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遠きを追う者

#ダークセイヴァー

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#ダークセイヴァー


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 濃霧の中、一台の馬車を中心に、戦士風のいでたちをした男たちが馬を駆っている。
 元は随分と立派な馬車だったようだが、過酷な旅を経てきたのだろう、かつては美しかったはずの装飾は剥がれ落ちている。
 過ぎた速度に耐えかねて馬車の車輪が軋む。それにも構わず、男は馬の尻に鞭をくれた。
 彼の横顔に向けて仲間から声が飛ぶ。
「ボス! おいボス、オスヴィン! 聞いてンのかよ!」
「返事なんてしてる暇があるかよ!」
 オスヴィンと呼ばれた男が御者台の上から振り向きもせずに叫ぶ。彼の顔や腕、まとった革鎧には大小の傷が刻まれ、死線をくぐってきたことを示していた。
「無理だボス、追いつかれる!」
「馬ッ鹿野郎、追いつかれるわけにいかねェんだろうが!」
 馬車はあまり速くは走れない。オスヴィンは焦燥感に舌打ちし、手綱を握る手に力を込めた。
 そのとき、激しく揺れる馬車から少年が顔を覗かせた。つい最近傷を負ったのであろう、あちこちに巻かれた包帯からは血が滲んでいる。
「引っ込んでろロラン、舌噛むぞ!」
「俺たちを置いてけよ、ボス。他のみんなもそう言ってる!」
 ロランと呼ばれた少年の後ろで仲間たちが頷く。馬車の中は暗く、彼らの目ばかりがぎらついて見えた。
 みな鍛え上げられた体をしている。通常であればオスヴィンとともに馬を駆り剣を振るう身であるのだろう。しかし今は、彼らはそれぞれに体のどこかに傷を抱えており、満足に動ける状態ではなかった。
「お荷物は黙ってやがれ。持って帰る死体が増えるのはごめんだぜ!」
 オスヴィンは腹の底から声を張り上げた。その声で仲間を奮い立たせようとしたのだ。
 しかし、彼の声でも掻き消せぬほどに、《それ》は背後に迫っていた。

 からから、からから、からからから――。
 濃霧に隠され姿は見えぬ。しかし音は確実に距離を詰めてきていた。
「――仕方ねェな。おいロラン、手綱持て!」
 オスヴィンはロランに手綱を押し付けるように渡し、御者台から飛び降りた。そのままの勢いで背負っていた大剣を大きく振って構え、来た方向を睨みつける。
 ロランは慌てて馬車を停めようとしたが、限界まで速度をあげた馬は極度の興奮状態にあり、急に止まることなど不可能である。
「ボス――!」
 声が遠ざかる。
 乾いた音が近付く。
「お前ら仕事だ! 報酬上乗せはできねェがな!」
 ボスの薄い財布でいいぜと軽口が飛ぶ。
 からから、からから。
 霧の奥から死がやってくる。

 ◆

「晴れぬ靄へと呼ばわる手、そは屠られし鳶尾のごとくさえざえと、次なる勇者をかいなに招き、追うは挽歌か落涙か――」
 エフェネミラルが猟兵たちに聴かせた予言の歌は、物悲しい余韻を残して消えていった。
「往生集めエルシーク。知っている者はいるだろうか」
 ダークセイヴァーに現れるオブリビオンの名だ。これまでに幾度か出現し、そのたびに猟兵の手によって葬られてきた。
「骸の海はよほど居心地が悪いと見える。また蘇り、オブリビオンによって殺された者の遺体を蒐集しているようだ」
 遺体を集めるだけであれば――それは死者への冒涜ではあるが――人々への被害は少ない。しかしそれだけではすまぬ事情がある、とエフェネミラルは語る。
「エルシークを追うものがいる。彼らは傭兵か何か、戦闘を生業とするものたちのようだ」
 そんな、無謀だ、と猟兵たちの間から声が上がる。
 猟兵でなくともオブリビオンと戦うこと自体は可能だ。
 しかしエルシークは固有名詞で呼ばれる、いわば《称号持ち(ネームド)》。その他大勢のオブリビオンとは比較にならぬ。その傭兵とやらに勝ち目があるとは思えなかった。
「その通りだ。何らかの目的があるのだろうが、彼らはエルシークを追い詰めるどころか逆に追い立てられ、今まさに窮地に立たされている」
 負傷者を抱えて逃げ続けた彼らは、もはやその他大勢の雑魚にも太刀打ちできない状況まで追い込まれてしまった。
「彼らを追っているのはスケルトンの群れ。おそらくエルシークの配下なのだろう。一体一体はあなたがたから見ればさほど強くはないが、とにかく数が多い。急ぎ合流し加勢を」
 エフェネミラルは集まった猟兵たちを見渡した。グリモアは既に淡く光を放ち、転移の扉を開く時を待っている。
「構えよ。転送先は戦場の只中だ」


降矢青
 ご覧いただきありがとうございます。降矢青です。

 OPにあります通り、乱戦のど真ん中に転送します。いきなり戦うところから始めていただいて結構です。無双しましょう。
 今回は現地の戦闘員であるオスヴィンたち傭兵集団が登場しますが、猟兵から見れば一般人に毛が生えた程度の強さです。猟兵の加勢がなければすぐにでも全滅してしまうでしょう。
 無謀な戦を挑む彼らですが、何か譲れない目的があるようです。どうか守ってあげてください。
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第1章 集団戦 『スケルトン』

POW   :    錆びた剣閃
【手に持った武器】が命中した対象を切断する。
SPD   :    バラバラ分解攻撃
自身が装備する【自分自身のパーツ(骨)】をレベル×1個複製し、念力で全てばらばらに操作する。
WIZ   :    骸骨の群れ
自身が戦闘で瀕死になると【新たに複数体のスケルトン】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 霧の奥から次々と湧き出る骸骨の群れ。
 オスヴィンたちはそのうちの何体かを片付けたものの、霧の向こうにあとどれほどの敵がいるのかわからぬ状況は疲労に拍車をかけ、諦念へと彼らを誘った。
 ロランたちは逃げおおせただろうか。それさえかなえばもはや後はどうでもいい。ここで膝を折り目を閉じればどれほど楽だろうか――。
 そんな感情が彼らを支配しかけた、まさにそのときであった。

 霧が揺らぎ渦をなす。風はない。傭兵たちは剣を振るうのも忘れ、一瞬それに見入った。
 渦の中心に人影が見えた気がして、オスヴィンは目を瞬いた。
シル・ウィンディア
譲れないものがあるなら…
わたしは力になるよっ!

初っ端から、ヘキサドライブ・エレメンタル・ブラストで出鼻を挫きますっ!

ふふ、切札は最後に使うなんて、だれが決めたの?
纏めて吹き飛べーっ!!
あ、もちろん傭兵さん達を巻き込まない様に注意するよ

傭兵さん達には
助太刀にきたよーと、笑顔で答えるね
小さい女の子だからって舐めないで

撃った後は、【残像】【フェイント】【ダッシュ】【空中戦】で
撹乱するように機動し
【二回攻撃】で二刀流の光刃剣をふるって攻撃するよ

回避は【第六感】で感じて【見切り】で回避



纏まってきたら、もう一発、ヘキサドライブ・エレメンタル・ブラストをお見舞いっ!
【高速詠唱】と【全力魔法】のおまけつきでね



「闇夜を照らす炎よ、命育む水よ、悠久を舞う風よ、母なる大地よ、暁と宵を告げる光と闇よ……」
 オスヴィンの見間違いではなかった。霧が巻いてできた白い渦の中心に人影がある。
 その影は小さく、声は幼く、とても戦場に似つかわしくはない。
「六芒に集いて、全てを撃ち抜きし力となれっ!」
 高く高く声が響く。その声に呼応し、人影を中心に砲撃が放たれた。
 その軌跡は輝くようでもあり、光を喰らうようでもあり、砂漠の熱風のようでもあり、天地の恵みのようでもあった。
「ふふ、切札は最後に使うなんて、だれが決めたの?」
 いくつもの属性が複雑に絡み合ったそれは、形容しがたい光、あるいは闇を放ちながら、スケルトンを薙ぎ倒していく。
「傭兵さん達、助太刀にきたよ」
 人影――シル・ウィンディアはオスヴィンたちを振り返り、青い髪を揺らして笑いかけた。
「お嬢ちゃ――」
「ああ、質問はあとあと!」
 誰だとか、どこから来たとか、傭兵たちの顔に疑問符が山ほど浮かんでいることはシルも承知していたが、のんびりと答えているほどの時間はない。
「小さい女の子だからって舐めないで。譲れないものがあるなら……わたしは力になるよっ!」
 声だけを残してシルは地を蹴り、自らのユーベルコードが切り拓いた道を走る。その手に握った銀色の短杖が光ったかと思うと、次の瞬間、杖は光の刃を持つ剣の柄となっていた。
 シルはまさに光のごとき軽やかさでスケルトンの間を縫い、次々と斬り伏せていく。
 エレメンティアと銘のつく光刃剣。スケルトンたちはその光を嫌うようであった。シルから遠ざかるようにからからと動き回り、隊列を組むようにまとまっていく。それがシルの狙いだとは、スケルトンの虚ろな目には見抜けるはずもなかった。
「纏めて吹き飛べーっ!」
 スケルトンが集まったところを狙って、シルは先ほどと同じユーベルコードを放った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

マーリス・シェルスカナ
n~、『ネームド』に執着する人達の目的が気になる所デス…。
後で詳しい話を聞きまショウ、でも今はSkeltonの方が先ネ!
(所々イントネーションが変な魔女は、自分の電脳世界を起動して小型パネルを展開していく、このパネルから魔法各種を射出するようだ)

(方針)
数が相手なら、攻撃をMany撃てば良いネ
「ウィザード・ミサイル」で炎の魔法を連射するヨ
全部はとても無理ですけど、数を削る事は出来る筈デス



 シルの砲撃の威力は絶大であったが、スケルトンの数はなお多い。地から骨が湧いてくるのかと思わせるほどである。
「数が相手なら、攻撃をMany撃てば良いネ」
 マーリス・シェルスカナの声を聞いた傭兵が軽く首を傾げたのは、彼女の一風変わった話し方がまるで異国語のように聞こえたからだ。シルの言葉はわかったのに、同じ場所から来たのではないのかと、マーリスに問いかけようとする。
「n~、ネームドに執着する目的は気になる所デスガ、今はSkeltonの方が先ネ!」
 傭兵は咄嗟に返事をしない。マーリスの言葉が異国語でないと彼が気付くまでに、数瞬の時間が必要なようであった。
 マーリスはそんな彼を背に立ち、碧眼に骸骨の群れを映す。
 その双眸にスケルトンが映るたび、彼女の周囲に小型パネルが展開されていく。魔法と呼ばれるものに科学の光を当てんと無限の知識欲を抱いて故郷の船を飛び出した彼女が、最初期に理論化に成功した術式だ。
「全部はとても無理ですけど、数を削る事は出来る筈デス。《ウィザード・ミサイル》!」
 魔法、神の御業、錬金術。世界や時代により呼ばれ方は様々だが、マーリスにとってそれは、再現可能な科学の領域であった。
 小型パネルが炎を放出して輝く。太陽が版図のほとんどを夜に明け渡したこの世界において、その光はあまりにも眩い。
 構築された炎熱が上方へ伸び上がる。そして次の瞬間、炎の矢は鋭角に向きを変え、骸骨の群れに向かって降り注いだ。

 シルの砲撃とマーリスの魔法の矢。降り注ぐ猟兵の力にスケルトンは散り散りになる。
 かなりの数を倒したはずだが、スケルトンは死なざる屍だ。痛みを感じることのない彼らは、多少骨を吹き飛ばされようが、からからと音を立てて再び向かってくる。
 かつては兵士であったのだろうか、中には錆びた剣を手にしている個体もいた。

成功 🔵​🔵​🔴​

白峰・慎矢
雫(f05281)と一緒に行くよ

わかった、今回は俺が雫の援護に回るよ。傭兵の皆もそうだし、雫にも怪我をさせるわけにはいかないな。

俺は雫に攻撃しようとするやつを【依代ノ霊力】で攻撃したり、武器を弾いたりして援護しよう。必要なら隠し小刀を投げて敵を攻撃するか。雫には指一本触れさせないよ。
後は…俺が傭兵達の近くにいれば、彼らが危ないときとか、敵に突っ込んだりしたときにも対応できるよね。


白峰・雫
慎矢(f05296)と一緒に戦うよ

これ以上負傷者を出さないためにも、できるだけ早く倒さないとね
ボクが前に出るから慎矢は援護よろしくね

慎矢が援護してくれるし、一体ずつ確実に倒していこうかな
ダッシュで近づいて2回攻撃となぎ払いを使って【白狐流薙刀術】で攻撃力を重視して攻撃するよ
敵の攻撃は野生の勘を使って残像で躱すよ



「これ以上負傷者を出さないためにも、できるだけ早く倒さないとね」
 白峰雫が進み出る。
「ボクが前に出るから、慎矢は援護よろしくね」
 わかった、と返事をしたのは、雫の兄代わりである白峰慎矢だ。
 慎矢の援護がある。その事実は雫の足を軽くした。
 雫はかろやかに走り、スケルトンと向かい合う一人の傭兵の前に体を滑り込ませる。
「薙ぎ払わせてもらうね!」
 錆びた剣閃が、まさに傭兵に振り下ろされるところであった。その剣を受け止め、薙ぎ払う。
 ただ攻撃を防ぐだけではない。白狐流薙刀術の型により繰り出された一閃は、スケルトンの胴部を両断し、弱点部――つまり骨盤を砕いた。
「さすがに腰がないと、いくら骨をくっつけても歩けないもんね」
 かた、かた、と断末魔のようにうごめく骨は、そのうちに動かなくなった。
「誰だか知らねェが助かった。嬢ちゃ――ボウズか?」
 傭兵が雫に感謝の言葉を述べる。思わぬ味方の出現に、彼はようやく安堵の息をついたようであった。
 しかし、まだ戦闘は続いている。傭兵が僅かに気を抜いたその瞬間、遠距離からスケルトンが矢を放つ。
「危ない!」
 雫が咄嗟に動き、傭兵と矢の間に割り込む。しかし薙刀を構えるほどの時間はない。
 刺さる。雫の背を冷たい漣が走った。

 しかし、その鏃は雫をとらえることはなかった。その直前で急に進路を変え、あらぬ地点へと落下する。
「な、なんだァ!?」
 ありえぬ動きに傭兵が目を剥く。しかし彼とは対照的に、雫は顔を輝かせた。
「慎矢!」
 その声に応えて慎矢は軽く片手を挙げた。矢の進路を変えたのは彼の霊力であった。
「雫には指一本触れさせないよ」
 慎矢は弓に宿った魂である。神の依代である彼にしてみれば、錆び付いた矢などはるかに下位のものだ。それが弟の身を脅かすなど、身の程を知るべきといったところであろう。
 慎矢は雫を援護しつつも、傭兵たちの近くに立ち、その安全に目を配っている。
 猟兵の力を警戒してか、スケルトンたちは近寄っては来ず、遠距離から矢を射掛けてくる。矢を持たぬ者は手に持った槍を投げたり、あるいは投石をしてくるものもいた。
 盾を持っている傭兵はいいが、そうでない者もいる。慎矢はスケルトンの攻撃が傭兵に近付くたびに《依代ノ霊力》を発動し、すべてを弾き落としていった。

「待て、これは――!」
 地面に落ちた投石のひとつに傭兵が駆け寄った。彼が拾い上げたのはくすんだ銀のバングルだ。高価なものではなさそうだが、彼には心当たりがあるようだった。
「やめろ、飛び出すな! ヨーグ!」
 ヨーグと呼ばれた傭兵に、待ってましたとばかりにスケルトンが襲い掛かる。
「隊長さんの言うとおりだよ」
 慎矢の声に動揺はない。ヨーグのそばに駆け寄り、スケルトンに向かって懐から取り出した小刀を投げる。
 小さいながらも鋭く放たれたそれは、スケルトンの額に突き刺さった。慎矢は力を失ったスケルトンを《依代ノ霊力》で持ち上げ、別のスケルトンにぶつける。絡んだ骨が、乾いた音を立てて地面に叩きつけられた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

