迷宮災厄戦⑬〜ギロチンローラー作戦
●ギロチンの音
「この『斬首刈之国』はかつてオウガ・オリジンに食事を饗する為に使われていた、アリスを直接『断頭台の下』に召喚するという絶望の国よ」
ウミウシの様な被り物をしたバースト・エラー(世界の不具合・f21451)は、グリモアベースの会議室で淡々と戦況を語っていた。各エリアの制圧は順調に進み、早晩幹部級とも開戦するだろう。その前にやるべき事――未だ開放されないエリアを迅速に制圧する。その為に、といつになく真面目な口調で話を続けた。
「現在は戦争に注力するため召喚機能は停止しているけど、この国のオウガ達は『食事のおこぼれ』を食べて戦闘力も高いみたい」
オウガ・オリジンへの食糧供給源だったこの国の強力なオウガを始末しエリアを開放するだけ。だが強敵相手にどう立ち回る? と猟兵が尋ねる。
「ええ。この国のあちこちにある断頭台で首を落とせば、一撃で殺す事が出来るわ」
アリスを苦しまず始末するだけの断頭台をオウガに向けて使うだけ――何よりここのオウガは元々アリスだったのだ。これの恐ろしさはよく知っている筈。だからこそ工夫して断頭台を使い、戦いを有利に進めて欲しいとバーストは結んだ。
「断頭台への乗せ方は一つじゃない。そういうのは皆得意でしょ?」
要は断頭台で首を落とせばいいのだ。空中に固定しようが、転移させようが、やり方は何でも構わない。映像を見れば路傍の石の様に大量の断頭台がそこかしこに転がっている……ただこれを上手く扱えばいいだけの事。
「兵は神速を貴ぶ――皆ならきっと出来るって信じてる。よろしくね」
そう言い、オウム型の戦闘人形がグガァと鳴いてゲートが開く。
血の臭いが漂う戦場の風が肌を撫でて――余り時間は無い。早速鬼退治と参ろうか。
ブラツ
ブラツです。このシナリオは1フラグメントで完結し、
「迷宮災厄戦」の戦況に影響を及ぼす、
特殊な戦争シナリオとなります。
本シナリオはアリスラビリンスの絶望の国において、
強力なオウガの集団を討伐する事が目的の、純粋な戦闘シナリオです。
以下の点に注意する事で、非常に有利な状況になります。
●プレイングボーナス……プレイングボーナス……オウガを断頭台に乗せる。
以上です。オウガだけを殺す機械かよ。使い方はご自由にお任せします。
●今回の注意事項
幕間公開後、プレイングを募集します。
アドリブや連携希望の方は文頭に●とご記載下さい。
単独描写を希望の方は文頭に△とご記載下さい。
同時描写希望時は何がしかの識別子の記載をお願いしますが、
なるべく早めにシナリオを進めたいと思いますので、
余り大人数の連携は採用が難しくなる場合がありますのでご注意ください。
それでは、よろしくお願い致します。
第1章 集団戦
『墜ちたアリス』
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POW : アリスラビリンス
戦場全体に、【過去のアリス達の「自分の扉」】で出来た迷路を作り出す。迷路はかなりの硬度を持ち、出口はひとつしかない。
SPD : 永遠のお茶会
【アリス達が手づから注いだ紅茶】を給仕している間、戦場にいるアリス達が手づから注いだ紅茶を楽しんでいない対象全ての行動速度を5分の1にする。
WIZ : 地獄の国のアリス
自身の【記憶と身体】を代償に、【自身を喰べたオウガ】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【鋭い爪や牙】で戦う。
イラスト:ゆりちかお
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●鈴の音を響かせて
りぃん、と涼やかな音が聞こえる。そよぐ風が奏でる音はそう、ギロチン。そこかしこに転がるそれの、微かに振るえた刃が共鳴し、扉に溢れた歪な空間を一層狂的な色彩で包み込むのだ。
『――誰か、来たよ。アリスかな?』
ふわりと風が甘い匂いを運んだ。目の前には可憐な少女めいた沢山のオウガが。可愛らしい声を上げて、転移した猟兵達を興味深げに覗いている。
『アリス、だったら……』
『首、置いてけ』
そして、豹変。瞳孔をくわっと開き、猫目か狐目か……それが強化された所為か。まるで獲物を狙う凶暴な肉食獣の様だ。
『首、首……』
『アリスじゃなくても、置いてけ』
冗談ではない。首を置くのは貴様らだ。
ユエイン・リュンコイス
●
相手は肥満体のアリス、周囲にはギロチン…御伽噺にしては、些か悪趣味に過ぎるよ。元来、そう言う側面が強いモノだとしても、ね。
肥満と言うからには動きは鈍重なのかな? とは言え、こちらの速度も低下させられるようだ。だけど、時間が味方するのは何も相手だけとは限らないよ。
UCを起動しつつ情報収集に徹する。相手の位置や数、周囲の環境を把握。攻撃を受けそうになったら機人を操って時間稼ぎだ。
十分に情報を集められたら、頃合いを見計らってUCの第二段階を起動。纏めて断頭台の下へと転移させてやろう。
我が瞳が見て来たモノが素晴らしいのであれば、これから見るモノもまた素晴らしくなければならない。故に…醜き者よ、去れ。
陽向・理玖
●
つーか…
どこのおいてけ堀…
龍珠弾いて握り締めドライバーにセット
変身ッ!
衝撃波放ち残像纏い手近な敵にダッシュで距離詰めUC後グラップル
蹴りで断頭台に向かって吹き飛ばし
ギロチン怖ッ!?
