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迷宮災厄戦⑲〜過ちは繰り返す

#アリスラビリンス #戦争 #迷宮災厄戦 #猟書家 #サー・ジャバウォック

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●猟書家『サー・ジャバウォック』
 焼け焦げたの森の国に、その猟書家は立ってた。
 初老の紳士。手にした蔵書は侵略蔵書『秘密結社スナーク』。そして、もう片方の手にあるは青白き斬竜剣『ヴォーパル・ソード』。
「スナーク狩りは結構なことである。しかし、お前は突然静かに消えうせて、二度と現れることはない」
 侵略蔵書を閉じ、一節を諳んじた猟書家『サー・ジャバウォック』は頭を振る。
 顔に刻まれた皺は決して浅いものではないが、くしゃりと眦に皺が寄ると気の良い紳士のような表情を浮かべる。

「まったくもって退廃的かつ猟奇的な全容を克明に記載した書物であることでしょう。実在しない、まったくもって虚構だけの存在『秘密結社スナーク』。全てが虚構であるがゆえに、違和感を見出すことの出来ない存在。人の数だけスナークが存在し、そのどれもが違う存在……それこそが戦いの歴史」
 青白き斬竜剣『ヴォーパル・ソード』の柄を撫でる。間違いなく『書架の王』を除けば、猟書家の中で最強の戦闘力を持つ者が、この初老の紳士の姿をした猟書家である。
 穏やかな物腰。丁寧な言葉遣い。優雅な所作。
 そのどれもが最強たる戦闘力を持つ存在であるとは思えなかった。だが、その言葉は純然たる事実。
 猟兵の一人でも対峙すれば、その実力は否応なしに思い知らされることだろう。

「過ちは繰り返す。人の営みの中で戦いとは切っても切れぬ存在。戦いが繰り返されからこそ、人は進化する。数多の生命と時間を犠牲にしたからこそ、到達できる至高の領域がある。繰り返しましょう。戦いの歴史を。かつて戦いの歴史紡がれたヒーローズアースにて……―――!」

●迷宮災厄戦
 グリモアベースへと集まってきた猟兵達に頭を下げて出迎えるのは、ナイアルテ・ブーゾヴァ(フラスコチャイルドのゴッドハンド・f25860)だった。
「お集まり頂きありがとうございます。猟書家『サー・ジャバウォック』の存在する戦場への道が拓かれました」
 その瞳に宿るのは緊張であった。
 猟書家。その中でも最も強いと呼ばれる『サー・ジャバウォック』へと至る道が真っ先に拓かれてしまったからだ。
 その場へと猟兵たちを送り出すことへの躊躇が、敵の強大さを物語っていた。

「はっきりと申し上げます。その戦闘力は激烈なるもの。猟書家『サー・ジャバウォック』は皆さんに必ず先制攻撃を加えてきます。強烈なるユーベルコードであることは間違いありません」
 手にするは侵略蔵書『秘密結社スナーク』。見えない架空の怪物スナークを放ち、遠距離から攻撃するだけでなく、遠隔地にある物を掴んだり動かしたりすることが可能である。
 さらに青白い斬竜剣『ヴォーパル・ソード』。それを巨大化し、周囲の敵を全て薙ぎ払い、敵味方の区別なくば、さらなる追撃が襲う。

「そして、最も警戒しなければならないのが、プロジェクト・ジャバウォック……黒き悪意を纏いし竜人形態に変身し、ヴォーパル・ソードの威力を増強……触れた者の五感を奪う黒翼による飛翔能力まで得るのです」
 猟書家最強の力を持つ、という言葉に偽りはない凄まじきユーベルコード。
 そのどれもが強力なものばかりであるが、そればかりでなく、必ず猟兵に先制してくるのだという。

「危険は承知の上でお願いいたします……ですが、みなさんであれば、敵の先制攻撃を躱し、対策を立て、必ずや猟書家『サー・ジャバウォック』を打倒してくださると信じております」
 どのみち、猟書家『サー・ジャバウォック』よりもさらに強大なるオブリビオン・フォーミュラ……オウガ・オリジンと戦わなければならないのだ。
 ここで立ち止まっていたは、どのみち迷宮災厄戦を勝ち抜くことなど到底できようはずもない。それ故に猟兵は止まらない。
 どれだけ強大な敵であっても、如何なる力を持っていようとも、その足を止める理由にはなっていないのだから―――。


海鶴
 マスターの海鶴です。

 ※これは1章構成の『迷宮災厄戦』の戦争シナリオとなります。

 焼け焦げたの森に存在する猟書家『サー・ジャバウォック』。その猟書家最強の力を持つ『サー・ジャバウォック』を打倒しましょう。
 また猟書家『サー・ジャバウォック』は必ず先制攻撃を行ってきます。

 ※このシナリオには特別なプレイングボーナスがあります。これに基づく行動をすると有利になります。

 プレイングボーナス……敵の先制攻撃ユーベルコードに対処する。

 それでは、迷宮災厄戦を戦い抜く皆さんのキャラクターの物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
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第1章 ボス戦 『猟書家『サー・ジャバウォック』』

POW   :    侵略蔵書「秘密結社スナーク」
見えない【架空の怪物スナーク】を放ち、遠距離の対象を攻撃する。遠隔地の物を掴んで動かしたり、精密に操作する事も可能。
SPD   :    ヴォーパル・ソード
【青白き斬竜剣ヴォーパル・ソード】を巨大化し、自身からレベルm半径内の敵全員を攻撃する。敵味方の区別をしないなら3回攻撃できる。
WIZ   :    プロジェクト・ジャバウォック
【人間の『黒き悪意』を纏いし竜人形態】に変身し、武器「【ヴォーパル・ソード】」の威力増強と、【触れた者の五感を奪う黒翼】によるレベル×5km/hの飛翔能力を得る。

イラスト:カキシバ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

佐伯・晶
折角守ったヒーローアースの平和を
乱されない為にも皆と協力して戦うよ

五感を奪われるのは厄介だね
剣の一撃はワイヤーガンで回避か神気の防御で防ごう
移動速度が速いといっても初動はあるだろうから良く見て対応

初撃を凌いだら使い魔を召喚
例え五感を奪われても使い魔とは思念でやりとりできるからね

そして使い魔は全身を竜型の超硬装甲で覆うから
直接翼に触れる事は無いはずだよ

五感を奪われていてもいなくても
超硬装甲を形成する際に僕も中に入れて貰おう

使い魔は噛みつきと尻尾の薙ぎ払いで戦闘
剣の攻撃は装甲で上手く受け流すよ
装甲を破る為に突撃してくるなら
全方位に鱗を射出してカウンター
どんなに早くても実体がなくなる訳じゃないからね



「ようこそおいでくださいました。猟兵の皆様。はじめまして。猟書家『サー・ジャバウォック』と申します」
 恭しく一礼する初老の紳士。
 その見事な所作、優雅な気品すら感じさせる佇まいは、焼け焦げたの森の中にあって異質そのものであった。
 だが、その姿を見た猟兵は知るだろう。対峙するだけでわかる圧倒的な存在。その強大なる力。身に纏う人間の黒き悪意、それが猟書家『サー・ジャバウォック』の体を竜人携帯へと変貌させていく。
 黒翼が翻り、その圧倒的な力の奔流はビリビリと肌を灼く。
「プロジェクト・ジャバウォック……参りましょう」
 振るうは斬竜剣『ヴォーパル・ソード』。青白き光の奔流が輝きを増し、黒翼を以て空へと舞い上がるその姿は、まさに不定形の怪物。

 だが、佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)は退かない。
「折角守ったヒーローズアースの平和を乱されない為にも、みんなと協力して戦うよ……!」
 そう、猟書家『サー・ジャバウォック』。彼の狙う世界はヒーローズアースである。戦って、激闘の末に世界を護りきった晶たち猟兵にとって、再び猟書家によって戦乱が起こることはあってはならないことだ。
「平和とは、戦乱の後にこそ訪れるもの。今まさにヒーローズアースが平和であるというのならば、必ずその平和は脅かされるわけです。一時の平和を謳歌した後にこそ、争乱が似合うとは思いませんか、レディ―――」
 黒翼翻り、『サー・ジャバウォック』が振るう青白い『ヴォーパル・ソード』が剣閃となって晶を狙う。

 それをワイヤーガンを射出し、体を巻き取ることに寄って躱しながら、触れた者の五感を奪う黒翼に触れぬように立ち回る。
「残念だけど、僕は―――!」
 中身は男なのだと言う前に振るわれる『ヴォーパル・ソード』。生き次ぐ暇もないほどの連続攻撃。
 早すぎる。初撃を凌いだ瞬間に使い魔を放とうとするが、隙がない。振るわれる剣を神気で受け止める。
 まるで神気が防御にならない。剣の凄まじさは、停滞・固定の権能を持つ邪神の力を持ってしても止めることが敵わない。

「さあ、黒翼に抱かれて―――終わりにしましょう、レディ」
 黒く伸びる不定形の黒翼が晶の胴を薙ぐ。
 触れたものの五感を奪う。
 それが如何なるものであるのかを、晶は身を持って知る。見えない。聞こえない。臭わない。手にしたワイヤーガンを握っているのか、そうでないのかもわからない。
 けれど、晶はたったそれだけのことでえ立ち止まるわけにはいかない。
「ご褒美くれるなら頑張るのですよー!!」
 己の五感を犠牲にして漸く手に入れた隙。
 ユーベルコード、式神白金竜複製模造体(ファミリア・プラチナコピー・レプリカ)によって、召喚された金属中を元に構成された希少金属で作られた超硬装甲を持つ使い魔が無数に現れる。

「ほう―――金属の使い魔。数が多いのはさすがですね、レディ。ですが」
『サー・ジャバウォック』は獰猛に笑う。
 紳士然とした立ち振舞の中に、どうしようもないほどの凶暴性が垣間見える。五感を奪われ、発することもできない晶。
 だが、彼女は使い魔たちに思念でやり取りを続ける。まずは己の体をかたどる竜型の超硬装甲で覆う。
 その中に入ってしまえば、如何な『ヴォーパル・ソード』と言えど防御を抜くことは難しい。

 次々と襲いかかる超硬装甲の竜の姿をした使い魔たち。
 思念で次々と指示を出し、『サー・ジャバウォック』へと噛みつき攻撃や剣を防いでいく。
「ただ硬いだけでは、私を破ることなどできませんよ―――」
 晶を包む使い魔へと肉薄する『サー・ジャバウォック』。その獰猛なる瞳の輝きを、五感失いし晶は感じた。
 それは殺意と言ってもいいだろう。猟書家『サー・ジャバウォック』は確かに強大なるオブリビオンである。
 だが、それ故に五感を喪って尚、晶が感じ取れるほどの殺意が仇となった。

「どんなに早くても実体がなくなるわけじゃないからね―――!」
 肉薄していた『サー・ジャバウォック』の顔が驚愕に染まる。
 それは竜型であるが故に存在する無数の鱗。防御の要であるそれを、全てパージする全方位射出攻撃。
 どれだけ早く動こうが、その全方位に凄まじい速度で放たれる鱗を全て避ける暇はない。
「ぐっ―――!」
 たまらず後退していく『サー・ジャバウォック』。カウンターが上手く効いてくれたからよかったものの、その戦法は捨て身の戦法であった。
 如何な超硬装甲があろうとも、強化された『ヴォーパル・ソード』の一撃は防ぐのは難しかった。
 故にカウンターで決めるしかなかったのだ。
「自分で猟書家最強っていうのは伊達じゃないね―――……後は頼んだよ」
 晶は己の五感の回復を待って、ユーベルコードを解除する。
 世界の侵略者たる猟書家。その最強の一角の力を感じながら、晶は再び戦場を目指すのだった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

