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迷宮災厄戦⑪〜斧降る森で~

#アリスラビリンス #戦争 #迷宮災厄戦

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「鏡よ鏡よ鏡さん、この世界で一番美しいのはだあれ?」
「この不思議の国の中で、という意味ならば貴方です女神様……だって今、貴方しかいませんし」
「鏡よ鏡よ鏡さん、この世界で一番美しいのはだあれ?」
「この不思議の国の外という意味であれば分かりかねます……そしてこの国で一番疲れているのは毎日その質問に付き合わされる私で御座います、女神様」
「鏡よ鏡よ鏡さん―――」


「随分と面倒そうな世界があったもんだね」
 中御門・千歳(死際の悪魔召喚師・f12285)は心底面倒そうに猟兵たちへと語り掛ける。
 千歳によれば、そこはかつての忠臣「鏡の女王」の怨念が籠もった国――あちこちに生えている「真実の鏡」がに質問することで、「この不思議の国内部の事」限定で情報が得られるのだという。
 予知の内容から千歳がげんなりしているのはそこを支配するオウガ自体の性格だけでは無い……そのオウガの攻撃方法によるものだ。
 予知によればオウガは鏡に質問することで猟兵たちの位置を把握し、遠距離から一方的に攻撃してくることが可能だという。
 オウガが猟兵たちを迎え撃つべく待機している場所が森の中というのもまた、面倒な理由だろう。
 視界が通らないが故に敵を発見出来ず、一方的な攻撃を受けることとなるというのだ。

「そしたらあたしらも、鏡を使わにゃならないねぇ」
 であるならば、対応方法は一つ。
 猟兵たちもまた鏡を使うことにより、情報を得ることだろう。
 その鏡は現地の不思議の国の内部限定の話であれば、何であれ答えてくれるというのだ。

「それじゃ、気を付けて行っておいでよ」
 老女はそう言いながら猟兵たちを送り出す。
 皆の安全を祈りながら。


きみはる
●ご挨拶
 お世話になります、きみはるです。
 次の依頼はこんな感じになりました。

●依頼について
 真実の鏡は、敵の位置はもちろん「不思議の国内部の事」限定で何でも答えてくれます。
 敵もまた「猟兵の正確な位置」を把握しながら戦ってきます。
 そこで、どういった質問をするのかがこの依頼のポイントとなるでしょう。
 ちなみに猟兵個人のセンシティブな質問等、問題があると判断した場合はシュシュッとさせて頂きますのでご了承下さい。
 尚、プレイングボーナスは下記の内容となります。

 プレイングボーナス……鏡に有効な質問をする。

●プレイング募集期間について
 OP公開~締まるまでをプレイング募集期間とさせて頂いております。比較的少な目人数での完結となりますことをご承知おき下さい。

 それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 ボス戦 『泉の女神』

POW   :    あなたが落としたのは、この金の斧ですか?
【距離を無視して首に迫る一撃】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【金の斧】で攻撃する。
SPD   :    それとも、銀の斧ですか?
【亜空間】から【銀の斧】を放ち、【四肢を斬りつけること】により対象の動きを一時的に封じる。
WIZ   :    それとも…
自身が装備する【あらゆる斧】をレベル×1個複製し、念力で全てばらばらに操作する。

イラスト:ヤマトイヌル

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はニィ・ハンブルビーです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

リアナ・トラヴェリア
戦場と敵の能力が噛み合ってて厄介な相手だね。
一刻でも早く相手の居場所を掴まないと…。
首に飛んでくる斧は魔術師の手で防ぎつつ、鏡に問うよ。
「泉の女神にまでたどり着く最速のルートを教えて」