風鈴なら涼やかでいいけどよ…怪談か
でもまぁ…同情はしねぇ
紅茶は敢えて一気飲み
こちとら戦場で肉食ったりお好み食ったりしてんだ
今更紅茶くらい何でもねぇな
スピード落とさず動き見切り
常に断頭台との位置関係確認し
範囲攻撃でなぎ払い
まとめて首刈られとけ
悪ぃが俺の首はやれねぇ
約束してんだ
ちゃんと帰るってな
断頭台背後にしつつ投げ飛ばす
元の世界には帰れないなら
せめて一瞬で
骸の海へ還りな
拳の乱れ撃ち
紅茶ばっかで腹減った
帰って何か食お
●くい、斃れよ
「全部が全部、という訳じゃないが……」
無数の扉が織りなす異空間――アリスだったモノ達の残滓。その中を蠢く有象無象はオウガとなった成れの果て。
『アリスか! アリスならば首置いてけ!』
『喰わせろ、喰わせろよぉ!』
おこぼれに預かりぶくぶくと肥え太ったそれらを見やり、ユエイン・リュンコイス(黒鉄機人を手繰るも人形・f04098)はすぅと息を吐く。成程……悲しくも、悍ましい。
「食べ過ぎて肥えたアリスと、周囲にはギロチン……御伽噺にしては、些か悪趣味に過ぎるよ」
「つーか……どこのおいてけ堀……」
その横、頭を掻きむしって異形を眺める陽向・理玖(夏疾風・f22773)がぼそりと零して、片手に握りしめた龍珠へと念を送る。
「御伽噺が元来、そう言う側面が強いモノだとしても、ね」
「よく分かんねーけど、全部ブッ倒しゃいいんだろ?」
脚にぶら下げた書物を手に取り鋭い視線をオウガ達へと送るユエインと、腰にドライバーを展開し光を放つ理玖。背中合わせの二人を取り囲む様にオウガが迫り、背中を曲げた超常の給仕(アリス)が、ティーポットを片手にゆらりと間を詰めてくる。
「そういう事。せいぜい御伽噺らしくやってみよう」
「ハハッ……んじゃ行くか!」
しかし二人は動じず。顔色一つ変えずに、あるいは薄く笑みを浮かべて――瞬間、閃光が戦場を支配した。
『置いてケッ!?』
給仕の背後からオウガが理玖へと飛び掛かる。片手に紅茶を受け取って、まるで狩りでも嗜むかの様に……だが、遅すぎる。振り下ろした剛腕の先には誰もおらず、振り返ったオウガの懐に青い稲妻が迸った。変身。装甲を纏い同時に吹き荒れたエネルギーを一転に集中して――明鏡止水、超常の神業が涎を垂らすオウガを遠くへと吹き飛ばす。
「うっわ……ギロチン怖ッ!?」
その先にはこの世界を形作る要素――断頭台が置かれていた。身体をくの字に曲げたまま、固定された台座に身体ごと投げ放たれたオウガは、吸い込まれる様にその首だけを刃の元に晒して――途端、涼しい鋼の音色と共に生命を再び落とす。
『紅茶ヲ……』
「ああ。じゃあ貰うぜ――」
『!?』
そして近くの給仕からひったくる様に紅茶を奪い直ちに飲み干す。カップを投げ捨て、尋常ならぬその動きに戸惑ったオウガの腰を掴んで再び、断頭台の方へと放り投げた。
「今更紅茶くらい何でもねぇよ。こちとら戦場で肉食ったりお好み食ったりしてんだ」
強化人間の内臓を見くびらないで貰いたい。たとえ多少の毒が盛られようとそんなモノはスパイスだ。『楽しまなければならない』ならばその毒すらも喰らってみせると意気込む理玖。冷静に自身を取り囲むオウガを見やり、瞬間――青き戦士は疾風となる。
「まとめて首刈られとけ」
吹き荒れた衝撃が一斉に、群がるオウガを薙ぎ払うのにそう時間は掛からなかった。
(肥満と言うからには動きは鈍重なのかな? とは言え、こちらの速度も低下させられるようだ――だけど)
一方、書物とオウガを交互に見やり、最小の動きで追撃を回避するユエイン。既に超常の儀式は始まっている。刻々と変化する状況。その様子がつぶさに描かれていく書物。未来視では無い――あくまで観測と、その為の身体強化。状況を楽しまなければ降り掛かる呪いが自身の動作を極端に鈍くするも、自らに掛けた超常がかろうじでそれを相殺する。故に。
「時間が味方するのは何も相手だけとは限らないよ」
『置いて!!!』
咄嗟の攻撃が遅れる訳が無い。不意を打って飛び掛かったオウガに片手を振りかざせば――その先、手繰る糸が無敵の機人を呼び起こす。
「出番が遅い? 居たさ、ずっとここにね」
白き指先、繋がる絹糸、振るわれるのは昇華の鉄拳。その拳は空を焦がして悪しきを焼き尽くす。黒鉄の機甲人形はまるでパーティーの出し物の様にくるくると舞い、群がる悪をユエインへ寄せ付けない。
「……して、頃合いか」
解析は十分。これでパーティーもお開きの時間だ。
「悪ぃが俺の首はやれねぇ。約束してんだ、ちゃんと帰るってな」
空が爆ぜる音が幾重にも重なって、ふらついたオウガが一匹、また一匹と断頭台の直下へと投げ捨てられる。いかな巨体と言えど強化された筋肉が後れを取る訳も無く、相対的に小柄な理玖を囲んだ肉塊は尽くが彼方へと飛ばされた。
「元の世界には帰れないなら、せめて一瞬で……骸の海へ還りな」
