迷宮災厄戦⑯~林檎はもう食べ飽きた
不思議の国が連なるアリスラビリンス。
そこに、牢獄に閉じ込められていたというオブリビオン・フォーミュラ『オウガ・オリジン』が姿を現す。
その強大な力は、アリスラビリンスの消滅を呼び寄せようとしていて。
そこに、猟書家と呼ばれる者達の他世界をも狙う思惑が絡み合って。
猟兵を含めた三つ巴の大戦争……『迷宮災厄戦』が始まっていた。
「向かってもらうのは、巨大な林檎の国だ」
集まった猟兵達へと説明しながら、九瀬・夏梅(白鷺は塵土の穢れを禁ぜず・f06453)は頭を抱えていた。
アリスラビリンスには幾つもの不思議の国があり。
その国1つ1つが、物語の中にしかないような不可思議な世界を作っているのだが。
「林檎ばかりの国、じゃなくて国そのものが林檎でね。
道もないから、そのままじゃ国の中に入ることすらできない」
こんな国まで存在するのかと、夏梅は半ば呆れたように肩を落としていた。
そんな林檎の国の攻略法は、食べる事。
食べて道を作り。食べて家を作り。
虫食い林檎にすることで、ようやく誰かが住める国になるのだという。
愉快な仲間たちが辿り着いていたならば、そうしたトンネルだらけの楽しい林檎の国ができあがっていったのだろうが。
今その国に居るのは、オウガ『墜ちたアリス』たち。
やはり林檎を食べてトンネルを掘り進んでいるらしい。
「オウガが食べ作った道を進めば、すぐに気付かれるからね。
それ以外の道を使うのがいいだろうさ」
提案する夏梅に、なるほど、と頷きが返り。
でもすぐに、疑問が生まれる。
オウガしかいない国で、オウガが作ったものではない道を進む。
ということはつまり。
「頑張って食べとくれ」
状況を察した猟兵達に、夏梅は苦笑を見せながら、ひらりと手を振った。
「あーん。もう林檎ばっかり。食べ飽きたー」
「美味しいには美味しいけど、さすがにねぇ……」
巨大な林檎の国に辿り着いたオウガ『墜ちたアリス』たちは、数人ずつに分かれてトンネルを食べ進めていたけれども。
その進行速度は、みるみる遅くなっていた。
原因は明らかで。
「もう林檎は食べたくないー」
「これだけ同じ味が続けばねぇ……」
削り取った林檎の欠片を放り投げた1人の横で、しゃくっと軽い音を立てたもう1人も苦い表情を見せている。
食べなければ進めないのは分かっているし。
進まなければならないのも分かっているけれども。
「口直しに食べるアリスはー?」
「いないわねぇ」
「えー……それじゃ休憩! ね、お茶会しよ!」
「そうしましょうか」
林檎だらけの現実から逃げるように、堕ちたアリス達は紅茶の準備を始めたのだった。
佐和
こんにちは。サワです。
林檎は加熱して食べたいです。
巨大な1個の林檎でできた国です。
この国には、オウガ『墜ちたアリス』しかいません。
彼女達が食べた部分だけがトンネルのような道になっています。
道は途中で幾つかに分岐しており、それぞれの行き止まりに『墜ちたアリス』が数人ずついて、お茶会を開いている状態です。
尚、当シナリオには特別なプレイングボーナスが設定されています。
それに基づく行動をすると判定が有利になります。
【プレイングボーナス】林檎を食べ進み、奇襲する。
ちなみに、『堕ちたアリス』たちは林檎をそのままでしか食べていないようです。
もう林檎は見たくもないと食べ飽きている様子の彼女達ですが、何かしらの調理を加えた林檎にならば興味を示すかも……?
それでは、美味しい林檎を、どうぞ。
第1章 集団戦
『墜ちたアリス』
|
POW : アリスラビリンス
戦場全体に、【過去のアリス達の「自分の扉」】で出来た迷路を作り出す。迷路はかなりの硬度を持ち、出口はひとつしかない。
SPD : 永遠のお茶会
【アリス達が手づから注いだ紅茶】を給仕している間、戦場にいるアリス達が手づから注いだ紅茶を楽しんでいない対象全ての行動速度を5分の1にする。
WIZ : 地獄の国のアリス
自身の【記憶と身体】を代償に、【自身を喰べたオウガ】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【鋭い爪や牙】で戦う。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
アリソン・リンドベルイ
【WIZ 庭園守護する蜂軍団】
・・・私、あんまり量を食べられる自信はないのですけれど…っ。頑張るしか、ないのかしら。 ユーベルコードで蜂たちを呼び出して、彼らにお腹いっぱいに食べて貰いますね。彼らはハナバチですから、それなりにリンゴの蜜は好き…ですけど、それでもやっぱり限度があるかしら。無理はさせられないし…と、愛鳥のイスカにリンゴを分けて少し食べさせますね。
・・・可能なら、蜂たちには小さいトンネルを掘るように食べて貰おうかしら。私が通る大きさの穴は無理ですけれど…蜂が通れる大きさの穴なら、もしかしたら向こう側に貫通して、蜂たちだけで奇襲をかけられるかも。・・・もう少し、頑張って頂戴…っ!
