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迷宮災厄戦④〜氷菓とキグルミバトル

#アリスラビリンス #戦争 #迷宮災厄戦

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「却説(さて)、そろそろアリスラビリンスにおける戦いも中盤戦へと移行しそうな様子かな? 暑い夏も、まだ続きそうな予感だね」

 まあ座りたまえ、と。アストリッド・サンドバック(不思議の国の星占い師・f27581)は集まった猟兵たちに座るように促した。用意されていたのは冷たくて甘い氷菓子、カップアイスにアイスキャンデー。そのフレーバーもストロベリーからチョコレートまで様々だ。
「繰り返しの説明になるから、聞き飽きた人はアイスでも食べながら聞き流してくれ。……今回の戦場となっているアリスラビリンスは『不思議の国』だ。その内部には複数の小世界が内包されていて、その複数地点で『迷宮災厄戦 (ラビリンス・オウガ・ウォー)』と呼称される一連の戦いが進行中だ」
 戦争における陣営は三つ。
 アリスラビリンス世界における「はじまりのアリス」にして「はじまりのオウガ」、その名は『オウガ・オリジン』
 各々が「フォーミュラなき世界の簒奪」という目的を抱いて暗躍する、七体の『猟書家』たち。
 そして、双方の企みを阻止しようとする、猟兵たち。
 この戦争は、意図と思惑が絡み合う三つ巴の戦いとなっているのだ。

「ーーーここからが今回の本題だ。キミたちに向かって貰いたいのは『大きな愉快な仲間のいるところ』になる」
 そこは文字通り、大きな『愉快な仲間たち』が存在する国だ。より正確に表現すれば、「その国にやってきた『愉快な仲間』は身長が倍になってしまう」らしい。これは猟兵として活動している『愉快な仲間』とて例外では無いらしく、もし戦いのためにこの世界に転移したとすれば、到着と同時に巨大化してしまうだろう、とアストリッドは話した。

「今回、戦う敵オウガの名前は、アイスメーカー『クリーメル』…。相手をアイスに変えてしまう、恐るべき魔女だよ」
 彼女は『巨大な雪だるまのヌイグルミ』に乗り込み、『アイス怪人』として愉快な仲間たちにアイスを食べさせているらしい。その味がしては、舌に載せれば甘く蕩ける蜜のようで、一度口にしてしまえば最後、食べた者をアイスに変えてしまうという恐るべき魔女である。絵面がメルヘンチックなのはご愛嬌。

「キミたちには、キグルミとアイスを武器にする敵オウガの討滅をお願いしたい。……現地の『愉快な仲間たち』も、きっと協力してくれる筈だ」
 『愉快な仲間たち』の背中には線ファスナーが付いており、そこから内部に入り込む、乗り込む事が可能なのだという。気の良い仲間たちだ、お願いすれば快く力になってくれるだろう。

「ーーー暑い日が続くけれど、束の間の涼だと思って戦ってくれ。健闘を祈っているよ」
 アストリッドのグリモアが万色に煌めくと、周囲の空間が浮遊感に満ちた。転移が開始される……。


骨ヶ原千寿
 5作目です。コツガハラと申します。
 いまだにアイスが噛めません。

 補足説明です。
 この依頼の【プレイングボーナス】は、
 【「きぐるみ愉快な仲間」の許可を得て、乗り込んで戦う】です。双方の同意が確認できれば、種族『愉快な仲間』の猟兵に乗り込む事も可能です。その場合はプレイング中に明記ください。

 戦況を勘案しつつ、ゆっくり採用・執筆になる予定です。
 頑張って書かせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
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第1章 ボス戦 『アイスメーカー『クリーメル』』

POW   :    『アイスゴーレム』よ、私にアイスを持ってきて
自身の身長の2倍の【地形や対象を氷菓に加工するアイスゴーレム】を召喚する。それは自身の動きをトレースし、自身の装備武器の巨大版で戦う。
SPD   :    『極上アイス』のお味はいかが
【(作者以外が食べるとアイス化する)アイス】を給仕している間、戦場にいる(作者以外が食べるとアイス化する)アイスを楽しんでいない対象全ての行動速度を5分の1にする。
WIZ   :    『レッツ・アイスメイキング』♪
【アイス作りの歌とダンスを披露すると】【戦場と対象に歌詞通りの事が起こり】【アイスに作り変えられていく魔法】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ポーラリア・ベルです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

シル・ウィンディア
雪だるまがアイス作るって、ある意味あってるのか…
とと、変なところで感心している場合じゃない

お願い、わたしをあなたの中に入れてほしいの
あの、雪ダルマさんに乗り込んだ敵を討つためにっ!

さて、それじゃ、行きますか
敵UCは
【空中戦】で飛び回って【残像】を生み出して撹乱
被弾しそうな時は炎の【属性攻撃】を付与した【オーラ防御】を展開して防いでいくよ

こっちの攻撃は
接敵後、二刀流の光刃剣で【フェイント】を混ぜて【二回攻撃】

回避中・防御中・攻撃中も詠唱は途切れさせずに…

【多重詠唱】で【オーラ防御】の展開を止めずに詠唱だね

…ヘキサドライブ・エレメンタル・ブラスト
【限界突破】の【全力魔法】で目一杯味わってねっ!



