迷宮災厄戦⑯〜大きなリンゴの実の中で
「しゅっしゅっ……うさっ!」
たらりと滴る黄金の蜜を避け、ボクシンググローブをしたバニースーツの女がしゅっとジャブを繰り出した。
蜜をぱちんと拳の中心で打ち付けると、次の蜜へと狙いを定める。
「ダメうさ! 1つの雫にワンツーを撃ち込むうさ!!」
アイパッチを付けた、やはりバニースーツの女が手本を見せるようにパンチを繰り出す。
「うぅ、でもお腹が空いて力がでないうさ……」
ぐきゅーと情けない音をしてバニーが周囲を見渡す。
ここは洞窟。しかし壁や天井は一般的な岩や土のそれではなく、一面黄色く彩られ、ざらついた固くも柔らかくもないしゃくしゃくした感じである。よく見れば、ところどころに歯形がついていて、じゅわっと甘い蜜が溢れている。
「ダメうさ! 今お前は減量中うさ!!」
アイパッチがぴしゃりと言い放った。
「うぅうー……」
しかし、甘い香りの誘惑はバニーの集中力を乱す。
「せ、せめて一口……」
バニーが壁を抉り取る。そしてそれを頬張ろうとしたその時、アイパッチがそれを奪い取ってしまった。
「忍耐うさ! そのハングリー精神が試合を制するうさ!」
アイパッチが檄を飛ばす。なお、何の試合なのかは不明である。
●大きなリンゴの実の中で
「皆様、おなかに自信はありまして?」
エリル・メアリアル(孤城の女王・f03064)が突如そんな風に猟兵達に声をかけた。
「迷宮災厄戦……皆様の活躍で徐々に戦場の制圧は進んでいますわ。けれど猟書家達に到達するには、もう少し頑張らなくてはいけないみたいですわね」
そう前置きをしたエリルが、次に目指すべき戦場を猟兵達に示す。
「というわけで、皆様に行っていただくのは……大きなリンゴの中となりますわ!!」
ばばーんとエリルが手を広げる。
「この世界の名前はアップル・バトル・フィールド。巨大なリンゴの実……そのものが国になっているんですのよ!」
それはお城ほどもある巨大なリンゴなのだという。そのリンゴは実際に食べることが出来、甘くてジューシーでとても美味しいらしい。
「そのリンゴの中に、今回退治するオウガが巣食っているようなんですの!」
オウガもオウガで、リンゴの中身を自在に食べて、自分達の基地を作り、思い思いの生活をしているのだ。
「今回戦うのはボクサーバニーというオウガの集団ですわ。なにやらジムみたいなものを作ってトレーニングに明け暮れているみたいですわね。なんでも試合がどうとか……?」
何故トレーニングをしているのかはわからないが、とにかく、その集団の元へと向かって倒せばいい、単純明快な依頼なのだが、オウガが拠点としているジムまで続く道は、細く、入り組み、迷路のように分岐している。そのまま進んではすぐに敵に見つかってしまうどころか、最悪挟み撃ちや待ち伏せ等も有り得るだろう。
だが、猟兵達のそんな懸念にエリルがちっちっち、と指を振った。
「最初に言いましたわよね? 皆様、おなかに自身はありまして?」
そう。この世界のリンゴは食べることが出来る。そして、食べることが出来るということは、トンネルを作ることも出来るということだ。
「つまり、皆様の力でリンゴを食べ進み、奇襲をしてしまえばいいんですのよ!」
大胆な発想である。しかも、拠点としているジムの大まかな位置は分かっているようなので、その方角を目指して掘り進めば、ほぼ間違いなくたどり着けるというのもポイントだ。
「オウガそれぞれの力はそんなに強くありませんの。ですから奇襲さえ成功すれば、簡単に撃退出来るはずですわよ!」
そう言うと、エリルのグリモアが輝き始めた。
「あ、リンゴを食べ過ぎて動けなくなっちゃった……なんてことはないようにしてくださいましね?」
そう付け加え、猟兵達はアップル・バトル・フィールドへと向かうのであった。
G.Y.
