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たからさがしの『三つ巴』

#アポカリプスヘル

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#アポカリプスヘル


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●人が人たらしめんとするは満ち欠けた何たるや
 特に意味のない行動というのは、意外にも金になる。
 片耳に聴こえて来るジャズはなんという曲なのか、彼は知らない。知る意味はないし、きっとそこに意味なんて無い筈だと思い込んでいるのだ。
 だが、これは貴重な品だ。荒野を行き来していたとある商人の積み荷の中から拝借した携行型音楽鑑賞キットである、高級娯楽調度品、まさしく逸品モノだった。
「ンン……ンン……」
 掠れた喉の奥からなんらリズム感の無い音が漏れる。
 だが、楽しい。
 灰色に曇った空や『狙撃』には不向きな風の強い天候下などといった、嫌な現実が全てどうでもよくなる。
 ああ、殺して良かった。そう何度目かの安堵と恍惚感に男は酔い痴れる。

 ナノマシンを介して操作する小型ドローンからの映像。
 狙撃手が伏せている岩場から600m先の、荒野に広がるクレーターの一部に集まる人影が映っていた。
 クレーター近くの大型拠点から定期的に派遣されている、遺跡探索者だ。
 そう、彼等が降りて行ったクレーターの下には地下施設が隠されていたのだ。オブリビオンストーム以前にかつて在った研究所、あるいは避難施設。
 未だ電力の生きているこの地下施設には数多くのギミックが残されており、人の気配があると噂されていた。それに寄って来る者達を、狙撃手の男は日々観察していた。
 時には、興が乗った日に限り虫を潰す様な気軽さで探索者や旅人を殺害しながら。
 しかし。
「……今日も、アレは駄目だな」
 待ち始めてから数時間後。
 男は地下施設から誰も出て来ないことを察すると深いため息を溢すのだった。

●救いを求める者と暗き者たち
 神妙な面持ちで猟兵を出迎えたシック・モルモット(人狼のバーバリアン・f13567)は卓上に腰掛けた姿のまま、手前の椅子に座る様に促した。
「……いや、さ。こういう予知って初めてだからなんて説明したらいいのかわかんないんだよな」
 首を傾げる猟兵。
 後ろ髪を指で弄りながら、シックは語った。
「アポカリプスヘルの荒野でオブリビオンが人を襲う、それを助けてやりゃイイんだと思うんだ。
 ただ、状況がちょい特殊な気もする。
 なんだってアレは……うーん。だめだ頭がこんがらがってきた」
 どうやらシックにとってそれは複雑らしい。話が長くなりそうな気配を察した猟兵達はその場に在った椅子に腰掛ける事にする。

 さて。
 この少女が見た予知とは即ち、三つ巴の中で起きた惨劇に他ならない。
 まず事の始まりはクレーター地帯の傍にある『拠点』へ持ち込まれた一つの情報に依る。それはとある奪還者が所有する、オブリビオンストーム以前の技術で造られた通信機器に救難信号が入ったという報告だったのだ。
 その信号の発信源はクレーター地帯の一ヵ所を指しており、彼等は外部からの通信が効かない事が早期に判ると内部への探索を試みる事にしたのである。
 ――そして、誰も戻っては来なかった。
「地下施設はとっくに別のオブリビオンが蔓延ってたのさ。
 それもご丁寧に、救難信号を出した『孤立者』のコロニーに紛れ込む事で誘き出した連中が腕利きだろうと不意を衝くことで……確実に狩りに来てる。
 でも、こいつらは厄介だけどメタな話。私達にはオブリビオンが誰なのか実は分かると思う、つまりここはクリア出来る」
 もっとも、オブリビオンストーム以前から生存して来た地下の住人を巻き込んで死なせてしまうかもしれない。そこもまた猟兵次第ということらしい。

 彼女は指を三本立てた。
 一つ、地下施設の生存者と近場の拠点から来てしまった探索者達。
 二つ、地下施設内コロニーに紛れ込んだオブリビオンの集団。
 三つ。
「外に……いるんだ。別のオブリビオン、それも地下施設にいる生存者を狙うスナイパーが」


やさしいせかい
 初めましてやさしいせかいです、よろしくお願いします。

「シナリオ詳細」

『第一章:日常』
 オブリビオンストーム発生以前から地下避難シェルターに籠っていた生存者を発見し、
 尚且つシェルター内に探索を試みようとしていた複数組の冒険者等と合流、または安全なポイントを探してそちらに身を隠すように伝えて下さい。
 施設内各所においては、所々に電子端末などが置かれており。
 何らかの探索術やハッキングを用いることで成功判定に補正を加えたり、探索者のサーチがスマートに行えるかもしれません。

『第二章:集団戦』
 第一章に続いて、この時点で同行したままの冒険者や、周囲のオブリビオンに脅されている人々を守りながらの集団戦闘になります。
 この戦闘時における人々に関しては、戦闘判定にマイナスを加えるのではなく成功補正を消す意味合いがあります。
 つまりそこそこ周囲の人々に気を遣った戦闘を行うことで判定にプラスが入ります。
 敵の数は多いです。
 (第二章OPの描写)環境に応じて戦闘に工夫を加えると判定に+あったりします。

『第三章:ボス戦』
 地下シェルターを出た後のボス戦です。
 敵は確実に施設から出て来た皆様を狙い、狙撃を繰り返して来るので警戒して下さい。
 オブリビオンとの戦闘であるため、これを撃破して下さい。

●当シナリオにおける描写について
 三章全てにおいて描写(リプレイ)中、同行者または連携などのアクションが必要な場合はプレイング中にそういった『同行者:◯◯』や『他者との連携OK』などの一文を添えて頂けると良いかと思います。

 以上。
 皆様のご参加をお待ちしております。
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第1章 日常 『孤立者移住支援』

POW   :    瓦礫の撤去や、扉の破壊など捜索に必要な力仕事を行う

SPD   :    孤立者の居場所を特定したり、シェルターの扉の鍵を開けたりする

WIZ   :    孤立者を説得して移住に合意させたり、移住先の住民との交流を促進する

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●誰か来てくれ!
 一体、どうしてこうなったのか。考えても考えても分からない、きっとどうにもならなかったのだろう。
 外の様子が碌に分からないまま、遂にシェルター内の備蓄食糧が尽きたあの時。何も考えずに救難信号を出してしまった。
 ただ、それだけ。
「それだけ……だったのにな」
「しっ! やめろよ、聴こえたら何をされるか分からないぞ……」
 結局、シェルターへ訪れたのは得体の知れない集団。
 パッと見こそ普通の人間だったが――『それ』の中身は根源的に違う、人間に仇なす異なる敵性体だったのだ。
 人の皮を被った化け物。餌に誘き寄せられた者を狩る為に巣を作りに来た、怪物。

 少ない食糧を回しながら……声を潜めて。
 彼等は今日も、機械扉の向こうに広がる迷宮のような施設の外から来る『誰か』を待っている。

●迷いに迷いて
 すっかり道に迷ったと思った時にはもう遅い。
 荒れ果てた近代的な施設内の多くは堅牢なセキュリティか、頑丈な鉄扉や壁が広がっているだけだった。
 幾らかの装置や大型機械も見つけたが、それがどのような運用を期待できるのか。全く以て見当が付かなかったのである。
「まずいな……恐らく閉じ込められた可能性がある」
 リーダー格の男は額から伝い流れて来た汗を拭いながら、足元の照明パネルを見つめる様に目を伏せた。
「元々、外の災害から身を隠す為の施設だろう。時間経過と共に自動でシャッターが閉まるようだ」
「……他の班との連絡は?」
「無線が繋がらない。妨害電波か、施設の特徴か……超能力でも欲しくなるな」
 途方に暮れたように――すでに見飽きた鉛色の回廊を眺める。

 全員が口を閉ざせば、その場には耳が痛くなるほどの静寂だけが残されるのだった。
ブランク・ディッシュ
・・・探険、ですね。
不謹慎ですが、少し、ワクワクしてます。

『悪霊の友達幽霊』皆、調査をお願いします。
・・・誰か見つけたら、報告をお願いね?

幽霊達に電子端末をハッキングしてもらい、情報収集。
監視カメラや見取り図等を見つけ、マッピング、
幽霊達に助言をもらいながら、シェルターを探索します。
この先に誰か居る?・・・ああそうだ、警戒されないようにしませんと。

魔導による化術で、世界知識を元に一般的な奪還者に変装。声を掛けます。
ん(声を変え)・・・誰かいるのか!?…ああ、お仲間か。
(一瞥し)お互い、大変な事になったようだな…。
この先に、居住区画があるみたいなんだ…何が出るか分からないが、一緒に来るか?