乱獅子・梓
【綾(f02235)と】
いきなり猟書家最強のお出ましなのか
しかもこいつを倒せばオウガオリジンが
力を取り戻してしまうんだったか…正直やり辛いな
ハハッ、お前に正論を言われてしまうとはな

先制対策
見えない攻撃を回避するのは至難の業だろうから
零を成竜に変身させ、俺と綾を覆い隠し
怪物の攻撃から守ってもらう
ここだけでいい、何とか凌ぎ切ってくれ
(かばう・激痛耐性

綾が身を挺して怪物を抑え込んだら
すかさず使い魔の颯を高速で敵本体に接近させる
頼れる怪物は居ないから自分自身で
颯の対処をするしかなくなるだろう
敵が颯に気を取られたその隙に
成竜の焔に乗り一気に接敵しブレスを浴びせ
UC発動して更に威力を増したブレス攻撃で追撃


灰神楽・綾
【梓(f25851)と】
まぁ、後のことは後で考えようよ
どれだけ強くなろうと最終的に
倒しちゃえばオールオッケーだしね
…それにほら、そんな迷いを抱えたままで
戦って勝てるほどヤワじゃないと思うよ

梓と共に零に庇ってもらい先制攻撃をやり過ごす
自身も黒揚羽で全身を覆い、少しでもダメージ減らす

武器構え、更にPhantomの蝶を纏いながら
敵に向かって真っ直ぐ突っ込んでいく
そんな俺に向けて見えない怪物を仕掛けてくるだろう
敢えて喰らい激痛耐性で耐える
あはは、かかったね
俺が攻撃を受けた方向に蝶を飛ばしUC発動
怪物は「見えない」だけでそこに確実に居る
紅い蝶が鎖と化して怪物を捕縛
さぁ、これでもう好き勝手はさせないよ



 猟書家最強。
 それが猟書家『サー・ジャバウォック』である。その力の強大さは、先行した猟兵を持ってしてもカウンターに持ち込むしかなかった。
 その力量の凄まじさ故に猟兵たちに先制を打ち込むことのできる猟書家『サー・ジャバウォック』にとって、カウンターの一撃を打ち込まれることは予想外であった。
 その体のあちこちに超硬装甲の鱗が突き刺さっているが、それを押し出すようにして体外へと排出すると、サー・ジャバウォックは溜息を一つ吐き出す。
「ふぅ―――侮っていたわけではありませんが、あのレディ……凄まじい覚悟。おみそれいたしました。さて、お次は」
 黒翼をしまい、地へ降りる。その手にした侵略蔵書『秘密結社スナーク』が風に煽られるようにして頁が翻る。
 見えない怪物『スナーク』。それこそが全て虚構で出来た侵略蔵書『秘密結社スナーク』が産み出した見えない怪物。

 その見えない手は、次なる猟兵の獲物を狙い、放たれる。
「いきなり猟書家最強のお出ましなのか……しかもこいつを倒せばオウガ・オリジンが力を取り戻してしまうんだったか……正直やりづらいな」
 乱獅子・梓(白き焔は誰が為に・f25851)はらしく無く言葉紡ぐ。今回の迷宮災厄戦は考えることが多い。
 オウガ・オリジンと猟書家の構図もそうであるが、どの猟書家を潰し、残すのか。また猟書家を倒すことに寄って本来の力を取り戻していくオウガ・オリジンをどこまでで留めるべきなのか。

 複雑になり始めた大きな戦いに梓もまた頭を悩ませる猟兵の一人であった。
「まあ、あとのことは後で考えようよ。どれだけ強くなろうと最終的に倒しちゃえばオールオッケーだしね」
 梓とは対象的にざっくりとした言葉を紡ぐのは灰神楽・綾(廃戦場の揚羽・f02235)だった。
 彼にとって戦いとは、最期に立っていた物が勝者である。どれだけ圧倒的な存在であろうとも、最終的に倒してしまえばいいと言い切ってしまえるのは、共に戦う梓にとって頼もしいことこの上ないことであった。
「……それにほら、そんな迷いを抱えたままで戦って勝てるほどヤワじゃないと思うよ―――!」

 綾が言葉を紡いだ瞬間、彼らを襲うのは見えない怪物の両腕。
 二人の猟兵を捉えようと放たれた見えない怪物『スナーク』の一撃は、梓の相棒である氷竜、零であった。成竜と変化し、梓と綾を覆うように翼で隠す。
 だが、それは二人の身代わり、盾になり、敵の攻撃を一手に引き受けるということだ。放たれた怪物の拳が零の体を打つ。
 その衝撃が覆いかぶさられた二人の肌にまで届くほどだ。
「―――ここだけでいい、何とか凌ぎ切ってくれ」
 その梓の求めに応えるように咆哮する零。だが、猟書家最強の『サー・ジャバウォック』の放つユーベルコードの見えぬ怪物の拳は硬く、重い。

 成竜となった零で攻撃を受けて耐えるしかなかった。
 その巨体の隙間を縫うようにして飛び出すのは、群れる黒揚羽と共に駆け出す綾だった。そんな彼を襲う見えない拳。
 次々と黒揚羽の群れが叩き落されていく。目指す先にあるのは、猟書家『サー・ジャバウォック』。
「単身で突撃とは―――見くびられたものです。その献身、見上げたものではありますが、勇気と蛮勇を履き違えた者がどうなるか……思い知って頂きましょう」
 放たれる見えぬ拳の一撃。
 それは不可視の鉄槌のように綾の体を強かに打ち付ける。鈍い痛み、頭が揺れる。視界が赤くにじむ。
 けれど、彼の視線は真っ直ぐに。
 如何に見えぬ攻撃といえど、攻撃を受けてしまえば、何処から攻撃をされたのかわかる。その視線の先には見えない怪物の姿を捉えていた。

「ぐっ、く―――あはは、かかったね! ―――離してあげないから、覚悟してね」
 紅の蝶が飛ぶ。群れは一直線に攻撃を己へと加える見えない怪物へと伸びていき、鋭い一撃となって『見えない怪物と綾とをつなぐ破壊することの出来ない鎖へと変ずる。
 それは決して抜けることの出来ないロンサム・ファントム。彼のユーベルコードが、ついに見えない怪物スナークを捉える。
「怪物は『見えない』だけで、其処に確実にいる―――さあ、これでもう好き勝手はさせないよ」
 ぎち、と見えない何かを縛り上げる赤い鎖。ぎちぎちと未だに抵抗を続けるのは、猟書家最強たる所以であろう。

「―――梓ッ!」
 叫ぶ。それは彼の渾身のユーベルコードだった。もしも、自分ひとりであったのならば、此処までだっただろう。
 だが、綾はひとりじゃない。いつも隣りにいてくれる梓がいる。彼がいるからこそ、自分が敵を食い止める楔になれる。

「颯、行け! あの鎖の先にやつがいる!」
 闇鳥、颯が疾風のごとく空を駆け抜ける。それは反撃の一矢であった。高速で飛翔する矢の如き颯を躱す『サー・ジャバウォック』。だが、それは決定的な隙を産み出していた。
 見えない怪物は、綾が身を挺して抑え込んでくれている。ならば、颯への対処は自分自身で行なわなければならない。
 如何に最強の猟書家と言えど、同時多数の攻撃に対処するすべはない。
「焔―――! 悦べ、この炎を拝んで死ねる事を!」
 放たれるは、星火燎原(スーパーノヴァ)。成竜と化した炎竜、焔のブレスが『サー・ジャバウォック』を灼く。
 その炎の一撃を受け、さらなるブレスが襲いかかる。連続で放たれた炎は、『サー・ジャバウォック』の体を灰燼に帰すように放たれ続ける。

 焼け焦げたの森の中において、焔の放った炎は、森の国を徹底的な破壊で覆い尽くす。
 その炎の中を飛び退っていく『サー・ジャバウォック』。

「完全には倒せなかったが……なんとかなったか。綾、無事か」
 梓が綾へと駆け寄る。
 見えない怪物の攻撃を引き受けてくれた零と綾。彼らの傷は浅くはない。けれど、綾はケロリとして笑うのだ。

「ほら、なんとなったでしょ―――」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アイン・セラフィナイト
真実を記録し管理する書架の管理者として、キミの虚構語りを許すわけにはいかない。虚構は、誰かを貶めるために使うものじゃないよ。

『暁ノ鴉羽』の鴉羽と、『境界術式』による魔導書の束から土属性の粉塵を生成、舞い上がらせて視認不可能にすることで『時間稼ぎ』するよ。その間に、『天照』で他の時間の位相からボクの残像をデコイとして配置する。

UC発動、【全智ノ書】にはこう記そう。『サー・ジャバウォックの竜人形態は、猟兵を圧倒する力を持っていなかった』と。そして、『剣を振るう手は弱々しかった』ってね。
『早業』で、境界術式の属性を変える。あらゆる属性を複合した『属性攻撃・全力魔法・範囲攻撃』で全てを『蹂躙』する!



 超硬装甲の鱗、炎竜の炎。
 焼け焦げたの森の中を疾駆するは、猟書家『サー・ジャバウォック』。その紳士たる姿に未だ陰りはない。
 だが、それは表面の話である。鱗の散弾の如きカウンターと身を焦がす炎、そのダメージは着実に、その初老の紳士たる猟書家最強の『サー・ジャバウォック』を追い詰めていた。
「ふむ……侮っていたわけではありませんが……なるほど、個々の力は私には及ばないものの、数で押し切られてしまう可能性もないわけではないようですね。認識を改めましょう―――そうでしょう、そこの猟兵の方」
『サー・ジャバウォック』のモノクルから放たれる視線がアイン・セラフィナイト(全智の蒐集者・f15171)を取られる。

「真実を記録し、管理する書架の管理者として、キミの虚構語りを許すわけにはいかない。虚構は、誰かを貶めるために使うものじゃないよ」
 アインの瞳は真っ直ぐに向けられていた。
 対峙して分かるその実力。凄まじいまでのプレッシャー。竜人形態へと変貌する『サー・ジャバウォック』の姿は、まさに不定形の怪物。
 黒翼が羽撃き、瞬く間に間合いを詰められようとした瞬間、アイン周囲に浮かぶ神性伴った鴉羽と魔書の数々。その秘められた魔術が土煙の粉塵を巻き上げる。
 さらには他の時間の位相から自身の残像を囮として配置する。
 初撃は必ず猟書家『サー・ジャバウォック』が取る。それを空振りにするためには、どれだけ周到に準備をしていても足りるということはなかったのかも知れない。

 砂塵によって視界は覆われているはずなのに、振るわれる青白い斬竜剣『ヴォーパル・ソード』の剣閃は振るわれる度に砂塵を払い、鴉羽の障壁を切り裂き、囮として残した残像すら消し飛ばす。
「私の持つ侵略蔵書『秘密結社スナーク』のことをおっしゃっておられるのですね。なるほど、確かに。ですが、虚構を虚構と見破ることができるのは、その中に一滴の真実が残っている時のみ。ですが、この侵略蔵書には、一滴の、一粒の真実すらないのです。全て虚構であるがゆえに、誰も虚構のほころびに気がつくことができないのです」
 くしゃり、と眦の皺が寄る。『サー・ジャバウォック』が笑う。
 こんな場所でなければ、紳士の笑顔のように思えただろう。
 だが、此処は今まさに戦場である。その笑顔であっても、背筋が凍るほどの威圧感を感じる。だが、その威圧感に気圧されるアインではない。

