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海の底、月の標

#グリードオーシャン #お祭り2020 #夏休み

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#夏休み


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 年に一度、月を標に懐かしい誰かが彼方からやってくる。
 祝おう。僅かな出会いを。懐かしもう。かつての思い出を。
 また日々を続けるために。いつかの再会で、胸を張るために。
 送ろう。精一杯の笑顔で。手をふろう。心に区切りをつけて。


「グリードオーシャンの、深海の島へ、行ってみませんかー……」
 寧宮・澪がグリモアベースで猟兵に呼びかけている。
 透明で穏やかな海の底の島、トコ島。この島には、とある伝説がある。
 遥か彼方、空と海が交わる場所。そこには生まれる前の魂や死者の魂、神の住まう異界がある。海が凪いで空と交わる夜には、その彼方の国と通じるという。
 その伝説の一環で、年に一度、この時期の満月には死んだ魂が繋がった海から映った月を道案内に帰ってくると言うのだ。
 海は凪ぎ、夜空は晴れ、まあるい満月を映し出す。
 貝で作ったウィンドチャイ厶を飾り、特別な模様のガラスの光る珊瑚のランプを飾って目印に。
 町の中央では祭りの振る舞い料理と、帰ってくる魂を歓迎するかのように、静かな音楽が演奏される。
 その最中、僅かな時間だけれど、懐かしい誰かの姿を見れることがあるのだ。見れる姿はその海で死んだものに限らない、という。異界はどんな場所とも繋がっているのだから、と。
 月が沈む前には帰っていく彼らの幻影は、僅かな時間だ。言葉を交わすことはできないけれど、こちらの話を聞いてもらうのもいいかもしれない。
「その幻を、見にいくもよし……街を観光するもよし」
 珊瑚や貝殻、貝などに覆われた建物、夜光貝の道、巻き貝の展望台。貝のウィンドチャイムや特別な柄の珊瑚のランプの他にも、夜光貝や普通の貝、光る珊瑚や普通の珊瑚、海底の砂から作ったガラスなどを利用した、小物やアクセなんかを売っている。
 中央広場に行けば振る舞い料理も食べられるだろう。
「戦争で、お忙しい中ですが……もしよろしければ、来てください、な」
 よろしくお願いします、と頭を下げて、澪は道を紡ぐのだった。


霧野

 しっとりと幻との出会いを。
 よろしくお願いします、霧野です。

●シナリオについて
===========================================
 このシナリオは既に猟兵達によってオブリビオンから解放された島となります。
 このシナリオは【日常】の章のみでオブリビオンとの戦闘が発生しないため、獲得EXP・WPが少なめとなります。
===========================================

 深海に沈む島、トコ島。
 お盆のようなお祭りを楽しみませんか。
 元気にはしゃぐよりはしっとり楽しむ、といった感じです。
 お呼びいただければ島民がお話させていただきますし、澪も出ます。

●複数人で参加される方へ
 どなたかとご一緒に参加される場合、プレイングに「お相手の呼び名(ID)」を。
 グループ参加を希望の場合は【グループ名】を最初に参加した章にご記入いただけると、助かります。

●アドリブ・絡みの有無について
 以下の記号を文頭に入れていただければ、他の猟兵と絡んだり、アドリブ入れたりさせていただきます。
 良ければ文字数節約に使ってください。
 ◎:アドリブ歓迎。
 ○:絡み歓迎。
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第1章 日常 『猟兵達の夏休み』

POW   :    海で思いっきり遊ぶ

SPD   :    釣りや素潜りを楽しむ

WIZ   :    砂浜でセンスを発揮する

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 漂う泡を伝って潜り、月の光がさす不思議な深海の島へと辿り着く。
 どこまでも透き通った水は空と果てで繋がって、交わるような錯覚。
 そんな島で、静かに憩いの時間を過ごそうか。
秋山・小夜
◎アドリブ、○絡み(大)歓迎  
(可能であればマスターさんとも絡んでみたいと思います)