 『大きな愉快な仲間のいるところ』は、大騒ぎになっていた。

「さ、寒い。寒いんだよー!」
「暑いのはキライだけど、寒すぎるのも嫌ー!?」
「こんなに寒いと凍っちゃうよぅ…」

 右に左に、混乱するばかりの『愉快な仲間』を困らせている元凶は、大きな雪だるまだ。
 その雪だるまの体は柔らかい素材の布、つまり実体はキグルミなのだが……その身体からはひんやりと冷気が溢れていて、周囲に大量の氷菓子を作り出している。バニラ味のソフトクリーム、果物系のフレーバーが二段重ねになったアイスクリーム・コーン、しゃりしゃりした食感のカキ氷まで種類は様々。そして味はといえば正に絶品。口にすれば極上の甘味が幸福となり、そのまま食べた者をアイスに変えてしまう魔法のアイスだ。

「ふふふ…。さあ、もーっと食べて! あたしのアイスは世界一なんだからっ!」
 雪だるま(のキグルミ)の中から、くぐもった声がする。声の主はアイスメーカー『クリーメル』 至高のアイスを作る魔女である。そのアイスへの情熱は若干行き過ぎていて、怯え惑う『愉快な仲間』を手当たり次第に捕まえると、ちょっと無理矢理にアイスを食べさせている。

「はい、あーんっ! ……美味しいでしょ? 美味しいって言いなさい?」
「お、美味しい…。けど、これでアイス5個目だよ…。もうお腹いっぱい…」
「え? 大丈夫よ! あたしのアイスはカロリー控えめ、いくら食べても飽きない夢のアイスなんだからっ」

 そういう意味じゃないんだけど…と、寒さで震える『愉快な仲間』の身体は一口、また一口と食べるたびに凍りついていき、最終的にはアイスそのものになってしまう。アリスラビリンスめいたファンシーでメルヘンチックな光景であるが、実害を受けている『愉快な仲間』にとっては迷惑でしかない。

「「「だ、誰か助けてーっ!!?」」」

 ・・・猟兵たちが到着したのは、そんな悲鳴が挙がる中だった。

「雪だるまがアイス作るって、ある意味あってるのか…」
 光景だけなら牧歌的にも見える惨状に、シル・ウィンディア(光刃の精霊術士・f03964)は少し困ったような表情を浮かべた。視線の先では、ポンポンとアイスを空中に出現させながら『愉快な仲間』たちを追いかけ回す雪だるまと、それから逃げまどう『愉快な仲間』たちの姿がある。子供向けの絵本やテレビ番組のような絵面ではあるものの、敵はあくまでオウガ、猟兵が倒さねばならぬ相手であることに変わりは無い。

「―――とと、変なところで感心している場合じゃない」
 はた、と気を取り直して。シルは周囲に逃げまどうばかりの『愉快な仲間』に再度目を向けた。突然の横暴な闖入者に戸惑うばかりの彼らではあるが、その身体は小柄なシルからすれば見上げるほどの大きさだ。ここは『大きな愉快な仲間のいるところ』、その住人はアリスラビリンス世界によく居る仲間たちの倍はあろうかという大きさなのだ。敵オウガの力に対抗するためには、住人である彼らの協力が必要となるだろう。

「お願い、わたしをあなたの中に入れてほしいの」
 シルが声をかけたのは、彼らの中でも大柄な体格の白い獅子、ホワイトライオンだ。いきなり小さな女の子に声を掛けられるとは思ってもみなかったのだろう。ぱちくりと目を瞬かせて、それから左右を確認して、どうやら自分が声を掛けられたらしいと、びっくりしながら返事をした。
「な、なんだい。小さなお嬢さん…? ぼくの、中に入って……そ、それで戦うっていうのかい…?」
 巨躯の割りにビクビクとした声を出すホワイトライオン。その背中には、この世界の仲間たちが持つ特徴である、線ファスナーが付いている。それを引いてしまえば、彼の中に入り込んで戦うことも可能になる…のだが。少しばかり臆病なホワイトライオンは、シルの言葉にも即答はできないようだった。
 だが、シルの真剣な目に見詰められるうちに、怯えてばかりの自分が恥ずかしいような、そんな気持ちがホワイトライオンの中に生まれてきた。小さな女の子に頼まれても動けないのは、ライオンとして情けないのではないか? 自分の心に勇気はないのだろうか?
「お願い―――あの、雪ダルマさんに乗り込んだ敵を討つためにっ!」
 シルの強い決意に、ホワイトライオンは、ゆっくりと頷いた。

「でも、空を飛ぶなんて聞いてないよー!?」
 ホワイトライオンの悲鳴が響いた。
 無事、ホワイトライオンの中に入ったシルは、いつものように精霊術士としての全力で戦いを始めた。それは、魔術による空中戦。残像すら生じさせる高速の飛翔で飛翔し、雪だるま……もとい、アイスメーカー『クリーメル』へと接敵していく。急加速による重力と風圧に晒されたホワイトライオンは目を白黒させて狼狽えるばかり。

