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地の底に潜むは

#UDCアース

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#UDCアース


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 暗闇の中、生理的嫌悪感を齎すような、粘ついた水音が響く。
 それに続くは呻き、耐えるような人の声。
 そこへ新たな音が加わった。
 カツン、カツンと響く音は足音か、はたまた、石畳に杖が突かれる音か。
 篝火に焔が灯り、暗闇が僅かに払われる。
 いや、むしろ、光の届かない部分の闇はより濃くなったと言うべきかもしれない。
 僅かに払われた闇から現れたのは、高価そうなスーツを纏った品の良さそうな初老の男性。
 その足が踏みしめる床には、闇の奥へと続く幾何学模様の魔法陣の一部が垣間見える。
「いと深きところに御座す我らが神よ。更なる贄をここに捧げます」
 初老の男性が零した言葉。それに反応したかのように、足元の魔法陣が淡い紫の光を放つ。
 その光により、凝縮されていた闇は消え、全てが明るみの下に。
 そこに目を向ければ、魔法陣の中央は周囲から一段高くなっており、まるで祭壇のよう。
 その上に寝かせられた女性――目を、耳を、口を塞がれた人――が1人。
 生贄――初老の男性はそう零していたか。
 そして、女性の上には闇を更に凝縮したかのような、粘ついた水音の発生源が居た。
 無数の触手がより集まった、1個の触手塊。
 外界からの情報を遮断された女性を取り込むように絡みつくそれの姿。
 それはまさしく、生贄とそれを貪る者といった様子であった。
 そして、時を置かず、その触手は女性の身体全てをその身の内に取り込む。
 代わって、ボトリ。と、触手塊から1本の触手が分離される。
 それはぬめつく肌で魔法陣の光を妖しく照り返しつつ蠢き、瞬く間にその体を分離されたそれと同じくしたではないか。
「おぉ、神が力の一端。新たなるそれの降臨である!」
 興奮したように、見開いた瞳でそれを見詰める初老の男性。
 そこに最初の印象はない。
 ただただ狂い、捻じ曲がったかのような瞳の輝きだけがそこに。
 魔法陣の光は消え去り、篝火も風に吹き散らされるかのように消える。
 だが、暗闇の中でその狂った輝きだけが残っているかのようであった。
「――神の力が一端を更に齎すためにも、新たなる贄を捧げねば」

「と、まぁ、そんな感じの予知がありましてぇ」
 集まった猟兵達を前に、自身の予知したところの情報を説明するは、ハーバニー・キーテセラ(時渡りの兎・f00548)。
 ――あんまりお近づきになりたくない類のぬめぬめでした。
 見えた予知にぼやいた言葉は思わず、営業モードを忘れたもの。
 コホンと咳ばらいを一つ。
「それでですねぇ。今回の標的、邪神の力を世界に降ろそうとしている男性ですがぁ、今度は派手に動こうとしているみたいですぅ」
 今迄は生贄と称し、1人ずつを攫っては儀式に勤しんでいたらしい。
 それが前述の予知なのだが、それも回数を重ねられ、手にした邪神の力――情報にあるところの触手の数――が増したことで、自信を付けたのだろう。大勢を1度に攫い、それを全て生贄として、更なる力の拡充を図っているのだ。
 しかし、今迄は1人1人だったがために足取りも追いにくかったようだが、1度に大勢とは欲張り過ぎたのだ。
 猟兵に協力してくれている組織がその尻尾を掴み、ついに拠点の特定ができたのだと言う。
「拠点の位置特定までは出来たみたいですけれどぉ、その侵入がなかなか困難なようでしてぇ~」
 その拠点――山中へ隠れるように存在する遺跡――の周囲には結界に類するものが敷かれており、そこへの侵入をより困難なものとしているらしい。腐っても邪神の力という訳か。
 そこで白羽の矢が立ったのが猟兵達という訳だ。
 猟兵達の力であればその結界を越え、拠点中枢へと踏み込み、目標を討ち取ることも叶うだろう。
「もし迅速に内部へ侵入することが叶えばぁ、攫われた人達も無事かもしれません~」
 だが、大事なことは敵を討つことであり、それをどうするかは現場の意思に任せるとのことだ。
 例え、救出が出来なくとも、現場で体を張る猟兵達を非難することの出来る者はいないだろう。
「ただぁ、遺跡を守る結界だけが敵の護りとは思えませんのでぇ、油断はなさらないで下さいねぇ?」
 情報では初老の男性以外にも、人を取り込んで新たな触手を生み出す大本的な触手塊の存在もあった。
 それ自体もだが、生み出された触手もまた遺跡内部には存在することは想像に難くないだろう。
「障害も多いですが、皆さんの無事の帰還を信じていますよ。それでは、ここまでの案内はハーバニー・キーテセラが。これより先、皆さんの良き旅路を祈っていますね」


ゆうそう
 オープニングに目を通して頂き、ありがとございます。
 ゆうそうと申します。

 1章は遺跡内部への侵入を阻む結界の排除。
 2章からは遺跡内部での戦闘。
 と言った感じで進むかと思われます。
 猟兵の皆さんの活躍、プレイングを心よりお待ちしています。
 なお、POWやSPD、WIZの行動項目はあくまでも指標。
 型に縛られず、思うように行動してみるのも良いかもしれません。
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第1章 冒険 『禁忌の遺跡』

POW   :    力任せに完膚なきまでに破壊する。

SPD   :    仲間たちが破壊作業をしている間、周囲で眷属を警戒する。

WIZ   :    破壊する前にちょっと調査をもしておきたい。

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

フィーナ・ステラガーデン
触手ねえ。そういえばこの世界では触手を焼いて食べるらしいわね?
(タコやイカのこと)興味があるわ!

で、結界ね!こういうのは頭を使って通るのよ。ふふん!
そうね!掘って進めばいいわ!(スコップしゃきーん)

ぜー・・ぜー・・無理ね!
うーん。発想を逆転させるのよ!結界があると思うから駄目なのよ!
当然な顔して通ろうとすれば素通りできるわよ!

・・無理ね!
そ、そうね・・。本で見たことあるわ!
合言葉よ!合言葉を言えばいいのよ!
ひらけーゴマ!
のばら!
山!

・・・・【pow】
「全力魔法」UC
なんとか言いなさいよおおお!!!
(アレンジ、アドリブ、連携・・?大歓迎!)



 視界に広がる樹々の中、まるで隠されたかのようにひっそりと佇む遺跡群。
 そこに潜む者達からすれば、正しく、隠してはいたのだろうけれど。
 しかし、その存在を突き止められた今、猟兵達にとっても、組織にとっても、意味のないカモフラージュとなっていた。
「触手ねえ。そういえば、この世界では触手を焼いて食べるらしいわね? 興味があるわ!」
 ふんす。と鼻息も荒く、フィーナ・ステラガーデン(月をも焦がす・f03500)の姿。
 事前に齎された情報から連想したのだろう。
 UDCアースの食文化にまでそれは繋がり、思わず、お腹の音が鳴ってしまいそうに。
 しかし、そこは立派な淑女。例え、ハラペコ属性であったとしても、そこは人前。お姉さん的な威厳でなんとか抑えきったのだ。
「で、結界ね! こういうのは頭を使って通るのよ」
 ブラッドジュースをちゅーちゅーしつつ、ふふん! と、勝ち誇った顔で取り出したるは――
「正面から馬鹿正直に進まなくても、直接地下への道を造ればいいのよ。そう! 掘って進めばいいわ!」
 ――しゃきーん。と陽の光を照り返し、鋼の輝きを見せるスコップ。まるで、聖剣の如くに掲げられたそれは頼もしさに満ちている。
 が。
 悲しいかな、フィーナは魔法使い。決して膂力に優れているという訳ではない。
 肩で息し、鋼の輝きを放っていたスコップが土に塗れ、輝きを失ったその姿を大地に晒すのもそう遠くはなかった。
 だが、フィーナも頑張ったのだ。頑張ったのだ!
 自分の身長半分ぐらいが埋まるぐらいには、穴を掘り進めていたのだ。
「……この方法は無理ね!」
 間違って他の人が落ちてはいけないから、と穴を埋め戻し、フィーナは再度思案する。
 ――穴を埋め直す作業中の背中は、なんだか煤けて見えていたとかなんとか。
 閑話休題。
「発想を逆転させるのよ。そう、結界があると思うから駄目なのよ!」
 心頭滅却すれば火もまた涼し。ならば、結界を結界と認識しなければ?
 結界などない。自身を騙す程に心へ強く念じ、結界などなくて当然と言う顔をしてフィーナは足を進める。
 ――ゴンッ!!
 なんと、そこには額を抑え、蹲るフィーナの姿が!
 周囲から生温かい視線が注がれる。
「……この方法も無理だったわ!」
 トライ&エラー。可能性は確かに1つずつ潰されているのだ。決して無駄などではない。
 こみ上げる恥ずかしさを呑み込み、周囲へと伝達するように声をあげる。それは自身に言い聞かせるようでもあった。
 なお、額も赤いが頬も赤かった。
「他の方法……そうだわ。合言葉よ! 合言葉を言えばいいのよ!」
 ――本で見たことあるわ!
 今度こそ! と意気込む姿のフィーナ。
 魔法使いとして、知識を研鑽する上で読み込んだ本。
 その内容を思い出し、彼女は力の限りにその合言葉を口にする!
「ひらけーゴマ! のばら! 山!」
 バサバサと樹々から鳥の飛び立つ音。
 風がそよぎ、梢の擦れる音。
 悲しいほどに静かであった。
 注がれる生温かな視線はその温度をより温めている。
 限界だった。
「な、なな、なんとか言いなさいよおおお!!!」
 火事場の馬鹿力とでも言おうか。
 詠唱すら破棄し、ノータイムで結界に激突した爆炎が、静かな山を騒がせたのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