「夏休み、といっても、どうやって過ごしたらいいのでしょう…。」

夏休みというものをあまり知らないので、海沿いの砂浜を試しに裸足で歩きながら、十歳のころ病死した(設定上)母のこと、旅をしている最中に出会ってきた人々のこと、これからのことに考えをめぐらしてみる。

貝殻とかを見かけて、母と海に行ったことあったな、とか二人して泳ぎが苦手だったなとか、思い出がたくさんあるなぁ、とぼんやり考えたり、似たような習慣を持つ世界があったなとかをぼんやり考えながらぼんやりあるいていく感じで。




 秋山・小夜(お淑やかなのは見た目だけ。つまり、歩く武器庫。・f15127)は、裸足で島の縁を歩く。海沿いの泡に面した砂浜は月光に照らされて白く輝き、乾いた砂に足跡を残していた。
 小夜は悩む。
「夏休み、といっても、どうやって過ごしたらいいのでしょう……」
 彼女は夏休みというものをあまり知らない。何をしたらいいのか、悩ましい。今だって、試しに歩いてみているだけなのだ。
 砂浜を歩きながら、小夜はふと考える。死んだ人と出会えるという、幻のことを。
 そうであるならば、小夜が十の頃、病死した母にも会えるのだろうか。
 歩く先に、小さな貝殻を見つけた。そういえば、母と一緒に海に行ったこともあったな、と思い出す。
(二人して泳ぎが苦手だったな……砂浜で一緒に遊んだっけ)
 あの時もこんな貝殻を見つけたような気もする。思い出が繋がって、海以外に母と過ごした色んなことを思い出した。溢れんばかりの思い出に小さく笑う。
(思い出がたくさんあるなぁ)
 さくり、さくり、砂浜を歩く。
 それから、旅をしてきた中のことを思い出す。出会った人々を、死者が帰ってくるという似たような習慣のあった世界のことを。
 これからのことに思いを馳せる。戦い方、生き方、将来。漠然としていて想像できないこともあるけれど。
 とめどなく、ぼんやり考えていると、ふと人影に気づく。
 ここに送ってきた澪が月を眺めているようだった。
「こんばんは」
「はい、こんばんはー……どうかしました?」
 何か問題でも、と尋ねる澪に小夜は首を振る。
「何も問題はないです……あ、でも、ちょっと聞いてもいいでしょうか」
「はいー……?」
「夏休み、って何をしたらいいんでしょう」
 そう言われると、澪は首を傾げて。
「んー……好きなこと、していいと思いますよ。暑くないとできないこととか、普段でもできることとか……」
 他者に迷惑をかけないよう、自分の責任で自由にしていいのだ。戦いばかりの毎日に、一服の休息を。
 そんな風なことを言って、澪は小夜を見た。小夜なりに楽しんでいたその姿を。
「今の通りでも、もちろんいいんです……。参考に、なりましたかねー……?」
 逆方向にまた、首を傾げる澪小夜は笑う。
「はい。ありがとうございます」
 すぐに何をしよう、とは思い浮かばないけれど。
 何かをしてみよう、とは思えたから。

大成功 🔵​🔵​🔵​

灰神楽・綾
【不死蝶】◎
キョロキョロと見渡しながら街を歩けば
至る所に貝殻や珊瑚が使われているのが目につく
さすが深海の島だけあるね

優しい光を放つお洒落な珊瑚のランプに惹かれて
それが飾られてある小物屋さんに入ってみる
この島に来た記念に何かお土産買っていこうかな
手に取ったのは夜光貝を用いたペンダント
こんなに綺麗な宝石みたいな貝があるんだね
どう?似合う?

