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迷宮災厄戦⑯〜ワームホールの先で逢いましょう

#アリスラビリンス #戦争 #迷宮災厄戦

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●アップル・バトル・フィールド
 そこは一個の巨大な林檎の国。
 けれど気をつけなければならない。
「ニィィィ……ナァァァ!!」
 ほら、あちこちから聞こえる声。猫の声。けれど、そんな可愛らしいものではない。
 それは子供たちの悪夢が集合してできあがった怪物―――オウガ、はらぺこねこばるーん。可愛らしい見た目から想像もできないほどの凶悪で強靭な顎を持ち、あらゆるものを噛み砕いて進むことができる。

 ここ林檎の国において、はらぺこねこばるーんは、その食欲の赴くままに巨大な林檎の国そのものを齧りながら縦横無尽なるトンネルを掘り進んでいる。
「ニィィ!!」
 食欲に果てはなく、いくらでも食べ進めることができる。どれだけ食べても尽きることのない林檎の国の中は今や虫食いの迷路の如きトンネルと化していた。
「ニィ!ニィ!ニィ!ニァァァァ!!!!」
 まったくもって意味の通じない声。猫のような声でもあるし、幼い子供が癇癪を起こしたような声色が巨大な林檎の国のトンネルに反響して、どこまでも響いていく―――。

●迷宮災厄戦
 グリモアベースへと集まってきた猟兵達に頭を下げて出迎えるのは、ナイアルテ・ブーゾヴァ(フラスコチャイルドのゴッドハンド・f25860)だった。
「お集まり頂きありがとうございます。アップル・バトル・フィールド。それこそが今回皆さんが向かっていただく戦場の名です」
 ナイアルテは一つの林檎を手に持って説明する。
 そう、今回の戦場であるアップル・バトル・フォールドとは、即ち、巨大な林檎そのものが一つの国として存在するのである。
 その林檎の国において、オウガが巣食っているのだ。

「そうなのです。この戦場にいるオウガの名は、はらぺこねこばるーん。とても可愛らしい名前と顔の風船のようなオウガです。無数に存在していて、この林檎の国の中を食べることに寄ってトンネルを掘り、迷路のように作り変えてしまっているのです」
 なるほど。
 戦場自体は食べ進めることができる程度には、林檎そのものなのだろう。
 そして、そこに巣食うオウガもまた虫食いのように林檎を食い散らかしている。このオウガたちを一掃しないことには、この戦場も危険無く通り抜けることはできなさそうである。

「食べればトンネルを掘ることができるのは、オウガも猟兵の皆さんも同じ条件です。オウガに気づかれぬようにトンネルを掘り進め、奇襲をかけて巣食うオウガたちを倒してください」
 単純であるが、トンネルを食べ進めなければならないのはわりかし胃袋に自身のあるものでなければ大変な作業になるだろう。
 何か他の掘削する手段が在ればまた話も違ってくるのだろうが……。

「それでは、よろしくお願いいたします……林檎……やはり、大きな林檎ならば、味も大味なのでしょうか……」
 ナイアルテは、何故かそんな事を気にしつつ、手にした林檎を見つめる。
 慌てて猟兵たちを転移させた後も、しばらく林檎を見つめていた。

 ぐぅぅぅ~……。

 そのお腹の音、誰の音。真っ赤な耳をした子だあれ?


海鶴
 マスターの海鶴です。

 ※これは1章構成の『迷宮災厄戦』の戦争シナリオとなります。

 大きな林檎の国にて、林檎を食べ、掘り進めてオウガたちに奇襲をかけて打倒しましょう。

 ※このシナリオには特別なプレイングボーナスがあります。これに基づく行動をすると有利になります。

 プレイングボーナス……林檎を食べ進み、奇襲する。

 それでは、迷宮災厄戦を戦い抜く皆さんのキャラクターの物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
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第1章 集団戦 『はらぺこねこばるーん』

POW   :    I’m Hungry
【食欲】の感情を爆発させる事により、感情の強さに比例して、自身の身体サイズと戦闘能力が増大する。
SPD   :    I’m Angry
【口から刺し貫く棘】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ   :    I’m Lonely
【犠牲になったアリス】の霊を召喚する。これは【武器】や【呪い】で攻撃する能力を持つ。

イラスト:透人

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ヤニ・デミトリ
でかい…視界全部林檎っスなあ
所でこの身体、実は燃費があんまりよくないんスよね
化けたり不定に動いてるとエネルギーを食うので
戦場もあれこれ駆け回ってきたことだし、ここらで補給タイムっス

敵の声を頼りにおおよその位置に検討をつけたら、片腕を異形の口に変化
そのまま壁を食い(捕食)進むっス
体内に入れさえすればナノマシンが謎の爆速で消化してくれるので、
敵に辿り着く頃には大方消化してるでしょう

声が近い、この辺スかね。お邪魔します!(小声)
奇襲と同時にUCで食らいつく
棘も痛そう…と見せかけて泥にはあんまり効かないと思うなァ
少なくとも攻撃を止められない程度にはね
戦意と怒りを奪い取ったら、そのまま尾で切り払うっス!