虚偽・うつろぎ
POWがメインだけど少しだけ調査

『まずは結界の解除だね
近くに結界の要みたいなものがないかな
少しだけ見てみようかね』

怪しいものがあればそこをメインに徹底的に破壊
なければ当初の位置を中心に周辺にあるもの全てを徹底的に破壊予定
破壊方法はジバクモードによる自爆
技能『捨て身の一撃』を駆使して無駄に盛大な自爆をお見せしよう
高笑いと共に盛大に自爆して周囲を破壊

自爆前に周囲を軽く調査
軽く見る程度
どちらにしろ破壊するのでどこで自爆するかの位置決めのような感じ

自爆後は爆発跡の中心でぴくぴくしながら倒れていると思います
ヤムチャしやがって

『どこまで消し飛ばせるかな』
『あははははは』

連携、アドリブはご自由に



 他の猟兵が引き起こした爆炎。それが結界と衝突する瞬間を冷静に見つめる者が居た。
 それは不定形の黒。地面に広がる黒の水。だが、その上に浮かぶ『うつろぎ』の文字だけは、どこから見ても、そうと読める確かもの。
 虚偽・うつろぎ(名状しやすきもの・f01139)が蠢き、目を形作り、その瞬間を捉える。
 結界と爆炎が接触する直前、まるで起点のように結界の一部が先んじて光を放ち、その直後に結界全体が輝きを強めた瞬間を。
『まずは結界の解除と思ってたけれど、あれが要の一つかな?』
 ふるふるりと黒の姿が揺れ、まるで変声前の少年のような、低音の声を持つ女性のような、そんな声がどこからか響く。
 そして、うつろぎの身からにゅるりと腕が伸び、反応を示していた石群へとそれを更に伸ばした。
 ――軽い電気のような衝撃がその身に奔る。
 それは先んじて結界に触れた他の猟兵の時とは、また違う反応の示し方。
 その感覚を確認し、うつろぎは思案するように、再度、ふるりとその身を震わせる。
 そして、確認するように、次は目星を付けた石群以外の――他の猟兵が触れたように――結界の一部へと触れる。
 その感触は先程のように電気が奔るようなそれではなく、透明なガラスがそこにあるかのような硬い感触。
『やっぱり、あれが怪しいよね』
 思考は半ば確信に。
 もう1度だけ周囲をぐるり、その身から目を形作り、見回す。
 触れた際には僅かな反発もあったが、それ以上の反撃に類するものはない。
 うつろぎが見る範囲においても、何か動きがあったようにも見えない。
 ――どうにしても、やることは一緒なら怪しいところを盛大に壊そうか。
 どこを狙うかは決まった。
 ならば、あとは決行するのみだ。
『ゴッドうつろぎアタック――』
 『うつろぎ』の頭に『ゴッド』の文字が新たに出現。
 そして、まるで気合を入れるかのように、地面に広がる黒から伸びるては忙しなく動き回る。それは体の中に溢れるエネルギーが外に放出されるのを抑え込んでいるかのようにも。
『――突撃する』
 宣誓と共に、ドンッと重たい音が響く。
 黒の弾丸――『ゴッドうつろぎ』の文字が石群目掛けに跳んだのだ!
『どこまで消し飛ばせるかな? あはははは』
 響き渡り、残響のように残る笑い声は心底からのものとも、哄笑のものとも取れる。
 ――激突。
 石群にうつろぎが触れた時とは比べ物にならない程のスパークが当たりを照らす。
 だが、それも一瞬のこと。そのスパーク、輝きすらも塗りつぶす黒が石群ごと周囲を呑み込む!
 まるで空間に穿たれたブラックホールのようにそれは音もなく広がり、そして、消える。
 その後にはぽっかりと広がったクレーター。そこに石群の姿はない。
 結界こそなくなりはしなかったが、その全容、輝きは先に比べて格段にくすんでいることが見て取れた。
 やはり、それが要の1つでもあったのだ。それを破壊したことによる結界の弱体化が起きたことは、誰にともなく理解されるものであった。
 ――うつろぎの姿は?
 突撃したはずのうつろぎの姿が見えない。いや、よく見れば、出来上がったクレーターの底。何か黒いものが。
 それは倒れ伏し、動かない黒。
 そこから、ポロリと『ゴッド』の文字が零れ落ち、風に溶け消えていく。
 まさか、命を落としたのか? いや、よくよく見れば、ぴくりぴくりと残された『うつろぎ』の文字が痙攣している。
 大丈夫だ。命までは落としていない。安堵の空気が流れる。
 うつろぎの繰り出した、比肩しうるものなき捨て身の一撃。
 それは結界を確実に削ぎ取り、道を拓くものとなったのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アレキサンドラ・ミルキーウェイ
ふーむ、邪神の潜む遺跡ですか
その手の人種に高く売れる物が転がってるかもしれないのです
これは行くしかないのですよ

力仕事は苦手なので、私は周辺に売れそうな物がないか捜索……もとい、敵襲撃の警戒と情報収集をしておきましょう
そうですね、高所からなら辺りが良く見えて警戒もしやすいのです
地形の利用は基本なのですよ
敵が襲ってくるようなら【星の鎖】で流星鎖を複製、
ロープワークの技術を活かして敵を縛り上げましょう
縛った後は流星鎖を通じて少しずつ生命力吸収しながら、魔改印で腕に斬撃の力を宿して切り刻んでやるのです

ふーむ……やはり金になりそうな物は内部にしかないのでしょうかね
早めの突破が待たれるのです


アルテミス・カリスト
「遺跡に潜む邪教徒ですか。
そのような存在は、この正義の騎士アルテミスが許しません!」

用意周到に張られた結界。
敵の備えがそれだけだとは思えません。
ここは、遺跡への突入や調査をしてくれている仲間をサポートするため、眷属が現れないか注意して周囲を警戒しましょう。

眷属が現れたら、正義の騎士の出番です!
大剣を構えて斬りかかります。

「現れましたね、邪神の眷属!
あなた方の相手はこの私です!」

しかし、現れた眷属の姿を見て、私は言葉を失います。
それは騎士である私の天敵、触手だったのです。

「あっ、いやっ、服に入って来ないでくださいっ!」

騎士のお約束として触手に捕まって色々されてしまうのでした。

アドリブ大歓迎



 結界の弱体化は齎された。
 だが、要となる部分が砕かれても何もない訳ではない。
 触れただけでは反応しなかったそれが、結界の弱体化という結果に、ついに動き出したのだ。
 それは、樹々の隙間から、石柱などのモニュメントの残骸から、ぬるりと音もなく現れた。
 ――触手だ。
 恐らく、この地に潜むオブリビオンの築いた防衛システムなのだろう。
 情報として齎されたそれは明らかに形状が異なり、固定砲台のような印象を猟兵達へと与える。
「邪神の潜む遺跡。そう聞いていたのですが、これは探すにしても一苦労しそうな気配なのです」
「敵の備えが結界だけだとは思えませんでしたが、やはりありましたね!」
 周囲を物色――もとい、警戒していたが故に、その出現へいち早く気付き、零したのはアレキサンドラ・ミルキーウェイ(強欲の貧者・f13015)。
 これから生じるであろう余計な労力を思い、その赤の瞳に辟易としたかのような光を浮かべている。
 そして、それに応じたは同じく警戒していたアルテミス・カリスト(正義の騎士・f02293)。
 猟兵としての使命感へ純粋に燃える姿は、まさしく騎士道の体現と言える。
「――そして、邪悪の徒はこの正義の騎士アルテミスが許しません!」
 掲げ持つは家紋の印されし刃。
 呼応するように、手の甲へ浮かんだ誓いの刻印がその存在を示す。
 その様子。ともすれば、アレキサンドとは正反対と言えるようなアルテミスの姿を彼女は見る。
 その眼差しに宿る思いは、
 ――前衛に立たなくても、問題はなさそうなのです。
 後のことを思っての温存か、はたまた、生来の労働嫌いか。
「なら、私は後ろから援護させてもらうのです」
 身に着けた鎖が金属の擦れ合う音を響かせる。
「ええ、お任せください」
 力強い返答。そして、頷き合い、分担された役割をを果たすべく、アレキサンドラとアルテミスはそれぞれに動き出すのだ。

