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迷宮災厄戦⑫~みにくい星屑の子

#アリスラビリンス #戦争 #迷宮災厄戦

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●星屑の少女達
 わたし達は『星』に成れなかった。
 それはきっと、わたし達が主役の星と比べてみにくいから。
 きらきらと光る一番星のまわりでは、わたし達なんてただの昏い星屑。
 でも、いつか。
 スポットライトを浴びて踊りたい。観客から惜しみない称賛の拍手を受けたい。
 そんな夢を見て、願いを抱いていたら、星のように輝くたまごを見つけた。
 わたし達はまだ孵っていない、たまごのようなもの。それでも未だ自分の力だけで輝けはしないから――煌めく星を、集めよう。

 ころころ、ころり。
 不思議の国に黄金の卵が産み落とされていった。
 卵の世界と呼ばれるこの場所には、黄金のガチョウがそこかしこに走り回っている。
 あちこちを転がるぴかぴかした卵は力の源。手にした者に魔力や霊力、腕力や脚力などの欲しい力を与えてくれるものだ。
 卵を拾えば拾うほど、力もたくさん与えられる。
「ああ、これが『星』に成るためのものね」
「きらきらひかる一番星に……」
 星屑の少女こと、オウガ達は力を得るために輝く卵を拾い続けていく。そうして卵を白銀のナイフで砕いた少女達は苦しげに黄金を飲み込み、力を蓄えていった。
 醜くとも構わない。
 すべては星――唯一のスターになる為に。

●寓話のたまご
「童話にある、黄金の鵞鳥のお話は知ってる?」
 知らなくても大丈夫だけどね、と一冊の寓話集を開きながら告げたのは、花嶌・禰々子(正義の導き手・f28231)だ。
 幸福を配る王子に青い鳥、或るアヒルの子の話。
 童話には鳥が登場することが多いが、今回はその中のひとつである黄金の卵を産むガチョウが出てくるのだという。
「その不思議の国の名前は『ザ・ゴールデンエッグスワールド』っていうの。其処には黄金の卵を産むガチョウがいて、いたるところにいっぱい卵が落ちているらしいわ!」
 金の卵は特別なもの。
 所持した者に能力を与えるという卵は、持てば持つほど力が漲る。
 そして現在、其処に配置されたオウガの少女達が卵を集めて回っているという。
「通称、星屑。スターに成れなかった子達が堕ちた姿のようね。彼女達が卵を拾ったらとんでもなく強くなってしまうわ。だから、その前に皆が卵を回収して欲しいの!」

 しかし、黄金のガチョウの話が寓話であるように教訓もある。
 それは欲張りすぎると全てを失うということ。
 今回の場合は両手いっぱいに黄金の卵を集めてしまうと、重さや動き辛さなどでうまく行動ができなくなる。集め過ぎも問題になるので兼ね合いが難しい。
 己の強化を重視するか。
 敵に卵を集められないよう立ち回るか。
 或いは両方を程よくこなすか。
 どのようなことに重点を置くかで戦い方も変わっていくだろう。敵はというと、星に成りたいという思いから卵を飲み込んでしまう。
 そして、見せ場の舞台は此処であると示すように少女達は踊り続ける。
 このまま星屑の少女達を放っておくと国は毀れて壊滅するだろう。そうすれば戦の進行に支障が出てしまう。
「それからね、彼女達は自分をみにくいものだと思っているらしいの。……どうしてかしら、本当は可愛いのにね」
 それでも、いつか――醜い鳥が美しい白鳥になったように自分も、と夢を見ている。
 その夢は叶うことがないゆえに悲しい。
「でもね、だからこそ彼女達の最後の踊りを見てあげて」
 そのうえで全力で戦って送って欲しいと話した禰々子は、仲間達に願う。
 たとえ星屑でも、星は星。
 スターへの道は続かずとも、輝こうとする者の心に貴賎などないはずだから。


犬塚ひなこ
 こちらはアリスラビリンスの戦争、『迷宮災厄戦』のシナリオです。
 戦場は『ザ・ゴールデンエッグスワールド』となります。

 今回は六名様前後を採用し、早期に完結させる予定です。
 描写数を増やしても早期完結できる元気があれば、少し採用が増えます。
 状況次第で頂いたプレイングに何も問題がなくてもお返ししてしまうこともありますので、ご了承の上でご参加頂けると幸いです。

●プレイングボーナス
『黄金の卵をオウガに取らせず、自分達が取る』

 黄金の卵は戦場のそこかしこで産み落とされています。
 一人につき、敵一体と戦うことになります。卵を所持した者は獲得数に応じてパワーアップするので、オウガの邪魔をしながら拾いましょう。
 どうやって持つかも課題です。あなたらしい集め方をどうぞ!

 オウガは卵を丸呑みしますが、卵は中まで黄金なので猟兵がその方法を行うのはあまりおすすめできません。また、黄金の卵をたくさん持っていると所持者自身も黄金に光りはじめます。ぴかぴかスターです。
 なおこのパワーアップはこの国でのみ有効ですので、ご注意ください。
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第1章 集団戦 『星屑のわたし達』

POW   :    パ・ド・ドゥをもう一度
【ソロダンスを披露する】時間に応じて、攻撃や推理を含めた「次の行動」の成功率を上昇させる。
SPD   :    我らがためのブーケ
いま戦っている対象に有効な【毒を潜ませた美しい花束】(形状は毎回変わる)が召喚される。使い方を理解できれば強い。
WIZ   :    そして、わたし達は星になる
【星のような煌めきを纏う姿】に変身し、武器「【白銀のナイフ】」の威力増強と、【魔法のトウ・シューズ】によるレベル×5km/hの飛翔能力を得る。

イラスト:伊間川九百

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

須藤・莉亜
血界形成のUCを発動し、周囲の無機物を金の卵もまとめて血に変化。中まで黄金なら卵も血に変えられるよね?
敵さんに回収される前に、UCの効果範囲の卵は全て血に変えちゃおうか。それにしても、黄金で出来た血ってゴージャスな感じで浪漫味を感じるねぇ。

