1
迷宮災厄戦⑭~MAKURAWARS

#アリスラビリンス #戦争 #迷宮災厄戦

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#アリスラビリンス
🔒
#戦争
🔒
#迷宮災厄戦


0




●パジャマパーティーですか?
『アナタノ初恋イツデスカァァァァァッ!!』
 無闇矢鱈に気合の入った声の恋バナの定番質問が響いた直後、ブォンッと空気を引き裂く音を立てて、枕がすっ飛んでいく。
『――出来タ、出来タゾ』
 枕を投げた拳をぐっと握り締め、枕を投げた巨人――トランプの巨人、は他のトランプの巨人を振り返った。
『出来タゾ! 眠クナラズニ枕投ゲガ!』
 その声に、うつらうつらしていたトランプの巨人たちもハッと目を覚ます。
『浴衣ト枕。ソレダケデハ足リナカッタモノガワカッタ。答エハ、初メカラ俺達ノ胸ニアッタノダ』
 枕を投げたトランプの巨人は、自分の胸にあるトランプ4種のスートの中の、ハートを指で示す。
『恋バナダ!』
『ソウカ……パジャマパーティーノ定番ト聞イタ事ガアルゾ』
『ナルホド。枕ヲ投ゲナガラノ恋バナ。ツマリ、ピロートークト言ウワケカ』
 何言ってんだ、この巨人たち。
 そうお思いかもしれないが、当のトランプの巨人達は、大真面目である。
 彼らは本気で、(自称)恋バナ付きで枕投げをする気でいるのだ。

●パジャマパーティーですよ?
 おやすみなさいの国。
 そこは、とってもふわふわな夢の国である。
 そこでは、猟兵もオウガも強烈な睡魔に襲われ、まともに戦う事が出来ない。
 だが、何故かパジャマパーティーを楽しんでいる間だけは、睡魔に襲われずに行動することが出来るのだ。
 そのことを知っているオウガ達は、当然の様に、オウガなりにパジャマパーティーの準備を整え、猟兵達を迎え撃とうとしている。
「というわけで、浴衣着て枕構えて、大真面目で恋バナする気で待ち構えてるから。トランプの巨人が」
 ルシル・フューラー(ノーザンエルフ・f03676)が集まった猟兵達に伝えたそれが、トランプの巨人達が整えたパジャマパーティーの準備と言う事である。
 トランプの巨人は、理不尽な「掟」を叫んでアリスを追う特性があると言う。
 今回は、恋バナ付き枕投げはパジャマパーティー、というのが、理不尽な『掟』に相当する感じに働いているのではないかと言う事だ。
 それでいいのか、パジャマパーティー。
「恋バナ――当のトランプの巨人達はそう思い込んでいるもので、パジャマパーティーっぽさを稼いでるみたいだね」
 稼げるもんなのだろうか。
「何か無駄に第六感が働いて、色んな恋バナ飛んでくるっぽい」
 本当に何だその無駄な技能。
「まあ、真面目に答える必要はないよ。だって恋バナと言いつつ、巨人どもが一方的に枕投げつつ質問叫んでくるだけだし。聞き返しても、あいつら答えられないし」
 まあ、トランプの巨人に、初恋も何もないだろうしな。
「しかも、枕投げながら巨人の剣振り下ろしたり、バインドカードぶん投げたりしてくる気満々だから」
 それでいいのか、枕投げ。
「だから、これはね」
 ルシルは枕を猟兵達に配りながら、至極真顔で告げてくる。
「枕投げは――戦争なんだよ」
 まあ、戦争だしな。


泰月
 泰月(たいげつ)です。
 目を通して頂き、ありがとうございます。

 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、『迷宮災厄戦』の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
 迷宮災厄戦⑭『おやすみなさいの国』のシナリオです。

 枕投げです。
 枕投げはパジャマパーティーです。

 パジャマパーティーしてないと眠くて眠くて戦えない世界で、パジャマパーティーと言う名の枕投げ大会に、勝利してください。
 浴衣っぽいの着て枕持っていれば、枕投げの体は取れます。
 このシナリオでは、取れるんです!
 と言うわけで、服装は浴衣推奨です。ジャージも良いですね。枕投げだし。
 まあ、枕投げ終わっても寝る気ないだろ、みたいな恰好してなければ大丈夫。
 特に指定が無ければ、勝手に浴衣になります。

 なおトランプの巨人達がぶつけてくる恋バナ質問(自称)ですが、無駄に第六感が働くと言うのは要するに『プレイングで質問指定してOKです、拾うんで』ってことです。
 特に指定が無ければOP冒頭の、
『アナタノ初恋イツデスカァァァァァッ!!』
 が飛んできます。

 プレイングは8/8(土)8:30~の受付とさせて頂きます。
 締切は取り敢えず、8/9(日)正午頃までは受付ます。あとは人数見つつ、ツイッター、マスターページで告知の予定です。

 ではでは、よろしければご参加下さい。
155




第1章 集団戦 『トランプの巨人』

POW   :    巨人の剣
単純で重い【剣】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD   :    トランプ兵団
レベル×1体の、【胴体になっているトランプのカード】に1と刻印された戦闘用【トランプ兵】を召喚する。合体させると数字が合計され強くなる。
WIZ   :    バインドカード
【召喚した巨大なトランプのカード】が命中した対象を捕縛し、ユーベルコードを封じる。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。

イラスト:はるまき

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

宇宙空間対応型・普通乗用車
なるほどコイバナ。
…いいだろう、話してやるぜ。
あれは5年前、まだオレが誕生して1年も経っていないころの話だ。
あの頃はまだオレも世の中の酸いも甘いも知らない若造でな…
そんなオレの教育役としてオレを守り導いてくれた、
宇宙空間非対応の普通乗用車の先輩が1台いたんだ。
オレは彼女に言われるがまま人を運び、道を走り、
ヘッドライトで夜を照らしてはカーナビで行く先を示していた。
そうして過ごすうちに

はい終了ー!
ここから先が聞きたければてめぇのコイバナを先に聞かせろオラァ!
言わない奴は【瞬速展開カタパルト】で枕ごとオレが飛んでって枕プレスしちまうぞオラァ!
勿論言った奴は続きを聞かせた上で枕プレスだがヒャハハハァ!



●車だろうが浴衣は着てもらいます(どう着させるか迷った)
 宇宙空間対応型・普通乗用車(スペースセダン・f27614)は乗用車である。
 スペースシップワールド生まれのイケメン車両を自負する、乗用車型ウォーマシン。
 一見、良くあるセダンタイプの車にしか見えないが、その名の通り、宇宙空間でも走る車であり、陸海空、あらゆる環境に対応し、どんな道でも――例え道が無かろうと、快適な乗り心地を提供することをモットーとしている。
 つまり何が言いたいかと言うと、だ。