上野・修介
・POW
※連携、絡みOK

グリモア猟兵が予知した以上、悪いことを企んでいるわけではなさそうだ。

「猟兵です!助太刀します!」
まず所属と味方であることを傭兵集団に伝え、守り易いよう固まってもらうよう呼びかける。

得物は素手喧嘩【グラップル】

傭兵団から離れ過ぎないよう、またこちらに敵を引き付けるよう常に動き回る。
囲まれるのは【覚悟】の上、腹を据えて【勇気+激痛耐性】推して参る。

下手に削って敵が増えては傭兵団が危うい。
UCで攻撃力を強化し【ダッシュ】で相手の懐に肉薄。【捨て身】で一体ずつ一気に確実に始末する

状況が危ういよう様なら、身を盾にしても傭兵団を逃がすことを優先。
助けに来たからには死人は出さない。


クロウ・タツガミ
他猟兵との連携アドリブ歓迎する

【POW】

さて、時間が無いかならば少々力技と行かせて貰う

転送終了と同時に【龍騎乱舞】を使わせてもらう。巨大な黒蛇(マガホコ)に騎乗して、巨大なハルバート(サカホコ)を手に戦わせて貰う。【戦闘知識】を用いて黒蛇の巨体で敵を吹き飛ばし、【怪力】による【2回攻撃】で仕留めさせてもらおう

巻き込まれたくなければ、近付くな

傭兵が近付くのを制しながら、骨が傭兵に飛来するのをガンドレッドによる【盾受け】と黒蛇の巨体で【かばう】つもりだな

敵の増援が傭兵の近くに現れたら、サカホコを槍に変身させ【力を溜め】た【投擲】で攻撃だな

悪いな、離れていても多少は巻き込んだか


アリウム・ウォーグレイヴ
アドリブ歓迎

他の猟兵と協力し活路を開きます。いざ前へ。
『槍投げ』をしスケルトンを『串刺し』にした後は、ホワイトパスを利用して敵集団の中へ。
少々強引ですがスケルトンの意識を傭兵達からこちらへ向けさせることで、『かばう』ように立ち回りたいですね。
近くの敵には『属性攻撃』ホワイトマーチ、離れた敵には『範囲攻撃』ホワイトブレスを使用して、傭兵達にこれ以上の危害を加えさせません。

戦いの中だというのに笑みが零れます。
無謀であろうとも、蛮勇であっても、傭兵達は止まる事なく戦う事を選んだ。
このか細い光しか差し込まない世界であっても人は強い。
彼らの戦う目的は分からず時期尚早かもしれませんが、彼ら傭兵達に敬意を。



「助太刀します! 一箇所に固まってください!」
 上野修介がヨーグに駆け寄り、下がるよう促す。
「悪い、飛び出しちまって、面倒かけた」
 ヨーグは慎矢に詫び、修介に連れられて味方のもとへ戻る。その瞬間、オスヴィンの拳がヨーグの頭に飛んだ。
「考えなしに飛び出してンじゃねェ! こいつらが誰だかわかんねェが、俺たちが足手まといだって自覚しな」
「すまねえ、ボス……」
 すっかり小さくなってしまったヨーグを尻目に、オスヴィンは修介に尋ねる。
「そろそろ教えてくんねェか。敵じゃなさそうだが、あんたらは何だ。どっから来た」
「猟兵です。といってもご存じないかもしれませんが、味方です」
「猟兵――? ッハハ、そいつぁいい!  おい、御伽噺の英雄サマのお越しだぜ!」
 各地を旅するうち、オスヴィンたち傭兵団は猟兵という言葉を幾度か耳にしたことがあった。先日立ち寄った村も、以前村ごと滅ぼされかけたところを救われたのだという。
 しかしその話を聞いた殆どの者は、それを真実とは思わなかった。闇と絶望に鎖された世界に耐えきれなくなった人々が作り出した御伽噺である。そう思っていた。
 オスヴィンもその例に漏れず、《猟兵》の存在を真実とは思わなかった。助けに来た彼らは、自らを英雄物語になぞらえた、ひどく腕の立つ旅の一団なのだと解釈したのだ。

「――何か勘違いしているようだが、まあいい。少々力技と行かせて貰う」
 ひとまずは味方であることが伝わればよい。クロウ・タツガミはそれ以上の説明は必要なしと判断し、相棒を呼ばわった。
 クロウの相棒――白黒の龍がするりと這い出てくる。
「サカホコ、マガホコ、武威を示せ」
 その声に始めに応えたのは黒龍だ。小さかった黒龍が瞬く間に質量と体積を増す。
 黒龍が巨大な姿に転身しきる前にクロウはその背にまたがり、宙へと舞い上がった。
 その手の中で白龍が姿を変える。白蛇の胴は長い柄に。翼は広がる刃を持った穂先に。白龍はハルバードへと転身し、クロウの掌に収まった。
「巻き込まれたくなければ近付くな」
 上空から降る声はさながら静かなる雷鳴。
 言うが早いか、黒龍の長大な尾が地面に向けて振るわれた。
 黒き暴風。そのように形容するのが相応しいであろうか。黒龍の尾は霧を払い敵を次々と打ち据えていく。跳ね飛ばされたスケルトンをハルバードが捉え、薙ぎ払う。
 砕けた骨が雨の如く降った。
 その威力は敵味方の入り混じった戦場にはあまりにも強大だ。スケルトンの骨が四方八方に飛ぶ。その多くは黒龍が身をくねらせ受け止めたが、中には受け止めきれずに傭兵たちへ向かうものがあった。
 すかさず修介が傭兵の前に割り込み、拳で骨を弾き飛ばす。
「悪いな、離れていても多少は巻き込んだか」
「構いませんよ。これだけ片付けてくれれば、上等です」

 修介は傭兵とスケルトンの距離が詰まらないよう、両者の間を動き回る。
 スケルトンの数はなお多かった。次から次へと湧いてくる骨の群れを引き付けるべく、修介は敵に懐に飛び込み、殴り壊しては退く。
 からから、からから。
 傭兵たちをかばいながら一人で前線に出てきた修介は、スケルトンからみればよい獲物だ。
「囲まれるのは覚悟の上。――推して参る!」
 修介の体に錆びた剣や槍、あるいは骨での殴打が襲い掛かる。防御に徹すればその殆どを防ぐことも可能だっただろうが、修介はそれをしなかった。刻まれる傷、襲う痛みに構わず、修介はその拳でもって一体一体を撃破していく。

「あいつ、痛みを感じてねェのか!?」
 オスヴィンは驚愕の声をあげると同時に、大剣を持ち直し突撃の構えを取った。
 修介の戦いぶりは鬼神の如きだ。しかし、味方と名乗った彼が傷を負いながら敵に埋もれていくのを見ていられるほど、オスヴィンは守られることに慣れてはいなかった。
「待ってください、貴方はこのまま、お仲間とともに防御陣形を」
 駈け出そうとするオスヴィンを制したのはアリウム・ウォーグレイヴだ。
 そうは言ってもよ、と反論しかけるオスヴィンをアリウムは手で制し、修介に群がったスケルトンへ鋭く短槍を投げた。
 白い短槍が空気を切り、重苦しく立ち込めた靄をも切り裂き、甲高い響きを奏でて飛ぶ。その槍はスケルトン二体をまとめて串刺しにして、修介のそばの地面に突き刺さった。
 槍の飛ぶ響きにスケルトンが気を取られた間に、アリウムは修介のもとへと走り寄っていた。
 いくらスケルトンの意識が他に向いているとはいえ、数多の攻撃を避け切るのは不可能と思われたが、このときアリウムの五感は《ホワイトパス》により極度に高められていた。その力をもってすればスケルトン程度の攻撃を避けることなど造作もない。
「援護します」
 アリウムは修介と背中合わせに立ち、刺突剣を抜く。その刃にすさまじいまでの氷の魔力が収束していることを、修介は背中越しに感じた。と同時にアリウムの狙いをも察したのは、彼の格闘家としての勘であろう。
「至近戦闘は任せてください」
 修介はそう応え、拳を構えた。
 アリウムが氷の魔力をまとった刺突剣でスケルトンを突く。直撃を受けたスケルトンは斃れ、周囲にいたスケルトンは極低温により動きが鈍くなる。
 こうなれば、いくら数が多くとも修介の敵ではない。動きの鈍った個体を狙い、一体ずつ確実に撃破していく。
 両名は流麗なまでの連携を見せ、瞬く間に周囲に骨の山を築き上げた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

六島・椋
SPD
聞いたかいエスタ(f01818)、スケルトンだ
スケルトンだそうだ
スケルトンだそうだぞなあ聞いているのか
骨(びじん)が沢山見られるぞ

【ロープワーク】で結んだからくり糸をエスタに渡す
【怪力】ですっ飛ばされないようにしつつ
振り回されながら、スケルトンとすれ違いざまに
【二回攻撃・早業・鎧無視攻撃】で解体
【医術】知識で急所や壊しやすいところを狙う
骨格には詳しいもんでね

届かない範囲にいる奴や、振り回しているエスタを狙う奴には
人形のオボロに投げナイフを【投擲】してもらう

確かに骨は我が愛の対象だ
だが彼らはとうに消えたもの
それを留める理由はない
それはそれとして心は痛むが……
一人くらいうちに来てほしいが……


エスタシュ・ロックドア
強敵に立ち向かう奴ぁ嫌いじゃねぇ
それが無謀を極めたバカだろうとな
そして荒事は大好物だ
が、今回は椋(f01816)に引っ張られてきた
相変わらずだなぁ、お前
あー、へいへい、聞いてますよ
今からその骨ぶっ壊すぜ

雑魚は業火で焼いちまうのが一番だが、
今回は椋がやる気だしな
椋から渡されたからくり糸を持って【怪力】乗せた『羅刹旋風』で【なぎ払い】【範囲攻撃】
振り回して椋を骸骨連中に叩き付けるぜ
それでもこっちに来る奴ぁ【カウンター】【吹き飛ばし】で蹴り飛ばす

未練タラタラじゃねぇか
やめとけ、コイツらオブリビオンだぜ
夜中に動き出してダチの寝首掻かれちゃかなわねぇ
ぶっ壊した後は灰になるまで焼くからな、
持って帰んなよ!



 味方の勇姿は敵の惨状。
 累々と積み重なる骨の姿に、六島椋は嘆息した。
「在るべき姿に戻っているのだとはいえ、心が痛むな……」
「お前なぁ、わかってて来たんだろ。ほら、まだ敵はいるんだ。気を散らすなよ」
 傍らのエスタシュ・ロックドアは半ば呆れ顔だ。それもそのはず、彼は今回、能動的にこの任に参加したわけではなく、椋に引っ張られてきたのだ。

 グリモアベースで交わされた二人の言葉は次のようなものであった。
「聞いたかいエスタ、スケルトンだ」
「おう」
「スケルトンだそうだ」
「あー」
「スケルトンだそうだぞなあ聞いているのか」
「へいへい、聞いてますよ」
「骨(びじん)が沢山見られるぞ」
「相変わらずだなぁ、お前」
 周囲にいた猟兵が笑いを噛み殺していたことは、エスタシュにとってはあまり思い出したくない記憶である。

 なし崩し的に連れてこられたとはいえ、ひとたび戦場となればエスタシュの血も騒ぐ。無謀な傭兵たちの心意気も嫌いではない。
「今からその骨ぶっ壊すぜ」
 エスタシュは、椋から渡されたからくり糸を両手に持ち、その端を手の甲に巻き付けた。からくり糸の反対の端には椋の体が結び付けられている。
「なァ兄さんよ、それ、まさか」
 傭兵のひとりがおそるおそる声をかける。彼は既に何かを察したのか、じりじりと後ずさりでエスタシュから離れようとしていた。
「察しがいいじゃねぇか。わかったら離れてな!」
 言うが早いか、エスタシュはからくり糸を振り回し始めた。糸だけならよいが、先端には人が一人括りつけられているのである。その膂力、羅刹だからというだけではあるまい。
「嘘だろ、何て戦い方しやがる」
 ぽつりと傭兵が漏らしたのは驚嘆であっただろうか。驚きを通り過ぎて夢を見ていると思ったやもしれぬ。

 振り回される椋のほうにもそれなりの膂力が要求される戦法だ。いくら糸を複雑に結んで体を固定しているとはいえ、吹き飛ばされぬ保証はない。椋は片手でからくり糸を掴んで体を支え、空いた片手ですれ違うスケルトンに攻撃を叩き込んでいった。
 高速で回転しているとは思えぬ精確さであった。骨盤、腰椎、頚椎――いずれも壊されればスケルトンとて再起の難しい場所だ。骨に並々ならぬ愛情を注ぐ椋がその箇所を衝けぬはずがない。
 椋に並ぶようにして舞う影が時折光るものを放つ。投げナイフである。影は椋の操る骨格人形であった。遠目には、スケルトン同士が戦っているように見えたかもしれない。

 エスタシュがからくり糸から手を離したとき、彼の周辺には、円状にスケルトンの残骸が転がっていた。それに目をやりながら椋が戻ってくる。表情の乏しい椋の目は普段よりも僅かに細められ、自らが葬った骨たちを見つめていた。
「――確かに骨は我が愛の対象だ。だが彼らはとうに消えたもの。それを留める理由はない」
「だな。お疲れさん」
 気落ちしているのかもしれない、とエスタシュは労いの言葉をかけた。
「それはそれとして心は痛むが……一人くらいうちに来てほしいが……」
「未練タラタラじゃねえか」
 さっきの言葉を返してほしい、と思うだけ無駄かもしれない。椋にとって骨がそういう存在であることをエスタシュはよく知っている。
「やめとけ、コイツらオブリビオンだぜ。夜中に動き出してダチの寝首掻かれちゃかなわねぇ。あの残骸は灰になるまで焼くからな」
 言うが早いか、椋の返事も待たず、エスタシュは言葉通りにそれを実行した。紅蓮の炎がスケルトンの残骸を包み込む。
「持って帰んなよ!」
 念押しのようなエスタシュの言葉に、椋は溜息で返事をした。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

鹿忍・由紀
絶対に敵わない相手に向かっていくのは勇気じゃなくて無謀でしかないよね。
まあ今回はこの人達の手助けするのも仕事のうちみたいだから協力するけど。
突っ込んでいかなかったら守るって仕事さえしなくて済んだのになぁ。

数が多い相手にはこちらも数で対応しとこう。
『影雨』で敵を切り崩し、飛んでくる攻撃も影雨で相殺して叩き落としてやる。
全部は落とせないだろうけどそれは「見切り」で避けて自分でも直接ダガーで斬撃を。

何が目的なのかはどうでもいいけど、この人達についていけばオブリビオンを見つけられるかもしれないなら、まあ。
一から探し出すのも面倒だしね。

アドリブ、絡みはご自由に。



「絶対に敵わない相手に向かっていくのは勇気じゃなくて無謀でしかないよね」
 霧に溶けるような気だるげな声は鹿忍由紀のものだ。声だけでなくゆらりとした佇まいもまた、霧に白く浮かぶ影のようであった。
「まあ今回はこの人達の手助けするのも仕事のうちみたいだから協力するけど――突っ込んでいかなかったら守るって仕事さえしなくて済んだのになぁ」
 由紀の言葉はあくまでも独語である。誰かに聞こえるように言って無用な争いを生むのも、また面倒だ。
「貫け《影雨》」
 唇を殆ど動かさずに発せられた言葉を聞く者はいなかったが、その声に起因した攻撃は実に多くの目に留まることとなった。
 ひゅお、と夥しい数の影が――影だけが走る。それは霧に隠れ、軌道を読むことは極めて難しい。
 スケルトンたちは顎をかくかくと鳴らしてその行方を追おうとするが、一体として成功したものはいなかったようだ。
 高く低く猛禽のように飛んだ影は、霧から抜け出たかと思うと、次の瞬間にはスケルトンを捉え貫く。
 その合間を縫って矢が飛び、由紀に襲い掛かった。しかしその殆どは影の刃によって叩き落されており、回避は十分に可能である。由紀は猫のような身のこなしで攻撃を避け、あるいは手にしたダガーで斬って捨てた。
「何が目的なのかはどうでもいいけど」
 由紀は横目にヨーグを見た。正確には、彼が大事そうに拾い上げた銀のバングルを。土に汚れ傷だらけのそれが、彼らの動機に繋がるものなのだろう。
 しかし、由紀は人助けに興味はない。彼らを助けるのはあくまでも手段であり、目的ではないのだ。
「この人達についていけばオブリビオンを見つけられるかもしれないなら、まあ。一から探し出すのも面倒だしね」
 由紀はダガーを軽く投げ上げ、宙で一回転したそれを受け止めた。

