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甘いほど苦く、愛おしいほど殺したい

#UDCアース

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#UDCアース


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「うーん、どのチョコにしようかな~手作りの方がいいかなぁ」
 中学生くらいの少女がショッピングモールのピンクや赤に染まるバレンタインの特設エリアで悩んでいた。
「キミ、好きな人にプレゼントするチョコを選んでるのかな?」
「はい、そうですけど……」
 甘い香りの漂う胡散臭いスーツ姿の男から突然話しかけられて少女は戸惑う。普通ならば怪しいと思うのに、何故か話を聞いてしまう。
「それならお勧めのチョコがあるんだ……これ、何と食べた人の好きって気持ちを何倍にもしちゃう魔法のチョコレートなんだよ」
 男が差し出したピンクの綺麗なケースには、一口サイズの小さなハートのチョコレートが宝石のように並んでいる。
「ええー……そんなの今どき誰も信じませんよ……」
「いやいや、ほんとに! 当社比200%で効果があると実証されてるんだよ。特殊なカカオが使われていてね、この甘さで食べた人の心を蕩けさせてしまうんだよ」
 胡散臭いにもほどのある話。だが何だかそれが真実のように感じてしまう。
「まあまあ、美味しいからお嬢さんも一つ試してみてよ」
 ケースから甘いチョコレートの香りが漂う。それに釣られるように思わず手に取ってしまう。そして香りに誘われるまま包装を解いて口にする。
「……おいしい。わぁ、これ本当に美味しいです!」
「そうでしょそうでしょ」
 少女が夢中でチョコを食べるのを確認した男はにんまりと笑みを浮かべる。
「食べながら好きな彼の事を想い浮かべてみるといいよ」
「え? 佐伯くんのこと……あれ、なんだかチョコがビターな味に……」
 男に誘導されるまま少女が想い人を心に浮かべる。すると少女の目にキラキラとハートのような輝きが宿る。
「佐伯くん大好き! 今すぐに殺してしまいたいくらい好き!!」
「そうです、愛の最終形態は殺し愛です。バレンタインデーには彼にチョコを贈って一緒に食べなさい。そうすれば本当の愛が確かめ合えますよ」
 ニコニコと笑う男が新品のチョコを渡すと、こくりと頷いた少女は何かに操られるようにふらふらとチョコを持って帰っていく。
「くっくっく、成功だ。これでまたカップルが一つ滅びる」
「おお、同士よ、そちらも順調そうだな! こっちは既に3人に布教したぞ!」
 厭らしく笑う男に、同じような胡散臭い男が話しかける。
「流石だな、こちらも負けてはいられない。バレンタインまでに一人でも多くのリア充どもに配らなくては!」
「我ら嫉妬教団の名の元に、バレンタインに浮かれる者に鉄槌を! 愛を語らう者に天罰を!! イチャイチャする奴には地獄が相応しい!!!」
「「ジーク嫉妬ッ! ハイル嫉妬ッ! バレンタインを血に染めよ!」」
 男たちは手を上げて狂気に染まった顔で高らかに叫んだ。

「バレンタインというイベントを知っているかね? UDCアースでは有名な好意を持つ相手にチョコレートを贈るイベントなのだが、そのイベントを妨害しようとする嫉妬教団という組織が居るようだ」
 グリモアベースに集まった猟兵達にバルモア・グレンブレア(人間の戦場傭兵・f02136)が説明を始める。
「バレンタインデーまでに人の心を狂わすチョコレートを配り、当日にUDCを召喚する生贄の儀式を開こうと画策している。このままでは多くの犠牲者が生まれてしまう」
 そのチョコレートを食べた者は好きな相手ほど殺したくなってしまい、恋人同士や新たに生まれるカップルが互いを殺し合う大惨事に発展してしまう。
「諸君にはそのチョコレートを配る嫉妬教団を探り、チョコレートの出所を突き止め一網打尽にしてもらいたい。相手はチョコレートを買おうとしている者に接触するようだ。そういった対象を見つけるか、自らが演技すれば容易に接触できるだろう」
 教団のテリトリーでチョコレートが作られている。その拠点を見つけ出し叩かなくてはならない。
「方法はチョコレートを配る人間を捕まえ強引に聞き出すか、配る人間を気取られぬよう尾行し拠点を探るか。他には嫉妬教団の仲間のフリをしたり、仲間に入れてもらったりといった方法で潜入して、敵の拠点を見つけることになる。それぞれが得意とする方法で任務に就いてもらいたい」
 己の得意とする行動をすれば成功する確率が高くなる。
「私はこう見えて甘いものに目がなくてな。このような暴挙は公私ともに放っては置けん。必ずバレンタインの邪魔をする邪教徒を倒してほしい」
 よろしく頼むとバルモアはショッピングモールへと道を繋げた。


天木一
 UDCアースでバレンタインを妨害する嫉妬教団を見つけ出し、企みを阻止する作戦となります。
 大きなショッピングモールで活発に活動しているのが確認されています。
 嫉妬教団はカップルを憎み、カップルに嫉妬する者を同士と呼び仲間意識を持ちます。
 一章で敵拠点を探し出し、二章で集団戦、三章でボス戦となります。

 POW チョコを配っている教団員を捕まえ強引に口を割らせる。
 SPD チョコを配っている教団員を見つけ追跡する。
 WIZ 嫉妬教団の仲間のフリ、又は仲間になるフリをして潜入捜査する。
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第1章 冒険 『嫉妬教団の暗躍【バレンタイン編】』

POW   :    チョコでおかしくなったカップル達を押さえつけて情報を得る

SPD   :    噂のチョコを売っている人を探し、追跡調査を行う

WIZ   :    ジーク嫉妬ッ!ハイル嫉妬ッ!自分も『嫉妬教団』の一員として紛れ込み情報を得る

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

隣・人
「酷い連中も居たものですね。これはもう拷問するしかありません。え。ああ。大丈夫ですよ。そんな爪を剥ぐとか物騒な事はしません。取り敢えず束縛してから説明しましょう。其処の教団員さん。そう。あなたです。ちょっと座ってお話ししましょう」
【POW】
拷問具の使ってお話
情報を得る為に脅迫しよう
吐くまで
拷問具はこれ。回転椅子
解けないよう、ガッチガチに拘束します
そして回します。ひたすら回します
吐くまで回します。二重の意味で
「さあ。さっさと吐いてください。胃袋空っぽでも液体はあるでしょう、嫌なら吐くんですよ。吐きたくないなら」



