迷宮災厄戦⑭〜メイデンズ・スランバー
●おやすみなさいの国
そこはとってもふわふわな夢の国。
どんな人もどんな怪物も足を踏み入れてしまえば、たちまちお布団と仲良しさん。
どんなにあらがってもむだむだむだ。
さあ、みんなで眠りましょう。
夜ふかしをするのは悪い子だけ。けれど、悪い子はみぃんな食べてしまいましょう。
ぐちゃぐちゃにすれば食べやすいものね?
お皿の上で四つ葉のように飾り立ててもいいでしょう。
ああ、なんてきれいなんでしょう、みんなみんな、四つ葉の一部になりましょう!
●迷宮災厄戦
グリモアベースへと集まってきた猟兵達に頭を下げて出迎えるのは、ナイアルテ・ブーゾヴァ(フラスコチャイルドのゴッドハンド・f25860)だった。
ただ、そんな彼女の装いはいつもと違うようだった。
白い大きいサイズのあっていないブカブカのシャツといった彼女の姿は、これから睡眠に入るような装いであったのだ。
―――なんで?
それはグリモアベースを訪れた猟兵達の共通の思いであったことだろう。
「お集まり頂きありがとうございます。此度の戦場は『おやすみなさいの国』と呼ばれる、とってもふわふわな夢の国です」
もうなんだか枕でも抱えていそうなほどにふわっとした説明をするナイアルテ。
猟兵達のまとまらない考えをよそにナイアルテは何事もないかのように説明を続けていく。
「この国では全ての者が強烈な睡魔に襲われ、戦うことが難しいのです。ですが、パジャマパーティをしている間だけは、睡魔に襲われずに行動ができるのです」
ばーん! と得意げな顔をしてナイアルテは言う。
パジャマパーティ。
それは女の子たちがお友達の家に泊まり込み、パジャマ姿で噂話や遊びに興じるパーティ。十代の少女たちの特権。
だが、近年パジャマパーティは少女たちだけのものではない。女性も男性も、何関係ない。パジャマを着てお泊り会をすれば、これ即ちパジャマパーティである。
「なお、敵オウガ、四つ葉の使者と呼ばれるオウガの群れはすでにパジャマパーティの準備を整えているようです。アロマキャンドル、ハーブティー、甘いお菓子などなど……いいですね、パジャマパーティ」
少し脱線したが、彼女の説明する通りの戦場なのだろう。
あまりにも突拍子がないものだから、猟兵達は頭を抱えたことだろう。パジャマパーティをしながら敵と戦う。
どういうこと!? と。
なにも問題ない。
お気に入りのパジャマを着て、れっつぱーりぃすればいいのだ。楽しんだものこそが、睡魔に打ち勝つことができるのだから。
「あ、これですか? これは私のパジャマです。ゆっったりとしたものが好きなんです」
大きめぶかぶかサイズのシャツの裾をつまんで微笑むナイアルテ。
説明するだけなら着る必要なかったんじゃない? という猟兵達のツッコミにナイアルテは照れたようにゴニョゴニョ言う。
「……お気に入りのパジャマ、自慢したかったんです」
赤面するナイアルテをよそに猟兵達は次々と転移していく。
そんな彼等をテレテレしつつ、ナイアルテは頭を下げて見送るのだった―――!
海鶴
マスターの海鶴です。
※これは1章構成の『迷宮災厄戦』の戦争シナリオとなります。
おやすみなさいの国にて、パジャマパーティに興じつつ、同じくパジャマパーティをしながら襲ってくる集団オウガ『四つ葉の使者』を打倒しましょう。
※このシナリオには特別なプレイングボーナスがあります。これに基づく行動をすると有利になります。
プレイングボーナス……パジャマパーティーをしながら戦う。
一人でもみんなでも、パジャマを着込んで楽しめば、それこそがパジャマパーティなのです!
それでは、迷宮災厄戦を戦い抜く皆さんのキャラクターの物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
第1章 集団戦
『四つ葉の使者』
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POW : ぐちゃぐちゃにすれば食べやすいものね?
【クローバーの魔法陣から放つ魔力の矢】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD : あなたも素敵な四つ葉になりたいでしょう?
対象への質問と共に、【クローバーの魔法陣】から【白詰草で出来た犬型の怪物】を召喚する。満足な答えを得るまで、白詰草で出来た犬型の怪物は対象を【牙による噛み付きや体当たり】で攻撃する。
WIZ : 綺麗でしょ、あなたもこの一部になるのよ!
