「よーし、みんな頑張ってんな。そんじゃ、次の戦場いってみよっか」
九条・救助(f17275)が、手元の端末を叩いてモニターへと映像を映し出す。
そこはすり鉢状に並んだ客席に囲われた、古代建築様式のコロッセオであった。闘技場内は平坦なフィールドであるため、利用できる障害物などはない。観客席も無人である。
「『過ぎ去りし日の闘技場』だ。ここには敵のオウガはいねーんだけど……そのかわり、侵入者を感知すると、そいつの『昨日の姿』が出てくるんだ」
すなわちそれは、自分自身の影であり、自分との戦いである。
何しろ自分自身だ。実力は互角だろう。間違いなく強敵だが、これに打ち勝たねばならない。
「とにかく要は勝ちゃいーから、真っ向から殴り合ってもいいし、あるいは……あー、そうだね。『そういえば昨日二日酔いで大変だったな……』みたいな心当たりがあるんだったら有利かもね。『昨日の姿』が調子悪かったら、そのまま不調を抱えて状態で出てくるみたいだ」
一応参考程度にね、と救助は付け加えた。
「っつーわけで、話はシンプル。『昨日の自分』が敵として出てくるので、戦って、勝て。作戦は以上だ」
これ以上説明することは特にないだろう。救助は最後にそう締めると、一度静かに頷いた。
「んじゃ、ほかに質問はないね。それじゃ、よろしく頼むぜ」
そして救助はグリモアを光らせ、猟兵たちを戦場へと送り出すのであった。
無限宇宙人 カノー星人
ごきげんよう、イェーガー。お世話になっております。カノー星人です。
引き続き戦争シナリオとなっております。お楽しみください。
☆このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「迷宮災厄戦」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
☆このシナリオには下記のプレイングボーナス要項が存在します。
プレイングボーナス……「昨日の自分」の攻略法を見出し、実行する。
第1章 冒険
『昨日の自分との戦い』
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POW : 互角の強さであるのならば負けない。真正面から迎え撃つ
SPD : 今日の自分は昨日の自分よりも成長している筈。その成長を利用して戦う
WIZ : 昨日の自分は自分自身であるのだから、その考えを読む事ができるはず。作戦で勝つぞ
👑7
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
神羅・アマミ
昨日の妾か…あれは忘れもせぬ…!
大好きな女児向けアイドルアニメの新作発表会があったんじゃよ…!
そこでお披露目された驚愕の新情報とは、アニメから実写へフォーマットを移すという大胆とかそんなレベルでは言い表せぬ予想の斜め上を行く方針転換じゃった!
喜びとも落胆ともつかぬ当惑、少なくとも期待に応えたとは言い難い内容に妾は全くの放心状態、虚無に陥り或いは死すら願ったやもしれぬ…
じゃが!
それでも…それでも人は生きていかねばならぬ!
結果を冷静に受け止め、次なる一歩を踏み出さねばならぬ!
メソメソ涙に暮れていた昨日の妾を超えていかねばならぬ!
砕け散れ、昨日までの私!
UC『板付』にて五体もろとも粉々に爆散せよ!
「…………」
神羅・アマミ(f00889)は闘技場のフィールドへと立ち、その地の砂を踏みしめた。
そして、沈痛な面持ちでまっすぐと目の前に視線を向ける。
『…………』
ざ、っ。
砂の地面を踏みしめ、アマミの前に姿を見えたのは寸分たがわぬ彼女自身に他ならない。――すなわち、『昨日のアマミ』だ。
「……」
『…………』
2人のアマミは無言のままに対峙し、そして睨みあう。
――いくばくかの沈黙を経た後、その静寂は破られた。
『う、っ、うぅ……ううううう……ッ!』
“昨日のアマミ”の、うめき声によって。
「うむ……そうじゃろう。そうじゃろうな……」
アマミはそれを憐れむような目で見つめる。
思い返してみれば、昨日のアマミは実に精神の均衡を欠いていた。
そう――昨日のことだ。あれは、忘れもしない。
「『アイサツ』のことじゃな……」
『うむ……』