「記そう、キミの総てを。そして……否定しよう、キミの総てを―――キミが虚構を語るのをやめないというのなら、全智ノ書には、こう記そう」
 全智ノ書『汝ノ名ヲ此処ニ記ス』(アカシック・レコード・オブ・ジ・ユビキタス)―――それは猟書家『サー・ジャバウォック』の全ての情報が書かれた魔導書。
 それがアインの手の中にある。
「―――魔導書。ならば、貴方が本体ですね?」
 間合いを詰められる。圧倒的速度と攻撃力。その一刀がアインへと振りかぶられる。

 だが、その鋭き献饌はアインへと振るわれることはなかった。
「『サー・ジャバウォックの竜人形態は、猟兵を圧倒する力を持っていなかった』―――そして、『剣を振るう手は弱々しかった』」
 ここに相成るは『サー・ジャバウォック』の存在証明を侵害する編纂。改変された情報は真実となる。
 たとえ、それが虚構だらけの存在であったとしても、形定まらぬ怪物であったとしても、その書に記された言葉から逃れられるすべはない。

 今まで圧倒的な速度でもってアインを圧倒した竜人形態が弱々しく靄のように霧散していく。剣を振るうては力を失い、その剣の自重で大地に突き刺さるのみ。
「これ、は―――改変能力のユーベルコード!」
 猟書家最強の『サー・ジャバウォック』は、ここに来てアインのユーベルコードの力を見誤った。
 そう、砂煙は、囮は、自分を欺くだけの時間稼ぎ。

「あらゆる属性を複合した……この術式で、キミの全てを『蹂躙』する!」
 アインの周囲に浮かぶ魔導書達が光り輝く。
 無数に浮かぶ魔書に織り込まれた属性は様々である。その全てを束ねて放たれるアインの渾身の魔法は、焼け焦げたの森を真っ白に染め上げる。
 あまりの威力、光の奔流に吹き飛ばされる猟書家『サー・ジャバウォック』。
 あれだけの一撃を放っても尚、アインはトドメをさせていないことを理解していた。
 だが、一矢。
 確実にその力を消耗させた。ユーベルコードの効果がどこまで保つかわからないが、それでも続く猟兵達の戦いに大きな影響を与えることには違いない。

「猟書家『サー・ジャバウォック』……まさに最強の名に相応しい……後は、頼んだよ」
 膝をつく。まだまだ戦いは続く。続く猟書家たちに、オウガ・オリジン。倒さなければならない敵はまだいる。
 一度付いた膝を再び奮い立たせ、アインは次なる戦場へと掛けていくのだった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アルトリウス・セレスタイト
いつも通りだ

先制含む敵行動は『絶理』『刻真』で自身を異なる時間へ置き影響を回避
此方の全行動は『刻真』で無限加速し攻撃は目標が存在する時間へ
必要魔力は『超克』で“世界の外”から汲み上げる

始源を展開
対象は猟書家
万象一切を砕く破壊の原理を宿す魔弾として行使
因果の原理を以て対象外へは無害とする

高速詠唱を多重に連ね『再帰』『刻真』で無限に加速・循環
『解放』を通じて全力の魔力を注ぎ干渉力を最大化
更に『天冥』にて因果を歪め「目標に着弾した状態」で全弾斉射
最速での討滅を図る
一度で足りねば討つまで行程を継続

最近よく言うのだがな
勝利を望むなら、骸の海くらいは飲み干して出てくるが良い

※アドリブ歓迎



 編纂され、改変された猟書家『サー・ジャバウォック』の力は、漸くにして取り戻される。先刻まで立ち上がるのも一苦労であったが、その姿はすでに全盛を取り戻しつつあった。
 凄まじきは猟兵の持つ、ユーベルコードの力。多種多様な猟兵がいると言っても、その力は千差万別。生命体の埒外にある、と言われるが所以。
「油断していたわけではありませんが、これはいやはや……なんともみっともない。猟兵の戦いとは常にこんなふうに行なわれるものなのでしょうか」
 猟書家『サー・ジャバウォック』は初老の紳士の、優雅なる所作のまま人間の黒き悪意を纏う竜人形態へと変貌する。

「いつもどおりだ」
 変わることはない。アルトリウス・セレスタイト(忘却者・f01410)は、そうつぶやいて、猟書家最強の『サー・ジャバウォック』と対峙する。
 プレッシャーを感じないわけがない。
 それほどまでに黒き悪意を纏った『サー・ジャバウォック』の力の重圧は凄まじいものであった。
 手にした青白き斬竜剣の鋭さは言うまでもない。『ヴォーパル・ソード』が振るわれる。

 だが、アルトリウスはの姿は斬撃の最中に消える。
 それは気配を断つであるとか、残像を残すほどの超スピードではない。まるで最初から其処に居なかったかのように、姿がこつ然と消える。
 斬撃は虚空へと吸い込まれるように手応えがない。
「超スピードというわけではないようですね……」
『サー・ジャバウォック』はモノクルの奥の瞳を細める。先程は先行した猟兵に寄って手痛い反撃を受けた。
 それは慢心したわけではないものの、『サー・ジャバウォック』のちからを大きく削ぎ落とし、確かに彼を消耗せしめた。

 故に、今の『サー・ジャバウォック』に油断はなかった。
 だが―――。
「―――舞え」
 ユーベルコード、始源(シゲン)によって己の持つ原理によって生み出された光球。万象一切を砕く破壊の原理を宿す魔弾。
 放たれる魔弾の如き一撃は、たった一度の攻撃で終わるわけがない。
 淡青の光玉は、高速詠唱に寄って多重に重ねられ、原理の力によって無限に加速、循環していく。

「この光―――なるほど、世界の外から力を持ってきているというわけですか。汲み上げるというのが正しいと」
 しかし、敵もさるものである。
 光球の連撃を次々と『ヴォーパル・ソード』で切り払う。だが、それも最初のうちだけであった。
 剣で切り払われると、すぐに対処を打ってくる。全力の魔力で持って干渉する力を最大限に引き上げる。

 矢を放つ前にすでに的に当たることは決定しているから狙う必要がないのだと、弓の名手は言った。

 それは因果を逆転させる魔人の如き技量。
 光球は当たるように放ったから当たるのではなく、当たるから放った。つまるところ、歪められた因果は『目標に着弾した状態』を先に手繰り寄せる。
 そこに回避という概念が入り込む予知はない。
 切り払ったとしても、結果は『当たっている』のだから、回避のしようはずもない。
「最近よく言うのだがな。勝利を望むなら、骸の海くらいは飲み干してでてくるが良い」
 その言葉は光球の嵐に飲み込まれる猟書家『サー・ジャバウォック』の耳にまで果たして届いただろうか。

 その結末を知らぬまま、アルトリウスの瞳に『サー・ジャバウォック』の姿が映らなくなるまで、その光球は放たれ続けるのであった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

須藤・莉亜
「物騒で楽しそうなおじーさんだねぇ。」
殺り合い甲斐があるってもんだよ。

黒翼は触りたくはないけど、たぶん無理だろうし、最初から悪魔の見えざる手に血飲み子と黒啜を預けておく。僕は奇剣と深紅で先制攻撃を凌ぐ事にしようか。
てことで、殺気を感じ取って動きを見切り回避と、悪魔の見えざる手と一緒に武器受けで防御していこうか。

凌げたら、UCで吸血鬼化。五感が奪われてたとしても、やる事は変わらない、敵さんごと全力で周囲の生命力を奪うだけ。他の人がいない事を祈っとこう。

攻撃は悪魔の見えざる手に任せる。僕は奪った生命力を強化と再生に使い続けながら、周囲を砂漠にする勢いで限界を超えて生命力を奪い続ける事にしよう。



「猟兵は生命の埒外にある者―――よく言ったものです」
 吐き出す息に疲労の色が見える猟書家『サー・ジャバウォック』。超硬の鱗の散弾、炎、そして無限に放たれ続ける光球の攻撃を受け、それでも身をかわして空を舞う人間の黒き悪意を纏いし竜人。
 その黒色の翼は、振れるものの五感すら奪う異形にして、彼をして猟書家最強たらしめるプロジェクト・ジャバウォックたる力の顕現。
 不定形の怪物故に、その力は未だ無尽蔵。
 通常のオブリビオンであれば、即座に骸の海へと還っていることだろう。だが、青白き斬竜剣の煌きはいまだ衰えず。

「物騒で楽しそうなおじーさんだねぇ」
 そんなのんびりとした声が響く。
 須藤・莉亜(メランコリッパー・f00277)は嬉しそうな顔をして、黒翼羽撃かせる竜人たる『サー・ジャバウォック』を見上げていた。殺り甲斐があるってもんだよ、と舌なめずりする。
 あれだけの力を持つオブリビオンの味はどんなものであろうか。
 それを想像しただけで、普段抑えている吸血衝動が跳ね上がるような気がした。けれど、本来の目的を忘れてはならない。

 あの黒色の翼に触れてしまえば、五感を喪ってしまうことは事前にグリモア猟兵からの情報で知っている。
「これはまた珍しい。吸血衝動を抑えるダンピールとは」
 頭上より降り注ぐように飛来する殺気と『サー・ジャバウォック』の振るう『ヴォーパル・ソード』。それは無慈悲なる斬撃となって彼の頭上より叩き落された。
「―――ッ!」
 既のところで、奇剣、極無の無色透明なる刃と深紅の鎖の二重による防御で斬撃の一撃を防ぐ。

 だが、踏みしめた大地がひび割れ、莉亜の足が大地に沈む。
 ただの一撃。たったそれだけであるというに、体中の骨がきしむほどである。受けては駄目だ。本能的にそれを悟る。
 このまま力比べのように攻撃を受け続けてしまえば、こちらの方が先に潰れる。
「ほんと、物騒だね! 楽しそうって思っちゃうものだから仕方ないよね!」
 次々と放たれる青白き剣閃。
 それを見えざる手が手にした大鎌のニ刀と深紅の鎖、無色透明なる刃でもって受け流す。
 
 受け止めては、逆にこちらの武器が破壊される。
 それは最早本能的な直感であった。いや、勝負勘と言っても良い。放たれる剣閃、翻る黒色の翼を紙一重のギリギリで全て莉亜は避け続けていた。
「さあ、遊ぼうか。どっちが先に死ぬのかな?」
 楽しい。
 本能がそうさせるのか、わからない。楽しいと思った。全身が吸血鬼化していく。他者の命を奪うオーラがまとわれ、初撃で受け止めた衝撃で体の中の骨がひび割れていた負傷が回復する。

 超絶なる吸血の力は、まさに不死者の血統(イモータル・ブラッド)の照明である。
「―――これはとんだ戦闘狂ではありませんか。若さとは時にこうした力を発揮するものですね」
 互いが互いを強者と認めた瞬間であった。
 一方が狩る間柄ではない。対等の存在。そこにあるのは、尊敬でもなければ、強者への恭順でもなかった。

 あったのは、ただの快楽。
 ここに来て、『サー・ジャバウォック』の力が跳ね上がっていく。引き上げられるように、ぎりぎりと互いの力がましていく。
 上がる攻撃速度。火花散る代わりに血風が周囲に渦巻く。
「楽しいね! 楽しいね! 周りに邪魔する人がいないから、遠慮なんてしなくっていい!」
 黒色の翼が莉亜の腕を吹き飛ばす。瞬間、五感が一瞬にして消え失せる。視覚も、聴覚も、味覚も、触覚も、嗅覚も。
 あらゆるものが色を失い、あらゆるものが莉亜から遠ざかっていく。

 だが、もう彼にとってそれらは意味のないものだ。
 周囲の木々が色褪せていく。焼け焦げたの森の中であっても、生命の力は溢れている。だが、それすらも全て奪っていく。
 生命吸収の力は、彼の吸血の力を拠り所にしている。その彼の持つ吸血後からは、超絶たるものだ。どれだけ五感を奪われようとも、彼の力の源泉は、対峙する者がいる異常、損なわれることはない。

 限界を超える。
 その言葉は容易に紡がれるものであるが、生半可なものではなかった。焼け焦げたの森は彼を中心に干からび、砂漠のように成っていく。
 まるで千日手。
 傷つけられ続けても、即座に再生していく。
 切り飛ばされた瞬間から傷がふさがり、癒えていく。叩き潰されたとしても、次の瞬間には復元されている。

「なんたる狂人……! 正気の沙汰ではありますまい!」
 その言葉は彼には響かなかった。
 例え、聴覚が戻っていたとしても、興味はなかった。興味があるのは、その生命の味。血の味だけだ。

 だから、莉亜は戦い続ける。
 莉亜という猟兵を殺すことができないと悟った『サー・ジャバウォック』が彼を捨て置き、消耗しきった体で退散するまで―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ラファエル・ノックハーツ
※アドリブ大歓迎!

