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不格好なペイトロン

作者：にゃあら

●永久の貌々
　ねえねえ――人々の内に囁かれた、小さな小さな噂話。それは美しさと残酷性を秘めており、何処か魅力的にも思える垂れ流しで在った。ある者は噂を信じて怖がり。ある者は噂を笑って拭い去り。ある者は噂を嗤って確かめに。ある者は噂を望んで自らと――そうとも此処は都市伝説蔓延る※※街だ――知ってる？　ああ。その噂だろう。学校でも職場でも家でも電子の海でも持ちきりだ。何でも、誰かに連れ去られるらしいよ。いやいや。独りで歩いているとやってくるらしい。もしかしたら隣に居たりして。しかし今日もアイツ来ねぇよな……どっかで硝子になってたり。まさかね……。

●グリモアベース
「んー……今度は石じゃなくて硝子ですか。どっかの邪神の仕業じゃないですね。たぶん別の何かですよ。勿論、隣・人（ゲロイン・f13161）ちゃんの予想ですが。真相は皆さんの脳味噌に任せたいものですね。しっかしよく居ますよねこの類」
　グリモア猟兵が傾げながら予知を再確認する。事務椅子が回転する事もないのは珍しく、正気なのか狂気なのか判断し難い。
「ええっと。とある街の噂を調査してもらいます。硝子についての何かですね。まあ。噂を辿っていればそのうち元凶と出遭えるでしょう。そうしたら殺してください。いつもの事です――ああ。一応言っておきますが気を付けてくださいね。きっと。妙なまでに頑丈でしょうから。宜しくお願い致します」
　グリモアが輝いて。

第1章 冒険 『ガラスの都市伝説』

POW   :    噂とされている場所へ調査する SPD   :    都市伝説の中心である学生に聞き込む WIZ   :    ネットで都市伝説の内容を調べる 👑11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

　噂話が広まるのは世の常で、人間は綺麗なものに惹かれ易い。ざわめく都市の裏側に如何なる『おもい』が蔓延るのか。それを暴くのが貴様等の務めで、今日も埒外は忙しなく在るべきだ――やかましい信号機と戯れながら雑踏に紛れ込んで行け。


　硝子――それは透すが故に通さずの厄介な壁とも解せ、もしくは世界を歪める『在り方』だろうか。邪魔な見えない戯れを壊すのは容易く、人類が如く『脆弱』なのが特徴的か。三角・錐人（ロケットスパイダー・f08517）は適当な場を見つけて入り込み、備え付けられた箱舟（パソコン）を開いていく。往くべき場所は電子の海で『人格』すらも潜り混める『交差』の奈落と説くべきか――数は酷く多かった。【ガラスの噂『🔎』】と押してしまえば、仕舞う事も出来ない情報の波。此方側は怪奇譚で彼方側は冒険譚。言い方を変えれば喜劇的で、故に面倒な水掛の虚空論（からっぽ）。その裏を弄るのは如何だ。濁流で『流したい何か』『流したい誰か』との接触。さあ……怪談（それ）を流行（バズ）らせているのは何者か。誰が如何に分身（複垢）為しても『繋げて』解けば理解出来る――ただの人間が怪異を育むものだ。
　神様や化け物は『似たような』在り方で活きている。信仰や恐怖こそが源で在り、それを絶つのは不可能に近い。長期戦に陥るのは世の常だろう。逆手に取れば噂を流して『感染』せば好いのだ。あまり流行しないだろう『幸せ系』は如何？
　脳髄（ひと）を動かすのは難解に思わせて愉快な試みだ。いい餌を垂らせば『怪物』の歩みも釣れるだろう――ふれた者から夢の中だ。

