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迷宮災厄戦⑰〜昨日より今日、今日より明日へ

#アリスラビリンス #戦争 #迷宮災厄戦

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 迷宮災厄戦による戦いは広がりを見せ、新たな世界が戦場となっていた。
 その世界は古代ローマの闘技場を模した世界、となれば見世物として戦うことを強いられるわけではあるが、いったい相手は何者なのか。
 身構える侵入者の前には見慣れた姿、得物も、構えも、何もかも。
 自分がよく知っている存在が立ちはだかる。
 何故、そう言えるかって?

 だって、相手は、自分と、同じ、姿で。
 装備も、技も、動きさえ、同じ、なんだから。

 一撃、二撃。
 見た目だけ真似た偽者と考え、打ち合うも。
 その攻撃は紛れもなく、自分が放つ攻撃とまるで同じ。
 嗚呼、しかし何故だろう。
 こうも気持ちが昂ぶるのは。
 強敵と戦うから? 否、これは普通ならば決して叶わない願いが現実になっているから。
 真似ただけではない、自分そのものと戦える、ありえない戦いができるのだから。


「いやぁ、中々にぃ、面白そうな世界ですねぇ~」
 間延びした口調、そして冷感マットの上にごろんと寝転がりながらノクス・フォルトゥナ(強化人間のマジックナイト・f17760)が猟兵達に説明を始めていた。
 今回、彼女が予知したのはアリスラビリンスで発生している大規模な戦い、その中のひとつであり、古代ローマの闘技場を模した世界での戦いで。
 敵対するオウガは侵入者とまったく同じ、つまり自分自身と戦う戦場になるという。
「まぁ正確にはぁ、昨日の自分と同じですねぇ~。つまりぃ、今現在と同じではなくぅ、ほんの少しの過去なのでぇ。
 そこがぁ、突破口になるのですぅ~」
 暑いので、ごろんごろんとマットの上で位置を変えつつ説明するノクス。
 無駄に動き回るから余計に暑くなると思うのだが、それよりも触れる部分が冷たい、という点が大事らしく転がりながら。
「昨日よりぃ、良くなっている部分を利用してぇ、戦えばぁ。
 互角ではなくぅ、皆さんが有利でぇ、そこから押し切れますぅ。
 逆に言えばぁ、昨日よりぃ、駄目な部分でぇ、戦うとぉ、負けちゃいますからぁ、気をつけてくださいねぇ。
 まぁ~、わたしがぁ、この戦場に行けばぁ、絶対負けないですけどぉ~」
 攻略する為の糸口や注意点を説明しながら唐突に、ノクスは自分ならば負けるはずがないと断言。
 何でそんなことがいえるんだ、と質問が飛べば、彼女はガバッとマットから上体を起こし口を開いた。
「だってぇ、昨日のわたしはぁ、ごろごろしてぇ、ゲームをしてぇ、アイスとジュースとぉ、お菓子を食べるだけの生活をしていたのですぅ。
 そこにぃ、やる気をだしてぇ、戦いを挑めばぁ、負けることなんてないのですよぉ」
 堕落しきって戦う以前の問題な行動をしていた昨日の自分、そんなものに負けるはずがない、なんて。
 キリッとした顔で発言するノクス。
「つまりぃ、こんな戦いもあろうかとぉ。
 わたしはぁ、常日頃からぁ、堕落しているとかぁ、サボっているとかぁ、非難されるような生活をしてぇ、備えていたのですぅ」
 ドヤ顔で、普段の怠惰な生活はこんな時に備えてのものだ、なんて言ってのけるノクス。
 絶対嘘である、たまたま、こんな特殊な戦場だったからってそれを理由に言い逃れるなんて、とんでもない奴だ。
「 説明はぁ、こんなところですねぇ。昨日とは違うところを見せてぇ、明日へ向かって突き進むのですぅ。
 まぁ、昨日が駄目すぎたという人ならぁ、タイムマシンでも使ってぇ、過去に戻ってぇ。
 この駄目人間がぁ、とか言いながらぁ、過去の自分を叱責する、なんてことの真似がぁ、できちゃいますねぇ」
 真面目に戦う人も、ちょっと問題だった自分を叱って戒める人も、それぞれに需要があるらしい今回の戦い。
 どんなことになるのかは自分次第だと付け足して、冷感マットから降りたノクスはふわりと浮かびグリモアを起動。
 わたしを見習っても良いんですよ、なんて、駄目人間な発言をしつつ、猟兵達を昨日の自分との戦いへ送り出すのであった。


紅葉茉莉
 こんにちは、紅葉茉莉です。
 今回も迷宮災厄戦のシナリオをお届けします。

 敵となる相手、それは昨日の自分自身。
 全てが同じ、昨日の自分をどうやって攻略するのか、その攻略方法をプレイングに記載し、乗り越えてください。
 プレイングボーナスは、昨日の自分の攻略法を見つけ出し、実践することです。

 と、ここまで書くとシリアスな戦闘シナリオに見えますが、ノクスがオープニングで説明していたように、駄目すぎる自分を張り倒す、なんて形でもかまいません。
 つまりは皆様が、どんな形で自分自身と戦いたいか、という事を自由に、やりたい放題して良いという事です。

 他にも、複数人での合わせプレイングで見知った仲間とこんな会話を。
「コイツはお前の事も良く知っている、なんて言っている」
「じゃあ本物がどんなものか、教えてやる」
 とかでトドメの一撃を打ち込む相手を交換して、仲間との繋がりを見せ付けたりするのも有りです。

 つまり、真面目にシリアスに、昨日の自分を乗り越えるのもOK。
 コミカル、ギャグ的展開、昨日の駄目な自分を張り倒してもOK。
 仲間との協力を見せ付けるようなプレイングでもOKと。