「む、むむむ! あなた、猟兵ね! あたしのアイスに文句があるのかしら!」

 雪だるま(inクリーメル)が接近してくる猟兵を認識し、木の枝で作られた腕でビシッとシルを指さした。
 その口から紡がれるのは、アイスの歌。―――暑い日もアイス、寒い日もアイス。いつもいつでも素敵なアイス。食べればメロメロキュートなアイスクリーム屋さん! 雪だるまの歌声が響くと、周囲の地形は寒々しい冬の雪原へと塗り替えられていく。雪の日にはバニラアイスがオススメ! 甘くて冷たくて、凍ってしまいそうなバニラアイス!
 歌と踊りを披露する雪だるまに、ホワイトライオンとシルは恐れることなく立ち向かっていく。シルの詠唱が喚び熾すのは炎熱による防御。揺らめく陽炎がその白い巨体を包み込めば、飛んでくるキューブアイスやクラッシュドアイスの礫だって融かしてしまう。二足歩行めいて立ち上がったホワイトライオンの両手には、シルの光刃が出現する。
 不思議な世界の理によって強化されたその光刃は、シルが普段用いているよりも巨大なサイズとして現出した。ライオンの手から伸びる刃のサイズは、シルの身の丈の数倍はあろうかという長尺の刃として氷と寒波を切り裂いていく。

 二刀が空間を斬り裂き、フェイントを織り交ぜた空中機動が雪だるまの鈍重な動きを翻弄する。
 キグルミの内部でシルが詠唱するのは、精霊術師としての面目躍如、六の属性全てを同時に扱う多重詠唱の音列だ。その言の葉は快い旋律となって戦場へと響き出し、雪だるまが歌う身勝手なコマーシャルソングを掻き消していく。食べる相手の事を考えない一方的なアイスの歌は、シルの戦意と詠唱の足元にも及ばない。紡ぐ音は防壁となり、流れる言葉は護りとなる。もはやアイスキャンデーやソフトクリームが飛んできても、幾重にも展開された呪文の前には狙いを逸らされて、シルとホワイトライオンの動きを妨害することもできない。

「・・・ヘキサドライブ・エレメンタル・ブラスト。目一杯味わってねっ!」
 意趣返しのように放たれた魔力の奔流は、火水風土光闇の六属性の力を束ねた物。照準の中心で慌てる雪だるまに、シルは全力の魔力砲撃を叩きこんだ。わぁ…と感嘆の声を漏らすホワイトライオンの視線の先で、氷雪と寒さに包まれていた戦場が、その一撃で吹き飛ばされた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フランベル・エンツィアン
ひゃっ!!で、でかい…!!
なんだか怪獣大戦争感があるぞ
でも愉快な仲間たちも手伝ってくれるみたいだし、一人じゃない…大丈夫!頑張れ、俺!!

しろくまさんな愉快な仲間に声をかけよう
アイスといえばしろくまさんな気がするんだ
俺も君たちとこの世界を守りたいんだ、力を貸してくれるかな

協力してもらえたらしろくまさんに乗り込んで…いや、すごいな…本当にきぐるみだ…
よ、よし!しろくまさんとアンテリナムと協力して攻撃するよ
あの歌がやっかいだね、アンテリナムの尾鰭の【衝撃波】で歌をかき消し【吹き飛ばし】でこかしちゃおう!
よし、今だ!しろくまさんのフルーツアタック!
果物爆弾をポイポイ【投擲】して倒しちゃおう



「ひゃっ!! で、でかい…!!」

 思わず声をあげたのはフランベル・エンツィアン(彷徨う少年・f21786)だ。
 敵である雪だるまも大きいが、逃げまどう愉快な仲間たちも大きい。相対的にフランベルは自分が小さくなってしまったような感覚を覚える。アリスラビリンスには体が大きくなったり小さくなったりする場所があるとも聞くが、この国は正にそんなカンジだ。フランベルは自分が幼年期に戻ってしまったような錯覚を起こし、周りで繰り広げられるキグルミとキグルミの戦いはまるで怪獣大戦争のようだと感じた。

 縮尺と遠近法が狂ってしまったような光景の中、戦いを挑もうとする少年の心は若干の及び腰だ。―――果たして、自分でいいのだろうか。自分が、戦うべきなのだろうか。アリス適合者である少年には、確固たるべき己の立脚点が無い。いや、それは『あったはず』なのだ。平凡に平凡を三重に重ねたような、そんな過去があった筈……。だが、運命の悪戯か、あるいは何者かの所為か……彼は、訳の分からない状況に放り込まれ、猟兵となってしまった。振り返るべき過去<記憶>は霧に霞んだように不明瞭だから、戦うべき現在<自分>にも確信が持てない。