「邪魔するぜ」
 お布団がびっしりと敷き詰められた空間に、浴衣姿の他の猟兵達と共に、普通乗用車も平然と入って来ると言う事である。
『……ハ?』
『車? 車ナンデ?』
 そのインパクトに、トランプの巨人達も言葉を失ったり混乱に陥ったりする。
 だが、オウガがオブリビオンであり、普通乗用車が猟兵である以上、互いに出会えばどれだけ外見に差異があろうと、オブリビオンは猟兵が敵だと気づくものだ。
『アナタノ初恋イツデスカァァァァァッ!!』
「おっと」
 トランプの巨人が恋バナクエスチョンと共にぶん投げてきた枕を、普通乗用車はスムーズな車線変更にも似た動きで避けてみせる。
『ナニ!?』
『眠クナッテナイダト!?』
 驚くトランプの巨人達だが、普通乗用車の車内をよく見れば運転席には浴衣が被せられていた。更にボンネットに乗っている枕を固定しているのは、浴衣の帯である。
 つまり、浴衣、着てる。
「コイバナか。……いいだろう、話してやるぜ」
 驚くトランプの巨人達を後目に、普通乗用車は過去を懐かしむように話始めた。
『意外ト、若イ!』
『マサニ初恋!』
「あの頃はまだオレも世の中の酸いも甘いも知らない若造でな……」
 ざわつくトランプの巨人達を無視して、普通乗用車は語り続ける。
「そんなオレの教育役としてオレを守り導いてくれた、宇宙空間非対応の普通乗用車の先輩が1台いたんだ。あの頃、オレは彼女に言われるがまま人を運び、道を走り、ヘッドライトで夜を照らしてはカーナビで行く先を示していた。そして――」
『ソシテ!?』
『ソノアトドウシタ!?』
「はい終了ー!」
 めっちゃ話に食い付いてくるトランプの巨人達に、普通乗用車は無情にも、そこで話をぶった切って終わりだと告げた。
『ココデ!?』
『ソリャナイダロー!』
「うるせえ! ここから先が聞きたければてめぇのコイバナを先に聞かせろオラァ! それがコイバナってもんだろうが!」
 続きをせがむトランプの巨人達を、普通乗用車が一蹴する。
『オレ達ノ恋バナダト?』
『ソンナモノハ無イ!』
 まあ、オウガに初恋も何も、ねぇ?
「――じゃあこうするしかねえなぁ!」
 今までアイドリングしていた普通乗用車のエンジンが、フル回転し始める。

 ――滑走路展開車体固定枕固定射角調整風力測定磁力充填重力演算その他枕含諸々影響確認射角補正車体解放射出開始。

 普通乗用車の車外スピーカーが捲くし立てた機械音声は、普通乗用車自身にも聞き取れていなかった。当然だ。言い終わるまで、100ミリ秒もないのだから。
 だが、やった事はわかる。
 車の発進準備と言うより、砲弾の発射準備の様なプロセス。
「枕ごとオレが飛んでって枕プレスしちまうぞオラァ!」
 瞬速展開カタパルト。
 エンジン音すら置き去りに飛び出した普通乗用車は、宣言通りにトランプの巨人を枕プレスにしていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リュカ・エンキアンサス
セロお兄さんf06061と

浴衣で…気合の入った恋バナとやらを聞きに行く
初恋?初恋はえーっと、あれは俺が小学生のころ、夏休みに親戚のいる離島に預けられた時の話で…、
え?ああうん
長く旅してると、いろんな話を聞くんだ
因みにほかには魔法学園偏と倍返し立身出世編があるんだけど、どっちがいい?
ていうか次は、お兄さんの番だよね
期待してます

飛んでくる枕や攻撃を絶望の福音でよけて合間に撃つ
あいつらも枕投げてる間は、本腰いれてせめられないだろうからその間に数を減らせれば

誰でも大嫌いよりは、大好き、でいいんじゃない
変えなきゃいけないものなの?
人間だって、そっちのが好かれると思うし
(また難しいこと考えてるなあって顔


セロ・アルコイリス
リュカ(f02586)と
はい浴衣で
これ涼しくていいですよね

枕を避けつつ
リュカの話を聞いて――首を傾げる
ん、んん?
リュカ、あんたに『小学生』って……?
いやちょいと倍返し立身出世編の初恋気になるなぁ!
それ聞かせてくださいよ

え、おれ?
あると思います? 初恋なんざ
あ、でも恋バナってのは別に初恋に限ったことじゃねーですよ
ほらえーと『スキナタイプハー?』

ぶっちゃけね、おれは『誰でも大好き』なんですよ
好かれなきゃ捨てられる人形の性ですよね
いつか変わる日が来るんですかね
あっはは、
……確かにね!
ただそれじゃ、『恋』にゃならなくねーです?

トランプ兵にゃ合体される前に各個撃破
ねぇあんたらもするんですよね?



●空想の恋と、識らない恋
 一方その頃。
「ねえ、セロお兄さん。車が喋ってた」
「喋ってましたね」
 車が喋ってトランプの巨人達が困惑するのを横目に眺めながら、リュカ・エンキアンサス(蒼炎の・f02586)とセロ・アルコイリス(花盗人・f06061)は共に浴衣姿で布団の上を歩いていた。
「俺のアルビレオも、その内、喋ったりするのかな」
「リュカ、喋って欲しいんですか?」
「……そうでもないかな」
 あれがウォーマシンなのだろうと言う事はリュカもセロも、予想はついている。
 ついていて敢えて、取り留めのない話を布団の上ですると言うのも、パジャマ――と言うか浴衣パーティー感があると言うものであろう。
『アナタタチノ初恋イツデスカァァァァァッ!!』
 そんな2人にも、トランプの巨人が枕ぶん投げてくる。
「おっと」
「いきなりですかい」
 リュカは右へ、セロは左へ。不意打ち気味に飛んできた枕だが、どちらも顔色ひとつ変えずに一歩動いただけで危なげなく避けてみせる。
 距離が空いた2人の間を、ブォンッと枕が通り過ぎていった。
「浴衣、涼しいし動き易さもあっていいもんですよね」
「着る人次第じゃない? あっちは、全然動き易そうに見えないよ」
 浴衣の袖を摘まんでしげしげと見降ろすセロに、リュカが視線でトランプの巨人達を示す。そう言えば奴らも、どこぞの温泉旅館の様な浴衣を纏っている。
「……何であれで枕投げられたんですかね」
 思わずセロが首を傾げる程に、トランプの巨人の身体と浴衣のサイズが全然あっていなくて、浴衣はミチミチになっていた。
「さあ? で、初恋?」
『ソウダ、初恋ダ!』
『恋バナト言エバ初恋!』
 浴衣の話を切り上げ向き直ったリュカに、トランプの巨人達が、気合たっぷりに初恋の話をしろと吠えてくる。

「初恋はえーっと、あれは俺が小学生の頃。丁度今くらいの暑い時期、夏休みに親戚のいる離島に預けられた時の話で、近所のお姉さんと……」

「ん、んん?」
 トランプの巨人達の強めの圧をさらりと流して、滔々と語り出したリュカの横で、セロが首を傾げた。
 他人の過去を全て知ると言うのは、どれだけ関係が深くとも難しいものだ。
 セロとて、リュカの過去の全てを知っているわけではないだろう。
 だが、リュカが戦場を渡り歩いて、戦いの人生を生き抜いて育ってきた少年である事は知っている。そんなリュカが――小学生?
「ちょいちょい、リュカ、あんたに『小学生』って……?」
「え? ああうん。俺の話じゃないよ。長く旅してると、いろんな話を聞くんだ」
 眉根を寄せたセロに、リュカがバレたか、と目で言いながらと返す。
「因みにほかには魔法学園編と倍返し立身出世編があるんだけど、どっちがいい?」
「いやちょいと倍返し立身出世編の初恋、気になるなぁ!」
 しれっと作り話と認めたかと思えば、初恋バリエーションを更に並べ立てるリュカ。これはセロでなくても、興味を引かれると言うものだ。
『魔法学園……?』
『倍返シ……?』
『ドウイウコトダ……?』
 だが気合と熱意とパワーはあっても恋バナ初心者一年生なトランプの巨人達は、リュカの話に付いていけずにいた。
「それ聞かせてくださいよ」
「良いよって言いたいけど、俺が話すとあっちがますます混乱しそうだし。次は、お兄さんの番だよね」
 そんなトランプの巨人達に気づいて、リュカは別の恋バナを聞かせろと言うセロに、しれっと順番と言うボールを渡す。
「え、おれ?」
 急に振られたセロは、目を丸くして。
「あると思います? 初恋なんざ」
「期待してます」
 困った様に左頬のハートを掻くセロに、リュカが悪戯な目を向けた。
 実際、無いのだろう。喜怒哀楽の『楽』しか持たなかった故に、失敗作の烙印を捺された過去を持つセロには。
 だが――識りたがりは少しずつ、ココロを知っている。
「まあでも、恋バナってのは別に初恋に限ったことじゃねーですよね? ほら」
『ソウカ! 求めているのはこれだな!』
 セロの視線に何かを察したトランプの巨人が、枕を拾って振りかぶる。
『スキナタイプハァァァァァァッ?』
 ブォンッと投げ飛ばされた枕は、巨人の手から離れた瞬間、巨人の行動が判っていたかの様にリュカが『灯り木』で撃ち落とす。