 皆様の、お好きに昨日の自分と戦ってください、というシナリオです。

 ただし、コミカル展開が良いのか、シリアス展開がいいのかは、可能ならばプレイング冒頭に記載してください。
 文字数的に厳しいなら……。

 シリアス希望:『A』
 コミカル、ギャグ希望:『B』
 お任せ:『C』

 といった感じで、アルファベット表示でかまいません。
 希望、記載がない場合は、プレイングから判断します。

 また、複数人で参加する場合は、相手の名前がわかるように、フルネームかIDを記載してください。

 では、ここまで長文を読んでいただき、ありがとうございました。
 ご縁がありましたら、よろしくお願いします。
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第1章 冒険 『昨日の自分との戦い』

POW   :    互角の強さであるのならば負けない。真正面から迎え撃つ

SPD   :    今日の自分は昨日の自分よりも成長している筈。その成長を利用して戦う

WIZ   :    昨日の自分は自分自身であるのだから、その考えを読む事ができるはず。作戦で勝つぞ

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

モン・サンシン
B

どこかで見たケットシーだみゃ…って偽物?
しかし思った、もし自分ならイタズラ対決楽しみそうじゃないかと。
どっちが多くオブリビオン驚かすかの競争に持っていけるようにカッパオバケを呼び出して自分もカッパ水着で紛れる。
「お~ば~け~だ~ぞ~」
他に驚かせそうな偽物がいたら
「う~ら~め~し~や~」
と筋斗雲(ポポゥチョ)と協力して肝試しな空気に持っていく。
うみゃ、これで偽物さんやる気でたかにゃ?
(あわよくば偽物騙して他のオブリビオンの戦意低下狙い)

どんどん肝試しするがここは勝負。
最後は自分の偽物を驚かすのを忘れずに。
「みゃふふ、これでこっちのほうがちょっと多いはずみゃ」
(いないか挑発失敗したら直接対決)


ロベリア・エリヌス
『C』

昨日の自分、ね
何をしていたのか?
何を考えて居たか?
それら全てが『記録』として蒐集済みよ
逆に『昨日の私』には『今日の私』という『記録』は無いわ

ねえ、『昨日の私』
貴女は今日の私に興味津々でしょう?
だって貴女が知らない『記録』なんですもの
そして、だからこそ貴女は私を殺すわけにもいかないでしょう?
だって、私は貴女の未来…
記録を蒐集する者として、一日分の喪失を貴女は許容出来るかしら?
【其の答えを識るまで、僕は死ぬ事もままならぬ】のよ
私でもある貴女なら満足する答えは出せるでしょ?
でもその答えを出す以上、貴女は自決するしかない…
さあ、貴女はどっちを選ぶ?

偶にはこういう『物語』を蒐集するのも悪くないわね


四季乃・瑠璃
C

翡翠「昨日の私…ヒーロームーブでゴールデン翡翠ちゃんになってた」
二人「あ」

【クリエイト】で分身
こっちも闘技場の石畳や壁やらからG翡翠ちゃんを生成してG翡翠ちゃん同志のバトルへ
瑠璃と緋瑪は【クリエイト】で翡翠の武装を作ってサポートしつつ、それぞれの自分をボムや【クリエイト】した重火器で応戦。
最終的にはG翡翠が偽G翡翠に組み付いて自爆(翡翠は爆破前にシスターズの方へ退避)
瑠璃、緋瑪もジェノサイドノヴァで圧倒したり

緋瑪「貴女達の敗因は一つ…昨日の私達はギャグ展開だったからだよ!」
翡翠「今日のシナリオハシリアス…ギャグとシリアスならシリアスが勝つよね」
瑠璃「…シリアス、かなぁ…?」
偽「納得いかない」



 コロシアムな世界に降り立った猟兵たち。
 これより、仁義無き昨日の自分との戦いが始まろうとして……始まろう、と、はじま……。
「お~ば~け~だ~ぞ~」
 始まってなかった、というか何かこう、ほのぼのした空気の空間にいたのはモン・サンシン(未来小猫モン・f00444)
 この世界に来た当初は、遠くに見える自分を発見、どこかで見たケットシーだみゃ……って偽物? なんてシリアスな空気だったのに。
 ふと、自分だったらイタズラ対決を楽しみそうだと思ってしまったのが運命の分かれ道。
「どっちがより多くのオブリビオンを脅かせるか勝負だみゃ!」
「負けないみゃっ! じゃああっちで戦ってる人たちを驚かすみゃ!」
 とりあえず本物のモンさん、偽者を見つけた時に勝負をしかけちゃったもんだから。
 もう、お互いにカッパな幽霊の召喚合戦。
 出せる数? そらもう、お互い多数を出せるんだから。えーと、片方がレベル×5の幽霊を出せて、今のモンさんがレベル55、つまりは……275?
 それが二人、あわさることで550。
 うむ、多い。
 対抗して呼び合ったせいでカッパカッパ、カッパまみれの大混雑。
 そしてカッパ水着で紛れ込んで、もちろん昨日の姿な自分も紛れ込むのでここに一人ずつ、本体(カッパに化けたの)が組み合わさって、総勢552体によるカッパの絨毯。
 上から見たらまあ、壮観だろうなぁ、ひしめき合うカッパたちが、水の入ったお皿を揺らしてあーだこーだと、どんな悪戯とか肝試しをするか、なんて打ち合わせをしているんだから。
 しかし待ってほしい。
 乗って移動できる雲、筋斗雲、もといポポゥチョと名づけたそれが、靄っぽく広がって雰囲気をだしてはいるが。
 うん、カッパって明らかに、ジャパニーズ的なホラーというか、水辺の肝試しの定番だし、靄みたいなのが広がると雰囲気がでるのは当然なんですけど。

 数が、多すぎて、そんなこと、できるかっ!

