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迷宮災厄戦⑲〜ジャバウォックの剣詩

#アリスラビリンス #戦争 #迷宮災厄戦 #猟書家 #サー・ジャバウォック

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「迷宮災厄戦への参戦に感謝します。リムは戦況を報告します」
 グリモアベースに招かれた猟兵達の前で、リミティア・スカイクラッド(勿忘草の魔女・f08099)は不思議の国を表した地図を広げると、淡々とした口調で語りだした。
「開戦からおよそ2週間近くが過ぎ、各戦線の攻略は順調に進んでいます。『ハートの女王が住んでいた城』と『ザ・ゴールデンエッグスワールド』が制圧されたことで、他世界侵略を企てる猟書家の1人、『サー・ジャバウォック』との交戦が可能になりました」
 アリスラビリンスのオブリビオン・フォーミュラ『オウガ・オリジン』の力を奪い、フォーミュラなき世界の侵略を企む謎多き猟書家たち。その1人であるサー・ジャバウォックは侵略蔵書「秘密結社スナーク」を手に、ヒーローズアースを狙っているようだ。

「サー・ジャバウォックは『書架の王』を除けば猟書家最強と目される男です。ヒーローやヴィランといったユーベルコード使いが数多くいるヒーローズアースの侵略を任されたのも、そこに理由があるようです」
 彼が拠点としているのは焼け焦げた森の国。まるで巨大な戦火が過ぎ去っていった後のように寥々としたこの場所で、サー・ジャバウォックはただ1人、猟兵たちを迎え撃つ。
 見えざる架空の怪物スナークを呼び出す侵略蔵書「秘密結社スナーク」の力に加え、青白き斬竜剣「ヴォーパル・ソード」を操る剣技も巧み。生半可な覚悟では返り討ちにあうことは必定であり、勝利のためには何らかの準備や対策を講じる必要があるだろう。
「この男を倒せば……あるは完全には倒せなくとも戦力を削ぐことができれば、ヒーローズアースに侵攻する猟書家の勢力を弱めることができるはずです」
 幾度とない戦いの歴史に彩られてきたヒーローズアースは今、ようやく平和になりつつある。そこに「秘密結社スナーク」という不和と混乱の種をもたらし、歴史を繰り返させようとするサー・ジャバウォックの計画を、みすみす放置することはできない。

「――しかし、サー・ジャバウォックを含む猟書家の戦力低下は、彼らに力を奪われていたオウガ・オリジンの戦力強化も意味します」
 猟書家を放ってもおけないが、万が一オウガ・オリジンが撃破不可能なほどに力を取り戻してしまえば、その時はアリスラビリンスが消滅する。猟兵、猟書家、オウガ・オリジンの三つ巴の均衡をどのように傾けていくか――それが今戦争のこれからの焦点となる。
「サー・ジャバウォック討伐戦に参加されるかどうかは、皆様の判断にお任せします。リムはグリモア猟兵の1人として、全力で使命を果たすのみです」
 そう言ってリミティアは手のひらにグリモアを浮かべると、アリスラビリンスへの道を開く。焼け焦げた森の国の奥で、猟書家最強のサー・ジャバウォックが猟兵たちを待つ。
「転送準備完了です。リムは武運を祈っています」



 こんにちは、戌です。
 ついに猟書家最初の1人が姿を現しました。今回の依頼はヒーローズアースを狙う猟書家『サー・ジャバウォック』の撃破が目的となります。

 このシナリオでは下記のプレイングボーナスに基づいた行動を取ると判定が有利になります。

 プレイングボーナス……敵の先制攻撃ユーベルコードに対処する。

 書架の王を除けば猟書家最強とされるサー・ジャバウォックは、卓越した剣技と侵略蔵書の力を操る強敵です。万全の備えをもって当たっていただければ幸いです。
 またサー・ジャバウォックを含む猟書家戦力の変化はオウガ・オリジンの戦力にも影響し、戦後の各世界にも影響を与えます。詳しくは戦争ページをご確認ください。

 それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 ボス戦 『猟書家『サー・ジャバウォック』』

POW   :    侵略蔵書「秘密結社スナーク」
見えない【架空の怪物スナーク】を放ち、遠距離の対象を攻撃する。遠隔地の物を掴んで動かしたり、精密に操作する事も可能。
SPD   :    ヴォーパル・ソード
【青白き斬竜剣ヴォーパル・ソード】を巨大化し、自身からレベルm半径内の敵全員を攻撃する。敵味方の区別をしないなら3回攻撃できる。
WIZ   :    プロジェクト・ジャバウォック
【人間の『黒き悪意』を纏いし竜人形態】に変身し、武器「【ヴォーパル・ソード】」の威力増強と、【触れた者の五感を奪う黒翼】によるレベル×5km/hの飛翔能力を得る。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ジュリア・ホワイト
ついに相見えたね、猟書家
「キミの狙いはヒーローズアースだそうだね?彼の地のヒーローの実力の一端、垣間見て行くといいさ!」

見えない怪物スナーク…
「攻撃」の概念だけが距離を無視して発生するタイプだと打つ手がないけど
実態を持って存在するならなんとかなるかな
手持ちのロケットランチャーを使って周囲に爆煙を生成
透明な獣が煙をかき分けて迫ってきたらそれを察知できるという寸法さ
避けきれないかもしれないけど、最低限戦闘不能は避けなければ

反撃は【圧力上げろ!機関出力、最大解放!】
強化した身体能力で一気に距離を詰めて接近戦に持ち込もう
「これが、ヒーロー・オーヴァードライブの一撃だ!」



「ついに相見えたね、猟書家」
 焼け焦げた森の国に佇んでいたのは、厳かな装丁の本と剣を携えた1人の老紳士だった。
 ジュリア・ホワイト(白い蒸気と黒い鋼・f17335)が声をかけると、その男は振り返り、丁寧に一礼すると共に名乗りを上げる。
「よくぞここまで参られました。猟書家、ジャバウォックと申します。"サー"の号で呼ばれてはおりますが、ここでは一介の戦人に過ぎません」
 アリスラビリンスの戦争の裏で他世界への侵略を目論む『猟書家』が1人、サー・ジャバウォック。丁寧な物腰だが、その実力は首魁たる『書架の王』を除けば最強と目される。

「キミの狙いはヒーローズアースだそうだね? 彼の地のヒーローの実力の一端、垣間見て行くといいさ!」
 静かな威圧感を発する強敵との対峙に当たっても、ジュリアの表情に怯懦の色はない。
 彼女の故郷ヒーローズアースを脅かさんとする悪が、目の前にいる。ならば、それを打ち破るのは他でもないヒーローの使命――その闘志の炎はいやが上にも燃え上がる。
「成程。貴女がヒーローなのですね。彼の地の強き人々は私も存じております……如何なる悪にも貴女がたは勝利を収める。では"見えざる悪"に対してはどう戦われますか?」
 まさにヒーローと対峙したヴィランさながらの振る舞いと、落ち着きの中に余裕を含んだ口ぶりで、ジャバウォックは手にした書物のページを開くと、その題名を読み上げる。

「侵略蔵書『秘密結社スナーク』。虚構の書が生んだ見えざる怪異、ご堪能下さい」

 その瞬間、戦場の空気が変わった。見た目には何も変わっていないようでも、確実に何かが"違う"。これまでに数々の戦いを経験してきたジュリアの直感は、その見えざる"何か"が自分を狙っている気配を漠然と感じ取っていた。
「見えない怪物スナーク……」
 これがジャバウォックの侵略蔵書の力だと理解した彼女は"何か"の気配が襲って来るよりも先に、手にしていた携行式4連詠唱ロケットランチャー「ML106」のトリガーを引く。
 不可視の敵にそんなものを撃っても当たらないことは分かっている。しかし、発射されたロケット弾の炸裂が引き起こす爆煙が、敵をあぶり出すための布石となる。

「『攻撃』の概念だけが距離を無視して発生するタイプだと打つ手がないけど、実態を持って存在するならなんとかなるかな」
 自らの周囲に濛々と立ちこめる煙の中、じっと目を凝らすジュリア。すると煙をかき分けて、まっすぐ此方へと猛スピードで迫ってくる"何か"の軌跡が、朧げに浮かび上がる。
 鋭い牙と爪を持った獣のような"何か"を察知した瞬間、ジュリアはその場から飛び退いた。振りかざされた爪が彼女の肌と肉を抉ったが、深手にはならない。
(避けきれないかもしれないけど、最低限戦闘不能は避けなければ)
 幹部級の強大なオブリビオンを相手に、無傷での圧勝など最初から想定していない。たとえ血まみれになっても膝は付かず、全速前進で勝利を掴む――そういう戦い方に彼女は向いていた。

「圧力上げろ! 機関出力、最大解放!」
 スナークの攻撃を凌いだ直後にジュリアはユーベルコードを発動し、全身から蒸気を噴き上げる。ロケットランチャーの爆発の際、周囲に散らばった焼け焦げた樹木の破片――半ば炭化したそれを口に放り込んでボイラーの燃料とし、戦闘能力を大幅に引き上げる。
「機関車のボイラーは燃える物なら何でも燃料にできるんだよ?」
 蒸気機関車のヤドリガミである彼女にとって、ここに可燃物が豊富にあったのは幸いだった。強化された身体能力を以て地面を蹴れば、その身はロケットの様な勢いで加速し、スナークの追撃をも振り切って、一気にジャバウォックの元まで距離を詰めた。

「ほう……凌がれましたか」
 爆煙の中から少女が飛び出してくるのを見たジャバウォックは、即座に斬竜剣「ヴォーパル・ソード」を振るい、同時にジュリアも「残虐動輪剣」を渾身の力で振り下ろす。
 蒼く発光する魔剣と、唸りを上げるチェーンソー剣の鍔迫り合い。その拮抗の行方は、気魄、そして爆発力で勝るジュリアに軍配が上がった。

「これが、ヒーロー・オーヴァードライブの一撃だ!」

 全力を以て叩きつけるように振り切られた動輪剣は、ヴォーパル・ソードを押しのけ、ジャバウォックの肉体を切り裂いた。ざっくりと抉られた老紳士の胸元から血が滲む。
「……お見事です。私が思っていた以上に、彼の地の侵略は困難を極めそうですな」
「心配はいらないよ。キミがヒーローズアースに渡ることは無い。ここで終点だ」
 傷を負ったとはいえまだ余裕のある様子で、蔵書と斬竜剣を構え直すジャバウォック。
 対するジュリアもまた、不敵な笑みを浮かべて動輪剣を構え直す。――この戦いの決着の行方はまだ、誰にも分からなかった。

成功 🔵​🔵​🔴​

夕月・那由多
●先制対策
『ナユタの瞳』による【情報収集】と【読心術】で術者の意図や見えない敵の場所を読みとり対処じゃ
そこに確かに居るのであれば、『オオカムヅミ(仮称)』での【誘導弾】も効くじゃろうか?まあ雑に爆発させて【範囲攻撃】で迎撃もできそうじゃが
あとは【武器受け】か

先制攻撃をしのげは次はこちらの番じゃ
UCで攻撃力を強化し『八千之矛』による変幻自在の【フェイント】と【たまし討ち】を混ぜた【怪力】での攻撃を喰らうが良い

在ると思へば其処に在り
概念や信仰に基づく、わらわみたいな能力じゃのう

その『想像からの創造』は、未来を創る人の子らが得意とするチカラ…それを悪用しようとは、流石のわらわもちと機嫌悪くなるぞ?



「在ると思へば其処に在り。概念や信仰に基づく、わらわみたいな能力じゃのう」
 猟書家サー・ジャバウォックと相見えた夕月・那由多(誰ソ彼の夕闇・f21742)は、彼が持つ侵略蔵書「秘密結社スナーク」をそのように評した。人々の疑念が虚構の怪物を現実のものにする――それは黄昏時の薄闇に、人々が怪異の影を見るのに似ている。
「幽霊の正体見たり枯れ尾花、という諺が彼の地にはあるそうですな。疑心暗鬼に陥った人々の恐怖はありもしない怪物を作り上げる。怪物はどこにもいて、どこにもいない」
 かさり、と視界の外から微かな音がする。それは焼け焦げた草木の掠れる音か、それとも怪物の足音か。見えないが故に膨れ上がる脅威、それこそがスナークの危険性だった。

「確かに視えぬものは恐ろしい。しかしわらわの瞳は人よりすこし特別でな」
 近付いてくる"何か"の気配を感じながら、那由多はすっと視線を巡らせる。肉眼では視えぬモノを認識する「ナユタの瞳」は、不可視の怪物の位置を朧げながらも捉えていた。
 加えて彼女には読心術の心得もある。架空の怪物の心理は理解できずとも、それを使役しているのがジャバウォックなら、そちらの行動の意図を読み取りさえすれば――。
「そこじゃな」
 敵が襲い掛かってくる刹那、神の霊威を込めた「オオカムヅミ(仮称)」を放る。それは牙を剥き出しにしていたスナークの元へと誘導弾のように飛んでいくと、足元に落ちるなり大きな爆発を起こした。

「もしや、視えているのですか?」
「そこに確かに居るのであれば、対処のしようはあるであろ」
 ほう、と微かに驚いた仕草を見せるジャバウォックに、那由多は事も無げに答えながら「八千之矛」を構える。その直後に飛びかかってきた怪物の爪を、矛の柄が受け止めた。
「爆発でやられたフリをしてわらわの喉笛を引き裂くつもりだったのも、読めておる」
「これは一本取られましたな。神を相手に意表を突くのは分が悪いようです」
 不可視の怪物による奇襲を凌がれたジャバウォックは、ならばと純粋な武威で押し切るべく斬竜剣「ヴォーパル・ソード」を構える。対する那由多も八千之矛の矛先を敵に向け、流れるようなすり足で距離を詰めていく。