こんにちは。G.Y.です。
迷宮災厄戦もそろそろ中盤戦。今回もお手伝いさせて頂きます。
今回皆さんに向かって頂くのは、アップル・バトル・フィールド。
超巨大なリンゴを外側(皮)から食べ進み、敵の本拠地であるジムを目指しましょう。
ジムの大まかな位置は分かっているので、その方向へ食べ進めばまず迷いません。
リンゴを食べ進んで奇襲することがプレイングボーナスとなりますので、是非プレイングに盛り込んで頂ければと思います。
それでは、皆様のプレイングお待ちしております!
第1章 集団戦
『ボクサーバニー』
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POW : サンドバッグコンボ
攻撃が命中した対象に【ウサギ型の痣】を付与し、レベルm半径内に対象がいる間、【次々と現れる仲間達のパンチ】による追加攻撃を与え続ける。
SPD : ダーティサプライズブロー
レベルm半径内の、自分に気づいていない敵を【異空間からの奇襲によるパンチ】で攻撃する際、ほぼ必ず狙った部位に命中する。
WIZ : ハニートラップカウンター
【挑発】を披露した指定の全対象に【無防備にこちらへ近づきたいという】感情を与える。対象の心を強く震わせる程、効果時間は伸びる。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
リアナ・トラヴェリア
……。
(バターと砂糖と蜂蜜とアイスクリームとシナモンとコンロを持参)
まずはジムの直前にまで魔獣の顎で道を作ろう。
……で、道を開く前に落とし穴を掘るよ。掘ったらその上に薄い蓋をしておくね。私自身は飛べるからそのまま出ちゃおう。
落とし穴を作ったら、おびき寄せるための、焼きリンゴを作り始めるよ。完成したら、壁に小さな穴を開けて香りを送り込もう。焼きリンゴ自体は、落とし穴の蓋の上に置いておこう。
相手が引っ掛かって落ちたら、すかさず剣を構えて待ってよう。敵の頭が見えたら黒剣を思い切り振り下ろしちゃう。
何で皆そんなに体重減らす事にこだわるんだろう……?
アップル・バトル・フィールド。戦場全てがリンゴで出来たこの世界に、オウガ達が潜んでいるらしい。
壁となっている林檎を食べ進めれば、それがトンネルとなる。そのトンネルを使って奇襲が出来るのだと聞いたリアナ・トラヴェリア(ドラゴニアンの黒騎士・f04463)はまず、無言でバターと砂糖と蜂蜜。保冷剤を詰めたアイスクリーム、シナモン、コンロを持ち出した。
あ、これ完全に美味しい焼きリンゴをつくるやつだ。
「まずは……」
リアナは黒剣をリンゴの壁へかざすと、黒剣がまるで牙のような形に変質してゆく。まさしく、魔獣の顎である。
「さあ、食事の時間だよ!」
その言葉に解き放たれるように、黒剣ががぶりとリンゴの壁へ齧りついた。
「どんどん食べてね」
一心不乱に食らいつく黒剣によって、リンゴの表面はみるみるうちに穿たれ、人ひとりが容易に歩けるほどの横穴になった。リアナは黒剣を突き出しながら、オウガ達のトレーニングをしているというジムへ向けて、トンネルを掘り進めるのであった。
「うさ……おなかすいたうさ……」
ジムでは、ボクサーバニーがへなへなと腰を落としていた。
「ダメうさ! 忍耐うさ!」
「けどぉ~……」
アイパッチに窘められたバニーがぼやこうとしたその時。ぷん、と何かの香りが鼻をくすぐった。
リンゴの蜜とは違う、ジューシーで、香ばしくて、独特で……。
「な、なんのニオイうさ……?」
その匂いは徐々にジム中に充満し、アイパッチが思わずキョロキョロ周囲を見渡した。
「こっちうさ!」
一足先に、1人のバニーが匂いの元を突き止めたようだ。彼女が走り出すと、釣られて他のバニー達も追いかけ始めた。
「こ、こらー! こんなカロリーの高そうな匂い! 減量はどうするうさー!」
「も、もう我慢できないうさー!!」
アイパッチの制止を振り切って、バニーたちが走る!
