迷宮災厄戦⑮〜ヘクセンハウスは猟兵の手で
●お菓子の家が多すぎる国
粉砂糖の降り掛かったジンジャーブレッドの屋根は抜け落ち、レープクーヘンの壁は崩れ落ちた。
チョコレートの生け垣も、マシュマロの家具も、グミのカンテラも、何もかもが壊されてしまっていた。
此処は『お菓子の家が多すぎる国』。
かつてアリスと愉快な仲間たちが、オウガから身を守るために多数のお菓子の家を建設した森の世界だったが、今はあらゆるお菓子の家が破壊されてしまっている。
オウガ・オリジンの出現とともに現れたオウガたちは、お菓子の家を破壊し尽くし、粉々に打ち砕いた。
アリスと愉快な仲間たちは散り散りに逃げ、残ったのはお菓子の残骸だけ。
もはやこの国に安全に森を通過する術はない。
そして、お菓子の家の残骸の影には……無数に光る瞳の群れ。悪意ある邪悪な子供たちの瞳が光っていた―――。
●迷宮災厄戦
グリモアベースへと集まってきた猟兵達に頭を下げて出迎えるのは、ナイアルテ・ブーゾヴァ(フラスコチャイルドのゴッドハンド・f25860)だった。
そんな彼女はいつもよりも困ったような表情をしていた。何か迷宮災厄戦で難局に差し掛かってしまったのだろうかと思うほどに深刻な表情をしていた。
「……みなさんお集まり頂きありがとうございます。あの……つかぬことをお聞きしますが、皆さんは美味しいお菓子のレシピをご存知でしょうか?」
これまた唐突だと猟兵達は思ったことだろう。
ナイアルテの深刻な表情とは裏腹な、ふわっとした質問。幾人かの猟兵がお菓子作りが趣味であると教えてくれたことにより、漸く彼女の表情は和らいだ。
「申し訳ありません。此度の戦場『お菓子の家が多すぎる国』に関係することでしたので……今回はオウガの存在が確認されていない戦場です。元々、アリスと愉快な仲間たちが共同で建設したオウガから身を守るための避難場所……お菓子の家が今、崩れかけているのです」
アリスとはアサイラムより召喚された者である。
彼、彼女たちは不思議の国でオウガに追いかけられながら自分の扉を探しださないといけないのだが、永遠に走り続けられるわけではない。
その時にお菓子の家に逃げ込めばオウガより身を護ることができるのだ。
そのお菓子の家が集合した森の世界があるのだが、オウガ・オリジンの出現と共に散々に破壊されてしまったのだ。
「はい、ですので今回皆さんにお願いしたいことはお菓子を作って、お菓子の家を再建して頂きたいのです。ただ……」
ただ、と言いよどむナイアルテ。
オウガの脅威がないのであれば、お菓子を作ってお菓子の家の崩れた部分を補填していけばいいだけの話だ。
これまでの戦場と比べたら、平和な気がする。
「そうなのですが、どうやらこの戦場には皆さんの邪魔をしようとするオウガに洗脳された邪悪な子供たちがいるようなのです」
具体的には子供だけではなく愉快な仲間もまた洗脳されているようなのだ。
そんな彼等は猟兵達の油断をついて、ケーキ生地に毒を混ぜたり、オーブンに猟兵を蹴り込んだりと、様々な妨害を行ってくるようなのだ。
それに対して、対策を打ちつつ、美味しいお菓子を作ってお菓子の家を再建しないといけないというのは、骨が折れそうであった。
「ですが、オウガから逃げ惑っているアリスや愉快な仲間たちのため、お菓子の家の再建は必要なことなのです。私には、どうやら家事の才能が全くないので……その」
後で美味しいお菓子のレシピ、教えて下さいね、と猟兵たちにこしょこしょと耳打ちするナイアルテ。
秘密にしておいて下さい、と微笑んでからナイアルテは猟兵たちを転移させていく。
見送る彼女の瞳は、後で教えてもらえるであろうお菓子のレシピを思って、目をキラキラさせていたのであった―――。
海鶴
マスターの海鶴です。
※これは1章構成の『迷宮災厄戦』の戦争シナリオとなります。
お菓子の家が多すぎる国にて、邪悪な子供たちからの妨害に対策を打ちつつ、お菓子を作り上げ、お菓子の家を再建しましょう。
※このシナリオには特別なプレイングボーナスがあります。これに基づく行動をすると有利になります。
プレイングボーナス……美味しいお菓子のレシピを用意する。
また邪魔しに来る邪悪な子供たちはオウガに洗脳されただけの一般人の子供たちであったり、愉快な仲間たちであったりします。
なるべく穏便に妨害を阻止しましょう。
それでは、迷宮災厄戦を戦い抜く皆さんのキャラクターの物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
第1章 冒険
『お菓子の家つくり』
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POW : 生地をこねたり伸ばしたり、オーブンの火加減を調節するなど下拵えや準備を担当する
SPD : 正確に材料を計ったり、綺麗に角がたつくらいにホイップするなど、技術面で活躍する
WIZ : 可愛い飾りつけや、トッピングで、お菓子を美味しそうにデコレーションする
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
須藤・莉亜
「たまには善良な紳士(?)としてこういうのも悪くないか。」
まあ、僕の作れるお菓子はタルト・タタンだけなんだけどねぇ。
という事で、莉亜の何分かかるかわかんないクッキングの始まりです。
助手は腐蝕竜さんです。彼には周囲の守りを頼みます。威嚇だけして追っ払ってね?
さてと、始めますか。
先ずはリンゴを適当な大きさに切って、それを砂糖で炒めます。
型に炒めたリンゴを並べ、その上からパイ生地をどーんしてオーブンに放り込んで焼きます。
焼いてる間は煙草でも吸って待ってましょう。
焼き上がったら型から出して、お皿の上にひっくり返せば完成ー。
作ったのは良いけど、どこに使えば良いんだろ…?リンゴの面を見せる為に屋根とか?