 そこは大きな林檎の国。見るものを圧倒する巨大さで持って出迎える国は今、巨大な虫食い状態のように迷路と化したトンネルが圧倒的な速度と数で持って掘り進められている。
 オウガ、はらぺこねこばるーんは猫のもふもふと風船の体を持って、どこにそんな食欲があるのかと疑うほどに凄まじい勢いで林檎の国を掘って、掘って、掘りまくってるのだ。
「ニィィィ……! ニィィィ……!」
 所々に開いたトンネルの入口から木霊する声は不気味なものであった。猫が鳴くような、幼い声色は一体何を意味するのか。ただ己の食欲のままに林檎の国は蹂躙される。それを阻止するべく猟兵は次々とトンネルの入口からこっそりと奇襲をかけるために入り込むのだ。

「でかい……視界全部林檎っスなあ……」
 ヤニ・デミトリ(笑う泥・f13124)は己の視界を埋め尽くす巨大な林檎に感嘆の声を漏らす。
 圧倒的な質量を目の前にすると人は何故だかわからないが、ぽかんと口を開けてしまう。それだけ大きな林檎の国は一個の巨大な林檎そのものであったのだ。
 様々なスクラップが尾のようになびかせているヤニにとって、この巨大な林檎は願ってもない戦場であった。

 そう、ブラックタールたる彼にとって、自身の体はお世辞にも燃費が良いものであるとは言えない。それは様々な世界を渡るようになって気がついたことである。
 迷宮災厄戦が始まってからというもの、ヤニは様々な戦場を駆け回ってきた。そのせいで体はカロリーを、エネルギーを欲しているのだ。
「さ、ここらで補給タイムっス」
 グリモア猟兵の話では、この林檎の国はトンネルを掘るためには食べて進むことを推奨されている。
 ならば、はらぺこねこばるーんと時折聞こえてくる声を頼りに、おおよその位置を把握する。

「美味しそうな林檎っスね。さて、まずは味見味見……」
 ユーベルコード、密やかな午餐(タベスギニチュウイ)によって変じたヤニの片腕が異形の口に変貌する。
 カチカチと歯を鳴らす異形たる口に変じた片腕を前に差し出せば、削岩機のごとき勢いで林檎の国の果肉を貪り食う。
 しゃくしゃくと小刻み良い音がする。それに林檎の果汁の甘酸っぱい香りが漂ってきて、大量のエネルギーを消費しているからというだけでは説明の付かないほどの食欲で持ってヤニは林檎の国の中に新たなるトンネル経路を産み出していく。

「んん、結構イケるっスね……順調順調」
 しかし、圧倒的なスピードで掘り進めるヤニの胃袋は大丈夫なのだろうか。林檎をすりつぶせば果汁と果肉に分かれるから胃袋のスペース的には余裕はあるはずだが、それにしたって見た目に変化が為さすぎる。
 お腹が膨れるだとかるのではないかと思われたが、体内に入りさえすれば、ナノマシンが謎の爆速でもって消化していくのだ。
 むしろ、ペース的には普通であるとも言えた。

「ニィィ! ニィァ! ナァァァッ!!」
 はらぺこねこばるーんの声が木霊する。反響する声の跳ね返る回数が少ない。
「声が近い……この辺スかね。お邪魔します!」
 ヤニは小声でささやきながら変じた異形なる片腕の口を壁面へと押し付ける。ぼかっ! と穴が開いた瞬間、そこにあったのは、紛うことなき猫型風船の姿をしたオウガ、はらぺこねこばるーん!
 奇襲で一気に異形の口を噛みつかせ、食らいつく。
「ニァァァ!!」
 突然の襲撃者に声を上げるはらぺこねこばるーん。その口から放たれる刺し貫く棘。だが、ブラックタールであるヤニにはあまり効果がない。刺されても、ぶにゅりと柔らかく防御するように包み込んでしまうからだ。
「あんまり聞かないと思うっスけど、特に恨みはないっスけども!」

 そして、彼の変貌した片腕が大顎をもたげる。
 それは本来、固形物を食すためだけに存在するものではない。思念や感情、欲望を喰らう異形なる力であり、噛み付いた対象の生命力を奪う恐るべき片腕である。