 いざ目の当たりにして見れば、実に大仰だと思うだろう。
 一体何を想定して建造されたシェルターだったのか、その扉は材質・構造・配置のどれも全て異なる物が幾重にも連なっていたのだ。
 これだけ強固で堅牢なシャッターである。オブリビオンの侵攻だろうと生半な事では突破を許すことはないだろう。
 だがそれはつい最近までの話。
「・・・探険、ですね。不謹慎ですが、少し、ワクワクしてます」
 ルビー或いはレッドスピネルに並ぶ瞳を瞬かせ。開放されて久しいシェルターの区画扉を潜る、流麗なフォルムのウォーマシン。ブランク・ディッシュ(ウォーマシンの悪霊・f28633)が胸元に手を当てて小首を傾げた。
 ウォーマシンといっても、正確にはその悪霊であるが。いずれにせよ心持ちマイペースな空気を漂わせた彼女からは無機物的冷たさや悍ましさを感じないだろう。
 人による、かもしれないが。
「――皆、調査をお願いします・・・誰か見つけたら、報告をお願いね?」
 そうっと。確かめる様に、帽子型音声変換器を通して鈴の音のような声音が静寂の中に溶ける。
 冷気が渦巻いて、ブランクの下を発つ。
 彼女にだけ、ツインアイではなく霊的かつ電子的に見える存在。ブランクに手を貸すべく集った電子幽霊達が壁や天井に沈み消えて行った。

 冷たい無機の質感。白く塗装された金属板の床、何処までも続く緩やかな地下への回廊の中に在ってもブランクは悪霊ゆえに足音を立てない。
 特にそれでも問題はないのだが、慣れない場所であると共に目的が目的だ。彼女が『悪霊の友達幽霊』達に情報収集を頼んだとはいえ、何もしない訳にもいかないと考えてのことだった
 つまり、そう。古びた電子錠が掛かった扉にノックしてみたり、天井部に見える点検用ハッチを開けて覗くなどして見ていたのだ。
 見る者が見たなら焦りの一つも見せたかもしれない。
「……この配線ケーブル、何処まで続いているんでしょうか」
 そこはそれ。彼女が注目していたのはグリモア猟兵が忠告した内容である。
 何者か。結論から言えばオブリビオンなのは確定であるが。そういった輩の手に落ちたにしては施設内は整ったままにも見えたのだ。
 ――かくして。ブランクは探索の歩を進めている内に幾度かの枝分かれした通路を行き来したが、その先にあったのは電子端末と、既にハッキング・解析を進めている電子幽霊だった。
「何か、解りましたか?」
『――』
 淡い泡沫の影がこくりと頷いた。
 言うよりも見せる方が早いのは当然。電子幽霊は彼女に求められた答えを小さな端末の画面上に映し出した。

「……円筒形、ですね。これなら直径数十は越えている……ああ、それよりもこれです……お手柄ですよ」
 端末の表層に抽出された情報を汲み取ったブランクは来た道を僅かに戻って行く。
 その道中傍ら。彼女の下へ帰還した電子幽霊達の話を聞きながら彼女は情報を整理して行った。
 この地下シェルターは円筒状の多層シェルターであり、各種機能を補い合うことで長期の避難システムが可能となった建造物だったのだ。
 ワクワクがまた跳ねた、その時。
 ブランクの視界に突如金属板の壁向こうから飛び出した電子幽霊の姿が映った。
「この先に誰か居る……?」
 何事か、そう確かめるより先に彼女は電子幽霊に促されるがまま。不意に広がった回廊に十字路を見つけた。
 よく目を凝らせば、確かに電子幽霊の言う通り。十字路奥に見える壁は真新しい金属扉となっているのが見えたのだった。
「……ああそうだ、警戒されないようにしませんと。ん――『誰かいるのか!?』」
 白く照らされた回廊に暫し木霊する低い声。
 この場にいるのはブランクだけであるがゆえに、誰も彼女が人間態に、それも奪還者としてよく知られる装備に身を包んでいた事に何の反応もない。
 更に暫しの空白。
 或いは聴こえていないパターンも考慮して、ブランクはもう一度音声を響かせようとした。
「……ここだ! 頼む、こちらは三人。既に二日前から我々は彷徨っている始末だ……おい、聞いているのか!?」
「ああ、聞いているとも――しかしお仲間か。お互い、大変な事になったようだな……」
 奥の扉から飛び出して転がり込んで来た痩せた男は、屈強な男の姿をしたブランクを言葉通りの意味で同業者だと信じ込んでいる様子だった。
 何度か頷き、後から追い付いて来た痩せた男の仲間の男達を一瞥した彼女は耳元で囁かれる言葉に片眉を上げた。

「この先に、居住区画があるみたいなんだ……何が出るか分からないが、一緒に来るか?」

 さて、と彼女は思う。先の電子幽霊が教えてくれた事を思い出していた。
 この様子を陰から見ている少女は、一体何者なのか。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ラブリー・ラビットクロー
困ってるヒトが居る
マザー
助けにいくぞ
【今日は休日ですが予定を変更しますか?】
ヒト助けのほーが大事なん!

薄暗い所なん
ここは何の施設だったんだ?
【フラッシュライトを起動します】

とにかくみんなを探さなくちゃ
マザー
せーぞんしゃをそーさくするのん
【カメラとGearMAPsを起動します。GPS信号を確認できません。カメラでオートマッピングを行います。複数の足跡を検知。足跡を赤く表示します】
マザーないすなんな!
らぶこんなの気づかないなん
よーし
足跡辿っていこー

【僅かな物音を検知】
うん
らぶも聞こえた
ぼーけんしゃなん?
偵察で見てくるのん
【いってらっしゃいませ】

もーだいじょーぶ
らぶ達が来たのん
一緒にお家にかえろー




 意気揚々と地下施設に足を踏み入れたラブリー・ラビットクロー(とオフライン非通信端末【ビッグマザー】・f26591)はふと、出発前のやりとりを思い出した。
「ヒト助けのほーが大事なん」
【検索結果。メモ帳が一件、『休日より人助け優先』のリストが見つかりました】
 ちゃんとメモしたのだ。可愛らしいペイントの施されたガスマスクの下で笑みを浮かべながらラブリーは胸を張った。

 ふと、歩を進める間に手元のビッグマザーから伸びる電光が強まったのにラブリーは気づく。
 既に猟兵も何組か入っているが、冷たい色をした金属板に囲われた空間からは人気を感じさせない。
 幽霊でも出そうなんな、とはラブリーの感想。
「薄暗い所なん、ここは何の施設だったんだ?」
【フラッシュライトを起動します】
「ん」
 パッと点灯する照明。
 視界が一気に温かい暖色に染まったのを見て、少なくとも施設内部に潜る中で幽霊に遭遇しても何とかなる気がしてきた。
「とにかくみんなを探さなくちゃ。マザー、せーぞんしゃをそーさくするのん」
【カメラとGearMAPsを起動します。GPS信号を確認できません。カメラでオートマッピングを行います。複数の足跡を検知。足跡を赤く表示します】
 立て続けに端末内に表示され消えるウィンドウを眺め、ラブリーがガスマスクの下で「おーっ」と感嘆の声を上げる。
 途中、端末内蔵のカメラが起動した為だろう。最後に表示されたフレームの中に映る、赤く枠が作られた足跡を見たラブリーが実際に画面の外へ視線を移すとポインターのような光が細く漏れていた。
 何だかわからないが、やがてその足跡が通路突き当りで無数に枝分かれする回廊の先に点々としているのを見た彼女はビッグマザーを一瞬抱き締めてテンションを上げる。
「マザーないすなんな! らぶこんなの気づかないなん――よーし、足跡辿っていこー」


 どれほどの間、同じような場所を行き来しているのだろうか。
 少なくとも同じ道に戻ったりはしていない。ビッグマザーが自動でマッピングを行っているが、積み重なるデータから織り成す地図には規則的ながらも複雑な図形が出来上がっていた。
 恐らくは円筒状。深い地下シェルターの類だ。
 そんな長い探索の末、突然白い照明パネルが足元や頭上を埋める。円柱が並び立つ広い空間にラブリー達は出たのだ。
 広間の奥から、何か不規則な音が響いている。
【僅かな物音を検知】
「うん。らぶも聞こえた、ぼーけんしゃなん? 偵察で見てくるのん」
【いってらっしゃいませ】
 少女は音も立てず、その華奢な足を軽やかに動かして。
 物音の発信源である場所へ近付いていきながら近くの円柱裏に滑り込んだラブリーは、その視界に映ったモノを見てほう、と息を小さく吐いた。

「――もーだいじょーぶ、らぶ達が来たのん。
 一緒にお家にかえろー」

 ラブリーがそう言いながら近付いた先にいたのは、数人の少女に囲まれ蹲る、探索者と見える装備の男だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