んでもって、変換した血を槍やら剣やら鎖やらに変えて、敵さんを全方位から攻撃していく。
敵さんの動きを見切り、的確に攻撃を当ててこうか。

もちろん吸血も狙って行きます。
四肢を斬り刻んで体を鎖で縛れば、ちっとは血を奪いやすくなるんじゃないかな?優しく痛みもなく血の全てを奪ってあげる。

「良い踊りを見せてくれてありがとう。」
お礼に、穏やかに眠るように死なせてあげる。



●血の踊り
 陽の光を受けて輝くのは卵。
 黄金のガチョウが産み落としていく卵は、まさに星の欠片のよう。
 須藤・莉亜(メランコリッパー・f00277)はザ・ゴールデンエッグスワールドという名で呼ばれる世界を見渡した。
「なるほどねぇ」
 其処彼処に転がっている卵を見遣り、莉亜は片目を眇める。
 あの卵を敵に取られたら拙いのならば徹底的に邪魔をしてやればいい。
 ――さあ、この場全てを血で満たそうか。
 目を鋭く細めた莉亜は己の力を紡ぎ、血界を形成していく。
 それは周囲の無機物を血に変えていく力だ。金の卵もこうして纏めて変化させていけば敵が手に取ることもない。
「中まで黄金なら卵も血に……うん、やっぱりそうだね」
 それまで輝いていた卵は瞬く間に赤い色に染まり、どろりととけていく。
「卵が……!」
 其処に訪れた星屑の少女が、はっとした様子を見せた。やぁ、と呼びかけた莉亜は周囲の卵はすべて血に変えてしまったことを示す。
 敵が回収できなくなった代わりに莉亜自身も卵の力を得られないが、邪魔をするという点ではかなり効率の良い方法だ。
 しかし、周囲に血さえあればそれが莉亜の力になる。
「それにしても、黄金で出来た血ってゴージャスな感じで浪漫味を感じるねぇ」
「わたしの星への道が……ああ……」
 嘆いた様子の少女はキッと莉亜を睨みつけ、白銀のナイフを握り締めた。
 対する莉亜は変換した血を槍や剣、鎖へと変化させていく。
 血と銀。
 ダンピールとダンサー。
 双方の力は衝突しあい、激しくも何処か優雅な雰囲気が巡っていく。
「わたしはいつか、星になるの――!」
「へぇ、そうなんだ」
 魔法のトウ・シューズを鳴らして跳躍した少女は飛ぶ。決死の覚悟で迫ってきた彼女に僅かな視線を返した莉亜は、血槍を解き放った。
 其処から血の剣を振るい、更には全方位から血鎖を絡ませていく。
 銀のナイフは莉亜に届く直前に血の壁によって防がれた。苦しげな声が少女から零れ落ち、その身は鎖に囚われていく。
 抗おうとして身体を動かす様は、まるで死の舞踏を踊っているかのようだ。
 卵による強化も叶わず、攻撃すら届かせられぬまま鎖に絡め取られた星屑の少女。
 四肢は刃によって斬り刻まれており、身動きすら取れない。傍に歩み寄った莉亜は手を伸ばし、そっと宣言する。
「優しく痛みもなく血の全てを奪ってあげる」
 そして――彼女の血液は莉亜の糧となって吸い取られていった。
 暫し後、其処には力なく倒れ伏した少女を見下ろす莉亜の姿があった。穏やかに眠るように死した少女の身体が次第に消えていく。
「良い踊りを見せてくれてありがとう」
 これがせめてもの手向け。
 莉亜が告げていく言葉が紡がれ終わった時、星を夢見た少女は完全に消滅した。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

ディルク・ドライツェーン
へへ~っ、黄金集めなら海賊の出番だろっ!
スターになれないとみにくい…のか?
よくわかんねぇけど、オレと踊ろうぜっ!

【宝探し】と【野生の勘】でアインと一緒に卵探すぞ
回収したら紐で縛るズタ袋に入れて【怪力】で
戦闘の妨げにある程度ならないくらい持つ
残りは敵に見つからないよう埋めたり隠したりする

敵が卵を拾うのは、オウガ刀を投げて邪魔するぜ
怯んだその間にアインに卵を回収してもらうっ

へへっ、そろそろオレと一緒に踊ろうぜっ!
敵のUCは【毒耐性】があるけど
喰らわないよう【見切り】で回避しつつUC使用して【カウンター】
スターってオレよくわかんねぇけど、アンタとのダンスは楽しかったぜっ♪



●君とダンスを
 金のガチョウが卵を産んで、ころころと転がってゆく。
 あちこちで産み落とされている黄金の卵は煌めいていた。遠くから眺めれば星の輝きにも見えるかもしれないと感じながら、ディルク・ドライツェーン(琥珀の鬼神・f27280)は拳を強く握り締める。
「へへ~っ、黄金集めなら海賊の出番だろっ!」
 銀色の毛並みの狼、アインを連れたディルクは近くにあった卵を拾いあげた。
 卵はずっしりと重くてまさに黄金の風格を持っている。
 ディルクはアインを呼び、一緒にもっと卵を探すぞ、と意気込む。
「あっちにもあるな!」
 ガチョウを追いかけてひとつ、木の陰に見つけてまたひとつ。回収した卵は持参した袋に次々と入れ、ディルクは卵を集めていく。
 それでも持ちきれないものはアインが地面に埋めて隠していった。
 あるとき、不意に彼の視界にオウガの少女が入った。彼女もまた黄金の卵を集めているらしく、はっとしたディルクは即座に動く。
「させるかっ!」
 彼がオウガ刀を投げたことで星屑の少女は手を引いた。
 黄金の卵を拾っていればその掌が刃に貫かれていただろう。その間にアインが駆け、少女の元から卵を奪い去った。
 唇を噛み締めた星屑の少女は忌々しげに問いかける。
「どうして邪魔をするの? ……そうね、わたしがみにくいからかしら」
 星になりたいのに。
 未だスターになれないから。
 そんなことを呟いた少女に対してディルクは首を傾げる。
「スターになれないとみにくいのか? よくわかんねぇけど、オレと踊ろうぜっ!」
 ぶつぶつと呟いている少女の思いは理解できなかった。きっと複雑な心境があるのだろうが、ディルクには悲しみや苦しさを癒やしてやることはできない。
 それゆえに踊ろうと告げ、ディルクは地を蹴った。
 放たれるのは鬼神の一撃。
 破壊のオーラを纏った拳を振り上げ、星屑の少女を穿つ。きゃ、という悲鳴が上がったが直撃は避けられてしまった。
 対する少女は毒の花束を取り出し、くるくると回る。
 踊るような仕草で毒を齎す星屑の子の瞳は昏く濁っているように思えた。反対にディルクは笑みを浮かべ、華麗に毒攻撃を躱していく。
「へへっ、一人で踊るのもつまらないだろ? そろそろオレと一緒に踊ろうぜっ!」
 呼びかけたディルクは拳に力を巡らせた。
 その手は黄金の卵の力によって輝き、ぴかぴかと光っている。
 其処に渾身の力を込め――ひといきに距離を詰めて、オーラを叩き込む。重い衝撃を受けた少女は一撃で戦う力を削がれ、その場に崩れ落ちる。
「いや……わたしは、まだ……」
「スターってオレよくわかんねぇけど、アンタとのダンスは楽しかったぜっ♪」
 嘆く少女にディルクは思うままの言葉を告げた。
 そして、星屑の少女は消えていく。ディルクはその姿と最期を笑顔で見送った。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