自身からレベルm半径内の無機物を【四つ葉のクローバーと白詰草の嵐】に変換し、操作する。解除すると無機物は元に戻る。
イラスト:麻風
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
セレシェイラ・フロレセール
今宵はしっとりと楽しもう
わたしの秘密のパジャマパーティ
桜色の可愛らしいワンピースに身を包んで、コロンって寝転がって
ぐぐーって伸びてみたり、側のクッションをダックしてみたり
どこかくすぐったいような、そんな感情が沸き上がってくるのはどうしてだろうね
アロマキャンドルを灯してみよう
ふんわり薫る良い香りに頬が緩む
ハーブティーも飲んで思いっきりリラックスモードに突入
キャンドルの幻想的な揺らめく炎を見つめながら過ごす時間はとても優しい
わたしひとりなら、こういうパーティだって良いものでしょう?
でもそろそろパーティはお開きかな
桜の魔法を結んで、今宵の物語はこれにて御仕舞い
パジャマパーティー。
それは乙女のたしなみである。本当ならばもう眠らなければならない時間であっても、今宵だけは時間を忘れて好きなだけ起きていることができる。
お気に入りのパジャマに着替えて、姦しくも華やかなりしヒソヒソ声が響き渡る。不思議の国『おやすみなさいの国』にはささやくような声があちらこちらから響いていた。
オウガ『四つ葉の使者』たちは、その身に宿した四つ葉のちからをふるい、次々と周囲の無機物を四つ葉のクローバーと白詰草の嵐へと変えていく。
「なんてすてきなんでしょう。こんなにも美しい光景を前にして、眠りを拒絶する猟兵なんて存在しないはずだわ。幸福なままに、この光景の一部にしてしまいましょう。幸せの四つ葉と白詰草の嵐の前に散り散りにミンチにして食べてしまいましょう。ねえそうしましょう」
そんなヒソヒソ声が花の嵐とともに『おやすみなさいの国』を進む。
この不思議の国に足を踏み入れた猟兵を言葉通り、ひき肉にしてしまおうと、そのオウガたる食欲のままに人肉を欲して進むのだ。
激しい睡魔が猟兵たちを襲う。
けれど、パジャマパーティーを楽しむ者には、その睡魔は訪れない。
楽しいと思う気持ちがあれば、どれだけ夜が更けていたのだとしても、朝までだっておしゃべりすることだできる。
「今宵はしっとりと楽しもう。わたしの秘密のパジャマパーティ」
桜色の可愛らしいワンピースに身を包んで、柔らかであり大きいクッションにコロリと小さな体でもって寝転ぶのはセレシェイラ・フロレセール(桜綴・f25838)であった。
この不思議の国にやってきてからというものの、迷宮災厄戦の続く戦いに疲れてしまっていたせいも相まって睡魔が彼女を襲う。
けれど、彼女は今、秘密のパジャマパーティに興じている。オウガである『四つ葉使者』に不意を突かれることはないだろう。
「んー……どこかくすぐったいような、そんな感情が湧き上がってくるのはどうしてだろうね」
ぐぐーっ、とクッションの上で伸びをする姿は桜色の猫のようでもあった。そばにあったクッションを抱きしめてゴロリと転がってみたりと、彼女のパジャマパーティーは終始のんびりとしたものだった。
誰に咎められることもない。
アロマキャンドルに火を灯し、じわりと薫るアロマがふんわりと彼女の周りに漂い始める。
キャンドルの火は小さいけれど、視界にあるだけで不思議な安心感を与えてくれる。リラックスしているということだろうか。
不思議な魅力あるキャンドルの日を見つめる。ハーブティーだって忘れてはならない大切なものだ。
とぽとぽと湯気を立てながらカップに灌がれるハーブティー。香りを楽しみながら、体を芯から温めてくれる。
じんわりと滋味が体に行き渡って、キャンドルの火が揺れるたびに心が安らぐ。優しい火と香りに癒やされながら、セレシェイラは十分すぎるほどの休息を得た気分だった。
「わたしひとりなら、こういうパーティだって良いものでしょう? そうは思わないかな?」
セレシェイラはハーブティーのカップをソーサーに置いて、リラックスした面持ちのまま、桜色の硝子ペンを宙に走らせる。
「眠っていたのではなくって? 心地よくって眠ってしまいたくなるほどの睡魔がこの国には潜んでいるというのに!」
四つ葉と白詰草の嵐と共にセレシェイラに迫っていた『四つ葉の使者』達の声が重なる。
それは完全に不意を付いたと思った瞬間にセレシェイラから発せられた言葉によって、自分たちの目論見が看破されたと悟った瞬間だった。
「桜の魔法を結ぶ―――でも、そろそろパーティはお開きかな」
ユーベルコード、桜結(フィナリス)。
結ばれた宙を描く硝子ペンの軌跡が桜の花びらとなって、四つ葉と白詰草の嵐を散り散りに切り裂いていく。
当然のように『四つ葉の使者』たちをも巻き込む桜の花びらは、そっくりそのまま彼女たちを霧散させ、骸の海へと還す。
久方ぶりの心地よい時間。
桜の硝子ペンが結ぶエンドマーク。
「―――今宵の物語はこれにて御仕舞い」
大成功
🔵🔵🔵
崎谷・奈緒
【連携・アドリブ歓迎】
パジャマパーティー!懐かしい響きだ……中学時代を思い出すな!