黒木・摩那
なかなか厄介な状態になっているようですね。
しかし、地下避難シェルター内部の状況が分からないことには動きづらいですね。

幸い電子端末がまだ生きているようですから、それを利用して、この拠点の構造を掴みます。
電子端末からサイキックグローブを通して監視カメラか、センサー類への【ハッキング】【情報収集】を試みます。
成功すれば、探索者や生存者の居場所を掴めますし、避難路も見えてくるでしょう。

まずは不安が高まってる探索者と接触します。
水を手土産に救出に来たことと、状況の説明を試みます。




 猟兵達が各所で探索者達の捜索、或いは周辺地域を調査している者もいる中。黒木・摩那(冥界の迷い子・f06233)は一人、地下施設内の通路脇に見つけた電子端末を前にしていた。
 細い手指を包むサイキックグローブが電子端末に添えられる。
「ふむ……地下避難シェルター内部の状況が分からないことには動きづらいと考えて施設内データを覗いて見ましたが、これは」
 なかなか厄介な状況になっている。と、摩那はサイキックグローブを介してスマートグラスに表示された画面を見て静かに頷く。
「施設内のどの電子端末も生きているのは、こういうことですか」
 彼女が閲覧しているデータマップには拠点構造の他に、近況の動作履歴も参照されていたのだ。
 そこには当然、最近の物で猟兵達らしき者達の足跡が残されている。
 だが――同時に彼等を追うような形で施設内各所に配備された警備システムに都度侵入された形跡もあったのだ。摩那は表層データマップを閉じて、主に侵入された形跡が『どこから』続いていたのかを探るべくハッキングを試みた。
「……熱源センサー。動体感知。監視カメラ……施設内の予備電源を動作させてまでして、不要電力削減の為に落とされていた警備システムの復旧?」
 眼鏡を掛け直しながら。摩那は視界に映る、羅列された情報欄の一部に訝し気に眉を潜めた。
 発端が何にせよ、この地下避難シェルターにて生存していた者達はそれまで不要としていた居住区以外の場所の警備システムを意図的にダウンさせていた。それが、何故今になって救難信号を出しながら貴重なエネルギーを無駄に消費するような行動に出たのか。
 摩那にはその答えが半分わかっている。
 この警備システムを復旧させる際に踏まれたプロセスは、今彼女が行っているハッキングの類だ。わざわざそんな事をせずともシステムを再起動させる事もできた生存者達ではないだろう。
 ならば、その目的は。
「……広大で堅牢なシェルターに隠れた少数を見つける事は困難だと、恐らく敵は気づき、探し当てる為に利用した」
 そもそもここまで侵入出来たからには、このクレーター地帯に隠れた入り口を開放したのもハッキングをした本人だろう。同程度のセキュリティならば簡単に破り、システムを掌握できたはずだ。
 そして彼等は生存者を探し当てた。普通に考えれば助かる見込みはないだろう。
 だが、何故未だに救難信号を出しながら……外部から訪れた猟兵達を遠巻きに監視しているのか?
 十中八九オブリビオンが相手なのは確実である。しかし彼等にアポカリプスヘルの奪還者と猟兵の区別が――知識があるなど、有り得ないことだった。

「……まずは不安が高まっている探索者たちと接触を図りましょう、恐らくこれを放置することは良くない事に繋がっているはず」
 摩那は未だ猟兵達と合流できていない二組ほどの探索者を警備システムを介して発見する。
 持ち込んだ水を与えながら落ち着いて話ができれば、少なくとも彼等を混乱から救う事が出来る。そう考えて彼女は、暫し他の猟兵達の動向を観察してからその場を離れた。

 ――彼女を追う様に動作していた監視カメラやセンサーの類を全てシャットダウンさせた上で。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『フラスコチャイルド再現型オブリビオン群』

POW   :    Quiet noise
【静穏型ガトリング砲から発射された砲弾 】が命中した箇所を破壊する。敵が体勢を崩していれば、より致命的な箇所に命中する。
SPD   :    戦術:欺瞞情報拡散
戦闘力のない【情報収集型無人機とダミーオブリビオン 】を召喚する。自身が活躍や苦戦をする度、【偽情報の流布などを行い、市民からの援助】によって武器や防具がパワーアップする。
WIZ   :    AntieuvercodePulse【AP】
対象のユーベルコードの弱点を指摘し、実際に実証してみせると、【疑似代理神格型演算支援システム 】が出現してそれを180秒封じる。
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●あどけない狂気に震える
 生存者達は、果たしてその身は無事だった。
「あ、あなたたちは……」
 痩せ細った様子の女が猟兵の姿を見るなり立ち上がる。
 どうやら彼等は現在はシェルター奥部の各所に散らばって、飢えやストレスから混乱に陥る事を避けていたらしかった。
 ――猟兵達の中にもそうして偶然探索者とは別に生存者を発見した者もいるだろう。
 猟兵は数人程度の生存者達を見て、それから暫しの空白を覚える。
 分かる筈だ。
 潜む狂気の中心に在るモノが。彼等が"震えている理由"が、果たして本当に救助者の登場によるものなのか。
「くすくすくす」
 小さな笑い声。
 猟兵は、あなたは、その声に振り向いた。

「ノック、ノック♪」
 瞬間。有無を言わさぬガトリングの火線が閃いたのと同時に、戦いの火蓋が切って落とされた――!
ラブリー・ラビットクロー
【警告】
敵の奇襲にマザーが気付いて天使の翼をはつどーしてくれるかも
大きな羽を広げて生存者のみんなを包み込んで攻撃から護るんだ

【敵性反応です。直ちにこの場から退避して下さい】
いきなり攻撃してくるなんてズルいなん
みんなだいじょーぶだ
らぶが絶対なんとかするなんな
おいマザー
逃げちゃだめ
一緒にあいつをやっつけるのん
【ネットワークに接続できません】

周囲の生存者を偽神兵器で護るよーに戦わなくちゃ
できるだけ敵を存在感で引き付けて戦うなん
広い空間を活かして空中を羽ばたきながらお空から戦うぞ
円柱を盾にして戦うのもいーかもなん

偽情報を流されたら他の人が吃驚しちゃうかも
無人機はらぶの火炎放射ですぐに燃やしちゃえ




 ――探索者と見える男は、少女達の一人と顔を見合わせていた。
 困惑とも取れるその反応はラブリー・ラビットクロー(とオフライン非通信端末【ビッグマザー】・f26591)が救助に来た事に対するそれだと思えた。
 だが。
「それ、なんなのん?」
 その場にいたのは、人だけではなかった。
 男の頭上に浮かぶ球体。ホバー移動していると見えるそれは、微かに風を散らして赤いライトを点滅させていた。
 ラブリーが不意に訊いた声に誰も答えない。ただ、男は幾ばくかして声も出さぬまま――その顔を頭上の球体へと向けて目を見開いていた。
 球体の表面上に張られたガラスフィルムの様な画面パネルに、頭から血を流した女性が映し出されていたのだ。
「……ハ、ハッ」
 男から渇いた笑い声が響いた。
 瞬間。
 手を伝い流れる不穏な振動と共に、ラブリーは反射的に身を低くした。
【警告】
「んなっ!」
 その場。幾つものシルエットが白い空間の中で空気を裂いて動き出す。
 ビッグマザーの警告に次いでラブリーの背から噴き出す様に一対の白い翼が顕れたのと同時。少女達から一斉に、どこに隠していたのか――背丈ほどもあるガトリング砲が横並び――ラブリーに照準が向けられる。
 ラブリーの視界を白い大きな羽が覆い隠した直後。フィン、という静穏型ガトリング砲の静かな駆動に次いで放たれた暴威が、ラブリーの背から広げられた翼を打ったのだ。

 僅かに背中が後ろへ引き摺られる感覚に足が一歩後退する。
【敵性反応です。直ちにこの場から退避して下さい】
「いきなり攻撃してくるなんてズルいなん」
 言われるよりも先に、ラブリーの足先が床を蹴って背後の円柱に両足を着ける。
 ガトリング砲の照準が標的に合わせて動く。幾つかの跳弾が頭上の照明パネルを割る最中、ラブリーの小柄な体躯が宙返りするのと合わせ天使の翼が一瞬羽ばたいて回転した。
 円柱から円柱へ。
 そこが広間だった事がラブリーの動きを助けた。更に彼女は翼による膂力も借りて柱の側面を蹴りつけながら天井ギリギリまで跳躍すると、同時に眼下でガトリング砲を片腕から生やした少女達が射撃に適した位置へと散開する姿を見下ろす。
「ひ、ひぃ……ッ」
 続く射撃音が響く中、小さな悲鳴を上げながらヨタヨタと走り出した探索者らしき男。
 ラブリーはその時。逃げ出した彼の方へドローンらしき球体が複数飛んで行ったのを視た。
 そして映し出されるのだ。男の足を止める為だけに、女性の映像を何枚も見せていた。
 彼は――脅されている。
「みんなだいじょーぶだ。らぶが絶対なんとかするなんな」
 高速で羽ばたき薙ぎ払われる翼の向こうでバチバチと、花火の様に散る銃弾を視界に入れながらラブリーが腰から回した火炎放射器を手に取る。
 翼が開く。
 『ラビットブレス』の引き金を絞り、噴き出した渦巻く炎をカーテンにしながら、円柱の裏側へと飛び込んだラブリーはポシェットに突っ込んでいたビッグマザーに向けて声をかけた。
「おいマザー。逃げちゃだめ、一緒にあいつらをやっつけるのん」
【ネットワークに接続できません】
 なんなん? とラブリーがちょっぴり怒った声を漏らす。