「ぶっちゃけね、おれは『誰でも大好き』なんですよ」

 枕から飛び散った羽毛を見上げながら、セロは口を開いた。
『誰デモ……ダト』
『ツマリ、アレダナ』
『ハーレ』
「ちょっと何言ってんですかね、あんたら!? リュカも、笑ってんじゃねーです」
 何かろくでもない感想が飛び出しかけたトランプの巨人を遮って、セロは後ろで肩を震わせてる気配がするリュカにもツッコミを入れておく。
「そんなんじゃなくて、好かれなきゃ捨てられる人形の性ですよ」
 ふわふわと舞う羽毛を見上げるセロの東雲色の瞳が、いつものやる気のなさと違うものに揺れる。
「……いつか変わる日が来るんですかね?」
「変えなきゃいけないものなの?」
 誰に言うでもなく呟いたセロの背中を、リュカの声が真っすぐに叩いた。
「誰でも大嫌いよりは、大好き、でいいんじゃない? 人間だって、そっちのが好かれると思うし」
 その声に振り向いたセロを、リュカの蒼い瞳がじっと見ている。
 また難しいこと考えてるなあ――と言いたげに。
「あっはは、ははっ……確かにね!」
 色々と見透かされ、セロは額に手を当て笑った。
「ただそれじゃ、『恋』にゃならなくねーです?」
「ああ、うん。ならないね」
 少し笑っていつもの表情に戻ったセロに、リュカが頷きアサルトライフルを構える。
「だから、眠くなる前に片づけよう。あっち、トランプ兵呼ぼうとしてるよ」
「りょーかい!」
 リュカが言うが早いか、セロが駆け出した。
 曙光――グロリア。
 いつも首に巻いてる蒼いマフラーを翼の様になびかせて、光を纏ったセロは巨人の横を駆け抜け様に『牙』を振るう。
「ねぇあんたらもするんですよね? 恋バナ」
 一撃で斬り倒したトランプの巨人を背に、セロが問いかければ、他のトランプの巨人達は困った様に後退っていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

天星・零
『面白い方ですね。もう何年も前ですよ』

・服装
黒いTシャツに紫の線が入った長ズボンを履いてラフな格好

常に【戦闘知識+情報収集+第六感】で戦況、弱点死角を把握し周囲警戒、臨機応変に対応し【追跡】することで敵行動を予測し戦闘

技能とグレイヴ・ロウで避けつつ、防御

また指定UCで自分の鏡像を出して遠距離から鏡像に枕を投げさせたり攻撃したりする
また、鏡像と位置を入れ替えて攻撃を避けることもできたり、距離を詰めることもできます。

「いくぜぇぇ!!零!!」
Enigmaで夕夜を出して相手の死角から奇襲

敵に背を向けても鏡像が敵の後にいる場合自分(本体)が投げたり、攻撃する動作をすれば敵の方向に同じ行動を行う



●涅槃の境地に色恋などなく
『アナタノ初恋イツデスカァァァァァッ!!』
「おっと」
 恋バナクエスチョンと共にぶん投げられて飛んでくる枕を、天星・零(零と夢幻、真実と虚構・f02413)が布団を蹴ってひらりと避ける。
「面白い方ですね。もう何年も前ですよ」
『モット詳シクゥゥゥゥゥゥゥッ!!』
 危なげなく避けた零に、トランプの巨人が再び恋バナクエスチョンを叫ぶ。
「そう言われましてもねぇ?」
 眠りに落ちてたまるかと言う一心なのだろうが、風貌に似合わない恋バナクエスチョンを叫ぶトランプの巨人に、零が軽く肩を竦める。
(「まあ、多少眠気がある気もしますが……」)
 この『おやすみなさいの国』の睡魔に抗う為の、恋バナ。それが必要なのは、零もうっすらと感じていた。眠気の様なものが、全くないわけではない。
 少なくとも、戦闘感や第六感が大きく鈍る程ではない。
 黒いTシャツに紫の線が入った長ズボンと言う、零のラフな服装が、功を奏しているのだろう。特にズボンの線がジャージっぽく、修学旅行の学生感を醸し出している
『ブッチャケヨウゼー』
『旅ノ恥、カキ捨テロ!』
 釣られているのか、トランプの巨人達のノリも何となくそんな感じだ。
(「まあ敵の前で寝落ちるなんて事は避けたいのは判りますが――丸わかりですよ」)
 いちいち、恋バナクエスチョンを叫ぶトランプの巨人に、零は胸中で嘆息する。
 ああして叫ぶことで、零が死角を突かれる可能性が限りなく低くなっているのだと、気づいているのだろうかと。
『初恋ダメナラ、理想ノタイプ!』
「どれだけ言われましても、そう言う話をべらべらと喋る趣味はないのですよ」
 枕と一緒に投げてきた巨大なトランプカードを『グレイヴ・ロウ』の十字の墓石で弾き飛ばすと同時に、零は鏡を出現させる。
『コレハ……鏡?』
 気付いた巨人が訝しんだ瞬間、鏡に映った零が枕を持ち上げる。
『シマッタ!』
 零に背を向けていた事に気づいた巨人が、慌てて振り返る。
 飛んできた枕を、巨人はそのサイズに見合った巨大な剣で打ち払い――直後、振り返った巨人のその背中を、もう一つの枕が叩いた。
『ヌゥ!?』
 そこにいたのはもう一人の零。何処から現れたのかは、誰も映っていない鏡が物語っている。

 命鏡遊戯――ミラー・プレイ。

 鏡に己を映し、鏡像の視点を得たり、鏡像を実体化させる業。
「さて――本体は」
「どちらでしょう?」
 零が枕を構えれば、鏡像の零が反対の手で枕を構える。
 その動きは左右逆――いわゆる線対称になっていると気づけば、どちらが零の鏡像であるか気づく事は可能である。
 尤も、それは事前に良く観察していてこそ、だ。
『ヌゥ……』
『ドチラガ本体ナノダ』
 恋バナに乗らせる事に気が向いていたトランプの巨人達が、そこまで零の特徴を観察していた筈も無い。
「夕夜――出番ですよ」
「いくぜぇぇ!! 零!!」
 更に零は『Enigma』で深層心理から自身の別人格を実体化させる。
『3人目!?』
『誰ニ恋バナ聞ケバ良イノダ』
「しつけーっての!」
「そう言う煩悩からは、もう離れてまして」
 数に困惑し翻弄されながらも恋バナから離れられないトランプの巨人を、零と鏡像と夕夜は容赦なく枕ぶつけていくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

白峰・歌音
zzz。……はっ!?こ、これじゃまともに戦えない!?普段の変身ではダメだ!パジャマパーティ戦闘モードをイメージして……

『開放(リベレイション)』!と変身の掛け声とともにUCで変身、パジャマ戦闘鎧『全身ウサギ着ぐるみ』装備!
説明しようっ!こいつは快適なぬくもりを提供するパジャマぐるみ!普段ならすやすやだが、この戦場では眠りをはねつけ、戦いの殺伐さを受け付けないようイメージした着ぐるみ!つまり!お前らの攻撃は枕とトーク以外は効かないものと思えぇぇっ!!

という事で、徹底的に枕投げガチバトルに持ち込んで投げまくるぜ!
え?恋バナ?オレ、記憶が無いから初恋も覚えてないんだよなー?