　――卵形の宝石は綺麗に違いない。

成功 🔵​🔵​🔴​

　未だ『噂』の段階ならば溜息を吐く程度で済む。大事件に人々を巻き込まず『解決』出来れば最良だろう。人間にとっての『正義』で在れば姫川・芙美子（鬼子・f28908）が渋る事はない。揺らがない『あるべき』輪郭が保てたとして腹が減るのは如何してなのか。正義には言葉が欠けられるのだが、その味方には何も齎されない。与えられたのは霞じみた平穏で、腸が蠕動（よろこぶ）には物足りない。ああ……お腹すいたなぁ……ナアナアと散らしていても世界が『救済』される術は有らず、ずるりと引き込まねば現実は透明だ――まずは情報収集ですね。私の任せなさい。大都会でも片田舎でも欲在る『街の隅』にだって【これ】さえ在れば万事解決。最近手に入れた機械仕掛け（タブレット）をスイスイつたって、ようこそ便利な文明への戸口――検索してもわかりません。理解しようとしても多過ぎます。不遜でしたか――並べられた文字列と画像が嘲るように通り去った――ならば誰に訊ねれば好い。
　狐拘狸さんにお願いです。変幻自在の妖怪を招けば人の世界を隅々暴ける。一般人と同化すれば摩天楼も藁の家だ。わらわらと雑踏を往けば良い。その合間に『硝子』の事でも調べましょう――固体に見せかけた液体。液体に視えたら固体――成程。不可思議な性質だ。まるで『妖怪』みたいな物質ですね。

　――噂の存在が『融ける』とは誰も告げなかった。

成功 🔵​🔵​🔴​

　割れ物注意と記された箱（ダンボール）は自らの心身に想えて仕方がない。侵されたのか冒されたのか、存在に突き刺さった透明度が『世』の虹彩から観察している。ゆらりとイージー・ブロークンハート（硝子剣士・f24563）は生きているのだが、如何にも活きるには罅が不可欠だ。収められた、治められた『心臓』が光輝を放って肉を照らす――ぶち抜かれたのは何時だったのか。潰れた筈の脈動が現では奇怪な頑『剣』だろう。繋いだ命は脆く儚く。それ故に『不死性』で呪われている。手元に在った【硝子剣】を撫でるように『興味』を抱いたのは必然だった。ああ。オレとは由来が違うんだろうけど――何かしらの親近感（うつしみ）が微笑むと思われた。
　手繰るべき情報は数多に達し、街々で探るほどに坩堝（鞘）へと嵌まる。そうとも噂好きの気が好い兄ちゃん。演技して『いても』『いなくても』充分に人と見做される。格好の餌食に『視』得れば良好だ。なあ。なあ。残酷で美しい噂っていったいなぁに？　まさか……人間が硝子になるとか？

　――裏路地に巡れば出遭うだろうか。
　乱立している人ガラス。

成功 🔵​🔵​🔴​

　ゴクリ……生唾を呑んだのか。欲望を表に出さぬよう『嚥下』したのか、兎耳の男の娘、テフラ・カルデラ（特殊系ドＭウサギキマイラ・f03212）が想像していた。脳裡に浮かぶのは『被害者』じみた己の輪郭で、半永久的に磨かれた透明だろう。恋（レン）患った者の如く、絶望に塗れた演技も悪くはない。つぅ……と垂れたのは悦ぶが故の自然な液で、つまりは涎の魅せた恍惚だ――ごしと拭って前を向き『取り敢えず』と街中を往く。一応は行方不明者も出ている事件だ。早々の解決が重要だろう。最悪の場合は『それ』を壊されかねない。ざわつく人間に紛れ込んで獣（キマイラ）はぶんらり。宙はきっと向こう側までも見渡せるに違いない。
　そんな歓びを味わっている別の場所。くんにゃりと機械（スマートフォン）を触りながらぶらつくのは強化人間の娘っ子。ミリア・プレスティール（被虐少女と手袋守護霊・f16609）と称された猟兵は手袋を思わせるUDC『ミトン』と噂の調査をしていた。SNSを扱えば複数の種（ネタ）が入り込み、囮役で在るテフラを誘導出来るだろう。しかし『怪しい』と思惟可能な場所は数多に在り、筆談（そうだん）しても特定は難しいだろう。最も『旗を立てる』事に関しては最高の組み合わせだ。彼方から勝手に貌を出す光景も想像容易い――もしもの時はお願いね――信用に値する『相棒』との在り方。オチを浮かべるのは全く可哀想な粘土だろうが――ふよふよと眺める手袋は如何に『思って』在るのか。まずは人間の『呟き』を辿るべきだ。当たって砕けるのは『誰か』の得意分野だろう。ぽちりと適当な話題を流す。
　囮は成せた。行き先は『手当たり次第』だ。ならば足を為せなばまずい。役者が固まれば誰が回収に行けるのだろうか。魔剣の『ヤドリガミ』たるシャルボン・フランヴェルジュ（契約魔剣（ただしご主人募集中）・f22312）が電動原付で追い掛ける。しかし噂だ。お話ならばお話らしく、シンデレラじみて大人しくしてるのがお似合いだ。魔法の解ける時間すらも忘れて終った、ただの怪物にお姫様の役は務まらない――先程からピョンピョコと耳は見えるが肝心の『正体』が現れない。襲われないならば周辺を探索するのも正しいだろう。駆け巡れば透明な何かに衝突するかも知れず、ふかせた雷（エネルギー）を繰って往く。
　兎の耳は見えていたが、今現在は『隠されて』在った。頭には帽子で服装は『この世界』の学生風だ。スクール・バッジは心臓の前で、恐怖感と昂揚感が混濁している。赤目が不意に『ゆれ』を知れば、何かしら『硬い』ものとごっつんこ――じんじんと痛む額を押さえて蹲れば、ああ、足元が硝子ではないか！　これが噂の『現象』に違いない。正体を『視る』為に首を動かしても『数秒』で其処まで変質している――表面なのか内面なのか。最早曖昧な世界の中で、沈黙が応えと為り得るのか。冷える。冷えるが、脳は熱っぽくて仕方が……。