闘争だ!それしかなぁい!
…そんな事しかその設定本には込められてないなら、間違いなく道端のゴシップ本と変わりゃしないなそいつはァ!!

武器がデカいから何だってのサ!
武器の振りを見切り、怪力+早業の超身体能力で躱す、躱す、躱ぁす!
反撃に武器・AGNIの炎を「俺の」火炎・激痛耐性で使いこなし、UC発動、【人間砲弾~荒ぶ炎の没シュート~】をぶちかましたる!

何も分かっちゃいねえんだな…戦いは終える為にある。止める為に人は進化した―…!
その本がいずれ世界の現実になろうが、そんなもんはササっと終わらせちゃる!!!

「ご存じねぇの?俺はOVERMAN!終わり(OVER)をくれてやる男だ!!」



 殺すこと叶わずの者がいる。
 それを知るには十分すぎるほどの時間が過ぎていた。猟書家『サー・ジャバウォック』にとって、それは意外なほどに焦燥にかられるものであった。
 手にした侵略蔵書『秘密結社スナーク』。それは全てが虚構であるがゆえに不滅たる存在スナークを記した書物である。
 それ故に、存在する者であっても『殺せない』と自身が退散した事実が『サー・ジャバウォック』の最強を揺らがせていた。
「あまりにも規格外……猟兵とはあんなものもいるのだとは、終ぞ知ることもなかったですね……」
 幾度の猟兵に寄る攻撃。
 それは確実に猟書家最強たる『サー・ジャバウォック』の体力を削っていた。

「闘争だ! それしかなぁい! ……そんなことしか、その設定本には込められてないなら、間違いなく道端のゴシップ本と変わりゃしないな、そいつはァ!!」
 その声は高らかに響いた。濃赤のビジネススーツに身を包んだ、ラファエル・ノックハーツ(オーヴァーマン!!!・f28352)の姿、そこにあった。
 その瞳に宿るのは己の力を正義と平和の為に使うと誓いし、スーパーヒーローたる意志。
「これはまた、今どきの若者にしては珍しいぐらいに真っ直ぐな青年ですね。ですが、貴方にかまっている暇はないのですよ……ですから」
 猟書家『サー・ジャバウォック』の手にした青白き斬竜剣『ヴォーパル・ソード』が巨大化する。その刀身は掲げる彼自身の全長を遥かに超え、剣と呼ぶにはあまりにも巨大な建造物の如き威容。
 その巨大さ故に振るわれる斬撃は鈍いものであるように思えた次の瞬間、ラファエルの眼前に迫るのは、鋭き剣閃。

 その一撃を受けてしまえば、如何なるスーパーヒーローであったとしても地面に倒れ伏すことだろう。
 それだけの圧倒的な力を眼前に迫る刀身からラファエルは感じ取っていた。受ければ、死。
 それは強制的にイメージさせられる。一瞬の後には己が死んでいるかも知れないという未来。
 だが、その死のイメージすら振り切ってラファエルは吠える。
「武器がデカいから何だってのサ!」
 一瞬の出来事。暴風の如き剣閃を躱す。
 あらゆる角度、あらゆる位置から放たれる『ヴォーパル・ソード』の連撃は、まさに嵐のごとくラファエルを襲う。
 それを超絶なる身体能力で持って躱し続ける。

「何もわかっちゃいねえんだな……戦いは終える為にある。止める為に人は進化した―――……!」
 ラファエルの生命が燃える。燃え盛る。古代の炎神が遺した鉄鋼たる炎神の滅手甲〈AGNI‐アグニ‐〉が、その名の通り、炉にラファエルの生命をくべる。
 それは燃料であった。燃え盛る焔が焔であり続けるために薪が必要であるように、その力を振るう代償は―――生命。

 だが、止まらない。一度付いてしまった炉心の火は例え吹き荒ぶ風の中であろうと、深海の中であろうと消えることはない。

「その本がいずれ世界の現実になろうが、そんなもんはササっとおわらせちゃる!!!」
 ユーベルコード、THE☆人間砲弾~(最高に渋い副題)~(ザ・ニンゲンホウダン)が発動する。
 それは己の体を放つユーベルコード。己自身を砲弾に変える力。そして、燃え盛るは生命の焔。握りしめた鉄鋼から焔が吹き出す。
 己の命を砲弾に変える。

「ば、かな―――! そんなでたらめな戦い方があるわけがありません! 己の生命を代償にするなど、何者なのです、あなたは―――!」
 猟書家『サー・ジャバウォック』がうろたえる。
 その焔はまさにあらゆるものを燃やし尽くす原初の火。確かに桁違いの威力を放つであろう。
 だが、その代償は生命である。生きるために戦うのが生命であるというのならば、戦う度に生命を第しょうとするのは、生命の摂理に反して―――否。ラファエルは猟兵である。

 猟兵とは生命の埒外にある者。
 ならば、その理は彼には通じない。刹那の瞬間に放たれる自身を砲弾にした拳の一撃は、猟書家『サー・ジャバウォック』を盛大に吹き飛ばす。
 周囲の空気があまりの熱に歪む。
 その中心にラファエルは立ち、勝利のスタンディングを決める。そして、高らかに宣言するのだ―――。

「ご存知ねぇの? 俺はOVERMAN! 終わり(OVER)をくれてやる男だ!!」

大成功 🔵​🔵​🔵​

アレクサンドル・バジル
【POW】
サー・ジャバウォックだったか。紳士って感じのナイスミドルだな。
その通り、戦いの歴史は繰り返すだろうよ。サーがいてもいなくてもな。
まあ、その歴史は俺が見届けてやるよ。
残念ながらサーの行き先はヒーローズアースではなく骸の海だぜ。

先制対策POW
見えないスナークの襲撃を第六感で見切り、カウンターの一撃で破壊します。

おっと、次は俺の番だぜ。と敵が次のUCを放つまでに間合いを詰めてステゴロによる怒涛の攻めを行い、機を捉えて『一撃必殺』を放ちます。

アドリブ大歓迎



「ぐ―――はッ! はぁっ、はぁっ……なんたる、なんたる醜態。これが猟書家最強と言われた私の―――」
 炎熱なる極焔の拳を受けて尚、猟書家『サー・ジャバウォック』は未だ存在し続けたいた。先行した猟兵から放たれた拳の一撃は、一撃でその体の半身を吹き飛ばしていた。焼け焦げたの森の中にあって、その身を焦がす匂いは『サー・ジャバウォック』を苛立たせる。不定形の怪物故に、その体の傷は即座に覆い隠される。
 見ただけでは未だ健在を誇っていることだろう。だが、その内面はダメージの蓄積に寄って追い込まれ始めていた。

「サー・ジャバウォックだったか。紳士って感じのナイスミドルだな」
 アレクサンドル・バジル(黒炎・f28861)は、その褐色の鍛えられた体を誇るように一歩を踏み出した。
 目の前には猟書家最強たる『サー・ジャバウォック』がいた。何も臆する必要などないというように、堂々と、それこそリングに入場するように現れたのだ。
「お褒めに預かり光栄でありますが、今は構っている余裕などないのです。お構いできなくて申し訳ありませんね」
 手にするのは、侵略蔵書『秘密結社スナーク』。ばらりと風に遊ぶようにして頁が翻る。
 つぎの瞬間、見えぬ怪物スナークの腕が伸びる。だが、それをアレクサンドルが認識することは出来ない。虚構だけで構成されているがゆえに、誰もスナークのことを認識できない。けれど、必ずそこに在るもの。それが見えない怪物スナークの正体である。

「人の歴史、営みは争いの歴史。紡がれた戦乱があらゆるものを加速度的に進化させていく。人は原初の時代より、他者を害することによって生命をつないできた存在。狩猟によって他者を殺すすべを磨いたように」
 見えぬ怪物スナークの腕がアレクサンドルへと迫る。
 だが、次の瞬間アレクサンドルの体は状態を反らすように胸を張る。その眼前を掠める見えない何か。
 それは驚愕の光景であった。見えぬはず、感知できないはずの拳を今、アレクサンドルは躱したのだ。
 猟書家『サー・ジャバウォック』のモノクロの奥の瞳が見開かれる。偶然ではないかと思ったのだ。タイミングよく呼吸し、胸をそらしただけではないかと。
 だが、違う。
 それは事実ではない。

「そのとおり、戦いの歴史は繰り返すだろうよ。サーがいてもいなくてもな」
 その瞳に宿るのは自信であった。みなぎる自信。根拠無用たる自信。圧倒的な、他の誰かを信じること以上に自らのことを信じるがゆえに宿る意志の光をともした瞳が輝く。
 拳が握られた瞬間、見えぬ怪物スナークの拳が払われる。駆け出すアレクサンドルの姿は、一つの弾丸のようであった。一瞬の間合い。
「まあ、その歴史は俺が見届けてやるよ」
 笑う。アレクサンドルの笑いは、不敵なものであった。
 如何に猟書家最強の存在であろうとも、猟兵達によって蓄積されたダメージを覆すことはできない。
 だが、そんなものがなくても、このアレクサンドル・バジルという男は関係なく戦いを挑んできただろう。

「戦いの歴史がそれを物語っていると―――! 盛者必衰であると、私すらもそれから逃れ得ぬと言うのですか!」
 再び放たれるスナークの手。だが、その尽くを振り払ってアレクサンドルは一直線に『サー・ジャバウォック』へと迫る。肉薄する体。間合い。あらゆるものが遅くなる。
 視線の先には自身の拳を叩きつけるべき者がいる。狙いは外さない。
「おっと、次は俺の番だぜ―――」
 次なるスナークの腕が迫る。だが、そのどれもをアレクサンドルは感知していた。殺気とも言うべきものであったし、悪意というものであったことだろう。その全てを、この肌は感じ取っている。

 握りしめられた拳に宿るユーベルコードの名は―――一撃必殺。
 放たれる拳の一撃は、とっておきの一撃。溜め込んだ右腕と、左腕によるジャブの連撃が『サー・ジャバウォック』をその場に釘付けにする。
「足、停めたなァ―――!」
 踏み込む。腰が回転する。あらゆる動作は、最大効率。そのなめらかなる円運動が放つはあらゆるものを砕く拳。

「残念ながらサーの行く先はヒーローズアースではなく骸の海だぜ」
 叩き込まれる拳。その一撃は奇しくも先行した猟兵と同じ場所。穿たれた半身を覆う偽装たる身体がひび割れ、砕かれる。その衝撃による崩落は、さらに『サー・ジャバウォック』の身体をひび割れさせていく。
 たまらずに後退する『サー・ジャバウォック』。
「―――っ、はぁっ!」
 テンカウントを取るまでもない。息を吐き出すアレクサンドル。
 怒涛の如き連撃をいなし、躱し、そして放った一撃。その一撃の負担は彼の足を震えさせる。消耗の度合いは、『サー・ジャバウォック』がどれほどの強敵であったかを物語っている。

 ノックアウトとまでは行かなかったけれど、テクニカルノックアウトではあるだろう。それでも勝利は勝利である。
 アレクサンドルは、逃げ延びる『サー・ジャバウォック』の背に、勝利の雄叫びをあげるのであった―――!

