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迷宮災厄戦⑲〜ザ・レイテスト・ヴィラン

#アリスラビリンス #戦争 #迷宮災厄戦 #猟書家 #サー・ジャバウォック

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「ついに来ました! 猟書家との戦いですよー!」

 シーカー・ワンダーはぽふぽふと拍手をすると、顔の画面にロマンスグレーな紳士の顔を映し出した。

 戦争の発端にして、オウガ・オリジンから力を奪った『猟書家』を名乗るオブリビオンたち。その一人にして最強の男、『サー・ジャバウォック』との決戦である。

「猟書家たちはみんなどこかしらの世界……それも戦争が終わった世界を狙っているみたいです。サー・ジャバウォックはヒーローズアース担当で、『秘密結社スナーク』っていう本を持っているんですよー!」

 猟書家たちが持つ侵略蔵書の一冊である『秘密結社スナーク』は、不可視の怪物スナークを召喚する能力を持つ。不可視ゆえにどのような姿をしてあるかもわからず、本の中身に何が書いてあるかも不明だが、相当な力を持っているようだ。

 加えて、サー・ジャバウォック本人もまた本ありきの相手ではない。青白き斬竜剣『ヴォーパル・ソード』を自らの手足のように振るい、最強の名に恥じない卓越した剣さばきで攻めてくる強敵である。

「サー・ジャバウォックがいる国は焼け焦げちゃった森になっているみたいですね! 見晴らしはいいと思いますけど、猟兵が来るのを想定してスナークを放し飼いにしてるみたいです!」

 スナークがどのような姿をした生物かは不明だが、不可視の身体を生かし、猟兵に不意打ちをしかけてくるであろうことは想像に難くない。この先制攻撃に対し、なんらかの対策が必要になるだろう。


鹿崎シーカー
 ドーモ、鹿崎シーカーです。猟書家最強が一番手ってそれヤベー奴なのでは?

●概要
 焼け焦げた森の国にて猟書家『サー・ジャバウォック』と戦い、これを撃破してください。フィールドには既に不可視の怪物であるスナークが召喚されており、猟兵に先制の不意打ちをしかけてきます。これをどうにかしてしのぎ、戦闘に持ち込んでください。

●ボス戦『猟書家『サー・ジャバウォック』』
 ヒーローズアースを狙う、猟書家最強の男です。侵略蔵書「秘密結社スナーク」と、青白き斬竜剣「ヴォーパル・ソード」で戦います。
 また、POWのUC『侵略蔵書「秘密結社スナーク」』で先制攻撃をしかけてきます。
 プレイングボーナス……敵の先制攻撃ユーベルコードに対処する。

 アドリブ・連携を私の裁量に任せるという方は、『一人称・二人称・三人称・名前の呼び方(例:苗字にさん付けする)』等を明記しておいてもらえると助かります。ただし、これは強制ではなく、これの有る無しで判定に補正かけるとかそういうことはありません。

(ユーベルコードの高まりを感じる……!)
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第1章 ボス戦 『猟書家『サー・ジャバウォック』』

POW   :    侵略蔵書「秘密結社スナーク」
見えない【架空の怪物スナーク】を放ち、遠距離の対象を攻撃する。遠隔地の物を掴んで動かしたり、精密に操作する事も可能。
SPD   :    ヴォーパル・ソード
【青白き斬竜剣ヴォーパル・ソード】を巨大化し、自身からレベルm半径内の敵全員を攻撃する。敵味方の区別をしないなら3回攻撃できる。
WIZ   :    プロジェクト・ジャバウォック
【人間の『黒き悪意』を纏いし竜人形態】に変身し、武器「【ヴォーパル・ソード】」の威力増強と、【触れた者の五感を奪う黒翼】によるレベル×5km/hの飛翔能力を得る。
👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

叢雲・凪
アドリブ・連携歓迎
一人称:ボク
二人称:キミ(年下) あなた(年上) お前(敵)
まずはスナークに備えてダッシュ+目立たない+忍び足を用いて枯れ木を飛び移るニンジャステルスだ。発見されなければチャンスはあるはず。
ジャバウォックを視認したら「あえて」彼の真正面に姿を見せる
「どうも サー・ジャバウォック=サン ジンライ・フォックスです」(木の上から軽やかに地面に着地し古式にのっとった奥ゆかしいオジギ【礼儀作法】)

そこからは一気に間合いを詰める。マフラーを引きちぎり夜天九尾を発動。近接距離まで接近しダッシュ+残像+リミッター解除+属性攻撃で畳みかけよう!

「イヤッー!!」(ニンジャシャウト)


神代・凶津
敵は猟書家最強だって?面白いじゃねえか。
腕がなるぜ、なあ相棒ッ!
「・・・どんな相手だろうと負けられません。」

敵は姿が見えねえ怪物を放ってるようだな。
へっ、いくら姿を隠そうとその殺気までは隠しきれねえようだな。
第六感を研ぎ澄まし、不可視の怪物から滲み出る殺気を感じ取り、動きを見切って敵からの先制攻撃を避けてやるぜッ!

攻撃を無事避けたら、相棒ッ!
「・・・転身ッ!」
鬼神霊装で高速移動して敵のスカした顔に左手の薙刀を叩き込んでやる。
その後は戦場を高速移動しながら右手の妖刀に破魔の雷撃を集束させた斬撃の放射を叩き込んでやる。
飛ぼうが逃しゃしねえぜッ!


【技能・第六感、殺気、見切り、破魔】
【アドリブ歓迎】


咎大蛇・さつき
…素敵なオジサマですね。
あなたの老練された技は如何なる愛を私に与えてくださるのでしょうか…
【アドリブOK】
姿が見えず、敵の動きを理解するには五感では難しい…
それでも私の髪の毛ですべての方向を感じるようにすれば…

ユーベルコードで敵の居場所を感じる必要があります。
もし攻撃を受けたとしても、サメの鋭敏な感覚で
その獣に対して攻撃を仕掛けましょう。
その後は、自身の髪の毛を利用してジャバウォックさん本人に
その獣を武器として攻撃します。


木常野・都月
一人称:俺
二人称:貴方
三人称:先輩や尊敬してるヒトはさん付け、それ以外は呼び捨て
名前:苗字さん


この人が、猟書家で1番強いのか。
逆に、この人を倒せたら、他の猟書家も倒せるって事だ。

まずは敵の先制攻撃から。
[野生の勘、第六感]で見えない敵の空気を切る音を拾いたい。
風の精霊様にも協力して貰いたい。
音を頼りに氷の精霊様の[属性攻撃、高速詠唱、カウンター]で、見えない敵の迎撃したい。

見えない敵がやっかいだ。
あまり時間はかけたくない。
UC【精霊おろし】で手早くおじさんの方を倒したい。

おじさんを倒せれば、見えない敵も消えるかもしれない。

必要に応じて、杖からダガーとエレメンタルダガーを持ち替えたい


櫻庭・阿山
不可視の怪物とは厄介なペットを飼ってるもんだ
もっとも『視る』ことに関しちゃ、あたしは誰にも負けやしないよ!