「この穴の中うさ!」
バニーが見つけた穴に入り込むと、なんとそこには、砂糖と蜂蜜をたっぷりと塗って、バターでじっくりソテーされた上、シナモンまでふりかけられた焼きリンゴが置かれているではないか! しかも脇にアイスのパックと、ご丁寧にアイスを丸くくりぬく『アレ』……ことアイスクリームディッシャーまで備え付けられている!
原材料はもちろんこのリンゴだ。そしてバニーたちはこの甘いリンゴの味を良く知っている。そんな甘いリンゴにこんな調理を施されれば……。
バニー達の唾液腺がゆるゆるにゆるむ。減量中でお腹が減っている彼女達の理性は、もはや限界を迎えていた。
「うさー!!」
思わず飛び掛かるボクサーバニー。しかし。
「うさっ!?」
突如、地面が崩壊した! 哀れ、ボクサーバニー達は焼きリンゴごと落下してゆく。そしてその時、ボクサーバニーは天井から飛来する何かを目撃した。
「……!!」
それは、リアナであった。彼女が落とし穴を、そして焼きリンゴを美味しく焼き上げたのだ。
その後リアナは空中で待ち構えながら、バニー達が現れるのを待っていた。すべては、この瞬間の為に!
一閃! 穴に落ちたボクサーバニー達に黒剣の刃が振り下ろされた。リンゴをしこたま食べた黒剣はエネルギーが満ち満ちており、たった一振りで穴に落ちた全てのボクサーバニーを斬り伏せてしまった!
誰もいなくなった穴の底に着地したリアナは、一緒に落ちてしまった焼きリンゴを拾い上げる。うまい具合にお皿からは外れなかったようで、彼女はそれを一切れ頬ばる。我ながら、とても甘くておいしい。
「……なんで皆そんなに体重減らすことにこだわるんだろう……?」
オウガの考えることはよくわからない、とリアナは首を傾げるのであった。
成功
🔵🔵🔴
シャーロット・キャロル
ジムと聞いてちょっと興味が惹かれます。鍛えるのが好きな性分なのでどうしても気になっちゃいますね。
まずは本拠地へ向かわないとですね。ここは一つ【勇気】と【気合】でリンゴを食べ進んでやりますとも!
ジムへ到着したらまずは偵察。ジムを設備を見て試したくなる衝動を抑えつつ目指すはリングの中央!
「とぅ!マイティガール参上!私と試合したい方はかかってくるがいいです!」
とまずはヒーローらしく名乗り。バニー達がやってきたら【アルティメットマッスルモード】を発動します!
「ただし私は超ヘビー級ですけどね!!」
【怪力】を思う存分生かした超ヘビー級のパンチをお見舞いしてやりますよ!
※アドリブ大歓迎です。
「ジム……ジムですか」
予知で聞いた言葉に、シャーロット・キャロル(マイティガール・f16392)はうずうずと反応した。
彼女の趣味は何を隠そうトレーニング。猟兵となり、改造された今であっても毎日のトレーニングは欠かさないのだ。
とはいえ、今回そのジムは敵の本拠地だ。そこには当然オウガが潜んでいる。
「とにかく、まずは本拠地へ向かわないとですね!」
そう意気込んだシャーロットは、リンゴの壁へとかじりつくのであった。
「もっと、もっと打つべし、打つべしうさ!」
一方、ジムではアイパッチのボクサーバニーが熱心に指導をしていた。指導を受けているバニーがリンゴの果肉で出来たサンドバッグにパンチを打ち込み、残りの者はシャドーボクシングや筋トレをしているようであった。
そんなジムの壁に、ぼこっと指一本分の穴が空いた。そこからシャーロットは内部を覗き込み、偵察をしていた。
(中央のリングには……誰もいませんね」
こんもりとせり上がった四角いスペースがリングだろう。
「よぉし……とぉ!!」
シャーロットは一気に壁をぶち抜いた。
「とーぅ!!」
その勢いのまま、シャーロットはにリングを陣取ると、高らかに宣言した。
「マイティガール参上! 私と試合したい方はかかってくるがいいです!」
「じ、ジム破りうさー!」
アイパッチが叫ぶ。それにあわせて、血気盛んなボクサーバニーが我先にと前に出る!
