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迷宮災厄戦⑲〜焼け焦げ森のジャバウォック卿

#アリスラビリンス #戦争 #迷宮災厄戦 #猟書家 #サー・ジャバウォック

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●侵略蔵書と斬竜剣
「さあ、ここがひとつ目の佳境――焼け焦げた森の国、猟書家《サー・ジャバウォック》の支配領域です」
 普段通りの口調で李・蘭玲(老巧なる狂拳・f07136)は口火を切る。
「サー・ジャバウォックは自らを『猟書家最強の男』と称しています。実力もそれ相応のものと判断して構いません。《攻撃を防いで、隙をついて反撃する》……それくらい慎重に臨んでもいいくらいでしょう」

 蘭玲は次に敵の武装について触れる。
 サー・ジャバウォックの武器は《侵略蔵書『秘密結社スナーク』》と《斬竜剣『ヴォーパル。ソード』》が主になる。
「不可視の怪物を操る蔵書。巨大化する高速の剣。強力な武器2種に加えて、本体も竜人形態に変身してヴォーパル・ソードの強化や、五感を奪う黒翼での飛翔能力を発揮します」
 個人で持つ戦力としては充分すぎる、と蘭玲は言うと、
「『どのようにして猛攻を凌いで、サー・ジャバウォックを討伐するか』が焦点となります。作戦はしっかり立ててくださいね?」

 猟書家はそれぞれオブリビオン・フォーミュラが討伐された世界を目指している。
「サー・ジャバウォックの狙う先は『ヒーローズアース』です。かの地でなにをしようとしているかは不明ですが、到達した瞬間に恐るべき事態を引き起こすでしょう……防ぐならここで食い止めるのが最良です」
 最強の猟書家を、最初に討伐できれば戦況にも影響を及ぼす。
 焼け焦げた森に潜む“怪物”を目指し、猟兵達は一歩を踏みだす。


木乃
 木乃です!
 こちらは『猟書家サー・ジャバウォック』との決戦場となります。
 プレイングボーナスは以下となります。

 プレイングボーナス……敵の先制攻撃ユーベルコードに対処する。

 プレイング提出は『8/13(木) 8:30~』からお願いいたします。
 執筆は適時おこなう予定です。

 以上です、それでは皆様のご参加をお待ちしております!
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第1章 ボス戦 『猟書家『サー・ジャバウォック』』

POW   :    侵略蔵書「秘密結社スナーク」
見えない【架空の怪物スナーク】を放ち、遠距離の対象を攻撃する。遠隔地の物を掴んで動かしたり、精密に操作する事も可能。
SPD   :    ヴォーパル・ソード
【青白き斬竜剣ヴォーパル・ソード】を巨大化し、自身からレベルm半径内の敵全員を攻撃する。敵味方の区別をしないなら3回攻撃できる。
WIZ   :    プロジェクト・ジャバウォック
【人間の『黒き悪意』を纏いし竜人形態】に変身し、武器「【ヴォーパル・ソード】」の威力増強と、【触れた者の五感を奪う黒翼】によるレベル×5km/hの飛翔能力を得る。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

達磨寺・賢安
・猟書家のお出まし、か。うん、強いね…間違いなく、僕が猟兵になってから戦った相手の中では一番だ。それも絶対的に。だからこそ、試したくなるよね……

・先制攻撃。僕が何かをする前に相手が動くのはいつものこと。だから、いつも通りに「第六感」で「見切り」、そして「オーラ防御」を併用した「武器受け」を行ったり、あるいは躱す。例え見えなくても、そこにいれば気配は必ずある!

・その後は純粋に技比べ読み比べだね。もしかしたら受けることで手一杯になるかもしれないけど、「体勢を崩す」ことは常に意識して「カウンター」での【一撃必殺】を仕掛けよう。

・致命打は無理かもしれないけど、無視できない程度のダメージは与えてみせる!