比野・佑月
星屑、ねぇ…
そんな欠片みたいな瞬きだって見つけてくれる、
キミ自身を見てくれるような人が居てくれたら良かったのにね。

――ま、俺には全く関係ないんだけど。
来世に期待ってことでまずは罪の清算でもしてみよっか!

【従犬・大狂乱】で増やしたわんわんトラップで卵を回収。
犬のボール拾い間隔でいっぱい集めて来てもらおう。
卵を咥えたトラップはそのまま放置でもいいや。
相手に渡らなければそれでヨシ。
武器っぽい花束も取り上げるか食い荒らすかしちゃおう。

……ああそうだ!
夢を追うせいで辛いならさ、いっそ諦めざるを得ない状況ってどう?
そう笑顔で尋ねながら、大事な大事な脚を潰す感じに
トラップを容赦なく食い込ませてあげようかな!



●従犬の牙
 輝けないものは唯の屑。
 だから光を受けて煌めく存在になりたい。きっとあの星屑の少女達はそのように思い込み続けており、輝ける舞台を探している。
「星屑、ねぇ……」
 比野・佑月(犬神のおまわりさん・f28218)は頭上の耳を何度か微かに動かし、周囲の音を拾っていた。音で敵の位置を察知してから其方に向かうためだ。
 そして、佑月は感じた気配の方に進んでいく。
「や、こんにちは」
 木陰に落ちていた黄金の卵を拾いあげ、佑月は少女に呼びかけた。
 彼が今しがた手にしたものは星屑の少女が拾おうとしていたものだ。先回りされたと感じたらしい少女オウガは、佑月を静かに睨み付ける。
「どうして、邪魔をするの」
 屑が星に成れる唯一のチャンスなのに、と少女は忌々しげに呟いた。
 佑月は首を振り、そんな風に思わなくてもいいのだと示す。しかし少女は聞く耳を持っていなかった。
 軽く肩を竦めた佑月は話が通じないことを悟る。
「欠片みたいな瞬きだって見つけてくれる、キミ自身を見てくれるような人が居てくれたら良かったのにね」
「それは綺麗事よ」
「――ま、俺には全く関係ないんだけど」
 昏い瞳から向けられる眼差しを受け、佑月は周囲に視線を巡らせる。
 星屑の少女も同様に辺りを見渡した。その理由は、近くに何羽もの黄金のガチョウが現れたからだ。おそらくすぐに黄金の卵が産み落とされるに違いない。
「……卵」
「それじゃ、まずは争奪戦かな。その後に罪の清算でもしてみよっか!」
 双方の視線が重なった瞬間、卵収集合戦が始まる。少女は即座にガチョウの元に駆け出し、佑月は己の力を紡いでいく。
 従犬・大狂乱――ワンワン・パニック。
 佑月が腕を胸の前に伸ばした瞬間、四方八方に黒鉄製のトラバサミであるわんわんトラップが出現した。
 それらはガチョウの方に飛び、次々と産み落とされる卵を回収していく。
 たとえるならそれは犬のボール拾いだ。そんな感覚で佑月の元にたくさんの黄金の卵が集まっていく。とはいっても全ては持ちきれないので、卵を咥えたトラップはそのまま放置しつつ、佑月は黄金のガチョウ自体を傷付けないよう気を払ってもいた。
 少女はというと、ひとつも卵を手に入れられないでいる。
 悔しげに唇を噛んだ星屑の子は花束を取り出した。どうやら妨害をする佑月を先に倒すことを決意したらしい。
「わたしの夢を邪魔しないで……!」
 毒を宿した鈴蘭の花束が解き放たれ、佑月に迫っていく。
 しかし佑月には集めた卵の力が宿っていた。行け、とわんわんトラップを向かわせた彼は花束を罠で挟み、取り上げると同時に食い荒らす。
「……ああそうだ!」
「――?」
 その際に佑月は何かを思い立ち、対する少女は訝しげな表情を浮かべた。佑月は良いことを思い付いたというように問う。
「夢を追うせいで辛いならさ、いっそ諦めざるを得ない状況ってどう?」
「え?」
 彼の話す意図が判らず少女が戸惑った、次の瞬間。
 トラバサミが星屑の子に迫り――ダンサーとして大事な大事な脚が潰された。
「あ……いや、そんな……」
「これで夢はおしまい。ほら、簡単だったね!」
 強化された罠の威力は恐ろしく、一撃でオウガを屠るほどのものになっていた。容赦なく食い込んだ牙を見下ろした少女は倒れ、やがて骸の海に還っていく。
「それじゃあ、また来世で」
 佑月は変わらぬ笑みを湛え続け、消えゆく少女に手を振った。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