『アイサツ!』――『アイドル殺法!』とは、ここ数年の間一部のワールドで放映されていた女児向けアニメシリーズである。アイドルを目指す女の子たちが、時に協力し合い、ときにぶつかり合いながらステージで歌と踊りを披露し、そしてゲームセンターなどに設置されている筐体でも遊ぶことができるメディアミックス型のコンテンツだ。最近トレーディングカードゲームとのコラボ企画もあったことで一部の界隈にはその記憶も新しい。
何を隠そう、昨日はその『アイサツ!』の最新プロジェクトのお披露目があったのだ。
『さすがに、あんまりじゃ……あんまりじゃよ……』
昨日のアマミは感情を抑え切れずに泣き崩れる。
――その新プロジェクトの内容というのが、彼女にとってひどくショッキングだったのだ。具体的に言ってしまえば――それは、「実写ドラマパートとアニメパートを織り交ぜることで新たな表現を目指す」というものであった。
『これまでずっとアニメシリーズでやってきたから応援してきたというのに……ナマモノじゃぞ……ナマモノじゃぞ!きびしい!』
「そうじゃろうな……」
アマミは昨日の自分の放心状態を思い出す。そう、驚愕の新情報。アニメから実写へフォーマットを移すという大胆とかそんなレベルでは言い表せぬ予想の斜め上を行く方針転換……。それは彼女に喜びとも落胆ともつかぬ当惑を与えたのである。
『どうせなら!!どうせならじゃよ!?こないだやってたあの総括編で一旦シリーズ終わり!ってして、それで新プロジェクト立ちあげればよかったんとちゃうんか!?!?!?『アイサツ!』の看板背負わせなくてもよいではないか!これでは名義貸しもいいとこじゃぞ!!」
「わかる……わかるぞその気持ち……」
昨日のアマミが吐露する気持ちは、まさにアマミ自身が昨晩吐き出した想いに他ならない。アマミ自身も一晩眠りについてようやく気持ちを切り替えることができたのだ。
『長寿シリーズじゃぞ!!長年繋いできた夢の積み重ねじゃ!そこにいきなり実写パート混ぜてお出ししてくるのはマジ勘弁じゃと!明日の妾も思うとるはずじゃろ!?!?』
「わかっておる!妾とて納得はできておらぬ……じゃが!」
であるがゆえに、アマミは叫ぶ。
「それでも……それでも人は生きていかねばならぬ!」
『嘘じゃ!お主とて心の底で呪っているはずじゃ!!』
「否定はせーん!じゃが、結果を冷静に受け止め、次なる一歩を踏み出さねばならぬ!」
舌戦!だが、この魂のぶつけ合いは今日のアマミが勝利をおさめ、その意志力で上回る!
「なにより妾は、メソメソ涙に暮れていた昨日の妾を超えていかねばならぬ!」
『むう……ッ!』
――勝敗は既についていた。悲嘆にくれるアマミと、それを越えたアマミ。その意志力の差は、既に歴然である。
「砕け散れ、昨日までの私!」
【板付】!アマミはぎゅ、と強く拳を握りしめる。――一対一!正々堂々の真っ向勝負だ。真正面から迎え撃つように、昨日のアマミもまた同様に拳を握りしめた。
「五体もろとも粉々に爆散せよ!」
『おのれ明日の妾……それはこっちの台詞じゃ!しゃらくせーッ!!』
「死ねーッッ!!」
『死ねーッッ!!』
ぶつかり合う拳!!衝撃に空気が震え、コロッセオの大地が揺らぐ!
その勝敗は――否、先述の通り、決着は既についている。精神状態の差は実力差としてここで如実に顕現した。今日のアマミの拳は、昨日のアマミの拳を打ち砕き、そしてその勢いのままに叩き伏せる!
『ぐあ……ッ…………く、う……っ。……やはり、こうなったか……』
「……うむ」
自らが下した昨日の自分の姿を、今日のアマミは見下ろした。
『ならば……。……妾の代わりに、みとどけて、くれ……あたらしい『アイサツ!』が、どんな明日をみせてくれるかを……』
――最後にそう言い残した昨日のアマミは砂のように細かな粒子と化して消滅したのである。
「うむ……いやでもこう、一晩たつと案外納得できるところもあるぞ。ほれ、ヒーローズアースでもあるじゃろ、カートゥーンのキャプテン・リバティと実写版のキャプテン・リバティがおるよーにアニメの『アイサツ!』と実写の『アイサツ!』があると思えば……」
かくして、ここに一つ目の決着がついたのである。
成功
🔵🔵🔴
ソラスティベル・グラスラン
昨日の『わたし』に大斧を振るう
これも勇者の試練として
大魔王以来の強敵です…雌雄を決しましょう!
こんな機会が無くとも、わたしは日々成長を確信してます
それは『わたし』も一緒
昨日より今が、そして今より明日の方が強い
しかし『わたし』は諦めない
折れず、敵が強ければそれ以上に強く在ろうとする
寧ろわたしを倒し、己の壁を破らんとするでしょう!