お菓子の家。
童話に出てくるものが有名であろう。この『お菓子の家が多すぎる国』にといては、一般的な建築様式であった。
ジンジャーブレッドの壁や、屋根、粉砂糖で塗り固められた瓦。様々な創意工夫で持ってお菓子の家が作られていた。
だが、オウガ・オリジンの出現に寄ってアリスラビリンスは動乱の真っ最中である。その余波はアリスと愉快な仲間たちが安全地帯として築き上げた、この国にも及んでいた。
あちらこちらに存在していたお菓子の家は、その全てが崩落し、崩されている。オウガたちによる蹂躙の痕だろう。アリスと愉快な仲間たちはどこかへ逃げてしまっていない。
このまま放置しておけば、安全にこの国を通り抜けることができないだけではなく、今後アサイラムより召喚されるアリスたちにとってもマイナスになってしまう。
「たまには善良な紳士としてこういうのも悪くないか」
善良な紳士(?)という須藤・莉亜(メランコリッパー・f00277)自身も疑問符をつけてしまうくらいに、いつもとは様相の違う戦場において彼は早速お菓子作りに取り掛かっていた。
いつもは紫煙くゆらせるばかりであるから、こういった類のことといえば、できるものは一つしかない。
「まあ、僕の作れるお菓子はタルト・タタンだけなんだけどねぇ」
手にしたりんごを軽く宙に放り投げる。キッチンの類は愉快な仲間たちが残した名残があるおかげで、とりわけ道具や食材に困ることはない。
中に放り投げたりんごがまな板の上に落ちる寸前で全て、彼の華麗なる包丁さばきで持って綺麗に均等に切り分けられる。
「さて、僕の何分掛かるかわかんないクッキングの始まりはじまり」
今日の助手は眷属召喚【腐蝕竜】(ケンゾクショウカン・ドラゴンゾンビ)によって召喚された腐蝕竜さんです。
なんでと問われたら、それはクッキング最中の莉亜及び、調理に使う食材、機材などに悪戯をするオウガに洗脳された邪悪な子供たちから護るためである。
早速咆哮を上げて周囲に潜んでいた邪悪な子供たちを追い払う腐蝕竜。仕事が速いって素敵である。
「さてと、始めますか」
華麗に切りそろえられたりんごを、ざっとフライパンの上に砂糖とバターで炒める。所謂キャラメリゼというやつだ。
薄茶色の程よい焦げ目のような、キャラメル色になっていく、りんごたち。もう匂いだけでも甘い。とろける甘さを連想させる匂いを周囲に振りまきながら、タルト型にキャラメリゼしたりんごを敷き詰めていく。
その上からパイ生地をかぶせてオーブンに放り込む。
オーブンのドアを開ける瞬間、邪悪な子供たちが背後から莉亜を狙うのだが、それは腐蝕竜さんの威嚇によって事なきを得る。
きっと蹴り飛ばしてオーブンで莉亜を焼き殺そうとか、そんなことを目論んでいたのだろう。洗脳されているとは言え、恐ろしい所業を考えつくものである。
そんな邪悪な子供たちを追い払う腐蝕竜のしごとぶりを眺めながら、当の本人はというと、オーブンで焼いている間はやることがなく手持ち無沙汰故に、たばこを取り出して、紫煙をくゆらせる。
いつもの光景でであるが、こういった些細な時間でも間が持つのであるから煙草とは偉大なものである。
ぷかぷかと幾度目かの紫煙が上がった時、焼き上がる音がオーブンから聞こえる。 ミトンを手にして焼き上がったタルトを取り出しお皿の上にひっくり返せば、美味しそうなタルト・タタンの完成である。
上手にできました!
「作ったは良いけど……」
ふむ、と莉亜は思案する。まあるい形のタルト・タタンはお菓子の家の何処に使うのが良いだろうかと。
りんごの敷き詰められた綺麗な面を見せるのだとすれば何がいいだろうか。
「あ、じゃあ、屋根とかどうかな。丸い屋根のスレートっていうのも見たことないけど……お菓子の家だからいいでしょ」
そう言って次々と焼き上がったタルト・タタンを屋根にして積み上げていく。
莉亜の作り上げたタルト・タタンの屋根は、この国の何処から見ても美味しそうなキャラメリゼされた屋根として、アリスと愉快な仲間たちが戻ってきた時、盛大に注目を集めることになっただろう―――!