それでも立つ者がいるのならば拳の連打、ドラムロールの様な轟音と共に爆ぜた肉体が、断頭台だけが猟兵の業では無いとその威力を見せつけて――そして、終幕の時が来た。
「いいタイミングだ」
パタン、と書物を閉じてオウガ共を眺めるユエイン。空いた手を再び天に翳し――途端、無数の超常の糸がオウガの首へと括り付けられる。
『首首くびくびクビクビィィィィッ!!!!!!』
されどその糸は首を刈るモノでは無い。あくまで奴等の首を刈るのは……。
「我が瞳が見て来たモノが素晴らしいのであれば、これから見るモノもまた素晴らしくなければならない」
力ある言葉と共に、運命の糸は定めた意図に従ってオウガ達を消し去った。否、消えた訳ではない。
「故に……醜き者よ、去れ」
瞬間、ユエインの視界に入った全てのオウガは断頭台の元へ転移したのだ。それこそが解析した事象を限定的に改変する、ユエインの超常の真価。重々しい巨体が大地を揺らすと共に、リズミカルな甲高い音――刃が落ちる音が悲鳴すら飲み込んで、無数のオウガの命を奪った。辺り一面、真っ赤な血の海に浸されて――そしてそれらは消えていった。
「ああ、紅茶ばっかで腹減った。帰って何か食お」
「……肝の据わった奴だな」
まるで淹れたての紅茶じみた真紅を見やり理玖が呟く。その様子に小首を傾げて、人の身をした少女はあくまでも無感情に、口元を流れる血をそっと拭った。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
玉ノ井・狐狛
●
コイツぁ面白い趣向だ
けど、断頭台の扱いにゃァさすがに覚えがねぇな
とりあえずは歩き回って、仕込みを済ませる
相手は手下を使うっぽいが、代償が代償だけに、そこまで大量には湧かないだろう
戦場のスペースも広いっぽいし、そう簡単には捕まらないハズだ
▻時間稼ぎ▻早業
ある程度タネを仕込んだら、スイッチオン(UC使用)
ほら、断頭台の免許なんざ持ってないからよ
ソレ自体に働いてもらおうって話だ
大量の断頭台を式神化して、けしかける
▻式神使い
いくつか壊されたところで代わりはあるし、他のヤツらも困らないだろ
一発でも通しゃァ勝ちなんだ
楽なゲームだぜ
アリスのが欲しいんなら、アタシのよりアンタらの首のほうがそれっぽいだろうよ
ヴィクティム・ウィンターミュート
●
環境を利用してターゲットをフラットラインに追い込むなんざ得意分野だぜ
しかしまぁ、断頭台とは大仰な仕掛けだ
非効率的にも見えるが…威力は申し分ないか
手早く捕まえ、迅速に首を刎ねるぞ
では、ランだ
セット、レディー……『Extra』
ジャマーをフルスロットル、広域に多重展開
ユーベルコードを発動させるな、目についた奴は捕まえろ
捕縛した奴は断頭台に連れていけ、首を落とせ
抵抗するなら複数体で抑え込んで構わない
さて、俺も動かなきゃな
右腕の仕込みクロスボウを展開、脚にボルトを撃ち込んで機動力を削ぐ
動けない間に腕を斬り落とすか縛り、断頭台へ
血も涙もない所業に見えるか?
この程度、"経験済み"だ
忌避感なんて無いよ
●ブラディバス
「コイツぁ面白い趣向だ」
「フン、環境を利用してターゲットをフラットラインに追い込むなんざ得意分野だぜ」
玉ノ井・狐狛(代理賭博師・f20972)とヴィクティム・ウィンターミュート(End of Winter・f01172)は遠くに蠢くオウガの群れを見やり、うっすらと口端を歪める。
「しかしまぁ、断頭台とは大仰な仕掛けだ。非効率的にも見えるが……威力は申し分ないか」
「けど、断頭台の扱いにゃァさすがに覚えがねぇな」
呆れた風に口走る狐狛へヴィクティムがあっさりと返す。得物が違うだけ、やる事は変わらない、と。
「簡単だよ。手早く捕まえ、迅速に首を刎ねる」
「アンタならそりゃ簡単だろうよ。アタシは只の遊び人だぜ」
わざとらしく頭を振って肩を落とす狐狛。だがそれを意にも介さず、ヴィクティムは己の超常を手繰り寄せる――戦いはもう始まっているのだ。
「では、ランだ」
「あいよ」
仕事人と遊び人。相反する黒と白は静かに、されど勇ましく戦場へと躍り出た。
「そんな出目じゃあ上がれねぇよ。出直してきな」
ふわりと高所から降りた狐狛へ殺到するオウガ達。それは可憐な少女では無い――少女を喰らったオウガの魂が形を成して、超常の一撃を喰らわさんと迫るのだ。
「ぞろぞろと鬱陶しいがまあ、この程度――?」
その一撃を舞う様に躱しつつ、狐狛はぶつぶつと祝詞を唱えて、足元に転がる断頭台へ仕込みを続ける。直接やり合うのは趣味じゃないし分も悪い。手札が足りないなら増やせばいい――だが御開帳にはまだ早いと思案した刹那、音を立てて殺到する別の気配を狐狛は感じ取った。
「セット、レディー……『Extra』」
