
酒はそれなりに嗜んではいるけれど、卓狭しと並ぶ美味を前にして、酒だけで終わらせてしまうのはあまりに勿体ない。
艶々の海老はオイルを纏ってフォークを誘い、スライスしても分厚い貝柱が甘い香りを漂わせ。鉄の小鍋で香ばしく香るのは様々な魚介のスープ。味付けはきっと海水で採った塩と、島で採れる野菜や香草の類。あとは時間を掛けて煮込めば煮込むほど、素材同士が引き立て合うのだ。
大きめのスプーンで掬ってひとくち、ふたくち。
「ん、おいしい!」
スープに浸っていた海老の殻を剥き、噛みしめたなら濃厚な甘さ。綾は小さな歓声を上げた。カクテルでさっぱりさせた舌に改めて滋味が染みわたる。生きているってすばらしい。付け合わせのパンにスープをたっぷり浸しながら、
「ご飯やパスタでもイケそう」
「次に来る時、持って来てみるか」
植生の違う世界で、似たような食材が手に入るかはわからない。でも夏はまた巡る、機会があればその時に、レストランに相談すれば融通は利くだろうさと梓は言う。
ふと。
お利口さんにおとなしく、二匹の仔竜が梓の足もとで目をきらきらさせて見上げていた。きゅー、がうー、うきうきそわそわ、そろそろ待ちきれない様子。期待に充ちた視線がまっすぐでまぶしい。
空になった器と交換で、ボーイが運んできた大皿を示して梓は目配せしてやる。
「いくらでも食っていいぞ」
GOサインを出すが早いか、二匹は羽根を広げて膝に飛び乗り、大きな蟹にかぶりつく。ばりばりと殻を噛み砕く音が豪快だ。きゅうきゅう、がうがう、勢いは止まらない。
「おい……殻剥いてやるってのに」
「あはは、オカンみたい」
「剥いてやらないぞ」
「えー、剥いてよ蟹。むいてもらった蟹って、自分でむくより美味しいんだから」
シンプルに塩ゆでした大蟹の、太い脚を器用に鋏で割ればつるりと身が脱けてくる。スパイス効かせたソースに、たっぷりつけて綾に渡す。
口いっぱいに広がる蟹の甘さと香辛料の辛さ、喜ぶ綾の向こう側に、虹色の波とグラデーションの空。星が瞬き始めている。
「絶景だな」
梓もまた、賑やかな仔竜を抑えながら、隣の蟹を手に取った。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ザッフィーロ・アドラツィオーネ
宵f02925と
昼沢山泳いだからな
少々腹がすいたと宵と共に浜辺のテーブルへ
お勧めのコースを頼み海の上に広がる星空を見れば思わず感嘆の吐息を一つ
海の中も美しかったが矢張り星空は美しいな
思わず見惚れながらも運ばれてきたカルパッチョにナイフとフォークを手にするも
ふと、ダイビングでみた魚を思い出し動きを止めてしまうやもしれん
…潜った時共に泳いだ魚達ではあるまいな…と
…そうか、美味いか。ならば俺も頂こう
そう軽く頭を振り口に運べば口内に広がる旨味に自然と食が進んでしまうやもしれん
本当に良い一日だった
ああ。又、この島に共に羽を伸ばしに来よう
まあお前とならばどの場所に居たとて素晴らしい一日になるのだろうが、な
逢坂・宵
ザッフィーロ(f06826)と
いやぁ、海の中の世界はまさに海中庭園のようでしたね
かれとともに浜辺のテーブルについたなら
青空……いえ、夜空レストランとも言うべきでしょうか
夜の帳がおりた墨色の空に煌く満天の星を見上げれば
ええ、とても美しい星空です
そうして運ばれてきた料理にいただきますと手を合わせれば
ふと動きを止めた彼に訝しみつついただきましょう
―――うん、さっぱりしていてとても美味です
このソースが絶品ですねと思わず洩れる笑みのままかれに話しかけて
美しい星空、美味しい料理、そして愛おしいきみ
なんとも幸せな時間です
それからふと零れたかれの一言に
そうですね、素晴らしい1日でした
きっとまた来ましょうね
●星宴
どこまでも見渡せそうな、蒼く澄んだ海だった。
鮮やかな青、黄、オレンジ色の小魚が珊瑚の枝を縫うように顔を出す。
光はゆらゆらと水面からさし、気配に見上げたなら一抱えほどもある天使――ウミガメが悠々と羽ばたくように泳いでゆく。触れられそうな近くまで好奇心旺盛に寄ってくるくせに、手を伸ばしてみればひらりと躱してゆく様子が愛らしい。
沖を見たなら澄んだ青の向こう側に、銀の魚の群れが見える。光を弾いて渦を巻くように、絶え間なくかたちを変えて、それそのものがひとつの生き物のようにも見えた。
海は時に激しくあれど、生命と愛で充ちている。神が造ったままの庭園、人の手では作り出せない天の美を海はそのまま抱きつづけている。
ほう、と昼間見た海の光景を思い出しながら、ザッフィーロ・アドラツィオーネ(赦しの指輪・f06826)と逢坂・宵(天廻アストロラーベ・f02925)は天を仰ぐ。
耳に心地良い波の音。空の星たちはひそやかだが、帳が降りきれれば満天の星だろう。ひとすじ刷毛で掃いたような雲が浮くだけで、島の建物の光もささやかだ。
夕暮れの波打ち際、水平線に一条の金色の光、波打ち際の淡い虹色の光。
「矢張り美しいな」
「ええ、とても」
海と空と、その境界にある人の営みが。
テーブルに並ぶ海の幸は、人が海からわけてもらった命を最高の形に仕上げたものだ。海の慈悲に感謝を捧げる。
「……これは」
ザッフィーロのフォークの先に、香草の香りを纏う白身魚がひときれ。ふと、思うことがある。
「さっぱりしていてとても美味です――どうかしましたか?」
宵はまたひときれ、唇に運ぶ。さわやかに香る酸味はこの季節の柑橘か。宵は皿を見て考え込むザッフィーロに問いかける。むずかしいことなど、ないのでは?