大成功
🔵🔵🔵
トリテレイア・ゼロナイン
故郷を想えばこの先の猟書家(プリンセス・エメラルド)は気になる存在ですが…
アリス達の為、困難に手を差し伸べる騎士としての本分も忘れないでおきたいものです
作るのはハードビスケットの家
レシピを間違えなければそれなりの物が出来る化学反応を利用した焼き菓子は、食事も不要で料理経験無き身にとって有難いものです
レシピを●世界知識から解凍
センサーでの●情報収集で計量
●怪力を自己●ハッキングで制御し生地を大量に練りオーブンへ
家の装飾や飾りつけは現地の方にお任せしましょう
妖精ロボを同時並行で●操縦し彼らもお手伝い
●情報収集で邪悪な子供たちの動向は●見切っています
最低出力のレーザーで手に火傷させて制裁です
迷宮災厄戦、それはオウガ・オリジンと猟書家との間に発生した力の奪い合いを発端とした戦いであると言ってもいいだろ。
そんな中で戦場となった『お菓子の家が多すぎる国』は、スペースシップワールドを狙う猟書家プリンセス・エメラルドの存在する戦場につながる戦場であった。
すでにアリスと愉快な仲間たちが築き上げた避難所でもあるお菓子の家は、オウガたちによって破壊されつくされてしまっている。
この戦場を安全に通り抜けるためには、お菓子の家を再建する必要があるのだ。
「故郷を想えば、この先の猟書家は気になる存在ですが……アリス達の為、困難に手を差し伸べる騎士としての本文も忘れないでおきたいものです」
トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)は、スペースシップワールドを狙う猟書家の存在を気にかける以前に騎士としての行動、矜持を炉心に抱く機械騎士である。
そんな彼にとって、弱者であるアリスに手を差し伸べるのは当然のことであった。
菓子作りとは即ち、正確な分量の計測が生命である。
科学技術と同じように、レシピに書かれた分量の正確さが、即ち味に直結するのだ。
「データバンクよりハードビスケットのレシピをダウンロード、解凍開始……」
普段は使わないデータは圧縮している。
そのデータを解答し、得たレシピを後は、機械の正確さで持って再現するだけでいい。
「ハードビスケット……レシピを間違えなければ、それなりの者ができる化学反応を利用した菓子は、食事も不要で料理経験無き身にとって有り難いものです」
そう、ウォーマシンの中には味覚を有する者もいるが、護衛用ウォーマシンであるトリテレイアには必要な機能ではない。
必要ではない機能は削ぎ落とされるのが、機械たる宿命。故に、味見の出来ないトリテレイアにとって、レシピの分量を正確に再現することこそが、料理の要であった。
そんなふうに調理を開始するトリテレイアの周囲に蠢くように光る瞳。それはオウガに洗脳された邪悪なる子供たち。
「ブリキ人形のでっけーのが、なんか作ってるぜ! じゃましてやろ―――あっちぃ!?」
そんなふうにトリテレイアの調理を台無しにしてしまおうと駆け出そうとする邪悪な子供たちを停めたのは、自律式妖精型ロボ 遠隔操作攻撃モード(スティールフェアリーズ・アタックモード)の最低出力のレーザーであった。
彼等の手には軽度の火傷痕。じり、と邪悪な子供たちは妖精型ロボとにらみ合う。一歩近づけば、一歩後ずさる。
ウォーマシンであるトリテレイアにとって、調理と妖精型ロボの操作を同時並行に行うことなど造作も無いことである。
「おいたをする方は、少々痛い目にあっていただきましょう。次は火傷で済むとは思わぬことです」
そんなふうに機械音声であるが、有無を言わせぬ迫力が妖精型ロボのスピーカーから飛び出せば、邪悪な子供たちは蜘蛛の子を散らすように逃げ出していく。
そんな彼等を尻目にトリテレイアは、その怪力で持って大量に練り上げられた生地を型取り、オーブンへと投入していく。
その動きは洗練されたもので、機械たる正確さがにじみ出ていた。
次々と効率よく焼き上がっていくハードビスケットたちは、さながら工場から出荷されるが如く。焼き上がれば、次々とお菓子の家の壁や屋根、飾り付けに使用されていく。
「ふむ、崩れたお菓子の家の骨組みを利用すれば、後2~3軒は可能ですね。この調子でどんどん参りましょう」
トリテレイアの怪力に寄って練られた生地はまだまだ大量にある。
彼だけで本当にお菓子の家が3、4軒建ってしまうくらいの量だ。きっとアリスと愉快な仲間たちが戻ってきた時、レシピに忠実であるが故に、同じ飾り付けの家が複数存在していることに、そして、それが整然と正確に並んでいることに、彼等はきっと驚くことだろう。
その顔を見ることは叶わないかもしれない。
けれど、トリテレイアは誰かのために何かを成すことに充実したものを感じながら、次々と止まらぬハードビスケットの焼き上がりとお菓子の家の建設に追われるのだった―――。
大成功
🔵🔵🔵
神代・凶津
料理はウチの相棒の得意分野だぜッ!
「・・・流石にお菓子の家を作るのは初めてですけどね。」
旨い菓子のレシピが必要って話だったな。
取って置きの『おはぎ』のレシピがあるぜ。
おはぎを沢山作ってそれをレンガ代わりして、お菓子の家を再建するぜ。
おはぎレンガってヤツだな。
相棒に掛かればお茶の子さいさいだぜ。
「・・・数が多いんだから、ちゃんと手伝ってね?」
あ、はい。
菓子作り中は式神【ヤタ】で周りを偵察して、邪悪な子供たちの動向に注意するぜ。
接近してきたら先手必勝だ。
「・・・破邪・鬼心斬り。」
洗脳で歪んじまった心を叩き斬って正気に戻してやるぜッ!
【技能・料理、式神使い、偵察、先制攻撃】
【アドリブ歓迎】
一般的なUDCアースの家庭に生まれた者にとって、お菓子の家というのは童話の中だけの存在であったことだろう。例え、それが数多の世界を行き来する猟兵であったとしても、実在するお菓子の家を見ることの叶った者は、そう多くはなかったはずだ。
アリスラビリンス、迷宮災厄戦の戦場の一つ『お菓子の家の多すぎる国』は、元はアリスと愉快な仲間たちが、オウガから身を守るために建設した避難所である。
だが、迷宮災厄戦にてオウガ・オリジンの出現に寄って粉々に壊されてしまったお菓子の家は、もはや避難所とは言えない有様である。
アリスと愉快な仲間たちは逃げ出してしまい、このままでは猟兵達が安全にこの戦場を抜けることは愚か、アリスたちの避難所すら存在しなくなってしまう。
そのために猟兵達によるお菓子の家を再建する戦いが始まったのだ!