ええっと、パジャマパジャマ……(ごそごそ)うむ、やはりこの水玉模様にナイトキャップ!これがあたしの正装だ!これ着ていこう!
そしてみんな!パジャマパーティーといえば?そう、枕投げだね!
枕投げといえば?そう、チーム戦だね!
オウガチームと猟兵チーム、勝つのはどっちだ!刮目せよ!
枕を投げつけながらも、ハーモニカを演奏してUC「かつて見た光」を相手チームに叩き込むよ!
演奏する曲は、えっと…運動会っぽいクラシックでいいかな!
どんどん盛り上がれば、あたしのテンションもうなぎのぼり!
UCの威力も倍増よー!くらえー!
一度足を踏み入れたが最後、その国は訪れた者に猛烈なる睡魔でもって襲いかかる。
生命である以上、睡眠は必要なものだ。質の良い睡眠は、それだけで人の心や体を整えてくれる。けれど、時として惰眠を貪りすぎるのまた健康的であるとは言えないだろう。
不思議の国―――『おやすみなさいの国』は、一体どういう理屈なのか、どんな物であっても睡眠へと誘う。
けれど、その睡魔に影響されないもの達がいた。
オウガの集団『四つ葉の使者』。彼女たちは思い思いにパジャマを着込み、パジャマパーティを楽しんでいた。
「どうしましょう。眠っている猟兵たちを見つけたらどうしましょう? 食べ方はどうしましょう?」
「みじん切り? それともぶつ切り? 乱切り?」
「すりつぶしてスムージーにしてしまうのもよいのではないかしら?」
そんな物騒な声が聞こえる。
人肉を欲するオウガである彼女たちは彼女たちなりの楽しみ方でパジャマパーティーに興じているのだ。
そう、それこそが、この国のルール。襲いくる睡魔に抗う術なのだ。
「パジャマパーティー! 懐かしい響きだ……中学時代を思い出すな!」
UDCアースの一般的な家庭に生まれ育った崎谷・奈緒(唇の魔術・f27714)にとって、パジャマパーティとは思春期の頃の思い出であった。
誰かと誰かの噂話。好きなお茶菓子の話に、学校での出来事。話すことは尽きず、次々と溢れてくる話題の泉。
あの頃の楽しげな思い出を頭から引っ張り出しては、同じように彼女はパジャマを引っ張り出す。
「ええっと、パジャマパジャマ……うむ、やはりこの水玉模様にナイトキャップ! これがあたしの正装だ! これ着ていこう!」
奈緒は手にした水玉模様のオーソドックスなパジャマを手にはしゃぐ。ナイトキャップをするなんてどれくらい振りだろう。
あまりにもコテコテな寝姿にテンションが上がってしまう。ついつい声を大きくしてしまったものだから、オウガである『四つ葉の使者』たちと視線がかち合ってしまう。
「……みんな! パジャマパーティといえば? そう、枕投げだね! 枕投げと言えば? そう、チーム戦だね!」
奈緒の有無を言わさないマシンガントーク。
あちらは多勢。こちらは一人。状況としては非常にまずい展開である。だが、奈緒は持ち前のテンションの高さで乗り切る。
彼女の言葉は、パジャマパーティを楽しむ者たちにとって魅力的な提案であったからだ。
枕投げ。
それは日常では決して味わえない非日常。軟らかい枕を投げあって、雪合戦のようなハレの日にしか行えない楽しい行事。