「一人でやってくるなんていい度胸うさ!」
そのうち一人がリングに上がると、周囲のボクサーバニー達はリング外から見守る形となった。
「正々堂々勝負うさ!」
グローブを向けるボクサーバニーに応じて、シャーロットもまた拳を向ける。
ゴングが鳴る。第1ラウンド開始だ!
まず真っ先に出たのはボクサーバニーだ。素早いジャブをシャーロットへ打ち込もうとする!
(ふふふ、正々堂々なんてくそくらえうさ)
ほんのわずかでもパンチを当てた瞬間、周囲の仲間達がリングに上がって袋叩きにしてくれるはずだ。それを狙って……。
「う、うさっ!?」
ボクサーバニーの手が止まった。得体も知れないオーラを、シャーロットから感じ取ったからだ。その隙に、シャーロットが叫ぶ。
「アルティメットマッスルモォード!!」
むきっ!! シャーロットの全身がバッキバキに仕上がってゆく! その姿、まるでボディービルダーのよう!
「ふぅぅぅ……言い忘れていました」
まるで分厚く、高い壁のようになったシャーロットの姿にボクサーバニーが思わず後ずさる。
「あなたはミドル級? ウェルター級?」
その問いにボクサーバニーが答えるより前に、シャーロットが叫ぶ。
「私は、超ヘビー級ですけどね!」
BAGOOOON!! ボクサーバニーが吹っ飛ばされる!
「さぁ、次はどいつ!?」
シャーロットがリング外のボクサーバニーに顔を向けた。だが、その問いになかなか名乗り出る者はいなかったという。
大成功
🔵🔵🔵
テリブル・カトラリー
リンゴ、食べるのは構わないが、どう考えても普通に食べて私が通れるだけの道を作るのは難しいな……そうだな…なら…。
『換装・邪神眼』超高熱の機械刀に、生命力吸収を付与。
これも食べるという範疇に入ると良いがッ!
刀を振るい、斬りつけ、熱した部位を吸収。
消費した分の体力を補充しつつ、斬り進み敵本拠地へと向かう。
疲れている所悪いが、襲撃をかけさせてもらうとしよう。
汎用機関銃を手に、アームドフォートを展開、砲撃。
範囲攻撃で撹乱後、早業で制圧射撃をたたみかけ、一気に鎮圧しよう。
近付かれるまえに撃つ。
テリブル・カトラリー(女人型ウォーマシン・f04808)は、この巨大なリンゴの壁を見上げて、どうしたものかと悩んでいた。
「食べるのは構わないが、どう考えても普通に食べて私が通れるだけの道を作るのは難しいな……」
リンゴ自体は美味しく、多分胃にも溜まり辛いものなのだろうが、それでも限度というものがある。しばし頭を悩ませた後、テリブルはふと思いつく。
「そうだな……なら……」
手に機械刀を持ち、リンゴの壁に向けて構える。そして
「……!」
テリブルの片目が邪神の眼球へと換装され、怪しく光る。
「これも食べるという範疇に入ると良いがッ!」
機械刀が高熱を発する。それを壁へと突き入れると、みるみる組織が崩れて大きな横穴となった。それと同時に、リンゴの果肉に宿った生命力がテリブルへと吸収され、消耗した体力の回復にも申し分無さそうだ。
「良い塩梅だな……これならいけそうだ」
そうして、テリブルはまっすぐにリンゴを掘り進み始める。
目指すは、敵の本拠地、ジム。
「はー、はー……も、もうダメうさ……」
「諦めたらダメうさ! もっともっと汗をかくうさ!」
へこたれるボクサーバニーに、アイパッチが叫ぶ。
「せめてこの蜜一滴飲ませて欲しいうさ~……」
もはやバテバテだ。これではもうどうしようもない、と思った直後であった。
ジムの壁が派手にぶち壊れ、銃弾の雨あられがジムを襲い始めたのだ!!
