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迷宮災厄戦⑮〜あるいはお菓子でいっぱいだった森

#アリスラビリンス #戦争 #迷宮災厄戦

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●お菓子住宅街跡地にて
 おとぎ話のような色とりどりの草木が生い茂る森の中。そこには何軒ものお菓子の家──だったものの残骸が散乱していた。
「あちゃー、こりゃひどいや」
 お菓子の瓦礫を目の当たりにした愉快な仲間達の一匹が呟く。
「早く作り直さなきゃ、悪者がまた来る前に!」
 別の一匹がそう返し、皆は頷いて瓦礫の中から調理器具を探し始めた。
 そんな光景を、物陰から見ている者たちがいた。小さな子供のような姿をした彼らは互いに目配せし、そしてほくそ笑む。
 どうやって邪魔してやろうか。彼らの邪悪に歪んだ笑顔はそう語っているかのようだった。

●なくなったならまた作ればいいじゃない
「お菓子を作りたい人集合ー!」
 迷宮災厄戦の勃発により、一層忙しなくなるグリモアベース。そんな緊迫した空気の中、ミニス・クラインシュテルン(ぽんこつ平民ナイト・f04953)は場に似つかわしくない、お気楽な内容の招集をかけた。
「あっ、別に遊ぼうとしてるわけじゃないよ。真面目なお願いだからね」
 ミニスの説明するところによると、アリスラビリンスの小世界の一つに、お菓子でできた家が森の中に立ち並ぶ世界があるらしい。アリスや愉快な仲間達がオウガから身を守るために建てたのだという。
「お菓子のお家だなんて、すごくメルヘンだよね。この戦争が終わって平和になったら、遊びに行ってみたいなー」
 しかし、それらは襲来したオウガに破壊し尽くされてしまった。幸いそれ以降オウガの気配はなく、無事に逃げ延びた者たちがお菓子の家再建へ懸命に取り組んでいるところだ。
「そういうわけで、集まってくれたみんなにはアリスラビリンスに行って、おいしいお菓子を作って、お菓子の家を建て直してもらいたいんだ。そうすれば現地のアリスや愉快な仲間達は安心して暮らせるし、私たち猟兵も森を安全に通過できるよね!」
 幸い、周囲にオウガの姿はない。戦闘に発展することはなさそうだ。だが、どうやら何者かがいたずらをしてお菓子作りを妨害しているらしい。
「ひどいよね、協力して頑張ってるのに嫌がらせするなんて!」
 ミニスはぷんぷんと憤る。
「いたずら程度だから警戒してれば防げると思うけど、一応気をつけてね。それじゃ、みんな頑張って!」


紙箱
 割合平和なOPですが、戦争シナリオです。
 よろしくお願いします。

●依頼内容
 舞台は『迷宮災厄戦』のマップ⑮、お菓子の家が多すぎる国。1章のみで完結となります。内容が内容ですので、対策があれば難易度はかなり低めです。
 皆で美味しいお菓子を作り、壊されてしまったお菓子の家を再建して、森に安全を取り戻しましょう。
 そんなわけで、今回のプレイングボーナスはこちら。

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プレイングボーナス……美味しいお菓子のレシピを用意する。
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 料理技能がなくても大丈夫。道具や食材も事前に用意したことにしますのでご安心下さい。真面目でもギャグでもご自由に。
 ただし、森には『邪悪な子供達』が潜んでいます。オウガに洗脳されてしまった、愉快な仲間達です。
 彼らはあの手この手でお菓子作りの邪魔をしてきます。邪魔とは言っても、油断さえしていなければ簡単に防げるような、いたずら程度の行為です。どなたか対策されている方がいらっしゃればどうとでもなるでしょう。

●その他、受付開始等
 8月8日の朝8時30分頃、ゲーム内での日付変更後から受付を開始致します。断章はありません。
 締め切りはマスターページにてご連絡します。なるべく多人数を採用できるよう尽力致しますが、それでも人数次第では不採用が出る可能性もございます。その際はご容赦頂けますと幸いです。