●先制攻撃
本体である義眼の【視力】は不可視の物すら見通せる
姿さえ分かれば不意打ちも効果半減以下さ。避けることも可能さね
味方にも場所を教えて協力するよ

●戦闘時
五感を奪われちゃたまったもんじゃない
こっちより早いとなっちゃ、攻撃を見切ってギリギリで避けつつ反撃していくしかないだろうね
舌が掠れば『舌艶擦り』の効果で恐怖を与えられる
それが一瞬だろうと、積もり積もれば徐々に動きは落ちて行くはずさ
攻撃は他に任せて、たっぷりと恐怖ってもんを味わわせてやるよ

アドリブ・連携歓迎
あたし、お前さん、名前呼び捨て


ロニ・グィー
【pow】
アドリブ・連携・絡みも歓迎!
ボク・キミ・彼ら(彼女ら)・~くん

キミが今回の中ボスの中じゃ最強なんだって?
最初にやられる中ボスキャラの言いそうなセリフだね!

周りには何も無いっと…
じゃあ思いっきりやるね!
特大のドリルボールくんたちを横並びにゴロゴロ転がしていってローラー作戦で戦場のスナークくんたちをぶっ潰していこう!
うまいこと潰れなくても時間稼ぎ・囮には十分!
まさかついでに潰されてたりなんてしないよね?
ドリルボールくんたちがゴロゴロ転がってるのに紛れてジャバウォックくんに近づいてー……UCでドーンッ!!

あ、ところで秘密結社スナークってどんなお話なの?
それって面白い?


玉ノ井・狐狛
※アドリブ/連携などお任せ
一人称:アタシ
呼称(敵):お貴族サマor騎士サマ、閣下、アンタ

🛡️
不可視の怪物、ねぃ?
スナークとやらはよくわからないが、つまり、「見えない」だけか?
実体があるんなら、そりゃァ見えてるのと同じだぜ
動くためには、地面なり障害物なり、あるいは空気なりとの干渉が確実に発生する
干渉物側の変化を察知すれば問題ない
▻見切り▻視力


さて、せめて道具くらいは格を揃えさせてもらおうか
固いコト言うなよ
UCで効果的な武器(ヴォーパルソードを想定)を召喚
これで正面から――戦っても、まァ分は悪いだろうが
出せるのが一振りだけとは言ってないぜ
二本目以降で虚をついて有効打を狙う

年だろ、引退しときな


久遠・翔
アドリブ絡み歓迎


ヒーローズアースは俺の出身じゃない
だがそこで数々のヒーロー達と絆を結んだ…そんな世界を脅かす存在を許してなるものか…!

不可視の生き物でも足音や息遣い、それに気配や羽音と何かしらの反応はあるはず
ならば聞き耳・第六感・視力を駆使して相手の居場所を探り苦無を投げ、囲まれたと思ったらなぎ払いで攻撃
多少の傷ですが…毒使いの麻痺毒が効けば儲けもの、多少の隙さえあればUCを発動できる

覚悟しろ
そして刮目せよ!
是こそが英雄「雷帝」の一撃也!

雷光に身を包まれ周囲に放電
その後一気に加速してジャバウォックに攻撃
雷帝と違い俺は攻撃力が少ない
だからフェイント・残像で正面からの攻撃だと思わせ背後から暗殺攻撃


イスラ・ピノス
怖そうな姿してる上に見えないものも相手しなくちゃいけないんだね。
あんまり強いとは言えない僕だけどやれるだけのことはやるよ。

先制攻撃が来るって分かってるなら見えないなりに備えは出来るよね。
結局は第六感頼みだけど戦場についたら早速ジャンプ!
すぐに仕掛けてくるにしても見えないことに自信あれば真上からは来ないよね
跳んでる間にシェイプ・オブ・ウォーターを使おう。

深海にしちゃえば見えなくても分かるし、怖いボスの剣も遅くはなるだろうし、なにより僕がすごく速くなる。
怖かったら無理に近づかないよ。
持てる武器で遠近その都度選んで攻撃し続けるよ!

『アドリブ歓迎 僕・あなた・さん付け・苗字さん漬け』


高砂・オリフィス
サイキョーの奴を倒せば、あとあとラクってわけだねっ。あははっ! みんなあったまいー! テンション上げてこ、笑顔笑顔、声出してこー!

サイキョーなんでしょっ、ぼくの必殺技受けてみてよ! 蹴り技! 
いきなりそっちの不意打ちー!? そりゃま一気にばたんきゅかもしれないけど、けどね?
拳の封印解除! 普段からセーブしてた生命力を一気に解放して回復、大復活!! 鍛えた成果は裏切らないっ
手の甲に宿るこの龍紋こそが高砂流神拳の証なのだ! はい、拍手! 盛り上がるところー!

うん
じゃあ、真面目にやるね?