「次はこちらの番じゃ」
 【神気ノ開放(弱)】。過去に願いを叶えてやった人々からの感謝の祈念を糧に、神としての力を解き放った那由多は、その可憐な姿に見合わぬ膂力で八千之矛を突き出した。
 その一撃は鋭く、疾く、だが猟書家最強の男に見切れぬ程ではない。受け流して反撃に繋げようと、ジャバウォックはヴォーパル・ソードを振るう――しかしその瞬間、矛そのものが長さと太さを変える。
「何と……!」
 接触の寸前で僅かに"伸びた"矛が、敵に防御のタイミングを見誤らせた。鋭い矛先に胸を穿たれ、苦痛に顔を歪めながら感嘆の声を上げるジャバウォック。その直後には八千之矛は元の長さに縮み、次の一突きを放つための構えが整えられていた。

「その『想像からの創造』は、未来を創る人の子らが得意とするチカラ……それを悪用しようとは、流石のわらわもちと機嫌悪くなるぞ?」
 その立ち居振る舞いこそ落ち着いたものだが、那由多の声には静かな威厳と殺意が宿っていた。可愛い人の子らの想いの力を侵害されたとあっては、裁きを下さずにはおれぬ。
 知らぬうちに神の怒りに触れていたことをジャバウォックは悟るも、時既に遅く、八千之矛による変幻自在の猛攻が襲い掛かる。
「どうやら、逆鱗に触れてしまいましたか。ですが私共の計画は神にも止めさせるわけには参りません」
 矛に貫かれていくジャバウォックだが、その一つ一つの傷は浅く、戦意は褪せない。
 那由多たち猟兵を静かに見つめ返す双眸には、今だに十分な力と余裕が残っていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

清川・シャル
世界征服ってやつでしょうか?あっちを倒せばこっちが大変…でもやらなきゃやられる…大変な戦いですね
けど負けられないので進むしかないですね

見えない攻撃みたいですし、とりあえずは耐えてみましょう
オーラ防御を纏い、全力魔法で多重障壁を展開
激痛耐性で耐えます
耐えつつ、引き金くらいは引けるでしょうからぐーちゃん零を全弾ランダム射出、念動力で確実に当てに行きます
撃ち終わったらそーちゃんを持ってダッシュ、呪詛を帯びたなぎ払い攻撃です
フルスイングしたらそのまま投げつけて、袖の下のSoulVANISHでUC起動、咄嗟の一撃を行います



「世界征服ってやつでしょうか? あっちを倒せばこっちが大変……でもやらなきゃやられる……大変な戦いですね」
 ふうと物憂げに息を吐くのは清川・シャル(無銘・f01440)。これまでのような猟兵VSオブリビオンの単純な構図ではない、他世界侵略を企む猟書家とオウガとの三つ巴の戦い――一つの世界に収まらない複雑な情勢が、彼女の頭を悩ませる。
「けど負けられないので進むしかないですね」
「ええ。それは私共とて同じことです」
 表情を引き締める羅刹の少女に対して、猟書家サー・ジャバウォックは静かに頷いた。
 傍目には剣と本を持ってただ佇んでいるように見えるが――それはあくまで目に映る範囲での事。侵略蔵書「秘密結社スナーク」による攻撃はすでに始まっている。

「見えない攻撃みたいですし、とりあえずは耐えてみましょう」
 どこからともなく感じる漠然とした敵意に、シャルは「修羅ノ波動」を纏って防御体勢を取る。その上からさらに魔法障壁を何重にも展開して、全力で守りを固める構えだ。
 直後、見えざるスナークの爪と牙が襲い掛かり、耳障りな音を立てて障壁が引き裂かれていく。勢いは大きく殺されたものの、怪物の爪牙はシャルの本体をも捉え、色白の肌から紅い血がしぶく。
「このくらい……平気です」
 シャルはぐっと歯を食いしばって痛みに耐えながら、手にしたアサルトウェポン「ぐーちゃん零」の引き金を引く。発射された30連の弾丸は、全てあらぬ方向へと散っていったかのように見えたが――その弾道は物理を無視してありえざる軌道を描きだす。

「視えました」
 決して目には見えない怪物スナーク、しかしシャルの返り血を浴びたことで、その不可視は完全ではなくなった。虚空に浮かび上がる紅い"目印"に向かって、念動力によりコントロールされた弾丸が殺到する。
『――――!!!!』
 聞くだにおぞましい"何か"の悲鳴と、どうと倒れ込むような音が森に響く。スナークの攻撃が止まると、シャルは弾切れになった「ぐーちゃん零」を放り捨て、桜色の鬼の金棒「そーちゃん」を持ち上げて、一目散にジャバウォックに突っ込んでいった。

「肉を切らせて骨を断つ、ですか。大したお覚悟です」
 スナークを倒されたジャバウォックは斬竜剣で迎撃の構えを取り、そこに踏み込んだシャルは渾身の膂力で金棒をフルスイング。呪詛を帯びた超重量級の薙ぎ払いは、並の防御など容易くねじ伏せる。
「余裕を見せていられるのも今のうちですよ」
「手を抜ける相手ではないと、重々承知しております」
 ジャバウォックもこれを受け止めるのは得策ではないと判断したか、間合いの外へ素早く後退する――しかしシャルは金棒をそのまま投げつけ、相手の意表を突く戦法に出た。

「自ら武器を手放すとは……」
 フルスイングの勢いの乗った「そーちゃん」の投擲は恐ろしいが、それはあくまで当たればの話。猟書家最強の実力は伊達ではなく、ジャバウォックはその脅威を難なく躱す。
 だが、彼が驚愕させられたのはその直後。攻撃を回避したその一瞬のうちに、シャルはたった一歩で後退されたぶんの間合いを詰め、懐まで潜り込んでいたのだ。
「武器ならまだあります」
 桜が映える艶やかな着物の袖の下に仕込まれた、小型パイルバンカー「Soul VANISH」。
 それを使って羅刹の少女が繰り出すのは、全身全霊の呪詛を込めた【宵闇】の一撃。

「身体と精神を蝕むこの呪詛に耐えられますか?」

 がら空きの急所に突き刺さった杭が、標的の体内へと呪詛を送り込む。純粋な貫突の威力もさることながら、鬼神の呪詛は猛毒となってジャバウォックの心身を蝕んでいく。
「っ……油断したつもりは、ありませんでしたが……」
 穿たれた傷を抑えながら、よろりと後ずさる猟書家。時が経つにつれてシャルの与えた呪詛は全身に回っていく――今だ決着の見えない戦いにおいて、その意味は大きかった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ギージスレーヴ・メーベルナッハ
こういう手合いは地下に潜らせると大変に厄介と余は考える。
故に、この場で確実に仕留めてくれよう。

サー・ジャバウォックの姿を視認した段階で、既に見えざる怪物は放たれているものと考える。
故、義眼の【情報収集】機能をフルに用い怪物の居場所を確認(【失せ物探し】)
熱源感知・魔力反応・生体反応・重力変動(【地形の利用】)等、あらゆる情報を元にその位置を暴く。

確認次第、ヤークト・ドラッヘにてサーの元へ接近。怪物から逃げる風を装う。
搭載火器の【制圧射撃】【砲撃】で牽制しつつ、奴と怪物が直線に並ぶ機を狙う。
その機の巡り次第、機甲武装・殲滅火砲を発動。攻撃回数重視のガトリング砲を放ち両者を纏めて攻撃する。



「こういう手合いは地下に潜らせると大変に厄介と余は考える」
 ヒーローズアースを狙う猟書家サー・ジャバウォックの計画を、ギージスレーヴ・メーベルナッハ(AlleineBataillon・f21866)は大いに危険視していた。ここでもし取り逃がせば、彼奴は行方を晦ましたまま「秘密結社スナーク」を使って、人々に疑念と不和を齎し続けるのだろう。虚構の怪物が世界を侵蝕し、争いの歴史が繰り返されるまで。
「故に、この場で確実に仕留めてくれよう」
「それほどまでに警戒されるとは、光栄と思うべきですかな」
 ジャバウォックは老紳士然とした振る舞いのまま、今だに余裕があるように微笑する。
 しかし猟兵たちから与えられた傷は確実に、彼の肉体にダメージを蓄積している筈だ。

(サー・ジャバウォックの姿を視認した段階で、既に見えざる怪物は放たれているものと考える)
 敵が手にする本の頁はすでに開かれている。それ即ち侵略蔵書のユーベルコードは発動済みで、不可視のスナークが此方を狙っているという事だ。ギージスレーヴは最大限の警戒を示しながら、まずは索敵のために義眼「エレクトロニシェアウゲ」を起動する。
 この義眼に備わった情報収集機能は、熱源・生体・魔力の反応から重力変動まで、あらゆる情報の知覚・解析を可能とする。虚構から生まれた存在であろうと、実体がある以上は痕跡を残す――超機械の眼がもたらす超越的知覚力は、見事にその所在を暴き出した。

「征くぞ、サー・ジャバウォック!」
 スナークの位置を確認次第、ギージスレーヴは重機甲戦闘車「ヤークト・ドラッヘ」に跨り、迫る不可視の怪物から逃れる風を装いながら、ジャバウォックの元へと接近する。
「お相手致しましょう、麗しき戦場のレディ」
 車両に搭載された連装電磁砲や速射機銃による攻撃を、ジャバウォックは斬竜剣「ヴォーパル・ソード」で切り払いながら躱す。その技量はまさに達人の域――しかしギージスレーヴもこの程度はまだ牽制に過ぎない。間断なく砲火を放ちながら大型バイクを駆り、敵と己の位置取りを慎重に見極める。

「お相手するのは私だけではありませんよ」
「ああ、分かっているとも」
 剣技を奮うジャバウォックと同時に奇襲を仕掛けるのはスナーク。本来であれば不可視故に必中となる爪牙を、ギージスレーヴは義眼の知覚力と車両の機動力を以て回避する。
 そして回避と同時に機は巡った。ジャバウォックとスナークが、自身を挟んで一直線に並ぶタイミング、それを彼女は待ちわびていたのだ。
「兵装転送、接続完了」
 起動するのは【機甲武装・殲滅火砲】。異空間より転送されてきた規格外兵器――二門の超巨大ガトリング砲が彼女の身体に接続され、獣の唸り声のような音を立てて砲身が回転を始める。

「過剰火力の殲滅兵装、塵芥と化すまで味わうが良い!」

 その直後に解き放たれた砲火の嵐は、これまでの牽制とは規模も威力も桁違いだった。
 立ち並ぶ木々も、地面も、諸共に消し飛ばすような圧倒的殲滅力。その猛威は当然の如く、ジャバウォックとスナークにも纏めて降り掛かる。
「これほどの火力……! 貴女お一人で一軍にも匹敵しましょう!」
 感嘆を禁じえぬといった様子で称賛を口にしながら、斬竜剣を振るうジャバウォック。
 だが、飛来する砲弾全てを剣一本で切り払うことは叶わない。スナークもろとも弾幕に撃ち抜かれ、血飛沫を散らしながら後退するその姿には、確かな消耗が見受けられた。

成功 🔵​🔵​🔴​

フレミア・レイブラッド
ごきげんよう、おじ様。
申し訳ないけど、平和を取り戻した世界を踏み荒らさせるわけにはいかないの。
…この地をおじ様の最後の地とさせて貰うわ。

姿の見えない怪物に対して周囲に【念動力】の網を張り巡らし、感知次第捕縛しつつ、「シュテル」を用いた凍結と雷撃の魔力弾【属性攻撃、高速・多重詠唱、全力魔法、誘導弾】で本体と怪物双方を攻撃して足止め。
凍結と雷撃で敵の動きを鈍らせ、その隙に【真祖の吸血姫】で覚醒。

真祖の魔力を用いた全力の凍結魔術で念で捕縛したスナークを凍結させて封じ込め、一気に超高速で敵本体へ接近。
魔槍による小細工無しの全力の一撃を叩き込み、全魔力を集束した必殺の神槍グングニルを叩き込んであげるわ!