『わたし(勇者)』とは、敵に回るとここまで厄介な存在でしたか…!
しかしわたしにだけある物が勝敗を分かつ
事前情報、作戦を立てる時間
熱く昂った『わたし』の攻撃をここぞで【見切り】、力を抜いて隙を作る
ふふ、残念でしたね『わたし』
今日のわたしは、昨日より少し頭が良いらしいですよ?
「はああああーーッ!!」
『やあああああーーーッ!!』
轟音ッ!電光が爆ぜ散り、蒼空の色をした鋼と鋼がぶつかり合う!
片や「今日のソラスティベル・グラスラン(f05892)」!片や『昨日のソラスティベル・グラスラン』!コロッセオにて対峙する2人は、携えた大戦斧サンダラーを互いに振り抜き、激しく衝突しあう!
「は――ッ!」
『さすがは明日の『わたし』……!自分で言うのも少々気恥ずかしいですが、やはり、強い!』
幾度目かの交錯を経て間合いを開いた2人のソラは、互いに息を整えながら睨みあった。
「ええ……同じ気持ちです、昨日の『わたし』……!しかし、これも勇者の試練というものでしょう!」
今日のソラは再び斧を構えたその腕に力を込める。
『その通りです……わたしにとっても、あなた――いえ、『明日のわたし』は、大魔王以来の強敵!』
「気が合いますね――いえ、『わたし』ですから当然ですか!」
じりじりと間合いを図りながら、2人のソラは攻撃のタイミングを伺う。
――そこに立ちはだかる自分自身は、ある意味ではこれまでに剣を交えてきた敵と比べても攻略難度の高い難敵だ。なにしろ、いまソラの眼前に立つ昨日の彼女は、昨日に至るまで彼女が越えてきた戦いの全てを――それこそ、アルダワの大魔王ウームー・ダブルートゥや、群竜大陸の帝王ヴァルギリオスとの戦いまでも――を勝ち抜いてきた勇者ソラスティベル・グラスランその人なのである。
『はあッ!』
「むうッ!」
先手!昨日のソラが一瞬の隙をついて仕掛けた!再び迫るサンダラー!青く光る雷撃とともに刃が迫った。今日のソラは素早く反応し、再び振り抜く斧ではじき返す!
その一撃の重さは、あまりにも強力だ。――だが、それは自分に出せる限界値を越えたもののようにも思えていた。
「……無理をしていますね、『昨日のわたし』!」
『やはりわかりますか、『明日のわたし』……もちろんです。わかっています!わたしは勇者……常に明日へ向かってすすむ者。であるならば、昨日より今が、そして今より明日の方が強いのは当然のこと!』
しかし、昨日のソラは攻撃の手を緩めることなく再び跳んだ。大上段から振り下ろす一撃!今日のソラはサイドステップで飛び退いて躱しながら、カウンターの構えをとる!
「しかし『わたし』は諦めない――そうですね!」
『はい!その通りです!』
どれほどの敵が強くとも、折れず、敵が強ければそれ以上に強く在ろうとする――
『明日のわたし……あなたでも、そうするはずです!無茶をしてでも勝とうとするでしょう!たとえば今!あなたの目の前に『明日のあなた』があらわれ、勝負を挑んできたのなら!』
「……ええ、わかります!わたしは、きっとこう言うでしょう!」
呼吸。一拍の間をおいて、2人のソラは唱和した。
「『たとえ明日のわたし自身であろうと、今のわたしが越えてみせる!』」
轟音!電光が青白く爆ぜる!ぶつかり合う大戦斧!互いにその両腕に疲労感を覚えながらも、2人のソラは口の端で笑んだ。
「ふふ……『わたし(勇者)』とは、敵に回るとここまで厄介な存在でしたか……!」
『自分が一番わかってるはずですよ!』
交錯!『今日のソラ』が横薙ぎに刃を振れば、太刀筋を見切る『昨日のソラ』が飛び退いて躱す。反撃の刃を縦一文字に振り落とせば、今日のソラは打ち合わせてその攻撃を弾いた。一進一退の攻防!周囲一帯で電光が爆ぜ、青白い光が広がる中で2人のソラの決闘が続く!
『だあああああッ!』
――しかし!