アドリブ・共闘OK



●パジャマも使いよう
「――zzz……」
 白峰・歌音(彷徨う渡り鳥のカノン・f23843)がスゥと寝息を立てかけたそこに、ドォォンッ!と車でもぶつかったかのような轟音が響いた。
「はっ!? な、何事!?」
 飛び起きた歌音が視線を巡らせると、本当に車がトランプの巨人に突っ込んでいた。
 一体何があったのか、歌音は全然わからない。
「これは良くないですね」
 時間にすれば、ほんの数秒か十数秒――だった筈だ。
 だがいずれにせよ、戦場で完全に記憶が飛んでいたと言うのは、由々しき事態だ。
「こ、これじゃまともに戦えない!? 普段の変身ではダメだ!」
 おやすみなさいの国。
 パジャマパーティーをしていないものに、睡魔が襲い掛かる世界。その睡魔の力を自分自身で味わった歌音は、一度変身を解除した。
 今の変身ではだめだ。
 もっと、パジャマパーティ戦闘モードに相応しい格好をしなければ。
「――よし! 開放(リベレイション)!」
 頭の中でイメージが出来上がった歌音は、変身の掛け声を上げる。
 次の瞬間、歌音の姿が眩い光に包まれて――。

 光の中から出てきた歌音は、兎の着ぐるみ姿であった。

『何ダ、ソレハ』
『ウサギ?』
『時計ウサギダッタノカ、コイツ』
「違うって」
 その変化に驚くトランプの巨人達に、歌音が思わずツッコミを入れる。
「説明しようっ! こいつはパジャマ戦闘鎧『全身ウサギ着ぐるみ』! 快適なぬくもりを提供するパジャマぐるみだ!」
 どう見ても着るパジャマ感満載だが、それは歌音の戦闘鎧である。
 アリスナイト・イマジネイション――想像から鎧を創造する業。
「普段ならすやすやだが、この戦場では眠りを跳ね除け、戦いの殺伐さを受け付けないようイメージした着ぐるみ! つまり! お前らの攻撃は枕とトーク以外は効かないものと思えぇぇっ!!」
 実に強気な歌音だが、これは必要な事。
 創造の鎧は、その効果に疑念を抱くと効果を失ってしまうのだから。
「ここからは! 徹底的に枕投げガチバトルだあぁ」
 歌音は兎の様な跳躍力で、一気にトランプの巨人に飛び掛かった。
『望ムトコロ! アナタノ初恋イツデスカァァァァァッ!!』
 対するトランプの巨人も、負けじと枕を掴んでぶん投げる。
「恋バナ? あー、それ聞いても無駄だよ」
 大人のそれよりも太い腕で投げられた枕を、着ぐるみでもふっと受け止めて、歌音は逆にその枕を拾い上げる。
「オレ、記憶が無いから初恋も覚えてないんだよなー?」
『記憶ガナイダト……』
『シマッタ! ソレハ想定外……』
『一体、ドンナ恋バナヲブツケレバ良イノダ』
 初恋イツデスカ、と枕付きでぶん投げれば誰もが答えて恋バナになると思っていたらしく困惑を隠せないトランプの巨人に、歌音が投げた枕が容赦なく叩き込まれた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フィーナ・ステラガーデン
初恋の話?んー。そうねえ。無いこともないわ!それもちょっと前ね!
話せばいいの?じゃあ聞けばいいわ!
あれは私達姉妹が猟兵になって間無しの頃だったわ!
別世界に慣れて来たある日、UDCアースの夜の公園
確か月明かりが綺麗な夜だったわね!
ふと気配を感じたのよ。公園の池のほとりまで行ってみると奴がいたわ!
水面から飛び上がるその姿!月光に照らされる無数の鱗!
今思えばあれが私のはつこいだったのかもしれないわね・・(遠い目)

・・何この「あ、はい」みたいな空気!?
さっさとこれでもくらって寝てなさいよ!!
(UCで枕に魔力を流し込み爆弾枕を良いフォームで投げつける)

(アレンジアドリブ連携大歓迎!)



●こいはこいでも
『アナタノ初恋イツデスカァァァァァッ!!』
 響き渡る恋バナクエスチョン。
 ブォンッとすごい勢いで飛んできた枕が、空中で炎に包まれ、灰と燃え尽きる。
「さっきから黙って見てれば――色気のない恋バナね!」
 太陽モチーフの模様を所狭しと入れた濃い橙色を基調とした浴衣に姿のフィーナ・ステラガーデン(月をも焦がす・f03500)が、盛大な溜息を零す。
 その手には事もなく枕を燃やした炎を放った杖があり、頭にはいつもの黒いとんがり帽子を被っていた。
「まあいいわ。初恋の話なら、無いこともないわ!」
『アルノカ!』
 初恋の話があると言うフィーナに、トランプの巨人が食いつく。
「それもちょっと前ね!」
『最近ノ話!』
『ホヤホヤノ恋!』
 トランプの巨人たちの食いつきがすごい。
「そんなに話して欲しいっての? じゃあ聞けばいいわ!」
 巨体の巨人が、恋バナをせがんで来る。シュールな光景だが、こういう手合いのシュールさにすっかり慣れてるフィーナは、そんな事気にせずに話を切り出した。

「あれは、そう。私達姉妹が猟兵になって間無しの頃だったわ!」
 何処か遠くを見るような視線を天井に向けて、フィーナは続ける。
「別世界に慣れて来たある日、UDCアース……って、UDCアースはわかるわよね?」
『他ノ世界、ダロウ』
『アリスガ来ルトコロダ』
 フィーナの問いに、頷く巨人達。
「わかるなら良し! で、UDCアースの夜の公園の事よ。確か月明かりが綺麗な夜だったわね! 私はふと気配を感じて、公園の池のほとりまで行ってみたの」
 目を閉じれば、あの日の事がフィーナの脳裏に蘇る。
 夜空には煌々と月が輝いていて、照らされたフィーナの影がくっきりと伸びている。
 影の先にある池から、ぱしゃんっと何かが跳ねたような水音が響いた。
「私は池に近づいて、覗き込んだ。そうしたら、そこに……いたのよ、奴が!」
 池の縁で足を止めて、水面を見つめるフィーナ。
 その視線の先に――それは現れた。
「水面から飛び上がるその姿!」
『オオ!』
「月光に照らされる無数の鱗!」
『ウロコ?』
 拳を握ったまま、首を傾げるトランプの巨人達。
「今思えばあれが私の『はつこい』だったのかもしれないわね……」
 懐かしい過去を語り終えた満足感と共に、フィーナはほぅと息を吐く。
 だが、トランプの巨人達は揃ってぽかーんと固まっていた。
「わからないの? だから、はつこい、なのよ!」
 フィーナがそう告げると、周りで見ていた猟兵の誰かが『魚のことか』と呟く。
 そう。
 さっきフィーナは、鱗と言った。
 鱗を持っていて、公園の池にいるものと言えば――魚。

 つまり『はつこい』――初鯉。

『…………』
『…………』
「……何よ! この「あ、はい」みたいな空気!?」
 沈黙した巨人達をギロッと睨みつけながら、フィーナが枕片手ににじり寄る。
『今ノ、恋バナカ?』
『イロケ、アッタカ?』
「っさいわねぇ!」
 地雷踏み抜いたトランプの巨人に、フィーナの所謂堪忍袋の緒がプチッと切れる。
「とにかく話したんだから! さっさとこれでもくらって寝てなさいよ!!」
 フィーナが枕を振り上げ――それでトランプの巨人を叩いた瞬間、枕はまるで爆弾のようにドカンッと大爆発を起こした。
 ――暴走魔力ノ注入。
 フィーナはただ、初鯉の話をしていたわけではない。枕にずっと、爆発させるための魔力を枕に込めて続けていた。
 触れたものに魔力を流し込み、爆発させる術。
 至近距離でしか使えないと言う欠点はあるが、今回の様に枕を爆弾に早変わりさせる事も可能であった。
 まあ、そんな至近距離で枕を爆発させれば、凄まじい反動と爆風が起こり、フィーナは自分の爆風で、布団の上を吹っ飛んでいたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

