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迷宮災厄戦⑲〜最強の老紳士、猟書家サー・ジャバウォック

#アリスラビリンス #戦争 #迷宮災厄戦 #猟書家 #サー・ジャバウォック

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 焼け焦げた森の国で、その老紳士は訝しんでいた。
「なるほど。一番最初の標的は、この私ですか。われらが『書架の王』を除けば、猟書家の中で最も強いこの私を最初に狙ってくるとは。猟兵は、よほど命知らずだと見受けます」
 老紳士――猟書家『サー・ジャバウォック』は、モノクル越しに己の手中に収まる侵略蔵書『秘密結社スナーク』を見遣ったあと、右手に青白き斬竜剣『ヴォーパル・ソード』の柄を握り返す。
「しかし合理的な判断です。私を倒せば、『書架の王』以外は格下の相手です。ですが同時に無謀ともいえましょう。この侵略蔵書『秘密結社スナーク』と、青白き斬竜剣『ヴォーパル・ソード』で、私は貴方がたを迎え撃ってみせましょう」
 サー・ジャバウォックは、黒焦げの森の中で独り、静かに猟兵達を待つ。

「最初の猟書家討伐戦は、実質最強サー・ジャバウォックおじ様だよっ!」
 イケオジ大好きのグリモア猟兵、蛇塚・レモン(白き蛇神オロチヒメの黄金に輝く愛娘・f05152)は予知の段階でテンションが既に高い。
「サー・ジャバウォックおじ様は、ヒーローズアースを狙う猟書家っ! どんなに素敵なイケオジでも、平和を乱すオブリビオンだから徹底抗戦しないとだねっ!」
 任務内容は簡単だ。猟書家サー・ジャバウォックの討伐だ。
 だが短期間に何度も討伐しないと、完全に抹殺が出来ない。
 本作戦は、その討伐任務のうちのひとつである。
「今までの戦争でも経験した通り、強力なオブリビオンである猟書家達は絶対先制攻撃を仕掛けてくるよっ! これはどんな手を使っても手番は覆らないから、みんなは侵略蔵書『秘密結社スナーク』と、青白き斬竜剣『ヴォーパル・ソード』の壮絶な一撃をどうにか対処して、反撃のユーベルコードをサー・ジャバウォックおじ様に叩き込んでほしいなっ!」
 架空の侵略蔵書は、見えない架空の秘密結社の存在自体が攻撃として牙を剥く。
 青白き斬竜剣は言わずもがな、無類の斬れ味を誇る業物だ。
 しかも、所有者を悪意によって竜人形態に変えて強化してしまうのだ。
「苦戦が予想されるけど、此処まで勝ち抜いてきた皆なら、猟書家にだって負けないって、あたいは信じてるからねっ! だから、負けないでっ!」
 レモンが猟兵達をアリスラビリンスの決戦の地まで導く。
 待ち受けている死闘の末に、猟兵達は何を見出すのであろうか……?


七転 十五起
 イケオジ猟書家の討伐戦です。難易度は【やや難】です。
 なぎてんはねおきです。

●プレイングボーナス
 このシナリオフレームには、下記の特別な「プレイングボーナス」があります。これに基づく行動をすると有利になります。

 プレイングボーナス:敵の先制攻撃ユーベルコードに対処する。

●先制攻撃について
 敵のユーベルコードは、猟兵側の使用するユーベルコードの種類に対応して使用します。猟兵側のユーベルコードの複数回・複数種の使用は、敵のユーベルコードの使用回数と種類がそれだけ増すので非推奨です。
  また、【状況的に不可能な先制攻撃への対処法】や、【公序良俗に反する内容と判断したプレイング】、更には【極端に文字数が少ない若しくは内容の薄いプレイング】については却下対象とさせていただきますので、此方もご了承願います。

●その他
  コンビ、チームなど複数名様でのご参加を検討される場合は、必ずお相手の呼称とID若しくは【チーム名】を明記していただきますよう、お願い致します。
(大人数での場合は、チームの総勢が何名様かをプレイング内に添えていただければ、全員のプレイングが出揃うまで待つことも可能です)
 なお、本シナリオは全てのプレイングを採用できない可能性があります。
 予めご了承くださいませ。

 それでは、皆様のご参加をお待ちしております。
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第1章 ボス戦 『猟書家『サー・ジャバウォック』』

POW   :    侵略蔵書「秘密結社スナーク」
見えない【架空の怪物スナーク】を放ち、遠距離の対象を攻撃する。遠隔地の物を掴んで動かしたり、精密に操作する事も可能。
SPD   :    ヴォーパル・ソード
【青白き斬竜剣ヴォーパル・ソード】を巨大化し、自身からレベルm半径内の敵全員を攻撃する。敵味方の区別をしないなら3回攻撃できる。
WIZ   :    プロジェクト・ジャバウォック
【人間の『黒き悪意』を纏いし竜人形態】に変身し、武器「【ヴォーパル・ソード】」の威力増強と、【触れた者の五感を奪う黒翼】によるレベル×5km/hの飛翔能力を得る。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