ぶっ飛ばす



 アポカリプス直後じみて夜に焼けた森の一角が、突如として天高く爆煙を噴き上げた! さらにその近くで幾度も響く衝撃音と爆発を切り立った丘の上から眺めていた猟書家『サー・ジャバウォック』は、ゆっくりと背後を振り返った。
「おや。随分と早いお着きのようだ」
 老年の紳士が視線を向けた先、森の枝から跳んだ影がサー・ジャバウォックからタタミ6枚分離れた位置に降り立った。
 逢魔ヶ時めいた黒橙色のコートに狐面をつけ、黒い稲妻で出来たマフラーからバチバチとなびかせた叢雲・凪(断罪の黒き雷【ジンライ・フォックス】・f27072)は両手を合わせてアイサツする。
「ドーモ、サー・ジャバウォック=サン。ジンライ・フォックスです」
 真っ直ぐ相手を見据えてのオジギ! サー・ジャバウォックは左手に持っていた本を右脇に挟み、そのまま左手を右胸に当ててアイサツを返した。
「ドーモ、ジンライ・フォックス=サン。私は猟書家のひとりにして最強と詠われた者。サー・ジャバウォックです」
 ZZZZZT! 凪のマフラーが威嚇じみて黒い電光を散らす。それを片手でつかんだ凪は左足を踏み出してカラテを構えた。サー・ジャバウォックは優雅に頭を上げると、右手を腰に吊った剣の柄尻に置く。
「ふむ……。どうやら、辿り着いたのはあなた一人のようですね。他の猟兵たちは、我がスナークと斬り結んでおられる様子。燻り狂ったバンダースナッチの目を、一体どのように誤魔化したのか……後学のために、お聞きしても?」
「なんてことはないよ」
 凪はつっけどんに言い、黒雷のマフラーを引き千切る! マフラーの切れ端は悲鳴じみた甲高いサウンドと共にコートの裾が浮き上がり、凪の腰と背中の間から黒い稲妻の九尾が吹き出して顕現した!
「ステルスダッシュで駆け抜けて来た。ニンジャだからね」
「……成る程」
 薄く微笑んだサー・ジャバウォックは三重渦の鍔持つ蒼剣を引き抜き、小脇に挟んだ本を左手で引き抜いた。刃に青白い火花が咲き誇っては散っていく!
「我がスナークの目を盗み、私の元まで馳せ参じたその忍び足は称賛しましょう。しかし一人で私の前に立ったその慢心、無明の中にて後悔させてあげましょう。良いですか?」
 サー・ジャバウォックは背を伸ばしたまま腰を落とし、竜翼と化したマントの左半分を大きく広げる。対する凪は獣めいて両手を地に突き、黒雷の九尾を扇状に展開し巨大化させた! サー・ジャバウォックは静かに言う!
「スナークは、ブージャムなのです」
「……イヤーッ!」
 二人の姿が掻き消え、丘の上に黒と蒼の光が螺旋状に吹き上がった!
 一方でサー・ジャバウォックの丘から離れた場所で、再び粉塵が大地を打ち砕いて噴出! 煤のように黒ずんだ煙の中から飛び出した久遠・翔(性別迷子・f00042)はケタケタ笑うロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)の首根っこをつかんで走る!
「あははははははは! すごーい! ホントに見えないなんかが居るんだ!」
「喜んでる場合じゃない!」
 翔はロニを一括すると斜めに跳躍! そこにあった木の幹を蹴って方向転換した直後、彼が足場にした木が一人でに圧壊した! 翔は肩越しに背後を見、虚空から響く獣の息遣いに耳を澄ませる!
「そこだ!」
 翔は爪を立てるようにしてベルトの苦無四本のリングに指を通して一気に引き抜く! 獣の息遣いが聞こえた場所に向かって振り返りながら苦無を投擲! 黒鉄の刃は何も無いはずの宙に突き立ち、絶叫を迸らせた!
「ARRRRRRRRRRRRRRRRRGH!」
「おっ、当たったねえ! お見事!」
「なんとかな……。都月、頼んだ!」
「わかった」
 返事とともに、翔の背後で木常野・都月(妖狐の精霊術士・f21384)が降り立った。輪郭を淡い翡翠色に光らせた狐耳をひくひく動かし、手にした杖を高く掲げる!
「精霊様!」
 杖先に埋め込まれた宝石が緑から青に変色し、都月の周囲に冷気が渦巻く! 都月が杖を地面に振り下ろすした瞬間、竜巻状のブリザードが天を突いて一気に拡大! 焼け焦げた森の一部を一瞬にして氷河へ変えた!
「よし、これで……うん?」
 直後、横合いから伸びた複数の赤い髪束が都月の胴と両肩を縛った。森から飛び出した咎大蛇・さつき(愛を貪る鮫・f26218)と玉ノ井・狐狛(代理賭博師・f20972)が都月の真後ろで直角ターンを決めダッシュ! さつきの髪が都月をワイヤーアクションめいて引っ張る!
 同じようにさつきの髪に引っ張られた高砂・オリフィス(南の園のなんのその・f24667)は目を回しながらうわごとめいて呟いた。
「うー……不覚。一発でやられちゃうなんて……」
「だーから突っ込むなって言ったろうによ」
 狐狛が忙しなく左右に視線を配りながら言う。その横では、さつきが髪をヒュドラじみて無数の蛇の形にし周囲を警戒。毛先に伝わる微細な震動を感じ取り、さつきはギザ歯を剥いて微笑する。
「しっかりと追いかけてきていますね。そうまでして私たちを愛そうとしてくれるなんて……」
「けっ。さつきのお嬢ちゃんはともかく、アタシにボコられて喜ぶ趣味はねえよ」
「つれませんねえ」
 口をへの字にする狐狛の隣で、さつきは腰に帯びた剣を抜く。ノコギリ状の刃を持つそれをギラつかせ、狐狛と共に急加速! 先行く翔の真横に追い付くなり、二人は翔を挟んで背中合わせになった!
「ですが、私たちを無視するあなたたちはもっとつれません。せっかく愛し合っていたのに!」
「先に翔の嬢ちゃんぶちのめそうって魂胆なんだろ。見え見えだぜ!」
 さつきの一閃と狐狛の蹴りが虚空に直撃! 二人は剣と蹴り足を振り抜き翔に挟撃をしかけたスナークたちを後方に吹き飛ばした! そのまま一回転した二人を置き去りにして翔は猛ダッシュで森を駆ける!