それを聞いてはオウガも猟兵も関係ない。『四つ葉の使者』たちも攻撃することを忘れて枕を手に取る。
「フフフ! オウガチームと猟兵チーム、勝つのはどっちだ! 刮目せよ!」
って、猟兵チームはあたししかないんだけど! とノリに乗ったまま、奈緒はまくらを投げつける。
そうなってはもう戦いなど関係がない。だって、この国は『おやすみなさいの国』。パジャマパーティを楽しまぬものには睡魔が襲いかかるのだ。
奈緒は枕を拾っては投げ、拾っては投げを繰り返す。多勢に無勢であるが、敵味方、オウガと猟兵であることを一瞬忘れて枕投げに興じる。
楽しい! という感情が高ぶっていく。
くるりと、手の内で回る使い込んだハーモニカ。彼女がいつも使う有名メーカーの定番のモデル。定番と言えど、侮るなかれ。定番であるということは、それだけ安定した音が出せるヒットメーカーということだ。
「練習の成果、キミに魅せてあげよう!」
ハーモニカを演奏する奈緒。極限まで高まったテンションは、かつて見た光(スモーク・スタック・ライトニング)となって、衝撃波と音圧となって放たれる。
彼女のテンションが上がれば上がるほどに威力が増すユーベルコードは、今まさに最高潮であった。
演奏する曲目もしっちゃかめっちゃかである。運動会で流れる愉快で軽快なリズムであったり、走り出したくなるような曲調の曲が流れては、次々と衝撃波となって『四つ葉の使者』たちをなぎ倒し、霧散させていく。
骸の海へと還っていく、彼女たちを尻目に奈緒は額に汗かき、しずくを飛ばしながら演奏に熱中する。
「いいね! いいね! 夜中に思いっきり演奏する楽器ってなんでこんなにテンションあがるんだろうね! うなぎのぼりのこいのぼりって感じでとめどないね!」
奈緒の魂を揺さぶるテンションは、次々と『四つ葉の使者』たちを骸の海へと還す。彼女が一曲演奏し終わる頃には、すでに『四つ葉の使者』たちの姿はどこにもなかった。
センキュウ! と奈緒の声がぽつねんと響く『おやすみなさいの国』。テンションが上がりすぎて、周囲が見えていなかったのだろう。
でも、結果オーライである。
「……ま、いっか! あー! 楽しかった! 真夜中の演奏会!」
これをパジャマパーティと呼んでいいかは、疑問に思うかも知れない。
けれど、これでいいのだ。
他の誰のことも気にせずに、音楽を楽しむ夜があったっていい。自由とはそういうものであるし、その自由を楽しむものにこそ、睡魔は寄り付くこともできないのだから―――。
大成功
🔵🔵🔵
夕月・那由多
パジャマパーティー…とりあえず人里に紛れる際の姿に【化術】で化けてイメージを掴むのじゃ
これでよし…と(以降は猫かぶりな喋り方
●
UCで状態異常力を上げておいて、会話の流れから手作りお菓子…つまり『ヨモツヘグイへの誘い』を食べさせて【催眠術】にかけましょう
話題は…季節ネタで日焼け止めとか?
日焼け止め、なんかいろいろあって毎年いいの無いかなーって思うんですけどぉ、結局親が使ってたのそのまま使っちゃうんですよねー
なにかいいのあります?
FPSとか高いときの肌の負担とか、なんか種類とかあったりしてぇ
チタン?の粉が良いんでしたっけ?