 それでは、皆様のお菓子作りを楽しみにお待ちしています。
7




第1章 冒険 『お菓子の家つくり』

POW   :    生地をこねたり伸ばしたり、オーブンの火加減を調節するなど下拵えや準備を担当する

SPD   :    正確に材料を計ったり、綺麗に角がたつくらいにホイップするなど、技術面で活躍する

WIZ   :    可愛い飾りつけや、トッピングで、お菓子を美味しそうにデコレーションする

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

寧宮・澪
ア○
連○

わーい……お菓子、いっぱい作りましょ……

いたずらっ子さんは、猫の召喚で見張りを……小さいの、あとであげますね
美味しいレシピもありますよー……ちゃあんと、練習してきました

カップ1杯の小麦粉とアーモンドプードルお好みで……全部ふるっておいて
全卵三個を溶いたら、カップ1杯お砂糖入れてぐーるぐる、しっかり泡立てて……
粉をさっくり混ぜて、天板に流してオーブンで焼きましょー……
ココアを加えた生地も作りまして……
固く泡立てた生クリームで接着ー……市松模様の壁に、ストライプの屋根……窓にはべっこう飴……生クリームの薔薇で飾り……チョコのドアで完成ー
小さいのも作りましょ……あげる分と、自分用ー



「わーい……お菓子、いっぱい作りましょ……」
 楽しげな台詞とは裏腹の間延びした声音と眠たげな無表情で言い、寧宮・澪(澪標・f04690)はキッチンの前に立った。
 必要な器具、材料、レシピは準備済み。菓子作りは事前に練習しておいてある。用意は万端だ。
「さてー……」
 まずは生地作りだ。小麦粉とアーモンドプードルをふるいにかけ、粉を作る。
 ふるい終えたら、今度は生卵を割りボウルに入れ、よく溶かす。溶かしたらそこに砂糖を加える。
「ぐーるぐるー……ぐーるぐるー……」
 相変わらずのぼんやり顔でそんな風に独り言を口にしながら、ボウルの卵と砂糖を丁寧に泡立てていく。そして先程ふるいにかけておいた粉を混ぜれば、生地の完成だ。
 ココアを加えた生地も作り、それぞれ天板に流し込んだ。後は焼くだけだが──。
「……む」
 哨戒のため事前にユーベルコードで召喚しておいた猫のうち一匹の目に、招かれざる客の姿が映った。澪と五感を共有している猫が見たその「客」は人間の童女を絵本風にデフォルメしたような容姿で、澪の背に忍び足でにじり寄って来ている。
「にゃー」
 猫が鳴き、突然の鳴き声に童女は目を見開いて一瞬硬直した。どこから聞こえたのかと、辺りをきょろきょろと見回している。その隙に澪は天板をオーブンにセットして、それから振り返り、尋ねた。
「何かご用ですかー……?」
 気付かれているとは考えていなかったのだろう。童女はより一層身を強ばらせ、後ずさる。
「お菓子なら……もうちょっと時間、かかりますよー……」
 穏やかな澪の声。童女は問いに答えず、叫んだ。
「て、撤退ー!」
 童女は身を翻し一目散に逃げ出した。物陰から似たような姿の童女がもう一人立ち上がり、一緒に逃げていく。どうやら隠れて機を窺っていたようだ。
「いたずらしないなら……分けてあげても……よかったんですけどー……。追いかけてくださいー……」
 喚び出した猫の何匹かを追跡に回し、澪はオーブンに向き直った。

「完成です……わー……ぱちぱち……」
 完成したお菓子の家を見上げ、やはり言葉とは一致しない気の抜けた様子のまま、澪は拍手した。
 生地は固く泡立てた生クリームにより接着され、ココア入りの生地を使い壁は市松模様、屋根は縞模様になるよう組み上げた。窓にはべっこう飴をはめ込み、ドアにはチョコレートを用いている。そして家の所々に生クリームで形作った薔薇の飾り。立派なお菓子の家がそこにあった。
「やったー!」
「ありがとう!」
 集まった愉快な仲間達も快哉の声を上げ、口々に感謝を述べる。
「どういたしましてー……あ、そうだ……」
 澪はぽん、と一度手を打った。
「食べる用に……小さいのも、作ったんですー……皆さんも一緒に、どうですかー……?」
「本当!?」
 愉快な仲間達は無邪気に喜ぶ。追跡に回っていた猫たちも折良く戻ってきた。
「じゃあー……せっかくですし……このお家の中で食べましょー……」
「はーい! いただきまーす!」
 出来たてのお菓子の家の中に、談笑が響き渡った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リリスフィア・スターライト
アドリブ他の猟兵達の絡み可