上野・修介
※アドリブ・連携・負傷歓迎

相手は強者。
チャンスはそう多くないだろう。

――為すべきを定め、心は水鏡に

「推して参る」

――先ずは観る

不可視だろうと実体があるなら動けば兆候があるはず。

視線と殺気から攻撃軌道とタイミングの予測、タクティカルペン投擲よる牽制と視線誘導、遮蔽物の利用、左右への緩急と地面を打撃することで急停止・急旋回による運足の偽装を以て、最短を行くのではなく、可能な限り被弾を減らすように間合いを詰める。

やや派手に動きながら周囲の灰や煤等を巻き上げ『目印』とし、その動きから『スナーク』の軌道を予測しカウンターで叩き落とす。

初撃を凌いだら懐に飛び込み、UCによる寸勁に続けてラッシュを叩き込む。



 焼け焦げた森を進むたび、煤けた草はパキパキと脆く崩れ落ちていく。 “ここはそのような場所だ”と定義されているとしても、戦禍を思わす光景の中で、落ち着けというのは無理からぬ話。
 その先に“強大な化け物”が居ると知れば、尚のことだ。
「おや、私の領域に招かれざる客がお越しのようですね」
 森の奥、痩せこけた木々の中に立つ“紳士”はゆるりと微笑を浮かべる。
 あれこそ、猟書家《サー・ジャバウォック》――猟書家最強の男。
「“迷いウサギ”でしょうか、帰るなら来た道をそのまままっすぐ行くと良いでしょう」
 それが“無意味な言葉”と知りながら、卿は言葉を投げかける。

 そこに一切の隙がないことは、達磨寺・賢安(象の悪魔・f28515)の目にも明らかだった。
(「うん、強いね……間違いなく、僕が猟兵になってから戦った相手の中では一番だ。それも絶対的に」)
 強者の余裕ともとれる、上品な佇まい。
 だが、『相手が引かぬ』と解れば、ためらいなく方針を変えるのも強者だからこそ。
 ――ウサギを狩る際の獅子が全力であるように。
「そうですか、では“お別れの挨拶”を送りましょう」
 どうせ先制をとられるのだ、いつも通り動けばいい。
 その思考すら想定していたかのように、賢安の背後から“強烈な殺気”が迫ってきた。
 待ち構えていたように、不可視のスナークが牙を剥く!
「!!」
 “象の悪魔”に変じるタイミングがほんのすこし遅れていれば、大打撃となっていただろう。
 手荒い歓迎を受け、地べたを転がる賢安はすぐに持ち直すも、スナークの怪物は追い討ちをかける。
 同様に、上野・修介(吾が拳に名は要らず・f13887)も一度は体勢を崩されたが、『相手が殺気を放つ』ことを理解した。
(「相手は強者、チャンスはそう多くないだろう」)
 ――為すべきを定め、心は水鏡に。

「推して参る」
 
 ――先ずは観る。
 卿の視線、攻撃の軌道、仕掛けるタイミング。
 それも『二体同時に操る』となれば、一方に隙が生じる可能性が出てくる!
(「不可視だろうと、実体があるなら動けば《兆候》があるはず」)
「どうした、《最強の男》と言っても一撃では仕留められないか?」
「はは、小鳥のさえずりにしか聞こえません。ですが乗る乗らないは私の自由、敢えて“摘み取る”のもまた一興でしょう」
 修介の誘導を子どものするイタズラのように笑い、スナークの怪物を追撃に向かわせた。
 焼け焦げた木々で視線を遮りつつ、修介は派手な立ち回りを意識しつつ、スナークとサー・ジャバウォックの考察と回避に一時専念する――。

 技比べ。読み比べ。
 そんなことを考える暇も与えまいと、ガードの隙を突くようにスナークは賢安に猛攻をくわえる。
 改造されて得た、象の硬い皮膚と肉厚の体躯と覇気で見えない攻撃防ぎ、受け流しを試みて、カラダは血で染まっていく。
「これは、かえって避けるほうが危険、か!」
 肉を切らせて骨を断つが如く、攻撃の直後に拳を叩きこむ。
 ウロコのような冷たく固い感触はすばやく離れて、嘲笑うように警戒する“悪魔”にまた鋭利な一撃を放つ。
 だが、耐え抜く中で徐々にクセのような、“挙動の特徴”は本能的に理解が深まっていた。