　二人と手袋が現場に駆け付けた時、其処には立派な鏡像が在った。
　――何処からか、少女の笑い声が聞こえる。
　クスクス。クスクス。
　……ギ。ギギギ。ギィ――ィ。
　こすれる厭音（おぞけ）。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

第2章 集団戦 『硝子の噂『マンガン』』

POW   :    その少女に触れればガラスへと変わり果てる… 【直接抱き着き】が命中した対象に対し、高威力高命中の【ガラス化の呪い】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。 SPD   :    その少女に触れればガラスへと変わり果てる… 【直接抱き着き】が命中した対象に対し、高威力高命中の【ガラス化の呪い】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。 WIZ   :    その少女に触れればガラスへと変わり果てる… 【直接抱き着き】が命中した対象に対し、高威力高命中の【ガラス化の呪い】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。 👑11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

　無色透明が衣を着て歩んでいる。
　貴様等の血肉を永久に成すべく。
　貴様等の存在を永劫に成すべく。
　異常なまでに頑丈な、硝子の噂が彷徨っていた。
　――何故だろうか。
　硝子の群れの中心で、卵形の細工が輝いていた。
　何者か。何物かを待ち望むように。

　それは確かに貴様等だろう。
　――それを回収しながら倒すのは『必須』と言える。
　触れずに卵形（クリスタライザー）を……。






　簡潔に言えば世界は『大旗』を振り翳した透明度だろう。駆け付けた二人と手袋に『如何にか』して直（もら）った兎の獣（キマイラ）は改めて『鏡像』と対面する。真逆と呟くには頬が染まっており、危機感よりも先に昂惚感が勝っているのか。お二人が居て良かったです。誰かが貌を晒さねば『このまま』宝物として終幕（バッドエンド）だ。しかし熱っぽい脳味噌が想い考えるのは噂のその先。化した後の扱い方だ。きっと綺麗に保管されるに違いない――何処ぞの明日や昨日とは別なのだ――そんな嗜好で問題ないのか。何れにせよ卵形（クリスタライザー）が輝いている。可愛らしさに貌（らいおん）生やせば兎の面は愈々埋まった。暴れ回れば彼女等の気を引ける筈だ。その間に突破出来れば万々歳――デフォルメの牙が硝子に刺さり、そうとも内側まで透せると教えてやれ。
　解けろ。融けろ。溶けて終え――邪魔する硝子は半液体の骸の海に沈んで踊れ。それを照明（スポット・ライト）と告げたならば証明（デーモン）の有り様は脆くも地面だ。赤熱した先端が突き刺さり。容易くも不格好な『人形』が出来上がる。成り損ないへと堕とされた個体が、固体ではない己に絶望している。泥々（スライム）を思わせる輪郭が為す術もなく失せて還るのか――あとは卵形（クリスタライザー）の回収だろう。しかし『触れるのは危険』だと本能なのか普段通りなのか警鐘している。此処は『UDC』たる手袋（ミトンさん）に任せるのが最適だろう。それでも。嗚呼。あの光輝には惹かれて墜ちそうな――覗き込めば異に繋がるような――灰を被った女の子の魔性（チャーム）。首を振れ。
　Laaa……ピシリ。響き渡る声色（ハイトーン）が硝子どもの表面に罅を入った。粘土を思わせる自由自在な音の『槌』がミリアの咽喉から発されて、奥までも『こわして』抜けていく。くだけた個体が固体で在った事に後悔し、笑みを残した儘絶えて失せる。さらりと地面を舐った破片は傷を付けられて別れも告げず、ただの割れ物として世界に嘲笑われた――隙は見出せた。囮の効果は上々で、向こう側へと獣（らいおん）が寄せる――卵形（クリスタライザー）への接近は楽々だった。ふれても『何も起きない』。回収には成功した。されど『まだ』。個数に制限はないようで、兎角――。
　突撃（あたっく）獣（らいおん）は限界だった。デフォルメされた牙が剥がれ、本体たる兎が乳白髪を揺らしている。数の暴力に押されて圧された『あなた』の運命。ふわりと撫でられる。ゆらりと触られた。がしりと寄せられ……いとおしくも抱かれた。ああ。嗚呼。アア――衣と肉が異物と成り変わる冷たさ。今度こそ『芯』まで届くだろう、八寒めいた感覚。透き通った輪郭が向こう側すらも暴いていく。滴った恥ずかしさと称される汗も、最早垂れる事を知らない。は……は……言葉が出ない。陽の光も解せないのか。
　予定調和と謂うべきか。嬉し恥ずかしの快感と謂うべきか。成るべくして成った『もの』を魔剣（ヤドリガミ）が確保していく。群がる硝子どもを共鳴で割って道を拓け――間違っても鏡像（テフラ）は壊さないように。