「――現れましたね、邪神の眷属!」
 威風堂々。
 その真面目さを示すかのように磨かれた刃、鎧には一点の曇りもない。
 正義の女騎士としての輝きがそこにはあった。
 強きを挫き、弱きを助ける。
 騎士の責務を果たさんと、アルテミスは地を蹴り、走る。
 表には出していなかったが、その相手が自身の天敵と称する触手型の敵であったとしても。
「――あなた方の相手は、この私です!」
 声は震えていなかっただろうか。
 少しだけ脳裏をよぎった心配であったが、その一喝は正しく響き、耳目を集めるに足るもの。
 それを証明するように、触手の先端が蠢き、その方向をアルテミスへと揃える。
 そして、撃ち出される粘液弾。
 複数から射出されたそれを切り払い、跳び躱し、当たるものかと奮迅する姿に、今は畏れというものはない。
「その程度の攻撃で、正義の騎士が破れると思わないで下さい!」
 踏み込み、流れるような一撃を結界へ。
 触手の姿は結界の奥のため、まだ届かない。
 だが、その一撃は結界を確実に削っている手応えがあった。
 それを示すかのように、結界の光も弱弱しく明滅を繰り返す。
「このまま一気に――きゃっ!?」
 だが、それが油断であった。
 埒が明かないと判断したのであろう触手が複数本、地を這うように隠れ、伸び、その身を遂にアルテミスの身体へと触れることを叶わせる。
「あっ、いやっ、触らないでくださいっ!」
 そこからの流れは早かった。
 触れた触手は瞬時にアルテミスへと絡みつき、弄び、拘束していく。
 鎧越し、服越しのぬるりとした粘液が気持ち悪い感触を伝える。
 いや、むしろ、その部分が熱く、そして、力が抜けていくような。
 そんな身動き取れないアルテミスへ、結界の中に未だ残る触手達もその毒牙を向けんと迫る。

「お勤めご苦労様なのです」
 樹々の合間。生い茂る枝葉を影として、一条の鎖が流星の如く空気を裂き、伸びる。
 それはアルテミスの――結果として――身を挺した誘き寄せにより、結界外へとその身を晒していた触手を複数匹纏めて貫き穿つ。
 その手腕は並々ならぬもの。拘束されていたアルテミスの身体には傷一つ作らず、それを成したのだ。
 ついでとばかりに動きを一時的に封じられていたアルテミスを鎖で回収し、その身を後方へと下げさせる。
 防衛装置として配備されていた触手達にどこまで思考が、知能があったかは分からない。
 だが、その動きは厄介なものであると認識されたのであろう。
 樹々の向こうに潜むアレキサンドラへと、粘膜弾が狙い定めて撃ち出される。
 だが、――
「地形の利用は基本なのですよ」
 ――それも全て、生い茂る枝葉にぶつかり、それを汚すのみ。アレキサンドラの下へと到達しうるものはなかった。
 そして、先の再現とでも思ったのだろう。木の根元までその身を伸ばす触手が複数。
 しかし、それとて下生えに隠れ潜み、罠の如く動くからこそ意味があるのだ。
 高所に陣取るアレキサンドラには、下生えが風もないのに動く姿が、そして、時折、その隙間から覗くぬらりとした光が簡単に見て取れた。
「好事家辺りには売れるかもしれないのですが、リスクの方が大きそうなのです」
 迫る触手の群れを見て、ちらり脳裏をよぎるお金の算段。
 だが、それによるリスクの方が大きいとみて、アレキサンドラは断腸の思いで断念を果たす。
「――まあ、だからと言って、逃しはしないのですよ」
 面倒ではあるが、そこは猟兵としての責務。
 先程から操る鎖が1つ、流星鎖。
 それを瞬き一つの間に複製し、その念力でもって迫る触手へと差し向けるのだ。
 絡みつき、突き穿ち、断ち切り。
 それは触手の専売特許ではないと示すかのように、迫る其れを悉くに討ち取っていく。
 そして、ついでとばかりに結界へと手を出すことも忘れない。
 それが故、触手達もアレキサンドラを無視できないのだ。
 だが、粘膜弾は効果が薄く、その身は近付く前に討ち取られる。しかし、放置も出来ない。
 アレキサンドラの手によって、触手達の躯が増えていく。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

萬場・了
【WIZ】
おうおう、すげえ音もするから来てみりゃ…ド派手にやってんなあっ!こりゃ調査するにしても巻きでやんねえと置いていかれちまうぜ!
ふひひ…今回もいい画が期待できそうだな!

俺は遺跡周囲と結界を撮影しながら調査しとくぜ。
周囲に敵がいた場合は【強制記録媒体】で足止めてから処理だな。
なに、猟兵は兎も角、捕まってるヤツを逃がすつもりなら経路も確認しとかねえとだろ。

あとはそうだな…遺跡が予知の邪神と関係するものなら何か情報があるかもしれねえ。演者の情報は事前にチェックしとかねえとな!
絵文字的なものなら推測できるか…?
…ま!難しいもんは分かんねえけど、撮影した映像見せれば誰か分かるヤツ1人はいるだろ!



 弾ける爆炎。黒き穴が穿たれ、結界の光は影を帯びる。
 遺跡より生じた触手は猟兵達の手により塵となる。
「おうおう、すげえ音もするから来てみりゃ……ド派手にやってんな!」
 黒縁眼鏡の奥、空を映したかのような青の瞳は目の前の光景を見逃さぬとばかりに、好奇の輝きを見せる。
 萬場・了(トラッカーズハイ・f00664)が激しい応酬の繰り広げられる光景を手にしたビデオカメラに納めながら、実況するかのように状況を噛砕く。
 目の前で繰り広げられる光景は、まさに空想の産物をそのまま現実へと映し出したかのよう。
 だが、そこにあるのは確かな現実であり、ともすれば了自身にも危険の及ぶモノでもある。
「ふひひ……今回もいい画が期待できそうだな!」
 しかし、それでもそこに怖じるというものはない。
 情報を集め、真相をそのカメラで射抜くことこそが己の役目。そう言わんばかりに、了は戦場を駆けるのだ。
 もしかしたら、そこには多少の嗜好も混じっているのかもしれないが。
「古代の遺跡に眠る邪神。そこへ挑む者達。題材としても悪くねえ」
 フレーム越しの世界から了は結界を、遺跡を、そして、猟兵や触手の姿を見る。
 その眼差しに捕らえられた触手が、時折、ビクリと跳ねては動きを止め、猟兵達の手により討たれていく。
 だが、それはあくまでも副次的なことだ。
 その真意は、――
「誰が黒幕かは知らねえが、舞台に演者にと情報のチェックはしとかねえとな!」
 ――遺跡の謎の解明。それである。
 そして、ビデオカメラを回していくうち、不意に覚えた小さな違和感。
 ――あれは絵か? 文字か?
 のたうつような文字とも絵ともつかないデザイン。だが、明らかに自然に生じたものではないと分かるそれ。
 それが記録される視界の中、1つ、2つ、3つ……と、複数遺跡の中に散見されている。
 人の立ち位置でただ正面から見ただけでは、それが印されている場所、高さなど、ランダムに描かれているようにしか見えない。
 だが、了の第六感が囁くのだ。それには確かに意味があるはずだ。と。
 ――こういう時、映画だったらどうだ?
 脳裏を駆け巡る、収集してきた映画の光景。そして、自分自身が体験し、蓄積してきた経験。
 思考は加速して、加速して、加速して――。
 撮影してきた戦場の光景が脳裏で立体的な地図となり、その上に印の位置が刻まれていく。
 正面からでは駄目。なら、上――俯瞰図からでは?
 勘が確信に変わる。
「っ……それが答えなのか?」
 印のあった位置。それを点で結んだ時に出来るのは逆五芒星。
 そして、その一か所として想像されるのは、他の猟兵が自爆によって消し飛ばした、要とみられる石群があった場所。
 印こそが結界の基点であったのだ!
 であれば、それを壊したならばどうなるか。それは先陣が証明してくれている。
 爆破は映画を彩る華でもある。
 ならば、一端の幕を下ろすにはピッタリというものだろう。
「ふひひっ。遺跡が最後に爆破されるのも、ある種のお約束ってなあ」
 そろり、そろり、激しい戦いに隠れて準備を整え――盛大な火花が遺跡を揺らす。
 その煙が晴れた時、結界の姿はそこにはない。
 先を阻む物なき状態で猟兵の勢いを阻める者はここにはなかった。
 そして、その姿を了は愛用のビデオカメラに納め続けるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『パープルテンタクルズ』