大きな大きな林檎の国は。
大きな大きな赤い壁が侵入を阻んでいるかのようで。
「……私、あんまり量を食べられる自信はないのですけれど……っ」
背中の翼でふわふわと漂うアリソン・リンドベルイ(貪婪なる植物相・f21599)は、どこかぼんやりとした若草色の瞳で目の前に広がる赤を眺め、ほう、と息を吐いた。
確かに、小柄なアリソンは、見た目からして少食で。
林檎を食べて進め、というのが無茶な要求なのは一目瞭然。
とはいえ、ここで怯んでいるだけでは何も変わらないから。
「頑張るしか、ないのかしら」
困ったような顔の中にも決意を込めて、アリソンは林檎の壁へと挑んでいった。
しゃくっと響く心地良い音。
歯ごたえも程よく、噛めば染み出る瑞々しい甘さ。
確かにとても美味しい林檎なのは間違いないけれども。
1人で食べ切れる量でもないのも確かだから。
赤い壁に描かれるように窪んだ白い円の大きさに、またアリソンは息を吐く。
周囲を飛び回っていた愛鳥のイスカにも、林檎の欠片を差し出せば。
その互い違いの特徴的な嘴が、次々と啄んでいってくれる。
でも、小柄なオラトリオに、掌に乗るほどの小鳥が1羽加わったくらいでは、さして食べる量が変わるはずもないから。
「1羽じゃ、なければ……もっと、もっと……」
大好きなマツの実ではないのに、頑張って啄んでくれるイスカをじっと見ていたアリソンは、ぼんやりと首を傾げるように考えて。
あ、と思い至り、ユーベルコードで彼らを呼び出す。
「お願い、レギオンホーネット」
召喚されたのは蜂の群れ。
しかも、1匹の大きさがイスカと同じくらいの巨大蜂軍団だった。
「お腹いっぱい食べて頂戴」
虫嫌いでなくとも一瞬は怯んでしまいそうな程大きな大きな蜂達は、アリソンの求めに応じて林檎の穴へと殺到する。
大きく鋭い顎を開いて、林檎の果肉を抉るように切り取って。
取り出した欠片を咥えて外に出てくると、次の1匹が入れ替わるように穴へ入る。
穴の外で欠片に齧りついていたその1匹も、食べ終えるとまた交代するように穴へと入っていった。
次々に、代わる代わる、穴を掘り進む蜂軍団。
実は草食性のハナバチの仲間である蜂軍団は、普段食べている花粉や花の蜜ほどではないものの、甘い林檎の果肉にも喜んでいるように見えるけど。
さすがに林檎が大きすぎるからと、アリソンは時折、持ち出された林檎の欠片を受け取って、食べるのを手伝っていく。
イスカも、幼虫に餌を運ぶかのような蜂から林檎を受け取って、少しずつだが食べてくれているようだった。
そうして、穴はどんどん奥へ奥へと伸びていく。
とはいえ、その穴は小さく、巨大蜂が4・5匹も並べば動けない程。
アリソンなどとてもとても通れそうにない。
でも、それでもいいと、アリソンはまた蜂の運んできた林檎を食べて。
(「向こう側に貫通さえすれば……蜂たちだけでも奇襲がかけられれば……!」)
穴がどんどん奥へと伸びていく様子を応援する。
「もう少し。もう少し、頑張って頂戴……っ!」
そして細く長い穴は、アリソンの狙い通り、お茶会を楽しむ堕ちたアリスたちの頭上へと繋がったから。
「お願い、レギオンホーネット」
再びのアリソンの声に、蜂軍団が襲い掛かった。
「えっ!? 何これ蜂!?」
「いやー! 虫嫌いー!」
「ちょっ、こっち来ないでー!」
「やだもう怖い怖いやだあ!」
途端に聞こえてくるアリス達の悲鳴。
そのアリスが発する敵意が、さらに蜂軍団を呼び寄せて。
穴を掘っていた時の大人しい雰囲気から一転、何重にも低い羽音が重なり迫る。
アリソンは、穴を覗き込むようにしてその音を聞き。
じっと待っているうちに、穴の向こうは静かになった。
そして戻ってくる蜂軍団。
イスカと共にアリソンの周囲を飛び回る大きな蜂達を眺めて。
「悪いヒトはお呼びじゃないんだから……っ!」
アリソンは、胡桃色の髪に咲くガーデニアを揺らしながら微笑んだ。
大成功
🔵🔵🔵
シウム・ジョイグルミット
[POW]
よーし、サクサクッと進んでいっちゃおうか!