『料理はウチの相棒の得意分野だぜッ!』
そう、豪語するのは神代・凶津(謎の仮面と旅する巫女・f11808)、鬼面のヒーロー・マスクである。
彼の相棒である神代・桜は、そんなテンションの高い彼とは違って、少し面持ちが違う。
「……流石にお菓子の家を作るのは初めてですけどね」
小さなミニチュアサイズのお菓子の家を作る者は、存在するかもしれないが、人が住めるくらいのサイズの家を建設するというのは、類を見ないものだろう。
それ故に桜が二の足を踏みそうになるのもわからないでもないことであった。
『旨い菓子のレシピが必要って話だったな。とっておきの『おはぎ』のレシピがあるぜ。おはぎをたくさん作って、それをレンガ代わりにしてお菓子の家を再建するってのはどうだ、相棒。おはぎレンガってやつだ』
そう提案する凶津の言葉に頷きを返す桜。
その見目から想像できるように彼女の生家は神社である。そんな彼女であれば、美味しいおはぎ……つまりは和菓子のレシピも知っているであろう。
何より、巫女さんの作るおはぎは絶品である。
当人が食べるわけでもないのに、凶津は一人テンションが高くなってしまい、お菓子の家の再建に対するプランを熱く語りだす。
『おはぎで出来たレンガか……中々にいいじゃねぇかッ! 相棒に掛かればお茶の子さいさいだぜッ』
そんな彼に冷ややかに桜が返す。
「……数が多いんだから、ちゃんと手伝ってね?」
『あ、はい』
一人で盛り上がっているようだが、全て桜に任せる気ではあるまいかと。おはぎのレンガとするならば、相当な数が必要である。
どうがんばっても、一人では無理だ。だが、彼等は違う。依代の桜とヒーローマスクの凶津がいる。
そんな彼等を付け狙う怪しく光る瞳があった。
そう、邪悪な子供たちである。彼等はオウガに洗脳された本来は無害な子供たちである。だが、そんな彼等を洗脳しけしかけたオウガたちは、猟兵達の調理を様々な手段でもって妨害させようとしているのだ。
すでに式神『ヤタ』……破魔の力宿す八咫烏の式神が、そんな彼等の姿を捉えていた。
こっそりと桜と凶津に近づき、もち米を炊いている火を消そうと水の入ったバケツを持っている邪悪な子供たち。
ついでに桜にも水をかけてやろうと複数の邪悪な子供たちが駆け寄ってきていた。だが、その目論見はどれ一つとして叶うことはなかった。
「……その悪しき心、斬り祓いますッ!」
ユーベルコード、破邪・鬼心斬り(ハジャ・キシンギリ)。それは桜の霊力を籠めた薙刀に寄る一撃。
肉体を傷つけることなく、その邪心、洗脳されてしまった子供たちの心のみを切り捨てる。
『やっぱりな! 調理してる背後から狙うっていうのは、お見通しだぜッ! 相棒のユーベルコードで洗脳も解けたなッ!』
凶津の声が鬼面から響く。
洗脳の解除された子供たちは、ぱちくりしている。彼等にとって洗脳の間の出来事は記憶がないのだろう。
桜と凶津は彼等を保護しつつ、美味しいおはぎのレシピ通りにおはぎレンガを組み上げていく。
和風なお菓子の家が出来上り、ひとまず洗脳の解除された子供たちを其処に匿うことにしたのだ。
「……ふう。がんばりました。少しの間です。ここに隠れていてくださいね」
桜が安心させるように子供らに語りかける。
お菓子の家であれば、オウガも襲うことはないだろうし、直に迷い込んだ彼等もまた元の世界に還ることだろう。
その役目を早速果たすべく、おはぎレンガで出来た家は活躍の場を与えられたのだった。
『アッ―――! 桜のおはぎ食べそこねたぜッ!』
そんな凶津の悲痛な声が『お菓子の家の多すぎる国』に響き渡るのだった―――。
大成功
🔵🔵🔵
音月・燈夏
なるほど、アリスさん達の避難所が必要なのですね。
和菓子の方が得意なのですけど、洋菓子の研究もしたことがありますから作れると思います。
各地で集めたレシピ本もありますし、以前にメモしたタルトなどのレシピが確かあったはず……。ああ、ありました。では、早速取り掛かりましょうか。
分身を呼び出し、作業を分担します。一人は邪魔する子が来ないように見張りの担当です。洗脳されているだけみたいなので、催眠効果のある鈴の音で寝かせておきましょう。
残りの人員で基礎となるクッキーと生クリームを大量生産します。飾り付けにチョコレートと果物の用意もしないといけませんね。家はもちろん、机や椅子なども作っていきましょう!