霧島・ニュイ
アドリブ大歓迎
水色の浴衣

枕投げ…
この戦争で大切な友人とはガチでやったから、次は敵と枕投げするよ!
人形も犬も置いてきた

どんな質問にもちゃんと答える
僕の初恋は、多分15かそこらで
リサちゃんって、くるくる表情の変わる可愛い子で
些細なことで拗ねたり
ぬいぐるみ持ってはしゃいだり
リサちゃんに関してはある程度記憶戻ってきてる気がする
まあ、置いていかれたから今も傍に居させてるんだけどね(さらっとヤンデレ発言)
今もまだ好き

枕投げはガチで
パワーアップしたスナイパーで命中率を上げ
2回攻撃で2回連続枕もしくは攻撃
手足の動きや視線で動きを予測し、見て見切り
此方も枕投げの合間に銃を使い蹴散らしていく
枕の間から不意打ちする



●忘れたって、好きだから
「枕投げも……色々だなぁ」
 いつものパーカーではなく同じ水色の浴衣姿の霧島・ニュイ(霧雲・f12029)が、しみじみ呟いて手近な枕を拾い上げる。
 ニュイにとって、枕投げはつい最近もやった事だ。
 それも、このこの『迷宮災厄戦』の中で。
 大切な友人との、ガチの枕投げ勝負を済ませている。
「よーし! さあ来い! 枕投げしよう! 恋バナも、どんな質問にも答えるよ!」
 だから今回、ニュイは敵のトランプの巨人との枕投げに専念するつもりだった。
 その為に、椿の君・リサも、茶まろわんこのチョビも、お留守番して貰っている。
『本当か?』
『恋バナ、答えるのか?』
「うん、どんと来い」
 これまでの色々でやや疑り深くなった感のあるトランプの巨人からの問いに、ニュイはニッと笑って頷いた。
『ッシャァ!』
『コレデ恋バナデキル!』
(「どんと来い、とは言ったけど……なにこれ、おとめか」)
 答えるよ、と言っただけでまだ答えていないのに、拳を掲げてガッツポーズで喜び出したトランプの巨人達の様子に、ニュイは思わず胸中で呟く。
 まあ見た目は全然乙女感ないのだが。
『アナタノ初恋イツデスカァァァァァッ!!』
 ニュイがそれを口に出す前に、恋バナクエスチョンと枕が投げられる。
「僕の初恋はねー」
 飛んでくる枕に向けて、ニュイは持っていた枕を投げる。
「多分15かそこらの頃」
 続けてもう1つ、ニュイは足元の枕を拾い上げるなり、ぶん投げた。
 体格で勝る巨人が投げてきた枕に対して、ニュイは素早く枕を2つ投げてぶち当てる事での相殺してみせた。
 トランプの巨人の動きを見切って枕の位置を把握し、2投目までのタイミングを合わせたからこその芸当。

「リサちゃんって、くるくる表情の変わる可愛い子で。些細なことで拗ねたり、ぬいぐるみ持ってはしゃいだり――」

『マサニ初恋!』
『甘酸ッパイッテコウイウ事カ』
 何か喝采してるっぽいトランプの巨人達を横目に、ニュイは脳裏に浮かぶ少女の表情を語っていく。
(「やっぱ、リサちゃんに関しては、ある程度記憶戻ってきてる――気がする」)
 ニュイは覚えていない。自分の過去の多くを。
 それでも、朧気に残っているものがある。その中にリサとの想い出がある。
(「ああ――やっぱり、好きなんだ」)
 それだけ欠けがえのない記憶だったのだろうと、ニュイは改めて思っていた。
「まあ、置いていかれたんだけどね? だから今も傍に居させてるんだけどね?」
 だからこそ、さらっとヤンデレ発言も飛び出ると言うものである。
『オゥ……』
『コレガ、ヤンデレ……』
 だが、作り話の恋バナで混乱する程度の恋バナ一年生なトランプの巨人達が、ヤンデレと言う重めのブローに耐えられる筈がない。
「今もまだ好き」
『ゴフゥッ!』
 留めに爽やかスマイルでニュイが告げれば、トランプの巨人が膝から崩れた。
「さぁて。そんな様子で、避けられるかなー?」
 ニヤリとした笑みを浮かべて、ニュイの手が透明と黒の銃身に伸びる。
 不意打ちヤンデレ恋バナからの――弾丸乱舞。
 鏡を思わせるツートンカラーの機関銃『Mirage』が火を噴いて、まだ呆然としているトランプの巨人達に剣を抜かせる間もなく撃ち抜いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

夕留・鞠緒
恋は戦争だし、恋バナしながらの枕投げが戦争なのも道理だよね!
というか、今戦争真っ只中だし……つまり超戦争! 的な!

トランプ兵のルールに則り、旅館で出てくるような浴衣で参上。
枕投げの邪魔にならないように髪は簡単にまとめて、全力で参戦!

えー、初恋ー!? 恥ずかしいー! トランプちゃんはいつなの?
霊符を仕込んだ枕をぶんっ

トランプちゃんだって恥ずかしがってるじゃん!
霊符を仕込んだ枕略

わたしもだよー。
霊符を略

じゃあ、せーので言う? せーのっ

捕縛発動!
UC発動!
めいっぱい振り回した枕をぶんっ

わたし、この枕投げに全力を出すって決めてたの。
恋バナは楽しいけど、お布団に入ってゆっくり話したいなって。



●楽しさと恥ずかしさと
『アナタノ初恋イツデスカァァァァァッ!!』
『スキナタイプハァァァァァァッ?』
 トランプの巨人の気合の入った声と共に、ブォンッ、ブオンッと枕が飛んでく。
 かと思えば、予期せぬヤンデレアンサーに沈没するトランプの巨人もいる。
「まさに恋は戦争だね!」
 飛び交う枕の勢いと色々な恋バナの熱気に当てられたか、夕留・鞠緒(空模様・f09048)は頬を少し上気させていた。
「今戦争真っ只中だし……恋バナしながらの枕投げが戦争なのも道理だよね! つまり超戦争! 的な!」
『ソノ通リダ!』
『恋ハ戦争!』
『恋バナト枕投ゲモ戦争!』
 どの辺が道理なのか――なんてツッコミが鞠緒に入る事もなく、むしろトランプの巨人達は力強く頷いている。
「よし! 次は私が!」
 すくっと立ち上がった鞠緒は、旅館にある様な白を基調にした唐草模様の浴衣姿。
 鞠緒はまず、浴衣の袖をささっとたくし上げてきゅっと縛る。さらに肩をさらりと流れる長い黒髪を掴んで、手早く両手で頭の後ろでひとつに束ねて、リボンできゅっと結んで止めた。
「全力でやるよ!」
『ナラバ、マズハコノ恋バナカラダ!』
 動き易いように袖と髪を直した鞠緒に、トランプの巨人が枕を構える。
『アナタノ初恋イツデスカァァァァァッ!!』
 何度も聞いたのと同じ気合の入った声。
「えー、初恋ー!?」
 それが聞こえた直後、鞠緒は横っ飛びに跳んだ。
 布団の上を転がって避けながら、手近な枕を拾い上げる。
「恥ずかしいー! トランプちゃんはいつなの?」
 照れてるフリしつつ枕の中に霊符を忍ばせて、鞠緒はぶんっと枕を投げ返す。
『ム?』
『オレ達ガ、イツ?』
 何を訊かれたのかも判らず固まったトランプの巨人を、鞠緒の投げた枕が直撃した。
「だから、トランプちゃん達の、初恋」
『ソンナモノハ、ナイ』
『オレ達、オウガ!』
 前にも別の猟兵が恋バナしろと言った時と同じように、トランプの巨人達は鞠緒に返す答えを持っていない。
「またまた、恥ずかしいんでしょ?」
 だが、鞠緒はそれを(勝手に)恥ずかしいのだと解釈していた。
『――エ?』
「ほら、トランプちゃんだって恥ずかしがってるじゃん!」
 突然の話の飛躍に虚を突かれたトランプの巨人に、霊符を仕込んだ枕をぶん投げつつ、どんどん恥ずかしがっている方に持っていく鞠緒。
「誰だって、恋バナは恥ずかしいんだよ。わたしもだよー」
 言葉で畳みかけながら、鞠緒はやっぱり枕に霊符を仕込んで――ぶんっ!
『ド、ドウスレバ』
 矢継ぎ早に鞠緒に返される質問と枕に、トランプの巨人の動きが止まる。
「じゃあ、せーので言う?」
『マ、待テ――』
『何ヲ言エバ良イノダ!』
 すっかり混乱して何をすれば良いのか判らなく案ッているトランプの巨人の前で、鞠緒が枕をブンブン振り回している。
「せーのっ」
 充分に勢いをつけて、鞠緒は枕をぶん投げた。
 羅刹旋風からの、枕投げ。
 遠心力たっぷり乗せて鞠緒が投げた枕が、トランプの巨人の頭にめり込む。
「わたし、この枕投げに全力を出すって決めてたの。恋バナは楽しいけど、お布団に入ってゆっくり話したいなって」
 無言で倒れ往くトランプの巨人に、鞠緒がダメ押しの枕を叩き込んだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