優しくお淑やかな人格の『フィア』で参加しますね。
お菓子の家づくりを頑張りますね。
お菓子でも家なのですし、崩れたりしないよう
バランスを考えて作りたいです。
クッキーやマドレーヌなどの焼き菓子をメインに作って
チョコレートでコーティングするようにしますね。
オルタナティブ・ダブルで明るく前向きな主人格の『スフィ』を
呼び出して手伝ってもらったり、邪悪な子供達に悪戯されないよう
見張っていてもらいます。
もし邪悪な子供達を見つけましたら、
作っていたクッキーの差し出して
悪戯を止めてもらうよう説得します。
それで洗脳も解けるといいのですが…

「メルヘンチックに作るのは楽しいですが…大変ですね」



 リリスフィア・スターライト(プリズムジョーカー・f02074)の人格の一つ、『フィア』は森に降り立ち、周囲に目を配る。
「悪戯っ子たちはまだいないみたいだね」
 ユーベルコードで召喚しておいた、リリスフィアの主人格『スフィ』の分身も同様に近辺を見回した。
「そうですね。では、始めましょう。辺りの警戒、よろしくお願いします」
「了解」
 フィアは菓子作り担当。スフィは『邪悪な子供達』による悪戯を警戒しつつ、時折菓子作りを手伝ってもらう。それが彼女たちの立てた手筈だった。
 フィアはキッチンに立ち、普段はツインテールにしている髪を一度解いて後ろにまとめた。
「さあ、頑張りましょう」
 菓子でできているとはいえ、家は家だ。倒壊してしまわないよう、強度とバランスを考慮しなければ。フィアはそう考え、クッキーやマドレーヌなどの焼き菓子を中心とした家を作ることにした。
 生地を作り、オーブンで焼き、チョコレートでコーティングして建材とする。家を建てられる程の量となれば、一回焼いただけでは足りない。数千人、数万人分用意するつもりでなければ不足なのだ。
「ふう……。メルヘンチックに作るのは楽しいですが……大変ですね」
 フィアは一息つき、額の汗を拭った。スフィも同意して続ける。
「本当にね。家一軒分だもの、さすがに多──おっと」
 スフィは言葉を切り、突然物陰へと駆け出した。物陰から人の頭が覗き、その何者かの腕をスフィが掴んだ。
「そんなところで何やってるのかな?」
 スフィに引きずり出されたのは、四、五歳程の意地が悪そうな少年だった。ただの少年と評するには、少々デフォルメが効いた姿ではあるが。
「は、離せー!」
 逃れようと暴れる少年。フィアはそんな彼へ穏やかな面持ちで言う。
「どうか落ち着いて下さい。あなたに危害を加えるつもりはありませんから」
 テーブルへ歩き、先に焼いておいたクッキーを小皿に乗せて少年の前へ運んだ。
「これ、食べますか? あ、毒なんて入れていませんから、安心して下さい」
 少年にクッキーを差し出す。少年は恐る恐る手を伸ばし、クッキーを一口かじった。
「……おいしい」
 少年の顔が緩んだ。発見された直後とは異なり、純粋さのにじみ出した澄んだ表情だ。そんな様子を見て、フィアは柔和に微笑む。
「ふふっ、よかった。もっとありますよ、よろしければ一緒にどうですか?」
「えっ、いいの!?」
 少年は目を輝かせて。
「……って、ちがーう!」
 すぐ元のいじめっ子顔に戻り、逃げ出した。途中で振り返り、フィアとスフィに向けて叫ぶ。
「今日はこのぐらいで勘弁しといてやるよバーカ!」
 そんな、子供らしい負け惜しみを。
「うーん、洗脳、解けかけてた気がするんだけどな」
 少年の後ろ姿が遠くに消えるのを見送って、スフィは頭の後ろで指を組んだ。
「そうですね……」
 フィアは嘆き、目を伏せた。
「やはり、彼らを救うにはこの『迷宮災厄戦』を終わらせる他にないのでしょうか」
「そうかもね。そのためにも、まずこのお菓子の家作りを片付けなきゃ」
「ええ。もう半分以上はできていますし、残りも頑張りましょう。この森に住む人々と、あの子たちのためにも」
 フィアは髪を結んでいるバンドを締め直し、スフィの分身と共に再びキッチンへ戻った。お菓子の家完成までに、焼かなければならない菓子はまだまだ多い。