POW   :    押し寄せる狂気の触手
【触手群】が命中した対象に対し、高威力高命中の【太い触手による刺突】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    束縛する恍惚の触手
【身体部位に絡みつく触手】【脱力をもたらす触手】【恍惚を与える触手】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
WIZ   :    増殖する触手の嬰児
レベル×5体の、小型の戦闘用【触手塊】を召喚し戦わせる。程々の強さを持つが、一撃で消滅する。
👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 結界を越え、防衛の触手を沈黙させた猟兵達。
 地上の遺跡を探す彼らを阻む者はもう何もない。
 故に、地下への隠し階段が見つかるのも、そう時間のかかるものでもなかった。

 猟兵達が降り、足を着けた地下通路。生温いような空気が充満するそこ。
 まるで何かの口のように待ち構える闇が横たわっている。
 その闇を越えた先に、予知されていた場所があるはずだ。
 そう思考した猟兵達が足を踏み出した時、
 ――ぬちゃり。
 と、何かの蠢く音が響く。
 さっと灯りで照らし出したそこには、夥しい数の触手の群れ。
 それは地上でのそれとは明らかに宿す雰囲気が違う。
 どうやら、先に進むにしてもこの群れを突破しなければならないことは、間違いないようだ。
フィーナ・ステラガーデン
「・・・正直食欲がわかないわねえ」
とりあえずUC使用
【範囲攻撃】でなぎ払うような軌道を描く

UCの勢いが落ち着いた頃、おそらく残りの触手が絡みつくと思われる
執拗な触手の攻撃に身体の自由が奪われ
最初は力強くもがくも徐々に脱力
時折身体をビクッと何かに反応するように跳ね上がり
大きな瞳もだんだんと力を無くし、どこか物欲しげな目を触手に向け
身を預けるように触手に身体を預けるようになります。
マグロが。

「・・これはひどいわね・・」(ドン引き)


引き続きアレンジ、アドリブ等自由にお任せ
フィーナへのエロい描写は断固NGでお願いします。



 灯りに照らされ、紫にぬめる姿はグロテスク。
 その事実を改めて確認した今、フィーナ・ステラガーデン(月をも焦がす・f03500)の顔には、げんなりした色が。
「……正直、食欲がわかないわねえ」
 人によっては、また違う感想もあったりするのかもしれないが、フィーナにとっての感想はそれだ。
 流石に、あれと触れ合いたいとは思わない、思えない。
 だがしかし、あれを突破しなければ先には進めないのだ。
 猟兵としての矜持と乙女としての矜持が鬩ぎ合う。
「……仕方がないか」
 溜息一つ。その瞳には悲壮なまでの決意の色。
 そして、――

 宙を走るように触手の群れへと。
 纏う焔が火の粉をチリチリと零し、迷宮の闇を赤で塗り替える。
 その勢いを阻まんと鞭のように迫る数多の触手。
 だが、それのなにするものぞ。すんでのところで躱し、逆に得手とする炎でもって焼き尽くす。

「ふん! 数ばかりで大したことはないわね!」
 弾む声。朗々とした声には得意げなものも混じっている。実際、フィーナの顔を見れば、そこには満面の笑み。

 天井近く、宙を泳ぐかのように宙へと舞い上がり、そのまま急降下の勢いを伴った一撃!
 ――着弾。
 まさしく、そう形容するに相応しい、砲撃が地に落ちたかのような衝撃。
 纏った焔から零れ落ちる炎が衝撃波のように周囲を舐めつくし、その範囲内に存在した触手群を悉くに消し炭へと変えていく。

「まだまだこんなものじゃないわ! 倒したければ、倍は持ってきなさいよ!」
 炎の熱が動かした空気。それにはためくは夜色の外套。とんがり帽子は飛ばないようにしっかりと押さえつけ。
 ――このまま行けそうね!
 そういった想いが思わず滲み出る。

 相手取る触手側に動きがあった。
 突如としてぶるぶると体を震わせ始めた触手群。
 ぼとり、ぼとり。と、何かが落ちる音。
 目を向けたなら、そこには触手が触手を生み、更に増殖していく姿。
 ――本当に倍になるとは!
 思わず瞠目せざるを得ない。
 だが、それで止まる訳にはいかない。止まれば、それ即ち死か、それ以上の末路か。
 動き続ける身の逡巡は一瞬。
 再びに、炎に呑み込まんと突撃を繰り返す。
 だが、いつまでも動き続けられるという訳ではない。
 どうしても疲労というものは溜まるものだ。
 そして、それはついに訪れる。
 僅かに速度を緩めたその一瞬、はしり触手の一端がついにその身を捕らえたのだ!
 ――決して逃がさぬ。
 散々に暴れ回られたが故、触手は纏う炎に焼かれながらもその身をその場に縫い留める。
 そして、触手の波が炎を遂に覆った!
 ぐちゃりぐちゃりと粘液の音がする。炎を消火しているのか、それとも獲物を消化しているのか。
 思い出したように炎が隙間から零れるが、それも次第に弱弱しく。
 音が止んだ時、猟兵達へ見せつけるようにその姿が晒された。
 粘液に覆われて光を照り返すその姿。眼差しはまるで死んだ魚のよう。

「なんてこと……これは、ひどいわね……」
 目の前の惨状に、フィーナのドン引きした声が響いた。
 ぬらぬらと濡れるマグロは力なく、時折、ビクンと打ち上げられた魚――実際、魚だが――のように身を跳ねさせる。
 そう、それはフィーナの召喚したマグロであり、触手達を蹂躙し、触手達に蹂躙された者だ。
 ――自分が突っ込まなくてよかった。
 それを見つめ、心底からそれを感じると共に、マグロとタコ、イカのカルパッチョは暫く控えよう、そう思うフィーナであった。
 だがしかし、マグロの活躍により触手はその数を確かに減らしていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アルテミス・カリスト
「性懲りもなく、また現れましたね、触手たち!
ですが、この正義の騎士アルテミスには、もはや触手など敵ではないのです!」

地上にいた触手は(味方の援護があったとはいえ)難なく勝てました!
これは『触手が天敵』というプロフィールを書き換えてもいいんじゃないでしょうかっ!(慢心)

「さあ、触手たち!
この私が相手をしますから、どんどんかかってきてください!」

【聖なる大剣】で剣に聖なる力を宿し、触手に斬りかかります。

ですが、ここで【聖なる大剣】の代償が発動。

「ちょ、ちょっと、触手の数が多すぎませんかっ?!
いやーっ!」

触手に全身に絡み付かれ、脱力して恍惚とした感情に支配され、触手に身を委ねてしまうのでした。



「性懲りもなく、また現れましたね、触手たち!」
 触手を指さし、弾劾するかのようなアルテミス・カリスト(正義の騎士・f02293)姿はビシィッ! という効果音すら聞こえてきそうな程。
 凛とした青の瞳には、地上で受けた攻撃の影響は見受けられない。
 纏う衣装に装備も折り目正しく、粘液の沁み一つとしてないのだ。
 衣服正し、凛とした姿を保つのも騎士であり、女性としての嗜みというものなのだろう。
「この正義の騎士アルテミスには、最早あなた達など敵ではないのです!」
 ――喝!
 地上での戦い。それは確かに、不意を打たれねば優勢として事を運べていたもの。
 その姿だけを見れば、触手が天敵である。などとは言えないものであっただろう。
 それ故、今のアルテミスには、触手如きに遅れは取らぬと自信に満ち溢れていた。
 手にした騎士の刃にも翳りはなく、そこには燦然とした太陽の如き輝きが。
 それは過去からの脅威を払う刃。
 それは闇を照らし出す聖なる刃。
 その輝きに、過去からの異物である触手達が怯んだようにその身を震わせる。
 ――やはり、これならいけますね!
 自信は確信へ。
「えいやぁぁぁ!」
 裂帛の気合。そして、一閃!
 輝きは闇を打ち払い、その身に捉えた触手を纏めて数本薙ぎ、断ち飛ばす。
 遅れて、断ち切られた触手から体液が床へと零れ落ちる。
 薙ぎ、斬り、払い。
 その快進撃は止まるところを知らない。
 まるで解き放たれた鏃の先端の如く、触手の海を切り拓いていく。
「さあ、触手たち! この私が相手をしますから、どんどんかかってきてください!」
 最早、その勢いは止められるものではない!
 慢心であった。
 確かに、その勢いは触手の群れを切り拓くだけの勢いを持っていた。
 だが、開いた橋頭保を確保しきる前に、次へ、次へと進む勢いは孤立へと繋がる。
 気付けば、後方の猟兵達との距離は離れ、周囲には触手、触手、触手。
「……あら」
 ――これは、不味いのでは?
 たらりと流れる冷や汗一つ。
 それが額から顎を伝い、ポタリと床へ。
 その音が合図。
「ちょ、ちょっと、触手の数が多すぎませんかっ?!」
 壁のように迫るそれ。
 だが、諦める訳にはいかない。
 何故なら、その身は騎士。弱き者達の盾なのだから。
 刃が触手を断ち、身を躱し、しかし、躱しきれぬ一撃が何度か身を打つ。
 その度に身体へと走るのは痛みか、はたまた、芯に残る甘い響きか。
「くっ……あぁっ……!」
 堪えきれず、思わず漏れた吐息が熱い。
 呼吸は段々と浅く、早く。身体の内に溜まりゆく熱を少しでも排出せんと苦しさが増す。
 心臓は最早、早鐘の如く。
 抵抗の末、遂に、カラン。と、硬質な音を響かせて刃が手から地に落ちる。手を離れたそれは急速に光を失い、触手達の脅威足りえなく。
 そして、触手の群れがアルテミスを呑み込んだ。
「~~~~ッ!!」
 悲鳴は漏らさない、漏らせない。
 身体を支配する触手からの刺激に、せめて心まではと抵抗を続けるのであった。
 それは他の猟兵が追い付き、回収されるまで、続いた饗宴。
 だが、アルテミスの行動も無駄ではない。
 その身をもって触手の数を減らし、引きつけたのは確かだったのだから。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