誘名・櫻宵
綺麗な金の卵だわ
みつけたならば着物の袖の中に数個、入れられるだけ入れてみるわ

オウガに渡さないように
でも重くて動けなくならないよう程々にしないと

身を心を絡めとって捕らえて離さない欲望
唯一になりたい、煌めく星のように愛されて―
手に入らないからこそ欲しくなる黄金
それは自分を蝕んでどんどん醜くしていくの
…知ってるわ

ねぇ『美しさってなに?』
黄金に全てを託す姿は醜いわ

美しいのに
美しくあろうとするその心がうつくしいのに
屑なんかじゃない
どんな星だって一番星にしてくれる存在がいる
自分を認めて
受け入れて
自分で見つけるのよ

あなただけの舞台を魅せて頂戴
宵の桜の舞台で踊らせてあげる
それから
美しい桜吹雪をあなたにあげるわ



●輝きは己の裡に
 不思議の国の空に浮かぶ太陽は鮮やかに煌めく。
 その陽を受けて輝いているのは、宛ら地上の星のようにも見える金の卵。
「綺麗ね、本当に星みたい」
 燿きたいと願う少女が、自分を飾る綺羅びやかなものを求めるのも少しだけ理解できる気がした。誘名・櫻宵(貪婪屠櫻・f02768)は足元に落ちていた金の卵に手を伸ばし、そっと拾い上げる。
 その途端に自分のものではない力が巡っていくのが分かった。着物の袖の中に卵を仕舞い込んだ櫻宵はそのまま数個、点々と落ちていた卵を拾っていく。
 袖が膨らんだ頃、櫻宵は星屑の少女――オウガの後ろ姿を見つけた。
 少女の数歩先には黄金の卵が落ちている。
「あら、いけないわね」
 星屑の子がそれを拾おうとしていることに気付き、櫻宵は地を蹴った。疾く、あのしなやかな手が伸ばされるより前に手を打たなければ。少女を追い越した櫻宵は鞘から刀を抜きかけたが、それより幾分も早い手段を取った。
「させないわ!」
 言葉とともに響いた、カン、という衝突音。
 それは櫻宵が履物で以て思い切り卵を蹴り上げた音だ。黄金で出来た卵は割れることなく彼方に飛んでいく。少し爪先が痛かったが致し方ない。
「何てことを……! あれはわたしの星だったのよ」
 一瞬後、状況を把握した星屑の少女が櫻宵に敵意を向けた。その瞳はまるで昏い底から光を睨め付けているようだ。
 身を、心を、絡めとって捕らえて離さない欲望。
 唯一になりたい。煌めく星のように愛されて、見つけて貰える存在になりたい。
 手に入らないからこそ、黄金が欲しくなる。
 それは心を蝕んで、侵食して、元に戻れないほどに自分も醜くしていく。
 ――知ってるわ。
 痛いほどに、その欲望に似たものを裡に宿していたから。
 櫻宵は相手に聞こえるかどうかの声で囁いた後、真っ直ぐに少女を見つめた。
「ねぇ、『美しさってなに?』」
「……輝くことよ」
 櫻宵が意味を込めて問いかけたことに対し、少女がはっきりと答えた。
 既に少女は白銀のナイフを抜いており、櫻宵も屠桜を構えている。
「黄金に全てを託す姿は醜いわ」
「いいえ、それすら隠す輝きを手に入れてみせる!」
 櫻宵を睨んだ少女は花束を召喚し、毒を孕む花を周囲に散らした。白い鈴蘭の花が黒く滲んで迫ってくる様を見据えた櫻宵は刃を斬り放つ。
 そうすれば毒は到達する前に蹴散らされ、反撃の機が巡ってきた。
 噫、本当は美しいのに。
 美しくあろうとする、その心こそがうつくしいものだというのに。
「あなたは屑なんかじゃないわ」
「いいえ、星屑だってことはわかっているわ!」
 ひといきに少女との距離を詰めた櫻宵が振り下ろした刃が、ちいさなナイフによって受け止められた。しかし、加護を得ている櫻宵の方が何倍も強い。
 ナイフは弾き飛ばされ、少女は倒れ込む。
「どんな星だって一番星にしてくれる存在がいるの。自分を認めて、受け入れて――」
 自分で見つけるのよ。
 櫻宵は敢えて少女が立ち上がるまで待ち、思いを言の葉に乗せた。
 己だってそうだった。
 価値は自分自身ではなく、別の処にあると信じていた。それでも手を伸ばして、君は君だと教えてくれて、寄り添ってくれる存在と出逢った。
 きっと、星屑を自称する少女にはそんな誰かに逢う時間は残されていないけれど。
「あなただけの舞台を魅せて頂戴」
 櫻宵は願う。今なら宵の桜の舞台で踊らせてあげるから。
 そして――桜嵐の如き斬撃と共に桜吹雪が巻き起こる。自らをみにくいと語った少女を彩るように桜が舞い、哀しき少女に終わりを与えた。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