ジャマーをフルスロットル、広域に多重展開。瞬間、悍ましいオウガの群れは徐々にその姿を少女のそれへと戻していく。歪に膨れ上がった五体は喰らった生命の所為か、しかし力を封じられたオウガには先程までの俊敏さは微塵も無い。
「ユーベルコードを発動させるな、目についた奴は捕まえろ」
替わって現れた無数の影――アンドロイドの軍隊はヴィクティムの超常。数には数を。無力化に特化したアンドロイド群はオウガの超常を封じながら、多対個で確実に、着実に相手の頭数を減らしていった。
「捕縛した奴は断頭台に連れていけ、首を落とせ。抵抗するなら複数体で抑え込んで構わない」
確かに一つ一つの力は及ばないかもしれない。だが古来、戦術とはそれを覆す為の常套手段だ。五体を封じ持ち出した断頭台へ括り付ければ、それだけで事は足りる。戦場は既に屠殺場と化した。かつてアリスがそうされた様に……あるいはかつてのアリスに、再び地獄が再演された。
「うわぉ、おっかね」
悲鳴を飲み込む刃の音色が遍く響くと共に、鮮血の洗礼が一面に花開く。
「……血も涙もない所業に見えるか?」
「いんや、別に」
その様を見て肩を落とす狐狛。まあ、数には数ってのは同意だし――何より。
「指詰めんのも首跳ねんのも大差無ぇ、ってか」
「ケジメか。そんな綺麗なモンじゃない」
戦場の作法を全く知らぬおぼこじゃ無い。だからその結論に達した自身に、狐狛は僅かに嘆息していたのだ。それを知ってか知らぬか、淡々と仕事を全うするヴィクティムが静かに語る。血塗れの戦場を幾度渡り歩いてきたか……数えるのも馬鹿らしくなるほどの鉄火場を、命の張り合いをこなしてきた。最小の労力で最大の戦果を――その為に何もかも捧げて来たのだ。
「この程度、“経験済み”だ。忌避感なんて無い――それだけだ」
「慈悲深いこった。っと……」
潮が引く様に血塗れの大地が土の色を取り戻して――骸の海へと還った奴等の波を掻き分けて、オウガの群れが再び殺到する。だがそれも分かり切っていた事。彼等はもう届かない。遅すぎたのだ。
「アリスのが欲しいんなら、アタシのよりアンタらの首のほうがそれっぽいだろうよ」
「おいおい……」
二人に迫ったオウガの群れが続々と、空を舞う断頭台にその首を撥ねられたのだ。それこそが狐狛の超常――式神と化した無機物は彼女の思うが儘。元より敵の能力から長期戦にはならぬと踏んでいたが、状況が良すぎた所為か、手持ちの札はあと三度くらい上がりを迎えておつりがくる程。
「余程じゃないか、フェティシュマン」
「フェティ……アタシゃほら、断頭台の免許なんざ持ってないからよ」
そこかしこに転がる断頭台全てに符を貼って、今やそれらは大軍勢と化した。重ねてオウガの超常が封じられていれば――最早、二人を止める事など出来はしない。
「ソレ自体に働いてもらおうって話だ」
それでも、屍山血河を潜り抜け辿り着けた一匹のオウガを、無慈悲なクロスボウの一撃が穿つ。ノーモーションで放たれたそれはヴィクティムの仕込み――サイボーグが捉えた知覚はオウガの方を向きもせず、狐狛と語らいながらその脚にボルトを撃ち込んだ。
「一発でも通しゃァ勝ちなんだ。楽なゲームだぜ」
「全く、大した祓い(ゲーム)だよ」
そのまま、ゆらりと降りた断頭台がオウガへ止めを刺す。
戦場という盤上の支配者(ゲームマスター)が二人。元より敵う訳が無いのだ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
荒谷・つかさ
●
正直、首を落とすだけなら剣術の方がやりやすいんだけど。
断頭台を使わないといけないなんて、面倒な話ね。
せめて、私は私らしくやらせてもらおうかしら。
やることは簡単
【鬼神剛腕砲】発動し、その辺に転がってる断頭台(或いはギロチンの刃)をオウガへ向け投げつける
その一発で上手く嵌って首を落とせれば僥倖、ダメでも怯みはするでしょう
その隙に改めて持ち前の「怪力」でオウガを捕縛、無理やり断頭台に嵌めて首を落とすわ
また、断頭台よりオウガの方が近いなら、逆にオウガを断頭台に向けて投げつけて(以下略
置いていけ、なんて言っているようじゃダメよ。
欲しいものは問答無用、力ずくで奪い取る……こんな風にね。
(首を落とす)
トリテレイア・ゼロナイン
●
迷路を作り断頭台を避け奇襲を行うつもりでしょうが…
センサーでの●情報収集で歩行の振動を検知し●見切ることは此方にも出来ます
なにより…
(落ちていた断頭台をUC込みの●怪力で持ち運び)
死地は用意しておりますよ
怪力シールドバッシュで迷路を●地形破壊しながらセンサーでの●情報収集でマッピングし●地形の利用とスラスターでの滑走●スライディング機動でオウガ追跡
UCを放ち電流で拘束持ってきた断頭台に乗せ
悪鬼に堕ちた罪、その清算をする時です
機構を起動
…彼ら彼女らも元アリス
そしてこの国で命散らした数多のアリス
この国は騎士にとって『敗北』そのものです…!