大成功 🔵​🔵​🔵​

雪・兼光
へ…?
まさか戦争中なのにお菓子作りをすることになるなんて。

美味しいお菓子のレシピならある程度メモには取っているけど、
なんでかって?自分で作る用だよ。ほら、スマホのメモ帳にぎっしりとな。
さて、ブルーベリーマフィンもあるし、キャラメルバウンドケーキのレシピもなぁ

(料理使用)
下ごしらえは俺にまかせろ、見事にメレンゲも生クリームもホイップしてやるぜ。今ならチョコレートの千切りだってできそうだ。手首を酷使してやる。

こらこら、人の作業の邪魔をしない。
え?なにこいつらがさっきから邪魔していた奴らなのか?
…め。(相手の額に人差し指をぽんっと浄化含め)
……さすがにこれで洗脳とか解けるわけねーか。



「まさか戦争中なのにお菓子作りをすることになるなんて」
 雪・兼光(ブラスターガンナー・f14765)は目の前に並べられた調理器具と、愉快な仲間達によって建築中のお菓子の家を交互に見て、『お菓子の家を作れ』などという冗談めいた依頼が決して冗談ではないことを理解した。
 スマートフォンを取り出し、メモ帳アプリを立ち上げた。
 アプリにはいくつもの菓子のレシピが保存してある。元々、自分で作るために保存しておいたものだった。ブルーベリーマフィンに、キャラメルバウンドケーキ、その他諸々。お菓子の家を建てるには充分な量があるはずだ。
「よっしゃ、やるか。下ごしらえは俺にまかせろ」
 気合いを入れ、兼光はジャケットの袖をまくり上げた。
「まかせたー!」
 周囲にいる、様々な動物のぬいぐるみのような姿をした愉快な仲間達が明るく返答した。
 宣言通り、兼光は下拵えに取りかかった。マフィンやバウンドケーキの生地を焼き、合間にメレンゲをかき混ぜて作り、生地が焼き上がれば生クリームをホイップ。手慣れた所作で菓子を作り上げていく。
 調子がいい。今ならチョコレートの千切りもできそうな気がする。試してみよう。
 まな板の上に板チョコレートを乗せ、利き手には包丁。さて、存分に手首を酷使してやろう──そう意気込んだその瞬間、兼光の第六感が後ろに何者かがいることを伝えた。同時に視界の端に人の手らしきものが映った。隣に置いたメレンゲ入りのボウルに手を伸ばしている。
「こらこら、人の作業の邪魔をしない」
 兼光は包丁を一度まな板に置き、何者かの手を掴んだ。
「あっ!」
「バレちゃった!」
 手の主である年端もいかない少女と、少女と同年代らしき、兼光の背を取っていた少年が声を上げた。
「あー! さっき家の壁を壊していった奴らー!」
 更に別の叫び声。今度は愉快な仲間達の一匹によるものだ。パンダ風の愉快な仲間達が、指……の代わりに前足の先を幼い二人へ向けている。
「え? なに? こいつらがさっきから邪魔していた奴らなのか?」
 問われ、二人は顔を逸らした。認めたようなものと見ていいだろう。
「全く、困った奴らだな。……め」
 兼光は二人の額に人差し指を優しく当て、浄化の力を流し込んだ。子供たちは急に動きを止め、邪気のない表情で呆然と虚空を見つめている。
「お、ちゃんと効いたか?」
 気の抜けたままの少年と少女。しばらく硬直していたが、やがて元の意地が悪そうな顔に戻ってしまった。
「お、覚えてろよー!」
 少年が捨て台詞を残して駆け出し、少女もそれを追い走り去った。
「……さすがにこれで洗脳とか解けるわけねーか」
 兼光は肩を竦め、念の為メレンゲが無事か確認した。見たところ、毒が入れられた様子はない。味見してみても、毒らしき味や症状は感じない。
「大丈夫そうだな。それじゃ改めて」
 先程切れなかったチョコレートに目を向け、兼光は再度包丁を手にした。
 腱鞘炎になりそうな勢いでチョコレートを刻んでいく。菓子はまだまだ必要量に満たない。悪戯を阻止しつつ、もっとたくさん作らなければ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