 肝試しなんて出来る空気じゃねぇ!
 明らかに数が多いんだよぉ、コロシアムにひしめき合う、カッパの絨毯なんて数がでてきたら、この一角だけ人口密度、もといカッパ密度が高すぎるんじゃい!
「う~ら~め~し~や~」
 いや、モンさーん!?
 それっぽい空気にもっていこうとしてますし、偽者ってか昨日のあなたもノリノリで、一緒になって雲を広げて空気を作ってますけど!?
 カッパな群れでどうやって肝試しをするんですかぁ!?
 ほら、ちょっと、あっち側、あっち側!? 普通に戦ってる、他の人の領域まで侵食し始めてますよ、カッパの集団が!?
 え? なに? 問題ないって?
 ああ、なるほど、偽者を騙してそそのかして、他の人が戦ってるオブリビオンの戦意低下になればいいと、なるほど、そんな深謀遠慮があったのですね!
 いや、そんな風にいってるけど絶対違うんだろうなー、でもそういう事をいってるけど、普通に遊んでいるだけなんだろうなー……。
「にゃははー、あっちの人をどれだけ驚かせるか勝負にゃ!」
「まけにゃいのだ!」
 あっ、でも普通に乗っけられてるぞ、偽モンさん。
 これは効果的な攻撃だったか、だがね、ひとつ覚えておいてね。
 自分自身も、あっさりと、乗せられる可能性が、あるという事を。


 なんだかんだで大量のカッパが出現している時、普通にシリアス……? かどうかはわからないが、過去の自分と相対している人がいた。
「昨日の自分、ね。何をしていたのか? 何を考えて居たか?
 それら全てが『記録』として蒐集済みよ」
「けれど、今、昨日の自分と相対する、なんて『記録』はあるのかしら?」
 昨日の自分は記録済み、と言ってのけたロベリア・エリヌス(recorder・f23533)と、記録済みでも自分と相対する記録などないだろう、と言い返すオウガ。
 思考も真似たオウガ、そしてほんの少しの未来であるロベリアの誘いに乗らぬように平静を保つのは、仮にロベリアが未来の自分、に襲われたとて同じように、相手に飲まれず平静を保とうとするであろう事の再現か。
 されどそこは自分自身、自らの性を知り尽くしているが故、揺さぶる言葉は見つかるとロベリアは平静装う昨日の自分に、その心をかき乱す言葉を放っていた。
「ねえ、『昨日の私』
 貴女は今日の私に興味津々でしょう? だって貴女が知らない『記録』なんですもの」
 ロベリアが口にした、知らない記録。
 数多の情報を記録していく、そんな存在でもある自分が知らぬ記録をそのままにできるものか。
 知らない『記録』なら、知って記録として残す、それを求めるのならば一日先の自分を記録したいと願うのは当然の欲求で。
 投げかけられた言葉を聴いて、オウガの眉根が動いたほんの僅かな綻びを見逃さず、ロベリアは揺さぶりをかけていく。
「そして、だからこそ貴女は私を殺すわけにもいかないでしょう?
 だって、私は貴女の未来……。記録を蒐集する者として、一日分の喪失を貴女は許容出来るかしら?」
「あら、そうかしら? 一日分の未来でも、貴女を殺して記録を奪えばいいのよ。
 そして、成り変われば私は喪失を補い、そしてすべてを記録できるわ」
 一日分の喪失、すべてを記録する者として、喪失というのは耐えがたき苦痛。
 それを許容できるのかと問いかければ、偽者は殺して奪い、喪失を補えば記録できると言い返すもその答えは苦しい言い訳。
「私でもある貴女なら満足する答えは出せるでしょ?
 なんて思っていたけど……どうやらこの世界のオウガとしての考えがあるようね、残念だわ」
 すっと眼鏡に手を伸ばし、ブリッジさわり位置を調整。
 自分自身だったなら、ここで出すべき答えは決まっているはずなのに、別の答えとは失望したといわんばかりに頭を振れば情念の獣がその鎌首をもたげ、偽者を駆逐すべくその返答を待ちわびて。
「なっ、違っ、完全ではない記録で満足なんて」
「あら、なら自決するって答えなのかしら? さあ、貴女はどちらを選ぶの?」
 侵入者を真似、そして排斥するオウガの意思と記録し続ける自分の意思、それらが混じり認識、思考の混乱を起こした偽者に畳み掛けるようにして。
 自分自身ならば、記録を残すべく未来を断てず、ここで果てるものでしょうと揺さぶれば、相反する思考の中で苦慮するオウガ。
 頭を振って苦しめば、すぐにでも情念の獣が喰い尽くさんとする勢いの中に、大量の侵入者が現れたのはその時で。
「カッパーカッパーカッパッパー!」
 モンの戦う領域で収容し切れなかったり、他オブリビオンを驚かすという目的であふれ出したカッパが来た。
 シリアスな空気をぶち壊すカッパの群れだ。
「……! これよ、私はカッパを選ぶわ」
「……明らかに歪んだわね、これは」
 その思わぬ侵入者を前にして、偽ロベリアの模倣が歪み、新たな情報を記録するという選択を選んだ瞬間。
 なるほど、苦しむ末の逃げに走ったか、なんて納得したロベリアの操る獣がカッパごと偽者を飲み込めば勝負あり。
「……最後はちょっとアクシデントもあったけど、それもそれね。
 興味深い歪み方を見せてくれたし、偶にはこういう『物語』を蒐集するのも悪くないわね」
 クスリと笑ったロベリアが、そっと取り出したのは文庫本。
 白紙のページを開いていけば、そこへ彼女は今日の出来事を記録するのであった。


