迷宮災厄戦⑪〜教えて、ハロウィンナイトメア
●ハロウィンナイトは永遠に続く
「やぁやぁ、鏡よ! 御機嫌よう!」
地面や木々、或いは建物の壁から。ぐるりと見回せば至る所から生えているのは鏡。その鏡達へ向かって、一人の少年が演技染みた振る舞いで挨拶をしていた。
「鏡よ、今日の来客の予定は?」
摘まんだロリポップを鏡へ向けながらそう問うと、鏡は静かに輝きながら答える。
『大勢やって来るでしょう』
鏡に映されたものは多種多様の姿を持つ者達。これはアリスではない。間違いなく異なる世界の来訪者だ。
意外な結果を目にした少年は少しだけ驚くと、直後、嬉しそうな笑顔を浮かべ機嫌を良くした。
「へぇ、そうか! これは何とも元気そうなお客だ。しっかりと出迎えの準備をしなければね!」
少年はロリポップを口に咥えると、くるりと体の向きを変え屋敷の中へと急ぎ足で戻るのだった。
「さ、鏡よ、教えておくれ! 彼らはいつ頃到着しそうなんだい?」
パーティ! パーティ! 今夜は楽しくなりそうだ!
●真実を告げる鏡の間
「さて、時期にはまだ早い気もするんだが」
ハイン・ジャバウォック(虚空の竜・f28296)は集まった猟兵達に説明を始める。
「今からお前達に行って貰う場所は、とある屋敷だ。そこではハロウィンのパーティーが行われている」
向かう国は『鏡の女王の怨念が籠もった国』。そこではありとあらゆる場所から不思議な鏡が生えている国だという。
「あちこちに生えているのは『真実の鏡』と言って、質問すると『この国の事』なら何でも答えてくれる代物らしいぜ。……つまり、パーティーの主催者はそれを利用して来客をチェックしているって事だ」
来客とはアリスの事だ。迷えるアリスを迎え、パーティーという名の殺人を行う。そう、言わずもがな主催者はオウガなのである。
今回の目標は、そのオウガを討つ事だ。
「屋敷の中へ入れば、そのオウガは待っているはずだ。室内に生えた鏡を利用してこっちの居場所を正確に把握した上で襲って来る。普通に避けるのも攻撃を当てるのも、かなり難しい戦闘になるだろうな」
とは言え対策なら一応ある、とハインは言葉を続ける。
「鏡は俺達にも使えるんだ。だからこっちも利用してやればいいって訳だ。屋敷の事とか相手の事なら鏡も全部知ってるだろうからな!」
しかしそれは相手も予測をしている事だろう。鏡に質問するチャンスはシビアなものになると思われる。その為、何度も質問ができるとは考えない方がいいだろう。
「さて、説明はここまでだぜ。問い掛ける内容をしっかり考えながら準備をしてくれな。んじゃ、頑張れよ」
ハインは笑顔を浮かべ、グリモアを輝かせた。
眩しい輝きが徐々に静まり、猟兵達の視界に広がったものは、様々なお菓子や骸骨で飾られたカボチャの屋敷だった。
ののん
お世話になります、ののんです。
●状況
アリスラビリンス『迷宮災厄戦』の戦争シナリオとなります。
1章で完結します。
●戦場について
国の至る所に『真実の鏡』が存在しています。
鏡は『この不思議の国内部の事』であれば何でも答えてくれるので、こちらも有効活用しましょう。
ただし戦闘の最中ですので流暢に質問を考えている余裕はないものと思って下さい。せいぜい一回、多くて二回が限度でしょう。
プレイングボーナスは以下の通りです。
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プレイングボーナス……鏡に有効な質問をする。
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●プレイングについて
受付期間は特に設けておりません。
キャラ口調ですとリプレイに反映しやすいです。
お友達とご一緒する方はIDを含めた名前の記載、または【(グループ名)】をお願い致します。
同時に投稿して頂けると大変助かります。
申し訳ありませんがユーベルコードは基本的に【選択したもののみ】描写致します。
以上、皆様のご参加お待ちしております。
第1章 ボス戦
『ハッピーシュガー』