　ダンボール箱に貼り付けた一枚。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

　引き摺り込む類（タイプ）の連中は貌を揃えて寂しがり屋だ。押し付ける事に関しては一級品で、しかし脆さは一般人以下だ。精神に至っては氷細工で勝手に溶ける有り様だろう。涌いて出でた原因は考えずとも卵形（クリスタライザー）に違いなく、その魔力は過去の残滓すらも惹き付ける光輝――回収しても現れる性質は何故だろうか――先ずは硝子を割り尽くして掴んでしまえば問題ない。嗚呼。抱き憑かれて『終い』の化物（かぶつ）は面倒だ。されど対処法は想像よりも容易いもので、出鱈目に『接近』を拒めば好い。不可視の埒外（ちから）を揮い翳せば『脳天から足先』までも微動出来ず。みしりと軋んだ端々が抵抗を止めた時『仕掛ける』べきだ。札（ドロー）からの追加（エクストラ・ターン）だ。螺旋（ループ）の山（デッキ）が猛威を奮う。
　炎熱が蔓延り表面を炙れば自ずと答えは『出来て』いる。急速で帯びた面に『続けて』は氷結の呪文（カード）。土地（コスト）を貪り手札を啜れば、相手は何も成せずに絶えていく――罅入った其処に鉛の味わい。贋物でも効果を読めれば構わない。トドメ――三角頭の蜘蛛蛇が這い、卵形（クリスタライザー）を両掌で。

　さあ、ガラスの主さんよ。
　――覚悟しな。
　不相応とは言わせない。

成功 🔵​🔵​🔴​

　中った。毒に苛まれて眩暈を感じた方が、彼女等にとっては幸せだった筈だ。するりと入り込んだ硝子の刃が、ゆるりと両腕を切断する。ぐわりと地面に落ちた透明は、呆気なくも破片と化して虚ろに空を映している。魔に蝕まれる心地は酷いもので、茫然と止まった『肢』を定めていく――断面の美しさは形容し難いものだが、嗚呼、哀れなほどに過去の滓はかすれた音色を出せやしない。いたい。いたい。いたい……そんな絶叫も漏らせない『もの』を弄るような気分。心が痛んでも敵は敵だ。オブリビオン相手に『鋭さ』が鈍る事は決してない。研ぎ澄ませ――痛覚の有無は如何だ。ないといい。無いと良かったのだ。ころげおちた結晶は涙の代わりと理解出来る。ならば痛みを極力『殺す』為に……切る。斬る。切り続ける斬り続ける壊し尽くす――ふれた左腕は呪いの証。全部が全部『硝子』の宿り木（にく）と化している。
　卵形（クリスタライザー）が何で在れ、此方で触れるのは問題ない。破壊したものを『踏まない』ように、その光輝へと左を伸ばす。他の個体に抱かれるだって？　それの何が悪いのか。何れは『己』も不格好な人型なのだ。