空桐・清導
生まれ故郷を守るべく、
いつも以上に熱く燃え、[気合い]を入れる。
その意志に反応して黄金のオーラが溢れる。
「見えない敵、なら!」
スナークの攻撃をあえて受けて場所を確認する。
ダメージはマント[オーラ防御]で軽減する。
「そこかあ!!」
低空で飛び、スナークに攻撃。
倒せなければ[誘導弾]を放ち、追撃。
清導は素早く[ジャンプ]してジャバウォックの姿を確認。
そこまで高速で飛行して[力を溜める]。
己よりも強大な敵に[勇気]をもって挑む。
「超必殺!レイジング!ブレイズキック!」
上空からキックを放ち、彼は[限界突破]する。
「もう、一撃ィ!ライジング!ブレイザァアア!」
間髪入れず、アッパーの[2回攻撃]で仕留める。


箒星・仄々
禍々しいお姿です
だからこそ
命と未来を守る意志と勇気が高まります
絶対に勝ちます

魔法の根源へ響くシンフォニアの歌声と
属性宿した音色で
黒き悪意を吹き飛ばし減弱

人の心はまた輝く優しさもあることを歌い
知らしめましょう

斬竜剣の攻撃へは矢の弾幕
疾風でイケオジさんの動きを邪魔しつつ
炎と水で水蒸気爆発も狙い
更にその煙で姿隠し間合いの外へ

黒翼も疾風で切裂き
炎で焼き
超水圧で貫きます

もし五感を封じられても
指は動き声は出ます
魔法の根源に共鳴させて世界へ助力を願えば
きっと空や大地が守護下さいます
そして森羅万象の力の循環の一部となった
私の五感を封じる事等出来ましょうか

三魔力を束ねた矢でイケオジさんを討ちます

事後に鎮魂の調べ


三角・錐人
・猟書家、とうとう出てきやがったか。さて、どう攻略したもんかな。

・先制攻撃対策:「第六感」「見切り」「早業」を総動員しての回避。1撃ごとに「学習力」を発揮し「フェイント」も織り交ぜて全ての斬撃を躱す。

・先制攻撃を凌いだらカードセイバーでの斬り合いを申し込む。無論、これは「だまし討ち」の一環。斬り合いの最中に左腕をコブラ頭に変身させ、「フェイント」をかけて噛みつく。そこから剣を捨ててニューワルサーでの「クイックドロウ」「零距離射撃」「鎧無視攻撃」を敢行。敵の攻撃は先制攻撃対策のものを続行。

・そして剣はカードから幾らでも生成して攻撃できる。手詰まりと思わせての一撃なんて、ゲーマーでは当たり前だぜ。



 焼け焦げた森の中心で、独り佇む猟書家の老紳士――サー・ジャバウォックは猟兵達と邂逅を果たした。
「……来ましたか。もう既にご存知でしょうが、改めて名乗らせていただきましょう」
 サー・ジャバウォックは恭しく頭を垂れながら、己の名を口にした。
「猟書家(ビブリオマニア)のサー・ジャバウォックと申します。短い付き合いとなりますが、どうぞお見知りおきを」
「サー・ジャバウォック……! アンタが俺の故郷、ヒーローズアースを侵略しようとする悪人か……!」
 空桐・清導(人間のアームドヒーローにしてスーパーヒーロー・f28542)は、予兆で知り得たサー・ジャバウォックのヒーローズアース侵略から故郷を守るべく怒りの炎を燃やし続ける。
 だが、怒りに呑まれることなく、空桐は『故郷の世界の人々を守る』という強い想いで怒りをコントロール、目の前の敵へいつも以上の気合を入れて対峙していた。
「サー・ジャバウォック! アンタを止められるのはただひとり……この俺だ!」
「ほう、若さとは素晴らしいものですね。しかし蛮勇と正義を履き違えるのは、いささか浅はかですが」
 失笑を禁じえないサー・ジャバウォックを、空桐が奥歯をギリッと噛み締めながら睨み付ける。
「そう言ってられるのも今のうちだぜ……!」
 その横では、黒猫ケットシーの箒星・仄々(ケットシーのシンフォニア・f07689)が、サー・ジャバウォックを見据えて懐中時計に手を伸ばした。
「あなたがサー・ジャバウォックさんですね。なんて禍々しいお姿でしょうか。だからこそ命と未来を守る意志と勇気が高まります。絶対に勝ちます」
 手元の懐中時計が瞬時に変形してゆき、蒸気機関式竪琴となって弦を震わせる。
 その音色にサー・ジャバウォックは眉間に皺を寄せた。
「その意気込みは買いましょう、黒猫君。しかし、あなたは剣に竪琴で挑むというのですか?」
「私の魔法は奏でる音そのもの。これから演奏するは、あなたへの葬送曲であり鎮魂歌です。とくとお聞き下さいね」
「ほう……それは興味深いですね」
 ギラリとモノクルの奥の眼光が鈍く光る。
 更に、キマイラの三角・錐人(ロケットスパイダー・f08517)……頭から胸元まで完全に覆い隠す巨大な四面体型のヘルメットを被った筋肉質の男が言葉を漏らす。
「猟書家、とうとう出てきやがったか。さて、どう攻略したもんかな」
 三角はカードゲーマーだ。カードデッキの特殊効果をユーベルコードに変換して戦うのだ。篭手と一体化したゲームデバイスにはカードスロットが備わっており、デッキのカード自体がUDC――オブリビオンを封じた特殊なカードだったりする。
「デッキセット、テラーカードを手札として5枚ドロー! デュエル、スタンバイ!」
 三角が戦闘準備を完了させると、今度は空桐が店に向かって吠えた。
「往くぜ! ちょおおおお、変ッ身!!!」
 彼の全身が真っ赤に燃え上がり、身体を包み込む炎は真紅の鎧に早変わりする。
「赤い鎧に身を包み、俺の心は燃え上がる!!! ブレイザイン、見参!!」
「さあ、イケオジさん。何処からでも仕掛けてみて下さい」
 箒星はポロロンポロロンと弦をつ間引きながら魔力を練り上げていた。
 サー・ジャバウォックは敢えて猟兵の戦闘準備が完了し終わるのを待っていた。
「準備はよろしいですか? せっかくこうして面と向かって一戦交えるのです。お互い全力で参りましょう」
 猟兵達へ告げると、サー・ジャバウォックは手元の一冊の本を開く。
 その本こそが、侵略蔵書『秘密結社スナーク』であった。