その最中でも斧は飛んでくるだろうから一々防がないと。
遠距離だからといって近距離でも普通に相手戦えそうなのが…。
たまには木を利用してかわしたりも試してみよう。

相手を見つけたら急いで近づくけど、簡単には行かせてもらえないよね。
投げてきた斧を掴んで投げ返して、それを障害物代わりにして接敵。一気に斬りつけるよ。

ここまでの真正面からの強敵も中々いないね…。




「一刻でも早く相手の居場所を掴まないとっ……」
 リアナ・トラヴェリア(ドラゴニアンの黒騎士・f04463)は、額に汗を浮かべながら森の中を駆ける。
 一歩、また一歩駆ける毎に、その翼が、一纏めに括られた髪が、スカートがたなびいていく。
 彼女が急ぐ理由は、虚空から現れた。
 それは風のさざめきによって木々が揺れるだけの空間から現れた黄金の斧。
 勢い良く回転するそれは、正確にリアナ目掛けて飛来する。
 とっさにしゃがむことで回避した彼女は、しかしスピードを緩めること無く走り続ける……目的は一つ、森の中に散在するはずの、「真実の鏡」だ。

「あった!……鏡よ鏡よ鏡さん、泉の女神にまでたどり着く最速のルートを教えて」
 息を整える暇も無くリアナが捲くし立て問うたのは、幾度となく虚空から己を放つ存在――この不思議の国を支配する強力なオウガに辿る為の道筋だ。
「それなら右手にある大樹の方向へ直進するのが一番ですよ、お嬢さん」
 還ってきたのは、想像とは違ったどこか中性的な声。
 一切の振動も無くどこからか聞こえた声に頷くと、逃げられる前にとリアナは駆け出すのだった。

「くっ……」
 先ほど以上の頻度で飛来する苛烈な猛攻。
 それは脅威である共に、相手が移動よりも攻撃を優先しているという証拠――つまりはチャンスなのだ。
 どうやら森にはそこそこの数の鏡があるものの、かといってどこにでもあるというほどの頻度では無い。
 故に鏡から離れることで相手の場所が把握できなくなるリスクを鑑みれば、把握した上で叩き潰すという判断をしたのだと、リアナはそう冷静に推測する。

「いたっ!」
 森の開けた小さな空き地――その中心に存在する泉の上に立つように、件のオウガは存在していた。
 その美しい顔を羅刹のように歪め、こちらへと斧を放ち続けているではないか。
「鏡よ鏡よ鏡さん、この世界で一番美しいのはだあれっ!?」
「美醜の価値観は人それぞれに御座います、女神様……しかし私は、あちらのお嬢様の方が好みです……しつこくありませんし」
 鏡からの返答に怒りを通り越し憎しみの炎を瞳に移し、件の女神はこちらへと斧を放る。
 それは直撃すれば常人の命を容易に奪うであろう一撃――しかしあくまで、直撃すれば……だ。

「そんな攻撃効かないよ!」
 怯むことなく一直線で駆け寄るリアナは、掴み取る魔術師の手(マギスティックグラップル)により飛来する斧を受け止める。
 虚空で斧を握りしめた不可視の腕は、そのまま斧を勢い良く振り回すでは無いか。
 投げ返された黄金の斧は空中で新たに現れた凶刃とぶつかり合う。
 身も竦むような大きな金属音が辺りに響く――しかしリアナはその隙にと女神へと接敵し切り結ぶのだ。

「小娘ぇ!」
 女神の純白の衣装は紅に染まる。
 しかしすぐさま現れた新たな斧を握り締め、女神はリアナの握る黒鱗剣を撥ね上げるでは無いか。
 腕の痺れから感じる膂力の大きさ――遠距離攻撃に徹していたこのオウガは、しかし正面から切り結んでも強敵なのだと、そう判断せざるを得ないようだ。

「ここまでの真正面からの強敵も中々いないね……」
 じわりと浮かぶ冷や汗をそのままに、しかしリアナは剣を振るい続ける。
 例えどんな強敵であろうと、彼女が引くことは決して無い。
 何故ならば少女は――世界を救う、猟兵なのだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シキ・ジルモント
◆SPD
…オウガの相手に疲れている所悪いが、鏡に質問をさせてもらう

質問は敵の現在位置と、斧が出現する前兆
音や目で見て分かるもの、気配の変化のようなものでもいい
敵の位置は、もちろんオウガを探す為
斧の予兆は、放たれる斧を事前に察知して回避に利用する為だ