　どっちがばけものなのやら。

　――死は冷たいから安らかなのだ。
　風に吹かれた噂話。

成功 🔵​🔵​🔴​

　吐き気がした――嫌な予感と称される『きしみ』が都市伝説どもの面を濡らしている。彼女等は果たして最初から硝子だったのか。硝子と化した人間だったのか。今現在では解く術もなく、ただの化け物が群れ集っている。調べました。隅々までも暴かれた、発かれた悪寒が『過去』を舐っている。難しく思考する必要はない。要は『流れない硬い水』なのだ。頑固な臓腑も抱えきれない、可愛らしさの硬度と謂えよう。正体が知れた瞬間、恐怖とは極端に『ふられて』いくものだ――正気と狂気の骰子に何を期待して踏み込めと告ぐのか。鬼事（おにごっこ）は楽しいとも。愉しく逃れれば鵺飛翔し、啼き声が届かねば此処は『人の胎』――踊り方を忘れて死んでいけ。
　蹴りを放つだって。無理難題を吹っ掛ける奴だ。不明で『在るべき』と刻まれたサマが固体とも液体とも気体とも言えない、ただの怪物を孕んでいく。嗚呼。腐乱死体と土竜と蟻ならば良かったのだ。そう在れば貴婦人だと定義出来る――しかし『そう』は成らずに微笑んだ。後ろの正面誰かと訊けば、いない、いない、化遭（ばあ）だ。意識が遠退いて……中、内、肚、胎、なか。
　鍵開けに必要なのは未知だと知れ。絞め潰した『こころ』は粉々で、崩れた貌（ガラス）は絶望のようだ。鬼の手に抱かれた『最後』は骸の海を救いと魅せた。ようやく。ようやくだ。容からの解放が心地良く――もう、なにもない。
　卵形（クリスタライザー）が転がっている。怖くて恐ろしい光輝が誘っている。不用心に触るのは危険だろうか。これも『調べて』しまえばおそろしくない。未知が既知に堕ちる刹那、オマエは刺激を包まないのか。

　――成程。人類ではない。

成功 🔵​🔵​🔴​

第3章 ボス戦 『『クリスタライザーの守護者』夢野・那珂』

POW   :    IN THE DREAM 全身を【非実体 】に変える。あらゆる攻撃に対しほぼ無敵になるが、自身は全く動けない。 SPD   :    SARIEL EYE's 【クラゲ状の触手 】から【高圧電流と神経毒】を放ち、【毒と感電】により対象の動きを一時的に封じる。 WIZ   :    WELCOME TO DREAM WORLD 小さな【銀の鍵 】に触れた抵抗しない対象を吸い込む。中はユーベルコード製の【ドリームワールド】で、いつでも外に出られる。 👑11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

　貴様等は支援者（ペイトロン）だったのだ。卵形（クリスタライザー）に触れた埒外は『現れた』存在と貌を遭わせる。海月を想わせる輪郭が揺れて、夢心地の内に『光輝』を指差した。あの『硝子』は不格好だ。あの『硝子』は相応しくない。だから貴様等の『超越性』が望ましかったのだ――卵形（クリスタライザー）が齎すのは『厄災』を齎す。しかし猟兵ならば厄災ではなく『良い』を引き出せる。
　故に。渡す。渡すのが正しい。与えられた者に祝福を。埒外の在り方に語り掛けを――貰わないなら還れない。貰ってくれたら還ってもいい。
　ああ――されど貴様等よ。