●情報収集
「君、チョコレートを買うつもりかい? 好きな人へのプレゼント? だったら相応しいチョコがあるんだ。なんと愛を高める効果があるチョコレートなんだよ!」
 ぐいぐいと押すような勢いで相手が喋る間もなく、胡散臭い男が営業トークでチョコレートの説明をする。
「酷い連中も居たものですね。これはもう拷問するしかありません。え。ああ。大丈夫ですよ。そんな爪を剥ぐとか物騒な事はしません。取り敢えず束縛してから説明しましょう。其処の教団員さん。そう。あなたです。ちょっと座ってお話ししましょう」
 そんな様子を確認した隣・人(ビハインド・f13161)が目隠ししていても不自由なく背後から男に近づき、回転椅子に座らせて手慣れた感じで手足を拘束し、そのまま人気の無い場所へ運ぶ。
「ちょっとちょっと!? 何するんですか?」
 慌てふためく男を、人は口だけで冷たく笑って見下ろす。
「お話ですよ。そしてお話を聞くには拷問しかないでしょう?」
「いやいや、聞き間違いかな? 今拷問って聞こえたんですけど……」
 何を当たり前な事をと平然と口にする人に、男は半笑いで返す。
「では始めましょう。教団員さん。貴方の拠点は何処ですか?」
「何を言ってるのかさっぱ……りぃいい!?」
 質問に対して男が惚けると、椅子がぐるぐると回転する。
「何を言っているのか理解できましたか? 吐くまで続けますからそのつもりで」
「うえぇ、ほんとに気持ちわるぅ……おえええ」
 回転しながら男が汚らしく嘔吐し、自らの服を汚す。それでも回転は止まらずに陶芸のろくろのようにぐるぐると回り続ける。
「さあ。さっさと吐いてください。胃袋空っぽでも液体はあるでしょう、嫌なら吐くんですよ。吐きたくないなら」
「げぇえ、は、吐きます! 吐きますから止めて!」
 回転に耐えられなくなった男の情けない悲鳴が木霊す。
「ぜぇぜぇ、この、ショッピングモールを出て……やめて! 話すから回さないで! えろえろえろ……」
 息も絶え絶えな男が何もかもを吐き出すまで、人は休ませずに拷問を続けた。
「なるほど、隣の公園でチョコの受け渡しがあると、では行ってみましょう」
 失神した男を放置したまま人は何事もなかったように歩き出した。

成功 🔵​🔵​🔴​

罪悪館・皆無
SPD

「恋人の定義があいまいなんだよぉっ!!」
『いきなりどうした!?』
「バレンタインは男の子は男の娘と女の子は女の子と幸せに過ごせるイベントなんだぞっ!! あいつらちゃんとそこんとこ区別してんだろうなぁっ!!」
『競争倍率がやばいことになりそうだから前者はやめてやれよ。てか相手は異性カップルぐらいしか想定してねぇだろ』
「こうしちゃいられない、リア充は脇に置いといてもドキドキ両想い美少女カップルが危ない!!」

♦もしかしたら、気のない男の子への贈り物と偽ってるかも知れない
そんな秘めた慕情を知らずに踏みにじらせはしない
荒事は得意じゃないですが強引にコードの分身で押さえつけて【催眠術】で口を割らせます



「恋人の定義があいまいなんだよぉっ!!」
『いきなりどうした!?』
 突然、罪悪館・皆無(多重人格者のUDCエージェント・f12555)が叫び、もう一人の人格が驚いて反応する。
「バレンタインは男の子は男の娘と女の子は女の子と幸せに過ごせるイベントなんだぞっ!! あいつらちゃんとそこんとこ区別してんだろうなぁっ!!」
『競争倍率がやばいことになりそうだから前者はやめてやれよ。てか相手は異性カップルぐらいしか想定してねぇだろ』
 そんなツッコミも聴こえていないのか、皆無の妄想は暴走して大変だ大変だと呻く。
「こうしちゃいられない、リア充は脇に置いといてもドキドキ両想い美少女カップルが危ない!!」
 皆無は全力でダッシュして早速ショッピングモールで紙袋に同じチョコを大量に詰めた怪しい男を見つけた。
『いや、そんなカップルはなかなか居ないとおも……って早いな!』
 ツッコミを入れている間にシーンが進み、喋っていたもうひとりの自分を分身するように具現化させる。
「よし、では拉致するぞ!」
『いやいや、それもう犯罪だからな!?』
 そう言いながらも2人は怪しい男を押さえつけ、トイレの中へと連れ込む。
「んんー?! んがんんんー!!」
「はーい、この5円玉をよーく見てねー」
『古典的だな』
 もがく男を縛り上げ、5円玉を揺らして催眠術を掛け大人しくさせる。
「じゃあ質問に答てくださいねー。あなたは嫉妬教団ですかー?」
「……はい」
 虚ろな目をした男はこっくりと頷く。
「では嫉妬教団のアジトはどこにありますかー?」
 次の質問に男の返事がない。眉間に皺を寄せているだけだった。
『知らないんじゃないか』
「では質問を変えよう、チョコはどこで手に入れてますかー?」
「隣の公園の……屋台……クレープの……」
 ぽつりぽつりと男が答えていく。
「クレープの屋台からチョコを受け取っているのか、よし行こう!」
『え? これ放置でいいの?』
 男を放って皆無が駆け出すと、分身も仕方なくその後に続いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ミーナ・ヴァンスタイン
アドリブやアレンジ歓迎よ。

理由なんて知らないけれど、心を踏みにじるような人殺しを望むと言うことは、自分ものたうち回って死ぬ覚悟はできてるのよね?

【使い魔召喚】を使用し、町中に放った黒猫達へ怪しげな販売員を探させます。
「さぁ、行きなさい」

販売員を見つけ次第、黒猫にチョコを盗ませ【おびき寄せ】る。
彼にわざとぶつかり【誘惑】で人気のない場所へ誘導。
「ごめんなさい、痛くなかった?」
「何かお詫びしなくちゃ、ね?」
【毒使い】【マヒ攻撃】の麻痺毒付きナイフで嬲り責めの尋問を行う。
「ふふっ♪アナタ達の本拠地、教えてくれない?」

配られたチョコも、こっそり使い魔に奪わせます。
「まったく、フォローも楽じゃないわね」



「さぁ、行きなさい」
 ショッピングモールは仲間に任せ、ミーナ・ヴァンスタイン(罪人殺しの聖女・f00319)は使い魔の黒猫達を召喚して町中に放って情報を集める。
「バレンタインチョコー、おいしーバレンタインチョコはいかがっすかー。恋愛成就ー、好きな人の気を引けるあまーいチョコだよー」
 すると五感を共有する黒猫がチョコを山積みにしたリアカーを引く胡散臭い男を見つけた。そこへ何匹もの黒猫を走らせ、載せたチョコレートの箱をいくつも銜えて逃げさせる。
「あ!? こら! 待てーー!」
 それをリアカーを引きながら男が追いかける。そうして人気のない場所に誘導すると、ミーナが姿を現しわざと肩をぶつけた。
「わっ!?」
「ごめんなさい、痛くなかった?」
「え、あ、あの、だ、大丈夫です。こちらこそすみません」
 ミーナが目を覗き込むように尋ねると、おどおどと男は照れて目を泳がせた。
「何かお詫びしなくちゃ、ね?」
 そう言って誘惑すると男の鼻の下が伸びる。その隙にナイフで軽く頬を切った。
「ひっ何す……えあ、身体が、おかしい……?」
「大丈夫、死にはしないわ」
 観察するようにミーナは冷たい視線を向けながら、ナイフの刃を撫でるように男の顔に当てる。傷口から入った即効性の麻痺毒が男の自由を奪っていた。
「理由なんて知らないけれど、心を踏みにじるような人殺しを望むと言うことは、自分ものたうち回って死ぬ覚悟はできてるのよね?」
 起伏の無い声でミーナは尋ねながら、ナイフをゆらゆらと目の前で揺らす。
「ふんっ俺を嫉妬教団の同士だと知ってのことか、我ら嫉妬で結びついた仲間を売ると思っているのか?」
 鼻で笑う男にミーナは一転して笑みを浮かべ、ナイフを頬から下に伝って腹に当てて止めた。
「ふふっ♪ アナタ達の本拠地、教えてくれない?」
「な、なんのことか……ああ! 喋りまず! じゃべりまづから!」
 ナイフの切っ先が徐々に腹に入って来るところで、涙を流し鼻水を垂らした男が洗いざらい喋り出す。
「公園のクレープ屋ね。早速向かいたいところだけど、後始末もしておかないとね」
 黒猫達を総動員して配られたチョコをの回収に走らせる。目を虚ろにする少女達を見つけては手にしたチョコを奪い取っていく。
「まったく、フォローも楽じゃないわね」
 そうして周辺のチョコを粗方集めてミーナは公園へ向かった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ナハト・ダァト
WIZ行動

