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迷宮災厄戦⑲〜そこに虚実皮膜を見出す~

#アリスラビリンス #戦争 #迷宮災厄戦 #猟書家 #サー・ジャバウォック

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●老紳士はそこに居る。
 焼け焦げた森。そこに男は佇んでいた。すらりとしたフォーマルな佇まいに、片眼鏡の装いはそれだけ見ればまさに老紳士といった風情だが、そこに付属した竜の羽、尻尾。さらには手に持った、
「秘密結社スナーク」
 ポツリと、老紳士が呟いたその名を冠する魔書。そしてさらにはもう片方の手にもった剣が、その雰囲気を剣呑なものと変えていた。
 彼こそは、猟書家『サー・ジャバウォック』。ヒーローズアースを侵略せしめんとするオブリビオンだ。
「これは、実在しない秘密結社スナークについて、その退廃的かつ猟奇的な全容を克明に記載した、完全なる虚構の創作物です。本書には一片の真実も無く、それ故に、人は本書から「実経験に基づく明らかな間違い」を見出すことができません」
 だからこそ人は、その存在を否定しきれない。『いるかもしれない』という不安は、いつか誰しもがスナークになれる可能性をもたらし、それはヒーローズアースをかつてのような戦乱の渦に叩き落とす事となろう。
 そうなれば、老紳士の思うが儘。オブリビオン・フォーミュラーを倒し、まがりなりにも平和になった世界を、彼は簒奪するのだろう。
 故にこそ猟兵よ、その企てを防ぐのだ!されどゆめゆめ忘れるなかれ。サー・ジャバウォックのユーベルコードは、必ず君達に先制する。
 侵略蔵書『スナーク』はあり得ざる見えぬ獣スナークを呼びだし、遠距離から攻撃してくる。
 ヴォーパル・ソードは広範囲に見境なき三連撃を可能とする。
 そしてプロジェクト・ジャバウォックは老紳士の姿を変えて力を増す。
 これらの力を使い、君達に襲い掛かってくる。ゆえにその対策を密にせよ。
 さぁ猟兵達よ、戦いの時間だ。


みども
 そう言う感じでボス戦です。よろしくお願いします。老紳士、カッコイイですねぇ。いつもながら、敵は必ず猟兵のユーベルコードに先制してきます。それに対して対処するようなプレイングを頂くとプレイングボーナスが入るのでよろしくお願いします。
 とりあえず日曜日に書き上げたいんで頂いたプレイングでイケそうなのを採用して書き上げる予定。よろしくお願いします。
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第1章 ボス戦 『猟書家『サー・ジャバウォック』』

POW   :    侵略蔵書「秘密結社スナーク」
見えない【架空の怪物スナーク】を放ち、遠距離の対象を攻撃する。遠隔地の物を掴んで動かしたり、精密に操作する事も可能。
SPD   :    ヴォーパル・ソード
【青白き斬竜剣ヴォーパル・ソード】を巨大化し、自身からレベルm半径内の敵全員を攻撃する。敵味方の区別をしないなら3回攻撃できる。
WIZ   :    プロジェクト・ジャバウォック
【人間の『黒き悪意』を纏いし竜人形態】に変身し、武器「【ヴォーパル・ソード】」の威力増強と、【触れた者の五感を奪う黒翼】によるレベル×5km/hの飛翔能力を得る。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

黒川・闇慈
「さて、猟書家の力がどれほどか、拝見するといたしましょうか。クックック」

【行動】
wizで対抗です。
相手の先制攻撃にはブラックシェードとホワイトカーテンの防御魔術を起動し、激痛耐性、オーラ防御、覚悟、呪詛耐性の技能を用いて防御しましょう。
先制攻撃をしのいだら属性攻撃、高速詠唱、全力魔法、範囲攻撃の技能を活用し雷獄襲軍を使用します。
ヴォーパルソードと黒翼を防御した時点で五感は奪われているでしょう。ならば第六感の技能で相手の位置を掴み、包囲攻撃を仕掛けましょうか。

「外から見ただけでは私が第六感を働かせているかなど、わかりませんよねえ?クックック」

【アドリブ歓迎、詠唱フリー】



 初手、老紳士と相対したのは、黒川・闇慈だ。
 《プロジェクト・ジャバウォック》によって強化されたジャヴァウォックが、音を置き去りにして襲い来る。
「……!」
 言葉を放つ暇などなかった。これが来ると分かっていたからこそ、強化されたヴォーパル・ソードを防ぐための防御が展開する。 
 〈ホワイトカーテン〉が展開し、防御術式を構築。その身に纏う〈ブラックシェード〉を翻し、迫り来る斬竜剣への備えとする。
 紫電が奔った。剣と術式がぶつかり合い、拮抗の後、破れたのは術式の方だ。ガラスのような音がして、カードが辺りに散らばる。
 そのまま振りかぶられた斬竜剣はしかし、
「クックックッ……!凌ぎましたよ……!」
 〈ブラックシェード〉の防御術式にオーラ防御で逸らされた。確かに強化された剣は闇慈の腹を掠って血を流させたが、それでも致命傷には程遠い。
「いえ、終わりでございます。最も、この言葉を貴方様がお聞きになる事はないのでしょうが」
「!?」
 気付けば、闇慈の視界は暗黒に閉ざされていた。

 いや、それどころではない。見えなければ聞こえもしない。触れもしないからどこか宙に漂うような感覚しかない。何んの匂いもしないし、それどころか舌の中に感じる焼け焦げた焦燥の味しか感じなくなった。
 まるで魂だけになったかのような感覚。そう、ジャヴァウォックにとって、今の攻撃の本命は斬竜剣で斬りつけることでなく、その五感を奪う黒翼に触れさえる事だったのだ。
 もはや相手はまな板の上の来い。五感なくば体など満足に動かせまい。