「ごきげんよう、おじ様」
 "サー"の尊称に違わず紳士的に振る舞うジャバウォックに、フレミア・レイブラッド(幼艶で気まぐれな吸血姫・f14467)も淑女として非の打ち所のない所作で挨拶する。
 礼には礼をということか、あるいは敵ながらも堂々たる強者に対する敬意か。口元には上品な微笑みをたたえ、しかしその瞳には淀みのない決意と、敵対の意志が宿っている。
「申し訳ないけど、平和を取り戻した世界を踏み荒らさせるわけにはいかないの。……この地をおじ様の最後の地とさせて貰うわ」
「それが貴女の使命ならば躊躇う必要はありますまい、レディ。しかし私もまた使命ある身ならば……全力を以て押し通らせて頂きます」
 フレミアは槍と杖を、ジャバウォックは剣と本を、それぞれ手に携えて。優雅な、しかし焼け付くような激しい闘志がそれぞれの狭間で激突する――戦いはもう始まっていた。

「スナークとは虚構の存在。ゆえに不滅であり、何度でも現れます」
 開かれた侵略蔵書「秘密結社スナーク」から放たれる"何か"。姿を見せないままじわりじわりとにじり寄ってくる敵意と悪意の気配を感じながら、しかしフレミアは臆さない。
「けれど無敵ではない。実体があるのなら、捕らえることもできるわ」
 彼女が頼みとするのは念動力。網のように周囲に張り巡らされた不可視の力場にスナークが触れれば、その位置を感知して即座に拘束することもできる。不可視の領域で繰り広げられる攻防は両者一歩も譲らず、焼け焦げた森には見えない火花が飛び交っていた。

「力を借りるわよ、シュテル」
『どうぞご存分に、お嬢様』
 スナークの群れの強襲を凌ぎながら、フレミアは真紅の魔杖「クリムゾン・シュテル」に呼びかける。知能ある武器(インテリジェンス・ウェポン)である魔杖は恭しい態度で応えると、主の戦いを支えるべく形態を変化させた。
「ほう……良き従者をお持ちのようだ」
「ありがたいことにね!」
 感心するジャバウォックと、念動力の感知圏内にいるスナークに向けて、杖より放たれるは氷と雷の魔力弾。蒼氷と紫電の嵐が戦場に吹き荒れ、怪物とその本体に襲い掛かる。
 フレミアがこの状況で最も重視したのは、氷結と感電による足止めの効果。僅かな間でも動きを鈍らせることができれば、その隙に反撃のユーベルコードを発動できる――。

「我に眠る全ての力……真祖の姫たる我が真の力を今ここに!」

 氷と雷の猛威にジャバウォック達が圧された直後、【真祖の吸血姫】が覚醒を遂げる。
 全身から解き放たれる爆発的な魔力と、背中から生えた紅翼、そして手にした魔槍「ドラグ・グングニル」に宿る燦然たる輝きは、これまでのフレミアとは一線を画す力の証。
「架空の怪物の出番はここで終わりよ」
 彼女が虚空に向かって手を伸ばし、ぐっと力を込めると、スナーク達を縛めていた念動力の拘束力が強まり、さらに凍結魔術の重ね掛けがそれらを動かぬ氷像へと変えていく。
 絶大なる真祖の魔力を用いれば、これまでと同様の魔術でも破格の威力となる。またたく間に怪物共を封じ込めたフレミアは翼を広げ、一気にジャバウォックに飛び掛かった。

「実に……美しい御姿です、モンストレス」
 敬意を込めて語りかけながら斬竜剣「ヴォーパル・ソード」を構えるジャバウォック。
 瞬間移動と見紛うほどの超高速で、フレミアは既に間合いの内にいた。突き放たれる魔槍の穂先と魔剣の刃が激突し、真紅と蒼白の火花を散らす。
「小細工は無しよ。わたしの全力を叩き込んであげるわ!」
 覚醒したフレミアは魔力や速度だけではない、純粋な膂力においても最高位の竜種に匹敵する。その全身全霊を駆使した攻勢は、次第にジャバウォックの剣戟を押し返し――ついには刃を弾き上げて決定的な隙を作り出す。

「全てを滅ぼせ、神殺しの槍……。消し飛びなさい……! 神槍グングニル!!」

 その刹那に全魔力を集束して放たれる魔槍――否、神槍の一撃は、過たず敵を貫いた。
 全てを穿つ必殺の槍を受けては、猟書家最強の男も無事では済まない。大きく抉られた胴体からは滝のように鮮血が溢れ、表情には苦痛と脂汗が滲み出る。
「お見事です……」
 言葉少なく吸血姫の武勇を讃えるジャバウォック。
 その振る舞いから徐々に余裕は失われつつあった。

成功 🔵​🔵​🔴​

トリテレイア・ゼロナイン
人心を乱し戦いの歴史を繰り返させる
…その野望、騎士として阻ませていただきます

マルチセンサーでの●情報収集で移動時の振動や音、熱源反応からスナークの位置を●見切り攻撃を防御

見えぬ怪物…戦の歴史の結実たるウォーマシンが捉えられぬとでもお思いですか

UC発動
完全に捉えたスナークを向上した出力任せの●シールドバッシュで大地に捻じ伏せ●踏みつけ剣で止め

架空の怪物も、それを退治する騎士も、戦乱を呼ぶ貴方も、それを阻む私も
…元来、現実には不要なのです
ヒーローズアースの人々の安寧の為、斃れていただきます

格納銃器での●だまし討ち●スナイパー射撃で剣の巨大化牽制
接近して切り結び●武器落としからの大盾殴打



「人心を乱し戦いの歴史を繰り返させる……その野望、騎士として阻ませていただきます」
 トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)が、猟書家サー・ジャバウォックと対峙する理由は明瞭だった。完全なる虚構にて人々の疑念を加速させ、親愛なる隣人すらも架空の怪物に変える――そのような所業を見過ごせば騎士道の名折れとなる。
「かくも高潔な騎士殿と相見えられるとは。いざや参られよ、私も貴殿に相応しき悪として、全力を以てお相手致しましょう」
 右手には斬竜剣「ヴォーパル・ソード」左手には侵略蔵書「秘密結社スナーク」。
 手負いなれども構えには一分の隙もなく、ジャバウォックは機械騎士を迎え撃つ。

「行きなさい、スナークよ。退廃と猟奇を極めし汝の爪牙で、高潔なる騎士を引き裂きなさい」
 朗読劇のようにジャバウォックの言葉が紡がれると、見えざる怪物が戦場に放たれる。
 どこに居るか分からない。あるいはどこにも居ないのかもしれない。架空の存在であるが故の"見えざる恐怖"が対峙する者を疑心暗鬼に陥れる、それこそがスナークの脅威。
 だが、トリテレイアの機械仕掛けの精神性は、そのような動揺とは無縁のものだった。
「見えぬ怪物……戦の歴史の結実たるウォーマシンが捉えられぬとでもお思いですか」
 頭部のカメラアイだけではない、全身に搭載されたマルチセンサーが、光学に限らず振動や音、熱源反応などあらゆる情報からスナークの位置を探り出す。虚構だの架空だのと言っても"居る"ものはそこに"居る"のだ――合理と科学の権化、スペースシップワールド製の機械騎士にそのような惑わしはまかり通らない。

「猟兵の実力にはほとほど驚かされますな。見えざるはずのスナークを見破られたのは、これで何度目でしょうか」
 ジャバウォックの感嘆と共にスナークの爪牙が襲ってくる。全センサーを総動員してその挙動を見切ったトリテレイアは、携えた重質量大型シールドにて不可視の攻撃を凌ぐ。
「姿をくらました程度で、護衛用機種の『目』を破れるとお思いですか」
 【式典・要人護衛用銀河帝国製ウォーマシン】トリテレイアシリーズ・シリアルナンバーゼロナイン。かつて宇宙に覇を唱えた大帝国の技術の精髄、その型式は伊達ではない。
 護衛機としての最上位機能を解禁した彼は、見えざるスナークの存在を完全に捉え――爪牙を受け止めた大盾で、向上した出力任せのシールドバッシュを叩き込んだ。
『―――!!!』
 どの種の獣とも似つかない悲鳴が上がり、透明な体躯が大地に捻じ伏せられる。すかさずトリテレイアはそれを踏みつけて押さえこみ、警護用の儀礼剣を抜いてとどめを刺す。

「お見事です」
 侵略蔵書の力を打ち破られてもジャバウォックの表情に動揺はない。自他共に認められた猟書家最強の戦士は、優雅に剣を構えながらトリテレイアとの距離を推し量っている。
「私のような悪(ヴィラン)が悪事を企てれば、必ず貴殿のような正義(ヒーロー)が立ちはだかる。故に戦いの歴史が終わることはない……そうは思いませぬか、騎士殿」
「架空の怪物も、それを退治する騎士も、戦乱を呼ぶ貴方も、それを阻む私も……元来、現実には不要なのです」
 騎士の矜持を試すかのようなジャバウォックの問いに、トリテレイアは迷うことなく答えた。己が憧れ規範とする御伽噺の騎士――それは本来御伽噺の中のみで十分なのだと。

「己の存在意義を否定してでも、無辜の民の為に尽くされますか……痛ましいですな、騎士殿。貴殿に戦を楽しむ心があれば、歴史に名を刻む英雄ともなれたでしょうに」
 揺るがぬ騎士道を示すトリテレイアに対し、ジャバウォックは哀しげに目を細めながらヴォーパル・ソードを振るわんとする。しかし斬竜剣の刃が巨大化する寸前、騎士のボディに格納された銃器が一斉展開される。
「それこそ、私には不要なものです」
「ぬぅ……っ!」
 勝利と使命のために騎士らしささえ捨てた、隠された飛び道具によるだまし討ち。ジャバウォックにもそれは予想外の事だったのか、咄嗟に銃弾を捌くために僅かな隙が生まれ――その間隙を逃さず、スタスター全開でトリテレイアが飛び込む。

「ヒーローズアースの人々の安寧の為、斃れていただきます」
 出力・演算リミットの解除による戦闘性能の向上。振り下ろされた儀礼剣の一撃は、技術ではなく機体出力の押し付けによって、ジャバウォックの手から剣を取り落とさせる。
 直後、武器を失った猟書家に叩き込まれるのは大盾による殴打。見えざる怪物スナークを打ち砕いたように、凄まじい強度と質量の塊は鈍器としても十分な威力を発揮し――。
「……素晴らしき騎士道です。"サー"の称号は私などより、貴殿にこそ相応しい」
 大盾に吹き飛ばされジャバウォックは口元に称賛を込めた微笑を浮かべ、その老躯は焼け焦げた木々を何本も巻き込んでなぎ倒した末に、大地へと捻じ伏せられたのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

佐伯・晶
いよいよ猟書家との戦いだね
折角守ったヒーローアースの平和を
乱されない為にも皆と協力して戦うよ
強敵だから連携できそうなら連携するよ

見えない敵は確かに厄介だね

空に飛ばしたドローンと多機能イヤホンで音の発生点を調査
ゴーグルにデータリンクして視覚情報に変換しよう
それと熱線映像に写るか
もしくは赤外線を遮る事で
スナークの影が浮かび上がらないか注意してみるよ

場所がわかればワイヤーガンや空中浮遊を使用し攻撃を回避
使い魔の麻痺攻撃で一時的に無力化を狙うよ

そうしたらガトリングガンの射撃と
使い魔の麻痺攻撃で本体の動きを制限
魔法陣を当てよう

状況を見て動きを停めて凍結魔法で攻撃するか
他の人の攻撃を当てる隙を作るかするよ


キリカ・リクサール
アドリブ連携歓迎

猟書家か…面倒な奴が出張って来たものだな
とは言え、見過ごす事も出来んか

ナガクニを握り深く息を吸い込み集中
視覚に頼るのではなく聞き耳を立てて音で探ろう
怪物は見えない…が、逆に言えば見えないだけだ
聞き耳で捕らえた場所に念動力を放ち、読心術でスナークの心を読んで攻撃ルートを予測
攻撃を喰らう前に奴の吐息を耳と肌で感じ、ナガクニのカウンターで切り裂く

さて、今度はこちらの番だ
凱旋のギャロップを踏ませてもらおう

UCを発動
幾重もの刃を重ね攻撃力を重視しつつ、スナークとジャバウォックを同時に貫いたら銃でさらに追撃を行う

終わりだ、見えざる獣共よ
虚構から現れたのであれば、そのまま虚構へと沈むがいい



「猟書家か……面倒な奴が出張って来たものだな。とは言え、見過ごす事も出来んか」
「いよいよだね。折角守ったヒーローアースの平和を乱されない為にも戦うよ」
 神妙な表情で集中するキリカ・リクサール(人間の戦場傭兵・f03333)と、気合いを瞳に宿して表情を引き締める佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)。焼け焦げた森の国でついに相見えた強敵との戦いに当たって、この2人は連携して立ち向かうことを選択した。
「これは、なかなか分が悪そうですな。とはいえ私も"1人"ではない以上、不平を申すのは筋違いでしょう」
 いずれも多くの経験を積んだ歴戦の猟兵たちを前に、猟書家サー・ジャバウォックは冗談めかした笑みを作る。孤軍奮闘の戦いなれど、その手に侵略蔵書「秘密結社スナーク」がある限り、見えざる怪物の侵略は止まらない。

「見えない敵は確かに厄介だね」
「……が、逆に言えば見えないだけだ」
 悍ましい"何か"の気配を肌で感じながら、2人は不可視の敵を暴くための対策を講じる。
 晶は情報収集用ドローンを空に飛ばし、耳にはめた多機能イヤホンから周囲の音を拾い集める。どんなに微かな足音や息遣いでも、怪物の発する音をけして聞き逃さぬように。
 そしてキリカも黒革拵えの短刀「ナガクニ」を握り、深く息を吸い込んで集中を高める。目を瞑ることで視覚よりも聴覚を研ぎ澄ませ、怪物の居所を探して聞き耳を立てる。
「スナークはどこにもいて、どこにもいない。虚構の存在を見つけ出せますかな」
 ジャバウォックは余裕のある表情でそう語るが、そんな言葉に2人は惑わされはしない。たとえ虚構であろうと実体があるならば捉えられるはず――戦場傭兵と邪神憑きが張り巡らせた知覚の網は、どんなに些細な痕跡だろうとも逃しはしない。

「……あそこだね」
 最初に"それ"を発見したのは晶だった。ドローンとイヤホンから集めた音を、多機能ゴーグルとデータリンクさせて視覚情報に変換すると、焼け焦げた木々の狭間に潜むスナークの影が浮かび上がる。彼女はすかさずそれを近くにいるキリカにそっと耳打ちする。
「ああ。私にも聞こえた」
 キリカは集中を切らさぬままこくりと頷くと、怪物が潜んでいる場所に念動力を放つ。
 念をソナーの音波のようにして、相手の思考を読み取る読心術。ヒトとは異なる虚構の存在の考えを理解することは困難だが――表層的な心理だけでも読めれば十分。
『――――!!』
 見つかったことに気付いたスナークは驚いたように身じろぎすると、牙を剥き出しにして襲い掛かってくる。その動揺した感情から攻撃のルートまで、たとえ眼には見えなくとも、今の2人には"視える"。