バレンタイン…?どういう風習だイ、それハ?
…成程、よくわからないガ。私のこの態度と知識は彼らの誤解を招きそうダ。

利用しない手はないネ。

[世界知識][情報収集]
見た目の怪しさとバレンタインへの関心の薄さを生かして潜り込もウ

【バウンドボディ】[武器改造][早業]
細く長い触手を体から生やして情報を集めよウ
気になる情報ハ、吟味していこうかナ

特に、心の中で何を考えているか知りたいときハ
【六ノ叡智・美麗】の出番ダ
UCの性質を利用しテ、相手の望みや願望を聞き出そウ

ついでにバレンタインがどういう行事かもしれるからネ

※アドリブ歓迎


月山・カムイ
なんだこの状況……
嫉妬に狂って殺させるなど、正気を疑いますね
阻止せねばなりませんか、この嫉妬に狂った連中の企みは

【POW】
男一人でチョコ売り場へ近づくのは非常にこうアレではあるが
チョコを配っている教団員を見つける為には仕方ないですね、うん
と、自分で自分を励ましながら、少女に声を掛けている教団員を探す

声を掛けている教団員を発見したら、接近して少女から引き離す
怪しげなチョコを提供する、というのを口実にしたナンパが流行っているようでね、そのまま攫われた人も居るらしいですよ
と言って、少女を逃がす

あとはまぁ、力尽くで口を割らせます
嫉妬に狂っている醜さが、チョコを貰えない原因と知りなさい、と説教でもしつつ



●公園の怪しい集会
「バレンタイン……? どういう風習だイ、それハ?」
 タールの身体にフードを被った怪しい姿のナハト・ダァト(聖泥・f01760)が、そんな風習は聞いた事がないと首を傾げる。
「……成程、よくわからないガ。私のこの態度と知識は彼らの誤解を招きそうダ。利用しない手はないネ」
 相手も怪しい男達ならば、この見た目は使えそうだと愉快そうに肩を揺らす。
「バレンタインなんて無くなってしまえばいい!」
「そうだそうだ! そもそも女性が好きな相手にチョコを渡す風習なんて日本だけだろ!」
「これはチョコレート会社の陰謀だ!」
 甘いクレープの香りが漂う公園で怪しい男達が集まり、僻み、妬み、恨みを籠めた会話をしているのを見つけた。
「おっ見つけたヨ。見るからに怪しいからすぐにわかるネ。でハ、潜り込むとしよウ」
 自分の事は完全に棚に上げたナハトは、自然体で怪しい男達に加わる。
「同士! お前もそう思うだろう?」
「バレンタインとハ、いったい何だったかナ?」
 話しかけられたナハトが疑問を浮かべる。すると男は憐れむように目に涙を浮かべた。
「そうか! そうか! バレンタインの事を忘れちまうくらい辛かったんだな!」
「バレンタインなんぞ男と女がイチャイチャする為のクソみたいなイベントだよ!」
「絶対に阻止しなくっちゃ、こいつみたいな犠牲者が生まれちまう!」
 バンバンと励ますように男達がナハトの肩を叩く。
「そうだネ。その通りだヨ」
 勘違いされるのは都合がいいとナハトは適当に相槌を打つ。
「それデ、バレンタインにどんな結末を望むんだイ」
 それとなく望みや願望を聞き出そうと質問をする。その言葉は共感を呼び口を軽くさせる。
「もちろんバレンタイン中止だとも!」
「バレンタインの所為でどれだけの男達が苦渋を飲んだことか!」
「「ジーク嫉妬ッ! ハイル嫉妬ッ! 幸せなカップルを血に染めよ!」」
 男達は一致団結し鬨の声を上げる。
(「ふむ、バレンタインとは男女がいちゃつくイベントのようだネ」)
 バレンタインの意味を知ってナハトが納得していると、クレープ屋からチョコを積んだ台車がやってきた。
「では新たなチョコを配りにいくぞ! バレンタインを粛正せよ!」
 男達は頷き、暗い情熱を燃やしてチョコを受け取り散っていく。それを逃さぬようにナハトは細く長い触手を伸ばした。

「なんだこの状況……嫉妬に狂って殺させるなど、正気を疑いますね」
 その様子を見ていた月山・カムイ(絶影・f01363)が呆れたように首を振る。
「阻止せねばなりませんか、この嫉妬に狂った連中の企みは」
 そして近づこうとすると、胡散臭い男の一人が公園を通りがかりショッピングモールの方へと向かう少女に接触する。
「キミ可愛いねー。それだけ可愛いとバレンタインにチョコレートをあげる相手とかいるんだろうなー」
 厭らしい笑みを浮かべているが、その目は嫉妬の憎悪に燃えていた。
「え? えっと私はそんな……」
「そんなキミに朗報だー! なんと好きな相手をキミにぞっこんにさせるチョコがここに!」
 少女の話など端から聞くつもりがないように男が言葉を続け、チョコレートを差し出した。
「いえ、だから私は……」
「まあまあ、一つ食べてみなよ。そうすりゃこのチョコの効果がすーぐわかるから、ね?」
 押せ押せで男はチョコを味見させようとする。
「店の外でまでやってるのか、まあチョコレート売り場に入らなくて助かったが……」
 あのファンシーな場所に男一人で入るのは勇気がいるのだと思いながらカムイが割って入る。
「怪しげなチョコを提供する、というのを口実にしたナンパが流行っているようでね、そのまま攫われた人も居るらしいですよ」
「そ、そんな! た、助かりました」
 そう少女に忠告すると、少女は顔を青くしてカムイを見上げ、そして今度は頬を染めて頭を下げて逃げて行った。
「だ、誰がナンパだコラァ!! カッコつけてテメェの方こそナンパだろ! 少女漫画だったら確実にフラグ立ってんじゃねぇかコラ!」
 わなわなと怒りに震えていた男が唾を飛ばしながら怒鳴る。
「嫉妬に狂っている醜さが、チョコを貰えない原因と知りなさい」
 掴み掛かってきた男を逆に抑え込み、説教をする。
「うるせぇモテる奴にはわからねぇんだよ! 俺達の苦しみが! 俺達を救ってくれるのは神だけだ! 神の力でバレンタインなんぞすぐにぶっ潰れる!」
 嫉妬に燃える炎が目に見えるようだった。
「君達は神を召喚するつもりなのですね? その神が救いを与えると思っているのですか?」
「ああそうだ! 神罰によってカップルは滅びる! ジーク嫉妬ッ! ハイル嫉妬ッ!」
 救いのない台詞を叫ぶ男に、カムイは溜息をついて手刀を打って気絶させた。
「その努力をもう少しまともな事に活かせないものですかね……」
 もう一度深い溜息を吐いたカムイはクレープ屋へと向かう。
 他の猟兵達も公園に集まり、チョコを配りに行こうとしていた男達を纏めて捕えていた。