波瀬・深尋
星屑でも、星は星だろ

踊り狂う彼女の姿を一瞥
苦しげに飲み込む様子を
これ以上は見ていられない

──ミカゲ、

これ以上喰うのなら
俺たちで邪魔してやろうか

近場にあるたまごを回収して
彼女が手に入れないよう邪魔をする
壊しても良いのなら燃やし尽くせ

沸々と内で燻る感情を
どんな言葉で表現するべきか

強くなくて良い、
そのままのお前で良い
一等輝く必要はない

だけど叶わない夢を見る
その気持ちは分かるから、

なあ、踊りたいんだろ?
──俺に見せてくれよ

片手で掴む黄金の卵
たったひとつあれば良い
欲張ることなんてない

最後の舞台を炎で彩って
お前の踊りを目に焼き付ける
流星のように降り注ぐ青白き矢

そうして
天に還って唯一の星となれ

──おやすみ、



●瀕死の白鳥
 黄金の鵞鳥が其処彼処を歩き回る不思議の国の一角。
 波瀬・深尋(Lost・f27306)が辿り着いたのは或る湖の近くだ。其処には力を与えるという黄金の卵を探す少女の姿が見えた。
 彼女はオウガに成り果てた者。それでも未だ、自分が輝ける舞台を探している。
「星屑でも、星は星だろ」
 聞いていた話を思い返し、深尋は徐ろに呟いた。
 未だ少し遠い畔。
 其処では、既に卵を手に入れた星屑の少女が白銀のナイフを取り出していた。深尋は懸命に駆けたが、それを取り込まれることは阻止できない距離だ。
 やがて彼女は砕いた卵を苦しげに飲み込む。
「またひとつ、星に近付けたわ」
 そして、ちいさな光を得た少女は湖の畔で踊り出す。
 その先ではまた黄金の鵞鳥が卵を産みはじめている。少女が卵を飲み込む際、あの表情は苦しげだった。これ以上は見ていられないと感じた深尋は湖畔に馳せ参じ、己に憑依しているオウガの名を呼ぶ。
 ――ミカゲ。
 その声に応じて青白い炎が顕現していく。
「これ以上喰うのなら、俺たちで邪魔してやろうか」
「何……?」
 深尋はミカゲの炎を見遣ってから、新たに産み落とされた卵に手を伸ばす。炎に驚いた少女は後れを取り、ふたつめの卵を取ることは出来なかった。
「ミカゲ、燃やし尽くせ」
 彼女の先回りが出来たことで更なる強化は防げた。深尋は手に取ったひとつ以外を拾うことはせず、周囲にあった黄金の卵を燃やしていく。
 すると、少女の悲鳴が響き渡った。
「何をするの? それはわたしが輝くための星なのに……!」
 踊りを止めた少女は深尋を強く睨め付ける。
 彼女を見て、沸々と湧き上がるものがあった。内で燻っていく感情をどんな言葉で表現するべきか、今の深尋は知らない。
 強くなくて良い、そのままのお前で良い。
 一等に輝く必要はないのだと告げても、あの様子では聞き届けてくれないだろう。
 だけど、叶わない夢を見る少女の気持ちは分かるから――。
「なあ、踊りたいんだろ?」
 深尋は敢えて思いを告げず、それだけを問いかける。
 此方を警戒する少女は静かに頷いた。無言ではあるが、肯定の意思が見える。
「――俺に見せてくれよ」
「お望みなら、死の舞踏をみせてあげましょう」
 冷ややかな視線を返した少女はトゥシューズで地を蹴り、花束を召喚しながら踊ってゆく。踊りと共に差し出された花には毒の香が籠められていた。
 しかし、深尋も即座に後ろに下がる。
 片手で掴む黄金の卵がたったひとつあれば良い。欲張ることなどないのだと自ら示すように、深尋はミカゲの炎を迸らせた。
 花束は塵となって消え、毒も存在ごと燃やされる。
 彼女の夢を叶えることはできない。
 それゆえに最後の舞台を炎で彩って、この目にその舞踊を焼き付けるのみ。
 花束はきっと、彼女自身が誰かから贈られたいものだったのだろう。それを焼き尽くしていく罪悪感めいた感情は押し隠して、深尋は星色の卵を強く握り締めた。
 流星のように降り注ぐ青白き矢が戦場を照らす。
「あ……」
 刹那、踊り続けていた少女が閃焔に貫かれた。
 そうして、天に還って唯一の星となればいい。今はそうすることでしか送れない。
 ――おやすみ。
 深尋は戦う力を失った少女を見つめる。
 倒れ伏す瞬間、星屑の子は舞踊の如く脚をひらいて崩れ落ちた。
 その姿はまるで、白鳥が息絶える瞬間をあらわしたバレエ劇の最後のようだった。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

ユヴェン・ポシェット
これが黄金の卵なのか…。

鷲のタイヴァスが卵を見つける度に獲物を狙うが如く素早く入れ俺の元へ運んでくる。
しかし気持ちは有り難いが、沢山は持てない。止めなければいくらでも探して来る勢いのタイヴァスを止め、しかし俺の為を想い持ってきてくれた為戻して来いとも言えず、代わりにオウガ達の手に卵が渡らない様に、見つけたら隠すか他の猟兵に運ぶ様に指示。
タイヴァスが持ってきてくれた分は俺とロワとテュットで手分けして持とうか。俺は卵を懐に入れる形で持つ。俺の手はコイツ、ミヌレの握る為にあるからな。

必ずしも主役が一番輝くとは限らない。目の前に居る相手こそが今誰よりも俺達を惹きつけている事には変わらないだろう。



●煌めく卵と夢の最後
 ころころ、ころりと転がるのは光り輝くもの。
 穏やかな不思議の国の最中。産み落とされていく卵に手を伸ばし、ユヴェン・ポシェット(opaalikivi・f01669)は興味深そうに呟いた。
「これが黄金の卵なのか……」
 太陽の日射しを受けている卵は煌めいている。
 これを星と称するのも納得がいくとして、ユヴェンは天を振り仰いだ。
 其処へ、飛翔する影が通り過ぎてゆく。
 その影の主は大鷲のタイヴァスだ。ユヴェンは空に手を振り、卵を見つけてくれと願った。すると頭上で鷲が円を描いて飛ぶ。どうやら了承の意思を示したらしい。
「張り切りすぎなくて良いぞ、タイヴァス」
 ユヴェンは大鷲に呼び掛け、その翼を見送った。
 少女の姿をしているとはいえ周辺にはオウガもいる。怖がりなタイヴァスが無茶をしないか懸念しつつ、ユヴェンも敵と卵を探していった。
 そして、暫し後。
「タイヴァス、気持ちは有り難いが……」
 ユヴェンの周囲には卵がそれはもうたくさん転がっていた。
 大鷲は卵を見つける度に滑空して、獲物を狙うが如く素早く手に入れてきた。持ちきれないほどに運んできたものだから、ユヴェンは少し困っていた。
 するとタイヴァスは何処か不思議そうに近くの木の枝に止まる。なにか悪いことをした? という様子だ。
「俺はたくさんは持てなくてな。しかし、えらいぞ」
 もう探さなくていいと告げたユヴェンは大鷲を褒めた。嬉しそうに翼を広げたタイヴァスが枝から飛び立った、そのとき。
「――見つけたわ、卵泥棒」
 息を切らせた少女の声がユヴェンの耳に届いた。
 オウガの娘だと察した彼は身構える。おそらく卵泥棒というのはタイヴァスだ。大鷲が拾おうとする卵すべてを掻っ攫っていったので、少女は怒っているらしい。
「悪いが俺もタイヴァスも泥棒ではないな」
 もとより黄金の卵は誰のものでもない。ユヴェンは大鷲を上空に退避させ、自らはミヌレの槍を握る。
「ロワ、テュット、卵を頼む。ミヌレは俺と共に行くぞ」
 ユヴェンは呼び出した獅子とクロークに卵を持つよう願い、タイヴァスには卵を他の猟兵に運ぶ様に指示していった。
 ユヴェン自身は最初に拾った卵をひとつ、懐に入れていた。
 己の手はこの竜槍――ミヌレを握る為にある。
「大勢で掛かってくる心算? いいわ、わたしにだって考えがあるもの」
 星屑の少女は花束を取り出し、其処から毒を孕む香りを放った。此方を一気に毒の力で絡め取ろうとしているようだ。
 しかしユヴェンはロワと共に駆け、花を槍で穿った。
「悪いな、容赦はしていられないんだ」
 続けて獅子が爪を振るい、星屑の少女を斬り裂く。タイヴァスの活躍によって卵を手に入れられていない少女の力は強くはなかった。
 されど彼女は踊るようなステップを踏み、負けまいと対抗してくる。
 ユヴェンは次で止めを差せると察しながら、星屑の子に強い視線を向けた。
「何よ……」
「必ずしも主役が一番輝くとは限らない。目の前に居る相手こそが今、誰よりも俺達を惹きつけている。そのことに変わりはないから――」
 最期まで踊ってくれ。
 そう願ったユヴェンは少女の終幕が訪れるまで、その姿を見つめ続けようと決める。
 そして――鋭く振るわれた槍閃は、星に成れなかった少女を貫いた。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