「……!」
ここで、今日のソラは不意に身体の力を抜いた。
熱くなればなるほど、血が滾れば滾るほど、昂れば昂るほど――ソラスティベル・グラスランという戦士は、“前しか見えなくなる”のだ。
彼女はその直情的な性格を自分自身の弱点であると自覚しており、そして今この瞬間、昨日の自分の弱点であるとして利用した。
今日のソラは、今日、この決闘場に至るまでに。作戦――即ち、『昨日の自分を熱く昂らせたうえで、自分自身の中に冷静さを残しておく』という戦いの指針――を立てる時間を得られたのである。
『しまった……!』
「そのまっすぐさが、わたしとあなたの弱点ですよ!」
今日のソラは、昨日のソラの太刀筋を見切る。
――それは、必殺の一撃であると同時に、とんでもなく大振りで、躱されれば大きな隙を生んでしまう渾身の一振りであった。
ソラはそれを見切っている。であるが故に、カウンターの一撃を叩き込むために最適な位置取りへと回避機動をとった。
「やああああああッ!!」
そして――そこに生じた隙を逃すことなく、ソラは全霊の力を込めて戦斧を振り抜く!
それは勇気と気合と根性を余すところなく乗せた最強の一撃である。【勇者理論】はソラの両腕に力を宿し、そして、昨日の自分を越えてゆく!
『ぐあ……ッ!!』
Critical!!会心の一撃――、ッ!!重く鋭く激しい技の冴えを全身で受け止め、昨日のソラは悲鳴を上げながらコロッセオの地面へと転がった!
「ふふ、残念でしたね『わたし』……今日のわたしは、昨日より少し頭が良いらしいですよ?」
そして、それこそが決着の瞬間である。ソラは大きく息を吐き出し、呼吸を整えながら勝利を宣言した。
『はあ……はあ……く、悔しいなあ…………でも、仕方ないですね』
砂の地面で大の字に寝転がる昨日のソラは、心底悔し気に声をあげた。
『……いい戦いでした、『わたし』。……明日も、明後日も、その先も。どこまでもいけるよう、武運を祈ります』
「はい。……ありがとうございました、『わたし』!」
かくして、『昨日のソラ』は砂のように粒子となって崩れ去り、ここに決着はつく。
昨日の自分を乗り越えて、勇者はここに凱旋するのであった。
成功
🔵🔵🔴
小雉子・吉備
昨日のキビと戦うかぁ……オブリビオンの性質上
記憶を失う前の過去のキビといつか出会う事もあるだろうし
その予行だと思って行くよっ!
〖WIZ〗
【先制攻撃】で【高速詠唱】で【オーラ防御・結界術】を込めた〖時の愚鈍「スロウフールハウル」〗の【弾幕】を【範囲攻撃】でばら蒔き【盾受け】
相手も同じ事して
隙見て【高速詠唱・多重詠唱・早業】を併用した裏技(初依頼参照)を使いUCを放つ筈
裏を掻き
【第六感】で機を計り〖時の愚鈍「スロウフールハウル」〗を【範囲攻撃・オーラ防御・結界術】の併用でバリアとして展開
突撃し〖黒蜜かけキビダンゴアイスバー〗を相手の口に加えさせ詠唱妨害しつつ【高速詠唱・多重詠唱・早業】併用しUCを
小雉子・吉備(f28322)は、闘技場へと足を踏み入れた。靴底が砂を踏み、ざり、と音を鳴らす。
『うん!待ってたよ、キビ!』
煙った砂塵の先に立ち、吉備に対峙する敵の姿こそ――昨日の彼女自身である。
「出たね、キビ!……さあ、勝負しよう!行くよっ!」
吉備は恐れることなく戦いに臨み、構えをとった。
小雉子・吉備、という猟兵は、過去の記憶を持たない。――であるが故に、吉備は過去の自分自身を知らない。
それはすなわち、今の吉備の知らぬ過去の――昨日どころではなく、記憶を失う以前の自分自身が、過去からの侵略――すなわちオブリビオンとしての姿をとって現れることがあるかもしれない。
この戦いは、その予行だと思って挑もう。吉備は唇に詠唱を乗せた。
「実力伯仲なら、先手必勝だよっ!」
『奇遇ーっ!キビもおなじこと考えてたんだ!』
高速詠唱!今日の吉備と昨日の吉備は、ほとんど同時に術式を構築する。『時の愚鈍「スロウフールハウル」』!魔力弾の周囲の空間の時流を歪める術式を込めた誘導弾による弾幕魔術である!同じ色をした弾幕はセッションするように交錯しあいながら闘技場の中を広がり、極彩に彩った!
「それなら――」
『キビならこうする――わかってるでしょ?』
昨日の吉備は更に詠唱を重ねる。踊る唇が素早く新たな術を紡いだ。――【タイムループリトルチェイサー】。限定的な時間逆行の力を持つ攻性弾幕だ!