情報を得たら鏡に礼を告げて、敵がいる場所へ走る
斧を警戒はするが足は止めない、この状況で止まってしまえばそれこそ格好の的でしかない
走りながら、鏡から得た情報があればそれも踏まえて、ユーベルコードの効果も併せて回避を試みる

敵を視認したら一気に接近する
純粋な速度ならこちらも負けてはいない
木が邪魔にならない位置、極近距離まで踏み込んで『零距離射撃』を叩き込む




「……オウガの相手に疲れている所悪いが、鏡に質問をさせてもらう」
 静かに、冷静に……シキ・ジルモント(人狼のガンナー・f09107)は「真実の鏡」へと語り掛ける。
 鏡へ問う二つのうち一つは、この不思議の国を支配しているという強力なオウガの位置についてだ。
 敵の位置を問うのは当然――この見通しの悪い森の中で、あても無く彷徨うことは下策……それは敵から一方的に攻撃を受け続けることを意味するのだから。
 故に敵の正確な位置を把握することで、最短距離での接敵が可能となろう。

 そしてもう一つの質問は、遠距離からこちらを狙う斧が出現する前兆についてだ。
 人狼であるシキの五感を以ってしても、何も無い空間から突然現れる斧を避けることは容易では無い――故にその前兆のようなものを聞くことで、その現象だけに注意を割くことで捕捉を可能とするのが、彼の狙いだ。

「女王様はこのまま真っすぐ進めばいらっしゃいますよ……そして二つ目の質問ですが、ふむ……あえて言うのであれば、空間のゆがみを感じ取ると良いでしょう」
 鏡が言うには、敵の攻撃は空間を歪め距離を無視することで斧を飛ばしてくるのだという。
 故にその直前には、何もない空間のゆがみが観測されるはずなのだ。
 それは色が付くような目に見えるほどの明確な変化では無いが、その空間を入れ替えることによる変化が存在するというのだ。

「恩に着る……」
 手短に例を述べ、シキは森の中へと駆けだす――両の耳をピンと立てながらその全神経を尖らせ、空間のゆがみを探りながら。
 それは常人ではとらえきれない僅かな気配を把握する、言わばワイルドセンス。
 そんな彼の聴覚が風音の僅かな変化を感じ、卓越した嗅覚が突然現れた空気の濁りを感じ取る。
 直観的に振りかぶった先では――陽炎のように映像に歪みがあったかと思えば、突如現れた斧が勢いよく飛来するでは無いか。

「来たか……」
 正確に四肢を狙う凶刃に対し、しかしシキは焦らない。
 タイミングを見計らい跳ぶように避けると、立ち止まること無く駆け続ける。
 敵に接敵するまでは、攻撃はあくまで一方的。
 防ぐ為に立ち止まっては、攻撃されるばかりでジリ貧となるのが目に見えているからだ。

「見つけたぞ」
 次々と現れる斧を避け続け、シキは血に濡れた女神へと接敵する。
 彼の得意とする武器は銃。
 本来であれば距離を取るべきだが、常に死角から飛来する攻撃を思えば今回はそれが正解とは限らない。
 彼の選択は懐へと飛び込むこと――死角と女神を同線上に結ぶことで、敵の投擲を制限することだ。
 それは流れるように変化する様々な環境の中で、生き抜いてきた経験から磨かれたシキの勘にも似た第六感により引き出された選択肢だ。

「鏡よ鏡よ鏡さん――」
「喰らえ、零距離射撃だ」
 その勘が伝えているのだ――畳み掛けるべきだと。
 故にシキは零距離からその手に握る拳銃を放つ。
 問答は無用だと、冷静に、冷酷に。

 成すべきことを――仕事を、完遂する為に。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ネーヴェ・ノアイユ
真実の鏡様。泉の女神様はどのような攻撃を私へと行ってきますか?
複製した斧を念力で……。ふむ……。それだと居場所がバレている……。と、いうのはよろしくない状況ですね……。

すみません真実の鏡様。あと二つほど質問を。
泉の女神様の居場所と……。
リボンに魔力溜めしていた魔力。それを使用した全力魔法にて鋭さ、堅さを極限まで研ぎ澄まして作り上げたUCの鋏達を展開し……。
今の私に…。真実の女神様と互いの武器を撃ち合いによる勝機はありますか?