●クレープ屋には
『ここを嗅ぎつけられたか。無能な人間どもめ』
 ワンボックスの移動販売車でクレープを焼いていたシャーマンズゴーストが、捕まった男達と猟兵達を見て舌打ちする。それは普通のシャーマンズゴーストではない、死体のように身体が白骨化していた。白骨のシャーマンズゴーストが注文のクレープを女性に渡す。だが客は誰も驚かずにクレープを受け取っていた。人々の認識を操作し日常に溶け込んでいるのだ。
『知られたからには口を封じなくてはな。やるぞ!』
 車が前に動く。するとそこにはマンホールが改造され、地下への階段ができていた。そこからクレープの甘い匂いを上回る、チョコレートの濃厚な香りが漂う。地下にチョコレートを加工する拠点を作っていたのだ。その階段から白骨化したシャーマンズゴーストが続々と現れる。
『神は言っている。嫉妬に狂えと』
『神を称えよ! カップルに嫉妬せよ!』
 エプロンをしたりお玉を持ったりと、チョコレートで汚れた姿で白骨のシャーマンズゴーストが、召喚したチョココーティングされた白骨の馬に乗って猟兵達に襲い掛かる。
 お玉を振るえばチョコレートで周囲がカチンコチンに固まり、念力でハートのチョコが弾丸のように飛び交う。そんな甘い香り漂う戦いに、猟兵達は萎えそうになる気力を振り絞って挑む。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第2章 集団戦 『シャーマンズゴースト・ボーン・リボーン』

POW   :    クロウボーン・ライダー
自身の身長の2倍の【白骨化した馬】を召喚し騎乗する。互いの戦闘力を強化し、生命力を共有する。
SPD   :    サイキックボーン・パレード
【念力で操った自分自身の骨】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
WIZ   :    ストーンエイジ
【杖の先端に嵌った宝玉】から【物体を石化させる光線】を放ち、【石化】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

月山・カムイ
甘すぎる匂いに胸焼けしそうですね
何を一体どう考えればバレンタインの妨害等という事を思いつくのか
少し聞いてみたい気もしますが
油断するとこちらが一気に物量で押し潰されかねませんか
ではまず、その騎乗している馬から排除させてもらいますよ!

可能ならばチョココーティングされた馬を騎乗している存在ごと一刀両断する
駆け回るその馬を追いかけて攻撃するのは現実的ではないが、逆にこちらに攻撃しようとしたところを、攻撃を見切って回避すれば
カウンターで剣刃一閃を叩き込む隙は見いだせるでしょう

人の恋路を邪魔する輩は、馬に蹴られて死んでしまえ、と言いますが
その輩が馬を駆るとは、なんとも皮肉なお話ですね?


ナハト・ダァト
医術を存分に活用しよウ
医者ヲ前ニ骨が相手なのかイ?
君達の天敵だヨ、私ハ
傷口、えぐらせてもらうヨ

世界知識、情報収集を用いテ
ニノ叡智で敵の攻撃を相殺できる様ニ
三ノ叡智を発動して常に動きを予知しておくヨ

一ノ叡智はブラッドガイストとバウンドボディと同時使用ダ

俊敏性・攻撃力・射程距離を上げておくヨ

武器改造デ体から武器になる触手は幾らでも生やせるからネ
操作性だって精密に行えるとモ早業、2回攻撃は伊達ではないヨ

サポートに動くなラ、光を放って目潰し、かばうを用いよウ
残像とだまし討ちを利用してもいいネ

※アドリブ歓迎



●チョコ塗れのシャーマンズゴースト
「ひいいい!?」
 いきなりの戦闘に人間の教団員達は怯えて隅に集まる。
「甘すぎる匂いに胸焼けしそうですね」
 むっと漂うチョコの香りにカムイは顔をしかめた。
「何を一体どう考えればバレンタインの妨害等という事を思いつくのか、少し聞いてみたい気もしますが、油断するとこちらが一気に物量で押し潰されかねませんか」
 甘い雰囲気に呑まれずに刃渡り二尺の小太刀を抜き放つ。
「ではまず、その騎乗している馬から排除させてもらいますよ!」
 そしてカムイは一気に間合いを詰めると蹴り飛ばそうとする馬の足を掻い潜り、馬の前脚を斬り飛ばして前のめりに転倒させる。そこで投げ出されたシャーマンズゴーストの首を斬り落とした。骨の頭がからころと転がっていく。
『おのれ! チョコが嫌いになるほど塗りたくってくれるわ!』
 その死体を踏みつぶして新たな敵が馬上からお玉を杖代わりに振って襲い掛かって来る。そして背後からも騎兵が迫っていた。
「馬の利点は機動力ですが、隊列を組まず好き勝手に暴れてはその利点を殺してしまいますよ」
 カムイはぎりぎりまで引きつけ残像を残して跳躍して避ける。すると残像を攻撃した敵が勢い余って正面衝突し、落馬して地面に倒れた。そこへカムイが敵の上に着地して胸骨を砕き、頭に小太刀を突き立てる。
『イケメンに死を!』
 倒れていたもう一体がその姿勢からお玉で熱々のチョコソースを飛ばす。
「医者ヲ前ニ骨が相手なのかイ? 君達の天敵だヨ、私ハ」
 三日月のような笑みを浮かべたナハトは、敵の行動を予知して甘さには辛さを、チョコソースに対してハバネロソースを放って相殺する。そして腕を触手のように伸ばしてシャーマンズゴーストの顔に叩きつけた。しなった腕の衝撃に敵の首が折れて顔が吹っ飛んでいく。
「カルシウムが足りてないようだネ。チョコばかり食べていては体に悪いヨ」
 鞭のように触手を振るい、次の敵の腕を砕き肋骨を纏めて叩き折る。
『貴様! 貴様もその怪しい風体ではチョコなど貰えない派だろう! 何故バカップルの味方をする!』
「そうは言ってモ、バレンタインなんて催しがあるなんテ、今日知ったばかりだヨ」
 チョコソースを撒き散らすシャーマンズゴーストがナハトを指さすようにお玉を向けると、何処吹く風でナハトは肩をすくめる。
『なんと! バレンタインをやらない聖域がこの世界に存在するというのか! おおっ神よ! あなたの愛が届いています!』
「残念だけド、キミの神は関係ないと思うヨ」
 勝手に感動する敵にナハトは足元から伸ばした触手を絡めて自由を奪い、そのまま締め付けて粉々に砕いた。
『カップルに死を! チョコレートに意味など無い!』
 馬上からハートのチョコがマシンガンの弾丸のように次々と放たれる。
「人の恋路を邪魔する輩は、馬に蹴られて死んでしまえ、と言いますが、その輩が馬を駆るとは、なんとも皮肉なお話ですね? 」
 チョコを小太刀で斬り払い接近したカムイは、跳躍し上段から小太刀を振り下ろしてシャーマンズゴーストを両断し、その勢いのまま馬も断ち切った。
「ですが今日は私が馬役ですので、邪魔な輩にはご退場願いましょう」
 すぐに次の敵に向かって刃を横に薙ぎ、馬の脚を斬り飛ばした。
『そんなにバレンタインが好きならチョコに塗れてろ!』
「タールにチョコレートを混ぜるとどうなるのかナ? 混ぜても判らないかもしれないネ」
 敵がチョコソースを放つ瞬間、ナハトは光を放って視覚を奪う。目を眩ませた敵は誤ってソースを放ち、己の頭から浴びてチョコ塗れとなって固まった。
「チョコレートがタールみたいだネ。タールを配るイベントも世界中を探せばあるかもしれないヨ」
 チョコに塗れた敵を見て、そんな事をナハトは想像し、触手を叩き込んでチョコごと砕いた。
「傷口、えぐらせてもらうヨ」
 ナハトは触手を振るって弱っている部分を叩き割り、関節部など脆い部分も破壊してあっという間に解体してしまった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ミーナ・ヴァンスタイン
アドリブやアレンジは歓迎するわ。