成功 🔵​🔵​🔴​

田抜・ユウナ
もう始まってるのね。……なりふり構っている場合じゃない、か。
溜め息ひとつ、背中の刀へ手を伸ばす
「……十秒だけよ」
妖刀封じの呪帯の留め金に触れて、時間限定で《封印を解く》

【妖剣解放】
膨大な妖気を纏い高速機動、手刀足刀でスケルトンを手当たり次第に斬り捨て、複製した骨パーツも衝撃波で吹っ飛ばす。
特に一般人周辺のスケルトンから優先して掃討していく。
「チェリャリャリャッ!! チェェストォォォオオオ!!!」
獅子奮迅に暴れまわるけれど、怨念に蝕まれて吐血
再封印したら、その場にしゃがみ込んで咳き込む
……まだ敵は残ってるって?
心配どうも。でも大丈夫でしょう、と他の猟兵を指して

※アドリブ歓迎


リーヴァルディ・カーライル
…ん。彼らも往生集めの犠牲者かもしれない。
骨だけとはいえ、これ以上傷付けるのは忍びないけど…。
ごめん。今は生者を優先させてもらう…。

事前に存在感を増幅する“誘惑の呪詛”を防具に付与し、
周囲の第六感に訴え視線を引き付けるように防具を改造

…私は敵の注意を引き付ける。
その間に傭兵達を避難させて…。

暗視を頼りに敵の行動を見切り【吸血鬼狩りの業・乱舞の型】を発動
怪力の踏み込みから生命力を吸収する魔力を溜めた双剣を振るい、
傷口を抉る無数の魔刃で敵陣をなぎ払う範囲攻撃を行い、
殺気を感知したら双剣の2回攻撃によるカウンターを試みる

…死の尊厳を愚弄した者には必ず報いを与える。
だから今は眠りなさい、安らかに…。



 猟兵たちの活躍によりスケルトンの数はかなり減ったが、脅威が完全に去ったとは言いがたい。
 ここにいるのが猟兵だけであれば、あとは放っておいても大した問題にはならなかっただろう。しかしここには手負いの傭兵たちがいるのだ。最後の一体まで潰しておかねばならない。
 その状況を知ってか知らずか、グリモアベースからはなおも猟兵が転送されてきている。

「もう始まってるのね。でもまだ敵は全滅も撤退もしてない。……なりふり構ってる場合じゃない、か」
 転送の光が消え、姿を現した田抜ユウナは周囲を見渡す。
 そこここにスケルトンの残骸が転がり、地面は白く染まっていた。永遠の眠りを妨げられた骨が、戦闘と破壊を経て砕け、地に散らばっている。
 ユウナはひとつ溜息をつき、背負った刀に手を伸ばした。
「……十秒だけよ」
 固い声とともにユウナの指先が呪帯の留め金に触れる。
 その瞬間、生温い風が吹いた。その風は色なき闇と形なき怨念を撒き散らし、ユウナの体を覆っていく。
 あまりにも禍々しい。それを遠くから目にしたオスヴィンら傭兵は、十分距離があったにもかかわらず反射的に一歩退いた。
 膨大な妖気に覆われたユウナは目にも止まらぬ速さで疾駆し、近付いたスケルトンを手当たり次第に斬り捨てていく。
「チェリャリャリャッ!! チェェストォォォオオオ!!!」
 スケルトンは自身の骨を多数複製することで盾を作り、ユウナの突撃を阻もうとした。そこに間髪を入れず衝撃波が襲い掛かる。スケルトンはなすすべもなく盾ごと吹き飛ばされた。
 獅子奮迅の威容に気圧されていたオスヴィンたちだが、その勇姿を見守るうち、あることに気がついた。
「アイツ……俺達に向かってきそうな奴から倒してやがンのか」
 しかし《十秒》はすぐに訪れる。妖刀を解放するということは命を削るということ。これだけの怨念を身に纏って、その場で絶命せぬだけでも驚くべきことなのだ。
「ぐ……ッ!」
 苦しげな息とともにユウナの口から血が零れ落ちる。限界だ。ユウナの頬は血の気を失い、戦場を覆う霧のごとく真っ白になっていた。
 震える手で刀を再び封印すると、ユウナはその場に崩れ落ちた。激しく咳き込むたびに、喉奥から血の飛沫が飛ぶ。
「おい、大丈夫か!」
 オスヴィンが駆け寄り、無骨な手でユウナの背をさすった。
「心配どうも。まだ敵はいるけど――でも大丈夫でしょう、ほら」
 ユウナは右手をあげて、ある一点を指差した。

 その先には、黒いローブをまとったリーヴァルディ・カーライルの姿がある。
 けして派手ないでたちとはいえぬ彼女だが、この戦場において、不思議とひときわ目を引いた。
 灯に惹き付けられる蛾のように、スケルトンがゆらゆらとリーヴァルディに近付いていく。スケルトンの歩く軌道上に落ちていた骨が浮き上がり、組みあがって再びスケルトンとして動き出す。
 リーヴァルディはほんの一瞬、祈るように目を閉じた。彼らも往生集めの犠牲者かもしれない。
「骨だけとはいえ、これ以上傷つけるのは忍びないけど……ごめん。今は生者を優先させてもらう……」
 瞳を開けると、そこにもはや逡巡はなく、純粋な戦意がスケルトンたちを射る。リーヴァルディは姿勢を低くし、双剣を構えた。
 ひゅ、とわずかな空気の揺らぎだけを残してリーヴァルディの姿が移動する。強烈な踏み込みはひと飛びで彼女の体を前線へと運び、双刃は旋風となってスケルトンを襲った。
 斬る。薙ぐ。リーヴァルディの動きはいつの間にか無数の魔刃を周囲に伴い、剣の舞とでもいうべき様相を呈していた。リーヴァルディの剣によって切り刻まれた骨が花弁のごとく渦巻く。
「……死の尊厳を愚弄した者には必ず報いを与える。だから今は眠りなさい、安らかに……」
 一体のスケルトンが蘇る間にもリーヴァルディは二体、三体と地に還していった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

華折・黒羽
ユルグ(f09129)さんと
※連携を第一に立ち回る

一度見た事のあるだけのユルグさんの戦闘
この人の戦い方をもう一度見たいと思った
同じ戦場で背中を合わせられたら
どれだけ心躍るのだろう

群がる骨共の最中
変わらず調子よく語らう相手に呆れの息ひとつ

軽口叩いてないで、ほら、来ますよ…!

彼の立ち回りを見、学び、呼応しようと
己も屠・隠を手に構える

――背中預けます、ユルグさん。

後方支援ではない
只々互いに、前へと切り結ぶ

五感を越え六感を全て戦闘へ結ぶ
鼓舞される四肢に屠が喰らう生命を宿し
踊るシャシュカの波間を縫い
敵を斬り、薙ぎ、時にその拳をもぶつけ
この共闘を脳に焼き付けようと

――楽しいと、思ったのは何時ぶりだろう


ユルグ・オルド
黒羽(f10471)と

んなに見てられっと照れちゃうわ
軽口とともにシャシュカの一本振り抜いて
馬車に近いのから倒してこっか
後はもう走り出せばきっと何も気にならない
目の奥がちりりと熱くなって熄を熾したら

ねえ、黒羽、踊ろうか
骸骨相手なら遠慮もいらない
誘えば返る生真面目な声に笑いつつ
――ああ、任された
応えるが早いか駆けだそう
数がいるならなぎ払い、転び出るなら敵も盾にして
黒羽の干戈の合間を縫うように、息つく間もないように
あんたがこぼした分は俺が片すし
捨て身とばかりに踏み込むのも黒羽がいると思えばこそ
痛みは焼いて、指先の神経までもを研ぎ澄まして

ふは、良い顔してんじゃない
ちらと窺い交る視線の先へ、もっと疾くと



 勝利は確定的であったが、まだ片付けるべき敵がいた。
 恐慌状態に陥って走った馬がようやく脚を止めた先にも、スケルトンはいたのだ。馬車に乗っているのはロランたち負傷者だ。襲われればひとたまりもない。

 華折黒羽は、靄と骸骨のわだかまる薄明の中、確かに高揚を感じていた。
 その要因は彼の背後にいる人物に他ならない。
 かつて一度だけ見たことのあるユルグ・オルドの戦闘。それは黒羽の記憶に鮮烈な跡を残した。
 もう一度見たい。そう思っていたのがこの戦場で実現する。心の躍らぬはずがあろうか。
「んなに見てられっと照れちゃうわ」
 黒羽の真剣な眼差しに、ユルグはあくまでも軽い調子で応じる。普段と変わらぬ声に緊張の色はなく、戦場であるということを感じさせない。
 黒羽は表情を緩め、呆れ顔でユルグを見やった。
「軽口叩いてないで、ほら、行きますよ……!」
 動きを止めた馬車はスケルトンの格好の標的だ。スケルトンは白蟻のごとく馬車に群がり、その姿を覆い隠さんばかりであった。
「馬車に近いのから倒してこっか」
 ユルグはシャシュカを鞘走らせた。彎刀には鍔がなく、使い手の掌さえその錆としてしまいかねない獰猛な光を秘めている。
 ユルグは視界にちかちかと光を感じた気がした。眼底に熱がともる。その感覚はどこか心地よく、ユルグは唇の端で笑った。
「ねえ、黒羽、踊ろうか。骸骨相手なら遠慮もいらない」
「背中預けます、ユルグさん」
 ユルグが誘えば、返ってくるのは生真面目な声だ。
「――ああ、任された」
 二人は同時に地を蹴った。

 不規則に舞うシャシュカの合間を縫って漆黒の剣閃が走る。
 どちらが前も後ろもない。黒羽が一歩を踏み出せば、ユルグがその横に回り込む。
 ユルグの戦いぶりは自らの身を顧みぬ、無鉄砲とさえいえるものであった。
 その背を守るように立ち回りながら、黒羽は苛烈なまでの視線でユルグを見詰める。
 敵を屠るのは、もはや体が勝手に動く。
 今はそれを超えて、この共闘を脳に焼き付けていたかった。

 ユルグは舞の合間、肩越しに黒羽の顔を見る。ふは、と笑いの形に息が漏れた。
(良い顔してんじゃない)
 ユルグはさらに疾く、シャシュカを舞わせた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ノワール・コルネイユ
フン…不思議と他人とは思えん奴らだ
おい、オッサン共。運がよかったな
あんたらの奮戦が実を結びそうだぞ

護られてばかりでは納得もいかんかもしれん、な
なにせ武侠の男共なんてそんなやつばかりだ
文句も感謝も、後で纏めて聞いてやるさ

迫り来る骸骨共を始末しつつ
戦士達が襲われている場合は加勢に回るぞ

UCは攻撃力重視で発動
攻防の駆け引きは【第六感】を頼りに敵の元へ飛び込み
敵が固まっている場合は【範囲攻撃】
単体を確実に潰す時は【二回攻撃】で使い分け
硬い相手がいるなら【鎧砕き】で引き裂いてやる

こいつらを片付けたとしても、まだまだ油断は出来ん
逃げて来たアンタらの方が分かっているだろう
だが、良く耐えたよ。お陰で間に合った


ゴォグ・ツキシマ
死と圧制の世において、抗い戦う者達も居るのであるか。
…承ォ知した! このゴォグ、助力せねばなるまい!

迅速に傭兵と骸骨との間に割り込み、護ることを重視し戦おう!
2.8mのこの躯、壁には丁度良し!(【存在感】) 何、他を【かばう】以上多少の被弾は【覚悟】の上よ!(【勇気】)
『灰よ、灰よ!』をもって骸骨達に終わりを齎そう!
とはいえこの乱戦、味方と力を合わせたい所であるな!
「名はゴォグ! 義と炎において、お主らの助太刀に来た者である!」

…この骸骨達も、元は犠牲者の骸であろうか。
往生集めか…悪辣なる輩と聞いているが。
事が済めば頭目に話を聞くとしよう。

いざ、業務開始! 本日も――そうとも、本日もご安全に!



 猟兵が相手では分が悪いと悟ったのか、スケルトンの狙いはいまやオスヴィンら傭兵に向けられていた。
 傭兵団の面々を眺めて、ノワール・コルネイユの脳裏に自らの親代わりたちが過る。
(フン……不思議と他人とは思えん奴らだ)
 彼女を育てたのも、この世界で闇に抗うものたちであった。
「おい、オッサン共。運がよかったな。あんたらの奮戦が実を結びそうだぞ」
 彼らを守りきれば終わりだ。傭兵団が粘ったおかげで、ひとりの死者も出さずにこの戦場を収めることができそうであった。

(死と圧制の世において、抗い戦う者達も居るのであるか)
 その存在はゴォグ・ツキシマを突き動かすに十分であった。
「……承ォ知した! このゴォグ、助力せねばなるまい!」
 ゴォグの声はどこに反響しているのか、低く大きく響き渡る。
 腹にびりびりと来るその声に気圧されたかのように、スケルトンは一瞬動きを止めた。ゴォグはさらに声を張り上げる。
「名はゴォグ! 義と炎において、お主らの助太刀に来た者である!」
 ゴォグの声に傭兵たちの士気は上がる。上がらぬほうがおかしい。その声、巨躯、台詞回し。いずれをとっても、敵とすればなんと恐ろしい、味方とすればなんと頼もしいことか。

 ノワールが両手に銀の剣を構える。呼応するようにオスヴィンやヨーグらも剣を構えた。
 傭兵たちは戦力外であったが、ノワールはあえて彼らを止めようとしなかった。武侠の男たちがどんなものかノワールはよく知っている。守られてばかりで納得できるほど大人しい性格であれば、この世界であえて剣など握らぬだろう。
「捉えた獲物を逃しはしない」
 赤い瞳は冴え冴えと敵を捉え、黒髪と黒衣が霧の中に舞う。一閃、二閃とノワールが剣を振るうたびに刃がきらめく。そのきらめきが傭兵たちを奮い立たせた。
 ノワールはまるで将のように傭兵たちを率い、戦場を圧倒してみせた。

 ノワールにとっては容易い戦場である。
 一方、傭兵たちにとっては簡単な戦闘ではなかったが、ここでゴォグの存在が光った。
 スケルトンが傭兵を狙おうとしても、ゴォグの巨躯に阻まれ易々とは届かぬ。回り込もうとする間にも高温の炎が襲い掛かってくる。
 ゴォグの身体に備え付けられたハッチから噴出する炎は、断罪か葬送か。
 骸骨はつぎつぎと焼かれた。焼かれ、燃え尽きてなお熱き灰へと姿を変え、彼らはようやく二度目の死を得た。
 炎をおさめたゴォグはその残骸を見下ろし呟く。
「……この骸骨達も、元は犠牲者の骸であろうか」