木元・杏
今年の浴衣は水色と紫の朝顔柄
桃紫色の帯をきゅっと結んで
手に持つ枕はうさぎ型

ざしゅっと巨人の前に立ち
よし、恋バナ来い

あ、その前に
巨人の皆さん、恋バナには体勢というものがある
こう、ふかふかベットの上にぺたんと座って
枕をぎゅっと抱えて小首傾げ
そう、その体勢

わたしが質問するから、それに答えてから、「そういう杏はどうなのよぉ~(はぁと)」と、返す
いい?

ね、トプ子、好きな人いるぅ~?

(返された)
いやぁん、恥ずかしいぃぃいぃぃ~~~!

怪力で思い切り枕を投げつけ、その死角から【華灯の舞】で追撃

そんな(カードを灯る陽光でオーラ防御)
恥ずかしいコト(うさみん☆突撃)
言えなぁあぁぁい(目潰し)

ふう、恋バナは照れる


ガーネット・グレイローズ
Zzz…はっ、いかん。敵の前で寝てしまいそうだった。

そう、あれは今から80…何年前だっけ。
基本的に貴族の娘というのは、自由な恋愛は認められていない。なのでそういった付き合いをするようになったのは、家を出てからだ。…体育座りして聞くほどのことか?まあいい…。
銀河帝国と戦うため、私は防衛隊に入った。名前を変え、素性を隠して。そこである男性と出会い、恋に落ちたんだ。(以後語られる青春の思い出)
まあ、今は猟兵の活動やら会社の経営やらで忙しいし、恋をする暇もないけど。

お前達には無いのか?心を焦がすような
体験は。生まれ変わったら、いい恋を沢山するといい。はい、お話終わり!永遠に眠っていいよ。



●恋バナのいろはと大人の恋バナ
「……なってない。全然なってない」
 これまでの猟兵とトランプの巨人のやり取りを眺めていた木元・杏(だんごむしサイコー・f16565)が、すくっと立ち上がった。
 水色と紫の朝顔柄の新しい浴衣の裾を直し、桃紫色の帯をきゅっと結んで。うさぎ型枕を脇に抱え、杏はざしゅっと踏み込んだ足を鳴らして巨人達の前に立って――。
『アナタノ初コ――』
「巨人の皆さん。すとっぷ。すてい」
 これまでの様に恋バナクエスチョンと枕をぶん投げてこようとしたトランプの巨人をきりっと見据えて、杏が待ったをかけった。
 自分の身長の半分もない杏の出す妙な威圧感に、トランプの巨人が思わず固まる。
『ナ、ナンダ――』
「いい? 恋バナにはそれなりの体勢があるの。皆さんは、それが出来てない」
 困惑する巨人達を、杏はさらなる困惑に叩き落す一言を言い放った。
 そして始まる、杏による恋バナポーズレクチャー。
「まず、こう、ふかふかおふとんの上にぺたんと座って――またはこう」
 横座り、というのだろうか。
 正座から足をぺたんと横に崩したしな垂れるような座り方。続けて、膝を立てて抱えた所謂、体育座りと言われる座り方を、杏は実演して見せる。
 杏の様な少女がすると絵になるのだが、それをトランプの巨人達が倣ってやってみせると言うのは、はっきり言って異様である。
「そうしたら、枕をぎゅっと抱えて小首傾げるの――そう、その体勢」
 更に巨人達はうさぎ枕をぎゅっと抱えた杏に言われるままに、倣って身体の前に枕を抱えて小首を傾げてみせるものだから異様さがますます深まるばかり。
「体勢を理解したら、次は恋バナの質問の手順。訊けばいいってものじゃない」
 だが杏はその異様さを気にした風もなく、恋バナプロデュースを続ける。
「恋バナは訊いて訊かれて。さっきから、あなた達は訊いてばかり。訊かれても、そんなものは無い――それじゃ、ダメ」
『ム……』
 杏の言葉に、思わず押し黙るトランプの巨人達。
「だから、先にわたしが質問する。それに答えてから『そういう杏はどうなのよぉ~(はぁと)』と、返す。語尾に(はぁと)を付ける感じを忘れずに。いい?』
『オ、オウ』
『ハァトカ……』
 真顔の杏の言葉を、トランプの巨人達も大真面目に受け止める。

「ふぁ……zzz……む、いかん。気を抜くと敵の前で寝てしまいそうになるな」
 丁度そこに少し遅れてやって来たのが、欠伸を噛み殺しているガーネット・グレイローズ(灰色の薔薇の血族・f01964)であった。
「ね、トプ子、好きな人いるぅ~?」
 良く知っているガーネットが来たことに気づかず、杏が恋バナの口火を切る。
 トプ子と言うのは、トランプの巨人のトランプを縮めたのだろう。
『イ、イナイ、ナ』
『オレハアリスナラ誰デモ』
『アッ、ズルイゾ貴様!』
 首を振る巨人もいれば、節操ない答えを返す巨人に食ってかかる巨人もいる。
『『『ソウイウ杏ハドウナノヨォ~(ハァト)』』』
 そして巨人達は杏に教えられた通りの座り方で枕抱えて小首を傾げ、野太い声で一斉に言われた通りに訊ね返した。
(「杏!? 一体何をしたー!?」)
 カオス極まるこの光景に、ガーネットが思わず胸中でツッコミを入れる。
「いやぁん、恥ずかしいぃぃいぃぃ~~~!」
 照れて俯き顔をそむけるような素振りから、杏は枕を全力でぶん投げた。
 まあ両親の教育方針とかこれまでの猟兵としての過酷()な経験とかもあって、杏の腕力と言うか怪力はかなりのものである。
 具体的に言うと、巨人に直撃した枕が破裂するくらいである。
『ナクハナイノカ!』
『アルナラ話セ!』
 否定はしなかった杏の答えに食いついて、巨人達が枕を構える。
「そんな」
 だが杏は枕と一緒に構えていたトランプのカードを、巨人が投げる前に『灯る陽光』の白銀の光剣で打ち払い――。
「恥ずかしいコト」
 枕もついでに吹っ飛ばして、隙だらけになった巨人の元に、糸で操ったうさ耳付きメイドさん人形『うさみん☆』を突撃させて。
「言えなぁあぁぁい」
 うさみん☆の目潰しから、杏はまたまた照れ隠しを装いながら向けた指先から放つ桜の花弁を思わせる白銀の光――華灯の舞で撃ち抜くと言う、地味にえげつないコンボを決めてみせた。