答えがYESであるならば……。飛んでくる斧は鋏で迎撃しながら泉の女神様の元へ。彼女の姿を捉えたらUCを一斉に放ち押し切ります。

数による戦いは……。私も得意なのですよ。




「真実の鏡様。泉の女神様はどのような攻撃を私へと行ってきますか?」
 鬱蒼とした森の中、ネーヴェ・ノアイユ(冷たい魔法使い・f28873)は真剣な顔で鏡へと語り掛ける。
 先ほどまで何処からか飛来する斧を避けながら懸命に走り回っていたネーヴェ――しかし彼女が鏡を見つけた頃には、ふと気付けばその猛攻は止んでいたのだ。
 推測するに、共に依頼へと参加する猟兵たちの誰かが女神への接敵に成功し、こちらへの攻撃に余裕が無くなったのかもしれない。
 油断は出来ぬ為周囲への警戒は続けながらもこれ幸いにと、「真実の鏡」に対する情報収集を入念に行なっていたのだ。

「複製した斧を念力で……。ふむ……。それだと居場所がバレている……。と、いうのはよろしくない状況ですね……」
 グリモアベースで聞いていた情報と、目の前の鏡から得られる情報に齟齬は無い。
 故に眼前の鏡が偽物というような心配も無いと、そうネーヴェは判断する。
 本来であれば確認も必要無いような低いリスク――しかし真理を求めし冷たい魔法使いはあらゆるリスクを潰す為の情報収集に余念が無く……何よりこの森に入ってから刺激され続けている己が知識欲に、抗うことが出来ないでいるのだ。

「すみません真実の鏡様。あと二つほど質問を。まず一つ、泉の女神様の居場所は……」
 ならば事前調査は十分と、ネーヴェは問いを続ける。
 残る問いはもう二つ、そのうちの一つは敵の位置の把握だ。
「泉の女神様は貴方から見て後方……貴方の歩幅で二百、といったところでしょうか」
 その問いに対する答え方もまた興味深い。
 統一された単位のようなものでは無く、あくまでネーヴェの歩幅で回答するあたりが、全てがこの不思議の国基準での回答といったところだろうか。

「もう一つ、リボンに魔力溜めしていた魔力。それを使用した全力魔法にて鋭さ、堅さを極限まで研ぎ澄まして作り上げたUCの鋏達を展開し……。今の私に…。真実の女神様と互いの武器を撃ち合いによる勝機はありますか?」
 ならばこちらの問いに対する答えはどうなるだろうか?
 問いの内容はあくまでこの世界に対する内容――だが不確定要素が混じる未来に対する問いは、どういった回答が返ってくるのか。
 はたしてこの不思議な鏡の質問に対する回答は、どういった法則性があるのか――自分でもまずいとは思いつつ、ネーヴェは胸躍るこのときめきを抑えられないでいた。

「勝負は時の運、と申しますよお嬢さん。しかし勝機、という可能性に対する答えであれば……そう悪く無い賭けになりそうですね、とお返ししましょう」
 その答えを聞いた時、さらなる胸の鼓動をネーヴェは感じる。
 不確定要素は不確定要素と答えるその正確性――しかしながら未来に関する問いにも答えられる汎用性。
 湧き水のように次々と沸き上がる知識欲に、このままではいけないと己を律す。

「ならば行きましょう……数による戦いは……。私も得意なのですよ」
 再び飛来し始めた斧を己が放った氷鋏で撃ち落としつつ、氷の魔法使いは立ち上がる。
 今はまず、邪魔者を処理するところから始めよう。
 何故ならばこの興味深い鏡は、決して逃げないのだから。