観光や買い物を済ませたら
懐かしい誰かの幻とやらに会いに行ってみようか
梓は誰に会いたい?
俺はね、母さんに会えたらいいなぁって
以前、別の島で出会った、亡くなった母親の幻
もう一度会えたらどう過ごそうかな
何を聞いてもらおうかな
そんなことを考えながら、梓と共に向かう


乱獅子・梓
【不死蝶】◎
祭りにも興味はあるが
せっかく初めて訪れた島なんだ
しばらく街の中を歩き回って観光するのも悪くない
昼に来ればまた違った見え方をするのかもしれないな

小物屋で綾がペンダントを付けて俺に聞いてくるのを
いいんじゃないかと返してやりつつ
見ているとだんだんと俺も欲しくなってきた
ただ、二人で同じものを一緒に買うのは
若干気恥ずかしいな…
綾が買った後、バレないようにそっと俺も購入

俺が会いたい幻か…
少し前、サクラミラージュでも会った
焔の母親のドラゴンだろうか
俺もだが、焔もまた会ってみたいだろう
同意を求めるように焔の頭を撫でつつ
そうか、綾も母親か…
人にとっても、竜にとっても
母というのは特別な存在なのだろう




 乱獅子・梓(白き焔は誰が為に・f25851)と灰神楽・綾(廃戦場の揚羽・f02235)は、祭りの風情を楽しむ前に、まずは観光に出た。せっかく初めての島だから、街を歩くのも悪くはない、と。
 月に照らされた深海の島を、綾はきょろきょろと見渡しながら、梓は焔を肩に乗せて、ゆっくり街を歩く。
 長い年月を海の底にあったせいか、建物の至る所を貝殻や珊瑚に覆われて元の島が何かはもはや判断がつかない。
 道を舗装するのも貝や砂を固めたものだ。石などはあまり見られない。
 街を照らす明かりも火ではなく、揺れない明かりを灯す珊瑚だった。硝子に包まれた腰の辺りの高さの街灯が、静かに街を照らしている。
「さすが深海の島だけあるね」
「昼に来ればまた違った見え方をするのかもしれないな」
 月光の中の静かな街を二人と一匹でのんびりと歩く。
 しばしゆっくり歩く内に、綾は街灯以外の柔らかな灯りを見つけた。柔らかな曲線を描くランプが飾られた小物屋のようだった。それに惹かれて綾は小物屋の扉を開き、梓もそれに着いていく。
 小さな店には優しい光の珊瑚のランプ、貝や硝子で作った置物、少し暗い位置に飾られた夜光貝のペンダントなど、小さめの品が少しずつ並べられている。
(この島に来た記念に何かお土産買っていこうかな)
 綾は、ペンダントを手に取る。貝殻の欠片を磨いて形作ったそれは、薄闇の中できらりと光っている。
「こんなに綺麗な宝石みたいな貝があるんだね。どう? 似合う?」
「いいんじゃないか」
「そう?」
 首元に当てて聞いてくる綾に、梓は適当に返す。それでも気に入ったのか、そのまま買いに行く綾を見送りながら、梓もペンダントを眺めていれば段々と欲しくなってきた。柔らかく光るそれに不思議と惹かれてくる。なんと言ってもお揃いだ。
(ただ、二人で同じものを一緒に買うのは若干気恥ずかしいな……)
 揃いのものが欲しいが、一緒に買うのはなんとなく気恥ずかしい男心。会計を済まして飾られたランプを眺めている綾を確認し、梓もペンダントをこっそりと購入した。
 小物屋を出て、街を一周した後、二人で幻に会えるという場所に向かう。
 そこは島のはずれ、島を包む気泡の側。月の光が梯子のように差し込んでくる静かな場所だという。
「梓は誰に会いたい?」
「俺が会いたい幻か……少し前、サクラミラージュでも会った、焔の母親のドラゴンだろうか。俺もだが、焔もまた会ってみたいだろう」
 サクラミラージュで、かつて仔を愛した赤い母竜の幻と出会っていた。もう一度、会いたい、と梓は言い、同意を求めるように、焔の頭を撫でる。キュ、と短く鳴く声が、その通りだと言うかのよう。
「俺はね、母さんに会えたらいいなぁって」
 以前別の島で出会った、綾と同じ色の瞳の優しげな女性の姿。あの時と同じような幻が見えるのだろうか。
(もう一度会えたらどう過ごそうかな。何を聞いてもらおうかな)
 そんな風に考える綾を見て、梓は少しだけ笑う。
(そうか、綾も母親か……人にとっても、竜にとっても。母というのは特別な存在なのだろう)
 二人で歩を進めて、島の端までやってくれば、赤い竜と紅い瞳の女性の幻が出迎えてくれた。
 彼女達に声は届かない。彼女達の声もない。あくまでも幻でしかないから。
 それでも、その姿は会いたかった姿そのものだった。
 彼らは月が沈む少し前までの僅かな時間、優しい時間を過ごすだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