 円柱の陰からフードを被った白髪の少女が飛び出した。
 ラブリーは自然と、更に注意を引き付けるように翼を羽ばたかせて一帯を飛び回る。
 広大な空間といってもラブリーのエンジェル的なやつからすれば、大きく広げるだけで随分目立った。
 だから彼女は敢えて降りない。
「こんなにばかすか撃ってたら、危ないなんな」
 ラブリーが銃撃を翼で弾くのも、移動の際に撒く炎の出力が低めなのも、地上で少女達に脅されて拳銃を抜かされた男を巻き込まないようにするためだった。
 そして、彼女の作戦は思わぬ形で効果を発揮し始める。
【他の端末のデータ共有が三件来ています】
「んむ。止まって来たんな? だったら、マザー」
 攻めに行くのん。その一言が合図となる。
 頭上を逃げ回り、防ぎ続けるラブリーに完全に集中力を削がれた少女達は次第に、人質であり洗脳しようとしていた探索者の男への脅しの手を緩めていたのだ。
 本気で加勢し殺しに来る前ならば、ラブリーは敵を敵としてやっつけることができる。

 奔る銃撃の嵐がパネルを次々に割る中、天井を半ば走るように駆け抜けたラブリーが一息に円柱の一つへ翼を薙ぐ。
 吹き飛ぶコンクリート片。粉塵と折れた鉄筋がばら撒かれたその瞬間、一気に地上へ降り立ったラブリーの小躯が怯んでいた少女の一人へと急接近して踏み込んで行った。
「あれ、ぇ――ッ!?」
 少女の薄昏い瞳の内にピンク色のガスマスクが映り込む。
 振り上げられるガトリング砲を翼で弾き返したラブリーが雑に蹴りつけた直後。少女の背後で構えていた他のガトリング少女ごと、ラビットブレスから伸びた火炎が焼き尽くす。
 ピロリロリン。
【警告。身の安全を優先して下さい】
 緊張感の無い通知音が鳴ったのと、振り返ったラブリーの眼前で銃弾が翼に弾かれたのは同時。圧倒的な物量による制圧射撃を正面から受けながら、ラブリーが姿勢を低く、這うように飛び出していく。
 火炎放射器のバックパックを床に、背中から滑り込んだラブリーの体は果たして次の瞬間。突き出された翼の勢いによって変則的な軌道を描いてラブリーの体躯を白髪の少女の頭上へと跳ね上げた。

 驚愕に見開く少女の眼が次に目にしたのは、大きく振り被って突き出してきた天使の翼と炎だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ブランク・ディッシュ
変装継続
おい、俺達は助けに!くそッ!罠か!(・・・まぁ)
アタッシュケースで弾丸を防ぎ、後方、通路側で警戒していた
奪還者さん達の所へ下がる

ケースから伸びた銃口で制圧射撃
(あ・・・)・・・ぐあ!(鞭で腕を斬り飛ばされる)
後方へ下がり、通路のシャッターを落して奪還者達を戦場から隔離
電子幽霊達がシャッターをロックして守ってくれます。問題は・・・

まったく、幽鬼かなにかか…(そういえば私、悪霊でしたね)
『悪霊腕・遊刃』飛ばさせた腕の変装を解いて浮遊させ、暗殺
さらにワイヤーダーツを発射し、拘束、生命力吸収
サクリファイスで彼女達について情報収集

情報と戦闘知識で彼女達の動きを見切り、
トリックダガーを投擲。爆破。




 探索者達の班と合流したブランク・ディッシュ(ウォーマシンの悪霊・f28633)は同業者を装ったまま、電子幽霊の手招きに誘われて施設の奥へと踏み込んで行っていた。
 道中。荒れ果てた円柱が並ぶ広間が横道に見えたものの、彼女が目指すのは別所にあった。
 本来探索者達が地下施設へと潜るに至った理由の一つ。救難信号を出した生存者達の居住区だ。
「まさかハッカーが来てくれるとはな……運が良い。
 俺達だって何の準備もしてこなかった訳ではないんだがな、どうにもこの遺跡のシステムは健在なようだ。想定を遥かに上回っている」
 疲れ果てた様子の仲間を傍目に、班のリーダー格らしい男がそう言った。
 とはいえ。彼等は知らない。
 既に十数分も前に他の猟兵が施設内の警備システムをダウンさせたという事実を。
(まぁ別に知る必要もないでしょう)
 運がいいのか悪いのか、などと冗句を適当に飛ばして探索者達の緊張をまたひとつ取り除いてやりながら。ブランクは化術によって変わったままの自身の装いを撫でる。
 と、その時だった。
『――――』
「……ここか」
 暫しの後、ブランクたちの前に閉ざされたシャッターが立ち塞がった。
 そこで不意に彼女は足元で砕かれたパネルを見つける。電子幽霊はそのパネルがシャッターの操作盤だったことを告げ、それからブランクが開けて欲しいと目配せしたことで電子盤にバチリと電流が奔る。
 後ろで探索者達のどよめきが聴こえるが、気にしても仕方ない。そもこの遺跡で何も出来なかったのだから多少の『トリック』くらい彼等も深くは考えないだろう。
 数秒の間を置いて、シャッターが左右に開いた。

「……っ!」
「きゃー! みんな逃げて! 彼等は私達を捕えに来た人攫いの殺人鬼だよ!」

 いきなりだった。
 開かれた食堂らしき奥行きのある空間に出た途端、寄り集まっていた人間達の中から少女の悲鳴が響き渡った。
「し、死にたくない! しにたくなぁぁぁあいッ!!」
「なっ!? 馬鹿野郎、止せーッ!」
(……まぁ)
 電子幽霊から聞いていた限りでは、ブランク達が来る前から生存者達は大人しくしていたという。ハッキングを試みた限りでは交戦の記録も無い。
 では今、なぜ外からの来訪者にこれほど怯えているのか。
 たじろぐ探索者の男の傍ら、ブランクは錯乱した生存者達の後方で笑みを浮かべている少女と目が合った。なるほど、と咄嗟に下がりながら彼女は感心する。
 焚き付けられたということなのだと。
「おい、俺達は助けに! くそッ! 罠か!」
 ブランクは装備品の一部として装い持ち運んでいたアタッシュケースを踵で蹴り上げ、後ろにいる探索者達の方へと弾いた。
 刹那、対面する生存者達の一人が抜いた拳銃が渇いた発砲音を響かせる。
 打ち上げられたアタッシュケースが小さく弾かれ火花が散る。狼狽えた悲鳴を上げて後方の通路へと退避して行く探索者達は、それでもブランクの身を案じてか共に退避しようと口々に叫んでいた。
「俺のことは良い! 行け!」
 こんなものだろうか。などと、ブランクは屈んで身を低くしながらアタッシュケースを手に取り銃撃をやり過ごしながら背後へ視線を移す。

 風のような囁き。
 轟音。勢いよく電子シャッターが閉じたのと同時、ブランクの手にしたケースの側面から伸びた銃口が火を噴いた。
 タイプライターを叩く様な軽い連射音。次いで居住区の照明パネルが砕け、立て続けに割られて散って行く。
「ひぃっ!?」
「わー! きっとあの人は私達を殺して、シェルターのみんなも殺すんだ! みんな撃って! 殺して!」
(出来の良い玩具はあれですね)
 既にブランクは少女の声の主が何者か、電子幽霊達によって見抜いている。
 物陰に隠れたドローンだ。ブランクはその動作を停止させるように働きかけながら、怯みながらも応戦してくる生存者達の銃撃から逃れるべく手近なコンテナの後ろへ滑り込んだ。
「ふえ?」
 物騒なガトリング砲を構えていた少女が、突然滑り込んで来たブランクの姿に驚き目を見開いていた。
(静穏型の機関銃。フロアのあちこちに隠れ潜んでいる彼女達全員がこれを装備しているとは、どういう組織なのか)
 瞬時に飛び退いた少女が薙いだ、特殊なパルスを帯びた鞭をブランクは身を反らして躱す。否――鈍い音を立てて床にバウンドする、生々しい腕がブランクの足下で転がって行った。
 少女が微かに浮かべる愉悦の表情。
「あがッ!?」
 しかし。
 ステップして後退していた少女の幼い首筋に不可視の糸が絡みつき、横へ薙ぎ倒されたのだった。
 白い血液が飛び散る。
「まったく、幽鬼かなにかか……」
 フロア内に都度響いていた少女の声はもう聴こえない。洗脳音波のようなドローンによるトリガーは電子幽霊を通したハッキングで封じ、遂に室内の照明パネルを一時的に消灯させたのである。
 白い血液を滴らせ浮かび上がる赤いブレードは、ついさっき切り離したばかりのブランクの腕だった。
 彼女は擬態を解いた腕を操りながらそういえば自分は悪霊だったことをふと、思い出して小首を傾げた。
 数瞬の闇に包まれたフロアの片隅で、ブランクは軽く腕を振る。