大成功 🔵​🔵​🔵​

村崎・ゆかり
戦いが技術を進歩させてきたことは認めましょう。だけど、人の進歩は戦いだけで紡がれてきたわけじゃない。平和もまたヒトに必要な揺り籠よ。

「高速詠唱」「全力魔法」で、「破魔」「浄化」「範囲攻撃」の「結界術」を展開。悪意を纏ったままで、この領域へは踏み込めないわ。だから、近接攻撃特化の武器しかないあなたには早々手が出せない。

巫覡載霊の舞をもって、あなたを骸の海へ還す。
風の「属性攻撃」を帯びた「衝撃波」を連続で放って。

感覚剥奪攻撃には、「呪詛耐性」と「浄化」を常に身に帯びることで撥ね除けるわ。
五感を奪う呪詛って面白そうね。あたしにも試させて。
呪符に感覚を奪う呪詛を乗せて、猟書家へ放つ。五感全部は無理か。



 その拳に寄る一撃は、見た目以上の損害を猟書家『サー・ジャバウォック』にもたらしていた。半身は燃え焦げて落ちたように失われ、さらなる拳に寄って全身にひび割れが起こっていた。
 もうどうしたって取り繕えぬほどの損傷をけて尚、その不定形の怪物たる力は損なわれていない。ダメージの蓄積があろうと、その身に纏うは人間の黒き悪意。
 それが存在する限り、何度でも『サー・ジャバウォック』は穿たれた半身すら取り戻して戦い続けるだろう。
「そう、闘争こそが歴史の本質。紡がれる歴史は全て騒乱の歴史。望むと望まざると、人は戦わなければ生きていけない生命であるのですから」
 黒き悪意を身に纏って、黒翼を翻す猟書家『サー・ジャバウォック』の表情に、当初の頃の余裕は面影もなくなっていた。

 それだけ猟兵達の攻撃が苛烈であるのだ。
「戦いが技術を進歩させてきたことは認めましょう。だけど、人の進歩は戦いだけで紡がれてきたわけじゃない。平和もまたヒトに必要な揺り籠よ」
 村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》・f01658)は、猟書家『サー・ジャバウォック』と対峙する。
 一瞬の隙が命取りになる。それを理解していたからこそ、ゆかりは高速でなおかつ全力でもって破魔と浄化の結界術を展開する。
 彼女の目論見は、近接攻撃特化の武器しか持たぬ猟書家『サー・ジャバウォック』を封じること。この防御結界に置いて、悪意を纏うものは一歩も踏み出すことはできない。

「だから、あなたは早々手が出せない―――」
 ゆかりの張り巡らせた破魔と浄化の力込められし結界を破ることは容易ではなかった。だが、だからといって猟書家『サー・ジャバウォック』が諦めるわけもない。
 手にした青白き斬竜剣『ヴォーパル・ソード』が閃く。放たれた剣閃は過たず、ゆかりの結界に振るわれる。
 その衝撃はまるで地震のようにゆかりの足元から根本を揺らがすような威力を持って何度も何度も振るわれる。
「確かに。これでは私の攻撃は貴方に届かない。だが、いつまでも張り続けられているわけではないでしょう」
 ひび割れる。それは衝撃的な光景であった。強固に張り巡らせた結界であるというのに、『ヴォーパル・ソード』が振るわれる度に結界にほころびが生まれる。

 次の瞬間、ゆかりはユーベルコード、巫覡載霊の舞を発動させ、神霊体へと変ずる。手にした薙刀を持って、結界内から風の属性を帯びた衝撃波を放つ。
 その斬撃は遠距離からでも一方的に『サー・ジャバウォック』を斬りつけることができる。
「―――でも、それは貴方も同じでしょう? その黒い翼、悪意で身体を覆って隠しているつもりなんでしょうけど!」
 放った風の刃が竜人形態となり、その傷を隠し続けている黒き悪意をこそぎ落とすようにぶつかる。
 さらに追撃のように次々と放たれれる風の刃。
 散り散りになっていく悪意纏う身体、払われる度に顕になっていく傷。
「この舞をもって、あなたを骸の海へ還す―――!」

 だが、それだけの傷を追って尚、咆哮するは竜人の如き不定形の怪物たる『サー・ジャバウォック』。
 放たれた黒翼がゆかりの五感を剥奪しようと迫る。その鋭き一撃はゆかりの身体を傷つけ、その五感を奪っていく。
「これが、五感を奪う呪詛っ!」
 次々と失われていく触覚、聴覚、嗅覚……だが、ゆかりにとって呪詛とは扱うものであり、それを御するものである。
 あらゆる五感を彼女から奪う呪詛は、耐性を持って3つに留められる。更に浄化の力をおびることによって、その奪われた3つも僅かながらに取り戻す。
 ぐらつく感覚。吐き気をもよおすような不快感を吹き飛ばして、ゆかりは飛ぶ。
「残念ながら―――レディ。私の首級を差し上げることはできませんな。ですが、見事という他ありません」
 逃げられる!と猟書家『サー・ジャバウォック』を追って、ゆかりが呪符を取り出す。

「面白いことをしてくれるわね―――あたしにも試させて!」
 放たれる呪詛返し。呪符に感覚奪う呪詛を載せて、放つ。完全に再現することは難しい。
 だが、その呪符を受けて『サー・ジャバウォック』が失墜するように焼け焦げたの森の中へと消えていく。
 それを追う力は残っていなかったが、ゆかりはそれでも最強たる猟書家を退けたのだ。ぐらりとまだ五感剥奪の呪詛が体に残っている。
 この呪詛を完全に振り払って、再び彼女は別の戦場へと駆けつけなければならない。まだまだ戦いは、迷宮災厄戦は続くのだから―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アリス・フェアリィハート
アドリブや連携等も歓迎です

ジャバウォックさん…
何処かで
お聞きした事ある様な
お名前…?

それに
私の剣と同じ名の剣…
――ともあれ
別世界への侵攻など
させません…!

【WIZ】

敵の先制攻撃は
【第六感】【早業】【見切り】等をフルに駆使
こちらもUCを発動
相殺を試みます

相殺成功したら
自身の剣の
『ヴォーパルソード』に
【破魔】を込め
【属性攻撃】や【なぎ払い】
等の剣戟や
剣からの【衝撃波】【誘導弾】
等の遠距離攻撃等を
【二回攻撃】とも組合せ
時間差・多角的に攻撃

敵の攻撃は
【第六感】【見切り】【残像】【オーラ防御】等で
防御・回避

『自分のこの剣の謂れは…私にも解りません…けど…これまで私を何度も助けてくれた、大切な剣です…!』



 黒翼失われ、失墜するは猟書家『サー・ジャバウォック』。
 その姿はもはや何故、今もまだ健在であるのか疑わしいほどに傷ついていた。半身は穿たれ、その身に纏った黒き悪意は散り散りに成っていた。
 それでも尚、立ち上がるのは最強たる猟書家たる自負か、それとも。
「ふ、ふふふ……これこそが闘争。どれだけ時が立とうとも……我が『ヴォーパル・ソード』は血を求める……抗う事など出来ぬのです」
 青白き斬竜剣を大地に突き刺し、立ち上がる『サー・ジャバウォック』。満身創痍であっても、対峙するもの在れば、その力の健在さを知るだろう。
 肌を焼くプレッシャーは、その最強たる力の顕現を知らしめる。
 黒き悪意は再び、その体を覆い、五感を奪う黒翼が雄々しく開かれた―――。

「ジャバウォックさん……何処かで、お聞きしたことあるようなお名前……?」
 それは小さくぽつりとつぶやかれた言葉であった。
 声の主である小さきオラトリオ、アリス・フェアリィハート(不思議の国の天司姫アリス・f01939)は空色の光焔を纏い輝く姫英雄の剣を携えて、戦場に立つ。
 その視線は黒色の悪意纏う『サー・ジャバウォック』とは対象的な出で立ちであった。
 初老の紳士、かたや幼き白き天使の如き姫。
 だが、手にする剣の名は同じく『ヴォーパル・ソード』。似通った輝きを放つ剣であったが、決定的にその性質は担い手によって変わってしまっているようだった。

「―――ほう、なるほど。我が剣と同じ銘を持つ剣を持つ姫英雄というわけですか。我が『ヴォーパル・ソード』……レディが持つ『ヴォーパルソード』……どちらが本物であるか、試すも一興、ですな」
 その身に纏った黒色の悪意が渦巻く。広げられた黒翼は、アリスの白き翼を威嚇するように羽撃き飛翔する。
「私の剣と同じ名の剣……―――ともあれ、別世界への侵攻などさせません……!」
 アリスは構える。
 同じ銘のたる剣を。その担い手として、その名を冠する剣を持つものとしての責務が、彼女にはある。

 放たれる剣線の鋭さは些かの衰えも見られなかった。次々と放たれる剣をアリスはギリギリのところで避け続けていた。
 こちらの攻撃の暇がない。糸口の見出だせぬ戦いのさなかに合っても彼女の瞳は、希望は陰ることはなかった。
 その瞳はもう、ユーベルコード、プロジェクト・ジャバウォックを見ていたのだから―――!