この国はボクの能力と相性が良いからねぇ♪
堕ちたアリス達の足元を目指すように道を作っていこうかな
『Hungry Dumpty』を召喚して一緒に食べ進めていくよ
適度に空腹になって、ダンプティをどんどんパワーアップ!
味に飽きてきたら、リンゴをお菓子にして味変していこー
味方が近くで大変そうにしてるなら、能力で味変してあげるね
アリス達の所に着いたら、こっそり足元を水飴に変えて動きを封じちゃおう
お茶会で楽しく盛り上がってる最中にゴメンね
お詫びに、皆も美味しいお菓子に変えてあげるから許してね♪
もし迷路作られちゃっても、強化ダンプティで壁齧って抜け出せるかな
「よーし、サクサクッと進んでいっちゃおうか!
この国はボクの能力と相性が良いからねぇ♪」
その言葉を裏付けるように、シウム・ジョイグルミット(風の吹くまま気の向くまま・f20781)の前に巨大な口が召喚される。
シウム自身の2倍はあろうかというそれは、よく見ると、カトラリーやお皿などの食器が集まってできたものだった。
一応、手足らしく見える部分もあり、それで移動もできるようだ。
そして、普段はバラバラに、それぞれの役目をもって働いている食器たちは。
集合して1つの口となり、ただ1つの機能へと特化して動き出す。
「よーしやっちゃえ、みんな食べちゃえ♪」
文字通り大きく開かれた口は、林檎をじゃくじゃくと齧り出した。
さすがに林檎の国は、口よりももっともっと大きかったので、1口で丸のみなんてことにはならなかったけれども。
林檎の中に、シウムが立って歩ける通路を余裕で食べ作りだしていく。
「ボクにも少し頂戴ね」
出来たばかりの道を歩きながら、シウムも壁を削って林檎をしゃくり。
その食感に、その酸味に、その甘味に、舌鼓を打っていく。
しかしシウムは、次々と林檎を食べることはせず。
食べては休み、お腹を空かせ、また食べては休んで、空腹に戻る。
それは、この大きな口を使うことの代償。
むしろ、空腹を繰り返せば繰り返す程パワーアップしていく口のために、シウムはすぐに空腹に戻れる量の林檎をちまちまと食べていた。
「とはいえ、同じ味は確かに飽きるよね」
くすりと笑いながら、再び空腹となったお腹をさすりつつ、食べ進む口を見やると。
伸ばした食器の手が触れた林檎の一部が、クッキーに早変わり。
林檎とは全く違う味に食感に、シウムは満足そうに笑って。
ばりぼりと違う音を立てて、変わらぬ様子で食べ進めていく口を見た。
そして次はキャンディに、続いてチョコレートにと、林檎は様々なお菓子となり。
飽きることなく、シウムはまた食べては空腹を繰り返していく。
「……あ、この辺りだね」
そんな中で、ぴたりと足を止めたシウムは削られた林檎の道の天井を見上げる。
口の動きを一度止め、時計ウサギの垂れ耳をじっと澄ませれば。
微かに聞こえてくるのは女の子の楽し気な声。
シウムが1つ頷くと、食器の手が上へと伸び、林檎に触れて。
途端に天井は水飴へと変化した。
「え? ええ!?」
「なっ、何よこれぇ!?」
ねっとりと滴る水飴と共に、堕ちたアリスたちが落ちてくる。
そう、シウムはアリスたちの足元へと道を作っていたのだ。
シウムにとっての天井は、堕ちたアリスにとっては、床。
「お茶会で楽しく盛り上がってる最中にゴメンね」
にっこり笑いかけるシウムの前で、アリスたちは水飴に動きを捕らわれ。
「ゴメンで済ませるわけないでしょぉ!」
その中でもどうにかアリスラビリンスを作り出した。
自分達とシウムとの間を取って、何とか体勢を立て直そうというところか。
けれども、シウムは笑顔のまま、両手を広げるように差し出して見せると。
「Hungry Dumpty、これも食べちゃえ♪」
汎ゆる存在を咀嚼可能な大きな口が、迷路すらも食べ進む。
そして、食器な口と手足とが、水飴の中の堕ちたアリスたちへと伸ばされて。
「お詫びに、皆も美味しいお菓子に変えてあげるから許してね♪」
また笑って見つめるシウムの前で、口はばりぼりとお菓子を食べていった。
大成功
🔵🔵🔵
パルピ・ペルポル
まぁ食べ飽きるのはとてもよくわかるんだけどね。