神坂・露
レーちゃん(f14377)と。
一緒に幻を見に行きたいんだけど…いい?
きちんと説明してないけど頷いてくれたわ。
えへへ♪やっぱりレーちゃん…大好き~。好き。

観光も素敵だけど帰ってくる魂の方に興味あるわ。あたし。
香木店のお仕事で再会したあの人に…もう一度逢いたくて。
お話はできないみたいだけど…レーちゃんのこと紹介したいわ。
また逢えたらの話なんだけどね。逢えたらいいな♥あの人に。

逢えたらレーちゃんのことを沢山お話しするの。時間が許すまで。
本人が隣に居るんだけど気にしない。だってその為に来たんだもの。
今のあたしは肉体を貰って一人で彼方此方旅をして。
しっかり生きてるわ…って教えたい。もう逢えないあの人に。


シビラ・レーヴェンス
露(f19223)に同行。
詳しい説明はない。事情も知らんが付き添う。
露が珍しくとても真剣な表情だったからな。
今回は何も言わずに露に従おうと思う。
…だがひっつくのはやめて欲しいな。暑い…。

「…」
好む雰囲気の島だ。少し物悲しい…だろうか?
とにかく露に手を引かれるままに島内を歩く。
辿り着いた場所は…。
露は探す素振りを見せて男の前に私を連れていく。
会ったことがない男だ。誰なんだ。この男は。

露が笑顔で話しているところを見るに知人らしい。
というよりも親友や恩人のようなそんな対応だ。
私と会っていない頃の知り合いなのだろうな。
ふむ。露の顔は私の時とは全く違う表情だ。
…私の時以上にころころ変化があって面白い…。