月守・咲凛
「……なんで私はここに居るのでしょう……」
マグロと騎士の人が酷いことになっているのを眺めて、残された触手の海を眺めて、頭にでっかい汗マークを付けながら、とりあえず来たからには戦おうと決意。
「要はがんばって減らしていけば良いのです!」

とりあえず近寄りたくはないので空中から、火線砲を連結させて貫通ビームの範囲攻撃や、アジサイユニットをビームチェーンソーモードで突撃させて攻撃して触手の数を減らしていきますが
「あの、数が多過ぎないですか……?」
流石に体力と気力が持たず注意力が散漫になってしまいます。
武装ユニットを外されると非常にまずい事になりますが、とりあえず最後まで抵抗はしておきます。



「……なんで私はここに居るのでしょう」
 目の前で繰り広げられる惨劇―― 一部、惨劇? と首を傾げたくなる部分(主にマグロ)もあるが――それを眺めながら、月守・咲凛(空戦型カラーひよこ・f06652)の頭には思わず大きな汗マーク。
 触手の海にちらりちらりと時折見えるそれは、幼き少女には少々どころではない目の毒ともなり得るが、そこはそれ。普通の少女であるあらば、と言った所だろう。
 齢6歳と言えど、咲凛は猟兵である。数多の世界を越え、依頼をこなして来た実績がその身にはある。
 故に。
 ――とりあえず、来たからには戦おう。
 頭を振り振り、意識を変えて、むん。と小さく両の手で握り拳。合わせて、腕部に装着された兵装が、ガチャリと音を立てた。
「要はがんばって減らしていけば良いのです!」
 ここには慕う知り合いは今のところ居ないけれど、咲凛は決意を胸に戦うのだ。
 その健気さは、戦場に咲いた一輪の花の如く。

 とは言えだ、あまり触手の海へとお近づきになりたくないのは想いというもの。
 背部のウィングスラスターユニットを駆使し、咲凛は天井付近へと舞い上がり、触手の海から距離をとる。
「……うわぁ」
 幼さ故の身長の低さ。それもあったがため、地に立った状態では触手の海の全貌までは見通せていなかった。
 しかし、宙へ身を躍らせることでその視界はより遠くまで通る様に。それが良かったのか、悪かったのか。思わず漏れたその反応から推し量るしかないだろう。
「あの、数が多すぎないですか……?」
 触手塊が群れとなしているため、見える触手の数は数多。そのため、正確な数が判別しにくいのだ。
 だが、思わずため息が漏れるだけの数は未だあるということだけは変わりない。
「でも、がんばらないと!」
 もう1度、自分を元気づけるように活を入れる咲凛。
 気を取り直すように、手にした火砲を重ね合わせ、1つの長大な射撃ユニットへと変じさせる。
「まずは、これで……!」
 銃砲に燐光が集い、地下の闇をより照らす。
 当然、それは暗い迷宮においてよくよく目立ち、更には空へとその身を浮かべるが故に、互いの射線は良く通る。
 触手の海から、それを放たてはせぬ。と、可憐な花を手折らん。と、その一部が飛来する!
 敢え無くその触手に捕まる咲凛――ではない。
 その背中から一片の紫陽花が花弁。それが零れるように、咲凛の前方へとふわり。
 代わって、その身を触手に捕らえられるが、その花弁はただの花弁ではない。
 絡めとられ、触手の塊のようになったそれから、刃が生えた。その次の瞬間には斬り裂かれ、地に落ちいく触手の破片。
 そう、それはブレードガーディアンユニット。盾であり、ビームチェンソーでもある、攻防一体のユニット。
 そして、その間に溜め込まれた燐光は輝光となり――
「武装ユニット全開放、撃ちます!」
 ――咲凛の掛け声に応じ、その身から莫大なエネルギーが解き放たれる!
 それは射線上にある触手を巻き込み、光に融かし、海を断ち割る一撃となったのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

虚偽・うつろぎ
いやー、あぶないあぶない、死ぬかと思ったよ
次は触手が相手かな
何が相手でもやることは一緒だからどーんと吹き飛ばしておくよ
見せてあげよう、自爆殺法うつろぎ流唯一の技を。
ただの自爆なんだけどね

という訳で何食わぬ顔でしれっと復活しています
そして再びジバクモードで自爆します

範囲内になるべく敵を巻き込めれるよう
全速で群れの中に飛び込むもしくは近づいて即座に自爆という流れになると思います

手数ではなくシンプルかつ最大なたった1度の攻撃に全力を注ぐよ

自爆後はまたボロボロになりますが
章が変わると何食わぬ顔で復活しているでしょう
(謎のスタッフに回収されているのかと)

アドリブ連携等ご自由にどぞ



 床を這い進む不定形の黒。その上に浮かぶは定型の文字。
 虚偽・うつろぎ(名状しやすきもの・f01139)は、ある種のインパクト十分な姿を現す。
『いやー、あぶないあぶない、死ぬかと思ったよ』
 その身から零れる言葉の物騒さとは裏腹、調子は軽いものだ。
 自爆を敢行し、自身の作り上げたクレーターの底で痙攣する姿を見せていたが、今はその時のことなど、まるでなかったかのよう。
『あれも喰らえば、更なる存在の昇華に……なりそうもないね』
 邪神の力。その片鱗たる触手達の姿を見、なんともなしに零したその言葉。
 目指すは『究極の書体』。
 それがどんなものか、理解しているのはうつろぎだけ。いや、もしかしたら、うつろぎにも理解出来ていない可能性もある。
 だが、今、目の前にしている触手に関しては、その身を喰らい、取り込むには至らないと判断は付いたのだろう。
 何故なら、触手に負けず劣らず、床に這うインクの如き不定形の黒からは無数の腕が時折、その姿を見せているのだから。
 ならば、やるべきことは遺跡での時と何も変わらない。
 ――乾坤一擲の一撃を。
『見せてあげよう、自爆殺法うつろぎ流唯一の技を』
 恐らく、その流派を名乗れるのはうつろぎだけであろう。そして、それを継げる者は今後現れるのだろうか?
 閑話休題。
 宣言のとおり、自爆殺法うつろぎ流開祖たるうつろぎのゴッドうつろぎアタックが再び炸裂しようというのである!
 地の文まで『うつろぎ』の文字へと浸食されそうになる程のエネルギーの迸り。
 そして、うつろぎはその身を黒の弾丸として、断ち割られた触手の海へと!
 当然、触手達とて向かい来るそれを傍観する程に抜けてはいない。
 それを迎撃せん。と、その身を貫くべく、狂気の触手が毒牙を走らせる。
 だが。
『あはははははは』
 響くは哄笑。触手の狂気すら生温いと、黒は笑うのだ。
 『う』の隙間、『つ』の隙間、『ろ』の隙間、『ぎ』の隙間。
 ブラックタールたるその本質。液状の身体を巧みに広げ、狭め、迫る触手をやり過ごしていくではないか!
 そして、辿り着きたるは断ち割れた波の中央。
 いつかの焼き直しのように、音もなく黒が広がり、触手の海を呑み込んだ。
 床が抉れ、壁が抉れ、天井が抉れ、黒の消えた後には、黒の広がった範囲そのままにぽっかり広がった空間が。
 お約束のように、その底で痙攣する『うつろぎ』の文字。
 いや、よく見れば、1本だけ伸びた手がサムズアップを!
 だがそれも、溶鉱炉に溶け消えるかのように、地面へ広がる黒の中へとゆっくり沈んでいく。
『I'll be back』
 なお、『うつろぎ』の文字を除く、広がる不定形の黒部分がそのようになっていたとか、いなかったとか。
 HP1なのに……ムチャしやがって。
 だが、うつろぎの一撃は多くの触手を呑み込み、遺跡の奥へと続く道を拓く光明となったのだ。
 目指すべき場所まで、あともう少し。

 なお、黒が広がり収縮し始める直前、触手の海に攫われていた猟兵が1名とマグロが1匹、ペッと黒の外へと吐き出される姿があったそうな。

成功 🔵​🔵​🔴​

萬場・了
ふひひ!マジか!おもしれえ!自爆とかやっるうぅう!
こんだけド派手にやりゃあ、触手だってビビってんだろ!