「う、うさぁぁあ!!?」
「疲れているところ悪いが、襲撃をかけさせてもらうとしよう」
壁の中から現れたのはテリブルであった。アームドフォートを構えながら、拳銃をボクサーバニー達へ向ける。
既にジム内は猟兵達の同時多発的な襲撃と、テリブルの激しい銃撃で大混乱となっていた。
「や、やらせないうさ!」
それでも向かってくるボクサーバニー。テリブルは冷静に銃弾を撃ち込むと、急所に撃ち込まれたか、ボクサーバニーが一撃で骸の海へと還ってゆく。
「……一気に鎮圧する」
テリブルは再びアームドフォートを構え、ジム中に轟音を響かせるのであった。
成功
🔵🔵🔴
パルピ・ペルポル
なんで林檎の中にジム…?
いやまぁ迷惑になるから退去願うだけの話だけど。
一人で道を食べ進めるのは体格的にも不利だから、この巨大折り紙で芋虫を折って。
一緒に道を作るとしましょう。わたしも食べるわよ林檎好きだし。
干し肉と鮭とばは口直しに持参。
ジムの近くまできたらその周囲に通路作っておいて。
気付かれぬように小さな穴を開けて、そこからそっと風糸を展開して敵の首に糸をかけて、火事場のなんとやらを使って一気にきゅっと締めるわ。
巨大芋虫は敵の作った通路から攻め込ませて攻撃と同時に敵の退路を塞がせるわ。
やはり折り紙で作った小さなネズミ複数に足元から敵を攻撃させるわ。
混乱してる隙にさくさく倒していきましょ。
「なんで林檎の中にジム……?」
巨大なリンゴを見上げて、パルピ・ペルポル(見た目詐欺が否定できない・f06499)は首を傾げた。
この世界のリンゴは超巨大だ。その内部に巣食うオウガなのだから、ジムくらい作れても不思議ではないのだがそれにしたって不思議だ。
「いやまぁ、迷惑になるから退去願うだけの話だけど」
そう言うと、パルピはリンゴの壁へと手を伸ばす。このリンゴを食べ進み、トンネルを作れば敵に奇襲が出来るというが、ただでさえ巨大なリンゴに、フェアリーであるパルピの身体では到底トンネルなど出来るはずもない。
「そうだ」
そこでパルピは折り紙を取り出した。それをうまく折っていくと、巨大な芋虫へと姿を変えた。芋虫はひとりでに動き出し、リンゴに齧りつくと、みるみるうちに林檎に穴が空いてゆく。
「それじゃ、わたしも行きますか」
それを追うように、パルピも穴へと入っていった。
リンゴを食べ進む芋虫の後を追い、パルピが進む。途中で自らも林檎に齧りついてジューシーで甘い果肉を堪能する。量が問題なだけであって、パルピだってリンゴは好きなのだ。
「ん~、甘い!」
そうやって幸せそうな表情で頬張るパルピの手には、干し肉と鮭とば。どうやら口直しのようだ。メルヘンなリンゴに対して大分渋い。
ともあれ、そんな感じで食べ進んでゆくと、壁の奥から賑やかな声が聞こえ始めた。
「もうそろそろね」
パルピは食べる手を止めて、折り紙をせっせと折り始めた。その間に、芋虫には周囲に小さな穴をいくつも空けてゆく。
「よし、準備完了……っと。それじゃ、行きましょうか」
そう言うと、パルピは雨紡ぎの風糸を取り出した。
「はぁ、はぁ、もうだめうさー」
「頑張るうさ! そんなんじゃベルトは夢のまた夢うさ!」
ボクサーバニーにアイパッチが叫ぶ。何のベルトかは不明だが、とにかく日常のトレーニング風景といったところだろう。
「……うさ?」
ふと、一人のボクサーバニーが異変に気付いた。なにやら、壁の向こうが揺れているような……?
――どがーん!!
「うさー!?」
突如、壁をぶちやって芋虫が現れたのだ!