 そうして老紳士が闇慈の前まででやってきて、振るった斬竜剣は、
「な!?」
 容易く避けられた。二撃。今度は横凪だ。それもしゃがんで回避。
「な、何故……!」
 動揺して声を上げれば、
「クックックッ……第六感です」
 まったく老紳士が存在しない方向へ、胸を張って闇慈が宣言した。
「……そうでございますか」
 ならば対処は簡単だ。〈侵略蔵書〉によってスナークを呼びだす。いかな第六感とて、二方向から迫られてはたまるまい。第六感で斬竜剣を避けて、逃げた際にスナークを振舞う。スナークは存在があやふやゆえに見えぬのだ。いかな第六感と手容易く察知できるものではない。そのつもりでいると、ぽつり。闇慈が言葉を放った。

「時にジャヴァウォックさん。スナークは、存在しないのですね?」
 聞こえないのだ。答えを待っているものでもあるまい。何も言わず、先ほどと同じ、斬竜剣にて強襲するために構えを取る。第六感だろうか。先ほどと同じように、いつのまにか闇慈の手に再び戻った〈シルバーカーテン〉が術式を展開する。
 いいだろう。それを破ってコートにいなされて浅い傷しかつけれなかったとて、その瞬間には存在を察知できなかったスナークが致命傷を振舞う。
 紳士は、足を踏みしめて、突撃した。
 先ほどと同じようにカーテンが展開し、破られ、それと同時にスナークもジャヴァウォックと別方向より襲い掛かる。

 斬竜剣が迫り来る。第六感はかくも鋭いか。ブラックシェードがその斬撃をいなし、けれど無駄だ。見えぬスナークが迫り来る。
「見えず、まるで存在しないかのような存在。そこに在ってそこにないもの……もしやスナークは、『真理』、なのでは?」
 言葉と共に、ピタリ。スナークの爪が止まった。
「な!?」
「なるほどなるほど。真理ならば、それは私の範囲ですねぇ……『天より至れ雷轟の嚆矢』」
 言葉と共に、スナークの体が雷に変換される。

「何を言うのですが!?スナークは、退廃的かつ猟奇的な存在なのですよ!?」
「ええ、真理は時に、退廃的で猟奇的な存在の中に見出される。汝深淵を見るならば深淵に見られる事を恐れよ。クックックッ……真理は時に人を傷つけ、狂気に堕とすものです。『一切全てを襲い撃て』」
 まるでジャヴァウォックの言葉が聞こえているかのように言葉が帰ってくる。真実はなく、虚構の存在であるからこそ、『何もかもがスナークとなりうる』という性質を逆手に取ったそれ。
 スナークはもはや、闇慈の力となり、雷の矢となってジャバウォックを襲い掛かろうとしていた。
「馬鹿でございますか!?」
「ええ、ええ。魔術馬鹿ですとも。クックックッ……《雷獄襲軍/ケラウノス・ブリッツ》」
 そうして放たれた雷の矢は、完全にジャバウォックの想像の外。何とかよけようにももはや遅い。過たず、その体を貫いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アルベール・ユヌモンド
セリア(f08407)と

チッ、面倒くさそうなガワしてやがる
まだドラゴンと力比べの方が……なんてな
弱気なことも言ったが心配はいらねぇよ、セリア
俺がアイツをぶっ倒す
お前は俺の背中を押してくれ
ああ、あと素敵な応援があれば百人力だな

敵の脅威を認めつつ、セリアに半分冗談でリラックスするように笑いかけ

UCはまず防御力を選択
怪物にはあえて無防備にした右手をくれてやる
右手一本――と思わせて悪いが今回の俺はシスター様の聖霊加護付きなんでね
攻撃力を選択して怪物を殴り倒す

さてそろそろ年貢の納め時だ
今なら最後を美人のシスターに看取ってもらえるんだ
どうせ滅びるなら滅び時だと思うがね?

不敵に笑い間合いを詰めて殴り倒す!


セリア・エーデルワイス
アルベールさん(f05654)と

なんて強大な力…人一人が抱えるには大きすぎるくらいです
とても私達だけで太刀打ちできる相手でしょうか
…そうですね。ならせめて私は貴方の傍で、戦いのお手伝いをさせてください
貴方の背中を信じて、私は応援いたしましょう

UCで守護天使を召喚して私とアルベールさんの周りに展開します
アルベールさんが前に出ている以上、攻撃は全て請け負ってくれている…ならばオーラ防御でアルベールさんの守りを支援いたしましょう

貴方の作る物語も、言葉も、人々を苦しめるもの
私達はそれに打ち負けるつもりはありません

も、もう!恥ずかしいからそういうのはいいです!
…でも、立派なご活躍でしたよ、ヒーローさん



 吹き飛ばされ、ゴロゴロゴロゴロと老紳士が転がる。そこに言葉なく、影が襲い掛かり光輝の剣が振るわれて、
「ハハハ、最近の若い子はどうやら手癖が悪いようですね」
 〈斬竜剣ヴォーパル・ソード〉がそれを迎え撃った。青白い刃と光刃が真っ向からぶつかりあう。
「おいおい、マジかよ」
「その通り。マジ、でございます」
 状況は、黒い影の方が有利だった筈なのだ。振り下ろされた刃。それを地面に寝転がり受け止める形の老紳士、猟書家、サー・ジャバウォック。
 その状態でありながら、竜人形態となった紳士は、振り下ろされた刃を押し返し、立ち上がるのだ。

「ッ、面倒くさそうなガワしてやがる」
 立ち上がり、拮抗し、それどころか押し返されそうになる。その状況に、アルベール・ユヌモンドの額に、僅かに汗が流れた。
 黒き鱗の龍すら止めたこの身なのだ。吹き飛ばされる事はありはしないとはいえ、まさか力比べで劣勢に立たされるとは。
「まだドラゴンの方が……」
 思わず弱音がこぼれるも、
「アルベールさん……」
 その言葉に、僅かに後ろに眼をやって、アルベールはニヤリと笑った。
 そこには、セリア・エーデルワイスが、アルベールの勝利を信じて祈る純白の少女が居るのだ。その期待に、背くわけにはいかない。
 