 空気を切り裂いて飛翔する『悪霊腕・遊刃』の見えざる糸が、ブランクの文字通り手先が、フロア各所に散っていたオブリビオンの少女達を捉えて行く。
 浮遊する彼女の腕から放たれるワイヤーダーツとトリックダガーが暗闇の最中で幾度と空気を引き裂く音鳴らし、静穏型ガトリング砲が火を噴いてあちこちに乱射されては倒れ伏す音が連続する。
 ――そして。

「あなたが何者なのか、読ませていただきます」
 次に、パツンと音を立ててフロアに照明が戻ったその時。
 テーブル上で膝をついた少女の頭を掴んだブランクが言った言葉を最後に、ついにフロアの中で渦巻いていた『流れ』が止まったのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​


●少女達の記録
 ある猟兵の手を通して、オブリビオンの少女達の記録が読み解かれて行く。
 その個体の記録は僅か数週間前程度にまで遡る。

 少女はフラスコチャイルドの類"だった"誰かを模して、黒い竜巻から蘇った一人だった。
 しかし、その身はひとつきりではなく。周りを見て気がつけば、自分そっくりの少女が何人もそこにいたのだ。
 少女たちの使命は、目的は、果たして例に漏れず世界に仇なす者として生きることだった。そこに疑問は無かった。
 ただ――不思議なものが彼女達に付き纏っていた。

 同じオブリビオンの気配を漂わせながらも、少女達に近付くことなく。ただ遠くから背筋を舐め回す様に見ているだけの、不可思議な存在。
 それは最初は疑念と疑問だけで、それ以上どうという事は無かった。
 干渉は無い。ただ、少女達は荒野を彷徨いながら小さな拠点やコロニーを破壊して回り、ゆっくりと慣れて行った。
 ――自分達の背中を観察している物の正体が分かるまでは。

 場面は移り変わり。
 砂嵐の様な視界の後に、記録主である少女が突如目を開けた。
 そこはもう地下シェルターの居住区だった。
『くすくすくす』
『起きたね』
『起きたぁ』
 仲間達の覗き込む顔を見回して、少女はついに問う。なにがあったのかと。
 その答えは、次に別の少女が差し出した手鏡に映った自らの姿にあった。
『あのね。"あいつ"に撃たれたんだよ』
『"あいつ"は私達を壊したいんだよ』
『危ないんだぁ』
『でね、外に出るよりずっと面白い事を思いついたの』
『外には"あいつ"がいるから、ここでいっぱいお人形さん遊びしよぉ?』

 少女達が口々に好き勝手言っている間。手鏡を覗く少女の手は震えていた。
 ぽっかりと穴の開いた胸の中央、そこに指を触れ、少女は思い出すのだ。
 遠くから見ていたあの視線は、自分達が人間に向けるモノとまったく同じ気配だったことを。
 ――同じ、だったのだ。
 
野津・伽耶(サポート)
 オラトリオのブレイズキャリバー×アーチャー、53歳の男。普段の口調は「男性的(俺、君、呼び捨て、だ、だな、だろう、なのか?)」です。/武器は銃、素手での格闘もそれなり。無茶はせず戦闘中は表情は変えない。好戦的ではなくあくまでも義務と仕事の範囲で戦う。誰にでも、特に年下には友好的ではあり話し下手ではなく戦闘以外の時間では酒をのみ話す時間を楽しむ。アルコールには強いので泥酔はなし。戦闘以外ではあまり器用ではない。
/ユーベルコードは指定した物をどれでも使用。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。あとはおまかせ。よろしくおねがいします!


メリル・フィート(サポート)
常に冷静に、よく見てよく考えて行動します。
考えても解決できなかった時に拳の出番です。
とりあえず殴れば大体の事は解決します。
それでも無理なら…それは私一人では解決できないと言う事です。

 ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
 あとはおまかせ。よろしくおねがいします!




 廃材と見られる金属板を蹴り飛ばして、野津・伽耶(オラトリオのブレイズキャリバー・f03720)は背後からの制圧射撃を躱した。
「妙な事になったな。あれが件のオブリビオンだろうが」
 悲鳴を上げながら蹲っていた生存者と見られる女性の首根っこを掴んで通路脇の陰に放り投げながら、伽耶がマスケット銃で肩をトンと叩く。
 静穏型ガトリング砲の制圧射撃が唸る通路を挟んだ彼の対岸には、同じく通路脇に背を預けたメリル・フィート(妖狐のゴッドハンド・f28434)が探索者と見られる男達を押し込んでいた。
 跳弾が鼻先を掠める中。伽耶が「どうする?」とばかりに視線で問いかける。
「……行くしかないでしょう。ここから先、退路の途中で襲撃されれば避けようがない場面も出てきます」
 その場合、真っ先に致命傷を受けるのは彼等だ。伽耶はメリルの言葉の意味をそう捉えて、背後の女性達を一瞥する。
 弾幕が途絶える気配はまだ、ない。
 狭い通路だ。これが外部から来た者を仕留める為に仕組まれた罠だとすれば、或いは他の猟兵達も退避の選択肢を封じられた戦況下に置かれているのではないだろうか。
 地下シェルター内は各所に広い空間・フロアが存在する。しかし構造上、それらはとても限定的だ。
 例えば部屋の内に誘い込んで四方八方から撃ち込んだり、狭い通路へと下がらせた所を追撃するには丁度良いだろう。
 これは、効率の良い狩りだと。伽耶は左脚をカツン、と足元の金属板で踏み鳴らした。
 時間をかけてやる必要はない。
「俺が合図する。君はそれに続いてくれ」
「……わかりました」
 静かに頷くメリルは拳を握り締めた。

 フラスコチャイルド再現型オブリビオンの少女達。彼女達が保有する兵器、その用途は主に民衆に紛れる形で発揮されるものだ。
 静穏型ガトリング砲、情報収集・偵察用ドローン、極めつけは猟兵に限らずユーベルコードの発動を妨害する機能が備わったアーティファクトである。
 だが、それらはあくまで奇襲を想定した物。
 消音性と反動抑制に性能を傾けたことにより、外観から察せられる威力を欠いてしまった部分も存在していた。
 伽耶が目を付けたのは、まさにその部分。爆ぜ飛ぶ跳弾が壁や天井の金属板を削るも、破壊に至らなかった事で、彼の能力を活用できたのだ。
「――飛べ」
 弾幕が張られた通路へと身を躍らせ、同時に伽耶の足下で捲れかけていた金属板を蹴り上げる。
 左脚が板をくの字にひしゃげさせ吹き飛ばした瞬間、その勢いを後押しするかのように青い炎が渦巻いて爆ぜたのだ。
 弾幕に勢いを殺されても尚消しきれない慣性が通路奥の部屋で構えていた少女数人を薙ぎ倒した。
「行きましょう」
「ああ」
 即座に通路へ飛び出して駆け抜けるメリルに次いで、伽耶がマスケット銃を取り回して構える。
 倒れ込んだ少女達の一人が後退しながらガトリング砲を構える。
 対面。メリルの拳が真っ赤に燃えた直後、彼女の流れる銀髪の陰から噴き出した青白い狐火が幾重にも連なって殺到した。
 再び炎が散り、空気が爆ぜて熱風に少女達が宙に投げ出された。
「くっ、う!?」
 振り上げた勢いのままに弾丸を放出しようとする少女の顎を、メリルのアッパーカットが打ち抜く。
 倒れ込む少女の襟首を引っ掴んだメリルがそのまま後方へ回し蹴りを繰り出し、地に伏す少女へ掴んでいたもう一人を叩きつけて、頭上に振り上げた踵を鋭角に落とした。
 咳き込み、怨嗟の声が響く。
 メリルが姿勢を低くしながら振り返る。
 部屋の奥で隠れ潜んでいた少女がその手のガトリング砲を駆動させた瞬間、僅かな血潮を散らして弾かれた様に頭から倒れて行ったのが見えたのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

黒木・摩那
いきなり撃って来るとか、危ないですね。
当たったら痛いじゃないですか。

フラスコチャイルドは明らかにハッピートリガーですね。
このままでは弾が飛び交って、避難すべき人達まで大変なことになってしまいます。

ここはしばらく守りに徹することで反撃の機会を伺いましょう。

UC【暗黒球雷】でエネルギー吸収球を周囲に展開。
彼らが放つ弾やいろいろを吸収します。
狙いをこちらから外して、他を狙うようならば、【念動力】で吸収球を移動して、これをカバーします。