「わかってる……!くっ、我ながらすごい弾幕!」
対し、今日の吉備は防戦に回る。同じ術式のぶつかりあいを避けたかたちだ。吉備は弾幕をすり抜けるように回避機動をとりながら、再び手の中に術式を繰る。スロウフールハウルの再展開!しかし、今日の吉備はそれを敵の妨害として拡散させるのではなく、自身の周囲に置くことで防壁として展開したのである!
『よく止められたね……でも守ってるだけじゃ勝てないよ!キビならわかってるはずでしょ!』
「もちろん!……だから、こうさせてもらうよ!」
今日の吉備は弾幕による防壁を展開したまま前進した。――そのまま、強引に突破!防ぎ切れなかった弾が二、三発掠めていったが、直撃でなければどうということはない!瞬く間に到達する至近距離!
『あっそれまずい!』
「と思ってももー遅いっ!」
間合いを詰め切った今日の吉備は、一振りの剣を――もとい、大振りのアイスバーを引き抜く!黒蜜かけキビダンゴアイスバーだ。こと戦闘においては、これは鈍器として使用される!
「えやーっ!!」
『グワーッ!』
フルスイング!今日の吉備は昨日の吉備へと全力でアイスバー打撃を叩き込んだ!たしかな手ごたえとともに、昨日の吉備の身体が軋む!
「これで、お終いだよ!」
更に追撃!昨日の吉備が打撃ダメージから復帰するよりも先に詠唱を紡ぎ出し、機を逃さず今日の吉備は最期の一撃を放つ。【タイムループリトルチェイサー】!吉備の手の中で収束した術式弾幕が一斉に解き放たれ、そして昨日の吉備へと殺到した!
『や、やっぱり明日のキビには勝てないかーっ!』
炸裂!命中した弾幕が花火めいて弾け、そして昨日の吉備の身体を極彩色に染め上げながら爆ぜてゆく――その光の中に呑まれるように、昨日の吉備は砂のような粒子となって崩れ去り、消滅したのであった。
「ふーっ……。これで、キビの勝ち……だね!」
拳を挙げて勝ち名乗り。かくして、またひとつの決着が闘技場へと刻まれたのである。
成功
🔵🔵🔴
ティオレンシア・シーディア
【血反吐】
昨日のあたし、かぁ…クライング・ジェネシスが似たようなことしてきたわねぇ、そういえば。
あれは「少し前のあたし」だったけど。
小細工しても早撃ち一閃、は「知ってる」し。…となれば、〇決闘スタイルでいざ尋常に、かしらぁ?じゃ、それに乗りましょうか。
お互いに●封殺一閃、たぶん刹那だけあたしのほうが早いけど…それじゃ相討ち不可避だし、もう一つ仕込み。ゴールドシーンにお願いして眉間にエオロー(結界)の防壁を展開、ラグ(幻影)で隠蔽しておくわぁ。他のところは散々色々仕込んであるって「知ってる」もの、狙うならここでしょ?
これ仕込んだのはここに来る直前だもの。「昨日のあたし」は「知らない」わよねぇ?
『はぁい、ごきげんようあたし』
「あらぁ、どこの別嬪さんかと思ったら昨日のあたしじゃない?ごきげんよう」
2人のティオレンシア・シーディア(f04145)が、闘技場において対峙する。
脳を蕩かすような甘ったるい声の二重奏。しかして、その2人の間で交錯する視線は声質とは裏腹にどこまでも冷たく、そして鋭い殺気を帯びる。
「昨日のあたし、かぁ…クライング・ジェネシスが似たようなことしてきたわねぇ、そういえば」
『あったわねぇ、そんなこと。覚えてるわよぉ、『骸の海発射装置』のやつでしょお?』
思い出話を語らう女学生のように2人のティオレンシアは言葉を交わす。――交わしながら、間合いを詰める。互いにその指先はさりげなく、そして油断なく腰のホルスターへと伸ばされていた。
互いに、タイミングを計っているのだ。
『……ま、さすがにここは『あたし』よねぇ』
湛えた微笑みの裏で剣呑に研ぎ澄まされる殺気。どちらも笑顔を浮かべながら、しかして双方ともに相手を間違いなく“仕留める”つもりでいる。
ティオレンシア・シーディアという猟兵は、そういう女だ。緻密な計算と研ぎ澄ませた技術。そして一度標的と定めた相手を間違いなく仕留めるという冷徹なまでの意志の強さが、これまでも多くのオブリビオンを屠ってきた。
「わかりきってることでしょぉ?――なら、手っ取り早くいきましょう?」
『ええ、そうねぇ――時間が勿体ないものね?』
昨日のティオレンシアが、はじめからそれを予期していたとばかりに胸のポケットから一枚のコインを引き抜いた。
「オールド・スタイルね。いいじゃない」
『こういうの、好きでしょお?』
口の端に笑みを乗せながら、昨日のティオレンシアが指の上にコインを置き、そして――弾く。
『Are you ready?』
「Already」
――そして、闘技場の砂の上にコインが落ちる。それは“コインが地面に落ちた瞬間から引き金を引くことが許される”という、ガンファイター同士の決闘の作法のひとつだ。
「――!」
『――!』
2人のティオレンシアはほとんど同時に引き金を引き、そして同時に身を逸らした。銃火を歌い上げる鉄の唇。歌う二挺はともに45口径コルトSSAカスタム・オブシディアン!