何をするかって?決まってるじゃねえか、触手には触手をぶつけんだよっっ!!
【膨張する暗黒】でワカメ……いや、触手をありったけ出して、遺跡の奥まで続く壁にしてやるぜ!
俺のカメラで敵の生命力奪うにしても、正面…映せる範囲に限界があるからな。触手の方がその辺仲間同士仲良くやっててくれるだろうよ!
敵の生命力を吸い、膨張すればさら多く敵を絡めとる……ハズだぜ!テストはしてねえけど、ま!やってみなけりゃ始まらねえ!!

映画は疾走感も大事だろ!さっさとこんな雑魚戦突破しちまおうぜ!



 回るカメラは止まらない。
「ふひひ! マジか! おもしれえ! 自爆とかやっるぅう!」
 愛用のカメラを片手に、テンションも高めな萬場・了(トラッカーズハイ・f00664)の声が地下に響く。
 その視界の先では触手も、地下構造も、等しく円形に抉られた光景。
 それを作り出した瞬間、そして、それによって作り出された光景はきっと見るモノにも衝撃を与えることだろう。
 そんな映像をカメラへと納めることが出来たのだ。気分が昂揚するのも致し方ないというもの。
 しかし、いざ映像化した時に、自身の声が邪魔とならないよう、それへ配慮しているのは流石といったところか。
 そして、観客の心を動かす光景、映像であると確信するが故に、了はそれを利用するのだ。
「恐怖は伝播する……!」
 言葉を介さなくとも、魂を揺さぶる光景。
 ならば、それは人ならざる触手にも、そこに魂が存在するのであればきっと。
 了が抱いたその確信と共に、空中へと投影された今は古めかしいブラウン管のテレビ。
 最初は砂嵐。
 しかし、次第にその映像はクリアとなっていき、切り替わる様に古井戸の景色が流れ始める。
 ――ヒタリ、ヒタリ、ヒタリ。
 どこからか響き渡る足音が、一層に恐怖心を煽り、その傷口を抉り広げるように育てる。
 そして、それは古井戸から、テレビの画面から、一斉に溢れ出す!
「触手には触手をぶつけんだよっっ!」
 その結果で生み出されるのは、更なる怪物のような気も。
 しかし、誰もそれにツッコむことはない。
 ちょっと寂しさを覚える了であった。
 ――閑話休題。
 了の宣言の通り、そこから生み出されたのは呪いの触手。
 遺跡に蔓延る触手に負けず劣らず、そのぬめり具合を見せつける。
 そして、断ち割られ、抉り広げられた空間を越え、遺跡の触手へと殺到する。
 黒と紫の共演。
 なんとも狂気的で、猟奇的で、見ていると色々なものが削られそうな光景が広がった。
 だが、ビデオカメラは決して止めない。止まらない。
 この光景だって、どこかで何かに使える日が来るかもしれないのだ。
「……ああ、案外、上手くいくもんだな」
 触手同士で仲良しこよしのその光景。
 だがしかし、よくよく見れば、黒が次第に紫を呑み込み、大きく大きく!
 了が召喚した触手とは、生命力を吸収する触手。
 それは紫からそれを吸い上げ、己の力として取り込んでいるのだ!
 誰かの脳裏に、乾燥した何某かが浮かんだりもしたが、それはきっと正気度が削られた結果見た夢幻だろう。
 何はともあれ、了の召喚した触手が拓かれた道を補強し、確たるものとしたのだ。
 ならば、あとは奥の間へと、目的の場所へと足を進めるのみ!
 猟兵達はなるべく増える触手に触れない様、その足を進めるのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​




第3章 ボス戦 『膨らむ頭の人間』

POW   :    異形なる影の降臨
自身が戦闘で瀕死になると【おぞましい輪郭の影】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。
SPD   :    慈悲深き邪神の御使い
いま戦っている対象に有効な【邪神の落とし子】(形状は毎回変わる)が召喚される。使い方を理解できれば強い。
WIZ   :    侵食する狂気の炎
対象の攻撃を軽減する【邪なる炎をまとった異形】に変身しつつ、【教典から放つ炎】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 ぐじゅりぐじゅりと横で鳴る道を進み、猟兵達が辿り着いたは暗闇広がる大広間。
 ――カツン。
 硬質な音が響き、大広間全体を照らすように魔法陣が浮かび上がる。
 その中央には遺跡で、地下の道で見かけた触手を更に一回り大きくしたものが宙へと浮かぶ。
 その下には幾人かの女性が縛られ、転がされている。
 意識はないようだが、まだ、生きているようだ。
 そして、それらの傍らには初老の男性が、猟兵達に背を向ける形で立っている。
「ようこそ……と歓迎したいところだが、君達を招いた記憶はなかったのだがね」
 言外に邪魔であると語る男性は、ぐるりと振り返り、猟兵達を見る。
 いや、その視線は見ているようで、何も見ていない。
「――ああ、それとも、自ら生贄となりに来てくれたのだろうか。それなら歓迎しよう」
 男性の頭部へ背後の触手塊から伸びた一片が突き刺さり、ぐじゅりと音を立てる。
 それをアンカーとしたかのように触手塊は男性の頭部に覆いかぶさり、融け合う。
 そして、それは膨らみ、凹み、歪に、歪に。
「神は私に力を与え給うた。君達も、その一端となり給え」
 変容が終わった後、そこには異形が1人立っていた。
 猟兵達の誰もが理解する。
 アレはもう、どうにもならないものだ、と。人ならざる者だ、と。
 ならば、どうするかは決まっている。
 猟兵達の手にはそれを打倒するための力が宿っているのだから。
フィーナ・ステラガーデン
黙りなさいよこの変態!!
女性ばかり狙うのも十分変態だと思っていたけど
マグロにまで手を出すなんて、あんたとんでもない変態ね!
(自分が召還したことは全力で忘れた)
だいたい何よその頭!どう見てもでかすぎるわよ!?
Tシャツ着れるようになってから口開きなさいよこの変態!!

そうねえ。転がってる女の人は他の人に任せるか
こいつをどうにかしてからね!知らない人助けはさほど興味もないわ!
まあでも巻き込んじゃったら目覚めは悪いわね!
異形に変化すればUCを高速詠唱で叩き込むわ!
落とし子は火を使うようならUC、使わないなら属性攻撃、範囲攻撃で焼き払うわ!
一応火炎耐性は発動しとくわよ!
(アレンジ、アドリブ、連携大歓迎)



 瞳に宿した感情が燃える。
 そして、フィーナ・ステラガーデン(月をも焦がす・f03500)にとって、それは止める意味も持たないもの。
「黙りなさいよこの変態!!」
 だから、彼女は心の赴くままに吠えるのだ。
 己の心に対して嘘はつかず、どこまでも真っ直ぐに。
「そのような言葉で括られるのは心外――」
「私は黙りなさいと言ったわ!」
 男の反論など、フィーナは許さない。
 燃える瞳のままに発せられた一喝は、男の言葉を呑み込み、消していく。
「――女性ばかり狙うのも十分変態だと思っていたけど、マグロにまで手を出すなんて、あんたとんでもない変態ね!」
 一部、濡れ衣である。
 むしろ、マグロを突っ込ませたのは……いや、言わぬが花なのであろう。
 思わず胡乱気な視線も他の猟兵達から向いているような気もするが、それにはどこ吹く風なフィーナ。
 そして、男は男で侵入者があったという報告、事情は知っている男であるが、その細部までは知らない。
 そのために、なぜ、ここでマグロの話が。と思わず、思考が逸れる。
「だいたい何よ、その頭! どう見てもでかすぎるわよ!? Tシャツ着れるようになってから口開きなさいよこの変態!!」
 最早、言葉のマシンガン。
 普通の人であれば、心抉られ、KOされてしまいそうになる程の勢いと迫力がそこにはあった。
 だが。
「先程から何の話をしているのかは分からないが、侮辱されていることは分かったとも」
 男の姿は邪神の力を分けてもらったが故のモノ。
 それを誇りとするモノにとって、フィーナの言葉は怒りを煽り立てるには十二分のものだったのだ。
 そして、その激発は焔となって現世へと顕現するのだ。