元々は、アリスラビリンスにおいて『お菓子の家が多すぎる国』は森が広がる世界であった。だが、アサイラムより召喚され、人肉欲するオウガに追い回されるアリスたちにとって、お菓子の家とは駆け込み寺のようなものであった。
それ故にアリスと愉快な仲間たちは、オウガより逃げ隠れることのできるお菓子の家を此処、『お菓子の家が多すぎる国』に建設しはじめたのだ。
だが、迷宮災厄戦が起こり、オウガ・オリジンの出現に寄って溢れかえったオウガたちによってお菓子の家は散々に破壊されつくされてしまった。
アリスと愉快な仲間達は逃げ出してしまい、もうこの国にはアリスと愉快な仲間たちは存在しなくなってしまっていたのだ。
この戦場はオウガの姿も見えないお菓子の家の残骸だけが残る廃墟の国と化してしまったが、この戦場を安全に通り抜けるためにはお菓子の家の建設が必須であった。
何より、逃げ出してしまったアリスたちや愉快な仲間たちが戻ってくるためにも、このお菓子の家の建設は必要なことであったのだ。
「なるほど、アリスさん達の避難所が必要なのですね。和菓子の方が徳なのですけど、洋菓子の研究もしたことがありますから、作れるはずです」
そう言って、狐耳をピンと立たせたのは、音月・燈夏(麗耳の狐巫女・f16645)であった。巫女服姿の美しい女性である彼女は、その見目や服装も相まって確かに和菓子が得意そうに見える。
けれど、この国にあるお菓子の家の殆どは洋菓子で出来上がったものばかりだ。それに和菓子の中でお菓子の家を組み上げるのに向いているお菓子が、そう多いものではないというのもまた事実である。
それに彼女は好奇心旺盛な女性である。世界のあちこちをめぐるままに、各地で集めたレシピ本の蔵書もまた凄まじいものがあるのだ。
「以前にメモしたタルトなどのレシピが確かあったはず……ああ、ありました。では、早速取り掛かりましょうか」
そのタルトのレシピ、それは彼女があちこちで散財した結果であるが、それが巡り巡って彼女を助けているのだから、もう残念美人なんて言わせない。
さらにユーベルコード、分身創造(ブンシンソウゾウ)にて彼女の分身を数人呼び出し、作業を分担しはじめる。
一人は調理の邪魔が予想される邪悪な子供たち対策の見張りだ。邪悪な子供たちと言えども、オウガによって洗脳されただけの一般人の子供。ここは穏便に済ませようと神事の際に用いる神楽鈴の音色に寄って子供たちを眠らせてしまう。
「こうやって寝ている姿を見れば、邪悪な子供と言えど、普通の子供たちとかわりありませんね」
子守唄でも謳いましょうか、と分身の一人が眠ってしまった邪悪な子供たちを集めて見張りを続ける。
その間も作業はどんどん進んでいく。
お菓子の家の再建は思った以上に大変な作業だった。なにせお菓子を作ることと、家を建造すること、療法を考えて行なわないと行けない上に、量も沢山必要になる。
お菓子の家の基本構造である基礎をクッキーで、生クリームも大量に用意してデコレートしなければならない。
「ああ、飾り付けにチョコレートと果物も用意しないといけませんね! 家はもちろん、机や椅子も作ってきましょう!」
ユーベルコードに寄って作業人数が増えたせいだろうか、燈夏は意気揚々と作業を続けていく。
美味しいタルトも焼き上がって、クッキーも大量に出来上がる。散々に壊された嘗てのお菓子の家の残骸から使えそうなものを持ってきて、湯煎したチョコレートでつないでいく。
「ふむふむ、なるほど……これは―――」
そうして出来上がったお菓子の家が燈夏と分身達の前にそびえ立つ。
それはもはやお菓子の家というよりも、お菓子の―――。
「やりすぎましたね!」
そう、お菓子の豪邸である。
生クリームでデコレートされた門構え。チョコレートフォンデュの噴水。タルトで出来た机に、クッキーの家具。
家の壁面は硬いクッキーと生クリームで補強され、もはやこれは家どころの騒ぎではない。ここに来て、彼女の散在癖というか、張り切りすぎた結果が出てしまう。
だが、このお菓子の豪邸。戦いが終わり、この国に戻ってきたアリスや愉快な仲間たちにとっては、ある種のメッカ、聖地となるのは、また別の話なのであった―――。
大成功
🔵🔵🔵
月夜・玲
ははあ、成程
お菓子食べ放題な訳ね
そうじゃなくて作る方…?
出来らぁ!
…ええ!?
お菓子を作ってお菓子の家を再建だって!?
●
落ち着け私
お菓子作りはだいたい科学
私はメカニックつまり大きな括りで見れば大体科学者
接点出来たな…見せてやりますよ、完璧なお菓子作りって奴を
するからにはしっかりした作りにしたいね
だから私が作るのはきんつば
しっかりしたお菓子だし、壁素材にぴったりでしょ
粒あんを水と寒天と合わせて
レンガ状の形に成型していこうかな
皮を作って焼いて出来上がり
これなら頑丈な壁になるでしょ!
周囲の警戒をしつつ『第六感』も利用して子供達を警戒
近付いてくる子は『オーラ防御』で受け止めて、『念動力』で遠くにバイバイ
女子にとってスイーツとはどんな意味を持つものであろうか。
スイーツという言葉の響きだけで幸せになれる者もいるし、可愛いと感じる者もいる。フォトジェニックな映える写真が撮れる盛り付けを見れば、黄色い歓声を上げてしまうのもまた女子である。
猟兵達……特に女性の猟兵であれば、多種多様な世界をめぐり様々な光景、土着の食文化を知る者は多い。本来住まう世界では味わうことのできないものだって味わう事ができる。
それ故に、アリスラビリンスの不思議の国の一つである『お菓子の家が多すぎる国』は、まさに映える国であったことだろう。ただし、それが迷宮災厄戦が始まる前であれば、の話である。
今は出現したオウガ・オリジンの余波によってオウガたちに破壊され尽くしてしまった嘗てのお菓子の家の残骸しか残っていない。
見る無残な光景である。本来であれば、お菓子の家はアリスと愉快な仲間たちがオウガの猛威から逃れるための避難所である。
すでにこの国にいたアリスと愉快な仲間たちは逃げ出してしまっている。ここを安全に通過できるようにするためにも、アリスと愉快な仲間たちのためにもお菓子の家の建設は急務であった。
「ははあ、成程。お菓子食べ放題な訳ね」
月夜・玲(頂の探究者・f01605)はどこで話が行き違ったのか、目の前に広がるお菓子の家の残骸を見て、そうつぶやいた。
いや、そうじゃなくて、と突っ込む者はいないのだが、頭の中で転移するまにグリモア猟兵から伝えられた情報をリピートする。
「そうじゃなくって、作る方……? 出来らぁ!」
そうであった、お菓子の家を再建するのであった。やる気満々に拳を握り、少し濃い顔になる玲。画風が一昔前の顔になってしまったのは、きっとアリスラビリンスであるせい。
「……ええ!? お菓子を作ってお菓子の家を再建だって!?」
―――!?