「か、紙の芋虫うさっ!」
「ネズミもいるうさー!」
それはパルピの芋虫、そしてその足元には大量の折り紙のネズミであった。突然の闖入者に騒然とするジム内に、ひゅんと細い糸が伸びた。
「うさっ……!」
その糸がバニーの首へと巻き付き、きゅっと締まった。
糸の先には、穴の中に隠れたパルピの姿があった。小さな体で、異常なほどの怪力である。
パルピは糸を緩めると、次の標的へ向かうため、あらかじめ空けていた別の穴へと向かう。
「なんか、なんかいるうさー……ぎゅっ」
ボクサーバニー達は混乱の内に数を減らしてゆくのであった。
成功
🔵🔵🔴
オルヒディ・アーデルハイド
『いつでもフワリン』でフワリンを呼び出し手伝ってもらう
ひとりでも食べ進めれるだろうけど
フワリンに手伝ってもらった方が早いから
相手の頭上に出る様に〔大食い〕で食べ進む
落下の勢いをつけて不意打ちで〔踏みつけ〕て攻撃
兆発され両手を下ろし無防備にノーガード戦法で〔見切り〕見切りで躱しながら近づこうとする
滅多打ちにされても〔オーラ防御〕と〔激痛耐性〕なんとか耐え近づき
相手の攻撃をクロス〔カウンター〕で掴み『華麗なる燕舞』で投げつける
いつからボクシングと勘違いしていたの
相手を倒したらバタンキューと倒れる
相手からのダメージと空腹でダウン
まっしろにもえつきたよ
「はぁ、おなかがぺこぺこです」
オルヒディ・アーデルハイド(アリス適合者のプリンセスナイト・f19667)のお腹がきゅうと切なく鳴いた。彼はいつでも腹ペコ。そして目の前には大きなリンゴがある。
これを食べ進めば敵陣に奇襲が出来るということだし、この戦場はオルヒディにとってはおあつらえ向きだったろう。
とはいえ、今回は戦闘もしなくてはならない。オルヒディはフワリンを呼び出すと二人して林檎を食べ進めることにしたようだ。
リンゴのトンネルが形作られてゆく。どこにそれだけの量が入っているのだろう、というくらい、オルヒディはリンゴを食べる手を緩めず、美味しそうにしゃくしゃくと口に入れてゆく。目指すは敵の拠点であるジムの頭上。しばらく食べ進めると、徐々に足元から賑やかな声が聞こえ始めてきた。
「さぁ、スクワット100回うさ!」
「うさ……、うさ……!」
アイパッチに促され、ボクサーバニーがスクワットを始める。すべては何らかの減量のためらしいが、なかなか理解が難しい。
「99……ひゃくっ!」
スクワットを終え、バニーが一気に伸びをした。その時。
ずどーん! と天井が落ちて、バニーが押しつぶされた。
「うさー!!?」
天井からオルヒディが落下してきたのだ。押し潰されたバニーはそのまま骸の海へと還ってゆく。
「て、敵襲うさー!」
アイパッチが叫び、ボクサーバニー達が臨戦態勢を取る。
「ボクの相手は誰?」
オルヒディは挑戦的な目を向けると、我こそはというボクサーバニーが前に出る。
「ふふっ、お嬢ちゃんが一人でこんなとこ来ちゃいけないうさ」
ボクサーバニーが挑発をしてくる。それにオルヒディはつられてしまったか、手をぶらんと下げて無防備な格好でボクサーバニーへと近付いてゆく。
「ふふふ、がら空きうさっ!」
ボクサーバニーがジャブを放つ。だが。
「ノーガード戦法だよ」
オルヒディがそれを華麗にかわし、近付いてゆく。力を抜いているからこそ自然な動作で、少ない体力消費で攻撃をかわし続けることが出来るのだ。
無論、当たれば危険である。ハイリスク、だがハイリターンの戦法を選んだオルヒディは、そのリターンを見事に得ることが出来たのだ。
「そ、そんなうさ!?」
咄嗟にボクサーバニーはパンチを放つ! だがそれすらも華麗にかわし、オルヒディはボクサーバニーに肉薄することとなった。
やられる! そうボクサーバニーが身構えた直後。ボクサーバニーの身体が浮いた。
「いつからボクシングと勘違いしていたの」
「うさっ?」
ぽーい、とボクサーバニーが投げつけられた!