「潜った時共に泳いだ魚達ではあるまいな……と」
そうか、美味いか。美味いならば。
異なる世界でも食べる機会はあるが、海で形作られているこの世界の魚は屈指の美味だ。舌の上でとろける脂の甘さに、上品な酸味のソースが彩りを添える。次々、食べ進めてしまうほど。
透きとおるソーダで口直し、次は――顔を上げると、ふと互いに見つめ合ってしまう。
「本当に良い一日だった」
「ええ。なんとも幸せな時間です」
「また、来られるといい」
「ええ。きっと、また」
グラスを合わせたなら、りんと澄んだ音が鳴る。
愛しい人と、また共に。海遊びと美味を、また共に。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ジャック・スペード
【♠🐠】
潮風が少し、冷たく感じる
昼間の陽射しが嘘のようだ
様々な料理の名を双眸で追い掛けて
其れでも、ひとつに絞れずに
友人と同じ『本日のオススメ』をオーダー
黄昏色のカクテルも頼もう
そういえば――
うららは魚料理とか、平気なのか
水中で尾鰭に代わった脚を思い出し
ふと、心配に成る
……それも、そうか
では遠慮なく戴こう
マスクを外して魚介料理に舌鼓
辛いと甘い以外の味は分からないが
あの海から獲れたモノは、オイシイと想える
遺さず綺麗に食べて仕舞いたい
視線を向けた砂浜には
きらきらと煌めく天使の足跡
……ああ、綺麗だな
まるで宝石を敷き詰めているみたいだ
礼を言うのは此方こそ
あんたのお蔭で良い一日に成った
――感謝しよう
泡沫・うらら
【♠🐠】
すっかり日も暮れて
肌打つ風も少しばかり涼しくなりましたね
あれだけ眩しかったんに、同じ場所とは思えん変わり様
新鮮な魚介はどれも美味しそう
メニューをなぞるだけでも楽しめるラインナップに頬緩み
迷った末オーダーは『本日のオススメ』で
魚介を口にするのに抵抗感はありませんよ
そのまま捨て置く方が、ずっと軽視しているでしょう?
この街特有の味付けを堪能しながら
素朴な疑問へは海の常識をお伝えして
――ああ、観て
ただの真っ白な砂浜やったんが、あんなにも輝いて
……とても、きれい
海の中には無い姿
陸やから見られた景色を瞼の裏に焼き付けて
今日はお付き合い頂いてありがとうございました
とても想い出深い一日になりましたよ
●夜宴
昼間の暑さはさらりとした海風に浚われて、細かな砂が足裏に心地良い。
給仕にオーダーを済ませてジャック・スペード(J♠️・f16475)は、ふと、友人の横顔を見遣る。
「あれだけ眩しかったんに、同じ場所とは思えん変わり様」
泡沫・うらら(夢幻トロイカ・f11361)は、珊瑚礁の海に似た色をした瞳を水平線に向けて呟く。
二人で迷い悩み、決めたメニューは『本日のおすすめ』。きっととびきり新鮮な海からの贈り物が運ばれてくる。コースには海老や蟹、貝類だけではなく――。
視線に気づいたうららは、くすりと微笑み、でも確りと応えた。
「抵抗はありませんよ。折角の料理も、捨て置く方が、ずっと軽視しているでしょう?」
尾鰭をももつ彼女のこたえに、ジャックはそれならば、とうなずく。言葉で聞いても、心配ではあるのだけれど。彼女のこたえを信じて、今は美味に興じよう。
白い大皿に橙と白の魚を巻いて、一輪の花が咲きほこる。黄金のオイルに果物のソースは、甘さに深みを添えて舌にとろける。小さなグラスに憩う小海老の身は、柑橘の皮で香りづけられており華やかだ。
大ぶりの蟹の甲羅に、蟹の身が盛られてきた。海塩だけで味付けられた、見た目のボリュームに反して味は繊細で。目にも楽しく食事は進む。
どれも、甘い。甘いものは、オイシイ。
仮面を外し、フォークを次はどれに向けようかと、ジャックが悩む。うららはその度に、さりげなく次の味を説明してみせる。うららが美味しいと言うなら、ジャックもそんな気分を心で味わえる。
しゃわしゃわと音を立て弾ける黄昏のカクテルが、さっぱりと舌を洗い流す。
同じ色をした黄昏が、水平線を彩っている。
「――ああ、観て」
波が寄せて引く、その跡が虹のように浮かび上がる。
昼が夜へと移り変わる夏のひととき、天使が戯れに舞い降りた足跡と呼ばれる波。
