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Sunset

#グリードオーシャン #お祭り2020 #夏休み

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#夏休み


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●夏休み
「夏の思い出作りは順調か?」

 ミザール・クローヴン(星踏武曲・f22430)は集まった猟兵達にそう切り出した。
 世界によっては季節が感じにくい場所もあるだろうが、多世界を股にかける猟兵にはさほど関係はない。
 その上、現在はグリモア猟兵達が提案する『夏休み』を満喫する者も多いと聞いていた。
 8月も半分が過ぎて気温は日々高まれど、日付だけは夏の終わりも近付いていた現在。日記やアルバムへと残した特別は増えていることだろう。

「……まあ、今更な話だがな。おれ様も少し海にいこうと思ったんだ」

 彼がこれから行く島の西側には景色が美しい海岸があるのだという。
 洒落た店があるわけでも、特別有名な観光スポットでもない。
 切り立った崖と、防風林とも言えない樹の群れに囲まれただけの海岸。
 そこで夕陽を見てくるだけの、寂しい旅だ。

「……おれ様ひとりでもいいけど、あの場所はちょっと、他のやつにも知ってほしくてな」

 だから、どうだ?
 その誘いに心惹かれて首を縦に振ると、少年が持つ白いグリモアが優しく世界への道を繋いだ。

●黄昏
 そこは、ただ美しかった。
 空も、水面も、森も、砂浜も、皆一様に太陽が灼いていた。
 照り返す海は琥珀の飴色、砂は熟れた柑橘の鮮やかさ。
 揺れる木々は炎の如く揺らめいて、晒された岩肌には煉瓦の熱。
 ただ一時、西の果てへと太陽が沈み行くこの一瞬だけ世界は焼き尽くされていた。

 あなたもまた、その景色の中にいる。
 真昼の陽光のように肌を刺す熱はなく、けれど視界の総てを染め上げる彩へと融け落ちる。
 息を呑むほどに、声を失うほどに目を奪われる。
 それは、あなたにとって在り来たりな夕焼けなのかもしれない。
 それは、あなたにとって特別な夕暮れなのかもしれない。

 ある夏の日の黄昏に、あなただけが語れる物語がそっと紡がれようとしていた。


日照
 ごきげんよう。日照です。
 十七作目は少人数での思い出作りです。

●シナリオの流れ
 プレイング募集時期につきましては、恐れ入りますがマスターページをご確認ください。

 今回はただ自分が楽しむため、或いは誰かと語らうためのシナリオとなっております。
 一般人も厄介な敵もいないので余計なトラブルに巻き込まれることもありません。
 夕陽に染められる海岸で思うようにお過ごしください。
 ご指名がありましたら今回の案内人であるミザールとお話もできます。
 何もなければ皆様の邪魔にならない場所へと移動しながら夕陽を楽しむので、帰還まで放置してくださって構いません。

●島について
 元はサクラミラージュに存在していたらしき小さな島です。
 今回向かう西の海岸近くは崖や急な坂が多いため人気はありませんが、別の場所にはそれなりに栄えた港町があります。
 あくまで今回は海が主体の話のため、プレイングに明記されても町での描写は反映されませんのでご注意下さい。

●あわせプレイングについて
 ご検討の場合は迷子防止のため、お手数ではございますが【グループ名】か(お相手様のID)を明記くださいますようお願い申し上げます。

 では、良き猟兵ライフを。
 皆様のプレイング、お待ちしております。
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第1章 日常 『猟兵達の夏休み』

POW   :    海で思いっきり遊ぶ

SPD   :    釣りや素潜りを楽しむ

WIZ   :    砂浜でセンスを発揮する

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

旭・まどか
沈み征く陽が最期の悪足掻きとばかりにひかりを伸ばし
世界の凡てがその彩に――たそかれいろに、染まる時間

日中肌を焼き付くさんばかりに尖っていた物は成りを失せ
此処にあるのは、たたただ一日の終わりを大人しく受け入れるだけの恒星

ただの、星
ただ其処に在るだけのもの
自然の摂理の中で己が意思など持たず
ただ、そう在るがままに在るだけのもの

なのに
それなのに

そのいろを見ていると、胸が痛くなるのは何故だろう

あのいろに染まった世界で相見えた“お前”を
思い出すから、だろうか

ねぇ、お前のせいだよ
お前があの時、ぼくの前に現れたから

ぼくはこんなにも、この時間が、このいろが
苦手になってしまった



●明を別つ
 在り来たりな光景だ。
 沈み征く陽が最期の悪足掻きとばかりにひかりを伸ばし、世界の凡てがその彩に――たそかれいろに、染まる時間。
 日中肌を焼き付くさんばかりに尖っていた物は成りを失せ、此処にあるのは、たたただ一日の終わりを大人しく受け入れるだけの恒星。