 その本来の用途のままにヤニははらぺこねこばるーんの戦意と怒りを奪い去るように大顎で持って噛み付く。
「ナァァァ!?」
「やっぱり感情より、林檎の方が美味しいっスね……このまま切り払うっス!」
 風を切る音が勢いよく鳴り響き、ヤニのスクラップを引きずる尾がはらぺこねこばるーんの風船の体を破裂させるように切り裂く。
 スクラップが小さなチップ状の刃となって、のこぎりのように勢いよく切り裂く。風船が割れる音をトンネル中に響かせ、霧散し消えていく、はらぺこねこばるーん。

「さて、ひとしきり運動したっスから……次の戦場に行くまでの腹ごしらえをしておくっス。それ、あーん」
 しゃくしゃく。
 しばらくヤニは、林檎の味を堪能しつつ、トンネルを掘り進める。
 進む先は次なる戦場であるが、ぽっかり出口が拓かれるまでには、彼のエネルギー補給も済むことだろう。

「はー、腹八分目っス!」
 そんな声がトンネルの何処かから響くのだった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ジャム・ジアム
アドリブ歓迎

いい香り。ケガしてお腹が空いてたの
壁をひと齧り。ふふ、甘いわね。

食いしん坊がたくさん、考えがあるわ
『目黒さん』を【偵察】に飛ばし
自身も【聞き耳】を立てて声を頼りに敵の方向を見定める
何匹いる?近くに別のオウガや、猟兵は?

安全を確認し、仕掛けを施し、
『楔なる鋼』を数発放って穴を貫通させる
『三拍子の私』で体を細くして穴を通ったら
刺激するよう尻尾を猫じゃらしのように振りましょうか
遊びましょう、ネコちゃん?

寄ってきたら、しっぽの針で攻撃
後は挑発しながら確認した経路を辿って食べてさせて……
出発点に着いたら、巡らせた『謎のレモン』の蔦で縛り上げてトドメよ
次はどっちに行く?蜜もたくさん取れそうね?



 大きな林檎の国は、虫食いワームホールとなったトンネルの入り口のあちらこちらから、甘酸っぱい良い香りをふんわりと醸し出していた。
 それは食欲をそそる香りであり、迷宮災厄戦が始まって以来、連戦に次ぐ連戦を重ねてきた猟兵たちにとって、ありがたいものであったかもしれない。
 少なくともジャム・ジアム(はりの子・f26053)にとっては、そうであった。
「いい香り。ケガしてお腹が空いてたの」
 そう言ってトンネルの入口付近の果肉をひとかじり。
 壁面に直接かじりつくなんて、少しはしたなかったかしら、なんてジアムは微笑むくらいに、大きな林檎の国そのものである大きな林檎の味は美味しかった。
 口の中に果汁が香りが広がって、何とも幸せな気分になるし、戦いによって傷ついた体に滋味として染み渡っていくような気さえした。

「ニィィィア……!」
 遠くから、この国に巣食うオウガである、はらぺこねこばるーんの鳴く声が響き渡る。今もまだ、このトンネルの何処かしこでかじりつきながらトンネル迷路の版図を広げているのだろう。
「目黒さん、お願いね」
 ジアムは通信機能付きの変形鳥形ロボである目黒さんをトンネル内に放つ。迷宮と化したトンネルの中でオウガである、はらぺこねこばるーんの位置を正確に知るのは重要なことだ。
「……むむ……!」
 彼女の敏感な耳が聞き耳を立てる。様々な音が聞こえてくる。
 他の猟兵の掘り進める音、はらぺこねこばるーんの果肉をかじる音に、鳴き声。一番近いのはオウガ……!
 しゃくしゃくと軽く掘り進め、滋味たる林檎の果汁でお腹を満たしたら、ジアムは黒褐色の精霊銃でもって林檎の壁面に穴を穿つ。

「『1・2・3&1』どんなジアムも、私はわたし」
 ユーベルコード、三拍子の私(トリプルタクト)によって、体を細く、細く変貌させる。
 それは肉体の全てを伸縮自在な体に変異させる。狭い隙間に入り込むことも可能であれば、長く伸びることだってできる。
 弾丸に寄って穿たれた穴を、その伸縮自在な穴でもって千枚通しのように入り込んでいく。
 近くに居たオウガ、はらぺこねこばるーんの姿はすぐそこだ。にゅるんと顔を出す。

「ニィィィ……!」
 やっぱり居た。猫の風船の姿をした何処かかわいらし見た目のオウガ。けれど油断はできない。
「遊びましょう、ネコちゃん?」
 ふりふりと猫じゃらしのようにジアム自身の尻尾を降って挑発する。知性低きオウガと言えども、それが自身を挑発してのことだとわかる。
 それに猟兵と見れば、放ってはおけないのがオウガというオブリビオンである。ゆらゆら揺れる尻尾は鋭き針があるのだとしても、飛びつかずには居られないのが猫という生物だ。
 果たして猫であるのかどうかも不可思議なるオウガであるが、挑発に乗るようにジアムの尻尾へと飛びかかる。