 だが、彼を後押す者がある。それは、彼を支える竜であり金魚だ。彼にとっての仲間であり武器でもある彼らは、フランベルの傍でそっと見守る。そして、時にフランベルを助ける力なる。そう、少年は決して独りでは無い。その周りには、姿形も様々な仲間たちが常にいるもの。
 この国の住人だって、同じだ。困った時にはみんなで立ち向かう、それがアリスと愉快な仲間たちが共有する絆だ。ちょっとくらい巨大な体を持っていたって、オウガがやってきたら困ってしまうもの。なら、力を合わせて、解決を手伝おう。
「一人じゃない…大丈夫!頑張れ、俺!!」
 フランベルは、己に気合を入れると、巨大な『愉快な仲間たち』の元へと走り出した。

 フランベルが探し出したのは、白い毛皮のホッキョクグマだった。
(アイスといえばしろくまさんな気がするんだ…)
 フランベルの内心の不可思議な直感は、あるいは彼の靄がかかった過去を紐解けば判るのかもしれなかった。ホッキョクグマは、自身が食べていた色とりどりのフルーツを抱えたまま逃げていたのであるが、フランベルに声をかけられるとフムフムと頷きながら話を聞いてくれた。彼の持っていたフルーツは弾ける果汁とフレッシュな果肉が素晴らしい味わいなのだが、氷菓子を布教する魔女クリーメルに目をつけられて逃げ惑うしかなかったのだという。なんでも、「美味しいスイーツはあたし一人で十分なんだから!」とか、そんな言いがかりをつけられて追い回されたのだとか。

 ともあれ、ホッキョクグマも仲間の危機を救う一助となるのであれば、協力をすることに異存は無い。もとより、その恵まれた体格と筋力は『愉快な仲間たち』の中でも秀でているホッキョクグマである。
「―――俺も君たちとこの世界を守りたいんだ、力を貸してくれるかな」
 そうフランベルが頼めば、ホッキョクグマは任せろとばかりに、彼に背中を向けた。線ファスナーを引っ張って中へ入り込めば、彼らは共に戦う仲間となる。

 魔力の奔流に吹き飛ばされていた雪だるまが立ち上がり、メラメラと怒りと闘志を燃やして再起する。
「もう、なんでよ! あたしはみんなにアイスを食べてもらいたいだけ! それだけなのにっ!」
 周囲の地形を再び氷点下の冷凍庫のように変化させる雪だるまだが、その動きを遮るように場に登場したのはホッキョクグマ……と、その中に入ったフランベルである。

(…いや、すごいな…本当にきぐるみだ…)
 内部は毛皮で包まれたように温かく、むしろ激しく動き回れば暑くなってしまうほど。微妙な動きづらさといい、圧迫感といい、正にキグルミとしか表現しえない着心地である。線ファスナーを引っ張った時に見えたのは、不思議な黒い空間であったが、その内部に入ってしまえば何故だか身体に馴染んだし手足を動かすこともできた。原理は全く不明であるが、それはアリスラビリンスにはよくある不思議な出来事だと納得するしかない。
 若干の動き辛さはあるものの、戦うのに支障は無い。むしろ、逞しいホッキョクグマの身体からはパワーが迸っている。相棒である空飛ぶ瑠璃色金魚のアンテリナムも、愉快な仲間の巨大化パワーの余波を受けたのか、いつもよりも大きい姿となって戦ってくれる。―――ならば、不安に思う必要など、どこにもない!

 ホッキョクグマの身体を駆って、フランベルが走り出す。狩りのような俊敏さを発揮して飛び出す熊の姿に、雪だるまはアイスの歌で対応しようとする。
「アーイス! アーイスっ! 冷たいアイスは世界の全てっ! あの子もアイス、この子もアイスっ!」
 歌が響けば空間にアイスクリームが出現し、雪だるまが踊ればカキ氷の吹雪が吹く。
 だが、フランベルの力は、一人の物では無い。連携プレーだ。
 フランベルが敵の歌と氷雪の厄介さを判断し、敵の狙いが甘い箇所を縫うようにして攻撃を避けていく。その回避行動と同時に、ふわりと空飛ぶ瑠璃色金魚、アンテナリムが尾鰭を振るうと、そこに巻き起こるのは衝撃波。雪だるまの歌がかき消され、宙に浮いていたアイスも突風で押しやられる。そして、攻撃が通る射線が開いた。
「―――よし、今だ!」
 フランベルが叫ぶと同時に、ホッキョクグマが手に抱えていた芳しいフルーツを投擲する。赤いチェリーに黄色いオレンジ、パインにメロン。色鮮やかな果物が投げつけられれば、それらは白い氷の上に彩りを添え、そして着弾と同時に果汁を撒き散らしながら破裂する。みんなで協力したフルーツアタックは、自分のアイスに拘るクリーメルに、意趣返しのように炸裂した。

成功 🔵​🔵​🔴​

ミリィ・ライジング
いつもはお兄ちゃんと一緒だけど、一人でもできる事も頑張らないとね。

炎のような毛並を持つユニコーンに対して、まずは優しい声で慰める。
そこから礼儀作法・誘惑で乗り込む様に交渉する。
「私……いや、『私たち』に任せて。私たちは強いから、ね?」

乗り込んだら、高速詠唱で氷結耐性・破魔を身に着けて、UC発動。
敵UCの手をつなぎ、力比べに持ち込んでから、
カウンター・投擲を活かして思いっきり投げ飛ばす!
「うおりゃーッ!」

追撃の鉄拳には炎の属性攻撃を乗せて、炎のパンチ。
反撃してこようとするのなら、それをカウンターパンチ!