制圧しなければなりません
それ以外に報いる術がないのですから
●鬼士咆哮
「迷路を作り断頭台を避け奇襲を行うつもりでしょうが……」
眼前には無数の扉――そのどれもが異端の超硬物質で作られた、恐るべき超常の迷宮に巨大な機械の騎士、トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)は囚われていた。だがその程度、数多の死地を潜り抜けてきた機械騎士にとって心底恐れる程の物では無い。
「なにより……」
ソナーが振動を読み取り、センサが変異を感知する。敵が何処にいるか――あまつさえ、この迷宮の構造すら、少し時間を掛ければ容易に紐解ける。抜け出すには正しい扉――出口を見つければよいのだから。故に。
「死地は用意しておりますよ」
「それどころか」
それどころか――可愛らしい声色の主が、ちょこんとトリテレイアの傍らより顔を覗かせる。
「この迷路の構造的欠陥を教えてあげるわ」
その声の主、荒谷・つかさ(逸鬼闘閃・f02032)は身を乗り出して、手近な迷宮の扉に手を掛ける。
「確かにこの迷路は壊せないかもしれない。でも」
超常の迷宮に掛けられた加護は単なる物理的な力のみで下す事など出来ない。だが、扉という概念――それが扉であるならば、扉が壁の変わりならば、力をぶつける以外にもやりようはある。
「扉には取っ手がある。つまり、掴むことが出来る。」
瞬間、トリテレイアのセンサが異常なエネルギー反応を検知した。無論ユーベルコードでは無い、あくまでこの世の理に従った原初の運動エネルギーそのもの。
「ならば、抜けばいい」
「…………」
推定エネルギー総量が戦闘用ユーベルコード9発分という解を導く。優に数億Jを余裕で越える……あり得ない。否、猟兵だから……いやそういう問題じゃあない。何なのだ、あれは一体。
「ね?」
「はあ……」
最新型の測定器じゃなければ爆発していたかもしれない。ケロリとした顔でトリテレイアを見返すつかさの手には、無残にも強引に引き上げられた迷宮の壁――かつてのアリスが辿り着けなかった扉の残滓が高々と掲げられていた。
「さて、見えたわよ」
「はい……」
すかさず持ち上がった扉と地面の間に丸太を挟み込んで進路を確保。センサで進路は分かっている――二人は最短ルートで迷宮を突破したのだった。
「正直、首を落とすだけなら剣術の方がやりやすいんだけど」
二人を唖然とした表情で眺めるオウガ達。自慢の超常がたった今、尋常ならざる怪力で捻じ伏せられたのだ。鬼が手にした丸太と共に。その鬼が静かに宣う。
「使ってあげるわ。その方がいいのでしょう?」
鬼が今度はオウガら最大の弱点たる断頭台を、さながらバンドネオンの様にぎっちょんぎっちょんしながら持っているのだ。最早恐怖以外の何物でもない。鬼が――つかさが何を言ってるのかも理解出来ない。圧倒的な力に壊された心に残るのは、ただ一つ。
「あくまで私らしく……だけど」
『ヒィ!?』
絶望だけだ。絶望がオウガを支配していた。逃げようにも投げつけられた断頭台の刃がオウガの首に食い込んで、一投の下に処するのだ。
「置いていけ、なんて言っているようじゃダメよ」
手ぶらになったつかさを見やり決死の反撃を試みるも哀れ――振るう拳を片手で掴まれ、そのまま断頭台へと投げ込まれる。追撃しようにも愚か、首根っこを押さえられまるで組み伏せられた小動物の様に崩れ落ちる――否、動く事など出来はしない。
「欲しいものは問答無用、力ずくで奪い取る……こんな風にね」
そして刃が一閃。手近な断頭台に押し込められて、断末魔の叫びを上げる迄も無く果敢に攻めたオウガは散った。本物の鬼に紛い物のオウガが勝てる道理など、そもそも無かったのだ。
「――悪鬼に堕ちた罪、その清算をする時です」
一方、トリテレイアも対峙するオウガに睨みを利かせて、手にした長剣を大きく振り被る。センサがオウガの動きを捉えて予測――数は多いが恐るるには足らず。既に迷宮は破られたのだ。残された尋常で私を止められるか、と静かに電脳が唸りを上げて――。
「……彼ら彼女らも元アリス。そしてこの国で命散らした数多のアリス」
『置いてけェェェ!!! 首ィィィッ!!!』
演算が映し出すは勝利という未来。だがトリテレイアに去来した思いはそれとは裏腹に、余りにも重い慚愧と悔恨だった。
「この国は騎士にとって『敗北』そのものです……!」
それは決してトリテレイアの罪では無い。騎士が恥ずるべき現実など無い。だがそれでも、絵物語の様な世界で救いは無かった。その真実への憤りが、それでもと届かない祈りの儚さが、そして己の無力さが――トリテレイアに『敗北』の二文字を導き出させたのだ。故に騎士は駆ける。これ以上の悲劇を重ねない為にも。
「制圧しなければなりません。それ以外に報いる術がないのですから」
不意に、両腕を振り被ったトリテレイアの腰部から紫電を纏った無数の鋼線が放たれる。それらはまるで意志を持つ蛇の様にのたくって、するりとオウガの五体を締め上げた。最初からこれが狙い……真っ向勝負と見せかけて、包囲されるまでが戦術だ。絶対に負けられぬ戦い――故に己が矜持を秘めて迄、必殺の超常を喰らわさんと立ち塞がったのだ。
「拘束完了――放電開始」
「あら、バーベキューなら混ぜて頂戴」
淡々と作戦を遂行するトリテレイアの傍らに、いつの間にか丸太に断頭台の刃を怪力で打ち付けて即席のギロチンハルバードを拵えたつかさが立っていた。
「ええ、少々行儀が悪いですが……」
同じく、鋼線に断頭台を括り付けて、正に巨大な蛇頭と見紛うばかりの異様と化したトリテレイアの超常は逃げ惑うオウガに狙いを定める。
「今度は鬼ごっこね。いいわ」
追うのが鬼の本分ならば、地の果てまでも追い詰めましょう。
「ええ。今度こそ我々は勝たなければなりません。その為にも」
ゆらりとアイセンサを明滅させるトリテレイア。
終わりなき滅びを齎すなど、二度とさせぬ為にも。
それぞれの思いを胸に秘めて、鬼と騎士は戦場を駆け抜けた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
カタリナ・エスペランサ
●
絶望の国、ね
希望を必要とする者も居ないなら――全部終わらせて幕引きとしよう
敵が攻撃してくるなら《第六感+戦闘知識》で《見切り》《ダンス》の要領で回避。お茶会を気取るなら余興程度に設定くらいは合わせてあげるよ
【暁と共に歌う者】発動、お茶会のBGM代わりに響かせる《歌唱》は《目立たない》ように敵を《催眠術+誘惑+ハッキング》で蝕む《属性攻撃+精神攻撃+マヒ攻撃》さ
給仕された紅茶? オウガの出すものを口にはしないよ、フリだけだ
催眠が効いてるなら《コミュ力》で丸め込んで断頭台へ。
そうじゃないなら仕方ない、熱風で紅茶の給仕そのものを妨害・催眠は弱体化と割り切って力技で断頭台まで《吹き飛ばし》ていこう
ライカ・ネーベルラーベ
ふざけるな、だね
わたしはもう死なない!二度も殺されてたまるかァ!