「そ、そんな……」
投げつけられたボクサーバニーは壁に打ち付けられて、見事KOとなった。
しかし、その代償はあまりにも大きかった。
「ふふ……まっしろにもえつきたよ」
もうお腹のリンゴは消化しきっていた。ぐきゅ~~~、とお腹を鳴らして、オルヒディはその場に倒れるのであった。
成功
🔵🔵🔴
杓原・潤
うるうにはボクサーとか良く分かんないけど、リンゴはそんなにカロリー無さそうだし食べても大丈夫じゃない?
え、お水も制限?ダメだよー、ダイエットなら1日4リットルはお水飲まなきゃ!
でもうるうはこんなにいっぱいはリンゴ食べれないから、サメに手伝ってもらっちゃおう。
カクリヨファンタズムではお餅もバナナミルクもいっぱい食べさせたもんね、うるうのサメ達ならイケる!
方向は占星術で占うよ!
後はサメの回転ノコギリでリンゴ切って、サメと一緒にリンゴ食べて、たどり着いたらサメにウサギさんを食べさせる!
うるうは空中浮遊して、集団戦術で戦ってないサメに隊列組ませて、挑発されてもうるうには見えない様にしちゃおう。
「うわぁ、おっきいリンゴ!」
杓原・潤(人間の鮫魔術士・f28476)は巨大なリンゴを見上げてあんぐりと口を開けていた。
このリンゴを食べ進み、奇襲をすること。それが今回猟兵達に与えられたミッションではあったのだが。
「うるうはこんなにいっぱいはリンゴ食べれないな」
小さな身体の潤では、小さな穴がほんのわずかに出来る程度だろう。だから、ここは何かの手を借りるしかない。
「サメに手伝ってもらっちゃおう。うるうのサメ達ならいけるよね!」
なにせ、潤のサメ達はカクリヨファンタズムでお餅やバナナミルクなんかもたくさん食べたのだ。リンゴくらい余裕なはずだ。
「さぁ、サメ達、お願いだよ!」
潤が占星術でジムの方向を見定めると、サメ達が飛び出した。サメに備えられた回転ノコギリをばりばり切り裂きながら、ばくばく貪り食ってゆく。
「うるうにもちょうだい」
サメの切り刻んだリンゴをぱくつきながら、潤はサメの後をついてゆく。そしてあっという間に、人ひとりなんて余裕で通れるくらいのトンネルが出来上がるのであった。
「もういやうさ~!」
「まだまだ既定のウェイトには達してないうさー!」
弱音を吐くボクサーバニーにアイパッチが叫ぶ。
「喉が渇いたうさ、リンゴ食べたいうさ~……!」
「だめうさ! もっと、もっとうさ!」
アイパッチがボクサーバニーを追い込もうとしたその時。
「うるうにはボクサーとか良く分かんないけど、リンゴはそんなにカロリー無さそうだし食べても大丈夫じゃない?」
そんな声が、突如投げかけられた。
それは穴を掘って現れた、それは潤とそれに従うサメ達であった。
「た、食べていいうさ?」
「だめうさ! 油断はだめうさ!」
潤の言葉にボクサーバニーに動揺が走る。
「水、水が欲しいうさ……」
さらに、息も絶え絶えなボクサーバニーがそう呟く姿を見て、潤が驚く。
「え、お水も制限? ダメだよー、ダイエットなら1日4リットルはお水飲まなきゃ!」
「そ、そううさ?」
さらに動揺が走る。そして、疑念はアイパッチへと向いてゆく。
「か、階級を落とす為には仕方ないうさー!」
アイパッチはアイパッチでぷんすか反論する。そんな内輪もめをしているなか、潤は空を飛び、鮫に指示を出す。
「ウサギさんを食べちゃえ!」
「うさっ!?」
その指示に従って、鮫が暴れ出した。ボクサーバニー達は混乱のうちに次々と食べられてしまうのであった。
「内輪もめは死亡フラグだったうさー!」
大成功
🔵🔵🔵
マグダレナ・クールー
《バイキングニ?! リンゴ!? ピンゴ!!! シャクシャク、チャクチャク……》
落ち着いてください! 落ち着いてくださいリィー!!