二丁拳銃を構えて、静かに狙いを定めるわ。
「アナタ達が元凶みたいね?」
【破魔】の弾丸を2丁の【2回攻撃】で敵群を【なぎ払い】ます。
「纏めて地獄へ送ってあげるわ」

相手の攻撃は【視力】【聞き耳】で【見切り】【残像】回避するわ。
「遅いわね」
躱したすきに【ダッシュ】で近づき【怪力】【グラップル】による蹴りで【カウンター】【鎧砕き】を放つ。
「あら、骨が砕けたみたいだけど大丈夫?」

味方が危ない時は【援護射撃】で麻痺毒付きダガーを【投擲】【毒使い】【マヒ攻撃】で動きを鈍らせるわ。
「隙だらけよ?」

一度見たコードは【断罪撃】を放ち相殺し隙を作るわ。
「わたしに一度見た技は効かないわ」


ロバート・ブレイズ
「私の『隣人』が拷問で吐かせた場所は此処か。二重の意味で」
集団戦ならば数を減らして潰すのが最善
闇堕ち発動
都市伝説(姿形は何でも可。UDCアースならば幾等でも有るだろう)を身に纏い、高速移動で敵を翻弄。七不思議を放ちながら一体一体の鎧を砕く。可能ならば『恐怖を与える』べく否定を籠めよう。
「貴様等の貌は醜いものだ。此れならば不定形の怪物が『美しく』視得る。好いか。良いな。貴様等は貴様等自身を冒涜して力を弱めて在ると知れ。莫迦どもに相応しい末路だな! クカカカカッ!」
敵の判断力を言葉で鈍らせ、情報収集。弱点を見つけて其処を鉄塊剣で殴り潰す。苦戦する場合は逃げる。猟兵の『叩き易い』場所へ誘導するのだ


罪悪館・皆無
SPD

「出たな、諸悪の根源ども、おニューのこいつの出番だ!!」
『あー、そのじゃらじゃらしたコインが武器か』
「そう名付けて"サイコバレット"。サイキックの電撃を利用したレールガン的なサムシングだ」
『それお前ぱくっ』
「これでもう【サイキックってユーベルコード使わないと超能力使えないんだよねぇ】とか言わせない」
『……そうか、ちなみに当たるのか?』
「……脳内シミュレーションはばっちりだぜ!!」
『こいつぶっつけ本番かよ!?』

♦ということで【サイコバレット(拳銃)】で攻撃します
コインでの意表を突いた射撃で"騙し討ち""クイックドロー"でサイキックボーンを迎撃します。大丈夫、サイコな銃は心で打てば当たるのだ



●咽るチョコレートの香り
「アナタ達が元凶みたいね?」
 二丁拳銃を構えたミーナは、狙いをつけて引き金を引く。
「纏めて地獄へ送ってあげるわ」
 破魔の弾丸を2つの銃口からばら撒き、馬もシャーマンズゴーストも纏めて穴だらけにして、そのまま連射しながら腕を横に動かし、近くの敵も薙ぎ払うように穿っていく。
『女なら銃弾ではなくチョコレートを配れ!』
 穴だらけになって崩れ落ちる仲間を盾に、騎乗したシャーマンズゴーストが突進してくる。ミーナを撥ね飛ばしたと思った瞬間、すり抜けてミーナの残像が消えてしまう。
「遅いわね」
 既に横へと躱していたミーナは馬を蹴り飛ばす。勢い余って落馬した敵は地面に突っ込み、右腕が根元から折れていた。
「あら、骨が砕けたみたいだけど大丈夫?」
『おんなぁ!』
 挑発に激高した敵がハートチョコを飛ばすと、ミーナは低く踏み込んで躱し銃口を顔に当てて弾丸を撃ち込んだ。顔に穴を空け仰向けに倒れたシャーマンズゴーストは絶命する。
「ひいいいいい!」
 それを目の前で見た人間の教団員が逃げ出した。
『一気に襲い掛かれ!』
 ミーナの周囲を騎馬が取り囲み一斉に襲い掛かろうとする。
「私の『隣人』が拷問で吐かせた場所は此処か。二重の意味で」
 そこへ隣・人から得た情報を元にロバート・ブレイズ(Nyarlathotep・f00135)が公園に駆けつけた。
「多勢に無勢、まずは数を減らすのが最善か」
 敵を見渡したロバートは、己の顔を見た人間を追いかけ殺す栄養失調の人型をした都市伝説を身に纏い、高速で駆け出すと敵の間を通り抜け、飛び交うハートチョコを躱し敵を翻弄すると、纏う都市伝説のやせ細って異常に長い腕が敵の顔を掴み、馬から引き摺り落として地面に叩きつけ頭を割る。すぐにその場を離れ、次の獲物を狙ってすれ違いながら骨馬の足をへし折っていく。
『化け物が! そんな化け物っぷりではバレンタインは過ごしにくいだろう! 暴れるなら我らの仲間になってカップルを襲ってはどうだ!』
「生憎だが、バレンタインを否定したとしても、烏合の衆に混じるつもりはない。特に莫迦の集まりにはな」
 勧誘を一顧だにせずロバートは敵を都市伝説の腕で殴りつけて顔を潰す。ロバートの足を止めようと敵がハートチョコの弾幕を張る。それをロバートは回避に専念して敵を引き付けた。