「殺すのはわたしで、殺されるのはオマエ達だ!オマエ達の大好きなギロチンで首無し死体になるが良いさ!」
【半人半機の帰還兵】で怪力と電撃を活用
捕まえて痺れさせたアリスもどきを力づくで断頭台にセット
次々処刑していくパワー重視のスタイルで(別名:ゴリラ戦法)
戦うよ
「ほらほらほら!わたしを殺せるなら殺してみなよあはははははは!お仲間が死んじゃうよ!」
(麻痺させたアリスもどきを片手に、バイクで連行しながら)
のんびり紅茶なんて飲んでる場合じゃないんだよ
オマエ達が負けてるのは速度じゃなくてパワーなんだから
メアリー・ベスレム
ざんしゅ……なに?
まぁ、良いわ
元は哀れなアリスだったとしても
今は人喰いを楽しむオウガだもの
だったらメアリは殺すだけ
【凍てつく牙】で冷気をまとい
高速移動と【逃げ足】で捕まらないよう立ち回る
紅茶なんて楽しむ前に凍り付かせてあげるから
あら、ごめんなさい?
メアリ、お茶会のお作法なんて知らないもの!
それに今のあなた達が本当に欲しいのは
紅茶なんかじゃなく温かい血とお肉でしょう?
そう小馬鹿にしたように告げながら
自慢のお尻を叩いて【誘惑】してみせる
そのまま断頭台の近くへと誘い込んだら
足元凍らせ、転ばせて、凍り付かせて動けなくして
首を落としてあげるから
あら、残念
温かい血を流すのは、メアリじゃなくてあなたの方ね!
●ダンス・マカブル
「絶望の国、ね」
カタリナ・エスペランサ(閃風の舞手(ナフティ・フェザー)・f21100)は蔓延るオウガの群れを見て、無感動に空を仰ぐ。何と悲しく、悍ましいのだと。
「希望を必要とする者も居ないなら――全部終わらせて幕引きとしよう」
「うん。ふざけるな、だね」
その傍らで鋼鉄の内燃機関を轟かせ、ライカ・ネーベルラーベ(りゅうせいのねがい・f27508)が憤りを隠さない。己を苛む殺戮の記憶が――たとえ紛い物だとしても――生命の略取を是とするこの世界の有り様を、決して許しはしないのだ。
「わたしはもう死なない! 斬首だなんて……二度も殺されてたまるかァ!」
「ざんしゅ……なに?」
唸り声を上げるマシンを興味深げに眺めながら、メアリー・ベスレム(Rabid Rabbit・f24749)はくるりと回って居並ぶオウガを見やる。根こそぎ抜き取られ唯々残骸として転がる扉を一瞥し、首を傾げて口元を歪めた。
「まぁ、良いわ。元は哀れなアリスだったとしても、今は人喰いを楽しむオウガだもの」
ぴょん、と兎の様に前に跳び、背筋を伸ばして得物を抜く。
「だったらメアリは殺すだけ」
三者三様、血の様な紅茶を嗜みながら地鳴りのようなステップを響かせて、舞踏会は始まった。
「ほらほらほら! わたしを殺せるなら殺してみなよあはははははは! お仲間が死んじゃうよ!」
ライカは紅茶などものともせず、愛車に跨り戦場を蹂躙する。超常の呪いか――血反吐を撒き散らし、のったりとした動きのままで群がるオウガを片っ端から組み伏せて、手近な断頭台へと放り込む世紀末の狩猟者(ハンター)。
「どうしたの? もう終わりなの? そんなんでわたしの生命が獲れると思うなよぉぉぉぉッ!!!!!!」
オウガの呪いはライカの動きをたちまち鈍らせる。だがそれだけだ。世紀末の怪物マシンの力は些かの衰えも見せはしない。唸る内燃機関が赤熱化して、ゆったりとオウガを轢殺し、何が起こったのか分からない者どもを一人ずつ丁寧に屠っていく。幾ら速度を落とそうと力までは削ぎ落せない。身に纏った電撃がオウガを麻痺させていく度に、一つ、また一つと真っ赤な花が戦場に咲いた。
「あら、ごめんなさい? メアリ、お茶会のお作法なんて知らないもの!」
メアリは片手に紅茶カップを受け取りながら、足元をたちまち凍らせてオウガに自由を与えない。紅茶なんて楽しむ前に凍り付かせてあげる――そうすれば五分と五分、速度で負ける事などあり得ないのだ。滑ったオウガの行きつく先は断頭台。全く持って御し難い狂える兎のステップは、瞬く間に偽りの鬼たちを追い詰めていった。
「全く、悪戯好きのお嬢さん達ばかりだ」
そしてカタリナが空を舞い、全身より超常の――幻惑と劫火の不死鳥達を顕現させる。その歌声が戦場にたちまち響けば、カタリナの乱舞を後押しする様に炎の花を咲き乱らせた。
「そう思うだろう――なあ?」
雷と氷雪と劫火が乱舞する戦場――あたかもイリュージョンの様な幻想的な光景は、その実血塗れの舞踏会をひた隠しに、あるいは見せびらかす様に、派手な光と音を立てて絶望を彩った。
「それに今のあなた達が本当に欲しいのは、紅茶なんかじゃなく温かい血とお肉でしょう?」
蠱惑的に腰をくねらせて、アリスだったオウガの群れを挑発するメアリ。
『あア……欲しい、喰らわせろォ……!」
その艶めかしい姿に本能を刺激されたオウガ達が、狂った様にメアリの方へと殺到する。だが足元は超常で凍てつかされた氷雪の罠。
「のんびり紅茶なんて飲んでる場合じゃないんだよ。オマエ達が負けてるのは速度じゃなくてパワーなんだから!」
凍てついた大地を踏みしめて、雷を纏ったマシンが黒煙を上げてオウガを蹂躙する。世紀末の大地を駆け抜けた軍用マシンに、多少滑る程度の氷など効きはしない。それどころか足を奪われふらつくオウガを片っ端から掴み上げ、転がる断頭台へと放り込む姿は正に処刑ライダー……世紀末の生き残りに相応しい、生還者の生き様を見せつける。
「おっと、失礼。つい力が有り余って……」