「弱気なことも言ったが心配はいらねぇよ、セリア」
 アルベールが、声をかける。
「そう……ですよね」
 本当に人一人が抱えられる力なのだろうか?ここからでも感じられる竜人紳士の力に、少女は確かに気圧されていた。当然だ。今までも猟兵として戦いに参加して、数々の敵と戦ってきたことは事実だが、戦争において、所謂ネームドと交戦するのは、これが初めてなのだ。
 その力の圧だけでも、この場に立つ資格を持つというだけのシスターには、きっと荷が重い。

(それでも……)
 彼女は此処に居る。人々を苦しめるものに打ち負ける訳にはいかないと、震える手を握りしめ、そこに居るのだ。
 ならば、アルベールもまたふるわすにはいられない。
 押し付けられ、劣勢になっていた鍔迫り合いを互角に返す。その様を見て、竜人紳士は顔をほころばせた。
「若さですなぁ」
「今からその余裕ぶった顔に拳叩き込んでやるからな?」
 獰猛に笑い、後ろに控えるシスターへと声をかける。
「そういう訳だ。俺がコイツをぶっ倒す」
 雷の矢を喰らってもまだまだ余裕ぶっこいたその上っ面にキツイのをくれてやる。

「お前は俺の背中を押してくれ」
 声に含まれた自信が、『お前の声援なら百人力だ』と告げていた。
「……はいっ!アルベールさんが望むなら!」
 セリア・エーデルワイスは、自身が望んで攻撃するようなユーベルコードについては、ほとんど持ち合わせがない。大体が、他者を癒したり、応援して力を増したりするものだ。
 それはつまり、己の守りを捨てるに等しく、今回もただ前に出て、総ての攻撃を受け持つといったアルベールを信じて、ただひたすらにその身を護る事に徹する。
 それも一つの戦い方だ。
 少女の祈りに合わせて、《天使達から祝福を/エンジェルズ・ラブソング》が発動する。
『貴方にどうか、天使の祝福があらんことを―――』

 言葉と共に、本来であればセリアを守護していた守護天使たちの加護が、アルベールに付与される。黒き男は、その光を浴びて、
「さぁて、これで百人力だ」
 一気に鍔迫り合いの状況から一気に押し返した。
「なるほど」
 思わずジャバウォックが後ずさり、そこにアルベールが追撃する。
「微笑ましいものですな」
「そうかよ!」
 一撃一撃が先ほどに比べて重い。光刃が振るわれ、それをどうにか斬竜剣がいなしている。遠からず、ジャバウォックは致命的な一太刀を貰うだろう。

 そのような状況でなお、紳士の顔は涼しく。淡々と事実を述べる。
「貴方様の力の源泉はつまり、その後ろにいらっしゃるお嬢様でしょう?」
 チラ、とその瞳がアルベールではなく、セリアを捉える。そんなことは露知らず、一心不乱に祈ってる少女がそこにいた。
「だから、なんだよ!」
 言葉と共に振るわれた〈フォースセイバー〉を受け流し、
「なに」
 老紳士の片手には斬竜剣。そしてもう一方の手には、
「それが穢された時、貴方様がどれだけ弱体化なさるかというのは、私も気になるところでして」
「ッ……!」
 
 《侵略蔵書「秘密結社スナーク」》が発動する。不可視、不可聴の獣、『スナーク』が召喚され、セリアへと襲い掛かっていった。
「貴方様は流石に魔術の深奥を見ているとは言いますまい。さて、哀れなる乙女へと襲い掛かる悲劇を、貴方様はどのようにして止めますかな?」
「……ッ!」
 すぐさま、アルベールがその身を翻す。森羅万象の力を取り込む操気術、〈森羅流転〉応用で、眼に見えぬ、音すら聞こえぬその獣を確りと捉えて、
「おらぁ!!!」
 その獣の口に、腕を叩き込んだ。
「アルベールさん!」
 右腕が見えぬ獣の咥内に入り込んでいる。ミシミシと、セリアの付与した防御の加護が音を立てて撓み、今にもはじけ飛びそうだ。そうなったなら、アルベールの右腕は一貫の終わりだろう。
 それでもなお、男は笑って見せる。

「美人のシスターが見ていてくれるんだ。負けはしないさ。安心しな」
「も、もう!恥ずかしいからそういうのはいいです!」
 思わず戦場であることを忘れたかのように、セリアが顔を真っ赤にして声を上げる。
「ハハハ、仲睦まじいのは良いですが、なるほど美人のシスター。であるなら、その顔が信じる者の血に染まるのならば、より美しいでしょうね」
 スナークは依然としてアルベールの腕をかみ砕かんとしている。つまりはその場にくぎ付けになっており、
「スナークに噛みつかれた状態で、果たして私と戦えますかな!?」
 それは、ジャバウォックにとっての確信だった。この状態では、戦えまい。
 斬竜剣を振り下ろし、
「なっ!?」

 パンッ!と乾いた音が響く。見れば、アルベールがジャバウォックが振り下ろそうとしていた腕を、握りしめていた。
「な、に!?」
「どうかしたかよ?」
「貴方様は、先ほどまで、私と全力を以て拮抗していた筈。何故!?」
「ああ、そうか。それは、悪かったな」
 白き祝福の光に、翠の光がさらにかぶさった。今までミシミシと軋みを上げていた、防御の加護が一気に力を増して、そのまま。
「UC、使ってなかった」
 右の拳で見えぬスナークを殴り飛ばた。
「なんと!ですがしかし、それはあくまで力で優ったというだけの事。いやはや、ユーベルコードでもないのに恐ろしい事です。しかし、如何に力で優ろうとも!」
 