 戦いに挑む猟兵の心情と言っても様々だ。勇敢に立ち向かう者、己を奮い立たせる者。それぞれの持つ背景とスタンスは異なれども、胸に抱く気持ちの幾許かは共通している。アリスラビリンスを守りたいという思い、弱きを助け悪を挫く心は、どの猟兵も胸の中に秘めている。

(いつもはお兄ちゃんと一緒だけど、一人でもできる事も頑張らないとね)
 氷が融けかけた大地へと降り立った猟兵、ミリィ・ライジング(煌めく白銀・f05963)がそっと心の中で考えるのは、彼女自身と兄の事だ。二人は二卵性双生児の兄妹であり、どちらもが猟兵である。ミリィにとって『自慢の兄』である片割れが不在である現在の状況は不安であるものの、しかし、いつまでも常に一緒に居られる訳では無い。
 自分は一人でも頑張れる、戦うことができる……そう、己自身に言い聞かせると、彼女は足を前に踏み出した。

 ・・・一匹の『愉快な仲間』が、疲弊したように岩陰に身を寄せていた。
 彼の毛並みは、燃え盛るような炎であった。比喩ではなく、実際に燃える炎が頭部から背中にかけて揺らめいている。『愉快な仲間』らしい不思議な特徴であったが、どうやら炎の毛並みは周囲を燃やし尽くすような業火ではなく、触れても火傷もしない柔らかな温かさを持っているようだった。

 その彼―――炎の毛並を持つユニコーンに、ミリィは話しかける。どうしてそんなに疲れているのかと。どうして隠れているのか、と。その光景は、彼女の可憐な容姿も相まって、童話や御伽話の一節のようだ。ミリィが優しい声でユニコーンに語り掛けると、彼は訥々と事情を説明し始めた。
 いつものように愉快な仲間たちが遊んでいると、突然に悪い魔女がやってきたこと。悪い魔女はこの国を凍らせて寒くして、仲間たちを次々とアイスに変えてしまったこと。自分は炎の毛並みのおかげで凍らずに逃げることができたが、仲間たちはみんな凍ってアイスに変えられてしまったこと…。

 ミリィは頷きながらユニコーンの話を聞いていたが、やがてユニコーンの毛並みを慰めるようにそっと撫でた。元来、ユニコーンとは気難しい生き物である。清らかさと勇敢さを兼ね備えた一角の獣は、他者に軽々しく触れられる事を良しとしない。しかし、彼の心情を慮ってくれる美しい乙女に慰めて貰えるのであれば、彼も黙って撫でられている。美しく、誇り高く、そして勇敢な獣のユニコーンは、とりわけ優しい女の子に弱かったのである。ミリィが話の合間に相槌を打つほどに、ユニコーンは「なんて素敵な娘さんだろう!」と内心で感じ入り、ミリィの立ち居振る舞いから滲み出る上品さや優しさに惚れ込んでしまった。

「私……いや、『私たち』に任せて。私たちは強いから、ね?」
 控えめな笑顔でミリィが申し出れば、ユニコーンは一も二も無く頷いた。乙女が戦場に出向くというのであれば、それを支えるのは自分しかあるまい!と乗り気になって、ユニコーンはミリィに背中を向ける。柔らかに燃える毛並の背中には、毛を掻き分けると奥に線ファスナーが隠れていた。

「・・・う、うう…! どうしてアイスの良さをわかってくれないのよぅ…」

 果物爆弾で果汁まみれになった雪だるまが、ぶるぶると体を震わせる。ずぶ濡れになった犬猫のように身を細かく震わせると、果汁が飛沫となって周囲に散った。カートゥーンめいた動きで元通りの雪だるまボディに戻った魔女クリーメルは、アイスの良さをわかってくれないみんなには更なる布教が必要なのだと、より一層の頑張りを心に誓って復活する。
 その雪だるまの前に、新たなる相手が立ちはだかる。ユニコーンの協力を得て、彼をキグルミとして中に入ったミリィだ。白い体に一本の角、その背の毛並みは燃える炎。闘志はメラメラと燃え盛り、毛並みは黄金の輝きを放っている。その熱量も、通常の数割増しで熱々となり、揺れる毛並からはチリチリと火の粉が舞い散りだす。