　過去（オブリビオン）は殺さねば成らない。
　その蝕肢が優しいとは思えないのだ。
　――銀の鍵が門を叩く。
　窮極の向こう側は『貴様等』に塗れている。


　今の持ち主はお前さんか――違う。支援者（ペイトロン）に成るべきは貴方もしくは貴女で、抱くべき卵形の塊は刺胞に等しい。そうとも美しくて可愛らしい、不安定な脳髄（しこう）のお前さん。過去（オブリビオン）でなければ口説いて仕舞う可能性だ。気になる人が居なければ愈々『海月』は文字通りの靡きだろう――海に月が。世界に宝石が映っている。されど乱鎮めるべく、沈める夢の『中』は生温い潮気……さ、そいつを返してもらうぜ。波（かぜ）に攫われた髪の束が、微笑むように触手（うねり）始めた。ぴりりと電気（しびれ）を孕んだ先端が、埒外の鼻先で踊っている。
　毒と感電――耐性が在ると成されても『全部』を受け止めるのは危険だろうか。巡らせた壁（オーラ）で凌ぎながら躱せるものは避け、ウミウシが如く近寄っていく。忍ばせた恐怖が絡み合えば『卵形』を狙う蛇じみて――庇う事はなかった。構う事もなかった。故に『今』が隙だらけと解せよう。
　お前が始末されるのは何度目だ――問い掛けに答える『細胞』は失せた。切り札は巨刃と達し、絶つべき血肉を薙いで通る――透した先には綺麗な赤だ。今回も『彼女』は死ぬ他に赦されない。

　骸の海で夢の中、静かに独り。
　ひと眠りしな……地面に落ちた、ひどく新鮮な跳ね回り。

成功 🔵​🔵​🔴​

　支援者（ペイトロン）――貴様の真っ黒を白く染めれば、素敵な『世界』が出来上がるのだ。誘き寄せられたのか。硝子と見做されたのか。果ては両者と解ける現状、正体不明よりは全き『楽々』だ。隠れて何かを成される以外に、意外な『歓迎』を受けるとは奇怪。しかし『問題ありません』だ。抱かれる触手は何れ柔らかく、胎児の儘に『あい』される心地だろう。ああ。任せられる感覚が存在（のう）に染み込んで悦ばしい。そう『在る』べきと注ぎ混まれた器があふれるまでに嬉しく生る――さて。始めましょうか。プラス感情の深海で『オマエ』は己の義務を忘れない。封印限定解除（百鬼夜行）の幕開けだ――首を吊る為の道具？　成程。そういう悪食も『ある』。
　饕餮（ようかい）の髪質を侮ってはいけない。往くべき腹の鳴り具合を胎の下で確かめてやれ。薙ぎ払った『海月』が儚くも倒れ、此処からは『斃れる』為に遭う。塞がれた大口が開かれて、猛獣は贅沢（いけにえ）を残す意を知らぬ――放電も放毒も胃袋に収め、治められたい欲望は邪だ。
　受け止めた口は……大顎は停止をこぼして『女（オブリビオン）』に餓えた。寿命すらも喰い千切りながら『再生』諸共血肉を啜れ――貴女から何も貰うつもりはありません。その代わり奪わせていただきます――齧る瞬間、笑みが視えた。

　同じ事ですから構いませんよね？
　――ゼリー状の感謝。

成功 🔵​🔵​🔴​

　情けは人の為ならず。などと諺は吐き散らして在るが、有るのは只管に『透明』な過去と現実だ。未来を滅ぼすのも拓くのも『貴様等』の腕次第が真実で、誰か彼女を殺して戮して鏖して終え。衣服は透けた。肌は透けた。肉は透けた。骨は透けた。臓物の透（な）い本当が『卵形』の意味を解こうと弄る。嗚呼。何度も幾度も永久に砕けて、尽くは再生する忌むべき呪い――どうだい守護者（ドリーム）。この硝子でも不格好じゃないか。この人間でも不相応じゃないか。銀の鍵が窮極を開け、あらゆる時空（オマエ）を魅せるならば。何が違うと説くのだろうか。何れは過去だ。忘却だ。我々もオブリビオンと成される『残滓』に予備軍（ふせて）佇む。受け取れば最後。最期の浮遊感は水泡らしい――ありふれた羨望。その『おもい』は自動的に完遂される。
　クリスタライザーは渡された。その既知（かこ）を覆す方法はない。終わりを迎える『夢』に晒すのは「羨ましい」だ。終着点の見えない埒外は『かわいそう』に想えるのか――災厄でもなく良い。何が生じると告ぐのだ。硝子は生命を落とさない――永遠に生まれず夢を見続けるのかな。贈り物は今に対しての透明（ふめい）……おやすみ。柔らかい、人のような『にく』に欠片が突き刺さる。