 ――魔法陣が輝きを強めると共に、びくり。と、縛られた女性のうちの1人が跳ねた。
 ――意識のない筈のその表情には強い苦悶が眉間の皺となって刻まれている。
 
 焔は形を持ち、燃える炎の書へと。
「では、焼け落ちる痛みの中で、その侮辱を後悔するといい」
 男の声と同時、燃える炎の書から赤黒い炎がフィーナを呑み込まんと迫る!
 それは空気を焦がし、穢し、狂気を蔓延させる異界の炎。
 男の視界の中で、フィーナの姿が赤黒い色に染められた。

 ――だが、男は気付かない。炎に包まれながら、フィーナからは断末魔の声すらも響かなかったことを。
 声を出す間もなく燃え尽きたのか? いや、違う。
 赤黒い炎の中、朱色が生まれた。
 その炎は誰のものだ? そう、それは――
「――それは、私の専売特許よ!」
 赤黒い炎が吹き散り、闇を、魔法陣の光を祓う鮮烈な金色の炎が迸る!
 異界の炎が空気を焦がすのならば、フィーナのそれは天上の月すらも焦がすもの。
 いつの間にか、フィーナの足元には5本の杭が五芒星を模る様に打ち込まれ、異界の魔法陣の中で己の領土を確立している。それが異界の炎を取り込み、フィーナの力へとしていたのだ。
「そして、これはお返しってやつよ! 遠慮せずに受け取っておきなさい!」
 ビシリ! 男へと力強く突き付けられたフィーナの指先。
 荒れ狂う炎に指向性が与えられ、金色が男を、燃える炎の書を、呑み込んだ!

成功 🔵​🔵​🔴​

萬場・了
見てっとあの生贄の女たち、まだ使われてんのか?
じゃあ俺は裏方に回るぜ。他の猟兵の攻撃の裏【影の追跡者の召喚】だ。炎の影に紛れ、敵に気づかれないように魔方陣の解除と、女たちの救出を試みるぜ。ふひひ、これでヤツを弱体化できればいいんだけどよ?

俺自身はなるべく攻撃は避けつつ、必要なら敵をさらに煽って気を引いておくぜ。
女の力も無けりゃてめえは何にもできねえのか?膨れ上がったそのでけえ頭に脳ミソ残ってねえのかよ!巨大化したらやられるのは怪人のお決まりだぜ?そのままド派手に燃え尽きちまえよ!
生贄をむざむざ殺すことはねえと思うけどよ。敵の攻撃が女たちに向くようなら仕方ねえ、そのまま影の追跡者で庇ってみるか。


虚偽・うつろぎ
はっはっはっー、死ぬかと思ったよそのに
うーむ、次はビッグヘッドが相手かー
あまり普通に自爆ばかりでも芸がないかな
よし、ここはいっちょ分裂体に自爆させよう

ブンレツモードによる分裂体自爆突貫で攻撃
僕自身はブンレツモードの効果範囲ギリギリの距離を維持し
高速反復横飛びや無駄にくねくねしながら挑発でもしておくよ
なんてことをやりつつも敵の動きはしっかり観察しておくよ
敵が近づけばその分離れ、敵が離れればその分近づく
敵が攻撃しようとすれば分裂体の自爆で邪魔をするという
ネチッこい嫌がらせのごとく敵の行動の邪魔に専念しよう

へいへーい、かかってこいやー
って感じですな



「神が力の一端に……なんということを!」
 金色の炎が弾け、その中から姿を現す男の影。
 響く声には生命力の響きが未だ残る。だが、その姿には幾分かの翳りの跡。
 片腕は――燃える炎の書は炭化し、だらりと下がるのみ。
 纏う服は所々が焦げ、燻る様に煙が立ち上がる。
 咄嗟に、燃える炎の書を盾にし、その身を守ったのだろう。
 
 ――金色の弾けた残り火がちろちろと動き、それに合わせて影が踊るように揺れる。

「だが、まだ終わりではない」
 足元の魔法陣が輝きを強め、再び囚われの女性達の顔が苦悶に歪む。
 顔色は尚のことに青白く、生気が抜け落ちていくことが見て取れた。
 そして、それに代わり、ずるり。と、焦げた腕が男の肩から抜け落ち、そこには真新しい腕が。
「やっぱり、あの生贄の女たち、まだ使われてんのか」
 それを見て、確信を深めたのは萬場・了(トラッカーズハイ・f00664)。
 物陰から回すカメラは克明に戦闘の様子を捉え、それを介して了は敵の特性や情報への理解を深めていく。
 ――なら、それをどうにかすることが先決だな。
 そのための手段が1つ、2つと思い浮かび、既にその1つは動き出している。
 だが、それを思い通りに動かすためにも、相手の意識を逸らすことが肝要だ。
 女性達を助け出すにしても、敵との距離が近い。何かあれば、即座に対応されてしまうことだろう。
 そして、それを解決するかのように新たな人物――人物? が姿を見せる。

『うーむ、次はビッグヘッドが相手かー』
 それは虚偽・うつろぎ(名状しやすきもの・f01139)。
 不定形の黒の上に定型文の黒を戴くもの。
「その姿……我が神に近しいモノか?」
『そんな不出来なモノと一緒にしないでくれるかな』
 男の言葉を一刀両断。
 言葉に不快こそ滲み出ていないが、黒の水より伸びた無数の手が人差し指を立て、左右に指振り否定する。
「だろうな。我が神が私に敵対する筈がないのだから」
 男の言葉は分かりやすいほどに狂信のそれ。
 だが、狂気とは見えやすいものばかりではない。否、見えにくいモノこそ、その根は深いのだ。
『はっはっはー。その考えも、面白いねー』
 思わずと言った風に零れた笑い。
 それを嘲笑と捉えたか、男の眦が釣り上がる。
 だが、男が行動するより早く、うつろぎの姿がぶれた。
 1つが2つ。2つが4つ。4つが8つ。
『自爆ばかりでも芸がないしね』
 お道化るように響いた言葉は、どのうつろぎから零れたものか。
 どれが本体で、どれが本体でないのか。最早区別など付きようもなかった。
 そして、――
『ウツロギ……それは分裂し自爆する運命……』
 結局のところ、自爆じゃないか!
 幸か不幸か、そのようなツッコミをする人間はこの場には居なかった。
 いや、むしろ、それを利用とする人間は居たか。
 ――うつろぎの言葉が響くと共に、1体のうつろぎが忘我の男へと飛来し、爆発!
 その威力は、うつろぎ自身が特攻をかけるそれとは威力が幾分か落ちるもの。
 だが、男の身体を削るには十分すぎるもの。
「くっ……なっ、なっ!?」
 まさか分裂体が爆発するなど、思いもしなかったのだろう。
 異形の顔に浮かぶは驚愕。
『甘い甘い。これぐらいで正気度を削られるようじゃあ、駄目じゃないか』
 男から一番遠く、無駄に動きのいいうつろぎが居た。
 ぐねんぐねんと動きつつ、どのような原理か黒の水が高速で反復横跳び。
『どうしたどうしたー』『へいへーい、びびってるー』『かかってこいやー』
 響く無数の声。だが、それらの言葉に力みなどない。
 己の命すらも容易く使い潰してきた。そして、使い潰していくというのに、そこには何の気負いもないのだ。
 だからこその恐怖が、狂気がそこにある。
 そして、その言葉に煽られ、背筋に迫る何かに呑み込まれまいと男が行動しようとする度、その傍で爆発、爆発、爆発!
 地面が抉れ、男の身体の一部が抉れ、うつろぎの文字は減る。
 その行動はどこまでもネチッこく、男の心と体を削ぎ落すのであった。

「幾ら自爆しようとも、それにも限界はあるだろう。だが、私なら、我が神の力なら!」
 先程の焼き直し。
 魔法陣が抉られた地面の上にすら浮かび上がり、そして、再び男の身体が――
「なんだと!?」
 ――癒えることはない。
 慌て、女達が倒れていた場所を振り返れば、そこには誰も居ない。
 一体、誰が? その疑問にはすぐ答えが返ってきた。
「ふひひ、女の力も無けりゃ、てめえは何にもできねえのか?」
 嗤う声の主は了。
 堂々と姿を男の前に晒し、蔑んだ眼差しも向けている。
「貴様がしたのか?」
「おいおい、膨れ上がったそのでけえ頭には脳ミソも残ってねえのかよ! それぐらい、質問しないでも分かんだろう」
 了の姿のその向こう。広がる魔法陣の外に女達の姿が。
 ――いつの間に。どうやって。
 幾ら爆散するうつろぎが居たとしても、他の猟兵が近付けば気付きもしよう。だが、それがなかった。
 男の顔に警戒が奔り、致し方ない。と、己の力でもって焼け落ちた筈の燃える炎の書を再生する。
 再び、空気を焦がすは狂気の、異界の炎。
 だが、その炎は先程に比べて、幾分か勢いは弱い。
「やっぱり、女の力が無けりゃあ形無しってやつだ」
 その弱体化の様子は了の予想通り。
 そして、その余裕の様子、煽り続ける様子は少しも崩れてはいない。
 異形であるうつろぎのようである訳でもなく、焔のような異能を操る訳でもないのに。
 警戒は未だ男の中にある。
 だが、力の代替源ともなる生贄を奪われ、猟兵達と対峙し続けるも得策ではない。
 それ故、男は了を、猟兵達を、その異界の炎を撒き散らす!
 当然と言えば当然だが、そこに生贄のことを慮るものは一つもなかった。
「舞台は一流でも、演者が二流、三流じゃあな」
 異界の炎が撒き散らされる直前、影が走った。
 了と瓜二つ。だが、輪郭だけのそれは放たれる直前の炎へと飛び込み、爆炎を男の手元で弾けさせたのだ!
 影の追跡者――影に隠れ、女性達を助け出していたそれ――は主と五感を共有するが故、その熱さは了にも還る。
 だが、その痛みなど、周囲から精神異常者とみられ続けた過去に比べれば如何ほどもない!
 異界の炎が弾け、男を呑み込み、その煙が晴れた先――満身創痍となった男の姿がそこにはあった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アス・ブリューゲルト
生け贄か……俺の知ってる顔がないのは少しホッとするが……
だからといって、やって良い理由にはならないはず。