そしてその上空、辛くも逃げだしたオウガを炎が包み込む。カタリナの舞いが、超常が、たたらを踏んだオウガに合わせる様に手を取って、社交ダンスの様に流れる動きで彼彼女らを断頭台へと導くのだ。恐るべきショータイムは終始、彼女達の終わり無い輪舞に席巻されて、オウガ達には最早成す術も無い。
「悪気は無かったんだ、許しておくれ」
ステップを踏む様に弾き飛ばされたオウガ達が、カタリナの導きで続々と断頭台へ押し流される。
「はははははは! 凄いよこのDonner! 流石世紀末の二輪車!」
己が内なる雷の心臓が轟いて、ライカの剛腕がオウガ達をにべも無く投げ飛ばす。
「あら、残念――温かい血を流すのは、メアリじゃなくてあなたの方ね!」
そして流れる血の大河をうっとりと眺めて――真っ赤に染まる大地に哄笑を上げるメアリが、今際の際のオウガへ断絶の言葉を投げかけた。
そうして天使と竜と鬼の輪舞は続く。一切合切の絶望が朽ち果てるまで、何度も、何度も――。
大成功
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アルトリウス・セレスタイト
首を置いていけとは言わんのだが
まあ、結果は然程変わらんな
敵行動は『絶理』『刻真』で自身を異なる時間へ置き影響を回避
此方の全行動は『刻真』で無限加速し目標が存在する時間へ
必要魔力は『超克』で“世界の外”から汲み上げる
破界で掃討
対象は戦域のオブリビオン及びその全行動
それ以外は「障害」故に無視され影響皆無
高速詠唱に多重詠唱を重ね『再帰』で無限循環
瞬刻で天を覆う数となる魔弾に『解放』で全力の魔力を注ぎ干渉力を最大化
更に『天冥』で因果を歪め「全目標に着弾した状態で」斉射
目標消滅まで行程を循環させ殲滅を図る
首が飛ぶか存在が消えるか
何れが慈悲深いのだろうな
●泡沫
『首、クビィィィィッ!!!!』
「首を置いていけとは言わんのだが――まあ、結果は然程変わらんな」
アルトリウス・セレスタイト(忘却者・f01410)は涼しげな表情のまま、暴れ狂うオウガを一瞥する。血と炎とイオン臭が鼻について――無理も無い。あれほどの戦いの後だ。この絶望の国は新たな絶望が上書かれたのだ。最早これまでの常識が通じる由も無い。故に。
「ふむ――ならば、いつも通りに」
瞬間、青白い光が渦を巻いてアルトリウスの全身から立ち昇る。それは炎のような氷の様な雷の様な――先の戦いで見えたそれぞれの様であり、そのどれとも違う。
「ここが、行き止まりだ」
そして、世界が反転した。
アルトリウスの超常自体は対象を消滅させるだけの至ってシンプルなもの。だが断頭台の魔力も借りずに――代わって、この男は世界の理を利用して、埒外の『原理』を以って猟兵を遂行する。それは何処の、どんな世界であろうと決して変わらない。
『首……クビィ?』
アルトリウスの首が、無い。厳密にいえばこの世界のオウガには見えないのだ。世界の理から身を外したアルトリウスは、その外側から無尽蔵の力を汲み上げて、断頭台の代わりに破滅の光を与え続ける。
「首は落とさない。存在ごと落としてみせよう」
絶対の自信か、淡々と事を成すアルトリウスの言と共に、無数の青白い光が天より炸裂し――途端、逃げるオウガの頭上を覆って全てを飲み込んだ。
『ああ……嗚呼……』
オウガ達が最後に見たモノ。朽ちた扉、辿り着けなかった真実、アリスだった過去――そんな骸と化した己の記憶が止めどなく溢れ、己自身の存在を掻き消していったのだ。
「首が飛ぶか存在が消えるか……何れが慈悲深いのだろうな」
痛みは一瞬。見える景色が違う、などという事は分からない。されど絶命の刹那、己を僅かでも取り戻せたことは果たして救いだったのだろうか。
それを知る者達は皆、光と共に消えていった。
後に残るは、未来への道標たる光のみ。
大成功
🔵🔵🔵
メンカル・プルモーサ
●
ふむ、見るからに物騒な断頭台があちらこちらに……
これにどうにか誘導をすればいい、と言うことか……
やりようはいくらかあれど、ふむ……
【支え能わぬ絆の手】を地面の一部、具体的にはアリスたちから断頭台へ、道になるように発動……
アリス達には滑って断頭台へと移動してもらうことにしよう……
紅茶を注ぐにも動こうとしたら滑るからね……
もしくは逆に、断頭台を滑らせてアリスの首にシュートてもいいね……
摩擦掛かり具合をうまい具合にコントロールすればある程度制御は効くだろう……
ここらへんは【数理導く知性の眼】での補助も考慮に入れるか…
それにしても……本当に多いな、断頭台…
箒星・仄々
●
堕ちてしまわれる前に
お助けしたかったです
どれ程の苦しみ悲しみがあったことか…
お可哀想に
人喰鬼の軛からの解放が
せめてもの助けでしょうか
海へお還ししましょう
UCで摩擦抵抗操作し
高速滑走
移動しながら時々身を低くします
空気抵抗を減じている
…とみせかけ地面をぺろ
所々つるつるスペースを創ります
オウガさん達から逃げたり
或いは追いながら件の場所へ誘導
倒れた先は断頭台です、はい
敵が混乱しだしたら
華麗なスケーティングで懐に潜り込み
直接体をぺろ
滑りは止まりません
断頭台にぶつかる、その時まで
優美なドリフト&魔法の残像分身で回避
因みに紅茶を手に
楽しみながら滑ります
オウガ
間に合わず御免なさい
事後に静かな眠り願う鎮魂曲
●アリスだった君達へ
「堕ちてしまわれる前にお助けしたかったです」