「あら?」
「あっ、ちょ、おい!」
 きょとんとするさつきと制止する狐狛を背後に翔は走る。彼の手につかまれたロニは、仰向けのまま彼女の後頭部を見上げた。
「ねえねえ、お礼言わなくていいの?」
「す、すみません……後で!」
 赤くなった顔を片腕で隠しながら返す翔。目に焼き付いたさつきの胸元や蹴りの際に一瞬見えた狐狛の下着のビジョンを振り払おうと頭振った刹那、その前方で木々が吹き飛び地が抉れる! 翔は目を見開いてブレーキ!
「しまった……!」
 上昇気流めいた風の音が空に鳴る! 何かが縦に大きく伸びる気配。ガラスの天蓋が頭上を覆うような感覚に翔が凍り付いた瞬間、スナークの背後で鬼面を被った巫女服の少女が薙刀を振りかぶってハイジャンプした!
「ハッハァ! 透明化しててもそんだけデカデカと殺気出してりゃあ丸わかりってもんだぜ! 気張れよ相棒ッ!」
「……うん!」
 少女の顔面を覆う神代・凶津(謎の仮面と旅する巫女・f11808)が両目に赤い光を灯した。少女の頭部左右に赤い瞳の義眼が浮かび、老婆口調の童女声を響かせる。
「高さがー……四十九尺半ぐらいか。ちょうど真上まで来たね。このままぶった斬ってやんな!」
「おうよッ! 行くぜええええええええええッ!」
 少女が薙刀を振り上げた体勢で高速側転しながら落下! ホイールソーじみた垂直落下攻撃が見えざるスナークを真っ二つに引き裂く! 不可視の巨体が左右に分かれ森を押し潰した! 巫女服の少女が立ち上がる。
「……倒した」
「おう! だが油断すんなよ相棒。いくらぶっ倒したって食前茶程度のもんなんだからよ!」
「おや、よくわかってるじゃないか」
 凶津近くの木陰から櫻庭・阿山(無数の瞳を持つ魔妖・f14179)が姿を現した。周囲に浮かべた義眼の視線を忙しなく動かしながら、阿山は長い舌を蛇のようにくねらせる。駆け寄ってくる仲間たちの方を見て指を鳴らした。
「オリフィス以外、ある程度気配の察知は出来るようだが……まァ、百聞は一見に如かずってやつさね」
 阿山のふくらはぎまで届く桃色髪の中から無数の無機物眼球が飛び出し、追い付いてきた仲間たちの頭上や顔の横、額にひとつずつ浮遊する。都月は、黒い狐耳の間に浮かぶ義眼を不思議そうに見上げた。
「阿山。これはなんだ?」
「あたしの本体。……の、コピーさ」
 阿山はギザ歯を見せて笑う。
「視ることに関しちゃ、あたしは誰にも負けやしないよ! 狐狛は空気の流れなんぞを見切ってたようだが、スナークそのものが見えてるわけじゃないだろう? そいつをアテにしな! 勘やら耳やらよりはマシなはずだよ」
「ちぇっ。そこまでお見通しかよ」
 狐狛は悪戯っぽい笑みを返し、自分の元に来た義眼を指でつついた。阿山がケタケタと喉を鳴らした直後、さつきの髪がタコ足じみて八方に展開! 蛇を象った房のひとつが阿山の義眼を口に加えた。さつきの目が光る!
「おや、どうやら囲まれたようですね?」
 猟兵たちが互いに背を向ける形で円陣を組み、得物を構える。耳につく枯れ葉の擦れるような音、枝の軋む音、火種が踏み潰される音。襟首を離されたロニは地面に後頭部を打ちつけると、煽るように手を叩いた。
「あはははは! みんな頑張れー!」
「お前にも頑張って欲しいんだがな。そろそろ攻撃のひとつでもしてくれ」
 翔は居心地悪そうに身じろぎし、肩を右隣の凶津から左隣の都月に寄せた。巫女服から覗く白いうなじを赤らんだ顔でチラチラ見やる翔の対角線上で、オリフィスは腕を伸ばす。
「ずーっとお荷物でいるわけにもいかないからね! ここいらでいっちょ汚名返上! やってやるぞーっ!」
「前出過ぎんなよ、オリフィスの嬢ちゃん。さっきもそれで怪我したろ」
「あははっ! 二度も同じミスしたりしないさっ!」
 流し目をくれる狐狛に溌剌と返して身構えるオリフィス。スナークと、不可視の存在に包囲された猟兵たちの間で、張り巡らされたピアノ線の如く空気が緊張した、その時である!
「グワーッ!」
 空から悲鳴が響き、猟兵たちの輪の中央に人影が落下した! CRAAAAAASH! 吹き上がる黒い砂煙! 突如吹き上がった煙幕にどよめく八人が飲み込まれ、彼らを包囲していたスナークたちが後ずさる。
 焼けた空に浮いてそれを見下ろし、左翼を広げたサー・ジャバウォックは蒼剣の刃を改めながら微笑を浮かべた。
「これはこれは。私としたことが、狐狩りに気を取られすぎてしまったようですね。よもや、スナーク狩りに合流してしまうとは」
 剣を下ろし、コートを軽くはたく彼の身体に傷は無し。余裕の表情を浮かべたサー・ジャバウォックは、斜め下から吹きつける突風を見下ろした。翡翠色の風が黒い粉塵を吹き散らす! 都月は咳き込みながら呼びかけた。
「ごほっ、ごほっ! みんな、大丈夫か……!?」
「はいはーい! ボク平気ー!」
 土煙から出て来たロニが陽気に手を振ってみせた。やや遅れて出て来た翔が、口元を手の甲で押さえながら軽く咳をし、虚空を見上げる。悠然と浮遊したまま動かないサー・ジャバウォックを睨み、呟く。
「……驚いたな。本命からこっちに来てくれるとは思ってなかった」
「私も来るつもりはなかったのですがね。しかし、出会った以上は仕方ないというもの。このまま手ぶらで戻るのは……ええ、三流というものでしょう」
 サー・ジャバウォックは肩をそびやかすと、把持した本ごと左手を右胸に当てた。
「それではあなた方にもご挨拶。ようこそ猟兵の皆さん。我がスナークとの追いかけっこは楽しんでおられますかな? サー・ジャバウォックです」
 サー・ジャバウォックが慇懃に頭を下げた刹那、砂煙から凪が垂直に飛び出した! 黒い雷で出来た九尾の尾を螺旋状に編み上げ束ね、一本の大型雷槍を形成。前方回転の勢いで撃ち出す!
「イヤーッ!」