レーちゃん(f14377)と。

 神坂・露(親友まっしぐら仔犬娘・f19223)は大好きな親友へとお願いをする。
「レーちゃん。一緒に幻を見に行きたいんだけど……いい?」
 その言葉にシビラ・レーヴェンス(ちんちくりんダンピール・f14377)はは頷きを返す。
(詳しい説明はない。事情も知らんが……まあ、付き添おう)
 それほどまでに珍しい真剣な表情だったから。最初は何事だろうか、と露の顔を不思議な気持ちになるほどに。
「えへへ♪やっぱりレーちゃん……大好き~。好き」
 ぎゅっと露は、あふれる感情の赴くままにシビラを抱きしめる。
(……ひっつくのはやめて欲しいな。暑い……)
 大変迷惑そうな顔のシビラの手を引いて、露は早速転移した。
 送り出されたその島は、深海に沈む島。不思議なほどに澄んだ海水は空とまじり、夜空の月を映して光が届いていた。
「……」
 珊瑚や貝殻で覆われて、元の世界の面影もわからない建物に、貝殻や砂を固めたもので覆われた道。風もないのにあちらこちらにいくつかの貝殻を繋いだウィンドチャイムや、特徴的な流線型の模様や意匠の光る珊瑚のランプ。
 深海にあるが故に、静けさが月光と共に染み透るような島だった。
(好む雰囲気の島だ。少し物悲しい……だろうか?)
 シビラはそんなことを思いながら、露に手を引かれて歩く。露は周りの風景よりも目指す場所があるのか一直線にそちらへと向かっていく。
 露は、願う。以前サクラミラージュで再会したかつての持ち主、遊牧民の姿のその人にもう一度逢いたい、と。
(お話はできないみたいだけど……レーちゃんのこと紹介したいわ。また逢えたらの話なんだけどね。逢えたらいいな♥ あの人に)
 辿り着いた場所は、島の端。泡に近しい月光が梯子のように降り注ぐところ。
 露が視線を巡らせて何かを探す素振りをする。すぐにその姿は見つかったようで、シビラの手を引いて、そちらへと駆け出して行く。
(会ったことがない男だ。誰なんだ。この男は)
 シビラには見覚えのない男は、遊牧民のような装いをしていた。露は懐かしそうにその男へと語りかける。
「また逢えた……! あのね、久しぶり!」
 露は懐かしい人に逢えたことに笑顔になり、そのまま嬉しげに話しかける。
 隣に立つシビラをとっても大好きで、一緒に何をしたか、どこに行ったか。本人が隣に居ても気にしない。ただ大好きな親友のことを、語り続ける。もう出会えないはずのかつての持ち主にシビラのことを語るために、そして露が彼に大切にしてもらったからこそ肉体をもらって、一人で色んなところに旅をして、大好きな親友と出会って、しっかり生きているということを教えに来たのだから。
 シビラはそんな親友の笑顔を見ていた。自分のことを語られるのは少しだけこそばゆいような心地になるが、彼女の表情を見ているうちに気にならなくなっていく。
(親友や恩人のようなそんな対応だ。私と会っていない頃の知り合いなのだろうな)
 笑ったり、懐かしんだり、大変だったと苦笑するような顔だったり。
(ふむ。露の顔は私の時とは全く違う表情だ)
 見ていて飽きない。普段シビラに向けないような表情をしていたりして新鮮な気持ちにもなるし、表情の変化も激しい。
(……私の時以上にころころ変化があって面白い……)
 月が沈む前に消える懐かしい幻と、親友達の一時の逢瀬。穏やかな時間は静かに、けれど少しだけにぎやかに流れていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

黒鵺・瑞樹
◎○

今回は観光中心かな。
光る珊瑚とか興味あるし、夜光貝なんかは海の世界ならではだろうし。
光る貝かと思ったけど螺鈿細工の材料か。螺鈿はこの間の宝探しで簪を見つけたからそれ以外かなぁ。
珊瑚のランプは気になるが…。買い物は面白そうなものがあって勧められたら買うかも。

この世界も、エンパイアとかも島国だからかな?
海の向こうに別の国があると信じられたのは。ニライカナイや常世とかな。
月を道案内にっていうのもまた。
空と海が接して、そこを行き来する太陽や月が標とされてもおかしくない気がする。

区切りもどちらかというと俺自身がつけなきゃならないもので、それももうつけたから。
それに見たい人が死者とは限らない。




 黒鵺・瑞樹(境界渡・f17491)は島を巡る。
(今回は観光中心かな。光る珊瑚とか興味あるし、夜光貝なんかは海の世界ならではだろうし)
 貝殻や珊瑚に覆われて、元の世界の面影など残らない建物、光る貝殻が埋め込まれ、目印のようにところどころが光る道、腰の高さほどに設置された、光る珊瑚のランプ。
  月を標に死者が帰ってくるというこの日に合わせて飾られた貝殻のウィンドチャイムに、独特な模様の珊瑚のランプ。
 深海の島らしい、独特な雰囲気を楽しみながら、瑞樹は目についた小物屋へと入る。
 そこには完成された品もあったが、いくらか材料も扱っているようだった。
(光る貝かと思ったけど螺鈿細工の材料か。螺鈿はこの間の宝探しで簪を見つけたからそれ以外かなぁ)
 艶めくオパールのような貝の加工が施されたアクセサリーや、組み合わせられる小さな飾りを眺める。
 その隣には、揺れない光を灯す珊瑚のランプも並べられていた。
 気になったので眺めれば、緩く曲げられた金属をグラデーションの硝子で囲い、中に珊瑚を入れているものがメインのようだ。この時期だけ、という月や花、流れる水のような模様を入れた硝子もある。
 それを見て、瑞樹はこの島の死者が帰ってくる、という伝承を思い出した。
(この世界も、エンパイアとかも島国だからかな? 海の向こうに別の国があると信じられたのは。ニライカナイや常世とかな)
 サムライエンパイアにも似たような宗教観や信仰を持った国があったように思う。
(月を道案内にっていうのもまた。空と海が接して、そこを行き来する太陽や月が標とされてもおかしくない気がする)
 けれど、死者の懐かしい幻は、瑞樹が見たい幻ではない。
(死者への思い、言葉……そういう区切りもどちらかというと俺自身がつけなきゃならないもので、それももうつけたから。それに見たい人が死者とは限らない)
 だから、今日は島を楽しもう。
 そう思って瑞樹は、島を観光していった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