 ブレイザインは唐突に不安感に駆られていた。
「何かが……いるのか……?」
 見渡すが姿形はない。だが、確実にナニカが“いる”のだ。
「感じましたか? 『秘密結社スナーク』の存在を?」
 余裕しゃくしゃくで微笑むサー・ジャバウォック。
 そのまま青白き斬竜剣ヴォーパル・ソードを巨大化させたではないか!
「では、斬り刻んで差し上げましょう」
「2人とも伏せろ!」
 三角の叫び声に、ブレイザインと箒星が咄嗟にその場にしゃがんでみせた。
 刹那、2人の頭上を巨大な剣閃が掠めた。
「ぐッ!?」
 ギィィンッと金属音が戦場に鳴り響く。巨大な四面体型のヘルメットにヴォーパル・ソードの刃が触れたのだ。
(あぶねぇ……! ピラミッドヘッドが無かったら、今頃は俺の首が地面に転がっていたぜ……!)
 ヘルメットの一部が切断されている事に気が付くと、三角はいよいよ肝を冷やした。
 命拾いをした三角は、続く二撃目を真横へスウェイ回避。
「2人とも、思いっきり後ろへ飛び退け!」
「させませんよ」
 三連撃目の斬撃が逆袈裟に振り上げられた。
 それを三角は仲間を庇うように立ち塞がると、デッキから巨大な光の剣『カードセイバー』を具現化させる。
「サー・ジャバウォック! その剣筋、見切った!」
 最後は回避するまでもないと言わんばかりに、光の剣でヴォーパル・ソードをパリング防御!
 斬撃を弾かれたサー・ジャバウォックに驚きの表情が浮かぶ。
「なんですと……?」
「残念だったな? 今度は俺の剣をその身で受けやがれ」
 三角が互いの武器での斬り合いをサー・ジャバウォックへ申し込む。
 だが、サー・ジャバウォックは後ろへ一旦引き下がると、ヴォーパル・ソードへ何やら黒い思念を籠め始めた。
「どうやら認識を改めねばなりません。猟兵……なかなか手強い相手ですね。ここは私ではなく『スナーク』に任せてみましょうか」
「おい、逃げるの、かって、何っ?」
 三角の背後に何者かの気配が!
 だが振り返っても誰もいない。
 しかし、周囲には無数の気配が、猟兵達へ殺気を放っているのだ。
「どうやら囲まれてしまいました……!」
 箒星はひとまず演奏を中止すると、カッツェンナーゲル(ねこのつめ)と名付けた鋭い尖端の両刃細身の魔法剣を鞘から抜き払った。
 姿は見えない正体不明の敵の群れは、猟兵達の不安感を煽り高めていった。
 それこそがサー・ジャバウォックの思惑通りのシナリオ。
 完全なる虚構の存在である『秘密結社スナーク』は、他人の“もしかしたら実在するかもしれない”という疑念が結実して、本当に実在してしまうというカラクリだからだ。
「みんな、惑わされるな!」
 だが、ブレイザインは全身に黄金のオーラを漲らせながら叫んだ。
「俺の後ろに隠れてくれ! スナークの攻撃は、俺が全部受け止めてやる!」
「やはり蛮勇ですね。そんな事をしたら、あなたの体が持ちませんよ?」
 サー・ジャバウォックは冷静に、だがしかし冷酷に猟兵達を見据えながら、スナークをけしかけてゆく。
 うごめく不可視の怪物たちが、一斉にブレイザインへ殺到する!
「うぐ……っ! 想像以上の凄い敵の数だ! でも、仲間には指一本触れさせない!」
 燃え盛る炎のような形状の真紅のマントを広げ、三角と箒星をスナークの脅威から守り抜くブレイザイン。
 一方的に殴られ、切り裂かれ、一秒ごとに凄まじいダメージが彼に蓄積してゆく!
 しかし、ブレイザインの表情は、未だ笑みが絶えていなかった。
「見えない敵、なら! 俺を殴った瞬間、目の前にいるってことだろう!?」
 彼の全身に纏う黄金のオーラがより一層強い輝きを放つ!
「そこかぁっ!!」
 ユーベルコード『スーパー・ジャスティス』の効果で飛行可能モードとなったブレイザインは、人の背丈ほどの超低空飛行のまま一気に最大速度のマッハ6.4で戦場を突き抜けてゆく!
 姿はなくとも、手応えでスナークの怪物たちが蹴散らされてゆくのが分かる。
 そのまま向かうはサー・ジャバウォック。
 黒い思念を剣に籠めている怪人へ、ブレイザインは正義の力で突撃してゆく!
「行くぞ、サー・ジャバウォックウゥゥゥーッ!!!」
 己よりも強大な敵へ勇気を持って突貫、そして咆哮!
 その咆哮が彼の意志の力をより一層高みへ昇らせ、パワーがアップするのだ!
 ブレイザインは急速上昇、からの高高度からの急降下キック!
 彼の音速を超えた速度は、空気摩擦により火炎を発生させた!
「超必殺! レイジング! ブレイズキィィィック!」
 火の玉と化したブレイザインの音速飛び蹴りが、サー・ジャバウォックへ突き刺さる!
「むッ!?」
 ヴォーパル・ソードの峰で蹴りを受け止めたサー・ジャバウォックだが、その衝撃で地面へ陥没!
 周囲は巨大なクレーターとなって地面が吹き飛んだ!
 ブレイザインは蹴りの体勢からバク宙の要領で身体を反転させる。
 彼の闘志が、内なる正義の力を爆発させた!
「もう、一撃ィ! ライジング! ブレイザァアア!」
 赤き鉄拳がサー・ジャバウォックの顎を突き上げた!
 だが、悶絶したのはブレイザインの方だった。
「が、あァ!? 硬すぎる、だと!?」
「流石に無傷では切り抜けられませんでしたか……」
 口元からつぅ……と一筋の血が滴り落ちる。
 だが、サー・ジャバウォックの顎が、黒竜の鱗でびっしりと覆われているではないか!
「人間の『黒き悪意』を纏ったこの私に、その様な打撃は通用しません」
 みるみるうちにサー・ジャバウォックは竜人形態へと姿を変えてゆく。竜の鱗が打撃を防御したのだ!
 そして禍々しいオーラを放つヴォーパル・ソードと、背中から生えた黒翼がブレイザインを捕捉する。