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POW : ビッグポップ
【巨大なロリポップ】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
SPD : キャンディースコール
【お菓子を食べる事】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【キャンディーの雨】で攻撃する。
WIZ : ゴーストパンプキン
自身の身長の2倍の【カボチャお化け】を召喚し騎乗する。互いの戦闘力を強化し、生命力を共有する。
イラスト:kae
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠黒白・鈴凛」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ぎぃ、と扉を開く。大広間はハロウィンカラー一色。お菓子や蝙蝠、骸骨などが綺麗に飾られており、所々には例の鏡も生えている。
「ようこそ! 僕のパーティーへ!」
一人の少年が高らかに叫びながら階段を下りてくる。
「待っていたよ。さぁ今夜も楽しいハロウィンパーティーを開催しよう! 好きなだけお菓子を食べて、好きなだけ踊ろうか!」
カボチャのバケットにお気に入りのロリポップ。上機嫌な少年は一段ずつ下りながら鏡に問い掛ける。
「鏡よ、これから彼らの向かう居場所を教えておくれ」
ああ、来客の全てが手に取るように分かる。真実の鏡がある限り!
水心子・静柄
季節外れのハロウィンね…まぁハロウィンはあまり興味ないからいいけど。
奇襲されないように戦闘前に、敵がいる方向と距離を真実の鏡に聞いておくわ。戦闘中はビッグホップを使う時の癖とか予備動作とかを鏡に聞くわ。聞いた内容を元にビッグホップで攻撃してくる際に居合を合わせてカウンターを狙うわ。タイミングが合わなければ素直に躱すわよ。同じ間合いの攻撃だから、鏡で聞いた内容分私の方が有利になるはずよ。あとはいつも通り歴戦の戦闘勘(第六感と野生の勘)を発揮しながら立ち回るわ。
クロス・シュバルツ
アドリブ、連携可
ハロウィン……ですか。そもそも時期を間違えていますし、時期が正しいとしてもオブリビオンである以上見過ごす事は出来ません
丁寧にお出迎え頂いた所恐縮ですが、あなたのパーティーに参加するつもりはありません
すみませんが、骸の海へとお帰り願います
鏡への質問は「いつ、何処から攻撃を仕掛けてくるか」。攻撃の隙をついて反撃する事を念頭に
『第六感』を含めて攻撃のタイミングを図り、それに合わせて魔力で『残像』を発生させて撹乱しつつ回避
攻撃を躱した後、敵の足を鎖で『串刺し』にして『体勢を崩す』ことで隙を作りつつ【斬獲せし真影の刃】を発動した『捨て身の一撃』で黒剣を振るい、一気に攻撃
禍神塚・鏡吾
技能:狂気耐性、衝撃波、空中浮遊、だまし討ち、罠使い
「知られるのが居場所だけなら、騙しようはあります」
質問「厨房や浴室等の水がある所迄、オウガと遭遇しない最短ルートは?」
訊いたルートで移動し、UCで召喚した怪物を部屋の天井に広げて貼りつかせます
狂気耐性で正気を保ちつつ、偽装のため水道を衝撃波で破壊
床を水浸しにします
部屋の中央で僅かに空中浮遊してオウガを待ち伏せしましょう
オウガが来たらハッタリ
「貴方の技は接近戦用です。この滑る足場では十分な力を発揮できないでしょう」
見た目からしてオウガも飛べそうですが、目的は油断させる事です
近づいてきたら怪物に上から奇襲させ、呑み込ませます
「後は、宜しく」
桑原・こがね
なあるほど!隠れても無駄ってことは……どれだけ目立っても良いってことね!いやー張り切っちゃうなー!
「鏡よ鏡、このあたりで一番目立てる場所に行くにはどうしたら良いのかしら?」
一番目立てる場所に行って、いつものアレやりましょう!
かっこよく【存在感】出して!
闇に輝く黄金色
軽くはためく白羽織
刀を二振り携えて
桑原こがねここにあり!