「ふう、恋バナは照れる」
「見事なコンボだな、杏」
 やり切った顔で額の汗を拭う杏の背中に、ガーネットが声をかける。
「……ガーネット?」
 その声に、杏がゆっくりと振り返った。
「いつから?」
「ああ、『トプ子、好きな人いるぅ~?』から」
 杏とて、他の誰にも見られないとは思っていなかっただろう。だが、何度も戦場を共にした知己に見られるとは――思っていなかったかもしれない。
「つ、次! 次ガーネットの番!」
「まあそのつもりで来たから、別に構わんが……」
 杏にぐいぐい背中を押され、ガーネットが前に出る。
「次の恋バナよ、トプ子達。ガーネットならきっと、大人の恋バナ、してくれる」
「杏、あまりハードルを上げないでくれ。っておい。巨人達も、体育座りして聞くほどのことか?」
 体育座りしてじっと視線を向けてくる巨人達、と言う異様な光景と、その視線を浴びながら、ガーネットは一つ息を吐いて、気を取り直して話を始めた。
「まあいい……。あれは今から80……何年前だっけ」
 基本的に、家柄が高貴なものになると自由な恋愛と言うものは難しくなる。
 グレイローズ家御令嬢であるガーネットも、その例に漏れていなかった。
「そういった付き合いをするようになったのは、家を出てからだ。私は銀河帝国と戦うため、私は防衛隊に入った。名前を変え、素性を隠して。そこである男性と出会い、恋に落ちたんだ」
 そしてガーネットの口から語られる、在りし日の――青春の思い出。
「――とまあ、そんなところだ。今は猟兵の活動やら会社の経営やらで忙しいし、恋をする暇もないけど」
『何と言う……!』
『オレ達は恋バナをわかっていなかった!』
「さすが、ガーネット」
 宇宙を舞台にしたガーネットの過去に、聞き終えたトランプの巨人達は枕を投げるのも忘れて感動に拳を震わせ、杏も感心しきりで頷く。
「そうか。お前達には無いんだな? 心を焦がすような体験は」
 その反応でトランプの巨人達に訊き返しても無駄だろうと、ガーネットは『クロスグレイブ』を構える。
「生まれ変わったら、いい恋を沢山するといい」
 十字架型の砲塔から放たれた、いつもの3倍に出力を上げた光線がトランプの巨人達を薙ぎ払っていく。
「はい、お話終わり! 永遠に眠っていいよ」
 フルチャージバスターで3倍強化かましてたのは、ガーネットなりの照れ隠しが入っていたのかもしれない。大人の女だって、恥ずかしいものは恥ずかしいのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ニコ・ベルクシュタイン
【うさみ(f01902)と】
うさみの…浴衣姿!
去年の今頃は甚平姿だったが、正統派の浴衣姿もまた良き…
って待て!止せ、全く良くない!帯を外そうとするな!アッ

…気を取り直して、浴衣も整え直して、戦いに挑もう
恋バナと言われても上手く答える自信がないが、そうだな
伴侶の好きな所を語れと言われれば任せて欲しい(しれっと指定)
ははは、問われたならばお答えしよう!
見よ、うさみの愛らしいボディ、めくりたくなるたれ耳
ジト目にバッテンお口で全てを表現するプリティフェイス!
そんな見た目で金にがめついロクデナシというのもまた――ぶべっ(直撃)

おのれ、人の話は最後まで聞け!
久し振りに双剣を抜いて枕を弾くように迫るぞ!


榎・うさみっち
【ニコ(f00324)と!】
フェアリーサイズの浴衣着てきゃっきゃとはしゃぎ
浴衣といえばアレだろ!
よいではないかよいではないか~
と言いながらくるくる回るやつ!
ニコの浴衣の帯をオラオラと引っ張ってみる

俺の初恋だとぅ!?
あれはもう一年以上前のことか
キマイラフューチャーで出会った兎頭の可愛いおなご…
そう、ラビットバニーちゃん!
当時7歳だった俺にとってあれは恋だったのかは分からない
だが、彼女と対峙した時の胸のときめき
そして敵でありながら彼女が消えた時の胸の痛みは……
ってぴゃああっ!!(枕直撃

クソッ、反撃だ!いでよやきゅみっち達!
ホームラン級の高速・高威力枕を
次々とバットで打ち込んで行くぜ!



●胸の痛みと、惚気と、睡魔
「去年は甚平だったけど、浴衣も良いもんだな!」
 フェアリーサイズの青を基調に兎がデザインされた浴衣を纏った榎・うさみっち(うさみっちゆたんぽは世界を救う・f01902)が、はしゃぎながら入って来る。
「うさみ。静かに……あまり騒ぐものではない」
 その後ろから、和時計の文字盤の様な模様の入った浴衣姿のニコ・ベルクシュタイン(時計卿・f00324)が、いつもの渋面で入ってきた。
 冷静そうな、いつものニコ――に見える。
 表面上は。
(「うさみの……浴衣姿! 去年の甚平も良かったが、正統派な浴衣もまた良き!」)
 内心、全然冷静じゃなかった。
「浴衣といえばアレだろ!」
 そんな風に内心デレまくっていれば、ぶーんとうさみっちが降りてきたのに、ニコの反応がしばし遅れたのも無理ないと言うもの。
「よいではないかよいではないか~! と言いながらくるくる回るやつ!」
「って待て! 止せ、全く良くない!」
 ニコが気づいた時には、無駄に早業発揮したうさみっちの手が浴衣の帯の結び目を既に解いていて、端をがっしりと掴んでぐいぐいと引っ張って来る。
「オラオラ!」
「こら、帯を外そうとするな! アッ――」
 ニコ相手に遠慮がないうさみっちである。そして、何だかんだうさみっちには甘くなりがちなニコである。
 ついにニコの浴衣の帯がシュルルッとほどけて、浴衣の前がはだけ――。
「いかん、眠く……眠……スピー」
「って、ニコォ!? おいこら、寝るな! 寝るんじゃねぇ!」
 速攻で睡魔に襲われて立ったまま寝息を立てだしたニコを、うさみっちが耳ビンタで叩き起こす事になるのだった。

「……あれが、この国の睡魔か。聞きしに勝る恐ろしさだ」
「しっかりしろよなー。あいつら待ってるぞ」
 程なく目を覚まして浴衣を直したニコの横で、うさみっちが枕構えて待ち構えているトランプの巨人達を示す。
『ヤハリ起キタカ』
『モウ良イナ――デハイクゾ』
『アナタノ初恋イツデスカァァァァァッ!!』
 起きるの待っててくれたと言うより、すぐ起きるだろうと警戒していたのだろう。
 身構えていたトランプの巨人達が、枕と恋バナクエスチョンをぶん投げてくる。
「俺の初恋だとぅ!?」
 ぶーんっと軽快な飛行で真っすぐ飛んできた枕をやり過ごし、うさみっちはトランプの巨人に向き直った。
「いいだろう! あれはもう……1年以上前のことになるな」
『アルノカ!』
『ヤルナチッコイノ!』
 恋バナ出てくるとわかった巨人達が、うさみっちに視線を向けた。
「キマイラフューチャーっつう世界で出会った兎頭の可愛いおなご……そう、ラビットバニーちゃん!」
 ああ、いましたね。エモ幹部。
 もう1年以上経ったのかと内心しみじみしながら、うさみっちは語り続ける。

「来たか恋バナ。と言われても、上手く答える自信がないが……そうだな。伴侶の好きな所を語れと言われれば任せて欲しい」
 一方ニコは、枕を半歩だけ動いて避けながら、しれっと違う質問を要求していた。
『ヨシワカッタ』
『――コノ質問ダナ』
『好キナ所ヲ語ッテ、ノロケロ!』
 トランプの巨人達も察しよく、質問切り替えて枕と一緒にぶん投げてくる。
「ははは、惚気ろと来たか。ならばお答えしよう!」
 ニコは良い笑顔でキャッチした枕をぽいっと投げ捨て、話を続ける。