 《プロジェクト・ジャバウォック》は発動したまま。〈フォースセイバー〉の光刃はなく、殴りつけようとアルベールの左の拳が繰り出される。
 セリアの加護と、《三釈集翠/タシカナイノリ》を纏った拳はしかし、素早く飛び退ったジャバウォック本人に当たらず、ただその黒翼を掠めるのみ。
 それは即ち、
「五感を、奪われましたね!?」
 そうなれば、もはや俎板の上の鯉だ。そのうえで、狙うはセリアだ。先ほどのように第六感を使っての回避をされてはたまらない。
 だからまずは与しやすい方に。祈る少女が息絶えて、その身に纏う加護の一つも消えようものなら、五感を失った上で第六感で対応出来ようとも、明確な隙が出来る筈。

「さぁ、お嬢様、まずはその命を頂きましょうか!」
 黒翼を掠らせて、アルベールの瞳が焦点を失い、立ち尽くしたのを確認してから、ジャバウォックはセリアを目指す。万が一にもアルベールが攻撃してこぬよう、大きく迂回して。
 そして竜人紳士は、青年の横を通り、決意に満ちた目でこちらを睨む少女に紳士然とした笑みを浮かべながら突っ込もうとして、
「まてよ」
「何故!?」
 焦点の見えない瞳をジャバウォックに向け、その襟を掴むアルベールに驚愕した。
「私は確かに通り過ぎた筈!貴方様はまだ何も見えておらず、ましてや感じる事など出来ぬのに何故……!」
「その通りです」
 疑問に、毅然とした言葉を返したのは、セリアだった。

「確かにアルベールさんは今、五感を感じる事は出来ません。だから、その代わりに、私は目となり耳となるのです!」
 天使の加護は、健在である。その言葉だけは聞き取れるのだろう。アルベールは笑い。
「その加護、ここまでとは!……スナーク!」
「やっちゃってください、アルベールさん!」
 少女と紳士の言葉は同時だった。青年は、紳士の言葉は聞こえない。けれど少女の言葉は確かに聞こえて、
「任せろ」
 天使の加護と精霊の助けを得た拳が、確かにジャバウォック頬にぶち当たり、吹っ飛ばしていった。
 UCの呪縛が解かれて、戻って来た視界の中、アルベールが拳を握り、開いて感触を確かめる。
 スナークを召喚を阻止してセリアが傷付く事がないのを優先したせいだろうか。 僅かに浅かった。
 けれどまぁ、大丈夫だろう。他の仲間達もいるし、何よりも、
「立派な、ご活躍でしたよ。ヒーローさん」
 そう言ってほほ笑む少女の綺麗な顔以上に、価値あるものなどありはしないのだから。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

清川・シャル
強い敵と戦ってみたいって思っちゃうじゃないですか、だって羅刹だもの、血だもの
ちょっとだけやりあいません?(尚全力で)
オーラ防御を纏い、全力魔法で多重障壁を展開、激痛耐性で耐えてみます
障壁頼りも何なので第六感と見切りと武器受けも使いましょう
避けつつぐーちゃん零のトリガーを引いて念動力で確実に当てていきます
弾撃ちきったらそーちゃんを片手にUC起動です、呪詛を帯びたなぎ払い攻撃
櫻鬼の仕込み刃で傷口をえぐる攻撃も加えて連撃を行います
立て続けの攻撃、羅刹な上に現役JCはタフですからね、子供の体力なめんなよです!
アドリブ詠唱フリー


薄荷・千夜子
共闘アドリブ歓迎
詠唱お任せ

強敵ですが、逃すわけにはいきませんね…!

結界術とオーラ防御で自身の強化
地形を利用し、敵の攻撃に合わせて爆破し焼けた木々をジャバウォック目掛け吹き飛ばす
爆炎と『花奏絵巻』で放つ花嵐の迷彩で自身を隠しつ爆風を追い風に回避
ダメージを受けても激痛耐性で堪えて動きは止めず
それを繰り返しながら風に乗せ花嵐に紛れて放つは【毒蝕蛇花】
私では、貴方のように全てをなぎ払うような力は振るえないでしょう
ですから、この力が巡り巡って貴方の力を奪えればよいのです
『燎花炎刀』扇から毒を仕込んだ刀を抜き一刺し
私には私にできることを
この力が誰かの援護に繋がるように


神元・眞白
【POW/割と自由に】
こんにちわ、竜のおじ様。場所が場所ですがどうでしょうか、お茶会でも。
まずは落ち着いてから……そうですか、時間もないことでしょう。
相容れない立ち位置ですが、分かり合えないのは悲しいことですね。

必ず先んじてくるのと、見えない攻撃。それなら待ち受けましょう。
符を目立たないように設置したらあとは受けの姿勢に。
符雨、私への攻撃がきたら煙幕弾を。量は視界を一旦効かなくなる程度。
後々にも使うことになるから数は準備しておいて。

新しい私と入れ替わったら一先ず私は陰に隠れましょうか。
あとは新しい私達がなんとかしてくれるでしょう。
気づかれるまでゆっくり戦力を増やして、あとは流れのままに。



「ぬっ……ぐぅ……!」
 殴られた衝撃で老紳士が転がる。焼け焦げた森の地面を掠り、どうにか態勢を整え、己の受けたダメージをサー・ジャバウォックは冷静に分析する。
「フム……」
 竜人と化したその頬に刺さった拳は確かに鋭く。いまだ僅かに視界が揺れる。さらには数多突き刺さった非実体の雷の矢は、体のそこかしこに確かなダメージを与えていた。僅かな体の痺れ。
 とはいえ、である。吹き飛ばされたのが幸いした。どちらのダメージも軽いとは言えぬが、時間を置けば回復できる。
 ならば今は身を隠すが吉。ともかくこの場から逃げよう。そう決意して、
「こんにちは、竜のおじ様」
 静かな少女の声がした。