影杜・梢


深海に沈む島、か
観光がてら一人で静かに街中を散策してみようかな
夜行の道や、お店なんかも気になるしね

今、街を行く人の中にも懐かしい誰かを探している人が大勢いるんだよね
そう考えると、変な気分になるよ

父さんと母さんに会えたとしても、話すほどの事なんてないよ
第1希望の大学にも合格できたし、貰った髪飾りも壊してない
……ご覧の通り、ボクは元気でやっているんだから
心配しなくて良いからさ
……いつかまた、会える日まで
ボクの人生が終わったその時に、全部話すよ

ま、死者に会えるとか、父さんと母さんの面影を見たとか
そんなこと……在るはずも無いんだろうけどさ
きっと、ぜんぶ都合の良い夢だ
少なくとも、ボクにとっては




 影杜・梢(月下故蝶・f13905)は一人、島の道を行く。
(深海に沈む島、か)
  砂を固め、飛び石のように光る貝殻を埋め込まれた道は案外歩きやすい。腰の高さほどの光る珊瑚の街灯は、梢の歩く道を、周囲を優しく照らしている。
 ゆっくり歩きながら、島を観光する。
 珊瑚や貝殻に覆われた小物屋には、やはり珊瑚や貝殻、砂を使った小物や土産ものが並ぶ。案外店ごとに特色があって、比べて見てまわるのも面白い。
 梢は貝殻のウィンドチャイムを飾り、独特な模様のランプを吊り下げた島を静かに歩く。時折、人ともすれ違う。
(今、街を行く人の中にも懐かしい誰かを探している人が大勢いるんだよね。──そう考えると、変な気分になるよ)
 気づけば島の端、泡の境目近くの砂浜に来ていた。
 月が梯子のように差し込むそこを、梢は歩く。死者の幻に会えるという話を思い出しながら。交通事故で他界した両親を想いながら。
(父さんと母さんに会えたとしても、話すほどの事なんてないよ。第1希望の大学にも合格できたし、貰った髪飾りも壊してない)
 その足が、ゆっくりと止まる。視線の先には男女の姿。 懐かしい笑顔で、優しくこちらを見守っているような、その二人の姿がぼやける。
(……ご覧の通り、ボクは元気でやっているんだから。心配しなくて良いからさ。……いつかまた、会える日まで、ボクの人生が終わったその時に、全部話すよ)
 梢は心の中だけで二人に話しかけて、踵を返す。
(ま、死者に会えるとか、父さんと母さんの面影を見たとか、そんなこと……在るはずも無いんだろうけどさ)
 そうきっとこれは、一晩だけの夢なのだ。頬に伝う何かも。胸の痛みも。
(きっと、ぜんぶ都合の良い夢だ。少なくとも、ボクにとっては)

大成功 🔵​🔵​🔵​

アリエル・ポラリス

お母さーんー! どこに居るのかしらお母さんー!!
我らポラリス四兄弟のお母さーん!
満月で人狼病の発作が辛いから早めに出てきて欲しいわお母さーん!