などと話しながらすっと手作りお菓子を出す
眠ったら武器でグサァ
パジャマパーティー。なんて楽しげな雰囲気の言葉なのだろう。現し世の催事は常に複雑怪奇でありながら絢爛豪華に思えたことだろう。
パーティーと言葉がつけば、とたんに何もかもが楽しげな雰囲気になる。それは猟兵であっても、オウガであっても変わりのないことだろう。
「パジャマパーティー……とりあえず、人里に紛れる際の姿に化術で化けてイメージを掴むのじゃ」
夕月・那由多(誰ソ彼の夕闇・f21742)は妖狐の見た目をした神である。ピンと立った狐耳に複数の尻尾。昼と夜の境界と変化の象徴である神なのだ。
そんな彼女が耳にしたヒトの子らの営み、パジャマパーティー。
現し世に疎い彼女であっても、イメージというのは大切なものだ。まずは形から入るあたり、念入りに準備を怠らないタイプなのだ。
ドロンと、煙る。
一瞬の後に現れるのは、清楚な見た目の女学生めいた姿。猫をかぶる際によく化ける姿だ。
さらにどろん、と着ていた衣装がパジャマに変わる。
「これでよし……と」
猫をかぶった神様は、すぐさま飛んできた魔法の矢を飛び退って躱す。
この不思議の国『おやすみなさいの国』に足を踏み入れてから、すぐさま襲ってくるとはオウガも風情がない。
この国ではパジャマパーティーをしていないと猛烈なる睡魔に襲われる。それ故に、この国にある者は皆、パジャマパーティに興じながら戦わなければならないという枷を負っている。
「もう、いきなり射掛けてくるなんて。そうですね、少しおしゃべりしましょう。せっかくのパジャマパーティーなんですから」
神気ノ開放(弱)(シンキノカイホウジャク)によって神としての力の発露に寄って、彼女の状態異常力が上がっていく。
「猟兵とおしゃべり? パジャマパーティーを楽しむためには必要不可欠はおしゃべりだけれど、何をおしゃべりするというの?」
もうすでに那由多の言葉による誘導が聞き始めている。
ユーベルコードの力も手伝ってはいるのだろうが、これもまた神としての威厳があればこそであろう。
次々と集まってくるパジャマ姿のオウガ、『四つ葉の使者』たち。何をおしゃべりするのだろうと那由多の次の言葉を待つ姿はある意味信者たちのそれに似ていた。
「そうですね。季節ネタなんですけど、日焼け止めの話題なんてどうでしょう? なんかいろいろあって毎年いいの無いかなーって思うんですけどぉ、結局親が使ってたの、そのまま使っちゃうんですよねー」
あるある。
そんなふうに頷きを返す『四つ葉の使者』たち。いや、本当にわかっているのだろうかと那由多は内心思うのだが、その場の雰囲気というか、パジャマパーティを楽しむために己自身をも欺いている感のある『四つ葉の使者』たちを見て、流れに載せてしまおうと言葉を紡いでいく。
一方的に喋るだけでは、会話とは言えないだろう。那由多が喋り続ければ、それはもう説法である。
「みなさん、なにかいいのあります?」
日焼け止めのことを聞いても、オウガたる彼女たちがわかるわけない。とか、そんな事をもっていたら、次々に手を上げては喋り始める『四つ葉の使者』たち。
人肉をぺたっと貼り付けるといいとか、生き血を浴びると最初は生暖かいけど、冷えるといいとか、物騒なことを言いつつ会話が繋がっていく。
いや、絶対なんにもわかってないが、この女子会めいたパジャマパーティーと那由多の言葉の導きに載せられて、会話が続いているのだ。
「へーFPSとか高いときの肌の負担とか、なんか種類があったりしてぇ……チタン? の粉がいいんでしたっけ? あ、これどうぞどうぞ、つまんじゃってください」
そんなふうに物騒ながら会話が続く。
そこへ那由多の手作りお菓子を振る舞う。食べてしまえば、催眠術に掛かってしまう恐るべき手料理。ヨモツヘグイへの誘い。それを会話の流れで何の疑いもなしにパクパク食べていく『四つ葉の使者』たち。
次々とパタパタ倒れ込むようにして『四つ葉の使者』たちが眠りこけてしまう。
「おしゃべりに疲れてしまったんですねぇ……このままおやすみなさいしてしまいましょう」
にっこり猫かぶりの笑顔を張り付かせたまま、永久の眠りへと『四つ葉の使者』たちを誘う那由多。
もう二度と起きることのない、骸の海へ彼女たちを送り、ふわぁ、と可愛らしくあくびをする。
パジャマパーティはおしまい。そうなれば、眠気も襲ってくるというもの。
早くこの『おやすみなさいの国』から出なければ、那由多もまた眠りに堕ちてしまう。