「よくぞ私に血を流させました。ですが、いささか近付き過ぎましたね。この距離ならスナークをかわしきれませんよ」
「しま……っ!」
 至近距離から召喚されたスナークの怪物にブレイザインは蹂躙されてしまう!
「危ないっ!」
 箒星は竪琴を弓に見立てて魔法矢を乱射!
 疾風の矢でサー・ジャバウォックの行動を阻害し、スナークを蹴散らす。
 その間にブレイザインは後退していった。
 邪魔をされたサー・ジャバウォックは、標的を箒星へ変更。
 黒翼で空へ舞い上がると、箒星目掛けて突撃を開始!
「お選び下さい。剣で真っ二つにされるか、黒翼で五感をすべて失うか?」
「どちらもお断りします!」
 箒星は魔法の根源へ響くシンフォニアの歌声と属性宿した音色を演奏し始めた。
 すると、突然、サー・ジャバウォックへ向かい風めいた疾風の矢が降り注ぎ、火と水の矢が敵の目の前に殺到!
「ちょっと派手に行きますよ~?」
 熱せられた水が瞬時に気化、水蒸気爆発を起こしてサー・ジャバウォックを吹き飛ばす!
「がは……っ! 猪口才な真似を……む?」
 黒く焼け焦げた森が、一面、真っ白な雲に包み込まれる。
「なるほど、先程の水蒸気爆発は目眩ましも兼ねて、ですか……。しかし……」
 雲の中から歌声と演奏が聞こえてくる。
 箒星の竪琴と歌唱魔法が、サー・ジャバウォックに居場所を知らせれしまっている。
「詰めが甘いですね。そこです」
 音速で音の鳴る方へ詰め寄るサー・ジャバウォック。
 ヴォーパル・ソードを振り下ろし、黒猫を一刀両断に斬り伏せんと試みる。
 だが、けたたましい金属音と共に、剣先が何かに激突した。
「……言っただろう? 俺の剣を、その身で受けてみやがれって!」
 三角が箒星を守るように立ちはだかり、カードセイバーで剣撃を受け止めていた!
 すぐさま三角は、サー・ジャバウォックへ斬り掛かった。
 カードの魔力で生成された光の剣の前では、竜の鱗など紙同然にスパスパ切り裂かれてゆく!
「むむ、小癪な……!」
 サー・ジャバウォックはやむなく三角との斬り合いに応じるほかない。
「三角さん、頑張って下さい。私も援護します」
 人の心はまた輝く優しさもあることを歌い上げる箒星は、人間の悪意で変身しているサー・ジャバウォックを次第に弱体化させてゆく。
 サー・ジャバウォックは視界が悪い上にユーベルコードを弱められていく不利な状況を作った箒星を再び標的とした。
「黒猫くん、謝罪しよう。君がこの3人の中で、一番厄介な存在だ」
 サー・ジャバウォックは三角の剣を弾き飛ばすと、一瞬で音速まで移動速度を持ってゆき、黒翼で箒星を強かに打ち据えた。
 だが、箒星もすれ違いざまに火の爆発・水の水圧刃・風のかまいたちの三属性の魔法矢で黒翼を粉砕!
 飛行能力を失ったサー・ジャバウォックは、空中でバランスを崩して墜落。慣性の法則に従って、物凄い速度のまま地面を転がってゆく。
「おい、大丈夫か!?」
 地面に倒れる箒星を抱き起こす三角。
 しかし、箒星は全く反応を示さない。
 これに起き上がったサー・ジャバウォックがほくそ笑む。
「ふふふ……私の黒翼に触れた者は、五感が全て奪われるのです。黒猫くんは今や木偶人形同然です」
「何だって? くそ……!」
 守れなかった自分の不甲斐なさに歯噛みする三角。
 だが、おお、なんと!
 箒星は明後日の方向を向いたままどうにか立ち上がってみせた!
 平衡感覚すら破壊されているのに、彼は指を懸命に動かし、狂った音程で歌い、的はずれな音階を奏でている!
 何たる執念深さか!
「もういい……! 黒猫はもう休め!」
 三角は竜人化が解除されたサー・ジャバウォックへ駆け寄る。
「お前は絶対に許さない!」
 素手で向かってくる相手に、サー・ジャバウォックは呆れ返っていた。
「怒りにまかせて徒手空拳で飛びかかってきますか。青いですね」
「剣がないとは一言も言ってないぜ?」
 カードデッキからどろーするかのごとく、光の剣が再び生成されてゆく!
「剣はカードから幾らでも生成して攻撃できる。手詰まりと思わせての一撃なんて、ゲーマーでは当たり前だぜ?」
「しまった! 防御を……!」
「なんてな? 本命はこっちだぜ!」
 サー・ジャバウォックの視線を光の剣に誘導させ、三角は左腕をユーベルコードでキングコブラに頭に変換!
「食いついて丸のみしてやるぜ! コブラバイティング!」
 猛毒を持つ蛇が猟書家の脇腹をガブリと噛み付いた!
 ぐらり、とサー・ジャバウォックの体が傾く。
「おっと、まだ倒れんなよ?」
 グサリ、と光の剣でサー・ジャバウォックの片足を地面に縫い付けると、伝説の大怪盗が愛用していた自動拳銃のレプリカであるニューワルサーの銃口を敵の眼前……零距離で突き付けた。
「吹っ飛んじまえ!」
 銃声が立て続けに轟けば、サー・ジャバウォックの身体が吹っ飛ばされてゆく。
 そして、駄目押しとばかりに、三角の後ろから三色の魔法矢の束がサー・ジャバウォックに突き刺さった!
「……どうやら、五感が戻ったようですね」
 箒星、復活!
「魔法とは根源から溢れる魔力を用います。魔法の根源に共鳴させて世界へ助力を願えば、きっと空や大地が守護下さいます。そして森羅万象の力の循環の一部となった私は、全ての感覚を取り戻し、イケオジ様を射抜いたのです」
「ぐ……ぅ! よもや、ここまで手強いとは……!」
 猟兵の底力に、サー・ジャバウォックは額から流れる大量の血糊を拭うと、不敵に笑みを浮かべるのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