(――そう。あれはただの、星)

 西の彼方、旭・まどか(MementoMori・f18469)の目に映るのはただそれだけのものだった。別に美しく在ろうとしているわけでもなく、誰かにそう望まれたわけでもない。自然の摂理の中で己が意思など持たず、ただそう在るべくして在るもの。

 なのに、と仄かに伏せた瞼の下で薔薇色が揺れる。
 太陽が見える世界でならどこでだって眺められるはずの光景だ。別段特別ではないはずの茜色だ。どんな世界でも一様に、太陽はこの色を生み出すはずなのだ。
 それなのに、そのいろを見ていると、胸が痛くなるのは何故だろう。
 最初は気のせいだと思うほど僅かな、細く小さな針でも誤って呑んでしまったような感覚だった。一本、また一本。日に日に増してゆく痛みは決して深く刺さることはなく、終ぞ千本。まどかの内に確かな傷を作ってゆく。
 これはなんだろう。
 感慨?――否、そんな温い感情ではない。此れはもっと冷たく呪わしい。
 郷愁?――否、そんな古い感傷ではない。此れはもっと新しく生々しい。
 丁寧にひとつずつ針の行方を手繰ってゆけば、ちりり、とひとつにたどり着く。此処ではない場所、あのいろに染まった世界で相見えた、ひとり。

「――   」

 透明に掠れた声で名を呼んでいた。その名は彼にのみ意味を為す、彼だけが憶えている名だ。風と共に去り、風と共に在る、唯一の名。
 あの日と同じように呼んでいた。同じ色をしているはずの温い風がまどかの頬を撫でていく。けれど、何もない。黄昏は応えない。夕陽の中に落ちる影は遠くどこかへ渡り征く鳥のそれだけだ。

 嗚呼。
 このいろがこんなにも胸を痛くするのは、“お前”を、思い出すから、だろうか。

 奇妙な話だ。彼がひとり逝ったのはこんな燃えるようないろではない。昏く、静かで何処までも深い青だったのに。
 だからといって記憶が改竄されたわけではない。確かに、“彼”はよく似たいろの中にいた。鮮明に、明確に、黄昏の中に紡がれた影法師として。

(――ねぇ、お前のせいだよ。お前があの時、ぼくの前に現れたから)

 まどかは理由を押し付ける。
 喚ばれて赴いたか、乞われて行きついたか、答えは未だに出ていない。だが、あの場所で彼の名を呼んだのは紛れもなく自分だ。“彼”を望んだのは他の誰でもない、自分だ。
 掻き毟りたくなる胸の痛みが理由を理想(エゴ)と重ねた。夕暮れの湖で“彼”の吐いた怨嗟を其の身に受けたあの時のように、彼ではなくまどか自身がそうあればと望んだ結果に塗り替える。
 痛みは消えない、消えるはずがない。この景色へ向けていた感情の名をまどかは己へと焼き付けてしまった。

(ぼくはこんなにも、この時間が、このいろが――)

 ざぁん、と波の音がまどかの言葉を掻き消していった。
 太陽が沈む。
 またひとりで、沈んで往く。

大成功 🔵​🔵​🔵​

朧・紅
美しい情景の中
独り佇む少女

長く重く息を吐く

その瞳は金に耀いて
忌々し気に歪む

何考えてんダカ

零しては見たが察しはつく
楽しめ、と
コレを、俺に

海です!ぅきゃ~♪と波と戯れて、魚追いかけ、ずぶ濡れて笑っていたアレの目論見
一頻り遊んだ所で
それじゃ、今度は朧ですよぅ
と抜かして深層深くへ潜っていった…コレでは思念も届くまい