 シリアス……が途中でカッパになったが、こちらでもカッパの影響がでていたらしく。
「いやちょっと、なんでこんなにカッパがいるの?」
 偽者、もとい偽者と相対していた四季乃・瑠璃("2人で1人"の殺人姫・f09675)さんが思わず漏らしたその言葉。
 隣では彼女の別人格を宿した分身の緋瑪が何でだろ、みたいな感じで首をかしげて、その後ろには別人格を宿した人形の翡翠ちゃんが立っていたが、唐突にやべぇ事を言っていた。それもかなり。
「昨日の私……ヒーロームーブでゴールデン翡翠ちゃんになってた」
「「あ」」
 うむ、この世界は昨日の自分が現れて戦うことになる世界だね。
 そして、翡翠ちゃん、昨日はヒーローなムーブで、黄金の巨人っていうか、ゴールデン翡翠ちゃん(16mの黄金ボディな巨大兵器的なアレ)になって戦ってたんですね。
 うむ、分身したり、人形な自分を呼び出してるなら、まあ敵対するチーム昨日のシスターズも当然、その姿をとるわけで。
「ゴールデン翡翠ちゃん、発進!」
「かっぱー!?」
 偽シスターズ、もとい偽翡翠ちゃん。
 唐突に地面が砕け、巨大な黄金のゴールデン翡翠ちゃんが出現したら、何故かギャグ的空間の被害者的ムーブで吹っ飛ばされるカッパたち。
 なんてことだ、こんな所にきていたが為に被害者になってしまうなんて。
「ああ、こりゃまずいね、こっちも対抗していくよ、瑠璃!」
「オッケー、緋瑪。ゴールデン翡翠ちゃん、練成!」
 出現した黄金の巨人に対抗するには、こっちも黄金の巨人だとコロシアムの床や壁を材料にして、黄金のゴールデン翡翠ちゃんを呼び出す二人。
 もちろん、パイロットは翡翠ちゃん。
 相手の出現にあわせて、此方も壁が砕けて地面が裂けて、素材にされて召喚される黄金の巨人。
 何故かカッパたちが巻き込まれずに、周辺にいないのはどういうことか。まあその理由は後程わかるがこまけぇこたぁいいんだよ、怪獣大決戦(戦ってるのは少女の形だけど)だ。
「出番のため……負けられない」
「それは……こっちも」
 お互い出番が少ない者同士、シンパシーを感じつつ今は敵対するものだと、真正面からぶつかり合う巨人なゴールデン翡翠ちゃん。
 本物の繰り出す右ストレート、偽者が屈んで避けて、お返しとばかりに左アッパーを放てば上半身をそらしつつ、一歩下がって避ける本物。
 互いが一歩も譲らず、目立つために戦えば。
 本物の踏み込みで大地が砕け、飛びのく偽者が着地した先で砕け、爆ぜる地面と共に吹っ飛び消滅するカッパ。
 押しのけられて、大決戦に巻き込まれて酷い目にあるカッパたち、これは酷い。
 そんな中、ただの肉弾戦では決着つかぬと双方の緋瑪と瑠璃が武装を練成。
「翡翠、これを」
「あっちにまけちゃ駄目だよ♪」
 互いが作るは巨大なロケットランチャーやサブマシンガン。
 砲弾が飛び交って、弾幕が形成されて。
 双方の黄金ボディが傷つき、飛び散る金属片と砕け、破壊されていくコロシアム。
 明らかにサイズ感があってない、巨人同士のやりすぎな闘いの最中、等身大の闘いも同時に行われていたのであり。
「ふーっ、流石にあっちも同じ武器だね」
「緋瑪、コンビネーションもしっかりしてるし結構厳しいね」
 瓦礫に隠れ言葉を交わし、銃口だけ出して引き金引いて相手をけん制。
 偽者側もそれをしってか、姿を見せず投げ込まれる爆弾や飛び交う銃弾で返答し、こちらも激戦が繰り広げられているが結末はあっけないものである。
「目立つ為ならば……」
「え、ちょ!?」
 本物ゴールデン翡翠ちゃん、偽者に抱きついて自爆装置を起動。
 いや、ここから更に目立つ戦いを、って考えていた偽者が目を白黒させているうちにゴールデン翡翠ちゃんが大爆発、もちろん同じように内部に自爆装置なんてついてる偽者も大爆発。
 その衝撃で煙が広がり、視界がふさがれた偽シスターズの二人であったが、次の瞬間投げ込まれたのは自分たちが得意とする最大の一手、魔力を高め放たれる強烈な一撃のジェノサイドノヴァ。
 ゴールデン翡翠ちゃんの爆発で出来た時間を利用して、魔力を高め投げ込まれた一撃を回避できず偽シスターズも爆風に飲み込まれ、三人揃って倒れる始末。
 あまりにあっけない幕切れだが、それには理由があると自爆前に脱出した翡翠ちゃんを中心にして語るシスターズ。
 まずは右側、緋瑪が最初に理由を語りだす。
「貴女達の敗因は一つ……昨日の私達はギャグ展開だったからだよ!」
 そうだね、よくばりさま、なんてオウガを相手にヒーロームーブをしていたけど、よくばりさまがツッコミをしなければならないほどに、ギャグ展開だったものね。
「今日のシナリオはシリアス……ギャグとシリアスならシリアスが勝つよね」
 その説明を受け、中央の翡翠ちゃんがドヤ顔で。
 シリアスな自分たちが、ギャグではっちゃけていた昨日の自分たちに負けるはずはないと豪語。
 ああ、なるほど、だからカッパさんたちが巻き込まれていたのは、ギャグってた昨日のシスターズ側ばっかりだったのか、納得……できるかぁ!
「……シリアス、かなぁ……?」
 そんな二人の説明に、かなーり、懐疑的に考える瑠璃さん。
 君の疑念は間違っていないよ、大丈夫だ、だってその証拠にさ、ほら。
「「「納得いかない」」」
 偽シスターズが口をそろえて、納得できないっていってるから、さ。