恐れぬのならかかってこい!
さあ、あたしを見ろォ!
来ないなら、片っ端から鏡を割っていっちゃうわよ!
「たーのもー!」
豪快に扉を開けたのは桑原・こがね(銀雷・f03679)だった。元気な声が屋敷中に響き渡る。広いホールは実にハロウィンらしい飾り付けと色合いで飾られており賑やかだ。テーブルには様々なお菓子や飲み物まで並んでおり、家主は来客を快く迎える気であった事が窺える。
「わぁ、こんな時じゃなかったら喜んで参加したんだけどなー」
少しだけ残念そうにテーブルを眺めると、階段の上から家主である少年が現れ、こがねを出迎える。
「やぁようこそ! 僕のパーティーへ!」
アリスではない来客に少年は嬉しそうな様子を見せる。
「分かっているさ、猟兵。精々楽しもうじゃないか! 僕には手に取るようにキミの事が分かるんだ!」
「それは鏡があるから、でしょ? 知ってるよ! あたしだって使っちゃうもんねー!」
挑発するように笑顔で返すこがね。そう、所々から生える鏡は敵でも味方でもない。ただただ誰かの問い掛けに正直に答えるだけの代物なのだ。
「使った所でキミは勝てない。何故ならパーティーの主役は僕だからさ!」
少年は片手に持ったロリポップに魔法をかける。瞬時に巨大化したロリポップを両手で握ると彼は飛び上がり、こがねに向かって振り落とす。
「あら、残念」
こがねに当たるはずだったロリポップの頭が横へと弾かれる。それもそのはず、柱の影から飛び出した水心子・静柄(剣の舞姫・f05492)が鞘で妨害したのだから。
「招かれてあげたのに気付かないなんて、接客がなってないわね。……まぁハロウィンはあまり興味ないからいいけど」
静柄の冷たい言葉に少年は小さく舌打ちをする。
ありがとう! とこがねが彼女に礼を言うと、巨大なロリポップの頭に飛び乗り、高く飛び上がりながら大声で叫ぶ。
「おーい鏡よ鏡! このあたりで一番目立てる場所に行くにはどうしたら良いのかしらー!?」
隠れる必要がないのなら思い切り目立てばいい。こがねがホール中の鏡達に問い掛けると、鏡達は一斉に答える。
『そのままシャンデリアの真下に広がるテーブルの上に向かうといいでしょう』
「そのまま? っていうと一直線に向かえばいいのかな? なあるほど!」
「安心なさい、私達が邪魔をさせないわ」
そういう事でしょう? と静柄が少年に顔を向ける。
「ぞろぞろ来ると思った? いいえ、皆で一緒に来たわ。一人で大勢を相手にするのは苦手だった?」
「いいや、そんなはずはない! 鏡は全てを知っている!」
少年は再び巨大化させたロリポップを振り回し柱を破壊する。それは影に潜んでいた『もう一人の猟兵』への攻撃と、崩した柱によって静柄へ攻撃する双方を兼ね備えたものでもあった。
静柄は静かに体を低く身構え、柱の瓦礫を瞬時に避ける。一方、もう一人の猟兵はあたかも『その未来を知っていたか』のようにするりと少年の攻撃を回避していた。
「ぐっ――!」
少年の顔が歪む。いつの間にか彼の足に長い鎖が貫通し、縛られていたのだ。
「あなただけが全てを知っているとでも? それはとんだ錯覚です」
もう一人の猟兵、クロス・シュバルツ(血と昏闇・f04034)は鎖を強く握り、ぐいと引き寄せる。少年は倒れないよう踏ん張るが思うように身動きは取れない。
「丁寧にお出迎え頂いた所恐縮ですが、オブリビオンである以上見過ごす事は出来ません。あなたのパーティーはお断りします」
目を細め、はっきりと伝えるクロス。彼と静柄が動きを封じた間にも、こがねは鏡に言われた場所へと到着した。
「よーし、いつものアレやりましょう!」
すぅ、と息を大きく吸い。
「――あたしを見ろォ!!」