「【白の女王の鏡】に、映らないものはありません…!」
 それは【アリスと不思議の国の鏡】(アリス・アンド・ワンダーランドミラー)。少女たちのための物語。その鏡の如きユーベルコードが放つは、不定形の怪物たるジャバウォックの影を映し出す。
 まったく同じ不定形の怪物が鏡より飛び出し、『サー・ジャバウォック』の身に纏った黒色の悪意とぶつかり、消滅していく。
「これで、その黒翼は使え、ません。御覚悟を……!」
 アリスは駆け出す。
 その手には、空色の光焔放つ剣。破魔の力が込められた剣閃は、半身穿たれたが故に片手で振るう『サー・ジャバウォック』が防ぐことなどできようはずもない。
 跳ね上がる剣、返す刃で放たれる衝撃波や光焔の弾丸が、『サー・ジャバウォック』の身体を打つ。
「ぐっ―――! 同じ『ヴォーパル・ソード』の銘を持つ剣だというのに―――!」

 時間差で次々と嵐のように『サー・ジャバウォック』を襲う剣閃。
 その閃きは光の焔の嵐のようだった。
「自分のこの剣の謂れは……私にも解りません……けど、これまで私を何度も助けてくれた、大切な剣です……!」
 放たれる袈裟懸けの一撃が、『サー・ジャバウォック』を切り裂く。
 それは彼女がこれまで重ねてきた物語の分だけ、彼女の力となる糧を彼女自身が育んできた証拠であった。
 剣戟はもう鳴り響かない。『サー・ジャバウォック』は光焔より逃げるようにして後退していく。

 そう、アリスの『ヴォーパルソード』は万象灼き斬り、無敵の怪物―――不定形の怪物たるジャバウォックすらも斃したとされる剣。
 その剣携える者に『ジャバウォック』の名を冠するものが抗える道理など、何一つ無いのだから―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
過ちも、戦いの歴史も繰り返す…
認めましょう、私/戦機はその歴史の結実であるが故に
ですが、それはヒトが抱える宿痾にして打倒されるべき『悪』

人心を乱し荒廃させる結社など言語道断、騎士として討たせていただきます

物資収納スペース内の煙幕手榴弾を●投擲
戦場にうっすらと霧の様に立ち込めた煙はスナークの居場所を炙り出します
移動時の音と合わせセンサーで●情報収集し位置を●見切り回避(●地形の利用)

今この瞬間は、見えぬ怪物の利点などあって無きが如しですよ
 
回避直後にUCをスナークに直撃させ麻痺によって無力化
●怪力●ロープワークで鉄球宜しく猟書家に振り下ろし

御伽噺の怪物やそれを討つ騎士など…本の中で十分です!



 焼け焦げたの森の中を疾走する影があった。
 その名を猟書家『サー・ジャバウォック』。その最強たる猟書家は、今、万象灼き斬る光焔から逃れるように駆け抜けていた。
「誤算でした。まさか私と同じ銘を持つ剣を持つ者がいようとは―――これもまた過ち繰り返すということなのでしょうな。因果であります」
 ため息を吐き出す。
 己の状態を確認する。半身は穿たれ、全身にひび割れが起こっている。さらにあの呪詛。呪詛は振り払うことができたが、袈裟懸けに切り払われた光焔の一撃は誤算であったし、ユーベルコードを完全に無効化されてしまったことが、さらなる誤算を招く。

 そう、プロジェクト・ジャバウォックが無効化されなければ、『サー・ジャバウォック』が森の中を駆け抜けることはなかった。
 空を飛び、逃げ延びるだけでよかったのだ。だが、何もかも猟兵達の戦いによって蓄積されたダメージが、攻撃の数々が、それを防いでいた。
「過ちも、戦いの歴史も繰り返す……認めましょう、私、戦機はその歴史の結実であるが故に」
 その眼前に立ちふさがるは、機械騎士。
 その巨躯は、まさに『サー・ジャバウォック』の言う所の争いの歴史の結晶たる、極地であった。
 もっと早く、もっと遠く、もっと強く。苛烈にして激烈たる力によって他者を屠り続ける力を求め続けてきたからこそたどり着いた兵器という名の極地。それがウォーマシンたるトリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)という機体であった。

「ですが、それがヒトが抱える宿痾にして打倒されるべき『悪』……」
 トリテレイアのアイセンサーが焼け焦げたの森の中に浮かび上がる。
 争いとは常に争いでしかない。
 どれだけのお題目があろうが、なかろうが、争いが起これば生命が脅かされる。どれだけ真っ当なことを宣おうが、そこに生命の危機があるのであれば、それ即ち『悪』である。
「ならば、いかがしますか。機械の騎士。決して治る見込みのない病に犯された人類をどう寛解させるというのです? 争いが停められないのであれば、繰り返すのであれば、それは延々と続かせるべきではないでしょうか? それこそが自然の摂理。それで滅びるのであれば、それもまた人の業でありましょう」
 手にするは侵略蔵書『秘密結社スナーク』。
 はらりとページを捲る手が止まる。そのモノクロの奥にある瞳と、トリテレイアのアイセンサーが交錯する。
 互いに互いの主張が平行線である。

「人心を乱し荒廃させる結社など言語道断、騎士として討たせていただきます」
 目に見えぬ怪物スナークの腕が伸びる。
 トリテレイアのアイセンサーが捉えるのは光学情報だけではない。熱源、反射、あらゆる情報を、その持てる情報収集能力に寄って探り出す。
 だが、それだけでは足りない。格納スペースから取り出した煙幕手榴弾を投げつけ、霧のように立ち込める煙。
「これしきの煙で輪郭がわかるようなスナークではありませんよ。あらゆる意味で全てが虚構に包まれた我が侵略蔵書、『秘密結社スナーク』は真実のかけら一つ無いがゆえに、何ものにも捉えることはできないのですから」
 風をきる音が聞こえる。
 姿は見えなくても実体はある。ならば―――空気を裂いて進むスナークの腕の位置は音の反響、空気の歪み、それをもって所在を知ることができ―――。

「な―――っ!」
 一手遅かった。トリテレイアのバイザーが剣の如き鋭さを持つスナークの一撃に寄って破壊される。破損は軽微。アイセンサーに支障はないが、ガードを喪った。次に同じ攻撃をされた時、トリテレイアはアイセンサーを護る術がない。
 次々と打ち込まれる拳。
 トリテレイアの電脳は位置を割り出している。だが、初手の一撃が彼の電脳を揺らす。処理のノイズとなって、言わばヒトで言う所の脳震盪の如き状態となって回避を送らせている。

「こう見えて、腐っても猟書家。最強たる自負があります故……このまま嬲らせていただきます」
 打撃がトリテレイアの装甲を砕く。ヒビ割らせる。だが、膝をつくことは許されない。騎士は斃れない。
 活路を見出すのは、電脳ではない。己は機械である。だが、騎士である。騎士らしく、騎士たらんとするのであれば、己が回すべきは炉心の炎。その身に宿る騎士道精神こそが―――!

「打撃を加える地点からの算出―――なるほど。拳が空気の壁を破る音、全て委細承知いたしました……今、この瞬間は、見えぬ怪物の利点などあって無きが如しですよ。猟書家最強たる『サー・ジャバウォック』殿」
 割れたバイザーからアイセンサーの輝きがあふれる。
 見えぬ怪物の腕の位置は今、あらゆるデータを収集することに寄って見切った。

「その行動パターン、封じさせてもらいましょう。何度も見せ過ぎです―――!」
 腰部稼働装甲格納型 隠し腕(対UC拘束モード)(ワイヤード・サブ・アーム・スタンモード)が腰部装甲から隠し腕がワイヤーと共に放たれる。
 それは見えぬ怪物をとつかみ合い、特殊電流を流し込み無効化する。だが、それだけでは決定打にはなりえない。麻痺した見えぬ怪物を掴んだまま、トリテレイアのアイセンサーが再び輝き、炉心が最大稼動まで引き上げられる。
 燃える心があるというのならば、それこそがトリテレイアの炉心。
 掴んだままの見えぬ怪物を鉄球のようにワイヤー毎振り回す、恐るべき出力を誇る両腕が猟書家『サー・ジャバウォック』へと見えぬ怪物毎叩きつけられる。

「御伽噺の怪物や、それを討つ騎士など……本の中で十分です!」
 騎士を志す。
 だが、騎士が不要とする世界を目指す。その自己矛盾。戦い無き世界において、ウォーマシンたるその身は不要である。
 決定的な矛盾。されど、それは愛すべき矛盾である。戦いをなくすために戦うということが矛盾であるというのならば、生と死を内包する生命こそ否定となろう。
 だからこそ、トリテレイアは己の身に抱える矛盾を手放さない。

 戦い続ける。
 その意志こそが、トリテレイアの炉心に燃えているのだから―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

メンカル・プルモーサ
ふむ……この威圧感はなかなかのもの……
…ヒーローズ・アースに乗り込まれても困るからここで倒れて貰うとするよ…

…サー・ジャバウォックが飛んで来る事に合わせて竜巻の術式で周囲の焼けた灰や炭化した木を巻き込んで一瞬視界を塞いで時間稼ぎ…
…その隙に【暁天踊る集い星】を発動…竜巻に混ぜて極小の刃を襲いかからせるよ…
…そのまま自律稼働モードに移行…私の五感が失われても…極小の刃の花びらがが集って盾となり、剣となって勝手に攻撃を、防御を行うよ…
…そしてこの間に力を抜くことで自動照準モードにした術式装填銃【アヌエヌエ】にサー・ジャヴァウォックを捕捉させて…適当なタイミングで銃弾を連射…不意打ちを狙うとしよう…



 振り下ろされた鉄球の如き、見えない怪物の巨躯は猟書家『サー・ジャバウォック』の身体を押しつぶさんと叩きつけられた。
「―――解せない。あれほどの矛盾抱えながら、何故稼働できているのです……!」
 ご、ぱっ! と叩きつけられクレーターの如き惨状となった焼け焦げたの森の中から、溢れ出す黒き悪意。
 噴出した黒き悪意は、人間の悪意である。それを身に纏い黒色の翼を広げて、再び空へと舞い上がる猟書家『サー・ジャバウォック』。
 その威容は、今までどれだけの猟兵達の攻撃を受けてきたのかわからぬほどの重圧を放っていた。
 その半身は穿たれ、全身にヒビがはいり、袈裟懸けに切り裂かれ、強かに圧潰させられた。
 だが、それでも、その身に纏う黒い悪意の奔流は陰りを見せぬどころか、燃え盛る焔のように勢いまして噴出する。とめどない力。
 それが最強たる猟書家『サー・ジャバウォック』の力の根源。

「ふむ……この威圧感はなかなかのもの……」
 メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は、その光景につぶやきを漏らす。
 電子型解析眼鏡、アルゴスの眼に表示される数値データは、その異常さ故に所々エラーをはじき出している。それほどまでの強敵。最強であると言われる猟書家の存在を強く意識した。
「……ヒーローズアースに乗り込まれても困るから、ここで倒れて貰うとするよ……」
 挑発するようにアルゴスの眼のブリッジを上げる。キラリと煌めくレンズが、『サー・ジャバウォック』に捕らえられる。

「ほう、その身をさらしますか。見たところ、術士のようですが―――!」
 容赦はしない。
 余裕とは強者の特権であるが、目の前の猟兵達は油断するに値しない。彼等一人ひとりが生命の埒外にある存在であることを、強く認識する。
 であるとするのならば、そこに容赦の二文字はない。手にした青白き斬竜剣を握りしめ、上空からの急降下で一気に猟兵を斬撃で持って斬り屠る。

「そうくる……初撃は必ず獲る……なら、その機先を制する―――」
 術式が展開される。竜巻の術式が発動し、周囲の焼けた灰、炭化した木を巻き込んで生み出される灰色の竜巻は砂塵のように猟書家『サー・ジャバウォック』の眼前を塞ぐ。
 あの斬撃をメンカルは躱すことができるとは思わなかった。目にも留まらぬ三連撃。それは、強化された『ヴォーパル・ソード』であるのならば、殊更。
 強烈無比なる斬撃をメンカルは耐えられない。
 ならば、斬撃を放たせなければいい。そのための術式。言わば目くらましであり、隙を作る。それがメンカルのできる、今の最善であった。