 そんなこんなで溢れかえったカッパさん、派遣されたカッパさんが巻き込まれ、肝試しなんて空気じゃなくなっていた最初の戦場の様子はというと……。
「みゃはは、ちょーっと失敗しちゃったけど、出番はあったみゃ!」
 偽モンさん、カッパたちがやられたけど、肝試しになってなかったけどまあ、色々あったね、なんてやり切った顔になっていた。
 うむ、良い感じに乗せられて、カッパ集団の数を減らしてしまったのにこれはいけない。
 ノリノリで次にどんな仕掛けで驚かせにいこうかな、なんて考えていた偽モンの後ろに音も無く迫りくる、本物、もとい本モンの影!
「みゃふふ、本当に肝を試すのは自分自身みゃ!」
「みゃぁああああああ!?」
 後ろから、両方のわき腹をぼふっとついて衝撃を与えれば、完全な不意打ちで悲鳴を上げる偽モン。
 まあそうだろうよ、仕掛ける側が仕掛けられたらそりゃあ驚くわな。
「みゃふふ、これでこっちのほうがちょっと多いはずみゃ」
 ぶっ倒れて、ビクンビクンと痙攣している自分の偽者を見下ろしながら、勝ち誇ったかのように胸を張るモン。
 なんて酷いだまし討ちなんだ、あとこの大量増殖したカッパの幽霊をどうすんだ!?
 早く回収してくれないと、まーた他の戦場に溢れたらどうしてくれるっ!

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

ルゥナ・ユシュトリーチナ
B:馬鹿野郎お前俺は勝つぞお前!

昨日の自分と戦う…苦しい戦いになるだろう。でも負けない!正々堂々戦う!(と言いつつ不意打ちで殴り掛かる

…チッ。流石自分だから防いで来るか。OK、ここからはルール無用のダーティファイトだオラァ!

でもね、貴女が昨日の私なら、絶対に勝てないよ。鍛錬を一日怠ると、それを取り戻すには3日掛かるって言うよね?
詰まり一日鍛錬すると3日分成長するんだよ(筋肉式理論

加えてね、私はお腹の薔薇の痣の秘密を知って、次の段階に覚醒したの…でも昨日の私は知らない、だから勝てない!
そして、その秘密とはね…(相手が興味惹かれて隙を見せた瞬間UCを叩き込む

ごめんねぇ…まだ生えてこないんだ、設定。



 何かカッパーな流れになっていた、そしてあふれ出したカッパが吹っ飛ばされる、そんな空気を引き継いで。
「馬鹿野郎お前俺は勝つぞお前!」
 うむ、決意表明の段階でギャグな空気をまとっているルゥナ・ユシュトリーチナ(握撃系無気力フラスコチャイルド・f27377)がいるねぇ。
 気合は十二分にある、そして昨日の自分を乗り越えるために策があるようですがはてさて、上手くいくのだろうか。
 何せ空気がギャグをひきついでいるんだし?
「昨日の自分と戦う……苦しい戦いになるだろう。でも負けない! 正々堂々戦う!」
 自分を乗り越えるべく戦う、正々堂々とは、なんて高貴な心がけ。
 だがその言葉とは裏腹に、ルゥナさーん!?
 そっくりさんな自分自身にいきなり殴りかかってるじゃないですか!? あっ、でもどうせ自分なら不意打ちするだろうなー、って考えてた、思考もコピーした偽ルゥナさんがパンチをがっちりとガードしていたや。
「フッ、一日二日でそんな正々堂々とか言い出して、本当に正々堂々戦うようになるわけがない」
「……チッ。流石自分だから防いで来るか。OK、ここからはルール無用のダーティファイトだオラァ!」
 パンチを掌で受け止め、読めていたなんて言いつつ握りこんで追加攻撃を防ぐ偽ルゥナ。
 ガッチリ攻撃防がれつつ、こういう展開も想定していたと強引に腕を引っ込めお互い一歩も譲らない肉弾戦に。
 目潰し狙いで繰り出される本物の手刀、卑劣な手段はお互い予測済みだと防ぎ、髪の毛を引っつかもうとする偽者。
 互いに普通の格闘技とかだと禁止される攻撃のオンパレード、なんだこの戦いは。
 どっちも似たり寄ったり、卑怯極まりない、どんな手を使っても勝つなんて言いながら攻撃してるし、入り乱れて遠くから見たらどっちが本物かさっぱりわからん。
「やるじゃない、偽者。
 でもね、貴女が昨日の私なら、絶対に勝てないよ。鍛錬を一日怠ると、それを取り戻すには3日掛かるって言うよね?」
「言うわね、けどそれは怠った場合でしょ?」
 あっ、本物が仕掛けていった。
 言葉で揺さぶり、というかそれ怠った場合であって取り戻すとか関係なくない?
 ほら、偽者もそういう部分で突っ込みいれてるし。
「勘違いしてるね、この理論だとつまり一日鍛錬すると三日分成長するんだよ」
「うっそだぁ……」
 無茶苦茶な理論である、怠ったら一気に鍛錬した分を失うから、日々継続して鍛錬せよ、って意味の言葉を。
 一日分で三日分の成長とかそれめっちゃ矛盾してますよね?
 間にある、失われた二日分の成長とか衰えとかどこにあるんだよぉ!?
 というか鍛錬しても、怠っても成長する分と衰える分が同じだったら、日数とか言う必要ないよね?
「鍛錬しても、サボっても増減量一緒なら日数を言う意味ないよなぁ!」
「細かい事はいいんだよ! 掛け算に掛け算をする理論だから間違いない」
 至極当然のツッコミをする偽ルゥナ、単純な掛け算だけど無理矢理強引に、そらもう上乗せしまくりな筋肉な男の作者な理論をぶちかますルゥナ。
 無茶苦茶だぁ、なんだこの戦いは。
「加えてね、私はお腹の薔薇の痣の秘密を知って、次の段階に覚醒したの……でも昨日の私は知らない、だから勝てない!」
「な、何!? ついに覚醒を……?」
 あっ、ようやく昨日の自分との明確な違いを出してきたぞ、ルゥナさん。
 お腹にある痣の秘密がついに明らかになる、そして都合よく今日覚醒して、昨日は未覚醒とかこりゃあ勝ったな、わはははは。
 で、その秘密とは? ほら、偽ルゥナも気にしてちょっと前のめりになってるし。
「そして、その秘密とはね……フンッ」
「ごふぉぉ!?」
 あっ、いきなりの腹パンだぁ。いかも不意打ち気味に良い感じで入ったぁ!
 クリーンヒット、思わず膝つく偽者を見下ろしながらルゥナさん、えげつない一言を。
「ごめんねぇ……まだ生えてこないんだ、設定」
 あ、そのうち生えてくるって言っててまだ生えてなかったのか。
 完璧に騙し切ったルゥナさん、一瞬で流れが変わったそのままに。
 一撃叩き込んだ偽者に、完全にだまされたなぁ、なんて哀れみの視線を向けていたたまれなくして、そのまま一気にはりたおしていた。
 そらもう、容赦なくワンサイドゲームのように、ボッコボコに、ね。
「全力で叩き込めば……まぁ、そうなるねぇ」
 完膚なきまで張り倒し、オウガが消滅した後で。遠くを見つつ呟くルゥナ。
 そうだね、全力で怪力任せに叩き込めばこうなるのは当然だよね。
 けど、勝利したけど。
 あなた、無茶苦茶理論を押し付けて、最後には虚偽と力で押し切る人って、認識の痣みたいなのが生えちゃってますからね!?