「3時の方向、来るぞ」
「うん」
 怪物の牙が襲ってくる前に、晶は近くの木の枝に向かってワイヤーガンを射出し、ふわりと空中に浮かび上がって急速離脱。ただ1人怪物の攻撃ルート上に残ったキリカは、瞼を閉じたまま極限まで集中を高め――迫る敵の吐息を、耳と肌で感じる。
「……そこだ」
『―――!?』
 接触の瞬間を見切ってのカウンターが、見えざるスナークを完璧に捉えた。龍骨の破片を混ぜて鍛え上げられたナガクニの刃は、架空の怪物の肉体を一刀のもとに切り裂く。
 赤い血潮が刃を濡らすことはない。だが手に伝わってくる確かな感触と、耳をつんざくような悍ましい悲鳴が、与えたダメージまでもが架空ではないことを実感させてくれる。

「今だよ、行って」
 強烈なカウンターによりスナークの動きが鈍ったのを見計らい、晶が使い魔を飛ばす。
 ゴーグルの視界を熱線映像に切り替え、余計な赤外線を遮断して補正をかければ、今や彼女の眼には傷ついた怪物の姿がはっきりと映っている。その誘導に従って飛んでいった妖精型の使い魔は、そっと怪物に触れて麻痺の魔法を放つ。
『―――………!!』
 手負いのスナークは四肢をびくんと痙攣させ、それきり凍ったように動かなくなった。
 まだ息の根はあろうと、これで暫くの間は動けまい。共闘により"スナーク狩り"を成し遂げた2人の視線は、すぐさま本命である猟書家へと向けられた。

「さて、今度はこちらの番だ。凱旋のギャロップを踏ませてもらおう」
「反撃の時間だね。全力でいくよ」
 キリカの腰のポーチから呪いの人形「デゼス・ポア」が飛び出し、晶が携行型ガトリングガンの砲身を持ち上げる。スナークを打ち破った猟兵たちから刺すような敵意を受けて、ジャバウォックは神妙な表情で斬竜剣「ヴォーパル・ソード」を構えた。
「いやはや、この苦境は些か老骨には堪えますな」
「老体の姿とて容赦はしない――踊れ、デゼス・ポア。貴様を呪う者達の怨嗟の声で」
 人形がケラケラと無邪気で残酷な笑い声を上げ、その躯体から錆びついた刃が幾重にも走る。異形を呪う怨嗟の籠もった【バール・マネージュ】の舞踏は、標的を完膚なきまでに切り刻むまで、決して止まることはない。

「可愛らしい踊り子ですな。こんな時でなければゆっくりと踊り明かしたいものですが」
 ジャバウォックはそう嘯きながらヴォーパル・ソードを巧みに振るい、デゼス・ポアの錆刃と互角以上に斬り結ぶ。猟書家最強と謳われるその実力と剣技は、キリカがこれまで見てきたオブリビオンの中でも屈指だろう。
「僕のことも忘れてもらったら困るよ」
 だがこの場にいるのはキリカとデゼス・ポアだけではない。上空からは晶とその使い魔がガトリングの弾幕と麻痺の魔法を放ち、ジャバウォックの行動を制限する。スナークのように完全に無力化するのは難しいが、少しでも動きが鈍れば牽制としては十分。
(外すと悲惨な事になるから慎重に使わないと)
 地上で戦うキリカとデゼス・ポアの動きもよく見て、勝負に出るための機をうかがう。
 銃撃を切り払うためにジャバウォックの対応が僅かに送れ、斬竜剣が錆刃にかち上げられる――その刹那を狙って、晶は全力の【邪神の抱擁】を放った。

「むぅっ……!! これは、われらが主……『書架の王』と、同じ力……!?」
 狙い過たずジャバウォックを捉えたのは、対象の時間を停止させる邪神の魔法陣。
 凍える時の中に閉じ込められた男は、驚愕に目を見開きながらその場に立ち尽くす。
 熾烈な攻防の末に晶が作り出した決定的な好機、これをキリカが見逃すはずもない。
「終わりだ、見えざる獣共よ。虚構から現れたのであれば、そのまま虚構へと沈むがいい」
 デゼス・ポアの乱舞に重ねて、神聖式自動小銃"シルコン・シジョン"と強化型魔導機関拳銃"シガールQ1210"の銃撃が身動きの取れないジャバウォックとスナークを同時に貫く。
 架空の怪物は言うに及ばず、魔法陣の中で凍結魔法に晒されるジャバウォックにも抗う術はなく――苦痛の呻きも漏らせぬまま、猟書家の身体は鮮血に染め上げられていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

メガ・ホーン
【悪党潰し】

・ルカ・ウェンズちゃんと一緒に戦うぜー

・先制攻撃対策:見えない架空の怪物とはいえ、それが形になってるなら「楽器演奏」で作った「衝撃波」での「範囲攻撃」で「吹き飛ばし」てやるぜ!

・先制攻撃を凌いだ後は「オーラ防御」身を固め、「ダッシュ」で動きつつ「楽器演奏」の「パフォーマンス」でジャバウォックの注意を引き、サメキャノンで攻撃してルカちゃんの動きをアシスト。
場合によっては「捨て身の一撃」で敵の動きを止めにかかるぜ。

・攻撃や音楽には常に【レクイエムアタック】を乗せて敵の邪念を削っていく。接近しての一撃がかなうなら、タクトフェンサーでその胸を貫いてやる!
ルカちゃん、トドメは任せたぜー!


ルカ・ウェンズ
【悪党潰し】
今日はここにメガ・ホーンさんとデートに来たわよ~

見えない【架空の怪物スナーク】は見えないので無視して【オーラ防御】を使い私とメガ・ホーンさんの身を守りジャバウォックに【空中戦】を仕掛けるわ! 

こっちが架空の怪物を見えなくても向こうからは見えてるだろうし【残骸】で敵を惑わしてその隙に幸せの青い鳥を使い【怪力】スピード、欲望の力で攻撃するわよ竜人のうえに名前にサーってついてるから金を隠し持ってるはずだわ!近づいてオーラ刀で切り裂いてやらないと。

それに殺しても消滅しないタイプだったら
ヴォーパル・ソードとか高く売れそうだし…呪いの武器だと危険だし砕いておかないと!砕いても売れるかしら?



「今日はここにメガ・ホーンさんとデートに来たわよ~」
「ルカちゃんと一緒に戦うぜー」
 いえーい、と妙に息の合ったノリの軽さで、焼け焦げた森の国にやって来たルカ・ウェンズ(風変わりな仕事人・f03582)とメガ・ホーン(サウンドマシーン・f13834)。
 この2人の本日の目的は【悪党潰し】。平和になったヒーローズアースの侵略を企み、虚構の書物で人々を混乱に陥れようとする猟書家は、まさにブッ殺しても誰にも文句の言われないド悪党だ。
「いやはや、仲の宜しいことですな。ですがそうした隣人の仲さえ引き裂くのが、私の侵略でございます」
 好々爺めいた笑みを浮かべながら、侵略蔵書「秘密結社スナーク」を広げるジャバウォック。身を包む紳士服はすっかりと血に染まっていたが、今だその戦闘力に陰りは見られなかった。

「見えない怪物は見えないので無視!」
 蔵書より放たれた架空の怪物スナークに対するルカの対抗策は、あまりに潔い――というよりも開き直りだった。あくまで標的は本体であるジャバウォックのみに絞り、漆黒のオーラで自身とメガの守りを固めながら、相棒の宇宙昆虫に乗って空に飛び立つ。
 もしも彼女1人なら、これで不可視の不意討ちを喰らって手痛いダメージを受けていたかもしれないが、幸いにももうひとりの相方、メガはしっかりと対抗策を考えてきていた。
「見えない架空の怪物とはいえ、それが形になってるなら俺の演奏で吹き飛ばしてやるぜ!」
 レトロチックなボディに内蔵されたスピーカーと、両肩に装着されたトラメガから鳴り響く重厚なサウンド。鉤爪型のアイアンフィンガーをピックにして、かき鳴らされるエレキギター型サウンドウェポン「ソニックライデン」。疾風迅雷の勢いで奏でられる音色は強化機材「ロケットウーファー」によってさらに増幅され、爆音の衝撃波と化した。

『―――!!?』
 猟兵たちに飛び掛かったスナークは、見えない壁にぶち当たったように跳ね返される。
 その隙にルカは残像が生じるほどのスピードで宇宙昆虫を駆り、一目散にジャバウォックの元へと向かう。
(こっちが架空の怪物を見えなくても向こうからは見えてるだろうし)
 相手が視覚に頼る生物だと想定したうえでの全力飛行はどうやら功を奏したらしく、見えざるスナークからの追撃は来なかった。十分にスピードに乗ったところで、彼女は宇宙昆虫から飛び降りて【幸せの青い鳥】を発動する。

「メーテルリンク・モーリス」

 全身を覆うオーラの色は黒から青に。自らの力で飛翔する力を得たルカは、これまで以上のスピードで流星のごとく空を翔け、変形式オーラ刀を振りかざして敵に斬り掛かる。
「竜人のうえに名前にサーってついてるから金を隠し持ってるはずだわ!」
「生憎と、お渡しできるような物は何も持参していないのですが」
 欲望の力によって高まる戦闘力。清々しいまでの笑顔で刀を振り下ろすルカに対して、ジャバウォックはヴォーパル・ソードを掲げこれを受け止める。パワーとスピードでは上回られはしても、剣の技量においては彼のほうがまだ数段上だ。

「俺のことも忘れてもらっちゃ困るぜ!」
 前線でルカとジャバウォックが激しく斬り結ぶ最中、後方より鳴り響くはメガの演奏。
 熱い魂を籠めた【レクイエムアタック】の音波攻撃は、物理的なダメージこそ与えないものの、敵の心に宿る邪念を削り、精神的な消耗を強いていく。
「私はもう少し、落ち着いた音楽のほうが好みですな」
 ジャバウォックはルカとの剣戟を続けながら、再び侵略蔵書を開いてスナークを差し向ける。演奏を止めさせようと襲ってくる怪物に捕まらないよう、オーラで身を固めながらダッシュで戦場を駆け回るメガ。
「音楽が好みに合わないなら、こいつはどうだい!」
 サウンドウェポンに代わって彼が担ぎ上げたのは「サメキャノン」。燃えたぎる熱い心を砲弾に変えて、ズドンと轟音を上げて撃ち出す――全てはジャバウォックの注意を引き、前線のルカを援護するために。

「大した威力ですが、何故サメなのでしょう?」
「面白そうだからだ!」
 前線にて炸裂する砲弾は、演奏と同様に邪心を挫く【レクイエムアタック】。肉体ではなく悪しき心を攻撃する技だからこそ、味方の被害を気にせず撃ちまくることができる。
「殺しても消滅しないタイプだったら、ヴォーパル・ソードとか高く売れそうだし……呪いの武器だと危険だし砕いておかないと! 砕いても売れるかしら?」
 ――今のルカにまったく邪心が無いのかという疑問についてはさて置いて。遠近からの巧みな連携は、猟書家最強と目されるジャバウォックさえもじりじりと追い込んでいた。

「肉体と精神、両面から攻められるのは、中々厳しいですな……」
 斬竜剣を振るう老紳士の顔に焦りの汗が滲む。もうひと押しだと感じたメガは、サメキャノンを放り捨てると、レガリアスシューズをフル稼働させて一気に前線へ飛び込んだ。
「ここが正念場だ!」
『―――!!』
 そうはさせじと横腹から飛び掛かるのはスナーク。しかし彼はそれを避けることなく、覚悟の上で牙に穿たれながら、ジャバウォックまでの最短距離を駆け抜け――指揮棒「タクトフェンサー」からレイピアのような光の剣を生み出し、渾身の力で突き放った。
「ぐぅ……ッ!」
 メガの捨て身の一撃は見事に敵の胸を貫き、ジャバウォックの表情が苦痛に歪む。
 この瞬間、この好機を、彼と共に戦うもうひとりの猟兵が逃すわけが無かった。

「ルカちゃん、トドメは任せたぜー!」
「任されたわ、メガ・ホーンさん!」
 仲間からの期待と、湧き上がる欲望の両方を力に変えて、叩きつけられる渾身の一撃。
 蒼穹の色に染まったオーラ刀の刃が、ジャバウォックの身体を袈裟懸けに斬り裂いた。
「お見事です……っ」
 深く裂けた傷からぼたぼたと血を流しながら、よろめき後退するジャバウォック。
 敵に賛辞を送る心の余裕は健在ながらも、その肉体は着実に"死"に近付いていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

フロッシュ・フェローチェス
とうとう見えたな、ジャバウォック……ごたくは抜きで貫く!
より遠くからダッシュ開始だ。加速式の励起により、その速度を段々引き上げ、マッハを超えた早業移動の域まで引き上げるよ。

遠くからじゃ接近は見えてしまう。ならどの道、先手は譲らざるを得ない。
なら残像を作って惑わし攻撃方向を横振りへ誘導……縦に振ったとこで近付かれるだけなのは、奴も分かってるはずだしね。
二発目は地に喰らい付かせていた咆蛟炉に引っ張って貰い、ブーツから放つ衝撃波を合わせて回避。
三発目、溜めていた加速式の力を解き放ち、限界突破のスピードで近寄り剣をカウンターで蹴っていなす。

その隙にUCを発動。
弾いた、その勢いのまま、蹴り飛ばしてやる!