 そうであっても、最高の一手ではない。灰色の竜巻を突き破って、メンカルへと突っ込んでくる悍ましいほどの悪意に包まれた『サー・ジャバウォック』。
 その姿は怪物そのもの。振るわれる青白き斬竜剣の一撃は、メンカルの脳天を一刀のもとに両断せしめんと放たれた。
「―――」
 通常であれば、回避のために後退しただろう。だが、メンカルは前に飛び出す。前に触れれば、五感を奪う黒翼に触れてしまうことになる。
 だが、それは彼女にとっては意味のないことだ。
「我が剣よ、歌え、踊れ。汝は残星、汝は晨明。魔女が望むは彼誰煌めく星嵐」
 彼女の詠唱が響き渡る。
 それは暁天踊る集い星(デイブレイク・ストーム)の如き、彼女自身の武器を無数の自律稼働する極小の刃。その花びらの如き嵐が銀河の星々の如く煌き、メンカルの敵を引き裂く。

 目が見えない。何も聞こえない。己の発する言葉すらも感じられない。空気が当たる肌の感触も、何もかも。
 これが五感を喪うということ。戦うことなんてできない。自分が立っているのか倒れているのかすらわからない。

 だが、彼女の武器は、自律稼動モードに移行している。無数の花びらが集まって斬竜剣の一撃を盾のように防ぐ。
 剣のように集まっては、剣戟を繰り広げ、火花散らせる。その光景をメンカルは見ることは叶わない。
 けれど、力を抜く。
 肩の力を抜くということはリラックスするということだ。五感失われておなお、その意味はある。
 自分が手にしているかどうかわからないけれど、それでもその手の内にある―――術式装填銃、アヌエヌエ。その自動照準モードが、『サー・ジャバウォック』を捉える。

「何も見えないけれど―――アルゴスの眼よ。私の眼となって」
 情報を収集し続ける電子型解析眼鏡アルゴスの眼が、アヌエヌエの自動照準モードとリンクする。
 それは彼女がこれまで培ってきた戦いの記憶が産み出した完全なる射撃。装填された弾丸全てを打ち尽くすまで引き金が自動で引かれ続ける。

 放たれた弾丸は過たず『サー・ジャバウォック』の体へと吸い込まれ、装填された竜巻の術式が、その体の内部で爆ぜるようにして展開される。
「五感を喪ってもなお、攻撃を繰り出すなど―――!」
『サー・ジャバウォック』は体を内部から破壊されながらも、黒翼羽撃かせて、飛び退る。

 徐々に失われた五感を取り戻した時、メンカルの目の前には荒れ果てた森と自身を守る極小の刃の群れしか存在しなかった。
「致命傷―――を与えられていたら良いけれど……後は任せよう……五感を喪う……これほどまでに強烈だとは……」
 五感を取り戻しても尚、残る不快感。
 それを完全に拭い去ってメンカルは新たなる戦場へと駆け出すのであった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

姫川・芙美子
今までにない強敵みたいですね。私の力で対抗出来るのでしょうか。
いえ、出来るかどうかではなく、やるかやらないか、ですね。やるしかありません。

先制攻撃に対抗する為に「黒いセーラー服」を護符に戻し展開、【結界術】で防御障壁を形成。初擊を凌ぎます。更に「霊毛襟巻」と「鬼髪」を伸ばし追撃を【武器受け】します。
何とか凌ぎきれたら【百鬼夜行】で各装備の【封印を解き】強化。「鬼髪」と「霊毛襟巻」による【なぎ払い】で猟書家を攻撃。
先程敵の剣を受け止めた事で武器が弱っていて威力が足りなければ、【咄嗟の攻撃】【2回攻撃】 で追撃。巨大化した「鬼手」の爪で切り裂きます。肉体を傷付けない【鎧無視攻撃】【精神攻撃】です。



 猟書家『サー・ジャバウォック』。
 その名は、全ての猟書家の中で最強という枕詞と共に語られる。青白き斬竜剣『ヴォーパル・ソード』。そして、侵略蔵書『秘密結社スナーク』。
 その能力のどれもが強烈無比なるものばかりであり、事実最強たる所以であった。
「今までにない強敵みたいですね。私の力で対抗できるのでしょうか」
 姫川・芙美子(鬼子・f28908)の不安は尤もなものであった。力あるものへの怯えや、恐怖は生物としては当然のものであった。それは東方妖怪たる彼女であっても持ち得るものである。
 だが、彼女の瞳に戦意が失われているのかと言うとそうではない。彼女の瞳は未だに輝きを放ち続けている。
「いえ、できるかどうかではなく、やるかやらないか、ですね」
 彼女にとって、戦うとは『そうあるべき』という強迫観念に近い想いに付き従っているだけに過ぎないのかも知れない。

 けれど、彼女はもう知っている。恐怖は安寧を脅かすものが齎すものであり、彼女の糧を脅かすものである。彼女が糧とするのは、人々の安寧への感謝から生じる感情である。
 その人々を脅かすというのであれば、彼女は戦う。
「―――やるしかありません」
 彼女の瞳に迷いや怯え、恐怖はもうなかった。あるのは戦う意志のみ。

 そんな彼女が降り立ったのは、焼け焦げたの森。
 すでに先行した猟兵達の戦いの痕が刻み込まれている。敵は……そう思って視線を巡らせた瞬間、彼女の来ている黒いセーラー服が護符へと戻り、展開する。
 結界術の如き障壁と化し、彼女の身を守る。
「ほう―――結界の類で私の『ヴォーパル・ソード』を防がれたのは二度目……猟兵には、護りに長けた者もいるようですね」
 すでに満身創痍たる猟書家『サー・ジャバウォック』。その姿は半身が穿たれ、所々にひび割れのような裂傷が刻まれている。
 さらには身体が内部からはぜたように傷を負い、何故その状態でも生存しているのかが不可解であり、その姿こそが恐怖を抱かせる。

「私は、戦うと決めたのです! 誰かのために、安寧を祈る人々のために!」
 だが、その恐怖をも飲み込んで芙美子は饕餮の毛で編まれた襟巻を硬質化し、十字に掲げて追撃の『ヴォーパル・ソード』の一撃を受け止める。
 二撃目。凌げる。やれる。そう芙美子が思った瞬間、三撃目の『ヴォーパル・ソード』が彼女を襲う。
 護符は焼き切れ、襟巻はほどかれた。それほどの斬撃。すでに彼女のみを護るものはなにもない。
 モノクルの奥でひび割れたような皺の刻まれた猟書家『サー・ジャバウォック』が笑う。よくがんばりました、と。幼い子供に諭すように、哀れむように。

「こ、のぉ……!」
 だが、彼女は憐れまれるべき存在でもなければ、諭される幼い子供でもない。彼女は猟兵である。誰かの安寧のために戦うと決めた、世界に選ばれた戦士である。
 諦めることはない。誰かの安寧をもう彼女は諦めない。
 彼女の髪がヴォーパル・ソードの一撃を受け止める。鬼が封印された髪。それが硬質化し、その一撃を受け止めたのだ。
 衝撃波で吹き飛ばされながらも、芙美子は体制を整える。
「封印限定解除―――百鬼夜行(ヒャッキヤギョウ)!」
 彼女のユーベルコードから開放された、彼女の身に纏う妖怪を封じた器たち。

「封印、ですと―――!?」
 驚愕に見開かれる『サー・ジャバウォック』の瞳。封印と言ったのならば今まで彼の武器、『ヴォーパル・ソード』の一撃を受け止めていたのは、封印された状態の武装。それが今、解除されたということは。
 その思考が最後まで成されることはなかった。一瞬の内に『サー・ジャバウォック』へと襲いかかる鬼髪と霊毛襟巻が伸縮し、足t元を薙ぎ払う。
 振り払われた、その二振りの威力は今までの比ではない。それでも、その攻撃は、ヴォーパル・ソードの一撃を受けて破損していた。
 それ故に『サー・ジャバウォック』は倒れることなく耐えたのだ。

「まだ! 続けて!」
 さらにのたうつように二人振りが暴れまわるように振るわれ、強かに『サー・ジャバウォック』の身体を打ち据える。鞭のような殴打に、たまらず後ずさる。
 それが致命的だった。戦いものであるのならば、常に前進すべきであったのだ。後退することに寄って、『サー・ジャバウォック』は芙美子に時間を与えた。
 巨大化した鬼手が迫る。

 そう、鬼手の封印を解く時間を与えてしまったのだ。
「肉体は傷つけず、その悪意を打ち払わせていただきます―――!」
 巨大化した鬼手の爪が、その身に纏う黒き人間の悪意を切り裂く。不定形の怪物、ジャバウォック。その怪物が力の源泉とするのがなんであるのか。
 それは身に纏う黒き悪意。
 それこそが、数多の猟兵たちによって攻撃にさらされ、消耗しながらも生存している力の根源である。
 その悪意を切り裂く鬼の爪は、『サー・ジャバウォック』にとって致命的な攻撃であった。

 たまらず『サー・ジャバウォック』が、猟書家最強たる『サー・ジャバウォック』が芙美子から距離を取るように飛び退る。
 その姿がどんどん小さくなる事に気がついたが、芙美子もまたユーベルコードの反動に襲われ、膝をつく。
「できた……やれた。私、できました……!」
 この日の自信はいつの日にか、彼女の助けになるだろう。
 他の誰でもない、彼女という正義の味方が、いつかの誰かの窮地を救う日の、その背を押す自ものになるだろう―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

神楽坂・神楽
怪物スナーク、ね
見えないだけで、物理的干渉はしてくるんだよね?
だったら、別に問題はないかな

覇気を広域に展開して、周囲の全存在を感知
怪物が襲ってきたら、大地を砕く威力を込めて迎撃する

侵略蔵書『秘密結社スナーク』
その全てが虚偽だからこそ恐ろしい、って聞いていたんだけど――
“君がそれを使って攻撃してくる”っていうことが分かってしまえば、怖くはないかな
だって、君が存在することは真実だしね

放たれる怪物を迎撃しながら接近
怪物を扱えなくなる距離まで近付いたなら、UCで加速
覇気を攻撃に回し、一撃を叩き込む

最強の猟書家である君をそのまま骸の海に還したりしたらもったいないよね
その命、僕が吸収して使ってあげるよ



 怖気が走るような、そんな感覚であった。思わず身を引いてしまったことに猟書家『サー・ジャバウォック』は、驚いていた。
 自分自身に、だ。断じて相対した猟兵の力にではない。そう、己は最強たる猟書家『サー・ジャバウォック』。この侵略蔵書『秘密結社スナーク』があれば、まだ再起はは可能である。
「まだ、まだです。まだ、私は成していないのですから。ヒーローズアースに赴き、闘いの歴史を、過ちを繰り返さなければ―――」
 だが、その足が止まる。
 ぎくり、としたとも言うのかも知れない。目の前には猟兵が一人佇んでいた。十代の少女のような出で立ちの猟兵。
 それが猟兵である以上、生命の埒外にある者であることは疑いようがない。相対するだけでわかる。
 どれだけ幼くても、どれだけ弱々しくとも猟兵である以上滅ぼさなければならない。

「得体が知れませんが―――其処を退いて頂きましょう」
 めくり上げられるページ。
 そのページの間から飛び出すは、見えぬ怪物スナーク。その腕が相対する猟兵、神楽坂・神楽(UDCエージェント・f21330)を捕らえ、すり潰さんと伸びる。
 決して見えぬ腕を逃れる術はない。
 今までこの腕を攻略してきた猟兵たちと言えど、手こずらされながらの辛勝であったのだ。もう油断もしない。容赦もしない。
 だが、ふいに目の前の猟兵が、神楽が笑う。
「怪物スナーク、ね。見えないだけで、物理的感傷はしてくるんだよね? だったら、別に問題はないかな」