砂浜が輝いているのか、波が光っているのか。蛍火にも、あるいは蝋燭の炎のゆらめきにも似ている。
「宝石を敷き詰めているみたいだ」
ジャックが語るのは島の人々の言い伝え。光を放つ宝石を、神様が砂にして敷き詰めたという。
「真っ白な砂浜やったんが……とても、きれい」
うららは目を細め、海と陸の狭間の波を見遣る。
「海の中には無い姿」
陸にいるからこそ、海のほかにも美しい場所があると知ることができた。他にもまだ数えきれぬほどの不思議が、人が解明する理由もない、ただ美しく愛おしい景色は世界に多くある。
「お付き合い頂いて、ありがとうございました」
「礼を言うのは、此方こそ。あんたのお蔭で良い一日に成った」
視線を交わし、どちらともなくまた光を見る。
天使の羽ばたきが聞こえてくるような光景。
ひと夏の、想い出として。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ジャスパー・ジャンブルジョルト
この光景は黄昏時にしか拝めねえのか。何時間だって見ていられるほど美しいのに……。
(と、十秒ほど波打ち際を眺め、すぐに料理に向き直る)
さーて、いっただっきまぁーす!
俺は洗練された都会の男だが、今日はあえてワイルドな料理に挑むぜ。
そう、このどぅえっかい蟹だぁーっ!
(玩具にじゃれつく猫さながらに蟹にむしゃぶりつく)
うまうまうぅ~!
手だけじゃなくて体全体がベタベタになったけど気にしなーい。
食い終わった後は甲羅酒だ。
デカい甲羅を炙って、名酒『ねこだましい』をじゃぶじゃぶ注いで……またもや、うまうまうまぅ~!
ユエも一杯やる?(甲羅の代わりに小エビの殻に酒を入れて渡す)
※煮るな焼くなとご自由に扱ってください
●美宴
「いい景色だぜ……」
夜空のグラデーション、沈みきった太陽はまだ水平線に光を残している。
そして、波打ち際の淡くはじける虹色の光、『天使の足跡』。
ジャスパー・ジャンブルジョルト(JJ・f08532)は吹いてくる海風に、ちょっといい感じに吹かれていた。海はいい。どの世界に行っても、美味いモノがあるからだ。
はい、イケメンタイムここまで。記録は9.28秒、記録更新ならず。
「いっただっきまぁーす!」
くるりと景色に背を向けて、都会的で洗練された男、JJは用意されたテーブルに向きなおった。
特大の銀の大皿に、ひとかかえほどある甲羅の大きな蟹が『わたしをた・べ・て(はーと)』とほっかほかに茹でられて待っていた。魅惑の赤い脚線美がJJをいざなう。
あ。JJさんはケットシー種族のため、UDCアース基準のたらば蟹くらいをご想像下さい。
ばりっとナイフを突き立て、殻を剥けば現れるのは白く上品な肌。ここまでの工程で、両手とイケてる夏のシャツがぺったぺたになったが、まあ、気にしない。
身をもぎ取り、がぶりと口いっぱいに頬張る。
「うううぅぅぅう、うんまい!」
じゅわりと口の中にあふれる蟹のエキス。ふたくちみくち、食べても食べてもまだまだ蟹足はある。
ここでテーブルの端の味変アイテム投入。果物とスパイスと唐辛子のソースだ。
「スパイシーソース! イケるぜぇ~!!」
ここでだいたい全身ソースで真っ赤になったのは、まあ、気にしない。夏だし是非もない。
果物のとろりとした甘みの中から、じわじわとスパイスが利いてくる。これがまた、
「うまうまうぅ~!」
のどを機嫌良くごろごろ鳴らし、ばりっと甲羅を剥がしたらこれもまた、ぎっしりの蟹みそ。用意されている卓上コンロ的な炎に、甲羅をひっくり返して焼く。
焼いた香ばしい蟹ミソに身を絡ませて、これもまた美味。
テーブルの反対側で、小さな溜息が聞こえたような気がするが気のせい。
「ここで取り出すのは、名酒『ねこだましい』! これをなぁ、こう」
甲羅酒。蟹ミソの甘さとすっきりした酒精に、またたびより酔いしれて。
「ユエも一杯やる?」
――身長的サイズ感がなんとなく一緒だったので、相席となっていたユエは。
たっぷり十五秒ほど考えて、手元の酒杯をあけた。小海老の殻に注がれた酒を受けとる。
「何かの縁だ、いただこう」
「うまいぜぇ?」
乾杯、と合わさるのは蟹の甲羅と玻璃のグラス。
夏の夜はこうして、賑やかに更けてゆく。
大成功
🔵🔵🔵