「ッ!」
掠める45口径弾頭!避けた頬に血が滲む。しかしてそれは昨日のティオレンシアとて同じであった。互いに初手は仕留めそこなったかたちだ。だが、2人はともに油断なく次の手を打ってゆく。昨日のティオレンシアは銃を手にしたまま前進し、更に引き金を絞った。一度二度三度四度五度!素早いリロード!続けて再び六連射!再び装填!昨日のティオレンシアはファニングめいた早撃ちで今日のティオレンシアへと攻め込んだ。
『さあ、『明日のあたし』はどう出るかしらぁ?』
「――それが通用するとは思ってないでしょお?」
だが、今日のティオレンシアは怯まない。速射性を優先したファニングショットは、徒党を組んで現れるタイプのオブリビオンたちに対しては有効打を与えうるが、一定以上の力量をもつ敵に対しては致命傷を与えるよりも相手を牽制し、その後に本命の一発を叩き込むために使われることが多い。ティオレンシアはそれを知っている。
『えぇ、そうねぇ』
素早いターゲッティングとトリガー!高らかに鳴る銃声と共に再びティオレンシアを狙う45口径弾頭!――その狙いは、眉間であった。
「そう。これが本命。必ず狙ってくる……」
しかし、今日のティオレンシアは回避機動をとらない。そして吸い寄せられるように、弾頭がティオレンシアの額を目指す!
『避けそこなったわねぇ?これで、あたしの勝ち――』
「あらぁ――勝ち誇ってぬか喜びなんて、あたしらしくないわねぇ?」
だが、45口径弾は今日のティオレンシアの眉間を貫くことなく、その寸前の空間において爆ぜ散った。
『……そこにも『仕込んで』たのねぇ。さっすがあたし』
ティオレンシアはガンファイターでありながら、ルーン魔術を繰る魔術師でもある。であるが故に、彼女の纏う衣類には術式紋が刻まれ、そのほぼ全身を術式防壁によって保護しているのである。
――そうした“仕込み”の穴が、眉間であった。そのはずだったのだ。故に、昨日のティオレンシアはそこを狙ったのである。
「えぇ。ここに来る直前にね」
《ぴきゅ》
ゴールドシーン。願いをかなえるとされる鉱石生命体だ。ティオレンシアの額を守ったのは、彼の加護である。それこそが今回の彼女の“仕込み”であった。
言葉を紡ぎ出すと同時に、今日のティオレンシアはオブシディアンのグリップを握り、そして筒先を向けた。
「それじゃ、おやすみなさい」
【封殺/シールド】。
『――お見事』
昨日のティオレンシアが3度目のリロードを行い追撃の態勢に入るより先に、今日のティオレンシアは引き金を引いた。
勝利の確信という油断によって生じたその隙へと向かって牙を突き立てる、恐ろしいまでに素早く、そして精密な射撃であった。
オブシディアンが吐き出した45口径弾は音の速さを越え、そして昨日のティオレンシアの眉間を貫く。
かくして、昨日のティオレンシアは断末魔一つあげることなく、最後にひとつ笑みを残して砂のような粒子となって崩れ去った。
決着である。
「ふーっ……。ちょっと楽しかったわねぇ」
ティオレンシアはリボルバーをホルスターへと納め、そして歩きだす。
コロッセオにおける戦いは、その多くを猟兵たちが勝利で飾っていた。
制圧まではあと一息といったところだ。――彼女たちの戦いは、続くのである。
成功
🔵🔵🔴
メフィス・フェイスレス
昨日の私は昼食前の私ね
自分で言うのもなんだけど獣みたいな奴
オウガや吸血鬼をどうこう言えない自覚はあったけど
腹が減るの?そりゃ「人食い」を前にしたらね
すでに死んでいるモノなら人食いじゃないなんて我ながら苦しい言い訳
陽光を取り戻しても私の居場所は、
今はそんなことどうでもいい いずれ咎めは受ける
でも今喰われる訳にはいかないの
空腹な私ならまず竜骨咆吼を使う筈
それに加えて空腹な程私の行動は単調
相手ばかり見て目が行かないであろう足下に仕込んだ「微塵」を起爆して