「そう…。どうしても、あたしのアイス布教を邪魔しようっていうのね…!」
 暗い声でクリーメルが呟くと、その背後にドスンと地響きをたてて巨人が出現する。それはクリーメルが呼び出したアイスの巨人だ。その身体はソーダ味のアイスで構成され、触れた地面をシャーベットに変えてしまう。その大きさは、ただでさえ大きい雪だるまの倍の大きさ、普通の猟兵の身長の4、5倍以上の巨体である。
 対するミリィとユニコーンも、その身をユーベルコードの輝きに包んだ。その神秘的な光が収まれば、ユニコーンの身体も2倍に巨大化する。ユニコーンとアイスゴーレムが睨み合えば、巨体と巨体の間で闘気がバチバチとぶつかり合う。その様子は、まさに特撮番組の怪獣大決戦そのもの。

 先に動いたのは、アイスゴーレムだ。ソーダ色の身体をぶつけるようにユニコーンに突撃していく。
 それをユニコーンは両前脚を広げて迎え撃つと、がっぷりと組むようにしてゴーレムのタックルを受け止めた。
「う、嘘っ! あたしのアイスゴーレムが…!?」
 クリーメルの驚愕の声が響くと同時、ユニコーンは受け止めた体勢からゴーレムの両腕を押さえにかかる。互いに腕を取り合う掴み合いは、しかし、力比べに勝ったユニコーンがアイスゴーレムの腕を極めて動けないようにする。拘束から逃れようとゴーレムが重心を後ろへと向けるのに合わせ、ユニコーンが追撃をかけた。
「・・・うおりゃーッ!」
 左右に揺さぶって体を崩し、腰を入れてブン投げる。アイスゴーレムの巨体はグルンと一回転して投げ飛ばされた。氷でできた体が地面に叩きつけられてガリガリと削られ、その身体には衝撃でヒビが入っていく。
 そこでユニコーンの動きは止まらない。
 ふらふらと立ち上がるアイスゴーレムの懐に潜り込むと、鋭い突きを繰り出す。人体でいうならば鳩尾を狙う渾身のストレートだ。その拳はミリィとユニコーン、双方の力によって熱き炎が宿っている。炎の熱量は氷を溶かし、拳の威力は氷を砕く。ユニコーンのパンチが直撃すれば、アイスゴーレムの身体はくの字になって折れ曲がる。
 ま、まだ負けてない、とばかりにゴーレムの弱々しい反撃が飛んでくるが、気力が充溢しているユニコーンとミリィには当たらない。顔面狙いの大振りなパンチをスウェーバックの要領で回避すると、そのガラ空きになったボディにカウンターを叩きこむ。カウンターパンチも燃える炎に包まれて、命中したゴーレムの凍てついた体を溶かしてしまう。続けてワン・ツーパンチをゴーレムの頭部に、ふらついたゴーレムが隙を見せれば、すかさずにアッパーカットの一撃を入れる。
 ガツン!とゴーレムの頭が揺らされれば、もはやゴーレムのソーダアイスの身体はボロボロだった。あちこちが溶けてデロデロになり、その腕も足もヒビが入って砕けてしまう。

 ―――たとえ兄が不在であろうとも。ミリィは勇敢なる淑女として立派な闘い振りを見せていた。彼女は心優しい淑女であり、そして強いのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

深鳥・そと
むぅー
こんなことされたらアイスがトラウマになっちゃう子がいるかもだよ……
食べて幸せになるのがアイスなのに!

戦うの怖いかもしれないけど
わたしができることぜーんぶして守るから入れてほしいな
楽しくおいしいアイスライフのために!!

その歌とダンスは絶対お披露目させないんだからっ

【氷結耐性】をまとった【オーラ防御】で
キグルミさんのもふもふの身体を守って
オウガが作った周りに散らばっている氷菓子を投げつけて妨害
大きくなったキグルミさんの身体を活かして一気にどかーんと!
【怪力・地形の利用・吹き飛ばし】

体勢を崩したらチャンス
【UC】発動

こーんなハッピーじゃないアイス全部溶かしちゃうんだから!


トリテレイア・ゼロナイン
オウガに利用されているあの雪だるまの方を救う為、ご協力いただけませんでしょうか?

(口の覗き穴から顔出すペンギン着ぐるみ纏いオウガの前に)
氷菓の押し付けもそこまでです
騎士としてお相手しましょう
(救助する為なら格好など些事な模様)

陸上では動きづらいですが…
術者の挙動を覗き穴から●情報収集
地形をアイスに変えるゴーレムの動きを●見切ってなんとか回避

氷菓で地形が覆われ…仕掛け時ですね

●怪力の翼(フリッパー)を推進力と舵取りに利用し、●地形の利用での腹ばい高速●スライディング移動で翻弄
頭部格納銃器での●だまし討ち●スナイパー射撃で術者に防御行動取らせゴーレム操作妨害