　重い。張り付いた、硬質。
　――みだれてうつる、きれいな内側。

成功 🔵​🔵​🔴​

　荒れ猛る嵐（ストーム）が如く、されど星空に煌めく粒々が貌（カタチ）に。グレイ・アイビー（寂しがりやの怪物・f24892）は人型に隠れた卵形（クリスタライザー）を視認する。ああ。如何か狂おしく、惜しくも嫉んでいる過去忘却（オブリビオン）どもに『良い』宝玉（めだま）を教えてやれ。琥珀色に秘められた成長性は、未だ途上の道端に転がっていた。ずるりと剥き出しに成された異の肌を視よ。体内に埋め込まれた数々の『刻み』が針を通すかの如く膿（浮）かんで在る。それを何の証だと『問われた』ならば如何返す――誰が何と謂おうと不幸ではない。海月の光がはじけて魅せて、先端が毒々（独々）しく揺らいで迫って――渡す貴様も奪われた貴様も、現実だ。
　見た目は怪物、中身は人間。それを『存在』だと理解すれば、鏡合わせの兵器だろう。揮われた輪郭は最早解せず、視界に映すには『巨大』が過ぎた――はんぶんこだ。半々の魔物が林檎（かわ）を撫でれば、どろりとはみ出た臓物（きみ）……吹き飛んだ『触肢』を視た瞬間、懐に潜り込んでぶん殴れ！
　宙が海で膿が空だ。反転した眼球が『液』垂らせば、うるおった地が『ゆがんで』謳う――不味い。くさった卵に泥を添えた、ただの死肉だ。

　細胞は愚頭々々（ぐずぐず）亡いている。

成功 🔵​🔵​🔴​

　銀色に輝いたのは輪郭すらも『美しい』門を抉るような道具で在った。此処に『刻まれた』門とは即ち夢世界への――精神的な世界への両道切符で成り、ミルディア・ディスティン（人間のシャーマン・f04581）にはひどく魅力的に思えた。幻想とはつまり『自分』の望みを遍く叶える鞭打ちで、しびれるような刺々が透明度凄まじく手招いている。弄られるのも炙られるのも、身を投じたくなる『酔う』な悦楽が【無数の己】と成って映し出される――欲しがりな者が。欲しがりな物が。ぶんぶんと脳漿を撒き散らしていく。しかし『あれ』は命を冒涜する宝物だ。永久と称される『最悪』に導く為の『くらげ』なのだ。卵形（クリスタライザー）戯れて、渡してあげると笑み寄った。
　たとえば。此れを依存症だと記したならば、侮蔑を籠めて哄笑してやれば好い。騒がしさと静けさの中間地点で、オーダーメイドが渇いている。その髪型は『どのくらい時間を擁する』のか。底に沈めば勿体ないも軽減出来る……。
　こらえろ――耐え切れ。その誘惑から思考回路を斬り放せ。甘ったるいグロテスクに囚われる事なく、影の『到達』を待ち望め……瞬間。潜んでいた追跡者が駆け、奇妙な形状を叩き付ける。頭蓋の裏側までも刺胞だった。

　極めて救いようがない。

成功 🔵​🔵​🔴​

　守護者は『接近』に気付く術を持ち得なかった。影に撲られた事も在り、周囲の『驚異』に気を巡らせる『のう』を掻き出せなかったのだ。ずるりと現れた――現れたと表現したのは比喩に等しい――のたうちと共に耳朶を弄る笑い声。クスクス。クスクス……言葉と説くにはつたない『音』で、先端が這入り込めば愉快な愉快な宴の始まりだ。嫌だ。厭だ。渡すのも奪われるのも構わないけれど、そんな最期は咀嚼出来ない。ああ。捕食されているのは『オマエ』の方だ。蛆虫を巨大化させて硝子に融かした心地だろうか。ずりゅりゅと星辰（のう）を啜り尽くすのはお楽しみだ――甘い甘い苺を食むのはじっくりぴちゃぴちゃが悦ばしい――不格好な食卓に不可視が色憑けば万歳だ。ゼリー状の塊が蠕動し、その眼球は星とも認識出来た。
　最も、守護者の『人間』じみた悲鳴（貌）には映らない。写らせた意味は惨劇を孕み落とし、沸々と体液を逆流させていく――満腹の相棒（ソウル・フレンド）が歓喜に塗れて纏わるのを止めれば、枯れ果てた過去が鏡に縋る。
　おいで。おいで――こっちの液は甘かったっすか？

　ニニニナ・ロイガー（一般ＵＤＣ職員・f17135）。
　まるく事件は解かれた。

成功 🔵​🔵​🔴​

最終結果：成功 完成日:2020年08月17日