体勢を崩して射線をずらす事で熱線を回避し肉薄
硬化した飢渇で防御してくる
でもそれも「私」なのよ 「人食い」のね
鋸を振るって飢渇毎胴を薙ぎ払って仕留める
『う、ウウゥゥゥ……』
「――ああ、昼食前の私ね」
メフィス・フェイスレス(f27547)は、対峙する。
『ぐるるるるる……!』
「自分で言うのもなんだけど、獣みたいな奴ね」
メフィス・フェイスレスという女の魂は、常に正気と狂気の狭間で揺れ動いている。
『がああああうううううッ!』
そして、今まさに彼女が対峙する昨日の彼女自身の姿は、獣性をあらわにする狂気そのものであった。
「腹が減るの?そりゃ『人食い』を前にしたらね」
『ぐ、ううう』
唸る狂気のメフィスが、じりじりとメフィスへ間合いを詰める。
メフィスは真正面からそれに対峙し、そして静かに息を吐いた。
「……ねぇ、『私』。私、そんなに美味しそうに見える?」
独り言のように呟くメフィスの前に、狂気を伴う唸り声が尚も近づく。
それは、彼女自身がもつ狂気と獣性そのものが、逃れ得ぬ宿命であると迫るようでもあった。
『ぐるるおおおおおおおおお……』
「そうね。陽光を取り戻しても私の居場所は――」
メフィスは一度短く言葉を切り、そして得物に指をかける。
「……いえ、今はそんなことどうでもいい。いずれ咎めは受ける」
『があああああああああああああああああッ!!』
そして、狂気が咆哮する。
「でも、今喰われる訳にはいかないの」
響き渡る叫びが号砲となり、2人のメフィスの戦いはここに幕を開けた。
『ぐうううううう、ッ!ぐるるるあああああ!!』
ぱき、ッ。ぶち、ぶち。ごきり。狂気のメフィスの肉体が音を立てて変異する。骨格が歪み、肉を断ちながらその背に背骨の一部が露出する。――竜骨咆吼。空腹であるほどにその威力を増す彼女のユーベルコードのひとつである。
「そうね。『私』なら、そうするでしょう」
『があああああッ!』
骨の砲身に熱が収束する。前傾姿勢になる狂気のメフィスは、彼女を睨みながらその照準を向けた。
「……だけど」
そこへ割り込むように、メフィスは手の中から黒い塊を放った。塊――発火性のタールでできた爆薬は狂気のメフィスの足元へと転がる。
『がああああうううううううううううッ!』
「そんなにお腹を空かせてちゃ、周りも見えてないでしょう」
砲口が熱を吐き出すよりも速く、爆薬は炸裂した。
『があうッ!?』
足元で爆ぜる熱に、狂気のメフィスが態勢を崩す。砲身がブレた。放たれた熱線はあらぬ方向へとその矛先をずらされる。そこに生じる隙へとめがけて、メフィスは砂の地面を蹴って一気に間合いを詰めた。
「お生憎様ね」
――至近距離。メフィスは懐へと飛び込んだ。
『うううううううううううッ!』
しかして、狂気のメフィスは飢渇に喘ぐ。唸る声とともにその皮膚から黒いタール状の液体を分泌した。それは瞬く間に硬化し、外殻めいてその身を護る。
「ええ、そうするでしょうね。私なら」
だが、メフィスは怯まない。――自分自身の身体のことは、自分自身が一番よく知っている。
その装甲では、このこの一撃は防ぎ切れない。
メフィスの『尾』がかたちを変える。棘のように無数の刃が並び、肥大化した【鋸/ノコギリ】の尾刃。
「終わりよ」
『がああああああっ!』
メフィスは全身に力を込め、身体を回転させる。そうして勢いを乗せ、加速をつけた尾刃を狂気のメフィスへと叩き込んだ。
鈍い衝撃。みし、と音をたててタール外殻を砕き、そのまま胴を薙ぎ払う。
『が、ああああっ!があああぐううううううううう!』
「ひどい様ね」
血と肉片をぶちまけながら、獣めいた断末魔と共にメフィスの狂気が砂の上へと転がる。――そうして、その躯体は細かな粒子状へと変わり、砂山が崩れるように消滅していった。
「――でも、それも『私』なのよ。『人食い』のね」