光を浴びて消えゆくオウガ達。だが一部、残った手勢がゆっくりと戦場から離れつつあった。その姿を見て箒星・仄々(ケットシーのシンフォニア・f07689)は悲しそうに吐息を漏らす。
「どれ程の苦しみ悲しみがあったことか……お可哀想に」
きっと、彼彼女達は以前も、こうして逃げようとしたのだろう。それでも、辿り着けなかったが故に――オウガとなった。元よりこんな所へと召喚されてしまうのだから、逃げ場など無かったにしてもだ。
「ふむ、見るからに物騒な断頭台があちらこちらに……」
転がる断頭台をちらりと見やり、メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は静かに思案する。敵の数もそれ程ではない。背中を曲げた給仕は頭数に入れなくても良いだろう。ならば、残るオウガだけを始末すればいい。
「これにどうにか誘導をすればいい、と言うことか……」
幸い断頭台は四方の至る所に散らばっている。奴等の超常も解析済み。行動速度が鈍くなるのであれば、それの影響を最小化し適応すれば難しくは無いか、と戦術を構築。
「人喰鬼の軛からの解放がせめてもの助けでしょうか。ならば――」
足元で仄々が悲し気に声を漏らして。解放――断頭台がそのメタファーという訳でもあるまいに、とメンカルが表情を変えずに思考を追加する。ならば尚更、必ずあれで落としてやらねばなるまいと。
「海へ、お還ししましょう」
仄々の決意表明にこくりと頷くメンカル。絶望に決着をつける時が来たのだ。
「やりようはいくらかあれど、ふむ……」
敵の数、及びそこから断頭台へのルートを算定――解析端末『アルゴスの眼』に映し出された戦術パターンはどれも甲乙つけがたい。だがこの場合、イレギュラーへの対応がしやすい手段、つまり力技より小細工の方が有用であろうとメンカルは判断した。
「滑って断頭台へと移動してもらうことにしよう。紅茶を注ぐにも動こうとしたら滑るからね……」
「奇遇ですね。私も同じ事を……」
その提案はたまたま、仄々と一緒だった。地面を滑らせ彼彼女らを誘導し首を落とす。至ってシンプルだがそれ故に手数が多い方が良い――直ちに役割分担し、各々が持ち場(と言っても左右に分かれる程度だが)についてオウガを待ち受ける。
「うん。それじゃこっちへ誘導を。あとは纏めて……」
メンカルが指し示した誘導ルートは至ってシンプル。紅茶の給仕による速度低下を踏まえた上で、オウガを誘導し勢いそのまま断頭台へと導くだけ。その際足元を滑らせるタイミングを違えぬ様、時期はしっかりと見定めなければならない。
「では参りましょう。せめてオウガの魂が救われる事を祈って」
竪琴を抱えた仄々が一歩、自らの足元を超常で滑らせて滑走する。それと別れる様にメンカルも、静かに自らの身を滑らせた。
「それにしても……本当に多いな、断頭台……」
どうして、こんなに必要だったのだろう。もしかしたらこの断頭台自体がアリスの分だけあるのだろうか。だとしたら――いや、今はそんな事を考えている場合では無い。仄々に指示した分、自身の計算はまだ終わっていない。実地でどうにか出来るだろうと踏んだメンカルは、種々の端末を器用に弄りながら風を切る。途端、その姿に気付いたオウガが一人、また二人とメンカルの方へ……ここまでは良い。
「後は……うん、あの区画かな」
本来であればもっと高速であろう自身の動きも、紅茶の呪いで幾何かその速度を落としている。だがその分精緻な挙動が可能――速度も決して足りない訳じゃない。紅茶を飲みながら殺到するオウガの群れをわざとらしく煽りながら、メンカルは対象を攻略ポイントへ誘い出した。
「後は……そう、こっち」
途端、更に摩擦係数が変動した大地へ踏ん張る様に脚を踏み出したオウガが、その勢い余って続々と断頭台へ飛び込んでいく。踏み込みが悪かった。後ずさるという事が出来れば、こうも見事に罠にはまる事も無かっただろう。
「悪いけど……ここで、お仕舞い」
そしてアリスだった者達は再び、その魂を骸の海へと返していった。
「滑りは止まりません。断頭台にぶつかる、その時まで」
一方、仄々も見事に大地を滑りながら、殺到するオウガの追撃を振り切って拵えた罠へと飛び込ませる。小柄な体躯でオウガの間をすり抜けながら、それを追うオウガを断頭台へ叩き込む。
「紅茶……冷めない様に」
片手にカップを持ちながら優雅に滑る様はまさに妖精の姿。時折オウガ自身の摩擦も弄れば、立ちどころに骸の海への直通路が開通する。
「倒れた先は断頭台です、はい」
哀悼の意を隠さずに容赦はしない。滑らかに風を切るスピードは仄々の心を高揚させる。アンビバレンツだろう――だが、そうしなければ迫る危機を越えられないのであれば、手をこまねく事など出来ようか。
「だから……せめて、魂に安らぎを」
全てが終わった時、仄々が奏でる鎮魂曲が辺りに染み渡った。静かな眠りを願う調べが響き、扉めいた迷宮の残滓も消えて断頭台だけが残される。
「これが……オウガの、アリス達がいた唯一の印。だとしたら」
少し、悲しいかもしれないとメンカルが思案した。これ自身が扉の先だったとしたら、その魂は最初から定められた絶望に飛び込むしかなかったのだろうか。
そして倒すべき敵はこの先にいる――アリスラビリンスの改竄を企む猟書家を倒さない限り、この世界に本当の平和はもたらされない。魂の安らぎを祈りながら、猟兵達は次なる戦場へと足を向けた。
大成功
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