まずは折り紙で小さなネズミをいくつもたくさん折って。
ネズミたちと林檎を食べて進みましょ。わたし一人じゃ効率悪いし。
第六感で敵の気配を感じたら気付かれぬようにその周囲に自分用通路作っておいて。
ネズミには敵の足の下に空間作らせて、オウガを呼び出したら底が抜けるようにしておくわ。
で、そっと壁に穴を開けて敵の背後から偶然の不運なる遭遇で攻撃してひっこんで。
敵が混乱したら移動してまた別の場所から穴開けて偶然の不運なる遭遇で攻撃してひっこむ…を何回か繰り返したところでネズミたちに攻撃を命じて。
あとは風糸で動き封じたり穢れを知らぬ薔薇の蕾を投げ込んだりで攻撃ね。
「まぁ、食べ飽きるのはとてもよくわかるんだけどね」
林檎を食べながらも手元を休むことなく動かして、パルピ・ペルポル(見た目詐欺が否定できない・f06499)は独り言のように呟いた。
「いくら美味しい林檎といってもそればっかりだと、ね」
小さなフェアリーのパルピには、さほど大きな道は必要ないけれども。
それでも林檎を食べ続けなければならないことには変わりなく。
しゃきしゃき食感に程よい酸味、広がる甘味を楽しみつつも、予知で聞いた敵の様子に思わず賛同してしまう。
「わたし1人だったらやっぱり飽きてたと思うし」
けれども、パルピの手は、折り紙からネズミを作り上げて。
生み出されたそれが林檎を食べるのを手伝ってくれる。
パルピが作るネズミだから、さほど大きなものではない。
しかし、次から次へと折り出されるネズミは、それこそネズミのように数を増やし。
ざわざわと群れを作り上げて、林檎を齧り食べていった。
数の勝利、といったところか。
「……よしっ」
そうして、パルピは堕ちたアリスたちのすぐそばまで道を作り上げる。
折り紙ネズミに次の指示を出してから、そっと最後の林檎を食べれば、穴の向こうにお茶会の様子が見えた。
さらに林檎を食べて、出入りできるほどの大きさに広げても、小さなパルピの通路は小さいから、アリスたちには気付かれぬまま。
そっと1人の背後に近づいたパルピは、意味ありげな視線を向ける。
「あ」
すると、どこからか現れた赤い何かが超高速でアリスの頭に激突した。
「……ったぁい!」
「何が……って、林檎!?」
そう。それは普通サイズの真っ赤な林檎。
食べ飽きていたアリスたちは、見るのも嫌だというように嫌悪感を表し。
頭を押さえた1人も、実際のダメージ以上にげんなりした様子を見せる。
まごうことなく、偶然の不運なる遭遇。
しかし、堕ちたアリスたちは何とか気を取り直して、襲撃者の姿を探すけれども。
その時にはパルピは元の穴の中に隠れて。
そして、別の場所に開けた穴からアリス達の死角に現れていた。
「あ」
「痛っ!」
「また林檎って痛ぁい!」
折り紙ネズミの群れの半分が作ってくれた、アリスたちのお茶会会場をぐるりと回れる通路を使って、パルピはあっちからこっちから不運を引き寄せる。
乱れ飛ぶ林檎に、姿を捉えられぬパルピに、堕ちたアリスたちは混乱して。
「さあ、総攻撃よ」
そこに、パルピの号令が響き渡ると、折り紙ネズミの群れが突撃した。
「きゃああ! ネズミよ!」
「やだっ、齧らないでよ!」
アリスはネズミを振り払おうとするけれども、ものすごい大群に対処しきれず、林檎の代わりとばかりに次々と齧られていく。
「どうせ食べられるんだったら……っ!」
そしてアリスは、半ばヤケになったかのように、獣のようなオウガを呼び出した。
……堕ちたアリスは、オウガの餌となり、オブリビオンとなったアリス。
その『自分を喰らった』オウガを呼び出し、また自分を喰らわせる代わりにオウガを戦わせるユーベルコードを使ったのだ。
どこかオオカミを思わせるオウガが、その凶悪な口でアリスへ喰らいついたと同時に。
その足元の林檎が、崩れ落ちた。
それは、折り紙ネズミたちの成果。
パルピがアリスたちを引き付けている間、群れの半数が床下へと齧って潜り込み、大きな落とし穴を開けていたのだ。
薄くなった床は、アリスたちの重さを支えるギリギリの厚さだったから。
そこに増えたオウガの重さに耐えきれず、崩落。
オウガも、残ったアリスも皆、足を取られて崩れ落ちる。