 ぞわりと背中が泡立つ。
 神楽を中心に覇気が展開される。それも彼女の周囲だけという限定的なものではない。広範囲に広げられる覇気の層が何十層にも展開され、その中を行く見えない怪物スナークの腕がそうにぶつかって上手く進めない。
「なるほどね。物理的に干渉できるっていうことは、こっちからも見えなくても干渉できる―――こういうふうにね!」
 神楽の拳が握られる。その手に刻まれた刻印が輝く。鮮血を動力として動く刻印―――ドライバー。その輝きが増した瞬間に放たれる拳は、地面を穿つ。
 大地を割らんばかりの圧倒的な一撃は、彼女の周囲の大地を砕いて砕石を弾き飛ばす。
 目に見えずとも物理的に干渉できる。ならば、砕石がぶつかって地面に落ちるところにこそ、見えぬ怪物スナークの存在がある。

「侵略蔵書『秘密結社スナーク』。その全てが虚偽だからこそ恐ろしい、って効いていたんだけど―――“キミがそれを使って攻撃してくる”っていうことがわかってしまえば、怖くないかな。だって、君が存在することは事実だしね」
 もうすでに見えぬ怪物スナークは、見えていなくても神楽にとっては見えているのと同じだった。
 砕石が当たる様子を見ていた。
 もうその間合いは全て把握している。どれだけ不意をつこうとも、後の先が取れる。襲いくる怪物の腕をひらりと躱しながら、神楽は『サー・ジャバウォック』へと肉薄する。

「馬鹿な! わかっているからといって、できることとは別問題であるはず!」
 ああ、だめだよ、と神楽は笑う。
 肉薄しているからこその同様。どれだけ強力なスナークという怪物がいたとしても、こう接近されては怪物を操ることはできない。
「―――」
 それは瞬きの瞬間に起こった。
 ユーベルコード、時間加速Ⅰ(アクセラレーション)。それは神楽自身の時間を加速させて行う、圧倒的なる一撃である。
 十層にも束ねられた覇気が槍の如き鋭さを持って、打ち出される拳の威力を底上げする。それはまるで丁寧に丁寧に折りたたまれた錐のような形状をしていた。

「最強の猟書家である君をそのまま骸の海に還したりしたら、もったいないよね。その生命、僕が吸収して使ってあげるよ」
 その一撃は、残っていた最後の片腕、それを穿ち切り裂く。絶叫が聞こえる。それは遠く聞こえる遠雷のようなものだった。
 どれだけおぞましく、恐ろしく聞こえるものであっても、直ぐ側にあるだけで、自分の近くに落ちるわけではない。
 それに怯えるなんて子供くらいのものだよ、と神楽は笑って、その残った腕を掲げる。

 逃げるようにして闘争する『サー・ジャバウォック』の背を見送る。
 どうせ、その先にある運命は変えようがない。最強たる猟書家『サー・ジャバウォック』。その向かう運命をもう神楽は知っていた。
 だからこそ、自分はこの片腕でいいと掴んでいた腕を握りつぶす。
 鮮血がほとばしり、そこにあった『サー・ジャバウォック』という存在を吸収していく。

「―――最強の猟書家、『サー・ジャバウォック』。まあまあだったよ」
 それはまるで誰かを指導するように、そして、評価するような声色。
 その声色に見送られて、『サー・ジャバウォック』は己の運命の末路へと逃げ込むのであった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ジャム・ジアム
アドリブ歓迎

得た物があるかもしれない、でも当然な訳ない……
大切なあの場所。犠牲など見たくないわ。

最強の力、それを凌げなければ戦う事すら出来ない。
私の唯一の利は、攻撃手段を伝え聞いている事。だったら……

『謎のレモン』の蔦全体に
【護り現・念動力・力溜めによるオーラ防御】
更に『ガラス蜘蛛』に這わせ
ネットのように編み込み何重にも巡らせる
斬撃も翼も、必ず私に触れに来るもの
【第六感も全力駆使、防御と攻撃の見切りに集中】
超高速の重撃、僅かでもーー

攻撃の瞬間、力を逃し【怪力・盾受け】
同時に『猛る毒蔦』で【捕縛】
五感を奪われようと、一瞬でも触れれば私にも理がある
蔦が逃さない
全てを込めた念動力で奪い、締め付けるわ



「オオオオオ―――! あり得ない―――! 私が! 最強たる私が敗れるなど! そんなことがあり得るはずがない。闘争が紡いだ歴史! 争乱の世界、あの場所へ私は!」
 焼け焦げたの森の中に猟書家『サー・ジャバウォック』の咆哮が迸る。
 それはあらゆる意味で最早手遅れであった。度重なる猟兵の攻撃にさらされ、両腕は失われた。だが、まだ手段はある。
 溢れるように身に纏う人間の黒き悪意。それが在れば、失った両腕の代わりにはいくらでもできる。
 まだやれる。猟兵何するものぞ。戦う。戦う。戦って勝たなければ、闘いの歴史は紡げない。
「私は―――まだ、戦うのだ! もっと! もっと争いを―――!」

 その咆哮の先に、最後の猟兵が立ちふさがる。
 ジャム・ジアム(はりの子・f26053)は折りたたまれた明色の羽を広げて、その道行を阻止する。
「得た物があるかもしれない、でも当然な訳ない……大切なあの場所。犠牲など見たくないわ」
 もしも、猟書家『サー・ジャバウォック』を逃してしまえば、彼はヒーローズアースへと赴くだろう。
 その先にある未来は争い耐えぬ世界だ。誰も彼もが他者を疑い、傷つけ合う。それが『秘密結社スナーク』の力。それは互いを信じられなくする最悪なる力だ。

 争いが力を生む。争いが技術を育む。確かに真理であるのかも知れない。けれど、その連綿と紡がれてきた技術や知識は常に義憤の心で紡がれてきた。
 誰かのためになるように。
 それ故に、紡がれ強大に成った力が当然であるわけがない。
「最強の力、それをしのげなければ戦うこっとすら出来ない」
 ジアムは自分に言い聞かせる。
 戦いとは常に誰かとの戦いである。猟兵である以上、彼女が唯一持つ利とは即ち、敵の攻撃の手段を伝え聞いている事である。

「そこを―――退けェェェ!!!」
 もうすでに初老の紳士の如き所作はない。あるのは不定形の怪物たる本性のみ。黒き悪意を纏った両腕がジアムを押しのけてでも先に進まんと焼け焦げたの森を疾駆する。
 その瞳は凶悪なる光に飲み込まれていた。恐ろしいという感情がこみ上げてくる。戦いの場にあって傷つくことはいつものことである。
 傷つかぬ事のほうが少ない。あの力を真っ向から受け止めなければならない。けれど、ジアムはもう知っている。
 立ち向かうということを。痛みに耐えるということと、立ち向かうことは違う。痛みに耐えてうずくまることは誰にでもできる。
 けれど、痛みを受けて尚、歩をすすめる者にこそ、宿る力がある。

「どれだけ超高速の重撃だとしても、ジアムは退かない……!」
 謎のレモンの豆が戦場に蔦を這わせる。護り現のオーラが力を増し、さらに水蜘蛛の泡の如き銀布たるガラス蜘蛛が蔦と共にジアムの前面に張り巡らされる。
 それは大きな壁のようでもあり、盾のようでもあった。
「その斬撃も、翼も、必ず私に触れるものなら!」
 超高速の青白き斬竜剣『ヴォーパル・ソード』の三連撃がジアムへと襲いかかる。裂帛なる勢いで持って放たれた一撃目は、謎のレモンの蔦を切り裂く。
 まるでバターにナイフをいれるような滑らかさで持って、その蔦を邪魔だというように切り払う。
 さらに二撃目。オーラ防御によって込められた念動力が斬撃を受け止める。じり、と頭部に痛みが走る。それほどまでに力を込めたオーラであった。
 だが、それもヴォーパル・ソードの一撃の前に砕けて散った。

 残る防壁は一枚。
 薄布如き銀のガラス蜘蛛。組み合わせ、ジアムが持てる最大の防御を張り巡らせても尚、苛烈なる斬撃の前に引き裂かれる。その未来が、ジアムの瞳に幻視される。
 凌げないかもしれない。
 それは不意に湧いた感情であったかも知れない。僅かでも、と思っていたのだ。斬撃を受けても立ち上がれるほどに、と。
 けれど、彼女の第六感が言う。防ぐだけでは受け止められない力もあるのだと。

「―――ッ!」
 薄い銀布が青白き斬竜剣の斬撃を受けてたわむ。瞬間、ジアムが前へ一歩足を踏み出す。明色の翼が揺れて、受け止めた銀布が風に舞う。それは、彼女の大きな体、膂力が無ければ受け流すことも出来ずに両断されていたであろう一撃だった。
 その強力無比なる斬撃は、ジアムの身体の直ぐ側の大地をうがっていた。受け流したのだ。
「さあ、締め上げて―――!」
 猛る毒蔦(タランテラ)。それは彼女のユーベルコード。念動の蔦が『サー・ジャバウォック』を襲う。
 だが、その一撃は躱される。受け流した斬撃の衝撃が、その体にダメージを追わせていたのだ。だが、その蔦が外れたとしても、ジアムは絶望しない。念動の蔦が地面に触れた瞬間、その大地に添うように焼け焦げたの森に蔦と葉が周辺一帯に生い茂る。

「悪あがきをォォォォッ!!!」
 五感を奪う黒翼がジアムの身体を薙ぐ。それは触れてはならない一撃であった。だが、同時にジアムにとって最後のチャンスだった。
 自分の体に触れた。それが黒翼の一部であっても関係がない。たった一瞬でいい。それだけでジアムには利がある。

 蔦は、その大地に立つ者を逃さない。
 外れた初撃の念動の蔦。けれど、それは地形を変えるほどの力で持って生い茂る蔦と葉となって、その上に立つジアムの力を底上げする。
 例え五感が奪われてしまっていたとしても関係ない。
「アアアアアアア―――ッ!」
 それは全てを籠めた念動力。目が見えなくても構わない。何に触れているか分からなくてもいい。何も聞こえなくていもいい。
 ただ、一瞬でも触れたという事実がジアムの力を迸らせる。猛る毒蔦が『サー・ジャバウォック』の全身を締め付け、その思考を奪い続ける。

 全てが砕ける音がした。
 奪われた五感が戻ってくる頃、ジアムは取り戻した視覚で、焼け焦げたの森の一角……緑多い茂る場所に立ち、彼女の手を模したであろう巨大な蔦の腕に絡め取られ、砕かれた『サー・ジャバウォック』の姿を見た。
「わた、しは……あらそい、を……」
 争いを望む者。争乱を、戦争を、諍いを、他者と他者が傷つけ合う未来を望む者『サー・ジャバウォック』。

 猟書家の一角たる最強を、今、ジアムは突き崩した。
 彼等がそんな未来を望むのであれば、ジアムは戦うだろう。己が傷つくかも知れないけれど、それでも歯を食いしばるだろう。
 自分ではない誰かが痛みに喘ぐ光景ではなく、自身が傷を負うことを選ぶだろう。
「争いを望む者に、ジアムは負けない。誰かが犠牲になってしまう、それが当然だなんて、もう言わせない。だから、『サー・ジャバウォック』。不定形の怪物、誰かの心にも存在するであろう、悪しき心の残滓……さようなら。もう会うことはないのよ」

 その言葉はきっと届かない。
 けれど、ジアムは勝利した。誰かのために戦うと決めた者にこそ宿る強さで持って、己のために戦う者を下したのだった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年08月13日


挿絵イラスト