いやホントにめっちゃ辛いわ……。
でも、私はこの持参したカメラでお母さんを激写する使命があるの!
8年前に人狼病で死んじゃったお母さん……私はまだしも、ノエル、弟は顔もロクに覚えていないわ。
その上、猟兵じゃないから連れてきてもあげられないの。
だから! 此処でお写真を撮って、これがお母さんだよってノエルに見せてあげるのよ!
お母さーん! 出てくるまで叫ぶわよお母さーん!!

……お顔を見て、泣きそうになっても我慢なのよ。
私は、お姉ちゃんなんだから!




 アリエル・ポラリス(焼きついた想いの名は・f20265)は心の中で叫ぶ。
(お母さーんー! どこに居るのかしらお母さんー!!
我らポラリス四兄弟のお母さーん!)
 本当は声にして叫ぶつもりだった。けれどあんまりにも静かな島だったから、ちょっとだけ路線変更したのだ。
 煌々と輝く月の光が、光る珊瑚のランプが照らす道を足早に進む。周りを見ている余裕はない。
(満月で人狼病の発作が辛いから早めに出てきて欲しいわお母さーん!)
 息が上がる。凶暴な衝動が内側から湧き上がる。
(いやホントにめっちゃ辛いわ……)
 今すぐ月の明かりなど入らないどこかで、兄弟と一緒に丸くなって眠ってしまいたい。
 でも、とアリエルは持参したカメラに意識を向ける。
(私はこれでお母さんを激写する使命があるの!)
 8年前、人狼病で儚くなった母。少しずつ遠くなっていく優しい記憶。
(……私はまだしも、ノエル、弟は顔もロクに覚えていないわ。その上、猟兵じゃないから連れてきてもあげられないの)
 本当は会わせてあげたいけれど、それは叶わないから。
(此処でお写真を撮って、これがお母さんだよってノエルに見せてあげるのよ!)
 アリエルの足は止まらない。死者の幻と出会えるという、浜辺まで歩く。
(お母さーん! 出てくるまで叫ぶわよお母さーん!!)
 浜辺に月光が梯子のように降り注ぐ中、アリエルは懐かしい母の顔を見た。
 視界がぼやける。
「……私は、お姉ちゃんなんだから!」
 泣きそうになったのは発作が苦しいせいだ。懐かしかったり、甘えたいからではない。我慢だ。
 カメラで母の姿を写す。
 優しく笑う懐かしい姿が写真に、記憶に、留められるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

月舘・夜彦
【華禱】◎
魂が還る、ですか
倫太郎殿の言葉を反芻しながら手を繋ぐ

それならば誰に会えるのでしょう
少しの期待と、少しの不安
長く生きれば生きる程、見送った命も殺めた命も多い

少し目を伏せて歩いていると
遥か遠く、懐かしい気配を感じて顔を上げる
見えたのは私に剣を教えた師の姿

声に出さず驚いていると握られた手に力が籠ったのを感じて
私の師匠です、と彼に伝える

私に剣だけではなく、言葉や作法も……全てを教えてくれた方でした
そうした中で剣術と言えど人を殺める術を教える葛藤
老いて業を磨けぬ焦燥、老いぬ私への嫉妬
人間らしい感情を持った御方でした