 傭兵たちの間から歓声が上がる。ゴォグが灰へと還したスケルトンが最後の一体だったようだ。
 暴走していた馬車も、黒羽とユルグに付き添われて戻ってきている。
「おかげで助かった」
 オスヴィンが服の泥を払い、ゴォグに話しかける。
「猟兵とか言ったな、あれは本当なのか。追い詰められた奴らの御伽噺と思ってたが」
「であれば、まさに今貴殿らも追い詰められて、その御伽噺とやらを紡いでいるのであるな」
 ゴォグの言葉にオスヴィンは笑った。どこからともなく現れた滅法強い集団。《猟兵》が実在するとでも思わねば説明がつかぬ。
「往生集め……悪辣なる輩と聞いているが。奴を追っているのであるか?」
「旦那、エルシークを知ってンのか!? こ、これ、これを見てくれ!」
 まろぶように駆け寄ってきたのはヨーグである。戦乱の中で拾ったバングルをゴォグに示し、落ち着かぬ様子で喋り始めた。
「このバングルはミクランって奴のだ。こないだまで一緒にいた俺が言うんだから間違いねぇ。ああ、想像がついてるだろうな。死んじまったんだよ。今みたいにスケルトンどもに襲われてな」
 ゴォグは得心がいった。ヨーグが敵のさなかに飛び出したのはそういうわけだったのだ。
「やむを得ぬとはいえ、ミクランなる者の遺体を損ねてしまったのであるな。悪いことをした」
「いや、アンタらが謝ることじゃねぇ。ミクランはようやく眠れるだろうし、このバングルだけでも故郷に帰してやれるってモンだ」
 ヨーグはバングルを大切そうに懐にしまいこんだ。

「ミクランの行方はわかった。だが俺たちには、まだエルシークの奴を追わなきゃならん理由があるんだ」
 オスヴィンは地面に腰を下ろし、話しはじめた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『往生集め『エルシーク』』

POW   :    賢者の双腕
見えない【魔力で作られた一対の腕】を放ち、遠距離の対象を攻撃する。遠隔地の物を掴んで動かしたり、精密に操作する事も可能。
SPD   :    蒐集の成果
自身が装備する【英雄の使っていた剣】をレベル×1個複製し、念力で全てばらばらに操作する。
WIZ   :    幽暗の虫螻
【虫型使い魔】の霊を召喚する。これは【強靭な顎】や【猛毒の針】で攻撃する能力を持つ。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠エルディー・ポラリスです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 ――馬車を見りゃわかンだろ?
 本来、俺達みたいなならず者あがりが乗るようなモンじゃねえ。元はそりゃあ立派な隊商だったのさ。俺達はその護衛だ。

 ここじゃ作物もろくに実らねェし、実ったところでクソみてぇな領主に根こそぎ持ってかれちまう。そんな中、ヘルフリートのオヤッさん――俺たちの雇い主で隊商の主人だが――は少ない物資をやりくりして、あちこちに届けてたンだ。
 そりゃ商売だからな、カネはもらうさ。だが、こんな危険な稼業をやめなかったのは、オヤッさんがやめたら冗談じゃなく消えちまうような村があったからだ。

 そのオヤッさんが、スケルトンにやられちまった。護衛なんて役立たずだよなァ。ミクランが死んだのもその時だ。
 だが、死体がどこにも見あたらねェ。体だけじゃなく、大事にしてた手帳やら帽子やら、そういうモンも消えちまった。
 俺たちゃ傭兵だからな、依頼主がいなくなりゃ解散だ。だが、オヤッさんの体なり遺品なり、少しでも家族に戻してやりてェ。
 で、スケルトンどもを追ってたらエルシークの奴に行き当たったってワケだ。
 奴の根城は分かってる。この先の古城だ。つっても殆ど崩れ落ちて、住めたモンじゃねえと思うがな。
 俺達はその古城に乗り込もうとして――このザマだ。

 アンタらが《猟兵》だって言うなら……勝手な言い分ってのはわかってる。手を貸してくんねェか。
シル・ウィンディア
そういう想いがあるのなら…
よし、ここは任されたよっ!

エルシークを発見したら
さ、隊商さん達の物、返してもらうからね?

まぁ、聞く耳持たないと思うけど…

戦闘は
【残像】【フェイント】を駆使した【空中戦】での機動戦闘を中心に
光刃剣の柄を二本直列につなげて、大剣モードの光刃剣にするよ
周りを飛びまくって、隙を見つけたら
大剣を振りかぶって攻撃
切り返しも利用して【2回攻撃】を行うよ

敵の攻撃は【第六感】で感知して【見切り】で回避

大きな隙をさらしたら
【高速詠唱】【全力魔法】でのエレメンタル・ファランクスっ!!
さぁ、わたしの全力全開の魔法、目一杯、味わってねっ!!

※泣き叫ぶくらいに虫が大の苦手です
アドリブ歓迎


クロウ・タツガミ
他猟兵との連携アドリブ歓迎する

【POW】

律儀なものだな、相手がオブリビオンであれば手を貸すのも吝かではない

【戦闘知識】を用いサカホコ(ハルバート)を主力に戦うとしよう。【先制攻撃】としてレプリカを【力を溜め】て【投擲】した後に距離を詰めて、【2回攻撃】で戦うつもりだ
さて、蒐集家殿、暫し付き合ってもらう。自分の身体を見事蒐集してみせろ

【蒐集の成果】に合せて、【一目連】で迎撃を試み、【幽暗の虫螻】にはサカホコを車裂きの車輪に変身させ【投擲】し蹴散らせるか試みるつもりだ。他の敵の攻撃はガントレッドによる【盾うけ】で防ぎ、護衛や猟兵への攻撃を極力【かばう】つもりだ

攻撃はこちらで受ける、その間に攻撃を



 霧はなお深く立ちこめ、古城の姿を白く濁らせていた。
 オスヴィンの言葉通り、往生集めエルシークはそこにいた。エルシークは木乃伊のような指先をこすり合わせ、獲物がやってくるのを待っていた。
 与し易い獲物とともに猟兵がやってきたのはエルシークにとって計算外であったはずだが、空虚な瞳からは何の感情も読み取ることができぬ。ただ空ろに霧が通り抜けていくだけだ。

「律儀なものだな」
 クロウ・タツガミが低く言う。事前の情報でもわかっていたことだが、エルシークは猟兵でもない者の手に負えるような敵ではない。
 傭兵たちもわかっていたのではあるまいか。それでも彼らを突き動かすものがあったのではないか。
「――何にせよ、相手がオブリビオンであれば手を貸すのも吝かではない」

「招かれもせず足を踏み入れるとは、礼を尽くす必要はなさそうだ」
 クロウに向けてエルシークが声を発する。錆びた鎖が絡み合うような声であった。
「蒐集家殿、暫し付き合ってもらう」
 口火を切ったのはクロウのほうであった。クロウの右手が鋭く動き、小さな刃物が飛ぶ。それは鏡のように周囲の風景を映しこみ、それと意識しなければ目に留めることは難しかったであろう。
 かつりと軽い音がする。クロウの投擲した暗器はエルシークの手に弾き落とされた。
 構わずクロウはハルバードを構えて飛び込む。その勢いで素早い斬撃を繰り出すが、エルシークは意に介した風もなく、滑るように移動してその攻撃を回避した。
 しかし、移動した先にはさらに多くの刃が待ち受けていた。クロウが《天目一箇神》で召喚したものであった。
「鞘も無く、拵えもなく、ただ万刃よ万象を穿て」
 刃が一斉にエルシークを向く。一呼吸の間もおかず、それらはエルシークにつぎつぎと斬撃を浴びせた。

 無数の刃がエルシークのまとった襤褸を切り裂く。薄汚れて端の縮れた布に穴が開き、裂ける。
 通常であれば刃は、衣の中にある体を深く深く傷つけていただろう。
 しかし襤褸の中は全き空ろであった。裂けた布の端が風に揺れる。――否、風ではない。虫だ。空と思われた衣の下から、無数の足をもつ虫が襤褸を揺らしながら這い出てきたのである。

「……い」
 喉の奥でひゅっと息を呑む音がした。シル・ウィンディアである。
「いやああああぁぁあぁああああっっっ!」
 ざわざわと音を立てて迫ってくる虫にシルは悲鳴を上げた。
「いやっ! 無理! 来ないで! 来るなッ!!」
 シルは文字通り飛び上がった。スケルトン相手には堂々と立ち回っていたが、彼女は虫が大の苦手であった。声は余裕をなくして上ずり、目には涙が滲んでいる。
 幸いというべきか、エルシークの配下たる虫に翅はなく、地を這うばかりだ。シルは虫から逃れようと、ひたすらに地面に足をつく回数を減らし、壁の突起や朽ちかけた照明を利用して上へ上へと逃げた。

「虫どもは引き受けた」
 クロウは言うと、石の床に巨大な車輪を転がした。処刑具であるそれも、彼の連れた龍が転身したものである。車輪は雷鳴にも似た低い轟きとともに転がり、虫たちを蹴散らしていく。
「この間に攻撃を!」
 クロウが天井を見上げ、シルに呼びかける。

 虫の数は減ったとはいえ全てではないし、シルにとっては死骸も目に入れたくはない。しかし戦いにおいて、ここまで舞台を整えられておいてできぬと言えるはずもない。
 シルが二本の光刃剣の柄を合わせると、それは繋がり、一振りの大剣となった。
 シルは天井近くから飛び降り、落下の勢いを乗せて剣をエルシークに突き立てる。剣はエルシークの左肩があるはずの箇所に命中したが、手ごたえは軽く、そこにもやはり無が浮かぶばかりだ。
 しかし、はるか頭上から撃ちおろされた衝撃に、エルシークは大きく揺らめいた。
「隊商さん達の物、返してもらうからね? 《エレメンタル・ファランクス》っ!」
 高密度の魔力が束となりエルシークを穿つ。四つの属性が複雑に絡み合った術式はエルシークの防御を許さず、その左手を消し飛ばした。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

アリウム・ウォーグレイヴ
アドリブ歓迎

こんな私でも自称騎士です。
乞われれば手でも力でもいくらでもお貸しいたしますよ。
彼ら傭兵と亡くられた方々の心の平穏のためにも、敵には報いを受けてもらいます。

虫を使役し、遺品である剣を利用するとは、どこまでも嫌悪感しか湧かない敵ですね。
故にホワイトパス、ホワイトホープで確実に屠ります。
敵の手を読み、状態異常力を強化し、ここぞという場面で『属性魔法』ホワイトマーチやホワイトブレスで敵の攻撃ごと全て凍らし尽くします。
希望を摘む存在は私が許しません。
骸の海の底へ還っていただきましょう。

可能な範囲で傭兵達に止めを譲りたい気持ちがあります。
彼らの前へ進む意志に対しての私なりの敬意を現れです。


田抜・ユウナ
「私がやることは変わらない。オブリビオンを骸の海へ送り返す。それだけよ」
内心はともあれツンとつれない態度。
……敵のコレクションとやらにも興味があるし、ついでに遺品を探すくらい手間ではないだろうけど。

●戦
【妖剣解放】は、これ以上使うとヤバイので封印。
軽く吐血し、後方にへたり込む。
うん、ちょっともう動けないかな。休ませてもらう。……仕込みも澄んだし、ね。

【レプリカクラフト】
《目立たない》よう、《第六感》《戦闘知識》に頼って罠を仕掛ける。
敵が所定の位置に立ったら、仲間を巻き込まないタイミングで印を結び《念動力》で作動。
足枷でその場に拘束&頭上にシャンデリアを落下させるというコンボを狙う。



 アリウム・ウォーグレイヴは潰れた虫を一瞥し、秀麗な眉をひそめた。
「騎士を名乗る者として、乞われれば手でも力でもいくらでもお貸しいたしますよ。《往生集め》エルシーク、あなたには報いを受けてもらいます」
 アリウムの言葉に、エルシークは忌々しげに声を発する。
「雇い主一人守れぬ役立たずどもが、敵討ちにも他者の手を借りるか。いらぬ者を呼び込みおる……!」
 エルシークが剣を抜いた。その意匠は傭兵たちの持つ剣どこか似ている。アリウムはオスヴィンを振り返った。
 尋ねるまでもなく、傭兵たちは異口同音に叫んだ。
「ミクランの剣だ! 畜生!」
「やはりそうですか。虫を使役し、遺品である剣を利用するとは、どこまでも嫌悪感しか湧かない敵ですね」
 アリウムの声は激さない。
 ――静かに怒る奴ほど怖い、というのは誰の言葉であったか。
 アリウムの周囲の温度が急激に下がったようであった。否、下がった。その証拠に彼の周囲の霧が薄れ、代わりに小さな氷の粒が薄明にきらめいている。アリウムの魔力が、彼の周囲というごく限られた範囲に冬を招いたのである。
 常人であれば寒さに体がこわばるところだが、アリウムは冬と氷を自らの友として戦う者だ。周囲にちりばめられた冬はアリウムを助け、彼の五感を研ぎ澄ます。
 エルシークが斬りかかる。ミクランの遺品だという大剣は見るからに重そうだ。アリウムは受けるよりも避けることを選んだ。
 エルシークが剣を振るいアリウムが回避するたびに、一振り、また一振りと周囲に剣が増えていく。それらはすべてミクランの剣と同じ意匠だ。
「くそッ、こんな風に使いやがって!」
 五十――六十はあろうか。複製された剣それぞれに大きな力はないようで、叩き落せばすぐに消える。ミクランの剣を防ぎながら、オスヴィンが苦渋に顔を歪めた。
 アリウムはオスヴィンの表情を横目に見る。
(できれば彼に止めを――かなわぬまでも、せめて一太刀)
 この世界では闇に屈するのが普通だ。諦めで精神を覆い隠し盾とする。そうでなければ壊れてしまう。
 それでもその道を選ばず、自ら前に進もうとする傭兵たちに、アリウムは誠意を示したかったのである。

「私がやることは変わらない。オブリビオンを骸の海へ送り返す。それだけよ」
 それが猟兵というものだ。オスヴィンの話を聞いた田抜ユウナの声は平坦でつれないものだった。
「それでも、オヤッさんの遺品探し、手伝ってくれるんですよね」
 ロランは幼さを残した顔でユウナに笑いかける。笑うとなお幼い。
「……まあ、敵のコレクションとやらにも興味があるしね」
 遺品探しはあくまでもついでという態度をユウナは崩さなかったが、ロランはにこにこと彼女の横顔を見ていた。

 とはいえ、ユウナは先の戦闘で強大な怨念にその身を晒したのだ。前線に出て立ち回るほどの体力はない。
 アリウムがエルシークを引き付けている隙を利用し、ユウナは足音を殺して広間を歩き回った。
 石が敷かれた床は遠い年月を経てきたのか、ぼろぼろだ。あちこちに凹凸があり、油断すると足をとられる。しかしそれは今のユウナにとっては好都合だ。
「……ここね」
 前後左右、そして上方を確認し、ユウナはある一点に膝をつく。口の中で短く何かを唱えると、ユウナはすぐに立ち上がってロランたち負傷者の待つ後方へ退いた。
 流石に体が重い。ユウナは大きく息を吸い込もうとしたが、その瞬間、咽たように咳込んでしまった。
「ユウナさん、血!」
 咳の飛沫に赤いものが混じっているのを見て、ロランが声をあげる。
「――うん」
 口元についた血を手の甲で拭い、ユウナは力が抜けたようにへたり込んだ。
「ちょっともう動けないかな。休ませてもらう」
 うつむき、ロランに背を支えられながらも、ユウナの視線だけは未だ戦場にある。
「……仕込みも済んだし、ね」
 もうすぐだ。言葉でのやりとりはできなかったが、アリウムはわかっているはずだ。
 あと四歩。あと三歩。二、一――

「――ぐァッ!?」
 エルシークが耳障りな声をあげる。攻撃を避けたアリウムがつい先程まで立っていた場所。そこにエルシークが踏み込んだ瞬間、床の凹凸に隠れていた仕掛けた罠が作動した。罠に仕込まれたユウナの妖力が展開し、エルシークの動きを封じる。
「まだよ」
 ユウナの手が素早く、だが複雑な印を描く。エルシークがはっと頭上を振り仰ぐ。
 ユウナが上方を確かめていたのはこのためであった。そこにあるのは朽ちて風に揺れるシャンデリア。
 錆び付いた鎖が、切れた。

 ――ガシャアアアアァァァン!