「侵略蔵書の力がまるで通じないとは……猟兵とはかくも凄まじき者達でしたか」
 猟兵たちによる"スナーク狩り"は順調に進んでいた。侵略蔵書「秘密結社スナーク」の力を打ち破られた猟書家サー・ジャバウォックは、今や肩で息をするほど消耗している。
 なんとか息を整えて体勢を立て直した彼は、凄まじいスピードで近付いてくる何者かの気配を感じた。翠色の疾風となって森を駆けるその者の名は、フロッシュ・フェローチェス(疾咬スピードホリック・f04767)。
「とうとう見えたな、ジャバウォック……ごたくは抜きで貫く!」
 超速術理「加速式」を励起した彼女の肉体は森の入口から徐々に速度を引き上げ、今やマッハを超えた早業移動の域に達して、衝撃波を起こしながらジャバウォックに迫る。

「問答無用ということですか。では私もその流儀に則りましょう」
 速度においてはフロッシュが凌駕しても、射程においてはジャバウォックが上回る。近付いてくる新手の存在に気付いた老紳士は斬竜剣「ヴォーパル・ソード」を構えると、まだ100m以上の距離があるうちから斬撃を走らせる。
(遠くからじゃ接近は見えてしまう。ならどの道、先手は譲らざるを得ない)
 フロッシュは歩幅を調整して速度を変化させ、残像を作って敵の目を惑わす。亡霊のように揺らぐ残像の中から本物を仕留めようとするなら――纏めて薙ぎ払うのが得策と判断するはず。案の定、敵は彼女の誘導通り、横方向に剣を振るう構えを見せた。

(縦に振ったとこで近付かれるだけなのは、奴も分かってるはずだしね)
 にやりとフロッシュが笑った刹那、横薙ぎの斬撃が襲ってきた。ジャバウォックの手元で巨大化したヴォーパル・ソードの刃は、森の木々もろとも翠の残像を斬り捨てていく。
 だが、その中に本物のフロッシュはいない。残像を囮として初撃をかいくぐった彼女は、さらにスピードを上げながら彼方にいる標的目指して突き進む。
「躱されますか。ただ疾い、というわけではなく、技量も確かなものと見えます」
 間髪入れずにジャバウォックは二度目の斬撃を放つ。フロッシュの疾さであれば1秒もかからず詰められるはずの距離が、この老剣士を前にしてはあまりにも遠く、そして長い。

「負けるか……ッ」
 フロッシュは咢鎖・咆蛟炉の先端に付いた異形頭部を地に喰らいつかせ、両足のメカブーツ「衝角炉」から衝撃波を放つ。鎖に引っ張られるように急転換した彼女の数ミリ先を、巨大な斬竜剣が掠めていく。
「これで王手(チェック)です」
 瞬きする暇も与えられずに、3発目の斬撃が襲ってくる。2発目を躱すために大きく体勢を乱した標的を、確実に仕留めるための追撃。いかにフロッシュが超速を誇ろうとも、既にジャバウォックは彼女の動きを完全に見切っている――。

「まだだッ!」
 まだ、自分はコイツに疾さの"底"を見せてなどいない。加速式に溜めていた力を解き放ち、再び加速――己の限界を超え、音を置き去りにしたフロッシュの疾走は、ついにジャバウォックと肉迫する。
「なんと……!」
 自らの剣速さえも追い越したその疾さに猟書家も動揺を隠せない。間髪入れずバネのように跳ね上げられた少女の脚がヴォーパル・ソードを蹴り上げ、斬撃の軌道をいなした。

「耐えられるならやってみろ。そのまま全部潰してやるから」
 再び剣を構え直す隙はやらない。斬竜剣を弾いた勢いのまま、フロッシュが繰り出すのは翠碧惨刹『デスストーカー』。衝撃波を纏った衝角炉による蹴撃が、がら空きになったジャバウォックの胸を蹴り飛ばす。
「ぐぅ、ッ!!」
 吹き飛んだ相手が地面に叩きつけられるよりも疾く、追い付いてさらに蹴り飛ばし。なおも追跡して刹那の連脚から、背中に回って蹴り上げに繋げ――締めは渾身の超速蹴り。
「吹っ飛べ!」
 歯をむき出しにして、吠えるような一喝と共に。真芯を捉えられたジャバウォックの身体は大砲から撃ち出された砲弾の如く、凄まじい勢いで森の彼方まで吹き飛んでいった。

成功 🔵​🔵​🔴​

カタリナ・エスペランサ
最強格を最初に落とせるとは幸先の良い話だね
いいよ、とっておきで相手になってあげる!

敵の先制UCには《早業+先制攻撃+クイックドロウ》で更に先手を取りに行く
ダガーの《乱れ撃ち》は《フェイント》、同時に《目立たない》《迷彩》を施した羽弾で付けた傷から《属性攻撃+ハッキング+催眠術》を仕掛け密かに知覚を狂わせる事で攻撃の精度を落とす
放たれる攻撃は《第六感+戦闘知識》で《見切り》、《空中戦》の機動力を活かして回避しよう

絶対先制さえ乗り越えれば後は乾坤一擲、勝負を掛けるのは一瞬さ
【仮想回帰】発動、変異した右手はあらゆる過程を無視して存在を消し飛ばす絶対の矛だ
一発限りの切り札、とくとその身でご賞味あれ!



「最強格を最初に落とせるとは幸先の良い話だね」
 迷宮災厄戦において猟兵が初めて交戦することになった猟書家サー・ジャバウォック。
 首魁たる「書架の王」を除けば最強と目される存在だが、カタリナ・エスペランサ(閃風の舞手(ナフティ・フェザー)・f21100)はこれを僥倖と捉える。ここで彼を打ち倒せば敵の戦力は激減し、自分達の力量は全ての猟書家に通用するという証明にもなる。
「いいよ、とっておきで相手になってあげる!」
「では私も全力を以て迎え撃たなければ、失礼に当たりましょうな」
 煌めく双翼を広げて高らかに宣言する彼女に、ジャバウォックも寸分の隙なく剣を構える。痛烈な一撃を喰らったばかりだと言うのに、その気魄には些かの衰えも無かった。

「参ります――」
「――行くよ!」
 ジャバウォックが斬竜剣「ヴォーパル・ソード」を振るうのと、カタリナがダガーを抜き放つのはほぼ同時だった。武器を巨大化させるために生じる僅かな振り遅れの分、刹那の差でカタリナの抜き撃ちが先の先を取る。
(まずは攻撃の精度を少しでも落とす)
 両の手から乱れ撃たれたダガーはフェイント。ジャバウォックがヴォーパル・ソードを振るって投擲を切り払った隙を突いて、同時に放たれていた迷彩色の羽弾が突き刺さる。
 彼にとってそれは大した負傷ではないが、少しでも傷付けられればカタリナはそれを手がかりとして敵の意識にハッキングし、ある種の催眠術のように密かに知覚を狂わせた。

「先手は取られましたか。ですが次はこちらの番です」
 機先を制されながらもジャバウォックは冷静さを損なわず、ヴォーパル・ソードで反撃に出る。その斬撃は巨人の手にも余るほどに巨大化していながら、稲妻のごとき剣速を誇り――だが、知覚の狂いによる僅かな狙いの乱れが、カタリナに活路を見いださせた。
「万全な状態で出されていたら、避けられなかっただろうね。だけど!」
 研ぎ澄まされた第六感と培ってきた戦闘知識、そして自慢の双翼による機動力を最大限に活かして、脅威の斬撃を回避する。切っ先が掠めるだけでも身体の一部を持っていかれるような圧力と衝撃――しかしそれでも、天を舞う閃風は何者にも捉えられはしない。

「絶対先制さえ乗り越えれば後は乾坤一擲、勝負を掛けるのは一瞬さ」
 ヴォーパル・ソードの三連撃を躱しきると、カタリナは一転攻勢に移る。発動するのは【仮想回帰】、心魂に宿る神狩る魔神"暁の主"の力を、自らの肉体に顕現させる禁じ手。
 対象とするのは身体部位のひとつのみ――この瞬間、彼女の右手は全盛期の"暁の主"の右手と限りなく同一の状態へと変異し、その権能を高次元で振るうことが可能となった。
「一瞬、一撃。これで対価は魔力の大半っていうんだから我ながら酷い話さ」
 この一撃を外せば後はない、まさに奥の手。だがそれほどのリスクを負うだけの価値はある――変異した魔神の右手は、あらゆる過程を無視して存在を消し飛ばす絶対の矛だ。

「一発限りの切り札、とくとその身でご賞味あれ!」
 ありったけの魔力と引き換えに"暁の主"の右手を振るうカタリナ。その一撃はジャバウォックに回避も防御も許さずに"消滅"という結果を押し付け、彼の片腕を消し飛ばした。
「なんという―――っ!!!」
 空間ごとくり抜かれたように消えてなくなった左腕から、侵略蔵書が地面に落下する。
 恐ろしいほどに滑らかな肩口の断面からは、噴水のように血飛沫が噴き出し――壮絶な苦痛と失血量に耐えきれず、ついに最強の猟書家は膝を付いた。

成功 🔵​🔵​🔴​

カビパン・カピパン
「ごめんなさい!」
カビパン全力の謝罪。額をグリグリと地面に擦り付けている気合が入った土下座である。

簡単なことである。敵が先制攻撃するなら、まずは心の底から謝ればいい。ジャバウォックもここまでの謝罪を見た事が無い。

どうしてここまでの謝罪を受けているのか。
どうして争いなんかしているのだろうか。 
ジャバウォック束の間、困惑と現実逃避。

誇りも何もかも全て捨てたカビパン土下座はもはや謝罪芸術の域。

顔をそっとあげて、おもむろに視線を反らしてあらぬ方向を向いた。つられる様にジャバウォックが目を反らした瞬間に跳躍して、ハリセンでしばき倒した。

土下座の瞬間からここはカビパンワールド。ハリセンが真価を発揮する。



「やれやれ……手酷くやられたものです。これでも『書架の王』を除けば、私こそが同胞の中で最も強いと自負していたのですが」
 最初に持っていた本と剣のうち剣のみを携え、隻腕となった猟書家サー・ジャバウォックは力ない笑みを浮かべる。侵略蔵書「秘密結社スナーク」を用いてヒーローズアースを侵略するという彼の計画は、すでに彼自身の手では遂行困難な段階に達しつつあった。
「このままでは『書架の王』に申し開きができませんな……見栄を切ってこの任を拝命した以上、最低限の戦果は挙げてみせなければ」
 深手は負えども眼光の鋭さは衰えず。彼が見据える先には新たな猟兵の影が――従軍聖職者の軍服を纏ったカビパン・カピパン(女教皇 ただし貧乏性・f24111)がいた。

「さて。こうも追い詰められては、私も奥の手を使わざるを得ませんな――」
 血塗れの手で剣を握り締め、かっと目を見開くジャバウォック。その体内からまだ使われていなかった力が――悍ましさに背筋が凍える程の「黒い悪意」が湧き上がってくる。
 変貌を始めた猟書家を前にして、カビパンは一振りのハリセンのみを携えて、すっと進み出ると――軍帽を脱ぎ、地面に両手をつき、額が割れんばかりの勢いで頭を下げた。

「ごめんなさい!」

 カビパン全力の謝罪。額をグリグリと地面に擦り付けて、気合が入った土下座である。
 なぜそこで謝るのか。なぜここで土下座なのか。それはカビパン以外には誰にも分からない。そう、謝られている当の相手にさえも。
「……はて? 何をなさっているのです?」
 困惑のあまりジャバウォックの変身が止まる。どうしてここまでの謝罪を受けているのか。どうして争いなんかしているのだろうか。束の間の現実逃避が彼の脳内を支配する。
 それほどまでに最強の猟書家の動揺を誘うほどに、誇りも何もかも全てを捨てたカビパンの土下座は、もはや謝罪芸術の域に達していた。

「…………」
 カビパンは謝罪の一言を発したきり無言のまま、顔をそっと上げて、おもむろに視線を反らしてあらぬ方向を向く。あまりにも意味深なその所作を見て、ついジャバウォックがつられてしまうのも無理からぬことだった。
「一体何が……」
 謎の土下座女の視線を追い、すいと老紳士が目を逸らす――その瞬間、カビパンは足元にバネでも仕込んであったかのように跳躍すると、持っていたハリセンをフルスイング。

「引っかかったわねバカめ!」

 スパーン! と小気味いい快音が森に響き、脳天からしばき倒されるジャバウォック。
 カビパン自慢の「女神のハリセン」は、あらゆる奇跡を雲散霧消させ、ある条件下においてのみ、どんな剣より強い武器となる。その条件とは――「ギャグ時空」であること。
 土下座の瞬間からここはもうカビパンワールド。渾身のボケによって戦場を自分色に染め上げた【ハリセンで叩かずにはいられない女】のハリセンが、ここに真価を発揮する。
「ごふ……っ!!?!!」
 わけも分からぬまましばかれたジャバウォックは目を白黒させながら地面にめり込む。
 痛くはない。なのに立ち上がれない。ギャグ空間の恐ろしさと理不尽さを骨身に味わった彼を見下しながら、カビパンはどうよ、とでも言いたげにドヤ顔をかましていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

レナータ・バルダーヌ
何が目的か知りませんけど、せっかく平和の訪れた世界をまた混乱させるわけにはいきません。
この世界もヒーローズアースも護ってみせます!