 今日は楽しいことになりそうだ。
 そんな予感を胸に抱いて、少女は戦場を駆け抜ける。

大成功 🔵​🔵​🔵​

双代・雅一
随分と乱暴に斧を寄越してくる女神様だな
トマホーク攻撃は山賊か海賊の得意技だろうに

氷蛇槍を手にまずは鏡を探そう
その間も敵は四肢を狙ってくるだろうが…
出来るだけ木の枝葉の多い所を選んで進もう
多少邪魔になって斧の威力を殺げたら槍で受け流す

鏡を見つけたら問おう
「ここから敵の背後地点の正確な方角と距離を教えてくれ」
国とは言え、4km以上も離れてはいないだろう?
地図は無いとは言え、いつもやってる事だ
さて、少々お使いを頼むよ――惟人

UC発動
女神の背後に唐突に片割れが出現
現れると同時に、もう1つの槍にて女神を串刺しに貫く
行動可能範囲であれば俺の出現位置は選べる
斧は要らん。俺達は槍の方が使い慣れているのでな




「随分と乱暴に斧を寄越してくる女神様だな……トマホーク攻撃は山賊か海賊の得意技だろうに」
 予知で聞いた内容を思い出しながら、双代・雅一(氷鏡・f19412)は言葉を零す。
 森の中を「真実の鏡」を探し駆ける雅一。
 次々と放たれ続ける斧を時に往なし、時に叩き落としながら走り続けていた。
 これまで様々なオブリビオンと戦い続けてきたが、こうも外見と戦い方にギャップを感じる敵も珍しいと、ついつい余計なことを考えてしまうのだ。

「おっと、あったな……ここから敵の背後地点の正確な方角と距離を教えてくれ」
 雅一は茂みに隠れるように存在した鏡を太陽の煌きから見つけ出す。
 そうして枝を掻き分けるようにして問うのは、この国を支配するオウガの正確な位置だ。
 他の猟兵よりも、細かい数値をしつこく問い掛ける――何故なら彼には、秘策があったのだから。

「さて、少々お使いを頼むよ……惟人」
(相変わらず弟遣いの荒い事だな、雅一……)
 面倒そうな声を雅一の脳裏に残しながら、彼は弟である惟人の気配が身体から消えていくのを感じていた。
 何故ならば彼が用いたUC――双星氷鏡(アルファベータ・オブ・ジェミニ)により己と身体を共有する双子の弟である惟人を呼び出し、送り出したのだから。

「――に、傷を付けやがってよぉ!」
 雅一の体内から離れ、惟人は何も無い空間から突如として現れる。
 彼らが放ったUCは限られた範囲であれば呼び出す場所すらもコントロール可能――だがそうは言いつつも地中に呼び出しては身動きが取れなくなる為、本来であれば把握できないほどの遠くに呼び出すことは困難なのだ。
 しかし鏡によって敵の位置を距離だけでは無く高低差も含めて正確に鏡へと問い質したことにより、ドンピシャの位置に呼び出すことが可能となったのだ。

 惟人の眼前では、件の女神が雄々しく猛る。
 予知で聞いていた純白の衣は痛々しいほどに紅に染まり、女神と言うほどの美貌は修羅かとみまごうほどに憎々し気に歪んでいた。
 その正面に立つのは数人の男女――グリモアベースでは身体の中から様子を伺っていた惟人の記憶が確かであれば、共に依頼に挑む他の猟兵たちであろう。

 彼らに注意をひかれている今が好機――数瞬の間にそう判断した惟人は、その手に握る氷の槍を、背後から勢いよく突き出すのであった。
 濁る空気音と共に、女神の口からどす黒い赤い液体が糸を引く。
 これまで流れてた血とは比較にならないほどの吐血が、女神の足元の泉を朱へと染め上げるのだ。
 驚愕と共にこちらを振り返る憎々し気な瞳と視線を絡め、兄ほどは冷酷に成れぬ弟はその顔を小さく歪める。

 しかしオブリビオンに慈悲は無用――そう猟兵としての常識もまた十分に理解している惟人は、力を振り絞りながら女神が振りかぶる斧を払いのけ、槍を引き抜きぬくのだ。

「斧は要らん。俺達は槍の方が使い慣れているのでな」
 そう言い放ち――氷の墓標を泉へと突き立てながら。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年08月15日


挿絵イラスト