「スナーク!!」
 返礼は、ユーベルコードだった。《侵略蔵書「秘密結社スナーク」》により召喚された不可視の怪物、スナークが声のした方へと襲い掛かる。ざくり、と何かを斬り裂いた音がした。
「……悲しい事ですね。分かり合えないのは」
 今しがた聞こえて来たのと同じ声が、別の場所から聞こえてくる。
「ハハハ。そもそも分かり合うなどありますまい。私達は世界を侵略せしめんとし、貴方様方はそれを防ごうとしているのですから」
「それでも、まずはお茶会でも、と思いましたが……」
 結局はそれは叶わぬ事なのだ。スッと燃え盛る木の影から出てくるのは、神元・眞白だ。
 
「そうですか。貴方様は、敵とすらわかりあいたいという事ですか?知ってどうするのです?」
 再び魔本を構えて竜人紳士が問う。その言葉に、眞白はただ静かに首を振った。
「ただ、悲しいと思ったので」
「なるほど愚か!ならばその代償を払ってもらいましょう!スナーク!」
 言葉と共に、再び不可視の獣が召喚され、眞白に襲い掛かる。
「符雨」
 相手がこちらの言葉を聞き入れない。悲しい事だが分かり切っていた事でもある。だからこそ、眞白もまた対処を考えていた。己の傍らに存在する第二世代戦術器に声をかける。
「あいよ!お嬢!」
 威勢の良い声とともに焚かれるのは煙幕だ。己の身を隠し、さらには煙幕によって襲いかかるスナークの動きも鮮明となるだろう。そうすれば如何に姿が見えず共、動きは分かる。
 ゆえに煙幕を突き破ってくる不可視の獣の姿は鮮明で、

「ああ、一つ言い忘れていました。別に一々叫ばなくともスナークは喚べるのです」
「ッ!?」
 それを避ける為に一歩後ろに下がろうとした眞白の脚が、そこに釘付けになった。足首を何かが握る感触。煙幕よりも先に、もう一匹の〈スナーク〉が、見えずとも眞白の脚を掴んでいたのだ。
「さらには一匹のみしか喚べないとも言ってはおりませぬ。一匹でその場に抑え込んでしまえば先ほどの手品は使えますまい。さぁ、死んでくださいませ」
 何かが引き裂かれ、倒れる音がした。
「さぁこれであとは人形のみ。いかな煙幕に隠れようと、最強の私を相手に操り主の存在しない人形が耐えられましょうか」

「「「本当に、酷い人」」」」
「な!?」
 予想と違い、煙幕から響いてくるのは先ほどの少女の声。しかもそれが重なって聞こえてくるのだ。
 そのまま、煙幕がジャバウォックを覆い尽くす。煙幕の中で蠢く影は、複数。そのどれもが眞白と同じ背格好で、それぞれがめいめい勝手に、ジャバウォックへと襲い掛かってくるのだ。
「ッスナーク!」
 不可視の獣の複数同時召喚。眞白と同じ姿をした『何か達』とスナークの群が煙幕の中で衝突する。
 そしてその様を、

「大丈夫かお嬢?」
「ええ、なんとか」
 煙幕の外から、袈裟懸けに傷付けられた傷を負ったまま、煙幕から離脱した符雨に支えられて眞白が見つめていた。
 《交わる世界線/クロス・ライン》は平行世界の己を召喚するユーベルこーである。しかしその代償として瀕死になる必要がある。最初の一撃は甘んじて受け、ユーベルコードを発動して隠れる。そこからジャバウォックと話していたのは平行世界の自分だった。
 煙幕も、何よりスナークの動きを見やすくするため、というより『己の本体』から注意を逸らすため。それは効を奏し、ジャバウォックとスナークの群はは眞白の軍勢と戦っている。完全にこの場に釘付けだ。けれどそれだけでは拮抗状態を作り出したのみ。
 前提として眞白の本体が瀕死である以上、このままでは負けてしまう。
 だから、

「ちょっとだけ!もうちょっとだけ出来るんですね!」
 楽し気な少女の声と、
「いくら羅刹の血がたぎるからと言って、もっと楽しみたいからと逃がすわけにはいきませんよ!?」
 それを窘めるような大人びた少女の声がして、赤い影と緑の影が、煙幕の中に入って行った。


「いいですね!こういうの、滾っちゃいます!」
 強い敵と戦いたいと思うのは本能だ。だって羅刹だもの。血だもの。常に符雨から供給される煙幕の中、それを割くように戦う平行世界の眞白とスナークの様を見て、春川・シャルは目を輝かせた。
 先ほど竜人紳士と戦った時とはまるで違う。あの時は自分ひとりであり、不可視の獣を見えるようにするには、自分の血が必要だった。その代わりを煙幕が果たしており、なにより乱戦だ。つまりは、こちらかが奇襲できる。そのための、眞白の煙幕とユーベルコードによる乱戦なのだ。
 だからこそ、  
「いきますよ!薄荷さん!」
 スナークの発生源、おそらくサー・ジャバウォックが居ると思われるそこへ、シャルは容赦なく〈ぐーちゃん零〉のグレネードを打ち込んだ。

「む?」
 『それ』が目の前に来た時、サー・ジャバウォックの反応が遅れたのは無理からぬことであろう。放射線状を描いて飛んできたそれが、ジャバウォックよりそれなりに手前で落ちてゆく。今まで超常の力と相対していた彼が、近代兵器のガワを被ったそれに対してすぐに反応出来ないのも無理からぬこと。
 いやむしろ、
「まさか!?」
 爆発する前に防御態勢を取れたことそのものが強者である証と言っていい。爆炎と閃光が広がり、広げた翼が焦げ付く。周りに存在したスナークと『眞白』を巻き込んだそれは、確かにジャバウォックを傷つけた。しかし、
「煙幕が晴れれば、不可視の獣を操るこちらの方が有利ですが……なんと!?」
「〈花奏絵巻〉」
 薄荷・千夜子が巻物より呼びだした花々の嵐がグレネードの爆炎にまかれて辺り一面に広がる。
 色とりどりの花々の渦は、シャルと千夜子の纏う鮮やかな色を紛れさせ、むしろ煙幕よりも高い迷彩効果を発揮していた。