一気に接近
UCのフリッパーの一撃叩き込み



「むぅー。こんなことされたらアイスがトラウマになっちゃう子がいるかもだよ…」

 可愛らしい顔をむくれさせて、敵オウガへの不満を隠そうともしないのは深鳥・そと(わたし界の王様・f03279)である。彼女の出身地はキマイラフューチャー。楽しいことが好きで、自分の好きなものが好き。ドッタンバッタン大騒ぎするのが日常な世界から来た彼女が思うのは、敵オウガの遣り方は楽しくないな、ということだ。美味しいアイスがあるならみんなで楽しく食べればいいのである。なんだったらアイスをたくさん並べてパーティーをしてもいい。・・・でも、アイスを食べた相手を凍りつかせてしまうのはダメだろう。それは実に面白くない。それでその子がアイス嫌いになっちゃったらどうするんだろう? 食べて幸せになるのがアイスなのに! それでアイスが嫌われちゃったらアイスがかわいそうではないか。
 むすっと憮然とした表情を浮かべたまま、そとは『愉快な仲間たち』を探しにフラフラと歩き出した。どんな仲間がいるのだろう、と若干の期待を心の片隅に抱えながら。

「……我々に協力せよ、と?」
「はい。オウガに利用されているあの雪だるまの方を救う為、ご協力いただけませんでしょうか?」

 一人の機械騎士が、『愉快な仲間』の前に跪いている。
 白き鎧を身に纏った彼の名はトリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)だ。彼は自身の所持する武装を収納すると、目上の者へ礼節を尽くすように跪いて助力を願っている。彼と向かい合う『愉快な仲間』は、その騎士然とした姿をじっと眺めていた。

「ふむ……」
 やがて、低いバリトンボイスで思案の声をあげたのは、黒白で分けられた身体を持った巨大な『愉快な仲間』―――コウテイペンギンである。彼はこの国の『愉快な仲間たち』の中でも、取りまとめ役的な存在であった……強いとか大きいとかではなく、彼の名前がコウテイであったからという理由であるが。
 コウテイペンギンの背後には、這う這うの体で逃げてきた『愉快の仲間たち』がブルブルと震えている。タテゴトアザラシは丸くなっているし、アホウドリも翼を畳んでしまって動かない。誰もが疲れていたし、これ以上怯えることも戦うことも望んでいない。

「協力するにやぶさかでは無い、が」
 コウテイペンギンが僅かに歯切れ悪くなる理由は、彼我の身長に拠るものだ。トリテレイアの身長は3m近い。他の猟兵なら簡単にキグルミとして乗り込める『愉快な仲間たち』であっても、トリテレイアを中に入れることができる者となれば限られてくる。そんな巨躯を持ち、かつ闘いに適正のある者とあらば、尚更少ない。
 だが―――トリテレイアの口にした『雪だるまを救う為』といった言は、コウテイペンギンに響いていた。共に遊び、共に笑い、共にお茶会を開催すれば『仲間』となるのがアリスラビリンスの愉快な仲間たちの流儀である。あの雪だるまも同じ国に住まう者として他人では無いのだし、救うことが可能であるならば助けてやりたい。

 一方、コウテイペンギンとトリテレイアが話し合っている背後で、そとは『愉快な仲間たち』に声をかけていた。
「戦うの怖いかもしれないけど…」
 そとの前に集まっているのは、この国の仲間たちの中では比較的に体の小さい者たちだ。マルチーズは丸い瞳を不安げに揺らしていたし、フェレットは身を伏せて身動ぎもしない。だが、自分たちよりも小さな少女が必死に訴える声を、まったく無視することも彼らにはできない……自分たちが正に当事者であるのだから。あとは誰が敵と戦うために協力するのか、と互いに顔を見合わせて悩んでしまう。
「……わたしができることぜーんぶして守るから入れてほしいな」
 そらは、彼らを安心させるように微笑む。彼らの力は借りるけれど、彼らに危害は及ばせない。自分が、ぜーんぶ守るのだ。こんな冷たくて楽しくない氷まみれの世界じゃなくて、みんなで楽しくおいしいアイスライフのために協力して欲しい、と。そとは切々と言葉を紡ぐ。
 ・・・やがて、一匹のヤマネコがそとの前におずおずと進み出る。伏せの姿勢でそとに身体を寄せれば、背中に見えるのは線ファスナーの引き手だ。
「―――決まったようだな」
 コウテイペンギンの厳かな声が響いた。『愉快な仲間たち』と猟兵の、共同作戦が開始しようとしていた。

「氷菓の押し付けもそこまでです―――」
 凛とした声が響いた。壊れかけたアイスゴーレムの体をバニラアイスで修復していた雪だるまは、うんざりしたように顔を上げる。
 そこに現れたのは、皇帝の名を冠するに相応しい堂々たる立ち姿のペンギンであった。すっくと二本の足で立ち上がり、胸を張って正面の敵を睨みつけている。その嘴を開けば、中からはトリテレイアの顔とアイカメラの光が現れる。
「―――騎士としてお相手しましょう」
 その姿は『騎士』と名乗るには些か丸々として可愛らしい姿であったが、しかし、トリテレイアの声色には衒いの一つも無い。誰かを救ける為ならば、必要であるのならば、姿格好などは些事である。騎士はペンギンのキグルミ姿のまま、その翼腕に戦意を漲らせて雪だるまに向けた。

 その隣、細身の四肢と鋭い眼光を持っているのはヤマネコだ。ヤマネコの中に入っているそとも、雪だるまに対しての戦意を隠さない。彼女たちは他の『愉快な仲間たち』や猟兵と比べれば小柄な一人と一匹であるものの、戦場に立つ気概に違いは無い。仲間たちを守る為、みんなを困らせる悪事を止めるため……その身に勇気を満たして、立ち上がったのだから!