榎本・英
私の手は二つしかない。
だから、手に持つ卵は二つだけ。

後は卵を奪われないように立ち回るのみだよ。
ナナ、敵の位置を教えてくれるかい?
彼女達が卵を奪えないように誘導をしたくてね。

……星の子らよ。
君達はとても美しい。
世辞でも何でもないさ。
私が心の底からそう思ったのだよ。

それなのに、君達は己を卑下しているではないか。
そうせずとも良い。
嗚呼。そうだね、あまりにも悲しい。
さあ、私の為に踊って呉れ。
私は君達の踊りが見たいのだよ?

三毛猫の号令に合わせて獣を向かわせよう。
良ければ私と一曲、踊ってはくれないか?
私は踊る事が苦手でね。

情念の獣も一緒に、エスコートをして欲しいのだよ。
駄目かい?



●羽撃けなかった星
 煌めく卵に満ちた、不思議で不思議な国の一角。
「ナナ、敵の位置を教えてくれるかい?」
 連れた三毛猫に呼びかけた英は、煌めく卵と敵の気配がする森の奥を見据える。踏み出していく主にナナが鳴いて応え、その道行きを先導していく。
 そして、或る森の最中。
 木陰に光る卵が見え、英は地を蹴る。
 早く、其処に訪れた星屑の少女よりも一歩でも早く――。未だ此方に気が付いていないオウガの反対側から駆け、英は黄金の卵に手を伸ばした。
 同時にナナが少女の前に飛び出していく。
「きゃ!」
 少女が驚きに声をあげた隙を狙い、英は其処にあった卵を拾い上げた。
 ひとつ、ふたつ。
 己の手は二つしかない。それゆえに手に持つ卵は二個だけ。
 しかし今、少女が力を得ることを防げたので十分だ。後は卵を奪われないように立ち回り、オウガたる彼女を屠るだけ。
「……星の子よ」
「何かしら、卵泥棒さん」
 英が少女に呼び掛けると、向こうから不機嫌そうな視線が返ってきた。
 侮辱の意味を込めた言葉が掛けられたが英は気にせず、そのまま語りかけていく。
「君達はとても美しい」
「どういうつもり?」
「世辞でも何でもないさ。私が心の底からそう思ったのだよ」
 訝しげな声と表情が見て取れたが、英は首を横に振る。星屑の子は警戒を強めながら毒を孕む花束を召喚した。
 英はナナが毛を逆立てはじめた様子をそっと制し、更に声を掛ける。
「それなのに、君達は己を卑下しているではないか」
 そうせずとも良い。
 そんなことをしていたら、君達は本当にみにくいものになってしまう。
 言葉は力。特に己への思いは真実に成り得る。
「……だって、わたしはみにくいから」
「嗚呼。そうだね、そう思いたいならあまりにも悲しい」
「知ったような口を利かないで!」
 その瞬間、星屑の少女が花束を天に向けて投げた。色とりどりの花弁が空中で散り、毒をばら撒きながらひらひらと舞う。
 英が身構えると、三毛猫のナナが号令を掛けた。途端に情念の獣の手が其処に現れ、花弁を砕くように迸る。
「さあ、私の為に踊って呉れ。私は君達の踊りが見たいのだよ?」
 ――良ければ私と一曲、踊ってはくれないか?
「残念ね、あなたは王子様に相応しくはなさそうだもの」
 英の言葉に対して少女は踊りはじめたが、明らかな拒絶を見せた。主役のダンサーと踊るのは王子様の役だというように、星屑の子はステップを踏む。
「そうか、踊る事が苦手な私では釣り合わないか。仕方がないね」
 それならば、と英は獣の手を動かす。
 まるで踊りに誘うように伸ばされた手が星屑の少女に迫る。一緒にエスコートをして欲しいというように、鋭く強く――。
「駄目かい?」
「絶対に、いや……」
 刹那、問いかけと共に獣の指先が少女を貫いた。
「嗚呼、ふられてしまったか」
 然程気にはしていない様子で英は肩を竦める。地に倒れ伏した少女は息絶える直前、英が手にしている卵を見上げて震える腕を伸ばした。
 宛ら、もう届かない星に縋るように。
 そして、星屑は散る。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

朽守・カスカ
夜空を飾るのは
一番星だけではないだろうに
それでは満たされぬ程に
強く憧れてしまったのならば仕方ない
その想いを否定する気はないが
見過ごすつもりもない

幾つも転がる金の卵
拾えども取り立てて叶えたい願いなどなく
ひとつところへ集め
金の卵を守るように
ランタンを灯し星屑を待とう
此処には幾つも金の卵があるから
はやくおいで

【星灯りの残滓】
スポットライトには足りなくとも
ひととき辺りを照らそう
君だけのステージとなるように

誰かを、何かを傷付けることのない
君の踊りを、見せてくれないか?
煌めく星に頼らずとも
自らの研鑽を矜持として
君は舞えるのだろう?