アハト・アリスズナンバー
アドリブ共闘歓迎

貴方はここで打ち倒します。サー・ジャバウォック。
その剣が――ヴォーパルソードが一つだけだと思わない事だ。

相手の攻撃に対して【見切り】【第六感】で避けつつ、私の周りに触れると遅くなる【結界術】を仕込みます。
触れたのなら、此方のヴォーパルソードを持って【破魔】の【カウンター】です。その際に【グラップル】弾を【誘導弾】で当てておき、竜に【騎乗】して翼の【部位破壊】を狙います。
そしてUCを起動。
――対象をジャバウォックと確認。本懐を果たせ。ヴォーパルソード。
五感が封じられようと自動追尾弾ならば、関係ないでしょうからね。



 サー・ジャバウォックの前へ、新手の猟兵が姿を表した。
 その猟兵はくるぶしまでありそうな長い金の御髪をなびかせ、黒銀の瞳と純白の軍服めいたスーツとスカートを纏った美女であった。
 ……腰元のどぶろくがやたら目を惹くのは致し方ない。
「貴方はここで打ち倒します。サー・ジャバウォック。私はアハト。量産型個体アリスズナンバー8号です」
 アハト・アリスズナンバー(アリスズナンバー8号・f28285)は剣呑な雰囲気で敵へ言い放つ。
「その剣が――ヴォーパルソードがひとつだけだと思わない事だ」
「ふむ。お嬢さんのその剣もヴォーパル・ソードの名を関するというわけですか」
 サー・ジャバウォックは、アハトの手中に収まっている魔法剣を見遣った。
 そしてメキメキと音を立てながら、サー・ジャバウォックの姿がみるみるうちに変異してゆく。
 人間の『悪意』を纏う――漆黒の龍鱗が体中を覆い尽くすと、完全な竜人形態にサー・ジャバウォックは姿を変えた。
「この姿での私の最高速度はマッハ9です。私が最高速度に達した状態でここを素通りしただけで、あなたの肉体は衝撃波によって地形もろともを破壊されるでしょう」
「だから勝ち目がない、と言いたげですね。果たしてそうでしょうか?」
 アハトの不遜な言動に、サー・ジャバウォックは訝しがった。
「……どうやら、なにか策を仕込んでいるようですね。いいでしょう、我らが『書架の王』を除けば、私が猟書家最強の実力の持ち主。あなた達の策など真正面から蹴散らしてご覧入れましょう」
 サー・ジャバウォックは背中の黒翼を羽ばたかせると、ぐんぐんと店へ飛び昇ってゆく。
 そして、高硬度から一気にミサイルめいてアハトへ向かって急降下を開始!
「一太刀に斬り伏せてあげましょう」
「そうでしょうね。“真っ直ぐ私へ突っ込んでくる”と思っていました」
 アハトはどぶろくの中身を自身の前に撒き散らして場を浄化すると、その場に結界を発生させた。
(チャンスは1回。失敗すれば……“この肉体”は爆散するでしょうね)
 アハトはたとえ死んでも、アポカリプスヘルにある故郷の製造工場から新しい同個体が記憶を引き継いた状態で復帰してくる。
 だが、それをアハトは今回、よしとしなかった。
(相手はジャバウォックを名乗る存在。そしてあの剣。今回は“私”が必ず仕留めてみせます)
 ゾンビアタックではなく、目指すは完勝であった。
 そうこうしているうちに、サー・ジャバウォックは上空から隕石めいてアハトへ迫ってくる。
 これにアハトはサイドステップをするだけに留まる。
「その程度では、私が発する衝撃波から逃れられませんよ?」
「……そうでしょうね」
 アハトは即座に敵の言葉を認めた。
「ですが、出来るものならやってみて下さい。無理でしょうけど」
「……!?」
 アハトの言葉よりも先に、サー・ジャバウォックは彼女は生成した結界の中に頭を突っ込んだ。
 そこは、時間の流れが周囲よりもやたらと遅い空間に書き換えられていた。
「まんまと突っ込んできましたね? それでは、反撃に映らせていただきます」