 ZGRAAAAAAAAAAAK! 空気をつんざきながらサー・ジャバウォックに迫る一撃! しかし優雅に頭を上げた老紳士は蒼剣を横薙ぎに振るい雷霆を打ち払った! 手の中で剣を回し、華麗に構え直す!
「さて、この通り。あなたは一人で来たわけですが、相手は曲がりなりにも猟書家最強と謳われたこの私。如何にも無謀と言えましょう。しかし折りよくお仲間と合流できたことですし……」
 サー・ジャバウォックのモノクルをかけた目が地上の猟兵たちに向く。切っ先でそちらを指し示し、サー・ジャバウォックは言い放った。
「ここはひとつ、九対一でお相手仕りましょう。全員一丸となっておいでなさい」
 猟兵たちは顔にそれぞれ、不敵な笑みやきょとんとした表情を浮かべた。目を丸くしたオリフィスが問う。
「えっ、いいの? ……九対一だよ?」
「もちろん。あなた方一人ずつの九連戦では、勝負にならないと思いますので」
「ケッ」
 答えを聞いた凶津は短く吐き捨てる。巫女服の少女が右足を大きく引き、薙刀を振り上げる形で引き絞った。凶津が目を赤く明滅させながら言う。
「上から目線で言ってくれるぜ。猟書家最強だって? 面白いじゃねえか。腕が鳴るぜ、なあ相棒ッ!」
「……どんな相手だろうと、負けられません」
 翔を挟んで凶津の隣、都月が杖の石突で軽く地を叩く。輪郭を溶鉄の如き赤橙色に染め上げて呟いた。
「この人が、猟書家で1番強いのか。逆に、この人を倒せたら、他の猟書家も倒せるって事だ」
「なるほど! あははっ! あったまいー! それじゃあみんなテンション上げてこ! 笑顔笑顔、声出してこー!」
 オリフィスは軽やかにステップを踏んだ。後方回転しながら獣めいた四つん這いで着地した凪も加えた九人を見、サー・ジャバウォックは剣を掲げる! 刃から広がり空を覆う蒼穹色の炎の光! 狐狛と阿山が声を張った!
「兄さん嬢さんさあ来るぜ! 閣下がギロチン振り下ろすってよ!」
「スナークどもが下がってる! まずは一撃、逃げおおせるよ!」
 次の瞬間、サー・ジャバウォックが剣を振り下ろした! 空から蒼の火柱が大地に突き立ち、ドーム状の大爆轟を膨れ上がらす! KRA-TOOOOOOOOOOOOOM! 森を焼きながら揺るがす炎の一撃!
「うふふふふ! あはははははははは!」
 青い炎の半球を斜めに突き破って飛び出す火だるまの影! 飛翔の速度で炎を引きはがしたさつきは、ヒュドラめいた髪に牙を剥かせてサー・ジャバウォックへ突っ込んでいく! 振りかぶられる鋸剣!
「熱く、滾るような愛ッ! もっと! もっとくださいな!」
「これはこれは」
 サー・ジャバウォックは微苦笑し、蒼炎まとう剣を振り下ろす! さつきの振り上げた鋸剣と正面衝突! 熱風が放射状に吹き荒れた! サー・ジャバウォックは涼しい顔で鍔迫り合いを数秒演じ、さつきを叩き落とす!
「曰く。女の子の機嫌がよいと、それはとても可愛いのです……と。全くその通りだと思いますよ、レディ」
 独り呟くサー・ジャバウォックは、頭上に剣の腹を差し込んだ。垂直落下したオリフィスの踵落としが刃に命中! オリフィスは蹴り足を押し込みながら頬を膨らませた。
「ちょっとお! サイキョーなんでしょっ!? ぼくの必殺技受けてみてよ! 蹴り技!」
「大したお転婆娘がそろったものです」
「わかるかジイさんッ!」
 サー・ジャバウォックから遠く離れた木々の中から青と紫の光が飛び出し、急角度の弧を描きながら老紳士へと疾る! 稲妻と暴風をまとった凶津と巫女服の少女!
「猟兵の女ってなァどいつもこいつも気ィ強くてよ! 最強なんてほざく奴にも臆さねえんだ! ぶち込むぜ相棒ッ!」
「……転身ッ!」
 SPARK! 雷光が凶津たちの姿を一瞬塗り潰して消える。装束と鬼面を漆黒に変色させた少女は目にもとまらぬ速さで加速し、左手の薙刀をジャバウォックの横面に振るう! だが刃は頬の数ミリ手前でピタリと停止!
「なん……だと……?」
「……っ!?」
 瞠目する凶津と少女! 蒼雷をまとった刃はサー・ジャバウォックの左手指二本が軽々と押しとどめていた! サー・ジャバウォックは口角を吊り上げ、一回転の斬撃! オリフィスと少女を吹き飛ばす!
「あいだッ!」
「……つっ!」
 斬り裂かれた胴から二人が血飛沫を飛ばす一方、サー・ジャバウォックは黒い竜鱗に覆われた左手の人差し指と中指の先を見下ろす。指の腹がわずかに裂けて血の雫をしみ出させていた! 親指を擦り合わせながら一言。
「ふむ。若気の至りも侮れぬもの」
「イヤーッ!」
 森の中から突き出した黒雷の剣がジャバウォックの胸をめがける! サー・ジャバウォックは軽く振った剣で凪の雷を弾き飛ばし、自らの剣を真っ直ぐ真上に突き上げた! ムチめいてしなり落ちる舌を貫く!
「失礼ですがレディ。私はキャンディではないのですよ」
 サー・ジャバウォックは剣を振り回し、舌の持ち主である阿山も一緒にぶん回す! 阿山は呻き声を上げながらも舌を思い切り引っ込め、その勢いでサー・ジャバウォックに突進! ジャバウォックは顎に手をあてがった。
「はてさて。剣は埋まった。左手は指を怪我して本を持つ。さて、私はどうすべきなのか」
「決まってる」
 空中に点在する阿山の義眼を足場に駆け上がった都月が杖をジャバウォックにかざす! そちらを見たジャバウォックの目を、赤橙色の光が射抜いた!
「ここで、倒れるんだ!」
 都月の杖先から巨大なマグマじみた矢が飛翔! 灼熱の一撃を前に、サー・ジャバウォックは左手だけで本を開いた。次の瞬間、彼の前で矢が不可視の壁に阻まれて爆発! 左右に分かれた炎が空を裂く!
「いえいえ、こういう手もあるのです。スナークで防御する、という手がね」
「くっ……!」
 顔を歪める都月に、サー・ジャバウォックは剣を振るって阿山を投げつける! 都月はとっさにバックジャンプして阿山をキャッチしバク宙! だがその零距離にサー・ジャバウォックが瞬間移動した!