「出たな、諸悪の根源ども、おニューのこいつの出番だ!!」
 皆無がジャーンと効果音が鳴りそうな勢いで真新しいコインをじゃらじゃらと見せびらかす。
『あー、そのじゃらじゃらしたコインが武器か』
「そう名付けて"サイコバレット"。サイキックの電撃を利用したレールガン的なサムシングだ」
 もう一人の人格がコインを見ると、皆無が自慢げに武器の性能を説明する。
『それお前ぱくっ』
「これでもう【サイキックってユーベルコード使わないと超能力使えないんだよねぇ】とか言わせない」
 最後まで相方に言わせずに早口で皆無が言い切る。その言葉には涙が滲んできそうな悔しさが籠もっていた。相方は仕方がないなと溜息を吐く。
『……そうか、ちなみに当たるのか?』
「……脳内シミュレーションはばっちりだぜ!!」
『こいつぶっつけ本番かよ!?』
 根拠のない自信を胸に、皆無が腕に電気を走らせ、親指で弾く。するとコインが弾丸のように発射し、チョコ飛ばしに集中している敵の額を貫いた。
「どうだー! 一発必中! カッコイイ!!」
『クリティカルヒットだな。ビギナーズラックというやつか』
「当たればなんでもいいんだよ! 続けていくぜ!」
 調子に乗ってもう一度発射すると、今度は少し軌道がずれて馬に当たる。
『あーあ、調子に乗るから……』
「命中率が低いなら数撃ちゃ当たる作戦だ!」
 次々にコインを放ち馬も乗りても貫通するコインで吹っ飛ばす。
『コインじゃなくチョコを飛ばしやがれ!』
 だがその隙に背後からチョコソースを掛けられ、一瞬にしてチョコが固まり彫像と化して動きを止められた。
「あつっ! と思ったらつめたっ! 暗いし動けねー! ってゆーか甘い匂いが強すぎる!」
『いい香りも強烈だと気分が悪くなるな……』
 身動きを封じられた皆無に騎馬が突進してくる。
「隙だらけよ?」
 その背後からミーナが麻痺毒付きダガーを投擲し、敵の背中に突き立て身体を痺れさせ落馬させた。
「戦場で一人だけに意識を向けるなんて自殺行為よ」
 ミーナの背後に敵がそろりと迫る。その甘く香る気配に敵を見ずに背後に銃口だけ向けてミーナは引き金を引いた。弾丸を胸に食らいシャーマンズゴーストがよろめく。
「そんな香りをさせていたら忍び歩きなんて無意味ね」
 両腕を広げてミーナは前後の敵を同時に撃ち抜いた。その間に皆無は何とか動く指先で手に持っていたコインを弾き、身体を包むチョココーティングを吹き飛ばした。
『お前達女がチョコをくれないからいかんのだ! チョコください!』
 意味不明な妄言を口走りながら新たな敵が大量のハートチョコを放つ。
「わたしに一度見た技は効かないわ」
 それをミーナは次々と撃ち落としていく。
『ああ、俺のハートが! クソッバレンタインなんて呪われてしまえ!』
「チョコレートの代わりにこれをプレゼントしてあげるわ」
 ミーナは冷たく銃口を煌かせ、弾丸をたっぷりとプレゼントした。体中を穴だらけにして敵は崩れ落ちる。
「手先で当てようとしたのが間違いだったぜ、サイコな銃は心で撃てば当たるのだ!」
『違うのが混ざってるぞ』
 目を閉じた皆無の手から弾かれたコインが偶然にも敵の胸を直撃し、吹っ飛ばして落馬させた。
『我らを否定する世界を変えるのだ! 神の力があれば世界は変わる! 理不尽なルールを変えるのだ!』
「貴様等の貌は醜いものだ。此れならば不定形の怪物が『美しく』視得る。好いか。良いな。貴様等は貴様等自身を冒涜して力を弱めて在ると知れ。莫迦どもに相応しい末路だな! クカカカカッ!」
 シャーマンズゴーストの唱える理想をロバートは一笑し、敵の心を昂らせて判断力を鈍らせる。
『殺す!』
『我らを笑う者に死を! 嫉妬に狂え! 嫉妬こそが我らの力!』
 逆上した敵が馬で突撃してくると、ロバートは木々の間に陣取る。木が邪魔をして敵の機動力が落ちたところへ接近し、巨大な剣を振るい頭から馬ごと叩き斬った。そこへ横からお玉が振り下ろされるのを剣で受け止める。
「己の莫迦さ加減を身体で味わえ」
 そしてまた木を盾にするように位置取り、敵を分断して斬りつけ各個撃破していった。

●降臨
『ジーク嫉妬ッ! ハイル嫉妬ッ! 神よ! 我らの魂を捧げます! バレンタインを地獄に! カップルに神罰を!!』
 叫び最後のシャーマンズゴーストが倒れる。終わった、そう思った瞬間、シャーマンズゴーストの元からチョコレートソースが動き出し、地面に幾何学模様が連続して生まれると、それが空間を歪め新たなる脅威を呼び込む。そこに現れたのは何メートルもある巨大な顔。尼僧のように白い頭巾を被った顔が睥睨する。表情のない冷たい視線。それは弱き人々の心を支配し、意のままに操る。
『汝らに救済を与えよう。愛するものを殺めよ。痛みと苦しみを与えよ。それは救いとなる。愛ゆえにその手を汚し、愛ゆえにその心を堕とし、愛ゆえに煉獄に焼かれよ』
 その言葉の強制力に残っていた嫉妬教団の人間たちがふらふらっと動き出そうとする。それを猟兵達は気絶させて拘束し、適当に転がしておく。
 不完全ながらもシャーマンズゴーストの犠牲を糧に神と称えられる存在が現れた。今見た通り放っておけば人々が操られ地獄絵図が繰り広げられるだろう。そんな真似はさせないと、猟兵達は邪悪な神に戦いに挑む。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​




第3章 ボス戦 『『黄昏色の啓蒙』祈谷・希』

POW   :    苦痛を受けよ、精神を死へと返せ。救済の日は近い
自身が装備する【『黄昏の救済』への信仰を喚起させる肉輪 】をレベル×1個複製し、念力で全てばらばらに操作する。
SPD   :    黄昏を讃えよ、救済を待ち侘びよ
【紡ぐ言葉全てが、聴衆に狂気を齎す状態 】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
WIZ   :    痛みと苦しみが、やがて来る救済の贄となる
【瞳から物体を切断する夕日色の怪光線 】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は火奈本・火花です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ミーナ・ヴァンスタイン
アドリブやアレンジ歓迎よ。

眼鏡を外し、真の姿である真紅の魔眼と漆黒の翼をもつ吸血鬼へ変化。
「その教義、いい加減ウンザリなのよ」
聖別された長剣を二刀流で構え。
「来なさい。裁きと救済を与えるのは、わたし達の方よ」

【破魔】の剣で禍々しい肉輪ごと【怪力】【なぎ払い】【2回攻撃】で斬り裂くわ。
「邪魔よ」
聖なる刃は邪なるものにとって猛毒よ。【恐怖を与える】【毒使い】【マヒ攻撃】【鎧砕き】
「そう簡単に再生はさせないわよ」

無差別攻撃は【視力】【聞き耳】【第六感】【見切り】【残像】【ダッシュ】回避
「単純な動きは読みやすいのよ」

怪光線は【断罪撃】【グラップル】【カウンター】で無効化し、みんなを守るわ。
「無駄よ」


ナハト・ダァト
理解しタ
バレンタインというのハ愛を実らせる日
この日が無ければ子供は生まれないといっても過言でh
(倫理的暴走を始めたので割愛)

敵の攻撃の予測ハ【三ノ叡智】
相殺ハ【ニノ叡智】で行うヨ

肉輪は触手で撃ち落とそウ
2回攻撃、武器改造、バウンドボディ【八ノ叡智】を合わせ
200を超える手数ダ捌ききれない事はあるまいヨ

言葉は希望で打ち消そう【六ノ叡智】ダ
独りよがりの狂気なド大したものではないヨ

光線はまずイ
目潰しで眩ませバ瞳をつぶせるだろうカ
傷口をえぐるように、チョコの鎧を無視して攻撃するヨ

危ない味方はかばうヨ
激痛・呪詛耐性でどうにかなるだろウ
早業、医術もあれバ生まれながらの光をより効率的に使用できるからネ


ロバート・ブレイズ
「ああ。成程。骨が貌を孕むとは滑稽な。全身を象る気力すらも失ったのか。兎角。冒涜は幕を開ける」
情報収集で対象の『弱点』を探りながら悪知恵を使用
詩を流すと同時に偽りを作る
「黄昏からの救済は紙に記された白色で赤の愉悦を撒き散らす。されど奴等は自らの『歓び』を味わえずに殺されたのだ。哀れな信者の鳴き声すらも『無意味』と逃れる後頭部――ああ。貴様は骨だ。中身を無い骨なのだ。味噌も破棄した器だけよ!」
冒涜と否定を表現したUDCオブジェクト(偽物)を作り出す
おそらくはそれを壊すべく対象は動くだろう
狙うべきは後頭部だ
鎧を砕く鉄塊で叩き潰す
「嘲笑される気分は如何だ」


月山・カムイ
愛するものを殺させる事を狙うとは、配下の馬鹿らしさと反比例する……貴女は恐ろしい女性ですね
確かにそれは地獄絵図だ、貴女が望む滅びそのものでしょう
ですが、お断りします
そのような黄昏なぞ、この世界には不要だと知れ

ブラッドガイストで殺戮捕食態へ変形した絶影を振るい、肉輪を弾き飛ばしながら斬りかかる
彼女の言葉から狂気に飲み込まれそうになるかもしれないが、呪詛耐性のよりぐっと耐える

嫉妬により他者の不幸を願うつもりも、愛ゆえに煉獄に焼かれるつもりもない
自分はただ、人を護る為に在る!