敵の攻撃はサイキック【オーラで防御】して耐えます。
五感の中でも触覚(痛覚)を奪われるのは特に痛いですけど、意識さえ手放さなければ反撃の目はあるはずです。
或いは余計な感覚に囚われない分、却って敵が纏った悪意にのみ集中できるかもしれません。
時には拘束され視界を奪われても、自身に害を為そうとする者を悉く焼いてきた力の暴走の発露【A.C.ネメシスブレイズ】を発動します。
以前まではその溢れる炎を眺めることしかできませんでしたけど、この身に宿る力の意味を思い出した今なら……!



「何が目的か知りませんけど、せっかく平和の訪れた世界をまた混乱させるわけにはいきません」
 普段は穏やかな瞳に決意の輝きを宿し、焼け焦げた森の国に降り立つのはレナータ・バルダーヌ(護望天・f13031)。ヒーローズアースは彼女を含む多くの猟兵の尽力によって守り抜かれた世界――それを脅かそうとは言語道断だ。
「この世界もヒーローズアースも護ってみせます!」
「その意気や良し。貴女の決意と私の使命、最後に立っているのはどちらでしょうな」
 斬竜剣「ヴォーパル・ソード」を支えとして、ゆらりと立ち上がるはジャバウォック。
 既に多くの傷を負い、片腕を失うほどの重症だが、その目は今だ死んでいない――。

「始めましょう、プロジェクト・ジャバウォックを」

 その瞬間、老紳士の身体から湧き上がるのは、ゾッとするほど悍ましい暗闇のオーラ。
 人間の『黒き悪意』を身に纏ったジャバウォックの肉体はメキメキと音を立てて変貌し、禍々しい竜人形態へと姿を変える。ヴォーパル・ソードの刀身は青白い不気味な光を放ち、背中には夜の闇で塗り固めたような漆黒の翼が翻る。
「怪物を作り出すのは、人の悪意。貴女はこの力に耐えられますかな?」
 スナークをも上回る怪物と化したジャバウォックは、黒き颶風を巻き起こしながら飛翔する。レナータが咄嗟にサイキックオーラの防壁を張った直後、斬竜剣の一閃が彼女を斬り裂いた。

「……っ!」
 痛みはない。大きな翼が視界を覆った途端、レナータの意識は何も見えず、聞こえず、感じない、暗闇の中に取り残される。これが【プロジェクト・ジャバウォック】を発動させたサー・ジャバウォックの真の力――その黒翼に触れただけで、人は五感を奪われる。
「いかがですかな、五感を奪われる恐怖は。その闇こそが怪物を生み出す源泉です」
 獣が無理やり人の言葉を話しているような、不気味に歪んだ老紳士の声も、今はひどく遠くに感じる。僅かに残された感覚を総動員して、レナータは懸命に敵の攻撃に耐える。

(五感の中でも触覚を奪われるのは特に痛いですけど、意識さえ手放さなければ反撃の目はあるはずです)
 レナータのサイキックエナジーは苦痛や束縛によって力を増す。ゆえに痛覚を含めた触覚を失うことは大きなハンデだった。それでも彼女はまだ勝負を諦めてはいない――余計な感覚に因われなくなった分、却ってはっきりと感じ取れるものもある。
(なんて強く、どす黒くて、悲しい……とてつもない量の、人の悪意)
 現在のジャバウォックの力の源たる『黒き悪意』。あらゆるものを害し、貶め、蔑み、壊し、侵し、殺さんとする邪悪な意志だけは、肌を刺すようにひしひしと伝わってくる。
 その莫大な悪意に意識を集中させれば、レナータの中に秘められた力――自身に害を為そうとする者を悉く焼いてきた【A.C.ネメシスブレイズ】の力が発動する。

「むう……っ!?」
 五感を奪われ防戦一方だったレナータの身体から紫色の炎が噴出する。それはまたたく間にジャバウォックへ――より正確には彼が纏う『黒き悪意』に燃え移り、焼き焦がす。
 本来、このユーベルコードはレナータが暴走状態に陥った際に自動的に発動する能力であり、かつては彼女自身にさえ制御することは不可能だった。だが、今は違う。
「以前まではこの溢れる炎を眺めることしかできませんでしたけど、この身に宿る力の意味を思い出した今なら……!」
 無自覚なままに取り残されてしまった復讐心との決着をつけ、忘れていた記憶とともに力の意味を取り戻した彼女はもう、己の力に振り回されはしない。かつて流亡の少年を庇い背に負った徴が教えてくれる――《汝の隣人を愛せ》と。

「この力は、誰かを護るために……!」
 確たる決意を糧として燃え上がった念動火炎は、天をも焦がさんばかりの猛火となってジャバウォックを焼く。剣や翼で振り払おうとしても、自らに――そして隣人たちに害を為さんとする者を、レナータの紫炎は決して逃さない。
「人の悪意すらも凌駕する、意志の力……なんと、尊きことか……ッ!!」
 炎に骨まで焼き焦がされる苦痛に呻きながらも、ジャバウォックは感嘆を禁じ得ない。
 強く、そして優しき遠望の守護天使の力により、かの猟書家の計画(プロジェクト)はまた一歩、後退を余儀なくされたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ウィルトス・ユビキタス
強敵との戦いこそ猟兵の真価が問われる時(持論)。
五感を奪う敵との戦いは初めてだが、この身はもとより五感には頼っていない。戦場の荒らし屋の由来、その身をもって知るがいい。

まずは相手の攻撃を「エスクード・マキナ」で受け流す。そして相手の勢いを利用して距離を離す。距離さえ離せるのなら黒翼に触れることも厭わない。
距離を離したところで【エレメンタル・コード】で自分を中心に炎属性のハリケーンを生み出す。
五感が奪われようが構わん。そのまま周囲一帯を巻き込んで焼き尽くす。



「強敵との戦いこそ猟兵の真価が問われる時だ」
 持論を語りながら表情を引き締め、ウィルトス・ユビキタス(戦場の荒らし屋・f01772)は猟書家サー・ジャバウォックと対峙する。他世界への侵略を企む猟書家達の中でも最強と謳われる相手との戦いは、彼の論に従えばまさに真価を示すべき時だろう。
「その意見には私も同意いたします。貴方がた猟兵という強敵と対峙し、真価を問われているのは私も同様ということですな」
 斬竜剣「ヴォーパル・ソード」を構え、【プロジェクト・ジャバウォック】により竜人形態と化したジャバウォックも彼の言葉に頷く。深い切り傷や刺し傷、重度の火傷等、全身に様々な痛手を負いながらも、ここが正念場とばかりに老紳士の闘志は燃え盛る。

「この窮地を乗り越え、彼の地へと渡るために……参ります」
 人間の『黒き悪意』を纏いし黒翼を羽ばたかせ、猛禽の如く飛翔するジャバウォック。
 ウィルトスが可変型シールド「エスクード・マキナ」を展開した直後、悪意の力で強化されたヴォーパル・ソードの斬撃が振り下ろされ、凄まじい衝撃が彼に襲い掛かった。
「やるな……だがっ」
 単純な力比べでは分が悪いと悟ればシールドの形状を変化させ、刃を受け流すように。同時に相手の勢いを利用して大きく後方に飛び退き、敵との距離を引き離す。

「やはりこれしきの攻撃では凌がれますか……しかし十分です」
 初撃にて仕留め損なったジャバウォックだが、焦りや悔しさを感じている様子はない。
 一方のウィルトスは後退には成功したものの、自らの視覚や聴覚に異常を感じていた。
 剣と盾が交錯したあの一瞬のうちに、ジャバウォックは黒翼を触れさせてウィルトスの五感を奪っていたのだ。
「これは……」
「奪えたのは視覚と聴覚の一部でしょうか。その状態で次の攻撃も凌げますかな?」
 剣を構え直す老紳士の姿も、その声も、ウィルトスには朧げにしか分からない。
 こんな有様で再びあの斬撃を放たれれば、今度こそ受け流すのは不可能だろう。

「五感を奪う敵との戦いは初めてだが、この身はもとより五感には頼っていない」
 だが、そんな窮地に陥ってもウィルトスは落ち着いていた。目が見えずとも、耳が遠くとも、その程度のことは問題にはならない。ガジェットNo.5「蒸気式魔法発生装置」の杖を構えた彼は、静かに詠唱を紡ぎ、魔力を練り上げていく。
「戦場の荒らし屋の由来、その身をもって知るがいい」
 発動するのは【エレメンタル・コード】。杖から吹き出した蒸気が紅蓮の炎となり、彼を中心として渦を巻く。それはまたたく間に巨大な炎のハリケーンと化して、焼け焦げた森の戦場を、完全なる焦土に変えていく。

「これは……!!」
 天変地異と見紛うばかりの火炎の大嵐に、ジャバウォックも驚嘆する。周囲一帯を巻き込んで拡がっていく火勢を止めるためにはハリケーンの中心にいるウィルトスを倒すしかなく、そのためには自ら猛火の只中に飛び込まなければならない――それは自殺行為だ。
「距離を引き離すことに固執したのは、私を"台風の目"に入れない為でしたか!」
「少し気付くのが遅かったな」
 炎のハリケーンが周囲一帯を巻き込んで焼き尽くす中、ウィルトスのいる中心部の僅かな空間が安全圏。この状況を作り上げるためなら五感の一つや二つ、惜しくはなかった。

「灰塵と帰せ」
 厳かな宣告に合わせて、どこまでも拡がっていく業火の嵐。その脅威から逃れることはジャバウォックも叶わず――灼熱の奔流に焼き焦がされる怪物の悲鳴が、戦場に轟いた。

成功 🔵​🔵​🔴​

雛菊・璃奈
必ず先制されるなら、逆に利用すれば良い…。

敵の先制に合わせてアンサラーによる反射【呪詛、オーラ防御、武器受け、カウンター】で攻撃を跳ね返してみんなを守りつつ隙を作り、【九尾化・魔剣の媛神】封印解放…!

探知術式【呪詛、情報収集、高速詠唱】で五感を補い、九尾の呪力を使って呪力の縛鎖を放ち拘束…。
終焉の魔剣を無限に展開し、敵へ一斉斉射…。

終焉の呪力で敵を侵食したら、続けて魔剣の掃射を行いつつ、神速で一気に接近し、【呪詛、衝撃波】を纏ったバルムンクによる全力の竜殺しの一撃で仕留めるよ…。

鏡の国のアリスに出てくる魔竜ジャバウォック…ヒーローズアースや他の世界には行かせない…。貴方はここで止めてみせる…!


夜霞・刃櫻
【アドリブ・連係歓迎】SPD
やべぇーっす!?
これホントに三下の出る幕でやんすか!?
しょうがないからやるでやんすけど!

先制攻撃対策は「敵を盾にする」を応用して、超防御を行う味方を盾にする事で回避します
、味方の「影に紛れて」「目立たなく」なるし、先制攻撃の際に『ヘイズ・グレネード』で「目潰し」をしておけば、相手は自分のような三下は見失うだろうし気にも留めないハズ(謎の自信
その後に「忍び足」で近付いて「鎧無視攻撃」「吹き飛ばし」を載せたUC【夜霞の仕手】によるレベル730の超「暗殺」をキメる!
キメた後は「逃げ足」で即座に撤退!また「味方を盾にする」のも忘れない

失敗したら謝ってる暇あるんすかね?



「やべぇーっす!? これホントに三下の出る幕でやんすか!?」
 焼け焦げた森で繰り広げられる猟兵と猟書家の死闘を、夜霞・刃櫻(虚ろい易い兇刃・f28223)は驚愕の表情で見ていた。卓越した技と魔法、超常のユーベルコードが飛び交う強熾烈な戦い――果たして自分に割り込む隙はあるのかと一瞬悩んでしまうくらいだ。
「遠慮することはありませんよ、レディ。強者も弱者も、英雄も一兵卒も、力なき民草でさえも、戦場では誰もが平等です。闘争という悪意からは誰も逃れられません」
 そんな彼女に剣を突きつけながら語るのはサー・ジャバウォック。異世界にて戦いの歴史を再び繰り返させようと企むかの猟書家は、穏やかな微笑みを浮かべているが――その身には震え上がるほどの『黒き悪意』を纏い、半身は異形の竜と化していた。

「しょうがないからやるでやんすけど!」
「その意気です。では、お首を頂戴致しましょう」
 敵に目をつけられたからにはやるしか無いと、腹をくくった直後に、ジャバウォックは容赦なく全力の攻撃を仕掛ける。悪意により強化された斬竜剣「ヴォーパル・ソード」が巨大化するのを見たとき、刃櫻はさっそく青ざめる羽目になった。
「だ、誰かー?!」
 実に三下チックに情けなく助けを求める刃櫻に襲いかかる巨大な刃――その刹那、飛び出してきた雛菊・璃奈(魔剣の巫女・f04218)が一振りの魔剣で斬竜剣を受け止める。
「必ず先制されるなら、逆に利用すれば良い……」
 彼女が手にするのは報復の魔剣アンサラー。その刀身には悪意ある敵の攻撃を跳ね返す魔力が籠められている。まるで鏡写しのように反射された斬撃の威力は、そのままジャバウォックの元へと向かう。

「ほう。面白い剣をお持ちですな。ですが私の剣も負けてはおりません」
 反射された斬撃に斬り裂かれるよりも疾く、ジャバウォックは黒翼を羽ばたかせて身を躱す。そのまま空中より放たれる2度目の斬撃は、初撃よりもさらに鋭さを増していた。
「不味いでやんす!?」
「問題ないよ……」
 いつの間にか璃奈の影に隠れていた刃櫻が叫ぶが、璃奈は落ち着いて呪力のオーラを纏ったアンサラーを振るい、刃櫻を守りながら二度目の斬撃も跳ね返す。だがその直後、凄まじいスピードで急降下してきたジャバウォックの黒翼が、彼女の肌に微かに触れた。