 ひとつ・スナークはかぎ爪か、刃物に準ずるモノで相手に傷をつける。
 ふたつ・スナークは殺気を発しながら攻撃する。
 みっつ・卿の視線が途切れた一瞬、スナークは攻撃軌道を変えられない。

 恐らく3番目は操者である、ジャバウォック卿の目で捉えられないからだ。
 つまり、視線さえどうにかできれば、意図して攻撃をそらせる。
(「あとは《どうやるか》なのだが……!」)
 次の一手に迷う賢安だが、そこへ飛びこんできたのが修介。
 彼も生傷だらけの姿であるが、眼光の奥には冷たい炎が絶えず燃え続けていた。
 タクティカル・ペンとともに足元の灰を握りこんで、賢安につきまとう怪物の気配めがけて放ち、賢安の隣に転がりこむ。
「よし、あいつにも《目印》を付けた」
 不可視でも実体があるなら、そこにマーキングすればいい。
 灰で汚れた鳥じみたシルエットが、なにもない空間に浮かびあがったのだ。
「アンタ、《あいつら》のクセは?」
「理解した。我とお前、交互に押さえて首魁を叩くか」
 従僕の怪物が灰まみれだろうと、サー・ジャバウォックは風雅なまま。「密談とはつれないですね。舞踏会での密談ほど無粋なモノはありませんので」

 卿は二人の会話を遮るよう、二体のスナークに再び攻撃を指示する。
 互いに一瞥を向け合い、おぼろげな姿の怪物めがけ、まずは賢安が押さえに回る。
 オーラを前面に展開し、薄汚れた斧じみた尾先を振りかぶる瞬間。 「すでに我が眼にて捉えている」
 尾の付け根を狙い、正拳を叩きこんで体勢を大きく崩した!
 とびかかる二体目を賢安が相手取る隙に、修介は本体――サー・ジャバウォックに狙い定める。
「“こちら”の方がお好みでしたか?」
 そう言って青白く発光する剣――ヴォーパル・ソードを引き抜く。
 その剣戟は嵐のよう。
 修介を無数の剣閃が襲うも、それらを朽ちた木々で受け止め、肩口を裂かれることも厭わない。
 ダメージを抑え、もう数歩のところで、手持ちのタクティカル・ペンを全て擲つ。

「出し惜しみはしない、アンタを殺すには足りないくらいだ」
 視線が逸れたその一瞬。
 牽制の一撃に頬を斬られながらも、修介は組みついた。
 そして、豪快な垂直落下式バックドロップがサー・ジャバウォックを襲う!
 急角度で落とされた卿が大きくバウンドし、賢安がその姿を目撃する。
「その隙は逃さないぞ」
 肘撃にてスナークの胸部を打ち据え、ひるませると起き上がりざまの修介と入れ替わり、賢安が大きく踏みこんだ。
 致命打に至らずとも、損耗させるだけの威力は与えられる!
「我が拳、存分に味わえ!」
 体勢を崩したジャバウォック卿の腹部めがけ、全身全霊の拳を見舞う。
 腰の入った重い拳に、サー・ジャバウォックの息を詰まらせた吐息がこぼれた。 

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

アルフレッド・モトロ
架空の怪物スナーク……
つまるところ
一緒に戦う仲間を召喚してくるってことか
それで、その仲間は目視できず
掴むなどの物理攻撃を仕掛けてくる、と

……よし【カウンター】系の技で迎え撃とうか
UCで蒼炎を纏って
スナークからの攻撃に備えるぜ!

俺自身も多少は熱く感じるが
【火炎耐性】があるから平気!

これで見えない怪物とやらは
俺の炎に触れ次第ドカン!だ

そして俺は本命への
攻撃に集中できる

サー・ジャバウォックに
【ワンダレイ・チェイン】を
【投擲】して【捕縛】

【怪力】で勢い良くこちらに引っぱり寄せて
UCの炎を纏ったまま【捨て身の一撃】を叩き込んで【焼却】だ!

必殺の強制クロス【カウンター】をくらえ!!