それこそが君の願った輝きに他ならないはずだ
そうして最期には拍手をもって送ろう



●君の輝き
「夜空を飾るのは、一番星だけではないだろうに――」
 星を夢見る少女を思い、朽守・カスカ(灯台守・f00170)は不思議の国の景色を見つめる。その視線の先には光を受けて煌めく黄金の卵が幾つも落ちている。
 ちいさなひかり。
 それでは満たされぬ程に、輝く星に強く憧れてしまったのならば仕方がない。
 星に成ることを願う想いを強く否定する気などはないが、カスカとて見過ごすつもりはなかった。いつか何かを害するものに成るならば阻止するだけだ。
 行く先の向こう側には湖畔が見えた。
 其処に点々と金の卵が落ちている。カスカは周囲に転がっていた卵を拾い、ひとつところに集めていく。
 幾つも拾えども、カスカ自身に取り立てて叶えたい願いなどなかった。
「願い、か」
 ちいさく呟いた彼女はランタンを灯す。
 金の卵を守るように。そして、星めいた煌めきが目立つようにするためだ。
 さあ、此処には幾つも金の卵があるから。
 はやくおいで。
 そうすれば光に導かれた星屑の子が訪れる。輝きを一度は手にしながらも持ってはいないカスカを見つけ、少女は眉根を寄せた。
「そんなに星の欠片を集めてどうするつもりなの?」
「どうもしないさ」
「それを手にすれば輝けるのに?」
 カスカは少女の問いかけに、そうだね、とだけ答える。すると星屑の少女は許せないというように睨みつけてきた。
「使わないのならわたしにちょうだい。それは貴女よりわたしに相応しい!」
 言うやいなや、少女は毒の花束を召喚した。
 鈴蘭の花が周囲に散らされ、カスカに毒を齎さんとして舞う。しかしカスカは慌てることなどなく、ランタンの灯を掲げ続ける。
 光は癒しの力を帯び、輝く星屑となって溢れていく。
 スポットライトには足りなくとも、たったひとときであっても、辺りを照らそう。
 ――此処が、君だけのステージとなるように。
 カスカが毒の花を受けないことに焦り、星屑の少女はたじろぐ。
 そんな彼女を真っ直ぐに見つめたカスカは、思うままの言葉を告げていった。
「誰かを、何かを傷付けることのない君の踊りを、見せてくれないか?」
「…………」
 少女は無言だ。
 しかし、カスカは更に思いを伝えていく。
「煌めく星に頼らずとも、自らの研鑽を矜持として君は舞えるのだろう?」
「……そうよ。本当はわたしだって!」
 焚き付けられたように星屑の少女はステップを踏む。トウシューズで地を蹴り、跳躍して――懸命に踊っていく少女の姿は可憐だった。
 きっと、それこそが少女の願った輝きに他ならないはずだ。
 それでも、舞台劇に終わりが来るように、オウガに堕ちた者にも終焉が訪れる。
 落ちた花束からこぼれた鈴蘭の花が舞う中、カスカは灯を下ろした。そして、ガジェットを剣に変形させたカスカは地を蹴る。
 敵の花が毒を齎してきているが構わない。ただ、この舞台に終幕を齎すために。
 刹那、一閃が星屑を穿つ。
 貫かれ、倒れ伏した少女は何の言葉も遺すことなくオウガとしての命を終えた。
「……悲劇の舞台ですまないね」
 カスカは刃を下ろし、少女の最期を見守る。骸の海に還り、消えゆく身体を見つめるカスカは、ささやかな拍手で以て星に成れなかった者を送った。
 それがせめてもの手向けだと示すように、そっと――。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

紫・藍
苦しげ、ですかー。

……パ・ド・ドゥとは本来二人で踊ることでっしてー。
いえだからこそもう一度、なのでっしょかー。
でっしたらお任せなのでっす!

一緒に踊っておじょーさんのソロダンス――ヴァリシオンからコーダに移行させちゃうのでっす!
藍ちゃんくん、王子様でもあるのでっしてー。
男性パートで踊ることも、おじょーさんを魅せる側に周ることもできちゃうのでっすよ?

1番星を目指しながらも相方を求めたおじょーさん
なら藍ちゃんくんは星が輝く藍色の夜になるのでっす!

ソロでない以上、成功率上昇は効果薄めのはず!
卵はファンの皆様に回収しておいてもらうのでっす!
もちろん藍ちゃんくんとおじょーさんのダンスへのコールも忘れずに!