 それは爆発した食欲のままに体を膨らませ、戦闘力を増加させる。
「ニィィィァ!!」
 飛びかかる、はらぺこねこばるーんに、しっぽの針が飛ぶ。穿つ針ではあったが、食欲に寄って巨大化した、はらぺこねこばるーんの体をしぼませるには足りない。
 そのまま伸縮自在な体を利用して、取ってきた穴をするすると抜けていく。
 その背後から林檎の果肉を貪り食いながら迫るオウガからジアムは逃げ続ける。

 否、逃げているのではない。
 誘導しているのだ。元いた出発点までオウガである、はらぺこねこばるーんを誘導し、そこに罠を仕掛けていたのだ。
 そう、謎のレモン。
 ジアムが所持するレモン型の謎の豆。彼女自身も何故だか理解できていないが、魔法の豆の木が生え、蔦を這わすことができるのだ。
「はい、ご苦労さまなのよ。お腹いっぱい食べているから、縛り付けすぎるのは酷だけれど……」
 彼女を追ってきた、はらぺこねこばるーんを一気に縛り付ける謎のレモンの蔦。
 ぎちぎちと音を立て、膨らんだ風船を破裂させるようにして霧散させる。

 その口の中いっぱいに放り込んだ果肉は縛り付けられて霧散すると同時に盛大なる果汁を振りまいて、リンゴジュースの激流を作り出したが、ジアムはそれでも笑っていた。
「おかしいの。こんなに蜜を溜め込んでいたのね! これならお腹いっぱい傷が治るまで食べれそうなのよ」
 リンゴジュースの波に押し流されるなんて、通常の世界であれば考えられないことだ。
「次はどっちに行こうかしら。蜜も沢山取れそうね?」
 何処に向かおう、上に下に、右に左に、真正面に。
 此処から先は自由気ままに林檎を味わいつつ、オウガを退治していけばいい。ジアムの足取りは、トンネルをくぐったときよりも、心做しか軽い。
 美味しい林檎を食べたおかげかしら、なんてうそぶきながら、ジアムは大きな林檎の国のトンネル迷路を進んで、次なる戦場へと向かうのであった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

スキアファール・イリャルギ
……うーん
こっそり行くのは慣れてます
敵の声に耳を澄まして位置を割り出し
存在感をがっつり消して目立たずに行けばいい

問題は、いくら痩せの大食いとはいえ林檎だけなのはちょっと厳しい所ですかね
あと夏なんで食欲が減少中ですよ今
美味しいんですけどねぇ(もぐもぐ食べつつ)

仕方ない、ここは躰中の怪奇の口で食べますか
これだと味がしないんでちょっと勿体無いんですが腹が膨れることはない
躰全てを影にして食べ進んでいきます
無駄にデカい躰に合わせて路を作らなくていいから楽ですね

敵の元へ辿り着けたらすぐさま影を絡めて喰らいましょう
棘すら呑み込んで、跡形も無く

此処のオウガを倒し尽くすまでは、人間の口で食べるのは我慢、ですかね



 食欲、それは生命体であれば、その生命を維持するのに必要不可欠なるものであろう。特に人の形をしたものであれば、なおさらである。
 だが、目の前に巨大な林檎があるからと言ってすぐさまに食欲に直結するものはそう多くはないだろう。食欲の前に大抵は驚愕の方が先にやってくる。
 ここアリスラビリンスにおける不思議の国野中の一つである『大きな林檎の国』は、まさに国一つが巨大な一つの林檎なのだ。
 その赤い果実の表面には所々に虫食いの痕のように穴が穿たれ、内部は今やトンネルが迷路のように広がるオウガの巣となっていた。

「……うーん。こっそり行くのは慣れてますが……」
 スキアファール・イリャルギ(抹月批風・f23882)は耳に装着していたイヤホンを外し、耳を澄ませる。
 トンネルの奥から音が反響して遠く聞こえてくる。
 ニィ、ニィ、ナァ、と幼いような奇妙な声は、この林檎の国に巣食うオウガ、はらぺこねこばるーんのものであろう。迷路のようになっているとは言え、しっかりと耳をすませば位置を探ることはできそうだった。
 それにがっつり存在感を消して目立たたず行動するのは、そう難しくはない。