「ならば二択を迫りましょうか!」
 たしかに花の渦はシャルと千夜子を覆い隠した。しかし、煙幕が晴れた以上は、瀕死の眞白が露わになるという事で、
「行きなさい!スナーク!」
 召喚されたそれが、花の嵐を突っ切って眞白へと向かってゆく。新手が来たのなら、その者達が仲間を助けるように仕向ければいい。しかしそれは、
「お見通しです!」 
 〈ぐーちゃん零〉が火を吹いた。スナークの弱点は既に『知っている』。念動力によって放たれた弾が曲がり、その弱点を打ち抜き、不可視の獣は倒れた。

 けれど、
「一匹だけとお思いですか?」
「その前に着きました!」
 スナークをさらに複数召喚しようと集中したジャバウォックの眼前に、花の嵐から〈燎花炎刀〉が突き出された。
「なるほど、見えずらいとはかくも恐ろしい、と」
 〈侵略蔵書「秘密結社スナーク」〉を懐にしまい、悠々と千夜子の攻撃を避けたジャバウォックは、そのまま返す刀で、
「恐ろしいからこそ、総て薙ぎ払ってしまえばいいわけですね?」
 〈斬竜剣ヴォーパル・ソード〉を繰り出した。
「ッ……!」 
 背筋が凍り、首周りがひやりとする感覚。だからこそ千夜子はその斬撃を避ける事が出来る。
 花の嵐の中に大きく後ずさって、千夜子がヴォーパル・ソードを見れば、刀身が青白く光っている。ユーベルコード、《ヴォーパル・ソード》が発動したのだ。

 己が見境なき範囲攻撃のただ中に居る事実に険しい表情を浮かべながらも、千夜子は己のなすことを成す為に、今一度〈燎花炎刀〉を扇に収めた。

―――旅路に至る貴方へと、花を沢山添えましょう。笑いかけてくれない代わりに、私が笑いかけてあげるの。

 一撃目。周りにいたスナークや『眞白』を斬り飛ばしながら薄荷へと迫り来る刃の前へと現れたのは、シャルだ。
 両手でしっかりと〈そーちゃん〉を持ち、両足でしっかりと大地を踏みしめて、歯を食いしばり、尋常ならざる膂力で振られた刃を受け止める。
 どう考えたって苦しい筈なのに、その顔には笑みが浮かんでいた。
「お嬢さん、何か楽しい事でも?」
 実体無き雷の矢で射られ、殴り飛ばされ、爆発を至近距離で受けてなお、この力。それが、どうしようもなくシャルには嬉しい。だって、
「さっきは……!打ち合ってくれなかったから」
「それはそれは、失礼しました。お嬢様。ですがきっとその『私』は恐れたのでしょう」
「私のせいで、その可愛らしい顔に傷がつくことを」
 
 羅刹の血を引くシャルと、竜人紳士の力比べは、徐々に竜人紳士の方が勝っていた。シャルとて弱い訳ではない。ただ、純然たる事実として、『見境なき攻撃なら3連撃が可能』というユーベルコードの後押しが、この鍔迫り合いを有利なものとしていた。
 そしてその力の均衡が一気にジャバウォックへと傾く一瞬前、
「ああああ!」
 シャルが、〈そーちゃん〉のチェーンソーモードを駆使。棘で相手の刀身絡めて、一気に弾き飛ばした。
 そうすれば相手の胴はがら空きになって、
「今だ!」
 体から熱気を噴き上げながら、羅刹の脚が一歩踏み込もうとして、
「まだです!」
 ユーベルコードの力はなおも続いていた。

―――天蓋花の赤色が、貴方を鮮やかに魅せてくれる。だからこんなに私も笑える。さぁ、花にまかれて還りなさい。花に侵され旅立ちなさい。

 ニ撃目、がら空きだったはずの胴を守るように、物理を超越したスピードで、ヴォーパルソードを握った腕が内側に振るわれる。それは丁度がら空きの胴を殴り倒そうと一歩前に出たシャルにとっては死角の位置から振るわれたがゆえに、対応は出来ず、
「キャア!?」
 可愛らしい悲鳴。無理やり千夜子がシャルを引き倒した。そしてそのまま、〈燎花炎刀〉をヴォ―パル・ソードに合わせる。
「くぅ……!」
「薄荷さん!?」
 火花が散って、それでもどうにか千夜子はヴォーパルソードを逸らした。僅かに炎刀の切っ先がジャバウォックのヴォーパル・ソードを握る手を掠る。
 そして、それだけだ。逸らした程度で、竜人紳士の剣は止まらない。そのまま剣の腹を抑えつけるようにして、千夜子を地面にたたきつけた。
「おまえええええ!!!!」
 助けられたからだろう。
 シャルが、叫び声を上げて、起き上がり、〈そーちゃん〉を叩きつけようと振りかぶる。

「先ほどの焼き直しをご所望とは、いただけませんね」
 たしかに事実であった。剣を叩きつけた姿勢から振るわれるジャヴァウォックの剣は、ユーベルコードの加護を受けている。無理な態勢からでも、シャルの一撃を迎え撃つだろう。
 しかも今回は先ほどのようなチェーンソーモードを利用した受け流しを相手も警戒してくるだろう。同じ手は使えない。
「だったらあああああ!!!!」
 《宵闇/トコヨノヤミ》が発動して、シャルの脚がより力を増した。ユーベルコードにはユーベルコードで。真っ向からの打ち合い。
 再び刃とバットが、噛みあって……