頁の誤植レベルの思考の入れ替わり。ことの重大さを脳が理解したのだ。お菓子を作る。それはある意味で女子の嗜み。出来て当たり前。お菓子作れずんば女子にあらず。それくらいの気概を持っていたのだが、徐々に落ち着きを取り戻そうと、彼女の思考は冷静になっていく。
「落ち着け私。お菓子作りはだいたい科学。私はメカニック、つまりは大きな括りで見ればだいたい科学者」
ティン! と来た。
彼女のロジカルクッキングの始まりである。根本的な解決には何一つ成っていないような気がするのだが、彼女の中では点と点が繋がった瞬間である。
「接点出来たな……見せてやりましょ、完璧なお菓子作りってやつを」
明日また来て下さい、とは言わない当たり、彼女もまた猟兵としての、メカニックとしての矜持があるのだ。
やるからにはしっかりした作りにしたいと思うのは、当然の成り行きであった。
「なら、私が作るのはきんつばね! しっかりしたお菓子だし、壁素材にぴったりでしょ」
そんな彼女が選択したのは意外な組み合わせであったかもしれない。だが、壁素材に、という彼女の言葉は彼女のメカニックとしての立場からすれば確かな観点から得た答えだ。
「つぶあんを水と寒天に合わせて……あ、そうだ。レンガ状の形に成形していこうかな。皮を作って……っと、あぶないあぶない」
忘れるところであったが、この国にはオウガに洗脳された邪悪な子供たちが、猟兵達の調理を邪魔しようと虎視眈々と狙っているのだ。
彼女の第六感が告げるままに、寒天をひっくり返そうとした邪悪な子供をオーラ防御で受け止めて念動力で遠くに飛ばす。
「妨害もあるんだった……気がつけてよかった。とりあえず、怪我しない程度に遠くまでバイバイね。洗脳解いたりは、また後で……と、こんな感じ! 焼き上がったらもこれはレンガでしょ!」
そうこうしている内にレンガきんつばの第一陣が出来上がる。
これは見事にレンガである。白い薄皮がレンガの模様に成っている所が、和洋折衷と言ったところであろうか。
出来栄えに満足しながら、次々と念動力でレンガきんつばを組み上げてお菓子の家の形に組み上げていく。
「うん、これなら台風来たって大丈夫」
自信満々に出来上がった頑丈なるお菓子の家を見上げる玲。
そこにはおそらく『お菓子の家のありすぎる国』で一番頑丈なお菓子の家が出来上がっていた。
オウガが再び来襲したとしても、ちょっとやそっとでは壊されることなどないだろう。メカニックとしての矜持が為せる技。その全てをつぎ込んだ頑強なるお菓子の家は、彼女の誇りとして燦然ときんつばの輝きを放つのだった―――!
大成功
🔵🔵🔵
佐伯・晶
さて、困ったお菓子の作り方なんてすぐに出てこないな
邪神に無茶ぶりしても禄な事にならないだろうし
UDCアースで調べてきたレシピ見ながら頑張ってみるとしますか
こういう時先人の知恵に頼れるのはありがたいな
お菓子の国だけあって材料自体は手に入るみたいだし
試行錯誤しながらやってみよう
まずはチョコレートの生垣
材料さえ確保できれば溶かして固めればいいしね
生垣サイズなら大釜で湯煎して
型に流し込んでいこう
使い魔に見張らせておいて妨害する子が居たら
マヒ攻撃で驚かせて追い払おうか
次はブラウニーで壁を作ってみるよ
いきなり大きいの作るのは難しいから
小さいので味見してから大きくしていこう
ウイスキーを入れみるのもいいかなぁ
「さて、困った。お菓子の作り方なんてすぐに出てこないな……」
佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)は『お菓子の家がありすぎる国』において、オウガに破壊され残骸と化したお菓子の家を前にして腕組して困った顔をした。
美味しいお菓子のレシピでもって、お菓子の家を再建する。
その理由もわかったし、急務であることも理解している。けれど、元男性の身としてはお菓子のレシピと言われてもピンとくるものがあまりなかったのである。
かと言って、己の体に住まう邪神に無茶振りをしても、きっとろくなことにならないであろうという確信はあった。
うんうん、唸ってみてもしようがない。
よし、と気合を入れて晶は庸人の一念(オネスト・エフォート)として、事前にUDCアースで調べてきたお菓子のレシピを見ながらがんばろうと腕組してた手を解いた。
「こういう時、先人の知恵に頼れるのはありがたいな……」
現代地球に近い文化を持つUDCアースであれば、お菓子の歴史もある。そこから紐解いていけば、自ずとお菓子の家を組む際の情報は芋づる式に得られることだろう。
ただ、原寸大の大きなお菓子の家を作るやり方なんていうのは、探してもきっと見つからなかったことであろうが。
「お菓子の国だけあって材料自体は手に入るみたいだし、試行錯誤しながらやってみよう」
そう、今はもう見るも無残な光景である『お菓子の家が多すぎる国』であるが、そこかしこに破壊されたとは言えチョコレートやフラワーや砂糖が存在している。
ただ、猟兵の邪魔をするようにと洗脳された邪悪な子供たちが存在しているのもまた事実。使い魔を呼び出して、周囲を警戒しておくことに越したことはない。
もしも、妨害する子供がいたのなら、麻痺攻撃で驚かせて追い払ってしまえば良いのだ。
「よしっ、と……まずはチョコレートの生け垣……うん、このへんの残骸使えばいいね。湯煎して解けたのを固めればいいしね」
案外順調である。次々にチョコレートの残骸を砕いては湯煎していく。甘い匂いが充満してくる。
時々、キッチンの周囲でわーきゃーと子供の悲鳴が聞こえるのは、使い魔が麻痺攻撃を放っているせいだろう。
「そして、型に流し込む……と」
溶かしたチョコレートを型に流し込んで熱を覚ますまでの間、次なる調理はブラウニーである。
「これで壁なんかにしてみようか。えっと、流石に溶かして固めるっていう単純なわけでもないから、まずは小さいのを試製して……」
壁を作るには小さなブラウニーを作るのは非効率的だ。
此処は一気に大きなブラウニーを作りたくなるが、ぐっと堪える。失敗してしまっては意味がないし、時間のロスだ。
それに食材を無駄になんてしたくない。
「ウィスキー……入れるのもいいかもなぁ。隠し味隠し味。ちょっぴり大人のフレーバーって感じで……」
順調であれば、人は何かアレンジしたくなるというものだ。アルコールを飛ばしてウィスキーの香り付けしたブラウニーを試食する。
「うん、美味しい! じゃあ、これを大きなので作って……」
気がついてしまえば、もう晶のクッキングは案外ノリノリになっていた。チョコレートを湯煎するのも、手慣れた手付きに成っていく。
姿かたちならバレンタインデー前に手作りチョコレートを作るのに奮戦している女性のようでもあった。
次々とチョコレート菓子の家が出来上がっていく。
色味、という意味では茶色の地味な家であったけれど、チョコ好きにはたまらない家担ったという自負がある。
頬にチョコレートをつけながら、満足げな顔の晶。その顔は、最初の頃不安げに腕組みしていた晶とは別人のような自信に溢れた顔。
その自信に裏付けされるように、戻ってきたアリスや愉快な仲間たちに大人気のチョコ菓子の家として、人気を博すのであった―――!