「かと言って、いくら痩せの大食いとはいえ、林檎だけを食べ続けるのはちょっと厳しいところですかね」
 林檎は嫌いではないのだが、一つのものだけをずっと食べ続けるというのは、それはそれできついものがある。味変というか、何か調理でもできたりすればまた変わるのだろうが……それに今は夏の季節。スキアファールは絶賛食欲減少中なのである。
 試しにトンネルの壁面をかじってみる。
 果肉がしゃくしゃく小刻み良い音を立てて、果汁が溢れてくる。口の中に広がる豊潤な香りと甘酸っぱい味は普段であれば喜んで食したことだろう。

「やっぱり、これをずっと、というのは骨がおれますね。仕方ない。ここは―――躰中の怪奇の口で食べますか」
 そう言ってばらりと黒い包帯が解けていく。怪奇人間たる、その身は体中が悍ましきものに覆われている。
 あらゆるところに口が存在し、あらゆるものを噛み砕いて咀嚼していく。
「これだと味がしないんで、ちょっと勿体ないんですが腹がふくれることはない……味変とかなんとかって言ってる場合でもありませんし」
 躰の全てを影にし、林檎の国の果肉を掘るようにして食べ進めていく。その速度は削岩機もかくやという速度で持って次々と掘り進められていく。

「ニィィィ……!」
 耳をすませば、たちどころにオウガである、はらぺこねこばるーんの鳴き声が聞こえてくる。近い。このまま掘り進めていけば、順当にかち合うだろう。
「無駄にデカい躰に合わせて路を作らなくていいから楽ですね……すぐそこ、ですね」
 一際薄い壁面を削りきった瞬間、そのワームホールの先で、はらぺこねこばるーんの背中にかちあたる。
 瞬間、スキアファールの影が、はらぺこねこばるーんの体を背後から絡め取る。

「――ヰただきます」
 ユーベルコード、ラガ・プレデター(シェイプシフター)。彼の体を構成する影が、はらぺこねこばるーんの体を絡め取ったまま、その影に潜む怪奇の口が、一瞬で捕食する。
 はらぺこねこばるーんは悲鳴を上げるまもなく、消えていく。気がついたとしても遅い。その口から放つ棘であったとしても、それすらも喰らわれていく。
 その捕食の権化たる影に絡め取られた獲物の運命は、跡形もなく霧散し消えていくのみ。

「ふぅ……此処のオウガを倒し尽くすまでは、人間の口で食べるのは、我慢ですからね……」
 人間らしく。
 それは彼にとっては擬態であるが、謳歌するためのに必要なことである。人間を謳歌するために怪奇たる姿を敢えて残す。
 それがこの暴食たる口である。それ故に、オウガを喰らうのであれば、怪奇たる口で。人間らしく食事をするのであれば、人間の口で。
 そう決めているのだ。

 そして、今は迷宮災厄戦である。元凶たるオウガ・オリジン、猟書家との戦いが終わるときまで、今は人間らしさは置いておく。
 溜息をつくようにスキアファールは物恋しそうに呟く。

「―――ああ、音楽。音楽が聞きたい」
 イヤホンを耳に当て、奏でられる音楽が、歌が、己を怪奇人間だと証明する。そして同時に、人間を謳歌する怪奇であることもまた照明しているのだった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ミア・ミュラー
おー、すごい大きな林檎、ね。それに、中に入って食べられるなんて、面白そう。

んん……美味しいけど、さすがにひとりで食べ進むのは大変、だね。だから【プリンセス・ホワイト】で呼んだ白鳥さんたちにも食べるのを手伝ってもらう、よ。狭いから2~3羽くらいになるまで合体してもらおう、かな。
鳴き声……これはオウガの声、かな?ならそれを頼りにオウガの居場所を探せば、いいね。上から奇襲をかけて、わたしは傘を広げて口を塞いで棘を「盾受け」して広がらないように、するよ。その隙に白鳥さんが突っついて破裂させちゃう、ね。
んー、美味しい林檎だから、アップルティーにするのも、いいかも。ちょっと持って帰ろう、かな。



『大きな林檎の国』、そう呼ばれる不思議の国は、あまりにも圧倒的な大きさの一個の林檎の実であった。
 赤い熟した表面はつるりとしているが、所々に虫食いの痕のように穴が穿たれている。それはこの国に巣食うオウガ、はらぺこねこばるーんの仕業である。
 林檎そのものである国の内部を食べ、掘り進めることによって、内部は迷路のように入り組んだトンネルとなっている。
 その先に未だ腹をすかせた子供のように、はらぺこねこばるーんは潜んでいる。この地を安全に切り抜けるためには、巣食うオウガたちの一掃が必要であるのだ。