「あなたの五感、奪わせていただきます」
 まるで分厚い黒布でも被せられたように、璃奈の視界は真っ暗になり、音も微かにしか聞こえなくなる。アンサラーでのカウンターを行うには防御のタイミングが重要――その機を見極めるすべを奪われた彼女に、三度目の斬撃が容赦なく振り下ろされる。
「来るなっす!」
 その時、刃櫻が咄嗟に投げつけたのは「パンク・ロック・ヘイズ・グレネード」。彼我の至近距離で炸裂した閃光手榴弾は敵の視界を眩ませて、斬撃の狙いを僅かに狂わせた。
 皮肉にも視覚を奪われた璃奈だけは閃光の影響を受けない。盲いた状態で直感のままに振るった魔剣は、辛くも斬竜剣を受け止め――反射された斬撃がジャバウォックを斬り裂いた。

「ぐぅ……っ!」
 目潰しに加えて自らの斬撃を喰らわされ、顔をしかめて後ずさるジャバウォック。
 この機を逃さず璃奈は【九尾化・魔剣の媛神】の封印を解き、反撃に打って出た。
「我が眼前に立ち塞がる全ての敵に悉く滅びと終焉を……封印解放……!」
 巫女の少女の身体から放たれる莫大な呪力。妖狐の証たる尾は九本となり、周囲には無限の魔剣が展開される。奪われた五感の補完として探知術式を起動した彼女は、空中に逃れていたジャバウォックをきっと睨みつけ、黒く染まった呪いの縛鎖を放った。

「鏡の国のアリスに出てくる魔竜ジャバウォック……ヒーローズアースや他の世界には行かせない……」
 九尾の呪力によって編み上げられた縛鎖は、蛇のように標的を地面に引きずり下ろす。
 ジャバウォックが剣で拘束を断ち切るよりも速く、展開されていた無限の魔剣の一斉射が、彼の全身に突き刺さった。
「貴方はここで止めてみせる……!」
「ぐぅ……ッ! いいえ、まだです!」
 焦りゆえにか語調を荒げながらも、黒き悪意を纏いし竜人は強引に呪縛を引き千切る。
 だが、その挙動にこれまでのような精彩は無い。璃奈が放った魔剣に宿っていた"終焉"の呪力が、猛毒のようにジャバウォックの体内に残留し、その身を侵蝕しているのだ。

「強き人々が住まう世界……ヒーローズアースに戦いの歴史を呼び戻すことが、私の使命……ここで終わる訳には参りません……!」
 立て続けに放たれる魔剣の掃射を、ジャバウォックは辛うじて切り払いつつ回避する。
 じわじわと身体を蝕んでくる終焉の呪力、目の前に立ちはだかる魔剣の媛神――窮地に陥った老剣士は決死の抵抗を見せるが、焦りのあまり見落としているものに気付かない。
「誰か忘れちゃいないっすか?」
「な……ッ!?」
 気がつけば"彼女"は背後にいた。これでもかとばかりに三下らしさを発揮し、初手の攻防でもほとんど璃奈の影に隠れっぱなしだった彼女――それゆえにジャバウォックも見失っていたし、気にも留めていなかったのだ。それが誤りだったと悟る、この瞬間までは。

「今日も張り切ってお仕事でやんす」
 音もなく忍び寄り、超絶の域に達した暗殺の技を奮う【夜霞の仕手】。流れるような所作で突き立てられた黒鞘の長ドス「パンク・ロック・キリング・エッジ」は、竜人化した鱗と骨の隙間に滑り込み、背後から心臓にまで達した。
「かは……ッ!!!?」
 驚愕に目を見開きながら喀血するジャバウォック。最高の暗殺をキメた夜桜は会心の笑みを浮かべながら脱兎の勢いで戦場より撤退する。(失敗したら謝ってる暇あるんすかね?)という不安が無事に杞憂になったことを喜びつつ。

「ま……待ちなさい……ッ!」
 逃げていく刃櫻を追いかける余裕はジャバウォックには無かった。暗殺のダメージにより大きな隙を晒した彼の真正面より、今度は璃奈が神速の歩法で一気に間合いを詰める。
「貴方はもう何処にも行かせない……ここが終焉だよ……!」
 アンサラーに代わって彼女が構えるのは屠竜の魔剣バルムンク。奇しくもヴォーパル・ソードとは似て非なる斬竜の剣であり、魔竜ジャバウォックを討つには最適のひと振り。
 呪力、膂力、速度――己の持てる全ての力を込めたその一閃は、凄まじい衝撃波を巻き起こしながら、過たず魔竜を断ち斬った。

「がは……ッ!!!」
 肩から胸、そして腰にかけて深々と斬り裂かれた傷から、どくどくと血潮が溢れ出す。
 当初の老紳士然とした落ち着いた振る舞いは、もはや消えかかっている。それは外面を取り繕う余裕すらもないほどに、ジャバウォックが追い詰められている証であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

シェーラ・ミレディ
ようやく出てきた猟書家だが……また随分と、危うい雰囲気の男だなぁ。
とはいえ怖気づいてもいられない。手早く片付けさせてもらおう!

敵の先制攻撃を盾で受け、『艶言浮詞』を使って疾風と治癒の精霊達を呼び出す。
これだけ近付かれたのなら五感を奪われるだろうが。僕自身が攻撃できないのなら、他のものにやってもらえば良い。疾風の精霊を「ほら、君たちの領域を悪意ある竜人が侵しているぞ。締め出して仕舞え!」とけしかけよう。
空は風の支配下だ。不細工な翼で飛ぶんじゃない!

反撃を喰らっても、どうせ感覚はないのだ。
治癒の精霊に応急処置を任せ、僕は守りを固めていよう。

※アドリブ&絡み歓迎


花盛・乙女
猟兵、花盛乙女。いざ尋常に。

見えざる絶対先制の一撃とは難解だな。
であれば転送直後から仕掛けを打つ必要があるか。
転送直後に【黒椿】を舐め起こす。
悔しいが貴様の協力が不可欠だ、頼むぞ。

限界まで煙の範囲を広げ、何かが触れれば黒椿に合図を出させる。
見えざる一手の挙動に反応できるようにしよう。
「怪力」により筋力を引き絞り「激痛耐性」「気合」にて多少の被弾は耐えるものとする。

さて、一手を過ぎればこちらの手番。
黒椿を刀に戻し、【乙女】も抜いて一気呵成に攻める。
「カウンター」からの「怪力」「鎧砕き」「2回攻撃」だ。
老体をいたぶる趣味はない。
神妙に羅刹女の刀の錆となるがいい!

■アドリブ連携歓迎です



「ようやく出てきた猟書家だが……また随分と、危うい雰囲気の男だなぁ」
 初めて相見えることになった猟書家、サー・ジャバウォックと対峙するシェーラ・ミレディ(金と正義と・f00296)の表情には警戒と緊張感があった。他世界に戦いの歴史を繰り返させようという危険思想に、敵対する猟兵相手にも紳士然とした振る舞い――底知れぬ輩だという印象は、こうして敵を追い詰めつつある今でも拭えてはいない。
「とはいえ怖気づいてもいられない。手早く片付けさせてもらおう!」
 そう毅然と言い放つ彼に並び立つのは、華やかな反物の戦装束を纏った羅刹の女剣士。
 家伝の悪刀を鞘より抜き放ち、凛とした眼差しを討つべき敵に向けて名乗りを上げる。
「猟兵、花盛乙女。いざ尋常に」
「……猟書家、ジャバウォックと申します。短き付き合いとなりましょうが、宜しくお見知りおきを、お二方」
 手負いの身体に『黒き悪意』を纏った老剣士は斬竜剣「ヴォーパル・ソード」を構えながら応じ、地面に落ちた侵略蔵書「秘密結社スナーク」に意識を向ける。持ち主の手を離れても、開かれたままの魔本はまだ力を残していた。

(見えざる絶対先制の一撃とは難解だな。であれば転送直後から仕掛けを打つ必要があるか)
 侵略蔵書より呼び出された見えざる怪物の気配を感じ取った乙女はこれに対抗すべく、少しだけ厭気に眉をひそめながら、手にした極悪刀【黒椿】の刀身をつうと舐め上げる。
「悔しいが貴様の協力が不可欠だ、頼むぞ」
『ヒヒ、オ前ガ俺ニ頼ミ事ナンザ珍シイ』
 からかうような飄々とした声がしたかと思うと、悪刀は煙の化生へと姿を変えて濛々と戦場に立ち込める。花盛流剣技【黒椿・乱形果】――それは花盛流初代の退治した悪鬼の封印を解き、使役する技である。
「限界まで範囲を広げろ、何かが触れればすぐに合図を」
『分カッテラァ』
 化生には化生を。視覚では捉えられないものの動きを察知するには、黒椿の鋭敏な嗅覚と聴覚が頼りとなる。見えざる一手の挙動に反応できるよう乙女自身も気を張り詰める。

「煙の魔物とは、面白いものを連れておりますな」
 見えざる気配と共に近付いてくるのは黒き悪意。【プロジェクト・ジャバウォック】により竜人形態となった男は、敵にスナークを警戒させたうえでの同時攻撃を狙っていた。
『上ダ、気ィ付ケロ!』
 怒鳴るような化生の警告に真っ先に反応できたのはシェーラの方だった。彼の周囲に展開された駆動盾"門番"が、半ば自動的に動いてヴォーパル・ソードの斬撃を受け止める。
 悪意により強化された威力を防ぎ切ることはできず、その滑らかな肌には浅からぬ傷が刻まれる――それを見た乙女が声を上げようとする前に、再び黒椿の一喝が響き渡った。
『丑寅ノ方角、疾イゾ!』
「……!」
 それを聞いた乙女が全身の筋肉を引き絞った直後、見えざるスナークの爪牙が彼女を引き裂く。無骨な胸当てと鍛え上げた肉体がダメージを軽減してくれるが、それでも軽傷とはいかない――走る激痛は気合で耐え、開いた傷は筋力で押さえつける。

「架空の怪物スナークと、悪意の怪物ジャバウォックの共演。ご堪能頂けましたかな」
 敵の初撃が終わってみれば、乙女もシェーラもけして無事とは言えない状態であった。
 特にジャバウォックの攻撃を受けたシェーラは、その交錯の瞬間に黒翼の接触も受けたらしく、五感がうまく機能していない。朧げな視界と聴覚では銃の狙いをつけることさえ困難だが――彼はそれを見越していたようにふっと笑みを浮かべ、静かに囁く。
「おいで、僕に手を貸してくれ」
 【彩色銃技・口寄せ・艶言浮詞】――周囲の無機物に精霊を憑依させ、使役する術技。
 シェーラが呼びかけに応えて疾風と治癒の精霊達が姿を現し、無邪気な微笑を浮かべながら戯れるように舞う。彼女らの起こすそよ風が、猟兵たちの傷を優しく癒やしていく。

「僕自身が攻撃できないのなら、他のものにやってもらえば良い」
 傷を癒やされたシェーラはにやりと尊大に笑いながら、まだ朧げにしか視えない目で空を見上げると、そこに浮いているジャバウォックを指差して疾風の精霊達をけしかける。
「ほら、君たちの領域を悪意ある竜人が侵しているぞ。締め出して仕舞え!」
 その瞬間、これまでの優しい風とは一転して、怒りに満ちた荒々しい風が吹きすさぶ。
 ジャバウォックの身体は瞬時に暴風に捕らわれ、大地へと強引に引きずり降ろされた。

「さて、一手を過ぎればこちらの手番。まずは返礼といこう」
 本体が降りてくれば次は自分の役目だと、一気呵成に攻め掛かるは乙女。その手には刀の姿に戻った【黒椿】に加え、母より賜った小太刀【乙女】で二刀の構えを取っている。
 スナークより受けた傷は、精霊の力により既に癒えている。万全の状態から振るわれた二刀は、何も無いように視える虚空を薙ぎ――一拍遅れて、悍ましい獣の悲鳴が上がる。
『一遍攻撃ヲ受ケチマエバ、コイツガ反撃ヲ合ワセラレネェ筈ガネェダロウ?』
「その通りだが、貴様が偉ぶるな」
 ヒヒヒと笑う悪刀を睨みつけながら、どさりと倒れ伏したスナークの前でひゅっと血を払い。次は貴様だと言わんばかりに、乙女は即座に転身してジャバウォックに接近する。

「スナークを一太刀で……!」
 乙女の卓越した技量にジャバウォックは思わず感嘆の声を上げながら、再び空に舞い上がろうとする。しかし怒れる疾風の精霊達は、悪意に満ちたその飛翔を決して許さない。
「空は風の支配下だ。不細工な翼で飛ぶんじゃない!」
「言ってくれますな……ッ」
 駆動盾で守りを固めたシェーラからの一喝に、老剣士は苦笑とも渋面ともつかない表情を見せる。この風を止めるためには使役主であるシェーラを倒さなければならないが、彼の側には治癒の精霊も応急処置のために控えている上――何より近付くだけの隙がない。

「老体をいたぶる趣味はない。神妙に羅刹女の刀の錆となるがいい!」
 裂帛の気魄を発して真正面より踏み込む羅刹の剣豪、乙女。戦場に咲き乱れる桜花の如く、その姿は勇ましくも美しく、両手に構えられた悪刀と小太刀が鋭い煌めきを見せる。
 羅刹の膂力と、先祖代々受け継いだ才覚と技量――その精髄を込めた二刀の閃きは竜の鱗をも砕き、竜人を十文字に斬り裂いた。
「ッ……お見事……!」
 己を斬った剣士と、翼を封じた精霊使いを称え、ジャバウォックは静かに膝を突いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ヴィクティム・ウィンターミュート
いきなり最強がお出ましとはな
そう逸るなよ、老い先短いんだしさ
ここは若い奴に譲って引退は…しないよな、そりゃそうだ
じゃあ、始めようかね