しばらく、相手のエネルギーを吸収したところで反撃します。
魔法剣『緋月絢爛』にいただいたエネルギーを乗せて、【なぎ払い】。
一気に一掃します。




 黒木・摩那(冥界の迷い子・f06233)の判断は冷静且つ迅速だった。
「いきなり撃って来るとか、危ないですね……当たったら痛いじゃないですか」
 歪な笑みを浮かべて佇む少女の紅い瞳と、冷笑を携えた摩那のブラウンの瞳が互いの姿を映し出す。
 恐らく。お互いにとって思わぬ遭遇だったのだ。
 探索者達と合流を果たした摩那は予め頭に入れていたシェルター内部の図面を基に、そのまま真っ直ぐ生存者達の集まる地下フロアへと足を運んだのである。
 既に警備システムは無効化され、更には道中に張られた罠の類にも引っかからずに現れた彼女と探索者の一群に、地下施設で暗躍していたオブリビオンの少女達は酷く驚いた筈だ。
 だが、それでも尚こうして銃口を向ける理由はただ一つ。
(少々――数が多いですね。
 相手は明らかにトリガーハッピーなタイプの様子、このまま弾が飛び交えば避難すべき人達まで大変な事になってしまいます)
 オブリビオンの少女達は多くの無力な生存者達や捕えた探索者を集め、シェルターに備わる通信設備を使って外部から人を呼び込んでいた様だった。
 故に、オブリビオンの数も多い。硝煙を昇らせた銃口が、再度摩那に向かう。
 彼女の思考と並行して、眼前で揺らぐ空間。
 光を捻じ曲げ、空間を歪曲させる球体。『暗黒球雷』スフェール・テネブルを摩那が操り、刹那に飛来した弾丸を吸収して見せる。
 摩那のサイキックグローブが発光する。
「皆様。念の為、頭を下げてくださいね」
 その場で摩那が跳ぶ。
 吹き抜けの二階式広間となったそのフロアは、侵入者である摩那からすれば上からの射撃において格好の餌食となってしまう。相手は周囲の被害など微塵も考慮しないだろう。
 準備さえ整っていたなら、恐らく生存者達を洗脳するか脅して戦列に加える行為もやってのける可能性があった。
 ばら撒かれる弾丸が摩那の立っていた場所に降り注ぎ、跳弾が飛び交う。
 歪む空間。タクトを揮うように一閃させた摩那の指先の軌道に沿い、暗黒球雷がそれら跳弾から周囲の人々を守護した。
 すぐさま悲鳴を上げて頭を下げ、伏せる彼等を見遣りながら。摩那は弾道から現在の包囲網の穴を見つける。
(遭遇戦にしては死角が少ない。しかし、この施設を利用した狩りに慣れてしまった事が隙を生んだのでしょう)
 宙返りから放ったヨーヨーが二階の手摺にワイヤーを絡め、念動力も使った高速機動で弾幕の中から瞬時に脱する。その間も摩那は並行して周囲への被害を抑えることを成し遂げていた。

 そして、人気の少ない二階へと降り立った今。摩那の方へ殺意と視線が集中する。
「くすくすくす……蜂の巣にしてあげるよぉ、お姉ちゃん!」
「お断りします」
 フロア中で閃光が瞬き、重なったガトリング砲の駆動音が狂騒となって響き渡る。
 摩那は、自らが打ち込んだ数値を基に計算されたスマートグラスの演算予測を一瞥しながら膨大な弾幕をその場で防ぎ続ける。
 裏で鳴る電子音。
 小さな悲鳴を上げ、少女達へ巨大なドラム型マガジンを投げる生存者の姿。
(なるほど……ああして支援させていると)
 脅され、戦闘に協力させられているのだ。この状況で逆らえばどうなるか、それを考えるなら仕方ないと言えよう。
 ならば、と。摩那は電子音を鳴らしていたドローンの位置を一度確かめた後、その場から吹き抜けの外周に沿って走り出す。
 追従する暗黒球雷が、時折バチリと電流を嘶かせ弾丸を受け止め吸収を続けている。
 数十mも走った所で壁に突き当たった摩那は、そこから一挙に跳躍して天井を蹴りつけ一階の中心部へと降り立った。
 怪訝そうに眉を上げる少女と、三度目の視線を交わす。
「?」
 あどけないその表情に、摩那は表情を消して応じた。
 発光するサイキックグローブの手が、暗黒球雷の消失と同時に万華鏡の如く煌めく一刀を虚空から抜いた。
「力場収束……演算予測、感応速度――最大出力!」
 刃が、その切先が揺れたのと同時に。摩那の肩から先がブレる。
 一撃ではない。幾重にも重ねられた斬撃が、彼女の暗黒球雷の吸収したエネルギーを乗せて一閃に束ねたかのように薙ぎ払われたのだ。
 フロアを、一筋の軌跡が両断する。
 吹き荒れるソニックブームの後に残ったのは、オブリビオンの少女達だった残滓だけである。

「……敵性反応は無し。
 それでは皆さん、まずはここを出ましょうか?」
 唖然とした様子で見上げていた周囲の者達は、摩那の一声で我に返ったように首肯するのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『『外道の狙撃兵』ミスタースコープヘッド』

POW   :    「一方的に撃ちまくってやる!」
【頭部スコープが狙撃モード 】に変形し、自身の【機動力と防御力】を代償に、自身の【ステルス性能と狙撃の命中精度】を強化する。
SPD   :    「てめぇがどう動くのかは分かってるんだよ!」
【偵察ドローンで敵の情報を得ること 】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【大口径狙撃銃から放たれる銃弾】で攻撃する。
WIZ   :    「動けねぇまま死んじまえ!」
【光学迷彩が搭載されたドローンの拘束攻撃 】が命中した対象に対し、高威力高命中の【急所を狙った銃弾】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はリン・ベルナットです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●非情なる狙撃手
 思わぬ収穫になりそうだと、オブリビオンは曇り空から一転して夕焼けとなった紅い空を背にして移動を始めた。
(今日は随分と"餌"が多かったが。まさか……あのシェルターを根城にして力を蓄えていたあの子達を仕留めるとはね)
 背丈を越える大型の狙撃銃を肩に担いだオブリビオンの男は、左右に十字架のような形状をしたドローンを追従させていた。
 狙撃を得手とするオブリビオンに、正確な名は無い。分かるのは、かつて何処かで『猟兵』に狩られているのは間違いない事と――今は自らの悦の為だけに獲物を屠る『狩人』だということ。
 男は、自身がここ数日つけ狙っていた同属(オブリビオン)が別の誰かに狩られた事に、特に何の感慨もなく、ただ意外そうに口笛を吹いていた。

 その興味は既に、これからあの穴蔵から出て来るだろう大勢の人間と共に。フラスコチャイルドを模した少女達を下して見せた猟兵にのみ、注がれていた。
「施設内の警備システムをシャットダウンさせたのはお見事。凄いねハッカーってのは……ボクもそっちの能力があればかっこよく室内戦とか、ンー……向いてないか」
 キシリ、と。白い歯が覗く。
 ドローンが暫し放電音を鳴らした後。光学迷彩だろう、その姿を消してその場から飛び立った。
 オブリビオンの男。狙撃銃を携え、その頭部を『スコープ』と化した異形の男。
 彼はワイヤーを幾つか、クレーターの縁から縁へと内側に線を引くように張っていた。男は狙撃銃を構えたまま、何の気無しにワイヤーに乗り。その上を特殊なローラーブーツで高速で移動していた。
「ン―……ンンー……ンーンー」
 胸の高鳴りを演奏に。男は頭部のスコープをカチカチと回して照準倍率を調整する。
 狙うは有象無象の雑魚ではない。彼とは相容れぬ『猟犬』だけ。
 
 ――スコープの内に人が映ったのは、陽が落ち切る前だった。
黒木・摩那
外にいるのは狙撃手だったんですか。
遠距離からこちらが気づかないうちに急所を打ち抜くのは、
きっと狩猟気分で気持ちがいいんでしょうね。

でも、今回ばかりは相手が悪かったですね。

初撃は【第六感】で回避。
そこからは上空で滞空させたドローン『マリオネット』と、スマートグラスと連携させることで早期警戒網を作ります。
狙撃時の光や衝撃波、弾道計算から、即時に狙撃点を割り出します。