 曇った硝子が砕け散り、砂埃が舞う。エルシークは剣を取り落とし、頭に右手を当てた。
 骨の頭部にさぞ大きく音が反響したことであろう。
 ユウナの仕掛けた罠の効力は切れていたが、エルシークはまだ動くことが出来ない。
「今です!」
 アリウムが身を引き、オスヴィンのために道を開いた。
「――そろそろ、お前が死体になりやがれッ!」
 叫びとともにオスヴィンが跳躍し、ミクランのそれとよく似た大剣を振り下ろす。
 刃はエルシークの頭上に落ちかかり、太い枝のように突き出た右の角に食い込んだ。オスヴィンが剣を抜くとそこから亀裂が広がり、エルシークの右角は半ばから折れた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

マーリス・シェルスカナ
(※他のPCとのからみ歓迎)

Ah…、大事だった依頼者の為にやりきろうという気持ちはわかりマス…。
そしてエルジークは往生集め、Scavengerの類デス。情報が正しければ…死者の遺品を集めてる可能性は高そうデス。
All Right、私達が協力しますヨ!

(方針)
展開してくる武装系とBugは厄介ネ、相殺してチャンスを作れれば。
Meの『エレクトロレギオン』で、周囲に展開する武装とBugを
相殺して行きマス。攻撃手段は少ないですが、出来る事をやりきるだけネ

…Meの遺品が欲しいデスか、Meの財産は【形に残っていない】ですヨ?


リーヴァルディ・カーライル
…ん。お前も懲りない奴ね、往生集め。
何度現れたとしても、骸の海に叩き返すだけ。
さぁ、死者を冒涜した代価を払う時よ…。

事前に防具を改造して今度は“忍び足の呪詛”を付与
自身の存在感を偽装(変装)して目立たないように気配を遮断

第六感と暗視を頼りに敵の行動を見切り、
攻撃の準備が整うまで殺気を隠して敵の追跡から逃れ
【限定解放・血の教義】を二重発動(2回攻撃)

吸血鬼化した自身の生命力を吸収させて精霊を誘惑
大鎌に“闇”属性の“過去を世界の外側に排出する力”を溜め
反動で感じる傷口を抉るような痛みを呪詛耐性と気合いで耐え、
怪力の踏み込みから大鎌をなぎ払い“闇の奔流”を放つ

…消えなさい、この世界から…。



 猟兵はともかく、オスヴィンら傭兵団の面々などエルシークにとっては羽虫のようなもの。
 それに一太刀を浴びせられたとあり、エルシークは激昂した。
「虫は虫らしく、家畜は家畜らしく、ただ我が足元に頭を垂れておればよいのだ! わきまえぬ者どもめ!」

「……ん。お前も懲りない奴ね、往生集め」
 エルシークは空虚な眼窩に殺意を溢れさせ、リーヴァルディ・カーライルを見た。
「かつての我を知るというか……!」
 エルシークはもはやその頃の記憶を持ち合わせない。ただ蒐集の本能だけを抱えて骸の海から蘇ってきた。
 しかしリーヴァルディはかつて、仄暗い空にそびえる塔でエルシークと戦ったことがあった。
 別のエルシークをリーヴァルディは知っている。それはつまり、そのエルシークを、リーヴァルディは骸の海に葬ったということを意味するのだ。
「何度現れたとしても、骸の海に叩き返すだけ。さぁ、死者を冒涜した対価を払う時よ……」
 リーヴァルディの声はそっと息をつくように淡々と静かで、すぐに霧に紛れて消えていった。

 リーヴァルディの狙いを察知したマーリス・シェルスカナが前に出て《エレクトロレギオン》を発動する。小型の浮遊機械兵器がマーリスの周囲に現れ、エルシークの動きを牽制しつつ、這い回る虫や浮かぶ剣に向かっていく。
 機械兵器は小さいが、多数が飛び回ると視界を遮る。エルシークは忌々しげに右腕を振り、いくつかを叩き落した。
「まさに羽虫か! 猟兵、貴様らを相手にする気はなかったが、よほど死して我が軍門に降りたいと見える」
「……Meの遺品が欲しいデスか。Meの財産は形に残っていないですヨ?」
 それでも手に入れたいデスか、とマーリスは不敵に笑む。
(エルシークが往生集め、Scavengerの類というのは情報通りデスね。であれば……死者の遺品を集めてる可能性は高そうデス)

 傭兵たちはヘルフリートのことを口々に『オヤッさん』と呼んだ。
 単なる雇用主と護衛の関係でなかったことは、その口ぶりからよくわかる。
 隊商はひとつの家族だったのではないか。
 この世界で傭兵などしている者には家族がいない可能性が高い。そんな中で彼らは、ヘルフリートを父親のように慕っていたのではないか。

 機械兵器は徐々に数を減らしつつあったが、まだ十機ほど残っている。
 その数をできるだけ保つよう、マーリスは電脳世界から電気の鞭を呼び出し、エルシークの剣にぶつけた。雷の鎖は金属によく絡み、動きを封じる。マーリスはそこに機械兵器を向かわせ、確実に落としていった。

 エルシークを守るように展開されていたミクランの剣は半分程度に数を減らしていた。
「今ね……」
 湧き上がるようにリーヴァルディの気配が現れる。それは紛れもなくリーヴァルディの気配であったが、先ほどとは決定的に質が異なっていた。
 彼女に流れる吸血鬼の血。普段は息を潜めているそれが、表面に出てきたのである。
 リーヴァルディは大鎌を構えた。死神の名を冠したそれは、エルシークの眼窩よりもはるかに深い闇をまとっている。
 リーヴァルディの全身を抉るような痛みが襲う。生命が一秒ごとに体外に溶け出していくようだった。それだけの反動をともなう業である。
「消えなさい、この世界から……!」
 痛みに耐えながらリーヴァルディは踏み込んだ。大鎌を大きく凪ぐ。すると鎌の刃から闇が奔流となって迸り、エルシークを襲った。
 激流に押され、エルシークはもがく。失った左手で何かを掴もうと腕が動いたが、むなしいばかりだ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

白峰・慎矢
雫(f05281)と一緒に行くよ

よし、じゃあ俺達も手を貸すよ。遺品を大事にしたい気持ちは、俺にもわかるからさ。

傭兵達を守るのは雫達に任せて、俺は敵の攻撃に専念しよう。敵の攻撃は危ないものをしっかり「見切り」して、「残像」でかわしながら「ダッシュ」で敵に接近しよう。俺の間合いまで近づいたら、【集霊斬】を使うよ。刀と脇差の二刀流で「二回攻撃」して畳みかけよう。
武器っていうのは戦うための道具だけど、戦う理由は人それぞれだよね。元の持ち主の想いを無視して、そんなくだらないことのために武器を使うのは、全く度し難いな…!
余裕があれば、傭兵達への攻撃を、「念動力」と隠し小刀の「投擲」で防ごう。


白峰・雫
慎矢(f05296)と一緒に戦うよ

遺品とかを無事に家族の元に戻すためにも頑張らないとね

援護射撃を使って味方に当てないように気を付けながら【フォックスファイア】を個別に操作して敵の攻撃を妨害するように攻撃するよ
敵の攻撃は野生の勘と武器受けを使って薙刀で対処しようかな



 奔流の残滓が消えて立ち上がろうとするエルシークを炎が襲う。
 白峰雫の放った狐火だ。ひとつひとつは小さいが、火の粉のように不規則に跳ね、咄嗟の対処は難しい。
「どこまでも余計なことを! 無謀な傭兵ども、良い獲物と思ったが――要らぬ、要らぬ、要らぬ! 貴様らの死骸は踏み潰して虫どもの餌にしてくれよう!」
 エルシークの声に呼応して、衣の奥からなおも虫が現れる。
 雫は露骨に嫌そうな顔をしつつも薙刀を構えた。
 虫の動きは見た目よりもはるかに俊敏で、少し目を離した隙に飛んでくる毒針は当たれば命取りだ。
 雫がそれを悉く回避できたのは、妖狐に備わる野性の勘であろうか。あるいは人間のそれよりも敏感な耳が、僅かな音を感知したのかもしれない。
 死角から飛んできた針を避け、雫は振り向きざま薙刀を振り下ろした。虫が両断され、緑色の体液が広がって石に染み込む。
「うえ」
 雫は口元をゆがめたが、それでも薙刀を振るう手は休めない。
「遺品とかを無事に家族の元に戻すためにも頑張らないとね」
 小さく言って、なおも雫は虫を狩る。後方に逃せば傭兵達に危険が及ぶからだ。それは避けねばならなかった。

 後方の守りは十分だ。慎矢はエルシーク本体に意識を集中した。
 慎矢自身、遺品のようなものだ。遺品を大切にしたい傭兵たちの気持ちはわかる。
 慎矢の左右から剣撃が襲う。その間を慎矢は走った。けして良いとはいえぬ足場にもかかわらず慎矢は滑るように移動し、その速度は残像を生み出す。残像のほうを狙って振り下ろされる剣さえあった。
「複製したうえ、お粗末な攻撃。元の持ち主を無視して、こんなふうに武器を使うのは、全く度し難いな……!」
 慎矢がエルシークに肉薄するのに、さほどの時間は要しなかった。
「一応聞いてみるけど、死体を集める目的は何だい?」
 エルシークは慎矢たち猟兵よりも傭兵を狩ろうとしているようであった。傭兵のことをさしてエルシークが言った言葉――『良い獲物』。
 死体を手に入れるだけなら、ただの村人などの一般人を狙うほうが容易い。何か力を求めているならば、強い力を持った猟兵が目の前にいてなお傭兵を狙うこともなかろう。
「痴れ者、答えると思ったか」
「思ってないよ」
 傭兵に執着する理由を聞いてみたかった気もしたが、答えがどうあれエルシークはここで滅ぼす。
 慎矢は口を閉ざし、刀と脇差をそれぞれ両手に構えた。
(限界まで……疾く!)
 先ほどエルシークの剣を回避したときよりもなお速い。目にも止まらぬ攻撃が二度、連続してエルシークの胴に叩き込まれた。

「ぐぅ……ッ」
 苦しげな呼気がエルシークの口から漏れる。
 慎矢が攻撃した箇所はやはり衣だけで、見た目のうえでは空だったが、その中には確かに何かがある。攻撃が全く効かぬというわけではなさそうだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

六島・椋
だってほら、あんなに多くのスケルトンが……

奴が親玉か、そうか、そうか
奴のせいで世の骨が消える等するのは困る
傭兵らの気骨も好ましいし、ひとつやるか

エスタ(f01818)にからくり糸の片方を渡しておく
彼の派手な攻撃に紛れ【目立たない】よう立ち回る
仕掛ける時は【フェイント】を混ぜた【二回攻撃】
此方へ飛んでくる武器やらは【盗み
攻撃】として【投擲】し返却しよう
あまり危ないものは福音で回避

隙を見【ロープワーク・早業】で奴の角にからくり糸を結び
終わればエスタとタイミングを合わせ【怪力】で引き倒す
頭が骨だとしても容赦はない
やってしまえエスタ

……遺品があると家族は嬉しいものなのだろうか
家族愛は自分にはわからない


エスタシュ・ロックドア
ははっ、この暗ぇ世界でなかなか気持ちのいい連中じゃねぇか
任せな、俺がぶっ飛ばしてやるよ
……おら、行くぜ椋(f01816)
どーしたよあんなやる気だったじゃねぇか

さて、椋からこっそり絡繰り糸の端を渡されてる訳だが
これをフリントに括りつけて、と
【怪力】【ダッシュ】【存在感】でスピードファイトだ
敵の目を引き付けつつ、動き回ってフリントをヒットアンドアウェイ
それに乗じて絡繰り糸を絡ませる
充分絡んだら一気に引き倒してやらぁ
倒れてる間に『羅刹旋風』でフリントを振り回し、
起きる前に首に真っ直ぐ振り下ろす

敵の攻撃は【第六感】【カウンター】
フリントぶん回して弾き返すぜ

……ああ、そうだろーよ
生きてた証、だからな



「……おら、行くぜ椋」
 エスタシュ・ロックドアが六島椋の背中を半ば叩くように押すが、椋の足取りはなお重い。
「どーしたよ、あんなやる気だったじゃねぇか」
「だってほら、あんなに多くのスケルトンが……」
 椋はこころもち背後を振り返る。もはや見えなくなってしまったが、先程の戦闘ではあまりにも多くの骨片が地にばらまかれた。本来はしかるべき祭祀でもって葬られるはずの骨たちが、砕かれ打ち棄てられ、冷たく湿った霧に晒されている。土に還り花が咲くまでには長い年月がかかるだろう。
「だからアイツをぶっ飛ばすんじゃねぇか。そうじゃねぇとまた同じことが起こるぞ」
「……そうか」
 どれほどの付き合いなのか他の猟兵たちには知る由もないが、エスタシュは椋の扱いに随分と慣れているようであった。まるで癖の強いバイクを乗りこなすかのようである。
「奴が親玉か、そうか、そうか」
 エルシークの姿を視界にとらえた椋が何を考えているか、エスタシュには手に取るようにわかった。
「奴のせいで世の骨が消える等するのは困る」
「そうだろーよ」
「傭兵らの気骨も好ましいし、ひとつやるか」
「おう、さっきからそう言ってたんだけどな」
 椋が惹かれるのはなにも実際の骨だけではない。ひとの中心に一本通ったもの。その最たるものが骨であるのは否定しないが、精神にも骨はある。

 二人は同時に走った。両者の間に極細の糸が張られていることには、本人たち以外誰も気が付かない。
 エスタシュは糸を持っていない右手でフリントを振り下ろす。一撃めはエルシークを狙わない。フリントを叩きつけられた床が激しい音を立てる。床が砕け、建物の土台として組まれていた枠は消し飛び、その下の地面が抉れて土が飛ぶ。
 エスタシュは口元ににやりと笑みを閃かせ、なおもフリントを振る。次は威嚇ではない。狙いはエルシーク本体だ。
 フリントが刀身に火花をまとう。その様子は燧石の名に相応しい。しかしひとたびエスタシュの手によって振るわれれば、火花は獄炎へと転身する。
 ――轟!!
 炎がエルシークの眼前を灼いた。

 エスタシュの戦いぶりは派手の一言。フリントの一振りごとに地が砕け炎が巻く。
 椋も戦場を縦横に飛び回っているのだが、エスタシュの立ち回りに紛れてほとんど視界に入ることがない。
 それでも椋に全く攻撃が飛んでこないというわけではない。複製された剣は、ある程度自動的に敵をとらえるようにできているのかもしれなかった。
 椋はその剣にからくり糸を絡めて勢いを殺しつつ、受け止めてはエスタシュの攻撃の間隙を狙ってエルシークに投げ返した。
 アリウムが受けるよりも回避を選んだ程度には重量のある剣だ。からくり糸を絡ませたとて易々と受け止め、あまつさえ投げ返せるような代物ではないはずである。
 しかし椋は、その見かけに似合わず、エスタシュほどではないにしろ怪力の持ち主であった。無尽蔵の食欲はその怪力を生み出さんがためかもしれない。

 ひときわ大きな炎が収まったとき、椋は影のように疾駆し、エルシークの背後に表れた。
 椋の指が手品師のごとく動き、エルシークの左角の周囲を回る。からくり糸が時折光りながらエルシークの角に巻きついていく。エルシークが気付いたときにはもう遅い。
 もっとも、気付くのが多少早かったところで、エスタシュの攻撃をさばきながら椋にまで意識を向けるのは困難を極めたであろう。
「やってしまえエスタ」
 息が漏れるような、その声が合図だった。