「醜いものだな。人を贄にする行為は褒められたものではないぞ」
人質も無事、安全な場所へと運ばれたのであれば、一気に間合いを詰めて、フォースソードで切りつけると同時に零距離射撃。
「人の痛みを感じるのか。そんな人のなれの果てになっても、な」
同情はしない。
あるのは、滅するべき相手を確実に倒すのみ。
「貴様の悪行もこれまでだ」
ヴァリアブル・ウェポンで止めを刺す。

もし、その後があれば、人質になった者達が家に帰れるよう、護衛をしてやろう。不安な気持ちが和らぐように、と。


アレクシア・アークライト
 あの姿じゃ、街で生活もできないわよね。
 あとは部屋の隅でガタガタ震えて、私達に見つからないようにと神様にお祈りする未来しか見えないんだけど、何が楽しいのかしら?

「自分がさも特別な力を得たと思ってるみたいだから、教えてあげる」
「私達の記録にあるだけで、貴方と同じ頭でっかちがこの2か月の間に40体以上現れているわ」
「そして、みんな退治されている」

「私にとっても、貴方は4体目よ」

・炎を撒き散らすのを防ぐため、接近戦を仕掛ける。
・格闘技と念動力を組み合わせて攻撃。炎は力場で防御。
・できるならば、教典は念動力で弾き飛ばす。
・異形なる影が降臨したら、力場を収束し、UCで本体ごとぶっ飛ばす。



 異界の、自身の炎に焼かれるという事実。
 神の力が一端を降ろした筈の自身にすら、それが牙をむいたという事実に、男は忘我している。
「馬鹿な……神の一部ともなった私が、私にすら……」
「醜いものだ」
 断罪するように、その忘我を断ち切ったのはアス・ブリューゲルト(サイボーグのフォースナイト・f13168)。
 生贄の中に顔見知り――生き別れとなった姉と妹が居ないことに、心中でのみ胸をなでおろす。
 敵前が故にそれは表に出されず、その青い双眸は冷たい光を持って敵を見据えている。
「自分がさも特別な力を得たと思ってるみたいね」
 そして、アスのそれへ相槌を打つように、男へと追撃を向けるかのように、アレクシア・アークライト(UDCエージェント・f11308)は言葉を継ぐ。
 力を得たと信じ、それに踊らされる男を愚かと見ながら、かつて相対した者達を思い返しながら。
「――教えてあげる。私達の記録にあるだけで、貴方と同じ頭でっかちが、この2か月の間に40体以上現れているわ」
 男へ一言一言、言い含めるように。
 その言葉の意味するところ。忘我の男にもそれは届き、その先を言うなとばかりに、その身が僅かに震える。
「――そして、みんな退治されている」
 震える男の抵抗も虚しく、齎された言葉は静かな宣告。
 男と同じくした者が数多いて、その誰も彼もが、望みを果たせずに散っていったという事実。
「……わ、私は、上手くやる。今からでも、まだ……!」
 だが、男はそれを認められない。認めない。
 それこそが、アスの言う醜さでもあるのだと気付かずに。アレクシアが語った者達の末路へと至るものだと気付かずに。
「――神よ! 今一度、私に力を授けたまえ!」
 それでもなお、己の狂気にしがみつく男。
 1度目は贄とした女達の寿命を糧に。2度目は自身の寿命を糧に。そして、3度目もまた、自身の寿命を糧に。
 燃える炎の書が揺らめき、男の手中へと生まれる。
 三度、それが空間を燃やす――
「信じるものを揺るがされたか。だが、同情はしない」
「悪あがきね。だろうと思ってたわ」
 ――よりも速く、アスが、アレクシアが動いていた。
 偶然か、2人の狙いは同じ。共に、接近戦。
 一息の間に距離を詰め、奔ったは光の刃と念動の力。
「ぐっ!? あ、ああああぁぁぁぁぁ!?」
 そして、腕が、燃える炎の書が、宙を舞う。
 アスの刃が腕を断ち、アレクシアの念動力が炎の書を弾き飛ばしたのだ!
「人の痛みを感じるのか。そんな人のなれの果てとなっても、な」
 腕を抑え、よろめく男の姿。
 生贄たる女性達を失う前であれば、そうでもなかったかもしれない。
 だが、今は身体の欠落を補う力は存在しない。
 それ故に、失ったことへの衝撃に、男は呻くのだ。
 その姿は異形であっても、人の範疇を越えられていない。アスの瞳には、男の存在はそのように映っていた。
「わたっ、私の腕を! よくも!?」
 しかし、男は衝撃に喘ぎつつも、かろうじて意識は繋いだのだろう。
 弾かれ、宙を舞う炎の書に意識を向け、それの姿を暴走覚悟で解く。
 書という形を持ち、纏まっていた異界の炎を、自身が巻き込まれること覚悟の上で爆発させたのだ。
 いや、もしかすれば、未だにその炎は自分を焼くことはないと、そう信じていたのかもしれない。
「聞き分けのない……そういうのは、嫌いよ」
 押し寄せる炎の波。
 だが、アレクシアの瞳には大きな感情の揺らぎはない。
 どこまでも淡々と、仕事の一環として処理する事務的な、硬質な光だけがそこにはあった。
 ――まるで、そこにだけドームがあるように、炎がアレクシアを中心として割れ、裂けていく。
 アレクシアが宿す強力な念動の力。
 それが力場となり、まさしく結界のように異界の炎を猟兵達へと寄せつけはしない!
 そして、それが消え去った時、アスとアレクシアの前にあったのは、煤けた空間と炭化した人型の何か。
「何が楽しくて、こんなことしてたのかしらね」
「さてな。だが、どうあれ人を生贄して良い理由はない」
 あっけない戦いの終わり。
 黒幕たる男は自身の炎に焼かれて死んだのだ。
 これでめでたしめでたし。女性達も助け出し、物語はハッピーエンドとして、ここで終わる。

 ――本当に?

 いや、違う。その証拠に、アスも、アレクシアも、戦いへの意識を途切れさせてはいない。
 炭化した黒が内側から膨れ上がり、その身を弾けさせる!
 そこから飛び出したのはおぞましき姿の触手の影。
 恐らく、最初に男と融合したモノであろう、それ。
 それにとっては、男すらもが生贄でしかなかったのだ。
 そして、それは身構えていたアスとアレクシアを触手の中に捕らえ――
「人を贄とする行為は褒められたものではないぞ」
 ――内側から全てを光の刃に切り払われる!
 それはアスのサイキックエナジーによって生み出された刃。
 鮮烈なる光を残像と残し、それが通る度に、切り払われた触手が宙を舞う!
 そして、告げられるは終幕への声。
「貴様の悪行も、これまでだ」
 アスのサイボーグたる所以、ガチャリと音を立てて内臓兵器が展開され、触手を纏めて熱線の色にて塗りつぶす!
 それを追うように、赤色が風に舞い、奔った。
 滑るように、滑らかに。
 己の力を移動にまで用いたそれはアレクシア。
 移動の力としたもの以外の念動力は、全てその手の中へ。
「――ああ、最後に教えてあげるわ」
 熱線が塗りつぶした先、浮かぶは触手の核。
 まるで鼓動するかのように明滅するそれ。
 吹き千切られた触手が再生するかのように、その核から生じつつあるのが見て取れた。
「――私にとっても、貴方は4体目よ」
 重い、重い音が空間を震わせた。
 そして、それに遅れて衝撃の風が、空気を洗うかのように吹き抜ける。
 風が止んだ時、そこには最初から何もなかったかのように、ただ何もない空間が広がっていた。
 あるのは、残心を解いた猟兵達の姿。それと、名残のように風へと混じり散っていく黒。それだけであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年02月21日


挿絵イラスト