「おー、すごい大きな林檎、ね。それに、中にはいって食べられるなんて、面白そう」
 その巨大なる林檎の国を見上げて呟くのは、ミア・ミュラー(アリスの恩返し・f20357)であった。普段は無表情でテンションが低めな彼女ではあるのだが、流石に圧倒的なサイズの林檎を見上げるのには、心が揺れ動くように口をぽかんと開けてしまっていた。
 ミアでなくても、そんな顔をしてしまう。
 それくらいに『大きな林檎の国』は圧倒的サイズであった。もしかしたのならば、自分がミニチュアサイズに縮んでしまったのではないかと錯覚するほどに。

 そんな林檎の国に穿たれたトンネルの一つにミアは入り込む。
 壁面の壁は何処を見ても林檎の果肉。床も天井も、どこもかしこも林檎の果肉である。試しに、とかじってみたのだが……。
「んん……美味しいけど、流石にひとりで食べ進めるのは大変、だね……」
 類まれなる健啖家か、もしくは生命の埒外にいる猟兵の中でもさらに特殊な存在たちでなければ、この林檎のトンネルを掘り進めることはかなり難しいように思えたのだ。
 だが、それはひとりであればの話だ。

「みんな、頑張って、ね?」
 ミアのユーベルコード、プリンセス・ホワイトが発動される。白く美しい白鳥たちが次々と召喚され、一斉に合体していく。
 トンネルの中は狭い。それ故に大量に召喚してしまっては意味がない。彼等の羽に数字が刻印されているのだが、合体する度に数字が増し、合計される度に強くなっていくのだ。
 白く美しくも雄々しい白鳥たちが、ミアに変わってトンネルを掘り進めていく。次々に拡張されていくトンネル。

「ニィィィァ……!」
 そんな中、どこかでオウガ、はらぺこねこばるーんの鳴き声が聞こえる。
「鳴き声……これはオウガの声、かな?」
 ミアは周囲を見回す。耳を済ませる。左右の壁に、床に……。猫が鳴くような、幼いような、そんな声が床、ミアの足元から聞こえる。
「白鳥さん、お願い!」
 合点承知! と白鳥たちが床を突き回す。円形に穿たれたくちばしの穴が繋がった瞬間、ぼこん、と音を立てて床に穴が開く。
 円形にくり抜かれた床が、はらぺこねこばるーんの頭上に落ちて鈍い音を立てる。うわぁ、痛そう、と思う暇もなくミアは穿たれた穴から、はらぺこねこばるーんへと飛び込む。

 ミアが広げるのは、アリスラビリンスのとある国でもらった丈夫な魔法の傘。それを前面に広げて、はらぺこねこばるーんの放つ棘を防ぐ。
 傘なのにこれほどまでに強度を持っているのは、空を飛ぶため。さらには盾にも使えるくらいに頑丈である。
「お口にごめんなさい!」
 そのままミアは広げた傘を、はらぺこねこばるーんの口へと突っ込む。はらぺこねこばるーんの放つ棘が口からはなたれるのであれば、どれだけ大口を広げたとしても丈夫な傘を貫くことは出来ない。攻撃の範囲を広げさせないように、傘で口を置い、天上の穴から舞い降りる白鳥たちに攻撃を任せるのだ。

「お願い、白鳥さん! つついて破裂させちゃって!」
 その号令に白鳥たちは、その鋭いくちばしで、はらぺこねこばるーんの体を突き回す。たまらず破裂する、はらぺこねこばるーん。
 ばすん、と気の抜けた音を立てて破裂した、はらぺこねこばるーんは霧散し消えていく。骸の海へと還っていったのだろう。
 ニィィ……! とまた遠くでオウガの鳴く声が聞こえる。
 この国に巣食うオウガの数はまだまだ多そうだ。けれど、ミアは諦めない。アリスラビリンスで愉快な仲間たちから助けられ、オウガから逃れることができた。
 猟兵に救われたことで自分もまた猟兵になった。
 あの時に感じた恩は、まだまだ返せないくらいたくさんある。この国だってそうだ。オウガが巣食うのであれば、彼女はそれを一掃する。

「んー、美味しい林檎だから、アップルティーにするのも、いいかも。ちょっと持って帰ろう、かな……でも、それはもう少し後。ここのオウガを片付けて、早くオウガ・オリジンの元にいかなきゃ」
 ミアは林檎の国のトンネルを駆け出す。
 聞こえたオウガの鳴き声を頼りに、次々とオウガを霧散し、骸の海へと還していく。

 それは彼女が受けた恩を必ず返すという信条を持っているからだ。
 そう、まだまだ彼女の恩返しは終わらない―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

蓮見・津奈子
随分と悪食な猫さんが齧り回ってるみたいですね。
少し、大人しくさせてあげないと駄目そうです。

騒がしくしているなら、その声を頼りに居場所を推測できるでしょうか。
それを元に、先回りする感じで林檎を食べてトンネルを作っていきます。
食べる際は変異・貪食粘泥で粘泥と化し、林檎を溶かして取り込むような形で食べていきます。
この方法だと味は感じられませんが、量はいっぱい食べられますよ。

トンネルを掘り進み、もう少しで壁や床、天井を破れるという状態になったらその状態で待ち伏せ。
敵がその傍を通ったところで飛び出し奇襲、その身体を粘泥で包み込み溶かしながら【怪力】で押し潰しにかかります。

…大人しく、してくださいね?