「おうよ。鬼さんこちら、ってなぁ!」
 エスタシュがからくり糸を引く。エルシークの体はなす術もなく浮き上がった。弧を描いて飛び、エスタシュの前に落下する。
 エルシークは床に伏せ、すぐには起き上がることができない。いまや、からくり糸はエルシークの角のみならず全身に絡んでいたからだ。
 エルシークの頭上で空を切る音がした。刃物が振り回され風を生む音だ。それだけのはずなのに、音はあまりにも重かった。
「覚悟はできたかよ」
 エスタシュはその首に向けて、真っ直ぐにフリントを振り下ろした。

 ぴしり。
 ぴし、ぴしり。

 エルシークの頭蓋に罅が広がっていく。驚くべきことにエルシークの頭部は、フリントの一撃を受けてなお割れずに形を保っていた。
「ただの骨ではない、か」
 口元に指を当てて思案顔の椋に、エスタシュは呆れた視線を向ける。
「おい、そこまでだぞ。興味持つな。もう見んな」
 椋は何か言いたげな目をエスタシュに向けたが、反論することはなく、別の話題を口にする。
「……遺品があると家族は嬉しいものなのだろうか」
 人並みに暖かく人並みに冷たい家庭に育った椋だが、家族愛はよくわからない。
 エスタシュはどう答えるべきか考えあぐねているようであった。しがらみを嫌う彼は、家族を捨てたようなものだ。椋の疑問に答えられる立場であるかどうか、判断がつかなかった。
「……ああ、そうだろーよ。生きてた証、だからな」
 結果、エスタシュは断言を避け、彼にしては歯切れ悪く応じたのであった。

 そのとき、暴風が襲い、エスタシュと椋は後方へ飛び退った。
 エルシークは相変わらず床に蹲ったままであったが、何かをしたのは間違いない。
 念力の類であろうか。壊れた石材、落ちたシャンデリア、朽ちた調度品。そういったものが次々と浮き上がり、猟兵たちへ向かってすさまじい勢いで投げつけられる。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

上野・修介
・POW
※連携、絡みOK
「――意地、か」

素手格闘【グラップル】で闘う以上、ダメージは元より【覚悟】の上。
肚決めて【勇気+激痛耐性】推して参る。

UCで防御力を強化。
まずは狙いを付けられない様【フェイント】を掛けつつ【ダッシュ】で動き回り、敵の攻撃を迎撃。
見えない『腕』でも実体があるなら兆候があるはず。
動きながら砂埃を巻き上げ疑似的な煙幕とし、その動きを観察【視力+情報収集】し、『腕』を【見切り】叩き落とす。
『虫』に対して顎と針に注意し、また『剣』に対しては敵の殺気を【第六感】で感じ取り軌道を【見切り】対処。

敵の攻撃を粗方迎撃したらボスを攻撃。
UCで攻撃力を強化し【捨て身の一撃】を叩き込む。


鹿忍・由紀
居場所を隠す気がないのは自信の表れなんだろうけど、探さなくて良いのは助かるね。
エルシークに用があるという目的の一致ってことで手を貸すけど、遺品については期待しないでもらっとこう。
わざわざ伝えないけど、エルシーク相手なら多分、良い趣味に利用されちゃってるだろうし。

どうも。今回は何集めてるの?
まずは敵の出方を距離をとって観察。
遠距離攻撃が得意そうだから気をつけて。
『影朧』で加速して技能「見切り」も使いつつ攻撃をかいくぐる。
至近距離でダガーによる「二回攻撃」とさらに追随する影朧の残像で切り裂いてやる。

アドリブ、絡みはご自由に。



「しぶといね」
 飛んでくる椅子を右耳の横に避けながら、鹿忍由紀が言う。色素の薄い髪があおられて揺れた。
「どうも。今回は何集めてるの?」
「知れたことよ、力を。ただ、ただ、力を」
 頭蓋の罅のせいであろうか、エルシークの声はさらに聞き辛いものへと変化していた。
 錆びた鎖が絡みあう音に、しゅうしゅうと瘴気が漏れるような音が重なる。
 本当に漏れているのかもしれなかった。衣の中に虫を飼うエルシークである。頭蓋の中に何があるか、あまり考えたくはない。
「この分だと、遺品とやらも良い趣味に使われちゃってそうだねぇ」
 力を得るための蒐集だとすれば、ただ集めて満足するはずもない。
「あの人たちにはわざわざ伝えないけどさ」

 ぽつりと言う由紀の横で上野修介が頷く。
「その心配は、遺品が見つかってからしましょう。まずはあの攻撃を封じることです」
 修介は飛んでくる物品を避けながら、つぶさにその様子を観察した。見えぬ攻撃でも、物を動かすからには何らかの兆候があるはずだ。
 雨あられと飛んでくる攻撃を腕で防ぎながら修介は前方へ飛び込んだ。大半は石である。頭ほどもある塊から拳よりも小さなものまで大きさはさまざまだが、修介はこれに目をつけた。
 風化して脆くなった石は少しの衝撃で砕ける。修介は拳を固め、飛んでくる石に狙いを定め――拳を石にまともに打ち合わせた。
 痛みはある。しかしこの程度、覚悟の上だ。
「誰が怯むか!」
 修介は次々と石を砕き落とした。その細かい破片は次第に砂埃となり宙にたちこめる。修介はわざと大きく立ち回ってさらに埃を巻き上げた。

 巻き上がった埃が揺らぐ。修介は目を細め、動き回りながらもその様子を観察した。
 物が飛んでくる少し前、埃の濃度が変わる。濃くなる場所と、薄くなる場所がある。見えないだけでそこには実体があるのだ。その形は――。

「腕か!」
「腕だ」
 修介と由紀はほぼ同時に声をあげた。一旦それとわかればよく見える。細く骨ばった二本の腕が宙をうごめき、物を掴んでは投げている。
 腕が見えるや、由紀は鋭く加速した。かつては豪奢であった椅子を避けながら、由紀は懐からダガーを抜く。
 由紀が狙ったのは見えざる右腕。その様子を見て修介はすかさず左腕に向かう。
「毀れろ」
 由紀の斬撃が見えざる右腕を襲う。受け止められた手応えがあった。エルシークの手は人間のそれよりもはるかに大きい。ダガーの一撃が軽すぎたのであろうか。
 しかし次の瞬間、受け止めたはずの攻撃が、もう一度エルシークの見えざる右腕を襲った。
 エルシークは驚愕した。それは残像であった。残像に実体などあるはずがない。しかし、エルシークの放った賢者の右腕は、確かに由紀の一撃を受けて地に落ちたのだ。
 見えざる腕は地に落ちた瞬間に姿を表し、すぐに砂となって消えていった。

 右腕が消えたとき、修介が相手取っていた左手も同時に消えていった。
 修介はすぐさま踵を返し、左腕に向けていた拳をエルシーク本体へと向かわせる。
 戦闘のさなかにあって、修介の思考は沸騰しきることはなく、どこかが醒めている。
(――力は溜めず――息は止めず――意地は貫く)
 脳に反芻するのはかつて受けた教え。
「おおおおおおッ!」
 気合とともに、修介は拳をエルシークに叩き込んだ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​


 罅が広がる。広がった罅は左の眼窩に達し、頭蓋骨はとうとう角の重みに耐えかねたように頭頂から左の頬にかけて割れて落ちた。
 誰かの喉がひゅっと鳴る。悲鳴にも近い音であっただろうか。

 割れた頭蓋の中に見えたのは、黒々とわだかまる闇。ただの闇であればどれほどよかったか。
 目を凝らせばうぞうぞと虫が蠢いている。虫たちは押し込められた狭い頭蓋の中で何かを食っていた。
 ――脳だ。
 まさかエルシーク自身の脳ではないだろう。おそらくは、往生集めの犠牲者の脳。それを餌として虫を飼っているのだ。

 目を覆いたくなるような光景を曝け出し、エルシークは笑う。
「ふふふ、ふふ、なあに、驚くこともなかろう。土葬の死体も結局は虫に食われるのだ。その場所がここであっただけのことよ」
 では、ヘルフリートやミクランの遺体は、もう。
 誰も声には発さなかったが、共通の認識が猟兵たちの間を流れた。
華折・黒羽
ユルグ(f09129)さんと

害在れば屠る…それだけです。

付け焼き刃ではあるが
先の戦いでユルグさんの動きを可能な限り覚え込ませた
今度はこの身を盾として
あの人の流れる剣舞を再び

俺が前に出ます
ユルグさん、俺を利用して攻撃してってください

明確な覚悟と気合を臓に宿し
鼓舞する様に敵へと剣先を叩き込む

深追いはせず適度な間合いを取り
攻撃を屠でいなし
隠で受け動きを牽制
敵の生命力を吸いながら隙あらば僅かでもダメージを与えようと
しかし最優先として少しでも彼が立ち回りやすいように

捨て身を見せられれば急ぎ地を蹴り
自分の血を啜り覚醒した屠で直ぐ様斬りかかろうと

…俺一人に押し付ける気ですか?

少しの憎まれ口でも溢してみようか


ユルグ・オルド
黒羽(f10471)と

そうね、帰してやりたいよなァ
この分じゃ沢山あるんだろうさ

あの短時間でたァ黒羽すげえ勤勉ね
頼りになる、けど俺も置いてかれないように

了解、その背を追って駆けだそう
黒羽の流した攻撃の隙に、刃を滑らせて
真直ぐ、直走るだけの視界が
もう一つのよく見てる目でクリアになる
さあ悪趣味な蒐集品は返してもらおう
降る刃は伸びる腕は弾いて飛ばそう
並ぶ背からは突出しすぎないように

なァもうお仕舞? 挑発でもってひきつけて
見切って躱せば懐まで飛び込もう
熄で打ち込めるほど傍に、なんせ
捨て身の一撃だろうとまだ、一人いる
笑えばまだ踏み込める
期待してる、何て軽口吐いて
身を返したならさいごまで、共に駆けようか



「――となればますます、せめて遺品は返してやりたいよなァ」
 この分じゃ沢山あるんだろうさ、とユルグ・オルドは吐き捨てる。
「害あれば屠る……それだけです」
 感情を抑えた声で言って、華折黒羽は前に進み出る。
 もう一度見たいと切望したユルグの戦い。その願いは叶い、先の戦闘では瞬きも忘れるほどの舞を見た。
 付け焼き刃であることは否定できないが、ユルグの動作は脳に刻み付けた。その記憶は、また見たい、まだ見たいと波のように繰り返す。
「俺を利用して攻撃してってください」
 今度は先程よりも自由にユルグを舞わせることができるはずだ。

「終わらぬ、終わらぬぞ!」
 エルシークは再び見えざる腕を呼び出し、かつては豪奢だったであろう長椅子を持ち上げた。それがひどく傾いているのは、由紀に斬られた右腕がうまく動作しておらず、左腕だけで持ち上げているからであろう。

「そんながらくたは要らないんだよなァ」
 ユルグは飛んでくる長椅子を避け、黒羽の後ろにぴったりとつく。先程よりも動きやすい。黒羽は本当にユルグの動作を覚えたのだ。
 自然、ひゅう、と口笛が漏れる。
「あの短時間でたァ黒羽すげえ勤勉ね」
 まずはエルシークの見えざる左腕を叩き潰す必要がある。黒羽とユルグは目線だけで意思疎通を完了させ、そちらに歩を進めた。
 黒羽の剣閃が見えれば、次の瞬間にシャシュカが唸る。それはまるで、いにしえの歌の応酬がごとく。
 交互に繰り出される刃にはわずかの間隙もない。黒羽が見えざる左腕を弾く。左腕が弾かれ飛んだ先には、その軌道が見えていたかのようにユルグが待ち構えている。
「なァもうお仕舞?」
 あえてすぐには切り刻まず、ユルグは口元に笑みをひらめかせる。
 エルシークに顔色というものがあれば、怒りで紅に染まっていたことであろう。
 エルシークが音もなく動き、ユルグに迫る。エルシークが両腕を広げると、その大きさが際立った。大柄な男性でも包み隠してしまえるだろう。

 ユルグはそこに飛び込んだ。
「――王手」
 呟くようなその声はエルシークにだけ届いたが、刃がエルシークを捉えることはなかった。
 シャシュカが抉ろうとしたそこに、不可視の盾があるかのようであった。
 実際、あったのである。賢者の双腕の片割れ、動かぬ右腕が。
「かかりおったわ!」
 哄笑とともに、見えているエルシークの右腕が大剣を振り下ろす。ユルグは咄嗟に身を躱し直撃を避けた。
「――ち」
 舌打ちとともに左肩から上腕にかけて血が噴き出す。

「ユルグさん!」
 黒羽が叫び、エルシークに斬りかかる。
 しかしユルグは荒い息の下でなお余裕の態度を崩さない。虚勢ではない。笑みさえこぼれる。捨て身で飛び込もうが、後ろにはまだ一人いる。その事実がこれほどの余裕を生むとは。
「さぁ、次だ。黒羽、期待してる」
 ユルグは軽く言い、数歩退いてふたたび黒羽の横に並んだ。
「……俺一人に押し付ける気ですか?」
 黒羽が憎まれ口を叩くが、ユルグは知らぬ顔だ。
 二人の戦意は衰える様子もなく、むしろ更に研ぎ澄まされていくようであった。

苦戦 🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

ゴォグ・ツキシマ
炉に憤怒が燃える。
命と死を冒涜する者は、火をもって弔う機械の敵であるがゆえに。
これ以上、お前には何も奪わせぬ。いのち穢す者よ、終わりの時が来たぞ!

不可視の攻撃を察知次第、【怪力】にて床を【踏みつけ】瓦礫と粉塵を巻き上げる
狙うは己に届く寸前、僅かな軌道でも見えればよし!
恐れ惑わぬ【覚悟】と【勇気】をもって【カウンター】の拳にて不可視の腕を迎え撃つ!
防ぎきれば即座に『小指の先の仇敵』を射出、何処へも逃れられぬようにしてくれる!
宙の小星を牽引する鎖、容易く絶てると思わぬことだ!