―――葬送の花の嵐は、私の思いを包み込む。貴方を噛んだ毒蛇が、どこから来たのか知らないなら、きっと二人は永遠で。知らずに侵され眠りなさい。

 三撃目は……

   《操花術式:毒蝕蛇花/ソウカジュツシキ・ドクショクジャカ》、発動。

「ぬぅぅぅ!?」
 竜人紳士の傷が開き血が流れ、痺れと幻覚が体を襲い、ユーベルコードが解除された。無理やり振るった刃から力が失わる。それでもなお人外の膂力で振るわれ振るわれる斬竜剣には恐ろしい威力が宿っていたが、
「りゃあああああああ!!!!!」
「うおおおおおお!?!?!?!?」
 こうなってはシャルの方が恐ろしい威力だ。かみ合った刃と金棒は、鍔迫り合いすら許さず、金棒の方が剣を弾き飛ばした。
 そしてそのまま金棒がジャストミート、刺さった棘が肉を抉り、
「がはぁぁぁぁああああ!!!!!!」
 血の尾を引きながら、竜神紳士を遠くまで吹き飛ばしていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

故無・屍
何を企んでいようと関係ねェ、
仕事を受けたからここで斬る、それだけだ。

敵の先制に対しては継戦能力、覚悟、第六感、野生の勘にて
致命傷を避けつつ受ける。

見えない、存在しない架空の怪物か。
確かに強力だ。
だが…、今こいつは確かに俺に食らいついて傷を刻んだ。
「痛み」ってのはな、それが現実だってことを決定付ける要素の一つだ。

手前ェのその剣、竜人としての本性と同じように、
こいつは今、ここに『在る』。

――なら、俺が『斬れる』対象だ。


UCを発動、スナークを斬り捨て
上記技能の他、怪力、2回攻撃などの戦闘技能を駆使して
戦闘展開。

可能であれば、最後に蔵書そのものも
破壊する。

…こんな代物をわざわざ残す選択は無ェな。


バーン・マーディ
詠唱含めたアドリブ歓迎

……我はヴィラン
ヒーローズアースに在りし悪である

対POW
…「認めよう」
その存在を
神も悪魔もいるこの世界で貴様のような怪物はいくらでも在るだろう
故に…「我が拳と刃は届く」
【オーラ防御】展開
通常よりも広めに展開し攻撃を捕捉
【武器受け】で致命を避け【カウンター・吸血・生命力吸収】!

UC発動

我が名はバーン・マーディ
ヒーローズアースを乱す悪である

そして我がいる限り
対神組織「デュランダル」はその名の如く不滅である

我に膝をつくか
牙を剥き刃を向け散るか…選べ

…そうか
ならば此処にて秘密結社スナークの黄昏とならん

【怪力・二回攻撃】により接近し怒涛の猛攻

倒れるその時まで魔剣と車輪剣を振るい続け



 男の見ずぼらしさは隠しようがなかった。吹き飛ばされたうえで、先ほどのように受け身を取る事も出来ない。
 ふらりと立ち上がって、血まみれの体を引きずるように歩く。
 体の至る所から血を流し、オールバックにした髪は乱れ、片眼鏡も割れていた。
「これは、これは手酷くやられましたなぁ。ですが、なぁに。ヒーローズ・アース。ヒーローズ・アースにたどり着けば……」
 〈侵略蔵書「秘密結社スナーク」〉を駆使して、かつての戦乱に戻してしまえば、こちらのものだ。 
 そのひとりごとに、
「たどり着いて、どうするというのだ」
 巌のような言葉が応えた。
「な……ぁあ……!猟兵の方で、ございますか……」

 剣を突き立て、両の瞳を閉じ、巌のように佇む男がそこに居た。バーン・マーディーだ。
 ただ一つ、その意を問う言葉を発し、男は黙したまま語らず。
「何を企んでいようと関係ねェ、仕事を受けたからここで斬る、それだけだろうが」
 そしてその傍らに居たもう一人の長身の男が苛立たし気に言葉を発した。
 故無・屍だ。今更、オブリビオンに何を聞く事があるのか。
 けれど、一つ屍も知っている事がある。それは、どうやら傍らの男の故郷はヒーローズアースであるらしいという事で、それはつまり目の前のオブリビオンが侵略しようとしていた世界であるという事である。『家』がどれだけ大事かは、それこそよくよく知っている身だ。だからこそ、屍もまたバーンの対応を尊重していた。

「それは、もう。ヒーローズアースに戦争を巻き起こす為でございます。バーン様」
 そう言ってジャバウォックは跪いた。紳士は、己が侵略する世界について学ばぬ程愚かではない。故に、眼前の存在を知っている。即ち、幾ら猟兵として、バーン・マーディーはヴィランである。
「戦争を引き起こした先に、貴様の望みがある、と」
「ええ、ええその通りでございまいます。悪のお方。ヒーローズアースが戦乱に巻き込まれるのは、望むところでございましょう?」
 その言葉に、バーンが目を見開いた。
「一切合切を巻き込んでか?」
「戦いはそういうものでありましょう?」
「然り。なれど」

 剣は引き抜かれる。

「我は悪。正義が害し、排し、見捨てたモノを掬い上げる者。ならば、貴様もまた掬う者か?」
 問いの言葉はしかし、それを発した者こその答えを確信しているようだった。そも、オブリビオンは破滅を齎すものである。
「我に膝をつくか。牙を剥き刃を向け散るか…選べ」
 〈魔剣「Durandal MardyLord」〉の切っ先が向けられる。返答は、
「スナークよ!!!」
 老紳士の叫びだった。

「だろうよ!!!」
 苛立ちと共に、屍が前に出る。どうやら不可視の獣が自分に襲い掛かってきているらしい。
「どうする!?」
 自分の対処法は決まっているからこそ、声は鋭く。
「案ずるな」
 見えぬ牙が、聞こえぬ咆哮が、四方八方から迫り来る。
「認めよう」
 その存在を。バーンは厳かに宣言した。
 不可視の獣、『スナーク』。なるほど見えず、聞こえず。脅威であろう。だが逆に、その程度の獣は、神話に腐る程出てくるのだ。
 ならば、神々のおわすヒーローズ・アースにとって、精々が厄介な逸話を持った神獣程度でしかない。
「故に、『我が拳と刃は届く』」
 そうして【オーラ防御】を展開した。『スナーク』を通さぬ程強くなく、その代わりに常より広い空間に広げて。そうする事でオーラの防御は即席のソナーの役割を果たす。
 ならば、不可視であろうと意味はない。己の作り出した『領域』の中心に立ち、騎士は刃をひらめかせた。