「当時7歳だった俺にとって、あれが恋だったのかは分からない。だが、彼女と対峙した時の胸のときめき。そして敵でありながら彼女が消えた時の胸の痛みは……今でも俺の中に残って――って、ぴゃああっ!!」
「見よ、うさみの愛らしいボディ! めくりたくなるたれ耳! ジト目にバッテンお口で全てを表現するプリティフェイス! そんな見た目で、金にがめついロクデナシというのもまた――ぶべっ」
 語るのに夢中になっていたうさみっちとニコの顔面を、枕が直撃していた。

「不意打ちとは卑怯だぞー! クソッ、反撃だ!」
「おのれ、人の話は最後まで聞け! まだうさみの良さを語り切ってないんだぞ!」
 幸い枕だけでほぼノーダメージの2人は、同時に枕を払いのけてキッとトランプの巨人達を睨みつける。
「投げると言ったらこいつらだろ! いでよやきゅみっち達!」
「ん? やきゅみっち?」
 うさみっちの声で何かが引っかかって、ニコの脳裏にやきゅみっちの姿が浮かんだ。
 ――釘バットや鉄球を構えた姿。
 ――揃いのユニフォームを着た姿。
 ニコの視線がうさみっちの浴衣に向いてから、次いで自分の浴衣を見下ろして。
「っ! 待て! うさみ。やきゅみっちは拙い――!」
 ついさっき自分の身に起きた事を思い出して、ニコがかけた待ったは少し遅かった。
「勝利に飢えたやきゅみっちが、ホームラン級の枕をお見舞いしてやるぜー!」
 既に監督モードに入ったうさみっちは、ずらりと並んだ『野球服うさみっち団』に指示を出している所だった。

 ここはおやすみなさいの国。
 パジャマパーティーをしていない者は、オブリビオンでも猟兵でも睡魔に襲われる。それは浴衣がはだけると言うトラブルに見舞われたニコが襲われたくらいだ。
 野球服姿のうさみっち団が、睡魔に襲われない事があるだろうか。
 いや、ない。

 ――スヤァ。

 やきゅみっち軍団、睡魔に負けて痛恨の寝落ち再び。
「また……また、寝落ちかぁぁぁぁぁ!」
「し、しまったー! そうかこいつら浴衣じゃねー!」
 ニコが悔恨に拳を震わせ思わず叫び、うさみっちは頭を抱える。
 いつかの炬燵相手に寝落ちて以来の寝落ちではなかろうか。
『君達初恋イツデスカァァァァァッ!』
 しかもトランプの巨人達は、寝落ちたやきゅみっち軍団に容赦なく枕と共に振り下ろした剣を浴びせていく。
「ぴゃぁぁぁぁぁっ! やきゅみっちが!? ニコー! もう一度、今度はジャージで呼び直すから時間稼いでくれー!」
「くっ……何でこんな事に!」
 慌てて隅の方に離れていくうさみっちを見送り、ニコの手が双つの剣に伸びる。
「過去は過去に、未来は我らに」
 時計の針は無慈悲に刻む――ルースレス・クロックワークス。
 時刻みの双剣。
 時計を模した炎と氷の双剣を両手に、ニコが駆け出す。
 枕を弾いては投げ弾いては投げついでに巨人をぶった切りと、ジャージやきゅみっち軍団が出てくるまで、ニコは布団の上で奮闘する羽目になるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

司・千尋
連携、アドリブ可

恋バナ…恋バナねぇ
周囲の恋バナ聞いてたら
こっちが恥ずかしくなってくるぜ


基本的には聞き役に徹しようか
うんうん、それで?
そういうお前はどうなんだよ?等言いつつ敵に枕を投げる
ついでに『子虚烏有』での攻撃も混ぜよう

飛んできた枕や攻撃は
細かく分割した鳥威を複数展開し防ぐ
割れてもすぐ次を展開
可能なら『子虚烏有』で迎撃する


え、俺の初恋?
………俺は、まだだよ
ヒトじゃなくてモノだから
そういうのよくわかんなくてさ
今、色々勉強中なんだよ
俺の事よりお前の話聞かせろよー
冷やかしたりからかったりしながら『子虚烏有』で敵の数を減らす


…パジャマパーティーって初めてだけど
結構大変なんだな



●器物(モノ)がまだ知らぬモノ(感情)
 ――アナタノ初恋イツデスカァァァァァッ!!
 その言葉と共に枕がブォンッとすっ飛んで行くのを、司・千尋(ヤドリガミの人形遣い・f01891)は何度目にしただろう。
「恋バナ……恋バナねぇ」
 千尋の口から、しみじみとした呟きが上がる。
 枕がすっ飛んで行くのも、一緒に恋バナクエスチョンが叫ばれるのも、それに対する猟兵達の様々な反応も。
 聞き役に徹していた千尋は、色々と、見聞きしていた。
(「もっとこう、聞いてるこっちが恥ずかしくなってくるもんだと思ってたぜ」)
 そういう恋バナもなかったわけではないのだが、ずっと聞き役に徹していて千尋が今感じているのは、恥ずかしさよりも――疲れ。
「恋バナって色々なんだな……」
『ソウダ! 色々ダ!』
 しみじみと呟いた千尋の言葉を聞き逃さず、トランプの巨人が視線を向ける。
『オ前! マダ! 聞イテナイ!』
『アナタノ初恋イツデスカァァァァァッ!!』
 そればかりか、まだ千尋から恋バナ聞いてないと目ざとく気づいて、ついに恋バナクエスチョンと枕が千尋に向かってぶん投げられる。
「おいおい、ちょっと待てよ」
 すっ飛んで来る枕を前に、千尋は慌てず騒がずゆっくりと立ち上がった。
 その周囲に幾つもの光の盾――分割して複数展開した『鳥威』が出現する。千尋は複数枚の『鳥威』で衝撃を分散させ、あっさりと枕を防いでみせた。
「そう言うお前らは、どうなんだよ?」
 落ちた枕を拾い上げると、千尋はわざと力を入れずにひょいっと放り投げる。
『ヌ?』
『オレ達ダト?』
「そうだ。もう忘れたのか? ついさっき教わってただろ? 恋バナのいろは。一方的に訊けばいいってものじゃないって」
 聞き役に徹していただけあって、千尋はその辺、ばっちりと覚えていた。
『ソウ言エバ』
『ソウダッタ』
 投げようとした枕を抱えたまま、素直に頷くトランプの巨人達。
「ってわけで、お前らの話を聞かせろよ」
『ソウ言ワレテモナ……』
『恋バナ、ワカラナクナッタ』
 千尋が訊き返すも、トランプの巨人達から伝わってくるのは困惑。
 どうも様々な猟兵の恋バナクエスチョンに対する反応を見ている内に、思考回路がやられてしまったようだ。
『ダカラアナタノ初恋ヲ聞カセロ!』
『イツデスカ!』
 しつこく訊き返しながら、今度は枕と共に巨大なトランプのカードが投げられる。
 瞬間、光が閃いた。

「………俺は、まだだよ」

 つい、と表情を隠すように顔を伏せ、千尋が告げる。
「俺はヒトじゃなくてモノだから、まだそういうのよくわかんなくてさ。今は、色々勉強中なんだよ」
 それは千尋の本音だったのだろうか。
 それとも――この場をやり過ごすためだったのか。
「なんてな」
 顔を上げた千尋の顔は、いつもの笑みを浮かべている。
 ――子虚烏有。
 先に閃いた光は、その光剣。モノの存在を拒否し消失させる光の刃が、トランプの巨人達を跡形もなく消滅させていた。
「……パジャマパーティーって初めてだけど、結構大変なんだな」
 トランプの巨人がいなくなった空間に響いた千尋の言葉に、誰からも否定の声は上がらなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年08月11日


挿絵イラスト