弾は【念動力】で弾道を逸らして回避します。

反撃はUC【紫電翔剣】で魔法剣『緋月絢爛』を解析したポイントに撃ち出します。

たまには狩られる気分を味わってもらいましょうか。




 ――赤々とした陽の光を背にした一撃。
 風速こそ狙撃に適さない環境だったとはいえ、計算され尽くした一射は僅かに反りを帯びて。地下シェルターから外へ出る際に潜る隔壁路を歩いて来たシルエットを容赦なく撃ち抜くはずだった。
 だから、スコープ越しの視界の中で妖艶な黒髪が不意に宙を舞った瞬間。狙撃手の男は声ならぬ声を漏らした。
 使用した弾丸は特に貫通力の高く、骨を粉砕する打撃力にも優れた物の筈。
 ならば説明がつかない。女の挙動を、もしも言い表すならそれは。
「避けた……だとッ」

 ――視界が漸く白以外の色に染まり、肌が荒野の外気に触れたと思った瞬間だった。
 その時、背筋を駆け抜けた電流。黒木・摩那(冥界の迷い子・f06233)は迷い無く、無我のまま。自らの体躯を捻り反り宙を舞う行動を取ったのだ。
(……外にいるのは狙撃手だったんですか)
 横滑りに着地した摩那は背後から追随していた生存者達を手で制止する。
 同時に、彼女はその手を返し。戻るようにと促す。
(遠距離からこちらが気づかないうちに急所を打ち抜くのは、きっと狩猟気分で気持ちがいいんでしょうね)
 心の内で摩那は視界に映るスマートグラス『ガリレオ』の弾道予測の計算結果を見て呟く。
 足の健を狙い澄ました一撃。加えてその一撃が決まったなら、貫通した弾丸は隔壁の金属面を経た跳弾によって摩那の肩を砕いていただろう。これは、"そういう相手"なのだ。
 大まかな狙撃地点を割り出した摩那がしなやかに肢体を振り抜き、文字通り踊るように続く二射目、三射目を躱しながら狭い通路から飛び出して。クレーターの中央へ駆け抜ける。
 開けた空間。本来ならば狙撃手に狙われている状況で飛び出すには愚策ともいえるが、彼女に限っては例外である。
 摩那は、眼鏡型デバイスを指先でトンと掛け直す。
「地形上この位置を狙うのはそちらにとって苦しいでしょう。出て来ては如何です?」
 相手は……オブリビオンの狙撃手は恐ろしく狡猾で残忍冷酷。だが、今回ばかりは相手が悪かっただろうと摩那は不敵な笑みを溢して空を仰いだ。
 既に彼女は『ガリレオ』を介して自らが操るドローン『マリオネット』を上空に待機させている。先の弾道予測、反射光、空中に散布された金属粉などの要素を速やかに収集したそれらは、逸早く敵の戦略を見切り彼我の戦力差をイーブンに持ち込んでいた。
 つまり、一方的に敵を嬲る図式は覆された。

 ――狙撃手の男は三日月のように開かれた口腔と共に、大型狙撃ライフルを振り仰いだ。
「……イイねェ。そそるよ、"久しぶり"ってやつさ……こういうの、凄くボクは好みだよッ!」
 シェルター入口を狙撃できる位置は、対角線上にしかない。
 しかし卓越した技術に基づく最高のステルス性と、信じ難い程の機動力を以て繰り出すクイックドローが如き速射は、スナイパーの命綱でもある狙撃地点を悟らせないのだ。
 それを破られたと察したのは、つい先ほどから牽制するかのように空中で待機させられているドローンの存在だ。
 奇しくも同じく。オブリビオンの狙撃手もまた、彼女と同じく警戒網と兼して光学迷彩で隠したドローンを待機させていたのだから。

 ……狙撃手の男は、スナイパーである己の在り方を今ここで棄てる事を選ぶ。

大成功 🔵​🔵​🔵​


 一瞬の空白後。繰り広げられるのは半ば一方的な光景だ。
 いつから張られていたのか、クレーター外周を繋ぐワイヤー上をパワードスーツアシストの下で高速移動する狙撃手から幾つもの閃光が瞬いた。
 狙うは、眼下の穴蔵を駆け回る美女のみ。嗜虐心を棄てる事を選択させられ、殺意一色に染められたそれら弾幕は一射一射全てが高精度の狙撃である。
 地を抉り。弾丸の軌跡が空気を引き裂き、耳元を走る弾丸の音色が連なり重なる。
 だが――そのどれもが一猟兵の小柄な体躯を穿つ事なく弾道を逸らされていた。
「計算予測……上空ワイヤーをムーヴポイントと仮定。
 移動予測、弾道予測、三種の弾丸を特定。二秒後敵機ドローンへ……」
 猟兵、黒木摩那の掛けているスマートグラスからの情報を元に。まるで機械的に示し綴られるは、ある種の宣告だ。
 それは、荒野に伸びる夕陽の赤が細身を増した瞬間。
 数多の弾丸を念動力によって完璧に逸らす最中、摩那が抜き放った流麗な細剣――緋月絢爛がその刀身に刻まれたルーン文字を励起させる。

 赤い陽光に照らし出されたその刃は真紅に染まり、万華鏡が如き煌めきが摩那の描いた軌跡に残像を残す。
 何かが来る。
 その予感が、摩那の頭上を駆けていた狙撃手の男を更に加速させた。
 火花を激しく散らして機動する。合間、正しく目にも止まらぬ速射が摩那の急所全てを撃ち抜こうと殺到した。
 ……刹那。

 無数。
 迫る必殺の弾丸を前に投げ放たれた魔法剣が全てを弾き、奔る衝撃をも追い越して、スナイパーの男を貫き飛ばした。
多々羅・赤銅(サポート)
一切合切大成敗。赤銅鬼が、お邪魔すんぜ
混ーぜて!

NG:子殺し

性格:人助けに躊躇無い破竹の快楽主義】
酒煙草賭け事、悪巫山戯も夜伽もだぁいすき。ガタイの良い真摯な奴とか特に好き♡敵でも惚れちまうね、赤い糸ごと御魂を斬って、何れ地獄の果てで落ち合おう。
あとな、私すっっげー寂しがりなの!
だから敵ともガンガン話すし、人には好かれたい!
ま、敵は仲良くなっても斬れっけど。

戦闘:鎧無視斬撃と耐火特化】
斬れないモンは何も無えよ。
鉄、炎、音さえも
見切り受け流し斬り伏せる。
身体に流れる聖者の血が、多少の傷は次々塞ぐ
肉盾役も、ご要望とあらば

日常冒険:酒、交流、笑う脳筋】
人と話すの好き!はしゃぐのも大好きー!あそぼ!




 何が起きたのかと、前後不覚になった最中に男は混乱する。
 つい先ほどまで相対していた女に銃弾が尽く弾かれる様を、高揚したままに見下ろしていた。その後だ、その後、視界を真っ赤な万華鏡の煌めきが覆ったかと思った瞬間。不意に腹部を何かが刺さり、そのまま男を連れ去ったのだ。
 困惑した頭の奥で、男は。
「ぐ、ヌゥッ……ぁあああ!」
 即座に受け身を取るべく背を丸め、接地の瞬間に腹部に突き刺さっていた細剣の刃を当てて衝撃を利用して刃を引き抜き飛ばす。
 視界の奥で不自然な軌道を描き弾かれたように飛翔する細剣を目の当たりにしながら。
 狙撃手の男は血を吐きながら後転を繰り返し、衝撃を逃がしたと判断してバネの様に跳ね上がった。
 忌々しげに、辺りを見渡す。
「ここは……さっきのクレーターから100m近く飛ばされたのか……ッぐ、ボクが、冷静さを失っていたのか」
 頭部のスコープがカリカリと動き、レティクルの拡大と共に景色が彼の手が届きそうな程に近付く。
 クレーターから這い出て、速やかにシェルター内部から救出した生存者達を連れて退散する。猟兵の姿。
 逃げられる。
 そう考えた狙撃を具現化したようなオブリビオンの男が、その場から一歩踏み出した。

 その背中を、あからさまな殺気が打つ。
「はろー。一切合切大成敗。赤銅鬼が、お邪魔すんぜ」
 偵察ドローンはクレーターの内に残したまま。故に、この状況で後ろを取られた事は何の意外性もない。
 即座に背後に立つ女が猟兵だと判断した男は振り向かず、ライフルを肩で回して後方へ撃ちながら地面を転がる。
 甲高い金属音。三つに連なる火花。
「芋スナかよ、まあいいや――混ーぜて!」
「ッ!?」
 技術も何も無い、雑な蹴り上げ。キマッた目つきで懐から抜け出そうと後退するオブリビオンを見下ろす多々羅・赤銅(ヒヒイロカネ・f01007)が次いで放ったのは、ヤクザキックを繰り出して来た者と同一人物とは思えない程洗練された一閃だった。
 大型狙撃ライフルの表面に火花が走り。衝撃でオブリビオンの男が頭部スコープを地面に打ち付けて転がった。
「……フェイク、か。剣の達人と見たよ」
「なにそれ、私はただの道楽者……ってかまあ。私からするとお前はツマンネー虫ってとこでさ、真面目にやんなくてごめんネ?」
 本気を出すまでもないと暗にそう言い除けた赤銅を前に引き金が引かれる。
 大口径のライフル弾を指切りで連射される。重い衝撃が空気を伝い鼓膜を叩くも、赤銅は平然と笑みを浮かべ、奮い薙ぐ一刀の下に弾丸すら斬り伏せて見せる。
 後退するオブリビオンの男は即座にドローンの一基を呼び戻す事を選択する。
 正面戦闘では勝てないと。屈辱に、握り締める大型ライフルの銃架が軋んだ。