成功 🔵​🔵​🔴​

夕闇霧・空音
かつての私も今の私もそんな違いはないような気がするけど…

【アドリブOK】
しばらくの間相手との力の差を比べてみるつもりだけど
やっぱ自分自身だもの、強敵よね…
しかし、私は私自身の弱点を知るもの…それは!

「あ、あんなところに天音が!!」
そう言って反対方向を指差して見せたら…
私なら確実に振り向く!
そしてそのスキを突いてユーベルコードで倒してしまえばいいわ!

ふん、おんなじ手を使われないようにしなきゃね。
未来の私としては。



 色々と空気がギャグ、コミカル方面になっていた。
 ここらでシリアスな戦いがあればいいのだが……。
「かつての私も今の私もそんな違いはないような気がするけど……」
 そんなシリアスを求む流れにぴったりな戦いが。
 自分自身、昨日と今日では大きな差異はないと言いつつ夕闇霧・空音(凶風・f00424)が自分の偽物と相対し。
 右手に掲げるは杭打ち機構を用い、超高速で穂先を突き出せる槍を。
 左手には凍てつく氷の爪生やし、互いに譲らぬ接近戦。
「……流石に私ね、互角になるのは当たり前か」
 踏み込み突き出す槍の穂先、その一撃を形成した氷の爪、その曲面で受け流し。
 お返しとばかりに偽空音も槍を突き出し、空音は爪を振り下ろし、槍を打つことで軌道を逸らす。
 地面を穿ち、砕け飛び散る石片達。
 ふわりと浮かんだそれらと共に、空音と偽空音は互いに地面を蹴って後方へ。
 距離を取っての仕切り直し、されど力量、武具、技、なにをとっても互角の戦い。
 再度縮まる両者の距離、一瞬の隙を作ろうと互いに武具を振るえば突き出された槍の穂先がぶつかり合って、甲高い金属音をなり響かせて。
 火花を散らせば両者共に、相手を引き裂くべく繰り出した氷の爪が接触、同一強度の衝突によって双方、形成した氷の爪が絡み合い。
 両者の腕と形成した爪、あわせて2メートルの距離にて視線が交錯。
「だったら、これで……」
「どうかし、ら!」
 左腕は使えない、そして衝突の弾みで上向く穂先の槍を振るえば速度に劣る。
 ならばと槍を手放して、右腕にも氷の爪を形成し。
 相手の左脇腹狙って繰り出すも、それは敵対する偽者も同じ思考へ。
 突き刺す感触、それと同時に自身の体に走る激痛。
 どちらともなく左腕を振るい、絡み合った爪を解けばお互いが槍を拾いながらバックステップ。
 血液滴るわき腹押さえ、痛みを強引に押し殺して睨み合う。
「割と意表を突いたと思ったんだけど、やっぱり能力が同じだからわかってたわね」
「そうね、それが最善ってわかるし」
 あえて右手の爪を作らず、武器を使って戦って。
 機を見て爪を生成し、不意打ちとばかりに使用したが相手も能力を把握している偽者。
 同じ様に、双方の左腕を防ぎあった状況下で右手の爪を生み出して、攻撃する思考にいたるのは当然であった。
 だが、この戦いで空音は確証していた。
 この偽者ならば、自分にとっての弱点には確実に反応するという事に。
 再びの衝突、それをするかのように一歩踏み出した空音、だがその表情は睨み合っていた際の鋭いものではなく、何かとんでもないものを見つけてしまったような、驚きに満ちたもの。
 そのまま、偽空音の後方を指差しながら。
「えっ、あ、あんなところに天音が!!」
「うそっ!? 何処にっ!?」
 自分の妹がこの戦場に紛れ込んでしまっている、そう驚いた反応を示したならば、妹を溺愛する、という部分までコピーしていた偽空音が思わず後ろを振り向くが……そこには当然誰も居ない。
 その一瞬の隙を見逃さず、空音は自身の両腕を銃口へ変形、絶対零度の青白き光線を放てば回避が間に合わなかった偽空音は驚愕に満ちた表情のまま凍っていく。
 咄嗟に顔をかばうよう、腕を翳した姿勢のまま氷像となったその瞬間を逃さずに、空音は手にした槍を掲げて突進。
 杭打ち機構を発動させて高速で穂先をぶつけ、偽者の氷像を粉々に打ち砕き、そしてその痕跡を消滅させていたのである。
「ふん、おんなじ手を使われないようにしなきゃね。未来の私としては」
 偽者であるオウガを消滅させながら、自分自身の弱点を再認識。
 同様の手段で自分が反応、この偽者と同じように倒されてしまわぬようにと自戒して。
 彼女は戦場を後にするのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