 ヤマネコが俊敏な動きで駆ける。それを迎え撃つのは、雪だるまの歌とダンスだ。
「この世界は冷凍庫っ! みんなはアイス、可愛いあたしのキュートなアイス。全部凍らせて、美味しく食べちゃうんだからっ!」
 雪だるまが踊り始める。呼び出されるのは、クラッシュドアイスの吹雪だ。魔女クリーメルが歌い、踊るたびに何度でもアイスは虚空から出現し、周囲の地形も冷たく寒くなってしまう。

(その歌とダンスは絶対お披露目させないんだからっ…!)
 だが、ヤマネコの動きの方が素早かった。そとがオーラを周囲に展開すれば、ヤマネコのモフモフした身体は暖かな空気の護りに包まれる。凍てつく吹雪がやってきても、平気へっちゃらとばかりにヤマネコは大地を蹴って接敵する。飛んできたアイスクリームやアイスキャンデーは、華麗なる猫パンチでパシッと撃墜。ついでとばかりに、パンチで弾き返したアイスを雪だるまにぶつけていく。雪だるまの踊りが妨害を受けて止まれば、ヤマネコは野生の本能のままに飛びかかる。
「・・・一気にどかーん、と!」
 ヤマネコの猫パンチと、そとの怪力が合わされば、そのパンチは痛烈な一撃となって雪だるまに炸裂する。直撃を受けた雪だるまは漫画めいた吹き飛び方をして、くるくると空中を舞うように落下し、そしてべしゃりと墜落した。

「こーんなハッピーじゃないアイス全部溶かしちゃうんだから!」
 そとが幼げな声で断言すれば、その背後に生まれたのは炎を帯びた魔力の矢だ。その数は数百を超え、周囲の地形ごと雪だるまを、魔女クリーメルとそのアイスを溶かしてしまおうと発射される。
「くっ…! まだよ、来なさい! アイスゴーレム!」
 苦し紛れにクリーメルが目の前にアイスの巨人を盾として呼び出すが、戦いとしては防戦になる一方。そとの魔力矢に撃たれて身動きが取れなくなってしまう。魔力の炎を防いでも、アイスゴーレムも周囲のアイスも溶けるのが加速していくばかりだ。

 そして、その様子を見ていたコウテイペンギンとトリテレイアが動いた。
 周囲はアイスや氷菓が砕かれて、地面には粉々になった氷が一面に積み重なっている。炎の魔力矢の余波で次第に融けかけているその地面は、二人が攻撃を仕掛けるのに向いた絶好のチャンスだ。コウテイペンギンは歩くのはあまり得意ではなく、走るのも苦手だ。だが……融けかけた氷が土地を覆っているこの場所は、速度を出して移動することができる。

 コウテイペンギンは腹ばいになると、そのままソリのように滑って前方へと突撃した。空を飛べない翼を推進力と舵取りに利用して、アイスゴーレムへと真っ直ぐに滑っていく。
 腹ばいに滑走する姿勢のままコウテイペンギンが大きく口を開ければ、口内からはトリテレイアの頭部格納銃器が唸りを上げて連射を開始する。そとが撃ち込む炎のウィザード・ミサイルで弱り切っていたアイスゴーレムは、その銃撃に耐えきれずに砕け散り、無数のソーダ&クリームアイスの塊となって四散する。
 そして、最後の護りを突破したコウテイペンギンが、もはや戦う術を失った雪だるまの前に躍り出た。コウテイペンギンの翼、フリッパーがユーベルコードの輝きに包まれる。単純にして重たい一撃が、べちんと雪だるまの腹を強烈に打った。

「・・・ぐ、ぐは……っ!」
 苦しみの呻き声をあげて、雪だるまの身体が崩れ落ちる。
 ややあって、その背中から出てきたのは魔女クリーメルだ。彼女は「あたしのアイスが認められないなんて…こんなの間違ってるわ……!」と断末魔のつぶやきを最後に、そのままガクリと倒れてしまった。一方、散々に利用されていた雪だるまはというと、中に入っていた魔女がいなくなったからか束縛から解き放たれ、やがてピョンピョンと飛び跳ね始める。どうやら無事であったらしい。

 ―――こうして、『大きな愉快な仲間のいるところ』で繰り広げられた、少しファンシーでキュートな戦いは幕を下ろした。戦いが終わった後、愉快な仲間たちは寒さで冷え切った体を温めるため、熱々の紅茶とスコーンを猟兵たちに振る舞った。冷たいアイスも良いけれど、アイスを食べすぎるとお腹を壊してしまうもの。それに、みんなで笑って食べるお菓子の方が、きっと美味しいに違いないのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年08月16日


挿絵イラスト