大成功
🔵🔵🔵
大町・詩乃
お菓子は和菓子も洋菓子も大好きです♪
作り方も知っていますから、【料理】でお菓子の家の再建頑張りますよ。
粉々に破壊されたとはいえ材料は揃っている訳ですから、クッキーやケーキの生地は水で溶かして練り直し、チョコレートは湯煎して形を整え直します。
クッキー生地にチョコレートをちりばめて焼き直して壁にします。
ケーキ生地は焼き直して上から生クリームと苺で飾って屋根にします。
素材を【念動力】で持ち上げ組み合わせて家の再建です♪
妨害対策ですが、UCで動物の眷属神を呼んで周囲を見張ってもらいます。
相手を見つけたら【催眠の属性攻撃・全力魔法・高速詠唱・範囲攻撃・催眠術】で眠らせて、【破魔と浄化】で洗脳解除します。
洋菓子、和菓子とお菓子と言ってもひとくくりに出来ない味がある。
どちらが優れているとかではない。どちらも違って良いのだ。甘いものが大好きな女子に区別がないように、お菓子だって優劣なんてない。甘くて美味しい、たった一つの確かな答えが、お菓子にはあるのだから。
それ故に、大町・詩乃(春風駘蕩・f17458)の言葉は真理であった。
「お菓子は和菓子も洋菓子も大好きです♪」
いつもよりもワンオクターブ声色が明るい気がするほどに、跳ねるような詩乃声が『お菓子の家が多すぎる国』に響く。
彼女はお菓子が好きなだけではなく、作り方にも精通している。むん、と気合い充分なのはお菓子の家を再建する目的もそうであるが、アリスや愉快な仲間たちが何時戻ってきても良いようにという神としての考えもあってのことだろう。
出現したオウガ・オリジンの余波は、元々オウガから逃げ込むための避難所であったお菓子の家でさえ、容易に破壊せしめた。
あちらこちらに破壊されたお菓子の家の残骸が重なっている。
その残骸のあちこちからこちらを伺っているのが、オウガに洗脳された邪悪な子供たちだ。
彼等は猟兵の調理を邪魔するようにオウガに洗脳されている。元は一般人の子供であり、洗脳されていなければ本来猟兵に仇なす存在ではないのだ。
「アシカビヒメの名によって召喚す、我が元に来りて命を受けよ」
詩乃のユーベルコード、神使召喚(シンシショウカン)によって召喚された眷属神たちが一斉に駆け出す。
瓦礫の中に隠れていた洗脳された子供たちを次々に捕まえ始めたのだ。わーわーぎゃーぎゃーと声が響き渡るのを聞きながら、詩乃は己の仕事に取り掛かる。
「粉々に破壊されたとはいえ、材料は揃っているわけですから……再利用いたしましょう。勿体ないですからね」
そう言ってクッキーやケーキ生地は水で溶かして練り直しはじめる。圧倒的な速度で次々と生地が練り直されていく。
さらにチョコレートは砕いて湯煎し直して、形を整え始める。
「……壁は、クッキー生地にしましょう。チョコレートを散りばめて焼き直せば頑丈になるはずですし……」
後から後からアイデアが溢れてくる。
迷宮災厄戦の戦場であるが、今はオウガの脅威もない。障害と言えば邪悪な子供たちはというと……。
そう、眷属神たちによって捕らえられ、一気に洗脳の上書きのように催眠術で眠らせ、破魔と浄化の力によって洗脳を解除されてしまっていたのだ。
お菓子の家が出来上がれば、その中に安静にさせておけば、その内に元の世界へと戻っていくだろう。何より、眠っている間でもオウガの脅威も頑丈に作ったお菓子の家であれば問題は起きないだろう。
「クッキー生地の壁は出来上がりました。屋根もクッキー生地にしましょう……ただ、それだと味気ないですね。せっかくですから、生クリームといちごで飾りましょう」
屋根とするクッキー生地の板は、それだけでも相当な重さである。さらにそれに生クリームといちごを載せてしまえば、さらなる重さになるのだが、彼女の細腕で大丈夫なのだろうかと心配になる。
だが、心配ご無用である。
彼女の念動力で持って組み上げられていくお菓子の素材達。アレだけ心配であった屋根も軽々と組み上げていくのだから、彼女の念動力の凄まじさを物語っている。
「完成しました♪ これがイチゴのショートケーキ風、お菓子の家ですね。お菓子の家の再建と相成りました♪」
るんるんと言葉尻が跳ねるような詩乃の声は本当に楽しそうであり、作業の大変さも出来栄えに反映されているかのように見事なお菓子の家が出来上がったのだった。
洗脳を解除した子供たちを完成したお菓子の家に寝かせて、詩乃はもう一度、自身が再建したお菓子の家を見上げる。
戦いのさなかではあるのだが、それでも楽しかったと思うのは悪いことではない。戦いの全てが終わった後、再び此処を訪れた時、アリスと愉快な仲間たちが仲睦まじく過ごしてくれていたのならば、嬉しいことはない。
そんなことを思いながら、詩乃は『お菓子の家が多すぎる国』を後にするのだった―――。
大成功
🔵🔵🔵
セレシェイラ・フロレセール
よーし、可愛いお菓子の家作り頑張っちゃうよー!