緋翠・華乃音
『A』

昨日の自分が持っていない武器を、今日の自分は持っている。
それは“情報”だ。“昨日の自分と戦う”という情報。
昨日の自分には“明日の自分と戦う”という情報なんて持っていない。

今日の自分が持つ唯一の優位性。
情報が有れば対策も立てられる。
戦争にしろ遊戯にしろ、それが理屈で道理だ。


闘技場という限られた空間では狙撃銃は使わない。
ダガーナイフと拳銃を用いて戦闘を行う。

戦闘は拮抗する筈だ。
昨日の自分と今日の自分では、戦闘力に違いなど無いのだから。

しかし、このダガーには毒が塗られている。
今さっき塗ったものだ。毒耐性のある自分にも少しは効く毒を。

毒が少しでも回ればそれで終わりだ。
突く隙は一瞬で充分。



「やあ、今日の俺。そしてさようなら、一日飛ばして明日からの俺には俺がなる」
「安っぽい挑発だな、その程度で心を乱せるとでも?」
 オウガが変質した偽者、それが語る言葉を聴きつつ眉すら動かぬ緋翠・華乃音(終ノ蝶・f03169)
 コロシアムにて睨み合い、先に動くは挑発しかけた偽者であった。
 距離がある内に使ってしまえとばかりに引き出したのはスナイパーライフル、本来はスコープ覗き、遠方の相手を狙撃する代物だが偽者は早撃ちで使用。
 遠雷が如き轟音がコロシアムに鳴り響くも、相手の動きに即応した華乃音は上体屈めて地面を蹴って駆け出して。
 大雑把な狙いで放たれた銃弾は華乃音を外れてコロシアム後方の壁に命中、岩を砕きめり込んでその威力を見せ付けるも、外れてしまえば無意味。
 距離を詰めれば取り回しの悪いライフルは不利だとばかりに急接近、自身は拳銃引き抜いて引き金引くも、その突撃すら同一能力、同一武器を持つ存在からすれば想定の範囲内。
 素早くライフル投げ捨てて、上体捻らせ銃弾を回避。
 近接戦ならば此れが有効武器だとばかりに、コンバットナイフを引き抜いて。
 自身を狙う華乃音の右手に握られた拳銃と接触、金属音と共にその銃口を跳ね上げれば再び響くは発砲音。
 一撃凌ぎ、反撃とばかりに偽者も拳銃抜けば、近距離で互いの体を狙い合っての銃撃戦。
 されど直撃避けるように、華乃音が右手の銃口向ければ偽者は左腕振るって右腕打って、その衝撃で狙いを逸らし。
 発砲音とマズルフラッシュ、その間に偽者が右手の銃口向ければ華乃音も負けじと左手伸ばし、拳銃握った右手を掴んで力任せに軌道を変える。
 体術と銃撃が入り乱れ、互いに隙を伺う近接戦。
 武器も技も同じ存在、昨日と今日では戦闘力に違いなどなく拮抗する戦いではあるが、不思議と華乃音の子頃は落ち着いていた。
 それは昨日の自分と今の自分、相手が持ち得ない武器を自分は持っているという明確な自信。
(「“情報”だ。“昨日の自分と戦う”という情報」)
 決定的な差、昨日の自分には“明日の自分と戦う”という情報なんて持っていないが自分は昨日の自分と戦うという情報を持ち売るという、覆せぬ差。
 互角の相手と戦う中で、唯一絶対の優位性、情報があることで対策が生み出される。
 それは戦争だろうと遊戯だろうと変わらない、理屈であり道理である。
 そしてもうひとつ、昨日の自分との明確な違いを彼は持っていた。
 偽者が適時振るうコンバットナイフ、大して華乃音は未だ使わぬその武器にこそ、覆せないもう一つの違いがある。
「これで終わりだ」
「チッ、予測していた……がっ!?」
 銃弾を左肩に掠めつつ、引き抜く動作すら見せないで突き出した華乃音のナイフ。
 ここぞという場面まで温存したそれは、この戦場に臨む前、耐性持った自分自身にすら利く毒を塗った代物。
 昨日の自分はナイフに毒など塗っていない、つまりこのナイフは、情報と共に準備された昨日の自分とのもう一つの差。
 普通の傷ならば即座に反応、最善の手を打ち反撃するはずの偽者であるが、毒にて動きが鈍ってしまえばそれで十分。
「情報という決定的な差、それを元に用意された武器の違いという差。
 均衡を崩すには十分だった、それだけだ」
 華乃音が冷たく言い放ち、崩れた拮抗状態から一気に押し切る。
 コロシアムに響き渡った銃声、そして虚空を切り裂く風切り音。
 前屈しながらナイフを振りぬく姿勢で止まった華乃音がゆっくりと上体起こせば、それに呼応するように偽者がぐらりと揺らぎ、地面へと突っ伏して。
 やがて末端から消滅、昨日と今日、情報という明確な差を利用して、華乃音の見事な勝利が確定していた。