そこに、パルピの穢れを知らぬ薔薇の蕾が茨を伸ばし、雨紡ぎの風糸が絡みついて。
幾重にも動きを封じられたところへ、殺到する折り紙ネズミ。
混乱する穴の中を、ふわりと見下ろしたパルピは、ふと気づいたようにまた意味ありげな視線を残ったアリスへ向けた。
「あ」
「もう林檎は嫌あぁぁ!」
大成功
🔵🔵🔵
陽環・柳火
「リンゴなー。シードルで飲んだりするにはいいけど、これ単体はなあ」
などと文句を言いつつもリンゴを食べて掘り進んでゆく。リンゴの味に飽きてきたら『にゃんジュール』をすすって味を紛らわせる。ついでにすすったにゃんジュールから【̪屍塊転焼】でエネルギーを得て焼きリンゴを炎の【属性攻撃】で作って食べ進む
「果実じゃ屍塊転焼のエネルギーにならねえからなあ」
オウガと遭遇したら速攻で終わらせるのに炎の【属性攻撃】【全力魔法】でぶっ叩く。魔力が切れたら【̪屍塊転焼】でにゃんジュールを吸って回復。
「面倒ごと起こされる前に片付けさせてもらうぜ!」
迷宮を作られたら、護符装束の一部を迷宮に貼り付けて迷わないようにする
「リンゴなー」
しゃくしゃく。
「シードルで飲んだりするにはいいけど、これ単体はなあ」
しゃくしゃくしゃく。
「果実じゃ屍塊転焼のエネルギーにもならねえからなあ」
しゃくしゃく。
と、文句を言いながらも順調に、陽環・柳火(突撃爆砕火の玉キャット・f28629)は林檎の道を作り上げて進んでいた。
髪色と同じ黒い猫耳と、二又の黒い猫尻尾という外見からして、林檎よりも魚が好きそうな柳火は、合間にかつお味の携帯食・にゃんジュールを啜りながら林檎を食べる。
同じ味に飽きないように、味を紛らわせる工夫ではあるのだが。
かつお味の林檎ってどうなのだろうとちょっと興味か恐怖が湧くところでは、ある。
しかしまあ、柳火には好評なようで。
単純に、にゃんジュールが好物だからという部分もあるかもしれないけれども。
調子よく道ができていく。
ついでに炎を操れば、出来上がるのは焼き林檎。
しゃくしゃく感を残しつつも柔らかくなったその食感に、甘味を増したその味に、柳火はまた違う林檎の一面を楽しんで。
「美味しいけどリンゴだなー」
やっぱり合間ににゃんジュールを啜っていった。
そうして食べ掘っていった林檎の壁が、唐突にぼこっと軽く取れる。
開いた大きな穴に、金瞳をぱちくりと瞬かせれば。
「え!? 何? 猫?」
「チェシャ猫とは違うみたいだけど……」
「お茶会しに来たとかぁ?」
穴の向こうから柳火を見て、同じように驚いているのは堕ちたアリスたち。
互いに予期せぬ遭遇に、戸惑い顔を見合わせる中で。
先に我に返ったのは柳火だった。
当然だろう。猟兵の襲撃など予想していなかったアリスたちとは違い、柳火はアリスたちを狙って進んでいたのだから。
「面倒ごと起こされる前に片付けさせてもらうぜ!」
速攻とばかりに柳火は、先ほどまで林檎を焼いていた炎を、林檎に向けていたものとは桁違いの威力で、ぶっ叩くかのように全力で放っていく。
あっという間にお茶会会場は炎に包まれたけれども。
「と、とりあえず逃げなきゃ!」
「こっちに来ないでー!」
アリスたちはそれぞれに扉を生み出し、幾つもの扉が並ぶ迷路を作り上げる。
アリスラビリンスは炎を閉じ込め、柳火と堕ちたアリスの間を遮った。
何とかこれで時間を稼ぎ、反撃に出ようとするアリスたち。
けれども。
「エネルギーチャージといこうじゃねえか!」
柳火は慌てることなく、にゃんジュールをまた取り出して。
好物を食べるほどにその全身に魔力が漲っていく。
そしてまた魔力を炎に変えながら、迷路へと突撃した柳火は。
護符装束からばらした霊験あらたかな護符を、その効力に期待してではなくただの目印として、ぺたぺたとアリスラビリンスに張り付けた。
そして、炎を纏うような勢いで燃えあがりながら迷路を抜けると。
「ほい、突破ー」
「うそー!?」
「もうちょっと迷ってて欲しかったぁ!」
燃え盛る火の玉のようになりながら、柳火は全力で堕ちたアリスたちへと突撃した。
大成功
🔵🔵🔵
空葉・千種
アドリブ歓迎
オウガさん!どいて!