「ニィィ! ニァァァ! ナァァァ!!」
 それはトンネルと化した『大きな林檎の国』のあちらこちらから響いてくる猫の鳴き声のような声であった。
 はらぺこねこばるーん、オウガの鳴き声。それは何処まで行っても己の満たされない食欲に振り回されるように、風船の体と、鋭い歯、大きな口で持って、林檎の国の内部……果肉を貪り食う。
 表面のあちらこちらに穿たれた穴は、全てオウガである、はらぺこねこばるーんの仕業だ。
 掘り進められたトンネルは、まさに虫食い。迷路のような様相となってしまった林檎の国に巣食うオウガを排除しなければ、この先の戦場へと安全に通り抜けることはできなくなってしまう。
 そうなれば、猟兵達の進軍は滞り、オウガ・オリジンや猟書家たちへの対処が遅れてしまう。
 それは時として致命的な決定打になりえてしまうかもしれないのだ。

「随分と悪食な猫さんが齧りまわってるみたいですね。少し、大人しくさせてあげないと駄目そうです」
 蓮見・津奈子(真世エムブリヲ・f29141)は、巨大な一個の林檎が、一つの国となっている『大きな林檎の国』の表面に穿たれたトンネルを見やり、呟く。
 その些細なつぶやきでさえ、彼女の美声に掛かれば歌のようであった。
「ニィィ……!」
 トンネルに足を踏み入れただけで遠くから音が反響してくる。
 彼女にとって、その声を頼りにオウガである、はらぺこねこばるーんの位置を推測することは容易であった。
 すぐさまにトンネルの中へと入り込み、推察したオウガの位置を元に先回りするように林檎を食べていく。

 彼女の楚々とした物腰では、想像もできないほどの大食。
 それは、ユーベルコード、変異・貪食粘泥(ミウテヱション・ウウズ)によって体の一分を粘泥へと変異させ、溶解性の粘泥によって林檎の果肉を溶かして取り込んでいるのだ。
「この方法だと味は感じられませんが……量はいっぱい食べられますよ」
 そう、彼女の姿からは想像できないかも知れないが、彼女は怪奇人間である。それ故に、すでに人間という生命の埒外に存在するものであるのだ。
 トンネルはまさに削岩機のように掘り進められ、圧倒的な速度で持って、オウガ、
はらぺこねこばるーんを先回りする。

「このへんですね……さあ、いらっしゃい」
 壁面はもう薄い。すぐそこまで聞こえる、はらぺこねこばるーんの鳴き声が所在の近さを物語っている。
 うっすらと果肉のそばを通る影。それを認めた瞬間、津奈子は壁を破るように飛び出し、はらぺこねこばるーんを奇襲する。
 一気に変異した溶解性の粘泥で、包み込む。
「ニィィア!?」
 はらぺこねこばるーんは突然の奇襲に慌てふためき、体を巨大化させようとする。そう、その貪欲なる食欲のままに巨大化させるのだが、それをさらに覆うのが津奈子の粘泥。

「―――もう、逃がせませんから……大人しく、してくださいね?」
 その言葉通り、彼女の粘泥の中で溶解され、霧散していく、はらぺこねこばるーん。何もすることの出来ない一方的な捕食。
 それがオウガである、はらぺこねこばるーんの運命。
 自身の体の中で圧し潰すように霧散し消えたオウガの気配を感じ、津奈子は元の姿に戻る。
 ほぅ、と息を吐き出す。

 食事をした、というものではない。
 けれど、どこか満足げな表情を浮かべる。怪奇人間となってしまったけれど、変わらない物腰と容貌。
 しかし、その変わらないはずの微笑みの奥には暗い影が差し込む。他の誰も知る由もない彼女が怪奇人間となってしまった過去。
 それを払拭することも出来なければ、変えることも出来ない。

 確実なことは、彼女は既に生命の埒外にある猟兵であるということ。
 その力を奮って誰かを護ることができるということ。
 それだけが、彼女を嘗てのスタァとしての光を、魅惑的なものへと変えていくのだった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