再度歎息

ッたく何のために…
自身の想いを飲み込んで瞳を伏せ皴を刻む

無視すりャ同じ事を繰り返すとも思えば
海へと入り深く沈み

殺す

それは殺意持つ影竜
万全なるマタギと銃の少女
カメr…アレはいいヤ

より強い「もしも」を脳内で殺して殺して殺す
息の続く限り

これで
海を楽しんだ事になんダロ


…俺にャコレだけでイイ



●身を焦がす
 真昼の突き刺すような陽射しも緩まり、海は穏やか。
 聞こえるのは細波、葉擦れ、踏み締める砂浜に足跡が刻まれる音。
 そこにいたのはひとりの少女だ。
 風にふわりと靡く洋紅色のツインテールと薄いスカート。波打ち際まで近付いた足先飛沫がかかり、愛らしく染めた爪が微かに濡れた。
 開いた瞳は陽に焼かれ尚眩く輝く夕映えの黄金。朧・紅(朧と紅・f01176)はこの景色に美しさを感じていなかった。 長く、重く、吐き出した呼気は風に溶け、「何考えてんダカ」と愚痴を零す。
 察しはつく。自分が戦場でもないこんな辺鄙な浜辺へ引きずり出された理由は今深層へと潜りこんだもうひとり――紅の仕業だ。
 つい先程まで無邪気に波と戯れて、魚追いかけ、ずぶ濡れて笑っていたあどけない少女は、一頻り遊ぶと承諾もなく勝手に自分と入れ替わった。あっという間の出来事だった。状況を把握する間に紅は思念を飛ばしても届かない心の底へと隠れてしまったのだ。
 夕暮れの砂浜に残されたひとり――朧は嘆息する。

(楽しめ、と?コレを、俺に?)

 今度は朧ですよぅ、と呑気に笑ったもうひとりを浮かべれば幾らでも溜息が溢れてきた。何のために態々引っ込んでやってたと?と声に出そうになったのを懸命に飲み込んで、現在を否定するかのように瞼を伏せて眉間へと強く皴を刻む。
 だからといってこのまま現状を拒み続けても千日手。頑固なところは彼方も此方もよく似ていた。薄く瞼を持ち上げると、一歩。また一歩。朧は赤く染まった海へと歩み寄り、とぷんと静かな波紋を残して足の届かない場所へと沈んでいく。

 余分な音がなくなった世界は華奢な身体を深みへ引き摺り込んでいく。溜め込んだ空気が口の端からこぽこぽと溢れていく。その刹那。

――殺す。

 陽に満たされた緋の中で、冷たく絡み付く波の感触に抵抗さえせず、朧は回想する。幾度となく潜り抜けた殺し合い。殺し逢い。刃を交わした相手は十の指では数え切れず、ひとつひとつが心地よく痺れるような苦みと傷を残してくれた。
 それは時に殺意持つ影の竜だった。恨み嫉みを泣き喚くそれを白昼夢ごとを引き裂いてやった。
 それは時に万全なるマタギだった。満身創痍、されど狂暴。渾身をぶつけ合い削ぎ合い、仕留めた。
 それは時に銃を携えた少女だった。深く貫いた手に残った感触が今でもありありと蘇る。
 それは時にカメ……省略。アレのことはいいヤと切り捨てる。

 より強い「もしも」を脳内で思い返しては、殺して、殺して、殺す。あの時と違う殺し方ならどんな表情をしてくれたか、どう呻いてくれたか、どんな傷を負った?
 ああそうだ、決して自分が傷つかないなどということはない。朧が求めるのは強敵。より強く、より血の昂る命の奪い合いだ。傷付け合い、抉り合い、互いに互いを刻み込む。
 薪を焼べるように空想し、己の内側へ殺意を燃やす。繰り返し、繰り返し、息が続く限り繰り返した。

 そうして、酸素が絶える。
 ゆっくりと浮上した朧は水面に顔を出して、空っぽになりかけの肺へと空気を取り込む。深まる宵が内を満たすとしんと冷たく、少しばかり高くなった波と合わせて朧から熱を奪っていった。
 届くか届かないか、潜ったままのもうひとりへと呟きを落とす。

「これで海を楽しんだ事になんダロ」

 ゆっくりと見開いた眼が捉えた海はどこまでも赤く、赤く燃えていた。
 どこか懐かしく、この身さえも焼かれているような心地がしていた。

 嗚呼。
 俺にャコレだけでイイ。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年08月31日


挿絵イラスト