呪詛を喰らい砕き、理性を失い無差別攻撃を行う彼女と、どちらかが倒れるまで最前線で戦い続ける


罪悪館・皆無
『このユーベルコードは相手に疑問を与える必要がある』
「疑問……つまりは謎かけだね!!」

問題
AとBは年の離れた幼なじみである。
Aは日焼け肌が健康的なぱっちりお目めのポニーテール小学生です。
AはB(成人済み男性)に好意からチョコレートをあげようと考えています。
AとBはカップルとして成立しますか?

※ただしAは同性愛もまだ意識していない純粋な男の娘とする。

「さあ、邪悪な神よ。お前の答えはいかに!!」


♦このユーベルコードの使い方ってこれであってるんだろうか?

とりあえず
成立する→小さな幸せを踏みにじるお前を許さない【クイックドロー】
成立しない→何てひどい世界だ、許さん【クイックドロー】
?→コード発動



●邪神
「ああ。成程。骨が貌を孕むとは滑稽な。全身を象る気力すらも失ったのか。兎角。冒涜は幕を開ける」
 語り掛けながらもロバートの視線は敵を探り続ける。
「黄昏からの救済は紙に記された白色で赤の愉悦を撒き散らす。されど奴等は自らの『歓び』を味わえずに殺されたのだ。哀れな信者の鳴き声すらも『無意味』と逃れる後頭部――ああ。貴様は骨だ。中身の無い骨なのだ。味噌も破棄した器だけよ!」
 詩を紡ぎながら偽物の巨大UDCオブジェクトを作り出す。出来た像は顔の無い怪物で、冒涜と否定を表現し、見る者に忌避感を与える。
『神に対する冒涜か、その姿を我が前に晒すことを許さぬ』
 邪神の両目から2本の怪光線が放たれ像を削る。その隙にロバートは背後に回り、巨大な鉄塊の如き剣を叩き込む。後頭部が砕け、どろりと溢れる泥が頭巾を汚した。それは甘い香りがする。内部はとろけるチョコレートで出来ていた。
「嘲笑される気分は如何だ」
 尋ねるロバートに、振り向きもせず邪神が肉輪を広げて攻撃する。それを剣で防ぎロバートは後退した。
『汝、愛を知れ、愛を受け入れよ、愛は死なり』
 言葉がロバートの精神に侵入しようとする。それに対してロバートは思考を高速回転させて大量の情報を処理することで心の防壁を作る。
 その間にミーナは眼鏡を外し瞳を真紅の魔眼へと変え、背中から漆黒の翼を生やし真の姿である吸血鬼へと変貌した。
「その教義、いい加減ウンザリなのよ」
 聖別された2本の長剣を左右に構え、邪神の正面に立ち塞がる。
「来なさい。裁きと救済を与えるのは、わたし達の方よ」
『汝の望むままに死を与えよ、その殺意を大切な者に向けよ。死こそ救済なり』
 邪神が目標を変えてミーナを惑わそうとする、その邪な意思を退けるように左の刃で斬り払い、接近すると右の刃を振り下ろして防ごうと蠢く肉輪ごと邪神の顔を斬りつける。破魔の剣が深々と頬を裂いた。
『甘き香りに包まれ、死に抱かれるがよい』
 地面に広がるチョコソースが肉輪の形となって飛翔する。ミーナは体を逸らしてそれを躱した。
「理解しタ。バレンタインというのハ愛を実らせる日。この日が無ければ子供は生まれないといっても過言でh――」
 ナハトが倫理的暴走を始めていると流れ弾のチョコ輪が飛んでくる、ローブを翻し数え切れぬ無数の触手をうねうねと生やすと、暴れ回る触手がチョコ輪を打ち落とした。すると新たに幾つものチョコ輪が次々と放たれた。
「200を超える手数ダ、いくつ飛んできても捌ききれない事はあるまいヨ」
 それを全てナハトは無数のうねうねと動き回る触手で撃墜していく。
「愛するものを殺させる事を狙うとは、配下の馬鹿らしさと反比例する……貴女は恐ろしい女性ですね」
 チョコレートの馬鹿騒ぎの末に呼び出したのがこのような恐ろしい存在とはと、カムイは洒落にならない事態に向き合う。
「確かにそれは地獄絵図だ、貴女が望む滅びそのものでしょう。ですが、お断りします。そのような黄昏なぞ、この世界には不要だと知れ」
 カムイはすっと己の手に小太刀の刃を走らせて血を流す。その血を吸って小太刀は封印を解き、殺戮捕食態へと変化する。ギリギリと歯軋りが鳴り早く血肉をと獰猛に唸る。
「好きなだけ喰らうといい」
 一気に間合いを詰めたカムイは小太刀を振るい、肉輪を抉り、喉の肉も喰い千切るように抉った。
『死を怖れるなかれ、愛が死であるように、死は人を包み込む』
 肉輪がその身を守るように回転しながら上下運動して。小太刀で受けるカムイを弾き飛ばす。
「邪魔よ」
 入れ替わるように前に出たミーナは二刀の聖剣を振るって身を守る肉輪を断ち、頭巾を斬り裂いて中の首にまで刃を通す。
「邪悪なるものにとって聖なる刃は猛毒よ」
 その傷口からどろりとチョコが垂れ出た。肉輪がそれを押さえつけ傷を塞ごうとする。
「そう簡単に再生はさせないわよ」
 そこへミーナは更に二刀の剣を振るい、肉輪を細切れに斬り飛ばす。

●愛とは
『このユーベルコードは相手に疑問を与える必要がある』
「疑問……つまりは謎かけだね!!」
『いや、別にそうと決まったわけじゃ……』
 もう一人の人格の言葉に皆無がこれだっとピーンと閃いて暴走を始める。
「じゃあ問題! AとBは年の離れた幼なじみである。Aは日焼け肌が健康的なぱっちりお目めのポニーテール小学生です。AはB(成人済み男性)に好意からチョコレートをあげようと考えています。AとBはカップルとして成立しますか?」
 ジャンッと効果音を鳴らし一息に皆無が長い設問を喋り切る。
「ただしAは同性愛もまだ意識していない純粋な男の娘とする!」
『趣味丸出しだな!』
 これが一番大事なポイントだと最後に付け足し、相方のツッコミがいつものように入った。
「さあ、邪悪な神よ。お前の答えはいかに!!」
『こんな問題真面目に考える奴いるのか?』
 バーンと効果音を背負い皆無が敵に向かって指さす。
『愛があれば全てが許される。それが世界の心理なり。ゆえに祝福を与えよう。男の娘に愛を、愛は育まれやがて殺意となる。さあ男の娘を愛しそして殺しなさい』
 強力な強制思念が放たれ皆無の男の娘大好きという気持ちを増幅させる。
「ああ、そんな世界もいいかなー。男の娘がいっぱいー」
『おい! しっかりしろ! その男の娘は妄想だ!』
 あははーと皆無がお花畑に多種多様な男の娘が並ぶ幻に飛び掛かろうとしたところへ、相方がガンガン頭に響く叫びで操られるのを防ぐ。
「精神攻撃は厄介だけド、希望は絶望を上回るヨ」
 意思には意思と、ナハトは男の娘という希望を共感させて敵の思念を上書きして皆無を治療する。
「独りよがりの狂気なド大したものではないヨ」
 どんな言葉も打ち消してみせるとナハトは笑みを浮かべる。