まずは【落ち着き】、一挙手一投足を観る
飛翔能力=飛んで接近してくるのは必然
【第六感】と【見切り】をフルで働かせ、飛行の軌道を読む
仕込みクロスボウ高速展開、撃つのは【目潰し】の──フラッシュボルト
接近の瞬間、足元に撃ち込んで目を潰す…俺はサイバネだから効かん

眼がくらんでる間に、手札を切る
Void Link Start──『Lost Eden』
さぁ、戦争を始めようか
俺とお前の、長い永い殺し合いを
だが油断するなよ?一撃許せば『過去を削ぐ』ぜ
そう、お前の翼が焼かれるんだ



「いきなり最強がお出ましとはな。そう逸るなよ、老い先短いんだしさ」
 老体を労っているとはとても思えない口ぶりと表情で、猟書家サー・ジャバウォックを冷やかすヴィクティム・ウィンターミュート(End of Winter・f01172)。すでに満身創痍である竜人の男は、剣を支えにしてゆっくりと立ち上がりながら彼の言葉に応える。
「先が短いからこそ、生き急ぎませぬとな。私にはまだ役目があります故」
「ここは若い奴に譲って引退は……しないよな、そりゃそうだ」
 奇妙に捻じくれた魔剣の切っ先を突き付けられ、ヴィクティムは皮肉げに口元を歪め。
 そして右腕の義肢に手を添え、すうと一呼吸して気持ちを落ち着かせると、宣言する。

「じゃあ、始めようかね」
「ええ、終わらせましょう」

 黒翼を広げ、全身に悪意を纏って飛翔するジャバウォック。妖しく煌めく斬竜剣「ヴォーパル・ソード」の切っ先は、ヴィクティムの心臓の位置にピタリと狙い定めたままだ。
 対するヴィクティムは冷静に敵の一挙手一投足を観る。飛翔能力があるなら飛んで接近してくるのは必然――第六感と見切りのセンスをフルに働かせ、飛行の軌道を予測する。
(……ここだ)
 義肢に仕込んだクロスボウを高速展開。接近の瞬間、敵の足元を狙って撃ち込むのは――目潰し用のフラッシュボルト。闇を切り裂く鋭い閃光が、猟書家の視界を染め上げた。

「くっ……!」
 標的を見失ったジャバウォックのヴォーパル・ソードは、紙一重の間合いで空を切る。
 一方でサイバネ化されたヴィクティムの網膜は余分な光量を自動的にシャットアウトし、閃光を無効化する。敵の目が眩んでいるこの隙に、彼は用意していた手札を切った。
「Void Link Start──『Lost Eden』」
 その瞬間、焼け焦げた森の国を揺るがし、大地を貫いてそびえ立つのは『漆黒の塔』。
 まるで虚無そのもののような色をしたその塔から出てくるのは、漆黒の武具で武装した兵士達。其れは、楽園より来たりし殺戮者の軍団だ。

「さぁ、戦争を始めようか。俺とお前の、長い永い殺し合いを」
 異様な雰囲気を放つ新手に警戒を強めるジャバウォックの前で、ヴィクティムは高らかに宣言する。それと同時に漆黒の兵士達は鬨の声も上げず、無音のまま進軍を開始する。
「だが油断するなよ? 一撃許せば『過去を削ぐ』ぜ」
「我らオブリビオンにとっては天敵となる兵、ということですか」
 彼らが振りかざす武具は、『過去』を削り取る『漆黒の虚無』で形作られたもの。対するジャバウォックが目にも留まらぬ疾さで斬竜剣を振るい、十数名の敵を同時に斬り捨てる――だが、最初から生きてすらいない虚無の兵士達は、怯むことなく向かってくる。

「これは……なかなかに厄介な相手ですな」
 個々の力量では己に及ばずとも、よく訓練された歴戦の兵の実力をジャバウォックは感じ取っていた。ただの雑兵ならばまだしも、数百対一の兵力差はいかんせん大きい。そればかりか剣を交える回数が増えるにつれ、彼らは手強さをさらに増しているようだった。
「どうだ? 手強いだろう、そいつらは」
 戦闘時間の経過に応じて際限なく強くなる、虚ろな黒の兵士達。それらを出現させた『漆黒の塔』は、同時に全兵士のパワーソースとなって、無限にこれらを治癒し続ける。
 確実に仕留めない限り、何度でもそれは立ち上がってくるのだ――焼け焦げた森が虚ろな黒に悉く塗りつぶされていくその様子は、悪夢よりもよほど悪夢じみていた。

「なるほど……私が繰り返そうとする歴史よりも、この方々のほうが余程……ッ!!」
 ついに捌き切れなかった1人の兵士の攻撃が、ジャバウォックの黒翼を掠めた。その瞬間、まるで焼け落ちるように翼は消滅し、空との縁を失った竜人は地面に落下していく。
 その機を逃す一斉に殺到する兵士達。虚無の刃が猟書家の老躯を貫いていくのを、ヴィクティムは冷たく、そして剣呑な眼差しで、ただ眺め続けていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

ブルース・カルカロドン
アドリブ歓迎
千種(空葉・千種:f16500)と共闘

口調:カルカロドン(俺、お前、呼び捨て、か、だろ、かよ、~か?)
地の文の表記もカルカロドンでお願いします

・心情
ヒーローズアースを狙うなら容赦はしねえ
あそこはヒーローとヴィランの世界だ
過去の亡霊が割り込んでくるな

・行動
指定UCを使用
サメのロレンチーニ器官は電磁波を感知する
ましてサメ映画のサメのそれともなれば
たかが目に見えないだけの怪物を事前に見つけるなんて朝飯前だ

スナークを片っ端から食い殺しつつ
千種を乗せて猟書家の元に向かう

最大の目的はスナークを千種に近づけさせねえこと
不可視の怪物さえ抑えれば
猟書家本体は千種がなんとかするだろ
期待してるぞヒーロー


空葉・千種
アドリブ歓迎

カルさん(ブルース・カルカロドン:f21590)と共闘
…そういえば二人共ヒーローズアース出身だね?

確かにあの世界は常に争いが絶えないけど…
それはなにかしていい理由にはならない
外からなにかしようって言うなら追い出しちゃうんだからね!

とりあえずまずは丸太を無差別に振り回して
カルさんのUC発動までスナークが近づけないよう時間を稼ぐ
そしたらカルさんに乗って敵に接近
飛び降りながら【叔母さんに(無理矢理)取り付けられた巨大化装置】を発動して出会い頭に大きく振りかぶった電柱の一撃!
ヴォーパル・ソードが当たらないように間合いを取りながらひたすら電柱で薙ぎ払うよ!



「……そういえば私達、二人共ヒーローズアース出身だね?」
 焼け焦げた森の国に足を踏み入れた空葉・千種(新聞購読10社達成の改造人間・f16500)は、相方のブルース・カルカロドン(全米が恐怖した史上最悪のモンスター・f21590)と共に敵と対峙する。侵略蔵書「秘密結社スナーク」の所有者、サー・ジャバウォック――その企みは彼女らの故郷に虚構と疑念を蔓延させ、戦いの歴史を繰り返させる事。
「確かにあの世界は常に争いが絶えないけど……それはなにかしていい理由にはならない。外からなにかしようって言うなら追い出しちゃうんだからね!」
 ショルダーバッグから取り出した丸太をびしりと突き付けて、力強く彼女が宣言すると、カルカロドンもホホジロザメの外見相応の凶暴さを垣間見せながら凄みをきかせる。
「ヒーローズアースを狙うなら容赦はしねえ。あそこはヒーローとヴィランの世界だ、過去の亡霊が割り込んでくるな」
 普段の陽気で気さくな彼からは想像もつかない、今にも噛み殺されそうな剣呑な殺気。
 だが敵もそれしきで怯むような軟な相手ではない。片腕を失い、翼はもがれ、半死半生の様相ながらも、ジャバウォックの瞳には今だ闘志が灯っていた。

「亡霊、余所者、上等ではありませんか。誰かの許しや容赦を得ているならこのような悪事を企てはしません。貴方がたの世界のヴィランも、そういうものでありましょう?」
 老獪な笑みを口元に浮かべながら、ジャバウォックは地面に落ちた「秘密結社スナーク」を拾い上げる。開かれた頁の中から、見えざる"何か"が放たれる気配を2人は感じた。
 どこに居るか分からない、実在するかさえ定かではない、架空の怪物スナーク。しかし今、それは確かにこの戦場に存在していて、猟兵達を引き裂かんと爪を研いでいる――。
「来ないで!」
 "何か"が近付いてくる気配を感じた千種は、持っていた丸太をぶんぶんと無差別に振り回す。無論、隣のカルカロドンにだけは当てないようにだが――一体その細腕のどこにそんな怪力があるのか、突風を起こすほどの勢いで暴れられては、敵も迂闊に近寄れない。

「さあ、サメ映画を始めよう」
 千種がスナークの接近を牽制している間にカルカロドンはユーベルコードを発動する。
 悪の映画会社の改造手術によって獲得した、多様な【サメ映画のサメ】への変身能力。それによって得られる特性のうち、今回重要となるのは獲物を見つけるための感覚器だ。
「サメのロレンチーニ器官は電磁波を感知する。ましてサメ映画のサメのそれともなれば、たかが目に見えないだけの怪物を事前に見つけるなんて朝飯前だ」
 平時の3倍――およそ8メートル超の巨大ザメに変身したカルカロドンの感覚器官は、スナークの筋肉が発する微弱な電流をも感知し、その所在を克明に暴きだす。バカな獲物を見つけた彼は凶暴な笑みを浮かべると、千種に向かってヒレをしゃくった。

「乗れ、千種」
「うん!」
 千種は丸太をぽいと放り捨てて相方の背中に飛び乗ると、振り落とされないよう背ビレにぎゅっとしがみつく。それを確認したカルカロドンはグオォと雄叫びをひとつ上げ、スナークの群れに襲い掛かった。
『―――!!!』
 不可視の狩猟者である自分達が、まさか狩られる側になるとは思ってもいなかったのだろう。脳が発する電気信号からスナークの動揺や恐怖がはっきりと感じ取れる。まさしく映画のワンシーンのように、鋼をも引き裂くサメの歯は怪物共を容赦なく噛み散らした。

「なんと、なんと……彼の地には我らよりも余程恐ろしい怪物がいたようです」
 スナークが片っ端から喰い殺されていく光景を目の当たりにして、驚嘆を禁じえないといった様子でジャバウォックが呟く。開かれたままの侵略蔵書からは次々と新たな怪物が放たれるが、サメの捕食スピードにはまるで追いついていない。
(俺の役目はスナークを千種に近づけさせねえこと)
 邪魔な怪物を喰い散らかしながら、カルカロドンは千種を乗せて猟書家の元に向かう。
 不可視の怪物さえ抑えれば、猟書家本体は千種がなんとかするだろう――同じ猟兵としての、そして元ヴィランの立場から見た"ヒーロー"への信用が、そこにはあった。

「期待してるぞヒーロー」
「うん、やってみせる!」
 カルカロドンがギリギリまで敵に接近したところで、千種はその背から飛び降りる。同時にうなじのスイッチに指を当てて【叔母さんに(無理矢理)取り付けられた巨大化装置】を起動――172センチの少女が、サメをも上回る巨人に一瞬で"変身"する。
「私すっごく怒ってるよ! 電柱ぶつけちゃうんだからねー!!」
 出会い頭に叩き込まれるのは、大きく振りかぶった電柱の一撃。特別なギミックがあるわけでもない、自宅の近所から借りてきたタダの電柱である――しかしその長大さと重さは、巨大化した今の千種が振るうことで恐るべき凶器に一変する。

「……ッ!!!!」
 恥じらいをかなぐり捨てた豪快な一打が、邪悪な猟書家の老躯を横薙ぎに吹き飛ばす。
 骨と内蔵が潰れる音を聞きながら、それでもどうにか体勢を立て直すジャバウォックだが、構わず千種は次のフルスイングの構えを取る。身体の大きさは即ちリーチの広さでもあり、今の彼女が電柱をぶん回している限りヴォーパル・ソードの間合いには入らない。
「これが……彼の地に住まう、強き人々の力、ですか……」
 驚愕とも感嘆ともつかない呟きを漏らし、猛打の連続を辛うじて凌ぎ続けるジャバウォック。しかしついに限界に達したか、ヴォーパル・ソードの刀身が音を立てて砕け散る。
「これで、最後っ!!」
 その直後――渾身の力を込めて振り下ろされた電柱が、彼の脳天へと叩きつけられた。

「……架空の書は架空のまま消え去るが定めでしたか……ですが素晴らしい戦いでした」

 最期の瞬間、その場にいる全ての猟兵達の健闘を讃え、猟書家の老人は静かに微笑む。
 地に倒れ伏したその老躯は、二度と起き上がることはなく――折れたヴォーパル・ソードも、侵略蔵書「秘密結社スナーク」も塵のように崩れて、跡形もなく消え去っていく。
 それがヒーローズアースを狙う猟書家最強の男、サー・ジャバウォックの最期だった。

 かくして焼け焦げた森の国での戦いを制し、猟書家勢力の一角を崩した猟兵達。
 だが、アリスラビリンスの命運をかけた戦いはまだ終わらない。残る猟書家はあと6人――そして彼らに力を奪われていた「オウガ・オリジン」も、胎動を始めていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年08月17日


挿絵イラスト