消えゆく昨日の自分自身の躯体を見下ろして、メフィスは小さく呟く。
それが、この戦いの決着であった。
成功
🔵🔵🔴
テリブル・カトラリー
昨日の自分、か。……性能はほぼ同等だな。
なら、負けはしない。
【POW】正面から迎え撃つ。
機械刀を選択、ブースターでダッシュ、接近戦を仕掛ける
互いに超高熱の属性攻撃を打ち合い、切り結ぶ。
同じ機械である以上、戦闘方法に変化はない。戦闘パターンも、そうだ。
そして、予め自分と戦うと分かっていれば、事前に行動予測を構築可能だ。
上段からの斬り降ろしを見切り、振りきる前に武器受け、
怪力で相手の機械刀を弾き飛ばし、早業で機械刀を振るい、鎧無視攻撃。
腕をなぎ払い、切り落として、クイックドロウ。
…先に、眠っていろ。
頭部に弾丸を叩き込んで、終わらせる。
「昨日の自分、か」
テリブル・カトラリー(f04808)は、対峙する。
彼女の眼前に立つのは自分自身の昨日の姿だ。今の自分と、そう大きく変わるところはない。
「性能はほぼ同等だな。――なら、負けはしない」
『こちらとて同じことだ。ゆくぞ、明日の私』
轟音。相対する2人のテリブルは同時にブースターの火を入れた。推進剤が燃えながら、2人の躯体は共に加速し始める。――互いに、まっすぐ前へと前進。正面から迎え撃つ!
「はッ!」
『甘い!』
加速と同時に、2人は剣を抜き放つ。赤熱する機械刀。一瞬のうちに近接戦闘の間合いへと入り、互いに刃を振り抜いた。ギャンッ!刃と刃がぶつかり合い、悲鳴めいた音をたてる。衝突の反動を利用し、反転しながら放つ薙ぎ払い。しかし、昨日の彼女はそっくり同じ戦闘機動パターンを鏡写しのように行う。再び刃が激突!弾かれ合う2人!
「……なるほど、攻め手は読まれているか」
『お互い様だ、私』
赤熱する刃は赤く軌跡を残しながら切り結び、ぶつかり合い、離れ、そして再び交錯する。――互いにコンバット・パターンは把握済み。相手の動きは手に取るように理解できる。何しろ、相手はほかならぬ自分自身なのだから。
だが、その戦いも無限には続かない。
『む――ッ』
「どうやら、そろそろ時間切れが近いようだな、私」
激しい戦闘機動は当然内部駆動系に大きな負荷をもたらし、加熱する躯体はいずれオーバーヒートする。2人のテリブルは、互いにその兆候を感じ取っていた。
『ならば――決着を付けよう』
「いいだろう」
秒に満たぬ僅かな静止――刹那に交錯する視線と殺気。
そして、先手を打ったのは昨日のテリブルであった。赤熱する機械刀を素早く上段へと掲げ、そしてブースト加速とともに振り下ろす。シンプルであるが、それを機体性能の加速度で補った重く鋭い必殺の一撃であった。
『――ッ!』
「はッ!」
しかし、今日のテリブルはその太刀筋を見切り、そして横に寝かせるようにして構えた機械刀で受け止める。ガァン、ッ!強烈な激突音がコロッセオに響き渡った。
『……なるほど、予測されていたか』
「ああ。予め自分と戦うと分かっていれば」
テリブルは両腕の人工筋肉にエネルギーを回す。上昇する出力が、そのまま昨日のテリブルを押し返した。押し込むパワーで、敵の刀を弾き飛ばす。
「これで、終わりだ」
閃、ッ!
追撃の刃が振り下ろされる。赤い軌跡を残しながら、機械刀が昨日のテリブルの腕を薙いだ。――続けてテリブルは手にした剣を砂の上に放り捨てながら、自動拳銃を引き抜く。
「……先に、眠っていろ」
『ああ――そうさせてもらう』
そして――最後に響く銃声がひとつ。
かくしてここに戦いは決着し、昨日のテリブル・カトラリーのその躯体は砂の地面へと伏す。そして、砂粒めいた粒子へと還り、崩れ去った。
そうして、この闘技場におけるすべての戦いがここに決着する。
もはや猟兵たちの足を止める過去はここにはなく、ただ乾いた砂の地面が残るのみであった。
成功
🔵🔵🔴