(連携アドリブ歓迎です)



「架空の怪物、スナーク……」
 それはサー・ジャバウォックの従僕、見えざる架空の怪物。
 ヒビの走ったモノクルを指で押し戻し、卿は楽しげに口角を吊り上げる。
「ああ、“痛み”が走り抜けていく……これこそ戦いの刹那のみに見える“命の輝き”といえましょう」
 ――あなたはどうですか?
 アルフレッド・モトロ(蒼炎のスティング・レイ・f03702)の頭上より一羽の気配が急速に近づく!

「突っ込んでくるってんなら、迎え撃ってやるぜ!」
 接触する間際。
 アルフレッドの尾から溢れる蒼い炎が、爆ぜるように全身に燃え広がった。
 大部分がエイの姿だろうと、火炎に対する耐性が備わっている――接近したことで燃え移り、蒼炎が目印となった。
「見えねえ焼き鳥なんざ、酒の肴にもならねえよっ」   
 退避しようとするスナークは炎を伴う旋風で消し炭に。
 勢いのまま、アルフレッドはジャバウォック卿に飛びかかる!
「海賊の略奪行為……夢のある光景でしょうが、“食卓に並べた姿”もお似合いでしょう」
 アルフレッドの蒼炎を警戒してか、卿も黒き悪意をまとい竜人へと変じていく。

 瞬く間に詰め寄った卿の剣をアンカーで受け止め、五感の剥奪(はくだつ)は防いだ。
「俺はたしかに“エイ”だがな、勝手に刺身にすんな……ってえーの!」
 ――鍔ぜり合うような押し合いの末、押しきったのはアルフレッド。
 飛行状態を維持して勢いを殺す卿を逃すまいと鎖を放つ。
「猟書家、一本釣りだぜっ!!」
「自ら“首を刎ねろ”と望みますか」
 片腕を捕らえて引き寄せるアルフレッドに、サー・ジャバウォックは鋭さの増したヴォーパル・ソードを向ける。

 あまりに無策……眼光を鋭くする卿だが、そんなことはアルフレッド自身も承知の上。
 財宝と栄光を前にして、“怪物”なんぞに怖じ気づく“海賊”がどこに居ようか!
「必殺・強制クロスカウンタアァァァアアアアアア――ッ!!」
 脇腹を深く抉る剣はアルフレッドに激痛を与える。
 だが、その一瞬にアルフレッドもまた、燃えさかる錨をジャバウォック卿の側頭に叩きこんでいた。 

成功 🔵​🔵​🔴​

アリウム・ウォーグレイヴ
アドリブ歓迎

敵の纏う悪意が、迫る速さが恐ろしい
木々を破砕しつつ迫るなら進路が見えて良いですが、障害物を避けて迫るのなら速度が落ちるはず、と『祈り』予想を立てます。
更に炭となった木々を斬り散らかし、地の灰を可能な限り宙へ舞わせます。
偶然でも『第六感』でも灰の動きで敵進路を読む拙い作戦でもいい。
『見切り』躱し、『武器受け』でもして初手を何とかして凌ぎます。
五感を失う程度なら良いのです。
『全力魔法』『範囲攻撃』『属性攻撃』。私の全てを散華に注ぎ込み、周囲に展開します。
あとは待つだけ。じっと動かない私に敵が油断してくれるといい。
その驚異的な速度で散華に当たりに来てくれるか。
読みが当たるかどうか勝負です


御剣・刀也
遠距離戦もできるのか
遠、近、中と隙は少なさそうだ
こういうオールラウンダーは厄介だな。ま、それでも俺のやることは変わらない
前に出て、斬り捨てるだけだ

侵略蔵書「秘密結社スナーク」による遠距離攻撃が先にやってくるのはわかっているので、勇気で被弾を恐れず、ダッシュで一気に間合いを詰め、避けれるものは第六感、見切り、残像で避けつつ、避けきれないものは武器受けで弾き、一気に距離を詰めて、捨て身の一撃で斬り捨てる
「近付く迄は苦労したが、ここは、俺の距離だ!」