 視界が別たれ、複眼のように別所の景色映す小窓が現れる。
「……!?」
 だが、そこでオブリビオンの男は驚愕に狼狽えた。
 赤銅を前にして。グレネードを使いその場から離脱を図る男は、そのスコープヘッドの内側でかつてない程の煮え滾る怒りを覚えていた。
 視界の端に映るドローンからの映像。そこに見えるのは。
「ここまで来て、逃がすものか……ッ」

成功 🔵​🔵​🔴​

ラブリー・ラビットクロー
●聞き耳
風切音聞こえる?
【未確認の飛翔体を検知しています】
目に視えないなん
音が微かに聞こえるのん
こっちを覗いてるんだ?
そんなのズルい
じゃあね
難しー事はよく分かんないけど
こーするのん

●アート
アウトローサイン用のカラフルなペンキを沢山ぶちまけちゃうなん!らぶがペンキだらけになっちゃってもいーのん
いくら透明になってても
ペンキで塗り潰しちゃえばわかるし視えなくなるなんな♪
見つけた!
プロペラは壊してカメラは壊さないぞ
今のらぶ達とそっくりなハリボテを作って
遠目にカメラに写るよーに設置するなん
後は本物のらぶ達が映らないよーにレンズを拭いて出来上がり

●切り込み
偽物のらぶ達に気を取られてる間に敵を奇襲するなん!


ブランク・ディッシュ
…外に狙撃手がいる。
俺達がどうにかするから、身を隠していて…え、あ
・・・私、ずっと変装したままでしたね。

魔導化術を解き、一般奪還者から元の姿へ
後は・・・私達におまかせください。あと、騙していてごめんなさい?

『空白の貌』近付くのに10秒いりませんが、
迷彩、周囲の風景に紛れ、空中浮遊、ブースターで躯体を吹き飛ばし飛行

うっかり軽い装甲であんな物に当たっては、困ってしまいますから。
アイ・センサーで情報収集、祟り糸を介してドローンを呪詛でハッキング

偵察ドローンは偽の位置情報を流し撹乱
操縦権を奪ったドローンで拘束攻撃を狙撃手へ行います。

暗殺、アームブレードでなぎ払います。




 それは、偶然の邂逅。
「そっちは探索者の人達なん?」
「……いいえ。こちらも"同じ"です」
 入り組んだ地下シェルターから脱するべく帰路に着いていたラブリー・ラビットクロー(とオフライン非通信端末【ビッグマザー】・f26591)は、意外にも探索者と生存者達の一団を引き連れていたブランク・ディッシュ(ウォーマシンの悪霊・f28633)と遇ったのである。
 とてとて、と近付き。一団の先頭に立っていた自身をまじまじと見上げて来るラブリーを前に、屈強な奪還者の姿に擬態していたブランクは小首を傾げて「ああ……」と呟いた。
「……私、ずっと変装したままでしたね」
 同時にそれまでの姿から一変。
 瞬く間に、ブランクの姿は本来の流麗なフォルムをしたウォーマシンの姿へと変貌し、ラブリーや周囲の者を驚かせた。
「マザー、凄いなん。変身だこれ」
【本日のコーディネートは流行り物が良いでしょう】
 少しずれた端末の返答を聞きながら、一同は同行する。

 ――暫くの後、彼等は嗅ぎ慣れた砂の臭いに半ば安堵した。
 外へと続く階段型の隔壁。内奥から見上げる先には、落ちかけた陽の光が差し込んで来ていた。
 だが、猟兵であるラブリーとブランクは互いに顔を見合わせる。
「……外には狙撃手がいる筈」
【サーチ結果。半径10m以内に直近の弾痕と硝煙反応を検知】
「もう誰か戦った後なんな、無事だといいけど。ちょっと外の様子見に行って来るから、みんなここで待ってるのん」
 戦闘の痕跡に眉根を顰める一同をよそに、ラブリーはマザーを盾にするようにして後ろに隠れながら慎重に歩を進める。
 外の様子がまだ見えるか見えないか。そこまで階段を上がった所で、彼女はふと聞き耳を立てる。
 ……微かだが、電動のモーター音と風を切る音。
「風切音聞こえる? 目に視えないなん」
 ピコン、と反応するマザー。
【未確認の飛翔体を検知しています】
 それを聞いたラブリーは少し下がって、んーと唸る。
「音が微かに聞こえるのん、こっちを覗いてるんだ? そんなのズルい。
 ……じゃあね。難しー事はよく分かんないけど、こーするのん」
 何事か閃いたように頷いたラブリーはのそのそと手持ちを漁り、ある物を取り出したのだった。

「……」
 後方で訝し気に様子を伺って来る生存者達を一瞥し、階段上から外へ一歩出たラブリーの背中をブランクは見つめる。
 先程までは煤汚れがあっただけで、ピンクの可愛らしいパーカーにガスマスク姿だったラブリーの姿は、今はその髪にまでやたらカラフルなペンキが付着していた。
 そう、ラブリーの秘策とは。
「いくら透明になっててもペンキで塗り潰しちゃえばわかるし、視えなくなるなんな♪」
 辺り一面に持ち込んでいたペンキをぶちまける。そうすることで近くに潜んでいるステルス機を見つけようという試みだったのだ。
 そして意外にも、操縦者の不在故にやたら彩豊かになったドローンの姿はあっさりと見つかってしまう。ラブリーの後ろまで来たブランクは感心した声を漏らした。
「見つけた!」
「なるほど、特定のついでに相手の視覚を潰すと」
 黄色やら赤色に染まった二基のドローン。それ以外には少なくとも近辺に存在しない。
 それに、遠方から聴こえて来る戦闘音から察するに今が好機なのは間違いない。
 考えるまでもないとばかりに浮遊飛行によって距離を詰めたブランクが、その腕から伸ばした祟り糸でドローンを絡め取り地に振り落とした。
 戦闘用の物だろう。初撃に耐え、一時は警告音を鳴らし始めたドローンだったが、すぐさま踏みつけにかかったラブリーとブランクのハッキングによって停止する。

 一機のプロペラを破壊したラブリーがクレーター端、遺跡の入口が映るようにカメラを向けた状態で置いた。
「うんうん、これで完璧なんな。ついでにアウトローサインをここに……」
【たのしそうですね】
 やたら明るい調子のマザーの声が響いた。
 一方。
 彼女がドローンのカメラを向けた先には、"ラブリーとブランク達や生存者達が並んで立って"いた。
 これらはラブリーが作製した、精巧に模写されたハリボテだが。ペンキで薄汚れたカメラ越しにその映像が本物かどうかなど伝えられるとは思えない。
 カメラの後ろでクレーター崖を登ろうとしている一団の、探索者だった男達がブランクに礼を告げる。
「何から何まで世話になった。まだあのドローンを操ってる奴がいるんだろ? 健闘を祈る」
「あっちの女の子に伝えてくれる? 私がまたこうして彼と再会できたのもあの子とあなたのおかげよ」
 生存者達と共に人質にされていたのだろう女性が頭を下げる。
 ブランクは、まだやることがある。それだけ伝えた上で、最初に出会った探索者達の方へ振り向いた
「後は……私達におまかせください。あと、騙していてごめんなさい?」


 ――ドローンの位置情報に細工がされている。
 クレーターに戻って来たオブリビオンの男は、果たしてその事実に気付くに至るまで時間をかけ過ぎた。
 ハッキングされたか、或いはその手の誤情報を伝える能力に依るものか。どちらでも構わない。
「どこだ……ッ」
 到着してから秒で抜き撃った標的のいずれもがハリボテ。
 ドローンの片割れは位置情報を偽り、姿を隠している。もう一機はジャンクだとばかりに苛立ちのまま撃ち抜き破壊した。
 感情的に、激情のまま。男は。
「ッ……!? な、にッぃ!」
 背後からの奇襲。それも自らが調整したドローンが、敵に見舞う筈の電撃による拘束攻撃を己に撃っていた。
 背を弾かれる男は、痺れた手を動かす。
 崖下すぐの位置から飛び出した少女と、迷彩で姿を誤認させている影。
(ぼくが、この、僕がッ)

 オブリビオンの男は、最後に少女のガスマスクを弾いたが。そこまでだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年09月02日


挿絵イラスト