「やらせるかっ!」
 炭じみた木の枝を足場に跳躍した翔がサー・ジャバウォックの背中に苦無を投擲! サー・ジャバウォックは苦無を竜の尾をしならせて弾き返すと、阿山と都月をまとめて刺し貫いた! そのまま地面に振り落とす!
「都月さん、阿山さん!」
 四つ足で疾駆した凪が地を蹴り急加速! 都月と阿山の真下に滑り込んで黒雷の九尾で捕らえた彼女の目前に、サー・ジャバウォックが降り立った! 凪は跳んでブレーキをかけ、体を振って尻尾のスイング!
「イヤーッ!」
 サー・ジャバウォックはリンボーダンスめいて上体をそらしてこれを回避! 直立姿勢を崩さないままフェンシングの構えを取った! 凪の面、都月の耳、二人の尻尾を見てジョークを零す!
「狐のワンペア」
 VANISH! 突風じみた踏み込みからの刺突が飛び退いた凪の右頬を部分を打ち砕く! 破砕した部位から黒く放電しながらのけ反る凪の尾の先、阿山の舌が不意打ち気味にジャバウォックの喉笛を狙った!
「おっと」
 剣で舌を斬り払ったサー・ジャバウォックは尾で地面を叩いて跳ね上げさせ、オリフィスの流星跳び蹴りを絡めとる! 体ごと一回転してオリフィスを凪たちの方へ投擲! 体勢を崩した凪をオリフィスが吹き飛ばす!
「グワーッ!」
「うぎゃっ!」
 砲弾のように飛んだ二人は後方にあった木を激突粉砕! その時、サー・ジャバウォックの左足元に身を沈めた狐狛が、右側頭部を狙える位置に翔が肉迫! それぞれトランプとククリナイフで斬りつけにかかった!
「お貴族サマのそっ首!」
「もらったッ!」
 しかしサー・ジャバウォックは左足を前に出し、翼の打撃トランプを止め垂直に立てた剣でククリナイフを受け止める! その姿勢のまま、サー・ジャバウォックは首を振る。
「トランプに剣……いやはや、いけません。いけませんねえ、皆様。スナーク狩りの作法を知らないようだ」
「あん?」
 狐狛が片眉を吊り上げた瞬間、サー・ジャバウォックの尾が彼女の腹を突き上げる! さらにサー・ジャバウォックは翔のククリナイフを弾き、袈裟がけに一閃! 引き裂かれた衣服と晒しの下から血が吹き出した!
「ぐあぁっ!」
「スナーク狩りには、勇気と指貫と配慮とフォークと希望が必要なのです。どれひとつも欠けてはならない」
「それは困りましたわね」
 ゆっくりと振り向いたサー・ジャバウォックにゴルゴンめいて髪を無数の蛇の形に編み上げたさつきが肉迫! 鋸剣の柄を両手で握り、首狩り斬撃を繰り出す!
「私にあるのは愛だけですのでッ!」
 サー・ジャバウォックはバックステップで斬撃を避け、追撃に来る蛇髪を全て剣一本を閃かせて素早く斬り刻み切る! なおも狂喜の笑みを浮かべて迫るさつきの右二の腕を刺突で射抜き、斬り上げで吹き飛ばした!
「では、あなたにスナーク狩りはできません。いえ、あなた方に、でしょうか」
 サー・ジャバウォックは猟書を開くと、ページは文字を赤黒に光らせながら風に煽られるようにページをめくり始めた。サー・ジャバウォックを中心に土が激しく蠢き、空気がそこら中で渦を巻く!
「その声が最初にみんなの耳に届き、それは申し分なく本当のようだった。そして、笑いと歓声がほとばしり続けた。そして、不吉な一言。スナークは……」
 サー・ジャバウォックは詩の朗読めいた詠唱ののち、薄く笑みを浮かべて言った。
「ブージャムだった」
 直後、サー・ジャバウォックの周囲で粉塵の柱が連続で吹き上がった! 遥か高くまで持ち上げられた土が滝の如く落ち、地面に粉塵を巻き上げる。しかし土埃がなくなったそこには何もなく、ただ老紳士が一人立つのみ!
「そろそろエピローグと参りましょうか、猟兵の皆さん。あなた方は突然静かに消え失せて、二度と現れることはない」
 サー・ジャバウォックが本を閉じたその時、彼から遠く離れた地点に巨大な球体が現れた! 身を丸めたドラゴンめいて鋭利なトゲに覆われたそれと同じものがひとつ、またひとつと現れて着地! 地を揺らす!
「ほう……?」
 興味深げな声を零すサー・ジャバウォック。巨大球体は既に十二個、彼を遠巻きに包囲していた! そのうちひとつの上に立ったロニがペロペロキャンディ―を片手で揺らしながら左右に揺れてバランスを取る。
「キミが今回の中ボスの中じゃ最強なんだって? 最初にやられる中ボスキャラの言いそうなセリフだね! 行くよドリルボールくんたちっ! そーれゴロゴロゴローッ!」
 GYARRRRRRRRRRRRRR! 巨大な球はその場で高速回転しロケットスタートを決める! 玉乗りよろしく足を動かすロニと共にドリルボールは凄まじい速度で包囲を狭め始めた!
「どこにいるかわからないけど、まぁその辺にいるよね! ってことでどっか―――ん!」
 焼け焦げた森を抉りながら猛進したドリルボールは見えざる何かに正面衝突! 透明な血肉のしぶきが吹き上がり、凄まじい悲鳴が天を裂く!
『ARRRRRRRRRRRRRRRRRGH!』
「おっ、結構硬いね! これはちょっと時間かかるかも? ま、いいや!」
 ロニが玉乗りの足を速めて巨大球の回転を加速させた刹那、彼の後方から激しい雷鳴とともに稲妻が間欠泉めいて噴出! その根元で身を沈めた翔は光線の如く飛翔した! 二刀のククリナイフを交叉して不可視の巨体へ!
「阿山っ!」
「見えてるから安心しな。ま、見るまでもないと言えばそうだけどねえ」
 翔と共に並走する義眼から阿山の声! 翔は頷くと首を引っ込めた。雷の一閃と化した彼はロニの上を抜けスナークを貫通! サー・ジャバウォックの頭上に躍り出ると二本のククリナイフを振り上げた!
「覚悟しろ。そして刮目せよ! 是こそが英雄『雷帝』の一撃也ッ!」
「お相手致しましょう」