「……なんと、禍々しい」
 アリウム・ウォーグレイヴ(蒼氷の魔法騎士・f01429)は無意識に呟いていた。
 サー・ジャバウォックのまとう、黒きモノは“ヒトの悪意”
 純粋なドス黒い感情を卿は利用し、恐るべき速度を見せつけながら進路を阻む木々を斬り捨てる。
 知性ある者なら避ける障害物は、“猟書家最強”を自負する卿にとって『藁を束ねたカカシ』と同じだった。

 焼けた草や枝の灰を斬り潰し、煙幕にして、アリウムは少しでも狙いを散漫にさせようとした。 
「どうしたのですか? 私と“ダンス”をしたいのでしょう?」
 ジャバウォック卿は顔半分を血で染め、優雅な微笑とともに近づいていく。
 その姿はさしずめ、ホラー映画に出てくる狂人。
「お一人での舞踏を望むなら、愉快で滑稽な“タップダンス”を所望します」
 煙幕ごと八つ裂きにせんと、放たれた三連撃は御剣・刀也(真紅の荒獅子・f00225)にも襲いかかった。
「遠距離戦もできるのか、隙が少ないのは面倒だな……!」
 遠、近、中間までも対応できるオールラウンダーほど手強い。
 けれど、それは刀也も自負するところ。

(「前に出て、斬り捨てる――それだけだ」)

 煙幕が薄れる最中、“なにか”が塵を突き破った。
 姿形の見えないモノ……であれば、答えは“ひとつ”のみ。
「出たぞ、“侵略蔵書のバケモノ”が!」
 叫ぶように刀也はアリウムに伝え、刀也は視界の晴れ間に飛びこむ。
 ……一方、アリウムは飛来した剣圧に、足を深く傷つけられていた。
(「大丈夫、私はまだ動ける……私が求める時間は“一瞬”」)
 愛剣《氷華》で受け止められたことが不幸中の幸い。
 そして、そのゼラニウムの剣こそ作戦の要――それを握れるなら、膝をついていようとあとは“賭ける”だけ。

「焼け焦げた国に華と咲かせ、凍てつく花の園を……此処に」

 ピキ、ピキピキ。
 アリウムを中心に広がる氷の園は、氷震(ひょうしん)のごとき音をあげる。
 だがアリウムが虎視眈々と得物を仕込んでいる様子に、ジャバウォック卿は気づいていない。
 一直線に駆けてくる刀也に意識が向いていた。
 舞い上がった塵芥を被り、わずかに灰色つくスナークの攻撃軌道を見て、ときに愛刀で払い、迫り来る凶刃を掻い潜る。
「“不可視”でなけりゃ鳥と変わらねえ!」
 すり抜けざまに一太刀浴びせ、スナークの翼を断ち本命へと一直線。

「近付く迄は苦労したが、ここは、俺の距離だ!」
「あいにくと、此処はヴォーパル・ソードの顎門(アギト)の内でもありまして」
 血気にはやる刀也の初撃を刀身で受け、ワルツのような軽やかさで、竜人姿の卿は次の一手を放とうとした。
 だが、その追撃を妨げたのは氷花の吹雪。
「失礼、支度に時間がかかりまして――“パーティ”ならば入念に用意せねばと思ったもので」
 残る体力の全てをアリウムは魔力に注ぎ、周囲に花開いた氷片をサー・ジャバウォックめがけて乱れ撃つ!
 完全に不意を突かれた形の卿は翼膜を裂かれ、地に足をつかされる。「二兎を追う者は一兎をも得ず、と申しますが……いささか悪戯が過ぎましょう」
 卿は手にする《侵略蔵書》を開こうとするが、刀也から注意をそらされたことが仇となった。
「――この切っ先に、一擲をなして乾坤を賭せん!!」
 最上段より振り下ろされた一太刀。
 その一刀が竜人形態の象徴たる、禍々しき翼と尾を斬り落とした。
 どろりと溢れる黒の粘液にまざるサビ臭い“赤色”
 ――それは、猟書家最強の男にとって、痛烈な一撃であることの証左だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

安寧・肆号
スミン/f25171

まあ、まあ。みてスミン!
猟書家にはナイトもいるのね?
よろしくどうぞ、おじさま。

スミンったら逃げ足早いのね。あたしも頑張らなきゃ。
あたし自身には[オーラ防御]を展開。真っ向から人形「振愛 弐号」に[怪力]の怪力で剣を[武器受け]するわ。弾くだけでも儲けね。
そのあとの攻撃は銀時計で[盾受け]、もしくはプリンセスハートの[一斉発射]で狙いを逸らすの!