 アハトは自身の結界に影響を及ぼさない場所から、自身のヴォーパルソードをサー・ジャバウォック目掛けてビームグラップル弾を発射!
 ビームグラップル弾は敵の一を自動追尾し、正確に敵の体にビーム弾を打ち込んでみせた。
「今ですね」
 ビームグラップル弾を牽引することで、アハトはサー・ジャバウォックの背中の乗り移ることに成功!
 まずは1本、自身が具現化させた魔法剣ヴォーパルソードを、サー・ジャバウォックの背中へ深々と突き刺した。
 すかさず、彼女はその傷口へ向かってユーベルコードを容赦なく発動させる!
「――対象をジャバウォックと確認。本懐を果たせ。ヴォーパルソード」
 禍々しい紋様の方陣が空中に描かれたかと思えば、幾何学模様を描きながら、840本もの魔法剣が何度も何度もサー・ジャバウォックの体を突き刺していった。
 再び黒翼の翼を破壊されたサー・ジャバウォックは、揚力を失って2度目の墜落を果たす。
 アハトはサー・ジャバウォックの身体から地面へ飛び降りると、全身に剣が突き刺さったまま、何度も地面を弾んでゆくサー・ジャバウォックを睨みつけた。
「たとえ五感が封じられようと自動追尾弾ならば、関係ないでしょうからね。実際はそれまで至りませんでしたけども」
 宣言通り、アハトの完勝でこの対戦カードは幕を閉じたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルパート・ブラックスミス
愛機こと専用トライクに【騎乗】し【ダッシュ】。
【挑発】を兼ねて直線・最短距離で接敵。

先制攻撃の巨大剣の対処は
自身と愛機が内蔵している鉛も供給し【武器改造】、こちらも巨大化した大剣で防御。
【武器受け】した瞬間を【見切り】、刀身を再度【武器改造】、剣同士を溶接し床に突き立て【武器落とし】。
次撃は振らせん、【怪力】で力尽くで縫い留める。

その巨大剣、貴様の視界から【物を隠す】にうってつけだ。
反撃は、媒体人形を持たせた鳥形態のニクス(爆槍フェニックス)を
敵の刀身の影を潜るように飛ばし、目前にて【指定UC】、
仮初の身体と槍形態に変形したニクスで【ランスチャージ】!

その厄書、虚構のまま焼き砕かせてもらうぞ!


春霞・遙
物語の中の化物が架空の生物を現実に顕現させようとしているなんて滑稽ですね。
まぁ、それが実現できてしまう敵だから恐ろしいのですけれど。

煽りにもならない言葉がけで時間を作ります。
その間に周囲に勿忘草色ノ使蝶を舞わせて、鱗粉や蝶の動きでスナークの接近に気づいて避けられるように準備します。
また、最強に対峙する恐れを糧に触手たちを呼び出し自分の左手の肉の一部でも喰わせましょう。
スナークの位置がわかったら自身の血液でマーキング。
射撃と【心を喰らう触手の群れ】でスナーク共々猟書家を攻撃します。

ただ、ジャバウォックの詩もスナーク狩りも読んだことはないんです。
つまり私の中であなたは存在しません。ごめんなさいね。


エメラ・アーヴェスピア
出て来たわね、猟書家
折角平和に向かっている世界に再び戦乱を持ち込ませるわけにはいかないわ
ここで確実に撃滅しましょう

見えない架空の怪物…「見えない」がどの程度の物によるか、なのよね
ドローンやサイバーアイなどを使って【情報収集】、只見えなくなるだけならば視覚以外の情報から察知すればいい
私なら…それが可能な筈よ、察知したのならば後は盾で防いだりガトリングで制圧射撃して動きを制限したり
やれる事をやりましょう
私がUCを放てるようになってもやる事は変わらないわ
様々な情報を収集、それを元に『我が砲音は嵐の如く』による範囲攻撃、見えない怪物ごと砲弾を叩き込んであげるわ