●愛は混沌
『愛を厭うものよ、嫉妬の業火を燃やし、その内に秘めたる獣を目覚めさせよ』
「「ジーク嫉妬ッ! ハイル嫉妬ッ!」」
 邪神の言葉が人々に狂気を与え、縛り上げていた嫉妬教団の者達が己が傷つくのも気にせず戒めを千切り、狂信者となって猟兵に襲い掛かって来る。
「どれだけ強化されても、理性を失った単純な動きは読みやすいのよ」
 残像を残してミーナは動き、惑わされ残像に攻撃する狂信者をすり抜けて邪神に近づき刃を頬に突き入れた。
『バレンタインは中止しろ! カップルは爆発しろ!』
 狂信者達が暴れ、猟兵達の邪魔をしようとする。
「少し大人しくしてもらえるかナ。ほんの少しの間だけだヨ」
 ナハトは伸ばした触手でぐるぐるに狂信者を簀巻きにして、暴走しても解けぬよう厳重に拘束した。
『愛しきゆえに憎め、愛の語らいに嫉妬せよ、愛する者に死の喜びを』
 邪神の言葉が甘く響く。それは殺意を湧き上がらせ、殺戮を招く誘惑に満ちていた。
「嫉妬により他者の不幸を願うつもりも、愛ゆえに煉獄に焼かれるつもりもない。自分はただ、人を護る為に在る!」
 己に喝を入れ、カムイは正気を保つ。その揺るぎない意思でもって手足を動かし、敵に肉薄すると小太刀を横一閃、敵の顔を斬り裂いた。
『これもまた愛』
 邪神の両目が光り2条の怪光線が放たれる。カムイは咄嗟に飛び退いた。
「光線はまずイ」
 ナハトの触手が片方の怪光線に触れて消し飛んでしまう。
「目潰しで眩ませバ瞳をつぶせるだろうカ」
 とりあえずやってみようと新たに伸ばした触手を叩きつけるが、痛みを感じていないように光を放ち続け、触手を消滅させた。
「どちらかが倒れるまで、我慢比べといきましょう」
 怯まずに刃を振るって呪詛を喰らい、カムイは獣のように邪神を喰い散らかす。
『滅びよ。汝の魂は救済される』
 怪光線を紙一重で避け、肩に多少傷を受けようとも離れずに斬り刻み続ける。だが怪光線が薙ぎ払うように放たれカムイに直撃しようとする。
「その攻撃は危ないヨ」
 触手を盾にしてナハトが代わりに光を受け止める。消滅する端から触手を生やし、どちらの速度が上かでぶつかり合い、僅かに触手の速度が負けて押される。
「これハ、ちょっとまずいヨ」
 ナハトがじりっと下がってどうにか身を躱そうとする。
「許さん……男の娘への愛を利用するその悪逆非道な行為! 絶対に許さんぞー!!」
『いや、半分くらい自爆だったような……』
 そこへ煮えくり返る怒りに正気を保つ皆無がコインを親指で弾き、敵の右目に撃ち込んだ。光線の半分が消え、その隙にナハトは射線を逃れる。
『神の光を受け入れよ。肉体は仮初、その魂は救済される』
 片目となった邪神は視線を合わせて怪光線を放つ。
「無駄よ」
 割り込み正面に立ったミーナは二刀をクロスして振り抜き、怪光線を断ち切った。
「光線であっても、一度見れば対処できるわ」
 光が途切れたところでミーナは駆け出し、間合いに入ると二刀を斬り上げて肉輪を斬り飛ばし、顎から口を深く斬り裂いた。
「危なかったヨ。やはり光線はよくないネ」
 ナハトは己を聖なる光で照らし、減ったタールを元通りに復元する。そして触手を敵の傷口に突っ込んで抉じ開ける。するとチョコが垂れ流しになって顎が地面にまでずり落ちた。
『愛を受け入れよ。愛を与えよ。愛の果てに救済を迎えよ』
 首も肉輪も失い身動きできなくなった邪神はそれでも言葉を放つ。
「愛だのなんだの、口先ばっかりで全く実感を感じられないんだよ! 男の娘を愛でてみろ! そうすれば男の子と男の娘のカップル最高って感じるから! あ! もちろん女の子と女の子もな!」
『……汝の言葉は混沌に満ちている。まさに黄昏なり』
 皆無の勢いだけで本人も何を言ってるか分かっていない言葉に、表情が変わっていないはずなのに、邪神の顔が困惑したように感じた。その瞬間、絡みつく紫の触手のかたまりが出現し、謎を喰らう触手が伸びて邪神の顔を縛り上げた。
『こんな発動の仕方でいいのか?』
「これこそ愛の力だな!」
 そんな何となくカッコつけた台詞で皆無は胸を張る。
「表面は人の貌をしていようとも、その中身は唯の泥とは滑稽を過ぎて失笑してしまう」
 ロバートは剣を薙ぎ払い首を断ち切る。切断された先端がどろりと溶け落ちた。
『汝、輝かしき黄昏に沈め』
 邪神の言葉がロバートの心に入り込もうとする。
「貴様は神などではない。泥ならば混沌の海に沈み消え失せるがいい」
 振り上げた刃を脳天から叩き込み、思念諸共斬り裂きかち割った頭から泥のようなチョコが流れ出す。
『愛は黄昏にある。黄昏を讃えよ』
 崩れ落ちながら邪神の片目が光り怪光線が薙ぎ払われる。
「これで終わりにしましょう」
 光に突っ込んだカムイは皮一枚で身を捻じって避け、小太刀を眉間に突き入れる。ごっそりと肉を抉り目と目が離れて邪神の顔が割れた。そのまま形を保てなくなり、甘いチョコソースとなって地面に広がった。

●バレンタインまで
「ああ、バレンタイン中止が……」
「この世には神もチョコレートもないのか……」
 指示するものを失った嫉妬教団の人々は項垂れて座り込んでいる。
「これに懲りたらくだらない宗教ごっこは止めることね」
 次に同じような事をしたら容赦はしないとミーナが冷たい視線を向けた。するとビクッと震えて嫉妬教団の人々が頷いた。
「大丈夫だヨ。バレンタインなんて参加できなくても生きていけるヨ」
 今日までバレンタインなど知らなかったナハトが、自分がその証拠だと自分を触手で指さした。
「ああ、なんだろうな。何とかなる気がしてきた……」
「そうだな。まだバレンタインまで日があるんだし、ワンチャンあるかも!?」
 何だか勇気づけられたと嫉妬教団の面々に元気が戻ってくる。
「だが忘れるな。怪物は常に貴様等の隣で誘惑しているのだ」
 次に堕ちれば戻ってはこれぬと、ロバートは淡々と真実を告げた。九死に一生を得たものの、これで完全に正道に戻れるかはその人次第だ。
「バレンタインというのも楽しいばかりではありませんね。まさか貰えない嫉妬がここまで大事になるとは……」
 人の心の力というのは強い分、間違った方向に進むととんでもない事が起きると、カムイは溜息をついた。
「これで男の子と男の娘、女の子と女の子のカップルを守ることができたな!」
『まだ言ってたのか、そんな希少カップルが早々……』
 皆無が平穏の戻った公園に目をやると、中学生くらいの女の子同士が手を繋いで歩いていた。
『「いたーー!!?」』
 賑やかな声が公園に響き。戦いが完全に終わった事を実感させた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年02月06日


挿絵イラスト