戦闘が終われば、隊商の主人の遺体か…遺品のみでも探し傭兵達へ届けたい
必要ならば彼等の望むように手を貸そう
(連携アレンジ歓迎)



 冴え冴えとした戦意をたたえる黒羽やユルグとは対照的に、ゴォグ・ツキシマは熱い憤怒を感じていた。
 役目を終えたものをその腹におさめ、燃やし、葬る。死は火によって弔われ、しかるべき場所へ送られる。ゴォグにとって命とは、死とは、そういうものであった。

「これ以上、お前には何も奪わせぬ。いのち穢す者よ、終わりの時が来たぞ!」
 ゴォグの巨大な足が床を鳴らすと、いったんは床に落ちていた無数の塵が再び宙に舞い上がった。塵だけではない。地響きを伴った踏みつけは瓦礫をも巻き上げた。
 見えざる腕への対処法は先程修介が見せてくれた。軌跡が見えさえすれば、ゴォグの力をもってして防げぬはずはない。
「見えたぞ、その腕! 我が炉に入りて本体の先触れとなれ!」
 ゴォグは武骨な手を広げ、不可視の腕を掴んだ。手の中でもがく感触に構わず胴部のハッチを開け、中に放り込む。
 腹の中で腕を焼きながら、ゴォグはエルシーク本体に向け鉄杭を放った。
「逃がさぬぞ、逃がさぬぞォ!」
 杭がエルシークの鼻先に命中する。と同時に、ごぉんと重い音を立ててその箇所で爆発が起こり、黒煙がもうもうと立ち上った。
 煙が晴れたとき、エルシークの顔には鋼鉄の鎖が口枷のように巻き付いていた。鎖の反対の端はゴォグの手に握られている。
「おのれ……おのれ! 家畜のごとく我を鎖に繋ぐとは!」
 エルシークが呪詛の言葉を吐く。
「宙の小星を牽引する鎖、容易く絶てると思わぬことだ!」
 ゴォグは低く言い放つと、鎖を巻き上げ始めた。
 頭蓋の中は借り物の脳とそれを食らう虫。衣の中にもまた虫。これまでの攻撃も効いてはいるようだったが、どこが心臓部なのか皆目見当がつかぬ。
 ならば。
 ゴォグはハッチを開けた。先に迎え入れた不可視の腕はすでに灰となり、炎の底に静かに積もっている。
「往け、炎のいやはてへ。灰と散りて骸の海の星々となれ!」
 じゃらじゃらと鎖の音が大きく響く。その音はエルシークの断末魔をかき消し、ハッチが閉じられると、もはや何も聞こえなくなった。

成功 🔵​🔵​🔴​




第3章 日常 『流浪の民と過ごす一時』

POW   :    狩猟や採取、彼らの為に食料を調達してきます。

SPD   :    吟遊や舞踊、彼らと囲んだ焚き火の前で一芸を披露します。

WIZ   :    修繕や作成、彼らの馬車や持ち物に手を加え、知識を伝授します。

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 霧はようやく薄れてきたが、未だ晴れることはない。
 このあたりは霧の出ない日のほうが少ないのだと傭兵たちは言う。

 壁も天井も崩れ、ほとんど屋外と変わらぬ古城の一角。彼らはそこで一夜を明かすことにした。
 時折ぱちぱちと音を立てて焚火が揺れる。

「ボス、この馬車、あっちこっちガタが来てやがる。このままじゃ動かせねェよ」
「馬ももう限界だ。なんか食わせて、一晩寝かせてやんねぇと」
「テメェは馬にかこつけて自分が食って寝たいだけだろうが!」
「なぁに言ってんだボス、肝心の酒が足りねぇぜ!」
 ヨーグが声高に言うと、傭兵たちがそうだそうだと騒ぎ出す。

 オスヴィンはそんな馬鹿騒ぎから抜け出し、傭兵たちのもとへやってきた。

「付き合わせてすまねェな。だが、あんたらがいてくれたら、とりあえず今夜は安心だ。
 ――ああ、この手帳な。どうすンのかって?
 そうだな……せっかく見つけてもらったが、この有様だからな。
 血塗れだし、その上こりゃ虫の粘液か? こんなモン渡したら奥方が卒倒しちまう。
 遺品は見つからなかった、ってことにしたほうがいいのかも知ンねェな。
 ま、そうなると、アンタらのやってくれたことが無駄になっちまって、悪りィんだが。

 ――とにかく、俺が言うのもなんだが、一晩ゆっくりしてってくれ。皆アンタらの話を聞きたがってる。
 怪我人だらけだが、見ての通り元気は有り余ってっからよ。賑やかではあるはずだぜ」
アリウム・ウォーグレイヴ
アドリブ歓迎

折角取り戻した手帳がこれではなんとも悔しいですね。
私のUCホワイトペーパーで少しでも取り戻せないか試してみます。
所詮は偽造文書。手帳の中身がどこまで忠実に復元できるか怪しいですが、やらないよりはマシです。
偽物でも奥方に心の平穏を与えられるのなら、私は……。

UCを使用した後は、他の猟兵と協力し食材を集めたり、ある食材だけで『料理』しましょう。
騒ぐなら空腹では寂しいですからね。
男の料理であまり繊細な味付けも品もできませんがご容赦くださいね?

全てが終わりましたら、古城から少し離れ『祈り』を。
今回の事件の犠牲者や傭兵の皆さんに、です。
安寧と平穏と、そしてこれからも希望が続きます様に、と。


リーヴァルディ・カーライル
救助活動で培った知識と第六感をもとに怪我の具合を確かめ、
他の治療を行う猟兵と連携して重傷者から治療を施していく

…これから聖者でも天使でも無い呪われた力で治療を行うけど…。
貴方は、それでも治療を受け入れる…?

患者の意志を確認した後、どの部位に血を垂らしたら効率的に治せるか、
両目に魔力を溜めて見切り【限定解放・血の聖杯】を発動
自身の生命力を吸収した血を一滴、患部に垂らし怪我を治療する

…ん。後は栄養のある物を食べ安静にしていれば大丈夫。

治療が一段落したら【常夜の鍵】から大量の保存食を出し、
傭兵団の馬車に載せれるだけ載せておこう

怪我人は間違っても、完治するまで飲酒は厳禁と言い含めながら…。


クロウ・タツガミ
他猟兵との連携アドリブ歓迎する

【POW】

さて、料理では役に立てぬし、食材の1つでも狩りに行くか。マガホコ、酒が飲みたければ獲物を狩るのを少しは手伝う事だ

【地形の利用】をしマガホコを縄に変化させ、簡易の罠を【ロープワーク】で作るとしよう。予め【三位龍装】で攻撃力をあげておき、獲物がかかればレプリカを【投擲】して息の根でも止めるかな

荷運びが必要なら手伝おうか?

輸送などで力仕事が必要となれば【怪力】で手伝う予定だ。

食事が始まれば手伝える事もあるまい、手持ちの【霊酒】を振舞いつつ、酒をのみつつ歓談するとするか

(その傍らでは、マガホコが酒を舌先で舐め取りつつ上機嫌のようだ)


上野・修介
※絡み・アドリブOK
まず周辺を探索し残党などを確認。
問題なければ、馬車の修繕、キャンプの用意など力仕事で手伝えることがあれば協力。

「酒はやめときます。下戸なので」
※本当に下戸です。

「見張りはこっちでやっときますので、皆さんはどうぞごゆっくり」
【視力】と【第六感】で周囲を警戒。
今回の戦闘の振り返ったり、柔軟で体をほぐしたり、軽くシャドーしたりしながら寝ずの番。


エスタシュ・ロックドア
酒か、それならここにあるぜ
俺の故郷(くに)の銘酒、羅刹殺し
浴びる程、なんて量は当然ねぇが
ま、強ぇから酔うにゃ充分だろ
無論飲んじゃいけねぇ奴ぁお預けな
犠牲になった連中に献杯してから俺も飲むかぁね
俺にもそれくらいの情緒はあらぁ

そっからは傭兵連中と飲み食いしつつ騒ぐんだが、
気が付きゃいつもの白い姿がねぇ
おーい、椋(f01816)どこ行ったよ
お前そんなとこで何して……うぉぁ!?
何しやがるやめろ、オイコラ椋!
酒臭くなるほど呑んでねぇよ!

ああ、手帳か
お前なら上手い事できそうだ
……こーいうトコなんだよなぁ、
椋とダチになって悪くねぇって思えるのは


六島・椋
SPD(同行f01818)
(オスヴィンへ向かって)……なあ、その、遺品の手帳なんだが
自分に、綺麗にできないか試させてくれないか
1ページだけでも、見られるようになるやつがあるかもしれない
……わかっている、自己満足だ
ただ……遺品が帰れば、家族が喜ぶらしいと聞いたから

許しを得たら
比較的汚れの少なそうなところを【掃除】していこう
血は【医術】知識でどうにか
手持ちの標本用具でどこまでできるかわからないが
焚火できちんと乾かして、汚れの漂白を――

うわ臭いぞエスタ
酔っぱらいお断りだ、頼む皆(蝙蝠骨格人形達に襲いかかってもらう)

断られたらエスタのところに混じって飲むとしよう
腹も減ったしな
……流石に全部食いはしない


華折・黒羽
ユルグ(f09129)さんと

何より先にユルグさんの左腕の手当て
水やら包帯を貰って
…怪我の手当ては慣れてますから

無茶しすぎです
この程度で済んだから良かったものの
腕じゃないとこだったらどうするんですか

手は止めず常より口は良く回る
「心配」をそのまま口にする事は出来ず小言ばかりが出てしまう

…いや、これはただの八つ当たりだ
盾になりきれなかった自分の弱さに憤りを感じてる
情けなさにひとつ溜息

もっと強く…もっと強固な盾に

思考の端
いつの間にか言葉は途絶え黙々と
ユルグさんのいつもの軽口に
一回包帯を強めに巻いた

手当てが終わったら
他の傭兵の人達の手当てを

怪我を忘れ騒いでばかりの大人達が
はしゃぎすぎて倒れてしまわない様


ユルグ・オルド
黒羽(f10471)と

あらま。後回しでイイのに
つっても行っといでとも言えず大人しく
あ、やっぱお説教もついてくんのね
器用だなあなんて眺めながら手持ち無沙汰
汚れちゃったねて見遣り自分の手当てもしなよ、って

んふふ、でも黒羽が盾してくれてたし
……本体折れるでもねェし
ちょっと口尖らせて言い訳してみるけど
へいへい反省してます、って
痛っェワザとだ絶対!

仕留めたんだし悄気んなって
動く手で頭にやる手は届くかな
本当に黒羽のこと、信じてたんだよ
小さく零すのは届くかな
あーあァ心配かけないように強くなんないとなァ

黒羽がまだ動き回るんなら手伝うよ
お前も疲れてんのに変わりねぇでしょ
適当に頃合いみて火の傍に連れ込むとしよっか



 壁に凭れて座るユルグ・オルドの傍らに華折黒羽が膝をつく。その眉間には深く皺が刻まれていた。
「無茶しすぎです」
 エルシークとの戦いで最も深手を負ったのはユルグであった。黒羽はユルグの左腕を押さえていた布を外し、止血ができているかを確認した。そうしながらも口は普段よりもよく動く。
「この程度で済んだから良かったものの、腕じゃないとこだったらどうするんですか」
「んふふ、でも黒羽が盾してくれたし」
 エルシークを相手に、ユルグ以外はさほど大きな怪我もなく切り抜けたのである。ユルグにしても動けなくなるほどの傷ではない。
 むしろ快挙だと思うけどなァ、とユルグは内心で思うが、口に出せば小言が増えるのは火を見るよりも明らかだ。
「本当に、気をつけてください」
 念を押すように言って、それきり黒羽は沈黙した。
 黒羽の手が動き、手際よく包帯を巻いていく。ユルグはそれを見るともなしに見ていた。

 黒羽はひとつ溜息をついた。
 盾になると、自らを利用して攻撃せよと、そう言ったのは黒羽自身である。にもかかわらず、盾となるべき黒羽よりも、剣であるユルグのほうが傷を負ってしまった。
 包帯を一周巻くたびに無力感が募るような気がした。

 そんな黒羽の頭に、ぽん、と気の抜けたような音とともにユルグが右の掌を乗せた。
 黒羽が反射的に顔を上げる。
「仕留めたんだし悄気んなって」
 ユルグはすぐに腕を引き、黒羽の顔の前でひらひらと振ってみせた。
「……本当に黒羽のこと、信じてたんだよ」
 だからこそ、この程度の怪我で済んだ。黒羽がこの結果をどう感じていようと、ユルグはそう思っていた。
 だが、自罰傾向のある黒羽が何を考えているかなど、表情を見れば嫌というほど伝わってくる。
 小さく零したユルグの言葉が聞こえているのかいないのか、黒羽は返事をしない。
「……本体折れるでもねェし――痛っ!」
 ユルグが口を尖らせて言った言葉を合図にしたかのように、黒羽が包帯の端を強く引いた。
「聞こえてんじゃねぇか!」
「何のことですか」
「ワザとだ絶対!」
 黒羽はその言葉をことさらに無視して、傭兵たちの手当てをしてきます、と立ち上がった。
 ユルグも手伝いを申し出たが、いつになく冷たい黒羽の視線に押し留められ、再びその場に腰を下ろしたのであった。
(あーあァ、心配かけないように強くなんないとなァ)
 ユルグは包帯の巻かれた左腕を撫で、大きく息を吐いた。

 傭兵たちの中で比較的軽傷の者たちは互いに手当てをし、手が足りぬところを黒羽が手伝う。
 しかし、馬車に乗っていた負傷者たちの中には、通常の手当て程度ではどうにもならぬ者もいた。自力では動けぬ者、動けるようになったとしても後遺症が残るであろう者。傷そのものは致命傷でなくとも、自由に動きがとれぬというのは命にかかわる。
 動けなくなった動物はすぐに死ぬ。この世界ではヒトも例外ではない。

 そんな重傷者たちを見下ろして、リーヴァルディ・カーライルは懐から短剣を取り出した。刃に指先を当てて真横に引くと、白い肌にぷっくりと赤く血が球をつくる。
「……これから聖者でも天使でも無い呪われた力で治療を行うけど……貴方は、それでも治療を受け入れる……?」
 リーヴァルディの声が揺れる。
 揺れたのは声だけではない。姿も揺らぎ、輪郭が溶けたようになる。
 それはごく一瞬のことで、リーヴァルディはすぐにもとの姿に戻った。しかし傭兵たちは、リーヴァルディの瞳が別の色に光ったのを見たような気がした。
 その一瞬、確かにリーヴァルディはヴァンパイアとして顕現したのだ。この世界においてヴァンパイアとは征服者であり、圧制者であり、忌むべき存在だ。その力によって生きながらえる気があるか、とリーヴァルディは問うたのである。
「――やってください」
 口を開いたのはロランだ。
「動けないんじゃこの先食っていくこともできない。ここで拾った命をすぐに落とすなんてごめんだ。なあ皆、そうだろ!?」

 年嵩の者ほどヴァンパイアの力を受け入れるのに抵抗があるようだったが、ロランの声が合図となり、全員がリーヴァルディの治療を受けることとなった。
「……限定解放。傷ついた者に救いを…血の聖杯」
 リーヴァルディは負傷者ひとりひとりの前に立ち、指先から血を垂らしていく。その血は吸血鬼としての生命力が凝縮されたもので、リーヴァルディの術式にしたがって作用すると、傷を高速で治癒することが可能になるという代物であった。あまりにも強いその力は、使い方によっては劇薬となるのかもしれない。
 その効力について傭兵たちははじめ半信半疑であったが、腹部に傷を負い高熱にうなされていた者がけろりとして立ち上がる様を見たあとは、疑いをさしはさむ気も失せたようであった。
「リーヴァルディさん、すごい汗だ!」
 ロランが最後の一人である。彼の前にリーヴァルディが立ったとき、ロランはその顔色に気付いて叫んだ。
 考えてみれば、当然のことである。生命力を分け与えているようなものなのだ。術者の疲労は計り知れない。
「休んでください、俺なら平気ですから」
 ロランは慌ててリーヴァルディに座るよう促した。
「……ここで拾った命、落としたくないんでしょう……?」
 リーヴァルディは構わず、ロランの脚に血のしずくを落とす。それは淡く散るように消えていき、折れたロランの脚を癒した。
「……ん」
 リーヴァルディは周囲を見渡して他に負傷者がいないことを確認し、汗を拭った。
「後は栄養のある物を食べ安静にしていれば大丈夫。……勿論、完治するまで飲酒は厳禁だから」
 リーヴァルディは言って、足元をふらつかせながら歩き出した。
 栄養をとれといっても、すぐに食べ物が手に入るわけではないのがこの世界である。置き土産代わりに馬車の中に食糧を詰めておくまでが治療であった。

「どうしました、疲れているなら無理はしないほうがいいですよ」
 馬車のもとにやってきたリーヴァルディを出迎えたのは上野修介の声だ。ヨーグもそこにいて、リーヴァルディに手を振る。
 その傍らには火が焚かれており、クロウ・タツガミが狩ってきた獣を捌いている。
「……ん。保存食、沢山持っているから、馬車に積んでおく」
「そいつぁ助かる!」
 ヨーグは手を叩いて喜んだ。
「でも、ちょいと待ってくれ。今この兄ちゃんと車輪の歪みを直してるとこでな、荷はまだ積めねぇんだ」
「……ん。待ってる」
 リーヴァルディはそう言うと、火のそばに座り込んだ。腰を下ろすととたんに疲労が主張を始める。リーヴァルディは炎の音を聞きながら、いつしか瞼を閉じてしまっていた。
 クロウ・タツガミは傭兵団の荷の中から毛布を拝借し、リーヴァルディの肩にかけてやった。
「慣れてますね、クロウさん」
「弟妹が多かったものでな」
「じゃあ狩りの腕も、家族を養うために?」
「ああ――まあ、これは、生活の知恵というやつかな」
 クロウの返答は肯定とも否定ともつかぬものだった。