その末に刃を交え、最期には剣を極めよと私に仰った
私は、彼に出会えて良かった


篝・倫太郎
【華禱】◎
魂が還ってくる……のを見に行こうぜ、夜彦
手を差し伸べてそう言って

いつものように手を繋ぎながら
誰と会えるんだろう?そう思いはするけど
喪った時の痛みも少し付いて来るから口に出さず

ふいに夜彦が足を止めるから
どうしたのかとその視線を追えば
知らない、誰か

尤も、長命で孤独なこの人が見送った命
その殆どを俺は知らないから
少しだけ強く手を握って寄り添って
黙って夜彦の言葉に耳を傾ける

あぁ、そうか……
夜彦に生きる道をくれた人だ
この人が夜彦に道筋を示してくれたから俺はこの人に出逢えた

『ありがとう』
声に出すことはせずにそう告げて
そっと夜彦にくっついて
還るその人を見送る

俺も、あんたの師匠に逢えて良かったよ、夜彦




 篝・倫太郎(災禍狩り・f07291)は、月舘・夜彦(宵待ノ簪・f01521)に手を差し伸べる。
「魂が還ってくる……のを見に行こうぜ、夜彦」
「魂が還る、ですか」
 夜彦はその言葉を反芻しながら、倫太郎と手を繋いだ。
 二人がいるのは深海に沈んだ島。海の水が透き通り、空と果てで交わって一つになり、月の光が島まで届く不思議な夜。
 腰ほどの高さの光る珊瑚のランプや、この夜のために飾られた特別なランプの照らす島を、いつも通りに手を繋いで歩く。珊瑚や貝殻で覆われた建物や、砂や光る貝殻を敷き詰めた道を見ながら、死者の幻と出会えるという島の端、泡の側の浜辺までゆっくりと肩を並べて歩いていく。
 夜彦の胸には、少しの期待と少しの不安。長く生きれば生きるほど、見送った命も、殺めた命も多いのだから。
 倫太郎の胸には、誰に会えるんだろう、という期待と疑問。けれど会えると言うならば、それは死んだ人。喪ったときの痛みも思い返して言葉にはしない。
 静かな島を、少し下を向いて二人で歩く。物哀しいような、不安なような心地を、手のぬくもりを支えにして歩く。
 ふと、夜彦が足を止め、顔を上げた。遥か遠くに懐かしい気配を感じたから。目を少し見開く。
 倫太郎がどうしたのかと視線を追えば、知らない男の姿。誰、と問うこともできた。けれど何も言わず、夜彦へ寄り添う。
(長命で孤独なこの人が見送った命、その殆どを俺は知らないから)
 追いつけない歳月を過ごしている彼の手を少しだけ強く握る。その手の力を感じて、夜彦がそっと呟いた。
「私の師匠です」
 それは夜彦へ剣を教えた師の姿。夜彦には懐かしいその姿に、彼は目を細める。
「私に剣だけではなく、言葉や作法も……全てを教えてくれた方でした」
 倫太郎は静かに夜彦の言葉を聞く。
「そうした中で剣術と言えど人を殺める術を教える葛藤、老いて業を磨けぬ焦燥、老いぬ私への嫉妬……人間らしい感情を持った御方でした」
 夜彦はヤドリガミだ。仮初の人の姿は老いず、ただ見送るばかり。けれど人ならば、いつまでも若く、剣の道も技も磨ける彼に焦り、羨むのは自然だったのかもしれない。
「その末に刃を交え、最期には剣を極めよと私に仰った」
 けれど、彼に出会ったからこそ、今に至る。ただ見送り憂うだけの存在から、刃を振るって守る侍へ。
 倫太郎は、ただその声を聞いている。そして、受け止め気づいた。
(あぁ、そうか……夜彦に生きる道をくれた人だ。この人が夜彦に道筋を示してくれたから俺はこの人に出逢えた)
 彼がいなければ、夜彦と出会うこともなかったかもしれない。自分の知らない夜彦のことを知る彼への羨望や嫉妬が少しだけあったけれど──それよりも、大きな気持ちがある。
(『ありがとう』)
 あんたがいたから、唯一無二に出会えた。盾になる、と己で決められた。そんな感謝を、声には出さずに告げた。
 二人の視線の先の男の姿が薄れていく。気がつけば月がだいぶ傾いて、空と海の繋がった場所に近づいていた。もう、還る時間なのだろう。
 二人で寄り添って、消えゆく彼を見送る。
 そっと夜彦が呟いた。
「私は、彼に出会えて良かった」
「俺も、あんたの師匠に逢えて良かったよ、夜彦」
 悼む侍を支えるように、彼の盾は言葉を返した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年08月17日


挿絵イラスト