渦雷・ユキテル
黄金の卵ですか
その辺に纏めとけば【おびき寄せ】できるかも
探すより来てもらうほうが効率よさそうですし

自分のためには拾いません
あたし今のままで十分素敵なので

卵を持つオウガを見つけたら
指先からサイキックブラストをばちり
電気伝導良いし持ち続けるの難しいでしょ
そのままのあなたで踊ってみせて

拳銃構えて接近戦
動きを見定めて武器持つ手を狙います【見切り】
電流で鈍らせてから銃弾をお見舞い
当てるのが難しければ銃底で殴ったりも
足だけは傷つけないように

白鳥じゃなくたって
アヒルはアヒルのままで綺麗です
自分の羽根を毟らなくてもよかったのに
それに星屑が消えたら
一等星ばかりの空がどうして綺麗に見えるでしょう

※アドリブなど歓迎



●星屑の舞台
 望む力を齎す黄金の卵。
 それは光を受けた星のように輝いていた。
 喩えるならば、そう――まるでスポットライトを浴びたスターのように。
「黄金の卵ですか」
 渦雷・ユキテル(さいわい・f16385)が思いを言葉にすると、ちょうど近くに黄金の鵞鳥が歩いてきた。
 鵞鳥はユキテルを気に入ったのか、直ぐ側で金の卵を産み落とす。
 そのまま何処かに行ってしまった鵞鳥を見送り、ユキテルは卵を拾い上げた。
「黄金の卵でっすよー!」
 其処に現れたのは両手いっぱいの卵を抱えた紫・藍(覇戒へと至れ、愚か姫・f01052)だ。どうやら藍はユキテルを見つけ、同じ猟兵だと察して此処に訪れたらしい。
「わ、たくさんですねえ」
「はい! 藍ちゃんくん、星屑の子から逃げながらここまで来……あっ!」
「なるほど、それがあの子ということですね」
 説明をしようとした藍が慌てて後ろを振り向いて、両手の卵を地面に下ろす。
 それだけで状況を察したユキテルは身構えた。
 つまりはこうだ。
 藍は星屑の少女が卵を拾わないように先回りして集め、オウガの少女はそれに気付いて卵を奪おうとして追いかけてきたのだ。
 周囲の気配からすると、あの星屑の少女がこの周辺にいる最後の一体らしい。
 ユキテルと藍は頷きあい、戦いを終わらせようと決める。
 二人とも卵の力には拘っていなかった。
 卵を集めたとて、自分のためには拾っていない姿勢がそれを物語っている。
「追いついたわ。この卵泥棒!」
「藍ちゃんくんはやるべきことをしただけでっしてー」
 オウガの少女は白銀のナイフを握っている。対する藍はいつもの笑顔で以て、悪いことはしていないと返した。
 すると少女は地面に置かれている黄金の卵に目を向け、訝しげに呟く。
「でも、どうして卵を其処に集めただけなの」
「あたしは今のままで十分素敵なので」
「……そんなことが宣えるあなたが羨ましいわ」
 ユキテルの返答に複雑な心境を抱いたらしい少女はナイフを構えた。おそらくは力尽くで卵を奪う気だ。
 そんなオウガの周囲には仄かな星の光が揺らいでいた。
「あれが卵の力ですか?」
「そうでっす。さっき、あの子が砕いた卵を苦しげに飲み込んでいたのでっす!」
「成程、無理矢理に取り込んじゃったんですね」
 ユキテルは少女が宿す力を見遣り、藍はその理由を語る。
 それならば遠慮はいらないとしてユキテルは両掌を広げた。その指先から放たれたのは迸る高圧電流だ。
「きゃ……!」
 ナイフから伝わった電撃が星屑の手を痺れさせる。
「ねえ、そのままのあなたで踊ってみせて」
 ユキテルはそのまま拳銃を構え、接近戦に持ち込んだ。前をユキテルに任せた藍は両手を広げ、周囲にスピリチュアルなファン達を呼んでいく。
 対する少女は痛みを堪えた。トウシューズで地を蹴って一気に飛翔することで、オウガはユキテルが振るった銃底の殴打を躱した。
「――パ・ド・ドゥをもう一度」
 踊って、と言われたことに対抗したらしい少女は空中で舞いはじめる。
 その舞は何処か不自然だ。
 そう感じた理由に気付き、藍は緩く首を振った。
「……パ・ド・ドゥとは本来二人で踊ることでっしてー。いえ――」
 だからこそ、もう一度と少女は語ったのかもしれない。そのように判断した藍はぐっと掌を握ってみせる。
「でっしたらお任せなのでっす! 藍ちゃんくん、王子様でもあるのでっしてー」
 藍の手の力を高めた藍は手を差し伸べた。
 オウガである少女は倒さなければならないが、せめて最後に踊れるように。
 彼女の哀しいソロダンスを、ヴァリシオンからコーダに移行させて――共に踊ることで、せめてもの餞にしよう。
 藍は男性パートで踊り、少女の相手になれるよう努めてゆく。
 弾丸を撃ち放つユキテルは、少女の足だけは傷つけないように狙っていた。
 足を敢えて撃たずとも力は削れる。それに、スターになって踊りたいと願った少女の夢を根底から壊すわけにもいかない。
「白鳥じゃなくたって、アヒルはアヒルのままで綺麗です」
 自分の羽根を毟らなくてもよかったのに。
 ユキテルが言葉をかけると、星屑の少女は唇を噛み締めた。言葉が紡がれることはなかったが、其処に宿る感情は相当なものだったに違いない。
 少女は一番星を目指しながらも相方を求めた子。それならば――。
「藍ちゃんくんは星が輝く藍色の夜になるのでっす!」
 宣言した藍は召喚したファンにコールを願う。自分に付き従うファン達は幻影ではっきりした姿は見えないが、満開に咲く花のような拍手を紡ぐことが出来るから。
 踊りは最高潮に達する。
 此処からはもう終幕に向かっていくだけだろう。
 そう察したユキテルは照準を合わせ、少女の胸元を狙っていった。
「それに……星屑が消えたら、一等星ばかりの空がどうして綺麗に見えるでしょう」
「いいえ、わたしは唯一の星になりたかったの」
 王子様から花束を貰いたかった。踊りに誘われたかった。
 語った少女の瞳は虚空を映している。ああ、でも――と呟いた少女の眼差しが不意に藍に向けられた。
「王子様が踊ってくれたから、もう良いかな」
「最期までお付き合いしますでっすよー。ですから、さあ!」
 スターを諦めながらも何処か満足した様子で言葉を落とした少女。其処に藍が更に手を伸ばした。そして、二人の手が重なった瞬間――。
「これで終幕にしましょう」
 最大の好機を得たユキテルは星屑の娘に向け、弾丸を解き放った。
 胸を貫かれた少女に終わりが齎される。
 しかし、最後の最期に王子様の手を取った彼女の表情は安らかだった。少女を送るように響く拍手の音色はいつまでも、いつまでも鳴り続いていた。

●喝采
 これで星を夢見た少女の御話はおしまい。
 一番星には成れなかった。
 それでもほんの少しの間だけは輝くことが出来たから――きっと。
 めでたしめでたしで、幕は閉じる。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年08月10日


挿絵イラスト