 余裕の態度を崩さないまま剣を構えるサー・ジャバウォック! 翔が放電するククリナイフ二刀を全力で振り下ろす寸前、サー・ジャバウォックは姿を消した! 翔の首と阿山の義眼がまとめて斬り裂かれる!
「こっちだッ!」
「む―――」
 サー・ジャバウォックがやや驚いた顔で反転斬撃! 彼の剣が真後ろに回り込んだ翔のあばらを捉えると共に、翔の紫電まとう苦無がサー・ジャバウォックの左胸を穿った! サー・ジャバウォックを睨みつける翔!
「捉えた、ぞ……ッ!」
「お見事です。では無明の闇にてお眠りなさい」
 SLASH! 蒼の剣閃で翔の肩から胸を斬り、黒い竜翼で叩き落とす! 次の瞬間、サー・ジャバウォックの視界が深い青色に染めあげられた! 口から湧き出す空気の泡。彼の周囲は深海めいて水に包まれていた!
「間に合ったっ!」
 サー・ジャバウォックの上空でイスラ・ピノス(セイレーンの冒険商人・f26522)がイルカめいて身をひねり、空に出来た海へとダイブ! 全身に炭酸泡状のオーラをまとうと、胸の前で両手を合わせる!
「捕まえたよ、サー・ジャバウォック! ここらの空域は全部、僕の海域だ!」
「これは……少々参りましたね」
 サー・ジャバウォックが呟いた直後、地上から凶津と凪がミサイルめいて空に飛び出す! 黒と蒼の螺旋を描いた雷は空の深海に囚われたサー・ジャバウォックを一直線にめがけた!
「なんだかよくわからねえが、ともかく援軍の到着らしいな! 今がチャンスだぜ相棒! あの海ごと蒸発させてやろうぜ!」
「……決めるッ!」
 凶津に触発された巫女服の少女が薙刀を振りかぶる! その一方、凪は両手で黒雷のマフラーを引き千切り、九尾を巨大化させた! それらで自身を螺旋状に包み、自らを黒い雷霆と化す!
「ヒサツ・ワザ! イィィィィヤァァァァァァァッ!」
 二色の雷は速度を増し、甲高い空気の悲鳴と雷鳴をまき散らしながらサー・ジャバウォックへ一直線! イスラが胸の前で合わせた両手をゆっくり開くと、手の平の間に集まった水流がオーラと混ざって球を為す!
「僕まで感電しちゃいそうだし、一撃入れて退散させてもらうことにするよ。海の藻屑になれーッ!」
 イスラがオーラと海水で巨大な球を形成して振り上げる! サー・ジャバウォックは己の剣を一瞥すると、溜め息を吐いた。
「調子づいた以上、この手は使いたくなかったのですが。そうもいかないようなので、使わせて頂くとしましょうか」
 サー・ジャバウォックは右手の剣を軽く振って目の前に立てた。刃が青い光を放ち、イスラは不可思議そうに眉根を寄せる。水を伝って響くサー・ジャバウォックの詠唱!
「あぶりの刻、ねばらかなるトーヴ。遥場にありて回り振る舞い錐穿つ。総て弱ぼらしきはボロゴーヴ、かくて郷遠しラースのうずめき叫ばん」
 切っ先を垂直に突き上げた刹那、蒼い太陽じみた光がイスラの目を焼く! 泡を食ったイスラは全速力で退避しながら急浮上。一方のサー・ジャバウォックは掲げた剣を振り下ろす!
「ヴォーパル・ソード!」
 SLAAAAAAAAAAAAAAASH! 天を覆う海が真っ二つに裂け、爆発蒸発! 一瞬にして生まれた濃く分厚い白雲へ、凶津と凪は構わず突っ込む! サー・ジャバウォックは振り返りながら炎の斬撃を放った!
「今更そんなもんで退くかよッ!」
 啖呵を切る凶津の前に凪が滑り込み、一足先に加速して巨大な炎の斬撃を―――貫く! サー・ジャバウォックは無造作に剣を振り上げると、刃から塔の如き火柱を上げて一撃! CABOOOOOOOOOOOOOOM!
「グワーッ!」
 凪が蒼く爆発して跳ね飛ばされ、宙を舞う! 黒い雷の九尾が解けたところへ、サー・ジャバウォックは虚空に連続斬撃を刻んだ。遠く離れた凪の身体が連続で爆発に包まれる! それを肩越しに見た凶津が吠えた!
「おおおおおおおおおおおおおッ! 何しやがんだてめぇぇぇぇぇぇッ!」
「……やめて!」
 蒼雷の薙刀がサー・ジャバウォックに襲いかかった! 稲妻を刃の一点に集中した斬撃を、サー・ジャバウォックは剣一本で軽々弾く! 凶津と少女は雷撃に任せて高速斬撃の連打を仕掛けるが通じぬ!
「やはり、あなた方にスナーク狩りは早い」
 サー・ジャバウォックの斬撃から吹き出した蒼炎が凶津と少女を呑み込み、爆発と共に吹っ飛ばした! 直後、振り向きバックしたサー・ジャバウォックの顎先を巨大な舌が舐め上げる! 鬼火を足に灯して浮いた阿山!
「生憎と、あたしたちはスナーク狩りに来たわけじゃなくてねえ。……あんたを狩りに来たんだよ、貴族サマ!」
 大砲めいて放たれる舌! サー・ジャバウォックがこれを剣の腹で受けたその時、舌の上に着地したオリフィスが両拳のグローブを引っぺがす! 手の甲に刻まれた龍紋を赤熱させて舌の上を全力疾走!
「双頭の龍が今こそ吼える! 宇宙まで殴り飛ばしてやるから覚悟しろッ!」
 オリフィスは跳躍し、隕石じみた急降下パンチを仕掛ける! サー・ジャバウォックは蒼炎の斬り上げで迎撃! 空を塗り上げる業火に、オリフィスは右の拳を引き絞った!
「うりゃああああああああああああッ!」
 拳を繰り出すと共にオレンジの龍がアギトを開いて飛び炎に食らいついた! 龍が炎ごと爆散する中を突破したオリフィスはサー・ジャバウォックへ殴りかかる! サー・ジャバウォックはこれを剣の渦巻いた鍔でガード!
「ぬう……」
「ふっっっ飛べええええええええええええええええっ!」
 SMAAAAAAASH! 斜めに殴り下ろされるサー・ジャバウォック! マントの翼を広げて落下の勢いを殺し、着地した彼の背後から黄金色に輝く拳を振りかざすロニ!
「ちょっとぉ、ボクを忘れたりしてないよね!?」
 サー・ジャバウォックは振り向きながらの斬撃! SMAAAAAAAAAAASH! 蒼と金の衝撃波が周囲の木々をなぎ倒す! 剣と拳を挟んで屈託のないロニの笑顔を見ながら、サー・ジャバウォックは言った。