※アドリブ・絡み歓迎



 猟兵達はここから一気に畳み掛ける。
「今が好機。猟書家よ、覚悟しろ。引導を渡す時が来たのだ」
 死した主の魂を宿す黒騎士の鎧のヤドリガミことルパート・ブラックスミス(独り歩きする黒騎士の鎧・f10937)は、愛機である専用大型トライクに跨り、フルスルットルで急発進。
 その後部座席には、春霞・遙(子供のお医者さん・f09880)とエメラ・アーヴェスピア(歩く魔導蒸気兵器庫・f03904が相乗りしている。
「出て来たわね、猟書家。折角平和に向かっている世界に再び戦乱を持ち込ませるわけにはいかないわ。ルパートさん、それに遥さん、ここで確実に撃滅しましょう」
「そうですね。では、作戦通りに」
 春霞は冷静に頷いてみせた。
「心得た、エメラ殿」
 ルパートは青く燃える液体鉛を纏わせた大剣へ、自身の鎧の中身とトライクの動力の一部を更に集結させると、剣身が更に巨大化。
「最速で最短距離を駆けて斬り捨てる。それが貴様の斬撃への対処だ」
「真っ向勝負というわけですか。いいでしょう。かかってきなさい、騎士殿」
 サー・ジャバウォックも青白き斬竜剣ヴォーパル・ソードを巨大化させると、力任せに旋回、立て続けに三連撃をルパートへ向かって打ち込んだ。
 その斬撃の一打目、ルパートは巨大剣を片手で上段に掲げ、横薙ぎの一撃をパリング防御。
 よろめく愛機! 投げ出される春霞とエメラ!
「くっ、ふたりとも、無事か!?」
「何処を見ているのです?」
 そこへサー・ジャバウォックの最上段から振り下ろされるニ打目!
「三打目は振らせん、サー・ジャバウォック!」
 ルパートは巨大剣を青白く燃え上がらせながら、ヴォーパル・ソードを真正面から受け止めた! 彼の凄まじい怪力が、サー・ジャバウォックの剣閃を受け止めることを実現させたのだ。
 次の瞬間、サー・ジャバウォックは専用トライクの速度に引き摺られてゆくではないか!
「何……っ! 剣が、離れないですと……!?」
 両者の剣が激突した瞬間、まるで溶接したかのように2本の剣ががっちりと接合してしまっている。サー・ジャバウォックは剣から手を放そうとはせず、そのまま大型トライクに引きずり回される状態に陥っていた。
「まずい! ですが剣を手放すわけには……! む……?」
 巨大化した剣の影で、何かが揺らめいていた。
「その巨大剣、貴様の視界から物を隠すにうってつけだ」
 剣の影から飛び出したのは、クチバシに人形を咥えた青いヨタカ『ニクス』。
 今の今まで、敵の刀身の影を潜るように飛ばしていたのだ。
「ニクス、今だ!」
 ルパートはサー・ジャバウォックを蹴り落とすと、ニクスは敵の眼前で人形を放り投げた。
「過去に潰えた我が命運は鋼と鉛に繋がれ。されど、未来で結んだ縁は運命を新たな道に導く――!」
 人形が一瞬で青眼黒髪の青年の姿へ早変わりすると、燃え上がるニクスを掴み取った。ニクスは滾る蒼炎を纏い自在に飛び回る魔槍へと姿を変え、青年の手中へ収まった。
「誰ですか、あなたは……!」
 驚愕するサー・ジャバウォックに、青年は青白く燃える槍の穂先を突き付けながら答えた。
「ルパート・ブラックスミス。この肉体……『縁が紡ぎし身製(リテイクルパートリインカーネーション)』で貴様を討ち果たす騎士の名だ」
 放たれた槍の一撃が、サー・ジャバウォックの脇腹が焼き削る!
 先程の人形が、ヤドリガミ特有の仮初の肉体を具現化させるためのキーアイテムだったのだ。今のルパートは、器物そのもののまま大型トライクを駆る本体と、仮初の肉体を得た青年の2人が互換を共有し、それぞれが独立して活動可能なのだ!
「これは、不覚を取りました……。やむを得ません。あとはスナークの怪物たちに任せましょう」
 サー・ジャバウォックは侵略蔵書『秘密結社スナーク』を開き、後ろへ退く。
 ルパートの周囲にナニカが蠢き始め、身体の自由を奪ってゆく。
「くっ、邪魔だ……!」
 爆槍フェニックスで見えない怪物を払い除け、大型トライクで轢殺してゆくも、一向に数が減ってゆかない。
「物語の中の化物が架空の生物を現実に顕現させようとしているなんて滑稽ですね。まぁ、それが実現できてしまう敵だから恐ろしいのですけれど」
 そこへ、挑発の言葉を春霞はサー・ジャバウォックへ投げ掛けた。
 しかし、サー・ジャバウォックはそれを鼻で笑って一蹴する。
「お嬢さん、安っぽい挑発の前に、ご自身の身の安全を確保するのが最優先ではないでしょうか?」
「ええ、そうですね。ですから、既に対策済みなんです」
「そうよ。ルパートさんが奮戦している間、私達が何もしないわけないじゃない?」
 エメラもしたり顔をサー・ジャバウォックに向ける。
「そもそも、私達に攻撃を仕掛けるなら、実体がなければ出来ない話よね? だとしたら、それは私達が視認出来ないだけの話ってことよ」
 エメラの頭上には、いつの間にか魔導蒸気ドローン数機が待機しており、戦場全体をスキャニングしていた。そのデータを、エメラの装着するサイバーコンタクトで解析を行うことで、スナークの怪物達の居場所を推測吸うことが可能なのだ。
「そして、私はこの子達にお願いして、戦場に『色』を付けてもらいました」