天星・零
enigmaで夕夜と

『ふふ、楽しそうですね。依頼ですし僕らも作りますか。夕夜、何を作ろうか?』

「マカロン、ケーキ…うーん、迷うぜぇ。よし、どっちも作るか!」
『いいね。ケーキは小さいものを何種類か作ろうか。調理器具は僕が出すね』


料理器具は虚鏡霊術で零が創造

楽しそうに振る舞うが周囲を警戒し【情報収集】しながら常に状況を確認

『夕夜、味見してみて』

何かされそうなら、偶然を装って回避
例えば、毒を入られそうなら料理作業の途中で偶然にもボールごと移動したり演技をし、
火に入れられそうな時は指定UCで燃えてる前の状況に戻して火を消し回避などあくまで偶然を装って回避


夕夜の口調は一言欄
零は夕夜のみ口調が素



 他の猟兵や現地の愉快な仲間達がお菓子の家を組み立てていく様を眺め、天星・零(零と夢幻、真実と虚構・f02413)は柔和な笑みを浮かべた。
「ふふ、楽しそうですね」
 にこやかに言い、実体化させたもう一つの人格、「夕夜」に顔を向ける。
「依頼ですし僕らも作りますか。夕夜、何を作ろうか?」
「マカロン、ケーキ……うーん、迷うぜぇ」
 夕夜は腕を組み考え込む。逡巡の後、彼はパン、と手を打ち、もう一人の自分とは趣の異なる快活な笑顔を見せた。
「よし、どっちも作るか!」
「いいね。ケーキは小さいものを何種類か作ろうか。調理器具は僕が出すね」
 零が霊術を用いて、調理器具を生み出す。そうして、彼らのお菓子の家作りが始まった。

「よし、一セット目完成ですね。夕夜、味見してみて」
 チョコレート色のマカロンを零は一個手に取り、夕夜に差し出す。
「よっしゃ任せろ。……うめぇ! よくできてるじゃねえか」
 マカロンを咥えた夕夜はすぐに頬を綻ばせた。
「そうか、それはよかった」
 零は夕夜に笑いかけ、何気なくメレンゲの入ったボウルを取った。ボウルのあった位置で子供らしき小さな手が粉末入りのカップを取り落とすのに目もくれず、夕夜に尋ねる。
「そっちの進捗はどうかな?」
「ああ、そろそろ焼ける頃だぜ」
 夕夜は火のともる中世風のオーブンに顔を近づけた。オーブンではケーキの生地が焼かれている。
「もうできただろ──うおっ!?」
 突然背中から衝撃を受けた。人がぶつかった程度の衝撃だ。姿勢を崩した夕夜の顔はオーブンの中で揺らぐ炎へ向かい、しかし炎に焼かれることなくオーブンに軽く頭をぶつけるに留まった。
「あれ!? な、なんで」
 夕夜の背にぶつかった、正確には体当たりした少年が驚愕の声を漏らす。
「つぅ……“偶然”火が消えなかったら大火傷だったぜ」
 オーブンの火はまるで、火を点ける前のもので上書きされたかのように突然消えたのだ。夕夜は身を起こし、焼いていたケーキ生地を見た。
「お、いい具合に焼けてそうだな。零、今度はお前が味見してくれよ」
「うん、わかった」
 生地をトレイに乗せ、零と夕夜はテーブルへと歩む。呆然と佇む少年を残して。
「では、失礼して。うん、いい出来映えだね」
「だろ? よっしゃ、この調子でどんどん作っちまおうぜ!」
 明るく話し、早速次の準備に取りかかる夕夜。
「家を建てるにはまだまだたくさん必要だからね」
 あくまでも物腰柔らかな態度を崩さず、静かに用意を始める零。
 もちろん、零がボウルを動かしたのも、オーブンの火がタイミングよく消えたのも偶然などではない。
 彼らはお菓子作りの邪魔をしに来た少年の一挙手一投足を密かに警戒し、さも偶然であるかのように装い回避していたのだ。オーブンの火が消えたのも、零のユーベルコードによるものである。
「こうやって菓子を作んのも案外楽しいもんだな!」
「うん、そうだね。帰ってからも、暇な時に作ってみようか」
 そんな風に仲睦まじく語り合いお菓子を作る二人。いたずらをことごとく失敗し続ける少年をよそに、二人の楽しいお菓子作りは続く。

●お菓子住宅、復活
 各猟兵の手助けにより、森にはお菓子の家の姿が蘇った。
 猟兵と愉快な仲間達は喜びを分かち合い、家の中で一時の休息を過ごした。
 願わくばこの戦争が無事に終わり、二度とお菓子の家が失われることのないように。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年08月16日


挿絵イラスト