せっかちなおじさま!落ち着いてタルトでもいかが?
スミンのお口にもタルトを。
女王さまが、夏に1日かけて作ったタルトみたいでしょ!
ぐるぐる植物に囲まれて、動かなくなちゃったら、お口にタルトをあげるわね!


スミンテウス・マウスドール
アンネ/f18025

馬鹿だなアンネ。
ジャバウォッキーには気をつけなきゃいけないんだよ。
それじゃあ、各自逃げようと。
逃げ足で森の中へ。

姿の見えない怪物に対しては、 動物使いでコウモリさんを森中に放つ。どの地点のコウモリさんが攻撃されたか動物会話で共有。
コウモリさんを派手に動かして、そっちにおびき寄せ。
スミンは野生の勘を駆使して、植物や空気の動きに注意するよ。
おびき寄せているうちに早業で移動。

アンネ生きてる?良かったー。
本日の茶菓子は渋味ジャバウォッキー。
タルトがよく合うね。
タルト食べながら、短剣で暗殺するように攻撃。
うるさい花に囲まれろ。
タルト美味しい?良かった。



 血濡れたジェントルマンは、上質なスーツが自らの血で汚れるサマを滑稽そうに笑う。
「侮ったつもりはないのですが……予想を遥かに上回りますか、さすがですね」
 数々のオブリビオン・フォーミュラを倒した功績もある。
 サー・ジャバウォックは本心から感心しているようにも見えた。

「まあ、まあ。みてスミン! 猟書家には“ナイト”もいるのね?」
「馬鹿だなアンネ。“ジャバウォッキー”には気をつけなきゃいけないんだよ」
《サー》の爵位を戴く猟書家を前に、安寧・肆号(4番目の人形・f18025)は無邪気に笑う。
 楽しげな彼女を幼いヤマネの少年、スミンテウス・マウスドール(だれかが視てる夢・f25171)はたしなめる。
 その名の通りならば、男の言葉がどれだけ意味深く聞こえようと、中身は無味乾燥としたもの。
『味のないミートパイ』と同じなのだ。

 それでも肆号は礼儀正しく、スカートの裾を摘まみ、恭しくおじぎする。
「よろしくどうぞ、おじさま」
「よろしく、愛らしい紅薔薇のお嬢さん。――そして“よい旅を”」
 竜人の力が弱まろうと、その剣筋が死神の鎌よりも鋭利であることは変わりない。

 無差別の斬撃に、肆号の手にする銀時計は自ら守るようにオーラの防壁を展開する。
 シスター《振愛・弐号》も前に出て、怪力を活かしてヴォーパル・ソードをはじいた。
「アンネってばもう……コウモリさん、行って!」
 ともだちのコウモリさん達を放ち、射線を遮ったスミンテウスは木の陰に身を隠す。
「スミンったら逃げ足が早いのね。あたしも頑張らなきゃ」
「“夢物語”に頑張りは不要。夢のまにまに漂流していればよいのです」
 姿を隠すスミンテウスが“逃げた”ような肆号の言葉に、ジャバウォック卿の攻撃は肆号へと集中する。

 ――肆号も距離をとろうとするが、卿の執拗な攻撃を振り切れずにいた。
 猪突猛進する弐号の脚部パーツを断ち、灰の茂みにころがして、サー・ジャバウォックは“侵略蔵書”を開く。
「お友達はなかなか帰ってきませんが、先に“冥府の川辺”で待たれたらいかがです?」
「もう、せっかちなおじさま!」
 まろみある頬を膨らませた肆号の中心から、ガラス片が一斉に放たれる。
 煌めくガラス片は卿の四肢に食いこみ、上質な背広服はボロボロ。
『――……』
 その様子を見ていたコウモリさんの一匹が見ていた。
 スミンテウスの元へ戻ろうとするコウモリさんは、途中で顔を合わせた仲間にも伝え……ザックリバッサリ、“見えない斧羽”で真っ二つ。