叫んだ直後、彼女は目立った。確かに目立った。何故なら真上のシャンデリアから水が溢れ出たからだ。
「あわわ、雨!? すごいキラキラで派手だね! 確かに目立つ!」
嬉しそうに踏ん反り返るこがね。そう、これは本当の雨ではない。シャンデリアから放たれるスプリンクラーの水だ。鏡が光を反射し、それが降り注ぐ雨を輝かせているのだ。
「いやはや、まさかこのような仕掛けがあるとは。鏡に聞かなければ想像もしていませんでした」
雨降らせるシャンデリアからしゃらりと降りてきたのは禍神塚・鏡吾(魔法の鏡・f04789)。予め鏡から聞いたルートから屋敷に潜り込み、影からシャンデリアを攻撃しスプリンクラーを起動させたようだ。
「そんな、僕の会場を台無しにするなんて!」
飾りが、お菓子が、全てが濡れていく。あっという間にホールは湿っていく。
「鏡でこちらの事が分かっていても、全てを対処しきれる訳ではなかったようですね」
「ま、そういう事です。お陰様で準備が整いました」
クロスと鏡吾の言葉に、少年はとうとう怒りを露わにする。鎖を破り、巨大なロリポップを再び大きく振り回す。
「どうしてそんな事をするんだ! こんなに不快なパーティー、僕は許さない! 鏡よ、教えてくれ! どうしたら彼らを殺せる!!」
そう鏡に問い掛ける。鏡は答える。
『それは』
「がっしゃーん!」
散り散りばらばら、鏡は割れる。二振りの刀を握ったこがねが雨降る中で踊るように舞い、次々と鏡を割っているのだ。
「あら、もしかして催し物よりも鏡の方が大事だったの?」
それはご愁傷様、と静柄は少年の背後で囁く。直後、姿を消したかと思えば、見えない抜刀によって少年の体をロリポップごと斬り裂く。
「……その生命を斬獲する、真なる影の刃」
闇を纏った黒剣をクロスが振るう。半月を描いた黒剣は確かに少年を貫いたが、その体には傷一つ付いていない。
生命力を奪われた少年はふらりとよろける。最後の力を振り絞り、彼は割れたロリポップを握り締め襲い掛かった先は、鏡を割るこがねだった。
「許さない……! キミ達のせいで! お前達のせいで!!」
しかし、彼が向かった先はこがねの元でもあり――シャンデリアの下でもあった。
「……水を降らせるだけだと思っていましたか?」
残念だ。鏡吾は目を閉じる。
「後は、宜しく」
じゃらじゃら。ずるり。シャンデリアと共に何かが落ちてきた。それはただの水の塊ではない、何とも表現できない何かだ。餌を待っていたと言わんばかりにそれはシャンデリアのスプリンクラーから現れ、巨大な音を立てて落ちたシャンデリアと共に少年を潰し、そして覆い被さった。
「ひゃーこわっ! そんな気がしてたんだよ!」
増大した身体能力で後ろへ大きく跳躍したこがねが階段の上へと着地する。ずるりとした何かに覆われた少年はホールに声を響かせる事もなく、そのまま静かに飲み込まれていったのだった。彼の体が何処へ行ってしまったのかは、誰も知らない。
雨は止み、パーティーは終わった。賑やかそうに見えていた会場も、今ではその影すらなく。
「鏡よ」
クロスはひび割れた一つの鏡に向かって問い掛ける。
「ここに、オウガはまだいますか?」
ひび割れた鏡は答える。
『もういません』
「果たして本当でしょうか?」
冗談交じりに微笑む鏡吾。その独り言も鏡は反応し、
『本当です』
短く答える。
「ほら、鏡が鏡をいじめないの」
「ま、本当ならこれで一件落着だね!」
静柄もやんわりと微笑み、疲れ知らずのこがねも元気に頷く。
誰一人いなくなった屋敷から出ていく猟兵達。滴る水と鏡はいつまでもきらきらと輝いていた。
大成功
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