「へっ!やるじゃねぇか!」
 不動のバーンとは逆に、飛び出たのは屍の方だ。騎士のように器用な真似は出来はしない。
 だから、ジャバウォックへ向かってゆく。迫り来る牙と爪。見えはしないそれをしかし、鋭敏な第六感で避けてゆく。 
 それでもなお体を引き裂く痛みが体に広がってゆく。
(いてぇ……)
 けれど屍はそれで止まりはしない。
 何よりも、
(痛いってことは、それが『そこに在る』って事実を、お前が存在するって現実を決定付ける証拠の一つだ)

 走りながら、 〈アビス・チェルナム〉と〈レグルス〉を握りしめる。ドクン、と心臓が脈打ち、己の大切なものが抜け落ちてゆく感覚。死へと一歩近づいてゆく実感。
 その実感が極まれば、いつか己は『妹』の場所へ行くのだろう。
 だから、
「ハハハ!今更誰かに裁いて貰おうなんざ虫がいいよなぁ!」
 笑いと共に、目の前の空間に刃を振るった。不可視の獣が切り捨てられる。
(切れる……!)
 《暗黒剣・罪喰い/アンコクケン・ツミクイ》は問題なく発動している。確かにその刃はスナークへと届くかもしれないが、
「ぐっ!」
 見えている訳ではないのだ。だから進む男の体には、たくさんの傷がつき、それでも、
「届いたぜ…‥!」
 
 スナークの群を抜け、傷らだけの姿で屍がジャバウォックの前に出る。ジャバウォックもまた満身創痍。
「だからどうだというのです!」
 ユーベルコードが発動する。煩わしいという風に振るわれた〈ヴォーパル・ソード〉の三連撃を前に、
「こうするんだよ!」
 先ほどより大きく力の減じた一撃目を〈レグルス〉が弾いて、大きく隙が作られた所にリーチの長い〈アビス・チェルナム〉が竜人紳士へと迫る。
「存じてないでしょうが、無駄です!」
 それは、先ほどのシャルとの戦いの焼き直し。がら空きになった胴へ目掛けて放たれた攻撃に対応するために、超常の力で無理やりニ撃目が放たれる。

「は!」
 もし、屍の切っ先が。
「無駄じゃねぇよ!」
 『ジャバウォックそのもの』を狙っていたのなら、話が違っていただろう。〈アビス・チェルナム〉の切っ先がその胴へと届く前に、ヴォーパル・ソードがその体を断ち切っただろう。
「まさか!?」
 切っ先は、〈侵略蔵書「秘密結社スナーク」〉を目指していた。ここで、ジャバウォックの心に迷いが生じる。このまま屍を切り裂くか。それとも斬撃の軌道を修正して大剣を逸らすことを重視するか。
 二兎を追う者は一兎をも得ず。その迷いが、どちらの機会も失わせた。いくらUCによる強化があったとて、迷えば太刀も鈍る。
 振り下ろされる斬竜剣のスピードは遅くなり、だからこそ屍は、
「とった!」
 〈侵略蔵書「秘密結社スナーク」〉を切り裂いた!


「おのれ!!!」
 そのままジャバウォックとすれ違うように前へ出る。こうなってはとヴォーパル・ソードで斬りつけるももう遅い。確かにその背に切り傷を増やしたが、致命傷には程遠かった。
 そして、
「我が名はバーン・マーディ。ヒーローズアースを乱す悪である」
 《侵略蔵書「秘密結社スナーク」》に対処するためにその場に縫い留められていた男が、動き出すという事である。
 
「我がいる限り対神組織「デュランダル」はその名の如く不滅である」
 もとより、オーラ防御を纏ったままでも、バーンは城砦の如く進むんでゆき、ジャバウォックに相対する事は出来た。
 だが、それでは時間がかかる。戦場における時間は値千金。故に、それは屍からの提案で会った。侵略蔵書は自分が何とかする、と。
 男の言葉である。だからこそ、バーンはそれを飲む事とした。
 そして、屍は宣言した通りのことを成したのだ。ならば、次は己の番。

『悪とされたる者達よ。正義という暴力に蹂躙されし者達よ。我はバーン・マーディ』
 世界に宣言すれば、その身に禍々しくも紅いオーラが纏わりつく。そう、バーン・マーディーはヴィラン。ヒーローズアースの悪である。その秩序を乱すもの。 けれど、それは、決して虐殺者や破壊者や支配者と同義のものではない。

『我は今ここに宣言しよう。悪には悪の…正義があると!』
 正義を信奉する己の心はかつて折れた。そして折れた心に残ったのは、ただ守るという意思。かつて己の救えなかったものを救おう。正義では救えぬものを、悪にて救う。
 ならば今は、
「我、此処にて秘密結社スナークの黄昏とならん」
 《ヴィランズ・ジャスティス/ヴィランズ・ジャスティス》が発動する。衝撃波を纏った飛翔と突進。もし仮にジャバウォックが今なおスナークを使役するUCが仕えたとするなら、それを盾としてその衝撃と突進を逸らすことが出来たかもしれない。だがしかし、それはイフの話であり、
「舐めないで頂きたい!!!」
 叫び、ヴォーパル・ソードをその突進に合わせる事しかできなかった。

 爆音と衝撃の後、サー・ジャバウォックを通り過ぎたバーンが、紅のオーラを纏ったまま残心する。
 数瞬後、倒れたのはジャバウォックだった。さらさらと、骸の海へと帰ってゆく。
 猟書家は、倒されたのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年08月16日


挿絵イラスト