 ――時は少しさかのぼる。
 エルシークを排除したのち、猟兵たちの中で初めに動いたのは修介とクロウであった。両者ともいつのまにか姿を消しており、早々にグリモアベースに帰還したかと思われたのだが、そうではなく、それぞれの目的のために森に分け入っていたのであった。
「クロウさん。こんなところで何を?」
「料理では役に立たぬし、食材のひとつでもと思ってな。――そら、マガホコ、酒が飲みたければ少しは手伝う事だ」
 クロウの腕に身を絡ませていた黒龍がしゅるしゅると舌を鳴らし、縄に変化する。クロウはそれを手近な木に結びつけ、枝をしならせて即席の罠を作った。兎などの小動物が通れば跳ね上がって捕まえる仕掛けだ。
「そちらこそ、見回りとはよく気の回ることだ」
「エルシークの配下が残っていないとは限りませんから。何せあれだけの数でしたしね」
 オブリビオンだけではない。この世界において夜は長く闇は深く、夜行性の獣の牙を研ぐ。負傷者の血の臭いが飢えた獣を呼び寄せぬとも限らなかった。
「――で、早速の戦果がそれか」
「そういうわけです」
 修介が引き摺っていたのは狼によく似た獣の死骸だ。狼と違って群れることはないというが、夜通しの警戒が必要であろう。

「クロウさん、こいつの毛皮も剥がせますか」
 車輪の回転を確かめながら、修介は仕留めた獣を指し示す。狼のようなそれは、食用には向いていなさそうだが、毛皮は防寒具になりそうであった。不要なら売ることもできるだろう。
 やってみよう、とクロウは短刀を手にとった。

 古城の一角で燃える焚き火のそばでは、オスヴィンが手帳を開いては閉じ、溜息をついている。
 どうしたもンか。こんな遺品でも返したほうがいいのか、なかったことにするのがいいのか――。
「……なあ、その、遺品の手帳なんだが」
 六島椋はそんなオスヴィンにおずおずと近付き、話しかけた。
「ん、ああ、しけた顔してすまねェな。どうしたもんか決めかねちまってよ」
「自分に、綺麗にできないか試させてくれないか。一頁だけでも、見られるようになるやつがあるかもしれない」
「これをか!? できンのか、そんなこと」
 椋はオスヴィンから手帳を受け取り、丹念に中を確かめた。汚れの特に酷いところはどうしようもないが、どうにかできる頁もありそうだ。
 自己満足だ、と椋は心中でひとりごちる。それでもやろうと思ったのは――。

 ――遺品があると家族は嬉しいものなのだろうか。
 ――ああ、そうだろーよ。生きてた証、だからな。

 椋には理解の及ばぬ感情だ。だが、エスタシュの返答は椋の脳裏にこびりついていた。
 何よりもまず表紙にべったりとついた血糊をどうにかするべきであろう。血の手形がついており、死者の苦痛をありありと想像させる。生きた証といえるかもしれぬが、遺族がこれを求めないであろうことは、椋にもわかった。
(血液の漂白……過酸化水素水を使えば)
 骨の漂白にもよく用いるため、必ず持ち歩いている薬品だ。過酸化水素水で漂白すると骨は白くなりすぎず、自然な白さになるので、椋は好んで使っている。
 椋は過酸化水素水を血痕に押し当て、次いで湿らせた布で丁寧に拭っていった。
 拭っては乾かし――それは気の遠くなるような作業であった。

 椋の作業を横目に気遣いながらも、アリウム・ウォーグレイヴはクロウの狩ってきた獣と傭兵団の食糧を使って、ありあわせの料理を作っていた。
 鳩によく似た鳥はトーダというらしい。そのままでは臭みが強いというので、身が柔らかくなるまで茹で、叩いて潰し、多めの塩と香草を混ぜてパテ状にする。
 トーダ肉のパテを四角い木枠に薄く敷き、その上には傭兵団の食糧から拝借した野菜の酢漬けを載せる。酢に漬かりすぎてしまい、味が濃すぎるといって余り続けていたものだ。さらにその上にトーダ肉、また酢漬け、と交互に枠に詰めていく。
 この木枠は馬車の修繕で出た端材だ。それを修介がきれいに洗って組み、即席の枠を作った。
 最後まで詰め終われば、皿の上に木枠を伏せて中身を取り出すだけだ。
 様子を見ていた傭兵たちからおおっと声があがる。アリウムがそれを切ってみせれば、断面は綺麗な層になっており、もう一度歓声があがった。
 火にかかっている鍋の中では兎が根菜類とともに煮られている。もう少し煮詰まったところで乳を足せば兎のシチューのできあがりだ。
「――うわ、美味え! これ本当にあのまっずい酢漬け!?」
 まずいは余計だ、とオスヴィンの拳骨がロランに飛ぶ。
「所謂男の料理ですよ。繊細な味付けもなにもありませんが、口に合えば幸いです」
「いや、本当に美味いな。見てのとおり皆料理なんてできねェからよ。いや、できねェなりにやるんだが」
「味しねーもん、ボスの料理」
「うっせェな!」
「塩と香草をたっぷり使いましたからね。それが良い仕事をしたのかもしれません」
 アリウムの言うとおり、ふんだんに使われた調味料が肉と酢漬けをうまく調和させている。
「ほーらなボス、やっぱ塩くらいいるんだよ、塩!」
「……待ってください、もしや塩も使わずに料理を……?」
 アリウムの顔に困惑が走る。繊細な味付けはできないと言うアリウムにとってさえ、塩は料理の必需品だ。
 オスヴィンは押し黙った。

「お、食いモンもできてきたか。酒ならここにあるぜ」
 エスタシュが掲げた酒壷が揺れ、中で液体の音がする。
「俺の故郷(くに)の銘酒、羅刹殺しだ」
 傭兵たちが我も我もと杯を差し出す。浴びるほどとはいかぬが、全員に行き渡る程度の量はある。エスタシュは次々とその杯に酒を満たしていった。
「リーヴァルディの嬢ちゃんの言うとおり、怪我人はお預けだぜ。もちろん子供もな」
 折角の異国の酒が飲めねぇなんてあんまりだ、と腕にまとわりつく傭兵をエスタシュはしっしっと追い払う。
「――さ、そんじゃあ」
 エスタシュは自らの杯にも羅刹殺しを注ぎ、軽く掲げる。
「オヤッさんとミクランに」
 さらりと発せられたエスタシュの言葉は、しかしどこか厳かでもあり、傭兵たちは一瞬声を失った。
 異界から渡ってきたという猟兵は、ヘルフリートやミクランの顔を知らぬ。知るわけがない。だというのに、名を覚え、杯を捧げようというのか。
 少しの間を置いて、傭兵たちは大きく声をあげた。
「オヤッさんとミクランに!!」
 中には涙声も混ざっていたが、エスタシュは聞かぬふりをして杯をあおった。

 酒を持っているのはエスタシュだけではない。
 クロウも竜殺しと呼ばれる霊酒を振る舞った。クロウが普段消毒にも用いているそれは、羅刹殺しに勝るとも劣らぬ火酒だ。
「どっちも強ェ酒だなこりゃ! 猟兵ってのは、酒豪じゃなきゃなれねェのか?」
 喉を灼く酒精にオスヴィンが唸る。
「まさか。そんなわけがないだろう」
 クロウは否定するが、そういう彼自身が軽々と杯を空けていくのである。しかもその隣では黒龍のマガホコまでもが美味そうに酒を舐めているときては、いかほどの説得力があろうか。
 信じられねーよな、と傭兵らは笑った。

「黒羽、そろそろお前も座りなって」
 せわしなく働く黒羽をユルグが火のそばへ招く。黒羽は、手当てはとうに終わったというのに、負傷者が火に当たりやすいように敷物を折りたたんで凭れられるようにしてやるなど、甲斐甲斐しく動き回っていた。
「お前も疲れてんのに変わりねぇでしょ。アリウムの兄さんの料理、なかなか美味いしさ」
「でも――」
 黒羽が気遣わしげな視線を送った先には馬車の側に佇む修介の姿がある。
 下戸だからと見張りを買って出た修介は腰を下ろすそぶりもなく、油断のない目で周囲を警戒している。動いたと思えば、屈伸をしてみたり、鋭く拳を突き出してみたりと、休む様子は少しも見られない。
「はは、ありゃ体力オバケだね。本人がやるって言ってんだし、任せときゃ安心でしょ」
「それは、そうですが」
 なおも修介を気にする黒羽の様子にユルグは大仰な溜息をついた。
「じゃあ、こうしよっか」
 ユルグは人差し指を伸ばして黒羽の鼻の頭をつんと弾く。
「こんな暗い世界でたまの宴会だ。大人たちは酒が入って歯止めが効かない。はしゃぎすぎないように見張る役目が必要だよなァ?」
 もちろん俺も含めてね、とユルグは片目を瞑る。
 そうしてようやく、黒羽は火のそばに腰を下ろしたのであった。

 エスタシュは一通り空腹をなだめたところで――といっても彼にとっては序の口もいいところだが――ふと辺りを見回した。
 火を囲み歓談する中に、いつもの白い姿がない。
「おーい、椋、どこ行ったよ」
 探すほどのことはない。椋は同じ部屋にいた。隅のほうで黙々と作業をしていたものだから、宴会の喧騒にすっかり紛れてしまっていたのである。
「お前そんなとこで何して……」
 エスタシュが軽い足取りで歩み寄り、椋の横に屈みこんで声をかけた。
 しかし返ってきたのは、うわ、という非友好的な声であった。
「臭いぞエスタ。酔っ払いお断りだ、頼む皆」
 次の瞬間、かたかたと音をたてて羽ばたく小さなものがエスタシュの顔面に襲い掛かった。次々と目元にぶつかる固い衝撃に、気を抜いていたエスタシュは後方に倒れて尻餅をついてしまう。
 羽音が収まってエスタシュが目を開けてみると、それは椋の操る蝙蝠の骨格人形であった。エスタシュはそれをつまみ上げると、反射的に投げ返そうとする腕を抑え、椋の傍らにそっと置いた。投げようものなら更なる報復が待っていることを知っているからだ。
「何しやがる、オイコラ椋! 酒臭くなるほど呑んでねえよ!」
「酔っ払いは決まってそう言う。邪魔するな」
「邪魔って何だよ――ああ」
 エスタシュは椋の手元を覗き込み、急に声を低くした。椋が何をしているのか一目見てわかったからである。
「手帳か。お前なら上手い事できそうだ」
 エスタシュはそういう作業には向いていない。十分に自覚のある彼は、埃を払って立ち上がり、盛り上がる傭兵たちのもとへと踵を返した。
「済んだらこっち来いよ。メシなくなんぞ」
「じきに行く。腹も減ったしな」
 空腹だといいながらも椋の目は手帳に向けられたままだ。まだもうしばらく作業に集中するのだろう。
(……こーいうトコなんだよなあ、椋とダチになって悪くねぇって思えるのは)
 笑うようなことではないが、表情が緩むのは止めようがない。エスタシュは上機嫌な顔でふたたび宴席に戻った。

 椋が手を尽くしたおかげで手帳は随分とましになった。故人に使われていたころと同様とはいかぬが、少なくとも触れるのに抵抗を感じるほどではなくなった。
「椋っていったか、ありがとな。見違えるみてェだ」
 特に表紙はすっかり綺麗になって、こびりついていた血の跡はどこにも見られない。
「礼には及ばない。手のつけられない頁もあった」
 椋の言うとおり、特に汚れのひどい頁は手の施しようがなかった。様々な汚れが混ざりあって、椋の持つ薬品では血の汚れは漂白できても虫の粘液が沈着してしまうといった具合で、下手に手を出しては汚れがさらにひどくなってしまうのである。
「……いっそ破いちまったほうがいいかねェ」
 オスヴィンは件の頁をめくっては戻り、あちこちから眺めて呟いた。紙の汚れはおびただしい血と苦痛を容易に想像させるものであり、遺族に見せるには忍びない。
「待ってください、その前にひとつ試してもいいですか」
 アリウム・ウォーグレイヴはオスヴィンから手帳を受け取り、頁をつぶさに観察した。
 表紙を開いてすぐの扉にあたる頁と、中ほどにある見開き。この二箇所をどうにかすれば、遺品として渡すことができるものになりそうだった。
「ここには何が書かれていたかご存知ですか」
「最初の頁はアレだ、オヤッさんのサインとか、この手帳の題目とかだな。『イルガ紀行』とかなんとか。――ああ、イルガってのは、このあたりの地方の名前だよ」
 中のほうはわからないとオスヴィンは言ったが、前後の記述から大方の予想がつけられそうだった。
 アリウムが読んでみたところ、どうやら立ち寄った村での交易記録が記されていたらしい。
「霧深い関所の近く、と書いてありますね。これは私の予想ですが、スラウェンという村に立ち寄ったのではありませんか」
 霧と関所。その言葉が気にかかり、アリウムは以前猟兵として訪れたことのある村の名を挙げてみた。
 半ば当てずっぽうではあったが、この世界はアリウムが思うよりも狭いのであろうか、オスヴィンはそれだという顔をして頷いた。
「スラウェン! 確かに行ったな。ここもそうだが、延々霧が出てて、荷が濡れちまって大変だったんだ」
 アリウムはぱたんと手帳を閉じて微笑んだ。
「知った場所です。そこまでわかれば、何とかなるでしょう」
 アリウムが手帳の表紙に手をかざすと、白い光が淡く広がった。
「今度は何の魔法だ?」
「問題の頁を作り変えているんですよ」
 アリウムのユーベルコード《ホワイトペーパー》。それは極めて精巧な偽造文書を作り出すというものであった。手帳の内容を確認したのは、より精確に記述を再現するためだ。
 遺品を偽物に作り変えるのが正しいことかどうか、アリウムには判断しかねる。実行することに一切の迷いがなかったといえば嘘になろう。
(それでも……偽物でも奥方に心の平穏を与えられるのなら、私は……)
 アリウムの葛藤をよそにユーベルコードは淡々と発動し、頁を作り変えて消えていった。

 宴会の夜は更ける。
 体力のある者は火のそばで騒ぎ続け、そうでない者は各々床に上着を敷き横になった。
 怪我人や体力のない者は吹きさらしの古城では眠れず、馬車に入って眠りにつく。
 修介は馬車のそばで不寝番だ。馬車の中から寝息が聞こえるほかは風の音が時折聞こえるくらいで、先ほどまでの激戦が遠くに感じられるほどの静かな夜だった。
 草を踏む音がして、修介ははっと顔をあげた。ごく近い。これほど接近されるまで気付かないはずはないが、と思いながら、油断のない視線を向ける。
(――ああ、なんだ)
 視線の先にいたのは外敵ではなかった。共に戦った猟兵の姿だ。修介は力を抜いた。

 足音の主はアリウムであった。
 アリウムは騒ぎ続ける者たちの声がほとんど聞こえぬところまで移動すると、戦場となった古城を見上げ、目を閉じた。
 両手の指を組むでも聖句をとなえるでもない。
 しかしその姿は紛れもなく祈りであった。
 エルシークによって、直接間接を問わず、どれほどの命が失われたであろうか。あのスケルトンも元々は無辜の民であったに違いない。
 死者のみならず、生者にも爪跡は深く残るであろう。
 傭兵たちは今でこそ陽気に酒を酌み交わしている。しかし、命が綿毛ほども軽いこの世界で、彼らの希望はいつ折れてもおかしくない。
 だからこそアリウムは祈った。安寧と平穏と――そして希望を。

 修介は何となく見ないほうがよいような気がして、森のほうへ視線を戻した。
 静かな夜であった。
 この世界で剣をとることを選んだ傭兵たちにとって、静かで穏やかな夜というのは貴重なものなのだろう。次にいつこんな夜が訪れるのかは誰にもわからない。あるいは、二度とないのかもしれない。

 せめてこの一夜は。
 猟兵たちはそれぞれに、深い闇の底でほんのひととき目を閉じた。


 了

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年04月03日


挿絵イラスト