 春霞の指先には、青い翅が幻想的な『勿忘草色ノ使蝶』が数匹止まっていた。
「この子達の鱗粉、勿忘草色……つまり青く輝くんです。少しの光の屈折で、ほら、こんな具合に!」
 ゆらり、と青い影が揺らめいていた箇所へ、春霞は素早く拳銃の銃弾を浴びせた!
 途端、ナニカの断末魔が目の前で轟き、気配が消失していった。
「サー・ジャバウォック。見えない怪物は私達にはもう通用しないわ。おとなしく撃滅してあげるから覚悟しなさいな」
 エメラの背後に、浮遊する黄金の魔導蒸気ガトリングガンが出現すると、サイバーコンタクトを通じて怪物たちの群れへ制圧射撃を開始する。
「さあ、今度はこっちが狩りをする番よ。まさにスナーク狩りね?」
 防御は浮遊型魔導蒸気盾のオートガードに一任し、エメラはひたすら硝煙と薬莢と銃声を戦場に撒き散らしてゆく!
「これが私のユーベルコード『我が砲音は嵐の如く(ワイドエリアバラージ)』よ。それじゃ、『お片付けの時間(ショータイム)』と洒落込みましょうか」
 浮遊型魔導蒸気ガトリング砲が更に増設・改造されると、今度は全方向へ銃弾が撃ち込まれてゆく!
 こうなってはスナークの怪物たちは為す術もない。ただひたすら狩り尽くされ、猟兵達へ近付くことすら出来ない。
「重火力による範囲攻撃は便利ですね……」
 感心しながら春霞は、砲火の雨を掻い潜りながら、鱗粉の輪郭を頼りにスナークの残党の攻撃をかわしてゆく。
「そろそろですね」
 春霞は自分の左手を差し出すと、自身の体内から紫色の触手が這い出てきた。
「敵は最強を自負する存在。それに対峙する恐れで触手達を呼び出せましたね。では、存分に喰らいなさい」
 春霞の合図とともに、触手が彼女の左手の一部の肉を一瞬で食い千切った。
 溢れて滴り落ちる鮮血。狂喜乱舞する触手達。
「命じます。敵はサー・ジャバウォックと、怪物スナークの群れの殲滅です。一切の躊躇いは不要です。ただ貪欲に喰らい尽くしなさい」
 春霞は、左手から噴き出す鮮血を周囲に撒き散らしてゆく。
 すると、蝶の鱗粉と共に、鮮血を纏ったスナーク達の輪郭がはっきりと露わとなる。
 そこへ殺到する触手の群れが、液体を啜る音と固体を咀嚼する音を立てながら自動的に攻撃を開始する。
 これこそが春霞のユーベルコード『心を喰らう触手の群れ(エンプティ・パロニリア)』である。
「なるほど、マーキングか。このままサー・ジャバウォックへ肉薄するぞ」
 鎧の方のルパートが、春霞を大型トライクの後部座席に乗るように指示。
 春霞も再び後部座席にまたがると、無傷の右手で拳銃を握り込み、怪物の群れを次々と鮮血で輪郭を浮き彫りにしながら射殺していった。
「ヴォーパル・ソードも、スナークも通じない。猟兵……、私の想像を遥かに上回る戦闘力ですね」
 剣を失うも、今だ怪紳士は侵略蔵書『秘密結社スナーク』を後生大事に抱えている。
 だが、その蔵書を狙って、青年のルパートが爆槍フェニックスと共に上空から急襲のランスチャージ!
「その厄書、虚構のまま焼き砕かせてもらうぞ!」
「なに、空を飛べるのですか!?」
 槍は蔵書ごとサー・ジャバウォックの身体を貫き、青白い炎で炎上させてゆく。
「ルパートさん、離れて!」
 エメラの掛け声に青年ルパートが再び空へ舞い上がれば、黄金のガトリングガンの銃弾嵐がサー・ジャバウォックの全身に浴びせられた!
「サー・ジャバウォック、悪いが、この青白き斬竜剣は戦利品として鹵獲してゆくぞ」
 鉛の大剣とヴォーパル・ソードの二刀流!
 大型トライクに騎乗したまま、鎧のルパートがすれ違いざまにサー・ジャバウォックを切り捨てていった。
「がハッ!? よ、よもや、己の剣の斬れ味を……この身体で、味わうことになろうとは……」
 それでも立ち上がろうとするサー・ジャバウォック。
 だがその額に、熱が籠もった銃口を向ける春霞が立ち塞がった。
「これで終わりです。私達の勝ちです」
 銃を握る彼女の腕に、制御を解いた触手の群れが纏わりつく。
 サー・ジャバウォックは紳士的に静かな笑みを浮かべ、その口端から血を滴り落とす。
「お美事……実にお美事でした。最期に、私へ何か恨み言のひとつでもぶつけてみてはいかがですか?」
 敵の最大級の皮肉を前に、春霞は少々困惑した顔で答えた。
「……実は私、ジャバウォックの詩もスナーク狩りも読んだことはないんです」
 拳銃のトリガーに掛かる指に力を込める。
「つまり私の中であなたは最初から存在しません。ごめんなさいね」
「……くく、はははっ! なんてことでしょうか!」
 サー・ジャバウォックは自嘲する。
「私の冠した名前通り、この結末は……なんてナンセンスなのでしょうか!」
「――さようなら」
 春霞は何の感情もないまま、拳銃の引き金を絞る。
 それが合図となって、触手の群れが矢のように飛び出していった。

 黒く焼け焦げた森に静寂が戻った。
 猟兵達はサー・ジャバウォックが完全に死亡したことを直感で理解した。
 そして、次々と攻略可能になる他の猟書家たち。
 迷宮災厄戦は大きな局面を迎えようとしていた……。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年08月16日


挿絵イラスト