というわけで、今日はマカロンを作ろうと思います
卵白を泡立ててメレンゲ作り
グラニュー糖と食紅、アーモンドプードルと粉砂糖をまぜまぜ
一番難しいマカロナージュは慎重に
生地の硬さをしっかり見極めて
生地を絞り色んな形にしてオーブンで焼きましょう
中のクリームは多種用意
ここで一旦お片付けします
ついでに桜の硝子ペンで一筆、呼んだ桜の花で悪戯っ子たちを追い払って
可愛いマカロンの完成だよ
まんまる、ハート、お星さま、お花、可愛いマカロンで可愛くお菓子の家をデコレーション
出来あがったマカロンをちょっぴり味見
美味しく出来たから、後でナイアルテさんにもレシピ教えようっと
女の子って、何でできてるの?
砂糖とスパイス。
それと、素敵な何か。
そういうものでできてるよ。
だからきっと、セレシェイラ・フロレセール(桜綴・f25838)の身はヤドリガミたる桜色の硝子ペンであったとしても、彼女の心は、そういうものでできている。
「よーし、可愛いお菓子の家作り頑張っちゃうよー!」
いつもよりも愛らしい声が『お菓子の家が多すぎる国』に響いた。セレシェイラが、この不思議の国を訪れた時、お菓子の家の全ては破壊され尽くした後だった。
オウガ・オリジンの出現と共に溢れたオウガたちによってアリスと愉快な仲間たちの避難所でも在ったお菓子の家は散々に破壊されてしまったのだ。
この国にいたアリスと愉快な仲間たちは散り散りに逃げてしまったが、猟兵たちにとって此処は猟書家の居る戦場へとつながる場所だ。
例え、猟書家が存在していなくても、アリスと愉快な仲間たちが安寧に過ごせるお菓子の家が破壊されていたのだとしたら、迷うこと無く再建に駆けつけたことだろう。
セレシェイラもまたその一人だ。
「というわけで、今日はマカロンを作ろうと思います」
キッチンの前で張り切るセレシェイラ。その姿は見目通りの年齢相応な少女そのもの。永遠の少女とも言っていい彼女にとっても、お菓子作りというのは特別なものであった。
大きなボウルと泡立て器を使って、卵白を一生懸命泡立ててメレンゲを作り上げる。そこにグラニュー糖と食紅、アーモンドプードルと粉砂糖をさらに混ぜあげていく。
「まぜ♪ まぜ♪」
そんなふうに作業を進めていく。
マカロン作りに置いて、いちばん重要なのがマカロナージュと呼ばれる作業だ。
慎重に、とセレシェイラは作業を進めていく。生地の硬さをしっかり見極めることが大事だ。
生地とメレンゲの泡を潰しながら混ぜ合わせる。生地の硬さを調整するこの作業が、マカロンにとって最重要であることは言うまでもない。
大事なのは生地と気泡を均一にすること。そうすることによってマカロンの、あのツルッとしたまあるい表面が出来上がるのだ。
ゴムヘラで真ん中から其処をすくうように混ぜ、さっっくり切るように混ぜる。カートに持ち替えて、泡を潰していく。
「慎重に……ん、いい感じじゃないか!」
出来上がった生地を絞って、オーブンに入れる。焼き上がりが楽しみだ。それに中に入れるクリームだって、色んなものを用意したのだから、少し焼き上がりを待つ足が浮足立つように足踏みしてしまうのも、仕方のないことだ。
「―――ここで一旦お片付けします」
にっこり微笑んでボウルや泡立て器などを片付けていくセレシェイラ。
ついで、というように桜の硝子ペンで一筆、宙に描くのは桜綴(ロマンチカ)。
描く筆跡が次々と桜の花びらを舞い散らせ、その花弁がセレシェイラの調理を邪魔しようと隠れていた邪悪な子供たちを追い払っていく。
どこか夢心地にさせる魔法によって、オウガに洗脳された邪悪な子供たちは次々と眠りに落ちていく。
目が覚めればきっと、そこは元いた世界であろう。
これまた大切なお片付けである。そうこうしている内にマカロンがオーブンから焼き上がって出てくる。
「わあ、いいじゃないか。とってもいい! 可愛いマカロンの完成だよ」
焼き上がりの形を見てセレシェイラが、ぴょんこと跳ねる。
オーブンから出てきたマカロンの形は、まんまるなものだけでなく、ハート、お星さま、お花……それこそ女の子が好きなものが一杯である。
これらで可愛くお菓子の家をデコレーションしていくのだ。それはまるでクリスマスの直に家を飾るイルミネーションのようにキラキラ輝いている。
「味もちゃんと見ておかないとね……味見は大事だからね。本当に」
そんなふうに言いながら、セレシェイラはちょっぴり味見をしてみると、自分が作ったものながら美味しい。ほんわりと幸せな気分になりながら、セレシェイラは転移させたグリモア猟兵のことを思い出す。
「このレシピで美味しく出来たから、後でナイアルテさんにもレシピを教えようっと」
あのときのこしょこしょ話。
きっと彼女も喜んでくれるに違いない。それに再びこの地を訪れ、セレシェイラがデコレートしたお菓子の家を見たアリスや愉快な仲間たちが喜んでくれるはずだ。
それを想えば、セレシェイラの微笑みは益々明るいものになっていく。
そう、女の子は素敵なものでできている。
そんなものでできているのだから、いつだって女の子はキラキラしているのだ―――。
大成功
🔵🔵🔵