丸太を【武器改造】してスコップを作成
掘り当てたオウガを出会い頭に殴り飛ばしつつ、ノンストップで林檎を掘り続けるよ!
その理由は【指定UC】(装備6も参照)で呼び出したミミックさん
この子が林檎を任せられるから自分のお腹を気にしなくていいんだけど…
私後から気づいたの
林檎を掘る手が止まったら、次は私が喰われる番って事に…!
まずい…腕が止まった瞬間私は中で林檎果汁まみれのベタベタにされる事が確定する…!
高速で林檎を掘り、高速でオウガを処理…!
(敵が全滅するまで腕が耐えますように…!)
(全滅した?ならUターン…はミミックさんに塞がれてるから出来ないっ…!あっ、ひゃぁぁ…!)
「はぁ……紅茶、美味しい」
「もう林檎じゃなければ何でも美味しいわぁ……」
のんびりまったりとお茶会を楽しむ堕ちたアリス達。
もう少し、もう少しと現実逃避の時間が長くなっているのから目を反らし。
林檎の洞窟の一番奥で、穏やかな一時を過ごしていた。
そこに。
ぼこっ!
「オウガさん! どいて!」
唐突に、壁に大きな穴を開けて、空葉・千種(新聞購読10社達成の改造人間・f16500)が飛び込んできた。
投げてよし、叩いて良しの丸太を武器改造したスコップで、ざっくざっくと林檎を掘り進んで来たのだけれども。
掘るだけだと林檎の山に埋め尽くされてしまうところ。
それを解消するために、千種は鞄から取り出したミミックさんを利用していた。
ミミックさんとは、宝箱に擬態したモンスター。
アルダワ魔法学園からついてきたものを、野生生物捕獲用に生体改造したものだ。
捕獲用だから消化はできないけれども、相当量を丸呑みにしてくれるので。
これに掘り出した林檎を任せることで、千種は自分のお腹を気にせずに、どんどんさくさく林檎を掘り進むことができていた。
しかし。
進む途中で、はたと千種は気付く。
ミミックさんがよく丸呑みしているのが自分だという事実に。
つまり。
(「林檎を掘る手が止まったら、次は私が喰われる番って事……!」)
気付いてから、恐怖の逃避行が始まっていた。
もはや堕ちたアリスたちを奇襲する、という目的は忘れ去られ。
ただひたすら、ミミックさんに林檎を掘り与えるために千種はスコップを握る。
千種には見えていた。
腕が耐えられなくなった瞬間、ミミックさんに丸呑みにされる自分の姿が。
しかも、今のミミックさんの中には、林檎がたっぷり。
いつもの全身ヌルヌルに、林檎果汁のべたべたが加わることは確実。
となれば。
「私は止まるわけにはいかないの!」
千種は必死でスコップを握った腕を振るい。
驚くアリスたちを可哀想なくらい無造作に瞬殺していく。
1人、また1人と、堕ちたアリスは姿を消して。
(「これで全滅した!?」)
最後の1人も打ち倒せば、あとは林檎を掘りに戻るだけ。
(「ここでUターン……はミミックさんがこっちに!?
それならそっち、はもう林檎が掘られてるから……ぁぁあああ!?」)
だがしかし。
堕ちたアリスを倒すその間に、千種はミミックさんに追い詰められて。
スコップがすぐ届くところに林檎はもう、なかった。
「あっ、ひゃぁぁ……!」
大成功
🔵🔵🔵