良いです、食べて良いのですがドーム状ではなくトンネル状にお願いします!!
《タベル。ススム。ゴウリテキカ?》
ええ、リンゴで腹を満たせた上で、ウサギも喰えますからね
……少量、リンゴの破片を集めておきます。減量中のオウガはリンゴを欲していましたから、奇襲の際に顔面に投擲してあげましょう
怯んだすきに旗杖を叩き込みます! さあ、リィー。食べた分は動きますよ!!
『バイキングニ?! リンゴ!? ピンゴ!!!』
毛蟹のような姿のオウガが、騒々しく巨大なリンゴに張り付いた。
『シャクシャク、チャクチャク……』
オウガがリンゴにむしゃぶりつくと、みるみるうちにリンゴに穴が空き、まるでクレーターのようにへこんでゆく。
「落ち着いてください! 落ち着いてくださいリィー!!」
そんなオウガをマグダレナ・クールー(マジカルメンタルルサンチマン・f21320)が制止した。
「良いです、食べて良いのですが、トンネル状にお願いします!!」
その言葉に、リィーと呼ばれたオウガがピタリと食べるのを辞める。
『タベル。ススム。ゴウリテキカ?』
リィーの言葉に、マグダレナは頷く。
「えぇ、リンゴで腹を満たせた上で、ウサギも食えますからね」
さらりそんなことを言うマグダレナに、リィーも応じて、掘り進めるように食べ始める。
向かう先に、オウガのジムがある。マグダレナはリィーが食い散らかしたリンゴの破片を集めながら、その後をついてゆくのであった。
「うさー……もう、色んな意味でダメうさ」
「諦めるなうさ! まだやりなおせるうさ!」
猟兵達の襲撃に、ジムは既にボロボロの状態だった。仲間の大半は失われ、残る数はもう少ない。アイパッチはそれでも残ったボクサーバニー達を激励(?)するのだが。
「流石にもう何か食べないと死んじゃううさ」
「おなかすいたうさ」
ボクサーバニー達の士気は低い。そんな時であった。
「うさっ」
ボクサーバニーの頭に何かがこつんとぶつかったのだ。
「これは……リンゴうさ?」
ボクサーバニーがそれを拾い上げると、きょろきょろと周囲を見る。どうやらアイパッチはこちらを見ていないようだ。つまり……今がチャンス。
「いただきま~~……」
大口を開けた瞬間、顔面を何かが強烈に打ち付けた!
「なっ、何うさー!?」
突然の衝撃にひっくりかえったボクサーバニーが見た者は、マグダレナであった。手には旗をくくりつけた杖を手にしている。これでひっぱたかれたのだ。
「さぁリィー、食べた分は動きますよ!」
旗杖がパルチザンとなって、怯んだボクサーバニーを貫いた。
『ウサギ! ピョンピョン! タベル!!』
リンゴをたらふく食べた筈のリィーも、まだまだ食べたりないとオウガへと飛び掛かる!
「うさー!!?」
「や、やめるうさっ!!?」
突然の乱入者に戦場は混乱。たちまちマグダレナとリィーの独壇場となる。
「そ、そんな……うさっ……」
アイパッチがマグダレナの槍で貫かれ、倒れ伏す。それが事実上、このジムの最期だったのだろう。
「さぁリィー。全部片付けちゃいましょう!」
マグダレナの号令とともに、リィーが残るボクサーバニー達を食い荒らし、このジムを拠点としていたオウガ達はとうとう全滅したのであった。
こうして、アップル・バトル・フィールドでの戦いは終わりを告げた。
奇妙な戦場ではあったが、こういう世界もアリスラビリンスならではなのかもしれない。
迷宮災厄戦は折り返し地点、佳境を迎えている。
こんなアリスラビリンスを守る為、猟兵達は次なる戦いへと赴くのであった。
大成功
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