成功 🔵​🔵​🔴​

アリス・セカンドカラー
C
汝が為したいように為すがよい。
ギャグ世界の住人(継戦能力/限界突破/リミッター解除)

昨日の私はとことんツイていなかった。馴染みの喫茶店のロシアンメニューでことごとくハズレを引いたのだ。というわけで、店長に無理を言ってテイクアウトしてきましたロシアンメニュー☆
『ネタに逝きネタに死す、その生き様に何の後悔があろうか?自重?何それおいしい?』を座右の銘とする私がこの勝負受けぬ筈もなし。実はハズレた方がネタ的においしいだなんて、はは。
実は昨日は日和って挑戦してないメニューがあるわ。それがこのロシアンキムチ鍋☆せっかくだから私はこの真っ赤のを選ぶぜ(辛味最凶を引く)
かっらー!(ダークネスフレアを吐く)



 シリアスに戦いが終わった……気がした。
 そんなシリアスな環境だったのに、ちょっと別の空気が漂っているコロシアムがあったのだ。
「汝が為したいように為すがよい」
 いきなり出てきて何言ってんですか。
 え? ギャグ世界の住人ですって? あ、はい、アリス・セカンドカラー(不可思議な腐敗の魔少女・f05202)さん、最後の最後でぶちまけるんですね、わかりました!
 んで、いったいどんな策略で昨日の自分を越えるのですか?
「昨日の私はとことんツイていなかった」
 どんよりした空気で語りだしたぞこの人。
 というか、ツキが最低だったんなら、もうその時点でコピーして出てきた偽アリスさんに対し圧倒的に優位じゃないか。
 もう普通に戦っても勝てると思うんですけど!
「そうね、馴染みの喫茶店のロシアンメニューでことごとくハズレを引いたの」
 あっ、偽者も思考パターンとかコピーしてるから乗ってきてる、これはまずいぞ、シリアスに振ってた流れを完全にギャグ側に引き戻してやがる。
 ツキに見放された昨日のアリス、今日はどれだけツイているのかわからない、本物のアリス。
 そんなアリスは満を持して、みたいな感じで持ち込んだものがこちらである。
「というわけで、店長に無理を言ってテイクアウトしてきましたロシアンメニュー☆」
「『ネタに逝きネタに死す、その生き様に何の後悔があろうか? 自重? 何それおいしい?』が座右の銘、わかっているわよ」
 う、わ、あ。
 仕掛ける側も、受ける側も完全にノリノリである。
 こんなロシアンな勝負、受けぬならばそれこそ偽者、アリス・セカンドカラーを名乗るべからず。
 みたいなノリで、不敵に笑って勝負に臨む偽アリス。
「さすがね、私。なら実は昨日は日和って挑戦してないメニューがある事も覚えてるわね? それがこのロシアンキムチ鍋☆」
「ええ、覚えているわ。でも今なら、二人分の力がある。挑む事に何の躊躇いがあるのかしら?」
 あっるぇー、おかしいなぁ。
 現れた偽者と戦い、乗り越えるって趣旨の戦場だったけど。
 いや、乗り越えるって部分は間違ってないけど、何で一緒に、強敵に挑むみたいな空気でロシアンメニューに挑戦してんだ!?
 実はハズレた方がネタ的においしいだなんて、本心で本物偽者、両方考えてるあたり相当である。
 漫画的に表現するなら、向かい合って画面中央に吹き出しがでてて、そこに両方からほわほわほわ、って感じで印が出てる、そんな感じである。
「せっかくだから私はこの真っ赤のを選ぶぜ」
「ふっ、こういうとき、あからさまな色ほど安全なのよ。なんだこの色はぁ」
 本物のアリスさん、毒々しいまでに赤いキムチ鍋を選択。
 偽物のアリスさん、あからさまなものほど大丈夫で、普通に見える方が怪しいとちょっと赤めのキムチ鍋を選択。
 果たしてその結末は……?
「かっらー!」
「おいしー!」
 本物なアリスさん、辛味最凶的中おめでとうございます、あ、偽物は普通のキムチ鍋を引いていました。
 いやあ、ツキは昨日から今日にかけて更に下がっていたんですねぇ、わざと危険な物を、引いたら引いたでネタ的においしいからって狙ってたように見えたけど気のせいさ!
 そのまま辛さに耐え切れず、口からダークネスなフレアを吐き出すアリスさん。
 一瞬で燃え上がる炎に偽アリスが包まれて、一気に焼き尽くす中。
「くーっ! ネタ的に負けた、完敗だわっ!」
 いや、そこ、悔しがるポイント違うから。
 へたり込んで地面を叩く動作をしながら燃え尽きる偽アリス。
 後に残ったのは、辛さに延々と襲われて口から炎を吹き続けるアリス・セカンドカラーだけだった。


 こうして、自分自身と戦うという、普通ならばありえない戦場は猟兵の勝利に終わった。
 策略を仕掛けた者、明確な差異を利用した者、何かぶっとんだ流れに持ち込んだ者。
 様々な人間模様を見せながら、自分自身を乗り越えたのだ。
 次なる戦いは如何なる奇妙な戦場か、はたまた強敵との実力勝負か、昨日の自分が今日の自分を知らぬように、今日の自分は明日の自分を知る事はできない。
 されど、前へ前へと進み続ける、その意思こそが力となる。
 ならば乗り越えよう、待ち受ける明日の脅威を。

成功 🔵​🔵​🔴​



最終結果:成功

完成日:2020年08月18日


挿絵イラスト