 持ち帰ろうとした情報を代わりに預かった、別のコウモリさんがスミンテウスに伝える。
『ジャバウォッキーとアンネの近くにいるよ! ジャバウォッキーの見える場所にしか居ないのかも』
「じゃあジャバウォッキーはアンネを追いかけてて、その周りに“見えない怪物”が飛んでるんだ」
 精密操作が可能といえど、見えない場所ではその特性も活かせはしない。
 別れたことがむしろ危険だと気づき、スミンテウスは急ぎ、肆号の元へ走る。
「コウモリさん、また大変な“お願い”するけどいい?」
 スミンテウスの頼みをコウモリさんは二つ返事で承諾――正面と左右に飛びたっていく。

『キィキィ!』
『キィ! キィ!』
 コウモリ特有の甲高い鳴き声に、ジャバウォック卿が片目を細めた。
「迎えが来ましたね、ですけれど……間に合うでしょうか?」
 それよりも早く、血の海で“泡”となって消してしまうのに。
 遠回しの宣告を受けながらも、銀時計を押しだし、肆号はヴォーパル・ソードを食い止める。
「まるで独りぼっちの王様みたいな横暴さだわ、落ち着いて“タルト”でも召し上がったらいかが?」

 ――その“一言”で、戦場の空気が変わった。

 サー・ジャバウォックの動きはみるみるうちに、鈍重なものへ。
「こ、れは」
 攻撃を受けている。
 頭では理解しても、体が脳の指令を受けるまで、倍以上の時間がかかった。
「タルトの“おまじない”よ、今日は桃とオレンジのタルトを用意してもらったの!」
 紙のケーキバッグがら出てきたのは、いっぱいの砂糖で煮詰めた、あまいあまいフルーツタルト。 
「女王さまが、夏に1日かけて作ったタルトみたいでしょ?」
「アンネ、生きてる?」
 花のように笑顔をほころばす肆号の元に、スミンテウスが戻ってきた。「良かったー、危ないところだったよね」
 ホッと息をつくスミンテウスに、微笑む肆号はタルトをひとつ取り出し、スミンテウスの口元へ。
「本日の茶菓子は渋味ジャバウォッキー、甘いタルトがよく合うね」
「でも仲間はずれはかわいそう。ぐるぐる植物で囲んでから“ごちそう”しましょ!」

 二人がケーキをほおばる姿を見せつけられながら、卿は曖昧な笑みを浮かべていた。
 チェスで手詰まったときのような、手に負えないほどの問題が舞い込んだときのような、そんなときに見る表情。
「うるさい花に囲まれろ、ジャバウォッキー」
 手によく馴染んだ短剣を引き抜いて、スミンテウスはダーツのように投げ放った。
 牡鹿のような軽やかさも、鷹のような鋭さも、全てが鈍った卿の胸に突き立てるのはたやすいこと。
 ダガーはサー・ジャバウォックの全身を絡めとるように、その茨で新たな傷口から血が噴き出し、すでに負っていた傷口はいっそう深くなる。「ふ、ふふ……歴史は、繰り返す……私を倒そうと、また誰かが同じことを繰り返すでしょう……」
 予言じみた卿の捨て言葉に、肆号は眉を垂れた。
「アナタはなにが起こるかわからない“即興劇”はお好きじゃないのね」
 一寸先は闇の中。
 急転直下の大逆転。
 同じ題材、同じ顛末のシナリオだろうと、その過程はいつだって同じモノではない――“ヒトの一生”と変わらない。 
 日の光を浴びた吸血鬼のように、灰と化すサー・ジャバウォックの居た場所に残ったのは一本の短剣のみ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2020年08月15日


挿絵イラスト