佐伯・晶
流石に食べて進むのは辛いなぁ
食べ物を粗末にしてるみたいで
気が引けるけど掘って進もうか

リンゴの国の地図か見取り図と
オウガの穴のスタート地点からルートを予測

ガトリングガンで四隅に穴をあけ
切断用ワイヤーでブロック状に切り
邪神の聖域に吸い込んで通路を造ろう

多機能イヤホンを使い
敵がリンゴを食べる音が近づいてきたら
ガトリングガンの使用はやめてスコップで掘るよ

背後を取れたらガトリングガンで攻撃
悪趣味なUCだけど呪いは耐性で
武器は神気で時間を停めて防ぐよ

貯め込んだリンゴはどうしようか
これだけあればしばらくリンゴには困らないね
神域の中は神気で満ちているから
ずっと新鮮なままだよ

冷蔵庫扱いするのもどうかと思いますの



「流石に食べて進むのは辛いなぁ……」
 そう多少げんなりした声色になってしまうのは致し方のないことであった。なにせ今、佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)の目の前に存在している、不思議の国『大きな林檎の国』とは、まさに名前の通り、巨大なる国一つ分の大きさを誇る巨大なる林檎そのものであったのだから。

 その巨大な林檎のつるりとした赤い皮の表面にはあちこちに穴が穿たれている。
 それはオウガであるはらぺこねこばるーんの仕業だ。虫食いのように内部の果肉を貪り、掘り進めて構成されたトンネルは最早迷路のようであった。
 そんなトンネルの中を進み、巣食うオウガを一掃するのが、今回猟兵に求められた戦いである。
「食べ物を粗末にしてるみたいで気が引けるけど掘って進むしかないよね……」
 ガトリングガンで四隅に穴を開け、切断用ワイヤーで賽の目状にブロック体として果肉を切り出していく。
 さらにユーベルコード、邪神の聖域(トランキル・サンクチュアリ)によって呼び出された空間の穴に次々と放り込んでいく。
「まあ、冷蔵庫代わりにしか使えないんだけどね……」

 かと言って、切り出した果肉を粗末に扱うのはどうしても晶には無理だった。冷蔵庫代わりにしか使えないと思っていたユーベルコードでも、こうしたことで役立てることができるのであれば、活用しなくてはならない。
「ニィィィ……! ニィィア……!」
 そんなふうに林檎のトンネルを掘り進めていると、多機能イヤホンが集音したオウガの鳴き声が聞こえる。
 猫のような幼い子供のような、そんな鳴き声。それこそがオウガ、はらぺこねこばるーんの鳴き声なのだ。
 それが近づいてきたことを知ると、音を立てるガトリングガンでの掘削をスコップに切り替えて掘り進めていく。
 作業スピードが落ちるが、静音性という意味ではコチラのほうが良いだろう。

 今回の戦いにおいて奇襲による効果は絶大だ。その利を捨てるわけにはいかないのだ。
 ざっくり掘り、切り出した果肉は冷蔵庫……ならぬ邪神の聖域によって生み出された空間の穴へと放り込まれていく。
 ぼこん、と一際軽い音がした瞬間、晶はオウガ、はらぺこねこばるーんの背後を取る。
「ニィィ!? ニァァ……!」
 背後を取ったとは言え、はらぺこねこばるーんの反応は早かった。ガトリングガンでの攻撃を受けて尚、破裂しないのは大したものである。
 だが、召喚された犠牲者アリスの霊による攻撃は悪趣味と言わざるを得なかった。
「ごめんね……でも、すぐに終わらせるから!」
 神気でアリスの霊の持つ武器を受け止め、時間を止める。
 その隙に晶は再びガトリングガンで、はらぺこねこばるーんを蜂の巣にする。漸く、霧散し消えるオウガの姿。同時に召喚されたアリスの霊もまた消えていく。
 停滞した時間の中で合っても、召喚したオウガが消えれば、囚われた霊も霧散して消えていく。

 いつまでも虜囚であるわけではないことだけが、晶にとって救いだった。
「……でも、この溜め込んだ林檎はどうしようか。これだければ、しばらく林檎には困らないね……」
 オウガを一層して一息着くと、今度は空間の穴に溜め込んだ林檎の果肉の処理に困ってしまう。あれだけ大量にトンネル堀りによって切り出した果肉である。どうがんばっても一人で処理できる量ではない。

 ただ、空間の穴の中は、その身に宿した邪神の権能によって、ずっと新鮮なままであるのが救いであった。
 料理をしてみようかと思い至ったが、それでも数が多い。どうしたものかな、と思い悩む晶をよそに、邪神だけが呆れたように呟く声がトンネルの中に響き渡る。

『冷蔵庫扱いするのもどうかと思いますの―――』

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年08月11日


挿絵イラスト