「もちろん、忘れてなどいません。誰一人として」
「そう? でもボク、キミのこと倒したら忘れちゃうかな!」
 ロニが隻眼を見開き、拳を振り切る! 後ろに跳んだサー・ジャバウォックの左右から巨大ドリルボールが急襲! サー・ジャバウォックは流麗な回転斬撃でこれらを斬り捨て、追撃に跳びかかってくるロニを見据える!
「その心配は不要ですよ。なぜなら、私が勝つからです」
「へえ。やってみてよ、自称最強さんッ!」
 二発目の光輝をまとった拳! サー・ジャバウォックはこれを一回転して回避し逆袈裟に斬り上げる! 胴体をバッサリと裂かれたロニの胸に剣の柄をあてがい、爆炎を噴射した! BOOOOOOOOOOOOM!
「や―――ら―――れ―――た―――っ! 都月くん任せたー!」
「精霊様っ!」
 軽薄なロニの呼び声を合図に、サー・ジャバウォックのワン・インチ距離に都月が着地! 右手に黒橙、左手に群青の光を宿したダガーの二刀流を構え、演舞の如き斬撃ラッシュを仕掛ける! 剣一本でいなすサー!
「風の精霊様! もっと速く!」
 都月の身体が翡翠色の光を帯び、刃を振るう速度を上げた! 激しくしのぎを削る金属音! サー・ジャバウォックは目を細めた。己の剣戟に誤差程度の遅延! 翼を広げて大きく飛び退き、枝の上に着地する!
「理由はわかりませんが……どうやら、時間をかけるのはこちらの不利のようです。このあたりで幕引きとしましょうか」
 サー・ジャバウォックは翼を広げて垂直に跳躍! 天高くで剣を突き上げると、彼を中心として炎の青空が広がった! 空を一面に染める爆炎を見上げ、狐狛が呟く。
「おーおー、あれが全力かい。いや、壮観壮観。……じゃ、せめて道具ぐらいは格をそろえさせてもらうとするぜ」」
 首をこきこきと鳴らした狐狛は肩幅に開いた足を引いて半身で構え、両手をだらんとぶら下げる。両手の平の間に渦巻く水流! 他方、空高くに浮遊するサー・ジャバウォックの周囲を円環状の海流が取り囲む! イスラ!
「何する気かは知らないけど、やらせないよっ!」
 海流の表面をサーフライドのように滑りながら、イスラは突き出した両手の平からマシンガンめいて炭酸水状のオーラ弾を乱射する! サー・ジャバウォックが片手間に本を開くと、それらは見えない壁にぶつかって霧散!
「足掻きなさい、滅びの時まで。歌いなさい、終わりの歌を!」
「歌のリクエストですか?」
 サー・ジャバウォックの周囲に展開したスナークたちを海流の中から飛び出した無数の赤い髪が絡めとっていく! 水飛沫を上げて飛び出したさつきは鋸剣でサー・ジャバウォックに斬りかかった!
「ならば共に愛の歌を歌いましょう!」
 しなる髪がサー・ジャバウォックに捕らえたスナークを投げつける! しかしサー・ジャバウォックの周囲に円形のバリアがあるかの如き光が飛び散り、さつきの斬撃をもガード! サー・ジャバウォックは剣を掲げる!
「悪あがきはここまでですか。ならば終焉の時です。この世で最も美しき終わりを以って弔いとしましょう!」
 その時である! サー・ジャバウォック眼下の森の一角から超巨大な水柱が吹き上がった! その根元には、身の丈のより遥かに大きな巨剣を大上段に構えた狐狛! ぷるぷると震える両腕で柄を支え、吠える!
「火を消すのは水って相場が決まってら。勝負と行こうぜ、騎士サマよぉ!」
「いいでしょう。燻り狂うこの力、とくとご覧あれ!」
 イスラは両手を指揮者めいて動かし、さつきを海流で絡めとり退避! サー・ジャバウォックと狐狛は、共に剣を全力で振りかぶった! ZGGGGGGGGGTTTTTTTOOOOOOOOOOOOOOOOM!
「かくて暴なる想いに立ち止まりしその折、 両の眼を炯々と燃やしたるジャバウォック、 そよそよとタルジイの森移ろい抜けて、どめきずりつつもそこに迫り来たらん!」
「火遊び厳禁、消火の時間だぜええええええええええッ!」
 二人が剣を振るい、星を焼き滅ぼす蒼炎とそれに抗する巨大瀑布が放たれた! 一点集中された大海の一撃は広く世界を押し潰さんとする炎のど真ん中に直撃し、急激に膨れ上がった!
 FABOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOM! 大海と炎が大爆発して水蒸気と化す! たちまち森を呑み込む熱い白霧。それを斜めに貫いた二発目の海流が再度剣を掲げるサー・ジャバウォックを襲う!
「これは……!」
 目を見開いたサー・ジャバウォックが極太の海流に呑み込まれる! 彼は腕で顔を庇うも大波はヴォーパルソードの炎を消し去った。地上の狐狛が二本目の剣で肩を叩く。
「悪いが、出せるのが一本きりたァ言ってないんでね。……歳だろアンタ。あとは若いもんに任せて引退しときな!」
 狐狛が言い捨てると同時、水柱に閉ざされたサー・ジャバウォックを凪、凶津、翔が包囲! 三色の雷が三方向からサー・ジャバウォックを照らし出す!
「さっきはボロクソ言ってくれたよなァッ! どっちが勝つのか……ここで教えてやるぜェッ!」
「トドメだ!」
 翔が裂帛の気勢を上げて二本のククリナイフを振り下ろして水柱ごとジャバウォックを切り裂く! 水の檻から露わとなった彼を蒼雷の薙刀が引き裂いたところで凪は九尾の先端をサー・ジャバウォックの胸に突きつけた!
「イィィィヤァァァァァァァァァァァッ!」
 黒い雷の尾がサー・ジャバウォックの心臓を貫き背中から飛び出した! サー・ジャバウォックの手中で猟書が蒼い炎に包まれ、一瞬で燃えカスとなって散る! サー・ジャバウォックを三色の雷光が飲み込み、そして!
「サヨナラ!」
 サー・ジャバウォックは、爆発四散した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年08月17日


挿絵イラスト