だから、霧散していく『四つ葉の使者』に向けて化術を解いた那由多は言うのだ。
「おやすみなさい、なのじゃ」
大成功
🔵🔵🔵
パルピ・ペルポル
パジャマパーティーね。やったことはないけれど。
野営と違って気楽にやっていいものよね。
とりあえず正装(パジャマ)に着替えて、と。
羊のちりばめられた柄のパジャマってよく眠れそうな気がしないかしら。
あとはナイトキャップにふかふかクッションも用意してと。
ごろごろしてるの気持ちいいわねぇ…。
パーティー気分を盛り上げるため、この間徳用折り紙セットで折った動物たちを取り出して並べましょう。
猫とか犬とかペンギンとかペガサスやドラゴンも出して、と。
じゃ皆、敵の相手はよろしくねーと折り紙動物たちを敵にけしかけるわ。
自らの周囲には念動力で雨紡ぎの風糸を張り巡らせて、敵が来たときの盾として使用するわ。
ふわりと宙に舞う小さな体。
多種多様な生命が猟兵となる中でフェアリーほど体の小さな猟兵は、そう存在しないだろう。
パルピ・ペルポル(見た目詐欺が否定できない・f06499)の可憐な身体が、不思議の国『おやすみなさいの国』の宙に舞う。
「パジャマパーティーね。やったことないけれど。野営と違って気楽にやっていいものよね」
彼女にとって野営は常なるものであったかもしれない。
そこから考えれば、パジャマパーティーというものは縁遠いものであったろうし、何よりパジャマパーティを楽しむのならば、まずは形から入るのだ。
「とりあえず、正装に着替えて……と」
パルピはいそいそと羊柄がちりばめられたパジャマを取り出して着替えていく。ひつじ柄なのは、なんだかとっても良く眠れそうな気がするからだ。
後はナイトキャップを被れば準備万端である。
「おっと、忘れてはいけないふかふかクッションも用意して」
もふもふしたものが大好きな、もふりすととしては、ふかふかクッションは忘れてはいけない大事なものだ。
ごろんと転がっってしまえば、迷宮災厄戦が始まってからの戦いの疲れも解けていくような気がした。
それだけ迷宮災厄戦はオブリビオン・フォーミュラであるオウガ・オリジンをめぐる激しい戦いなのだ。
「ごろごろしてるの気持ちいいわねぇ……」
パーティ気分を盛り上げるために以前、徳用折り紙セットで折った折り紙の動物たちを取り出して並べる。
猫や犬、ペンギンや果てはペガサスにドラゴンまで多種多様な折り紙の生き物たちを全て彼女自身が折り紙で作ったのだ。
もしも、ここに他の女子たちもいたのならば―――。
「わぁすごいのですね! 手先が器用なのです。その指を食べれば、もしかして私たちでも上手に折れるようになるかしら? そんな素敵なことってあるのかしら?」
そんなふうに言葉を紡いだのかも知れないと思うほどに、女の子らしい声が頭上より響く。
それはパルピの念動力で張り巡らせた雨紡ぎの風糸に引っかかったオウガ『四つ葉の使者』たちの声であった。
「あら、もう引っかかってしまったの? せっかちさんね」
パルピは即座にユーベルコード、有為なる写し(ドウグハツコウテナンボ)によって複製された折り紙の動物たちに命令を下す。
「じゃ、みんな。敵の相手はよろしくねー」
一斉に動き出す多数の折り紙動物たち。
それぞれの動物敵特性に見合った動きや、攻撃方法で風糸に絡まって身動きの取れない『四つ葉の使者』たちを次々と攻撃し、霧散させていく。
そんな七面六臂の大活躍である折り紙動物たちとは打って変わって、惰眠を貪るようにふかふかクッションの上でくつろぐのがパルピである。
パジャマパーティを楽しむ。
それがこの『おやすみなさいの国』において、襲いくる睡魔に抗う術である。
けれど、パルピはどちらかというと惰眠をむさぼる構えだ。
それもまたパジャマパーティの一つの形であるのかも知れない。戦いは折り紙動物たちに任せて、自分はふかふかクッションを愛でるのだ。
そんな彼女の戦いぶりを見た他者がいたのならば、それでいいのかと思うかも知れない。
いいのだ。パルピはパジャマパーティを楽しむ。折り紙動物たちは主であるパルピを護るために戦う。
それはまさに。
「道具は使い方次第よね」
そういってパルピはつかの間のパジャマパーティならぬ、もふもふふかふかクッションの上でゴロゴロする休息を楽しむのだった―――!
大成功
🔵🔵🔵
乱獅子・梓
【綾(f02235)と】
※黒のジャージなパジャマ姿
どうも女子会のイメージが強くて
パジャマパーティとは何をするべきなのか
詳しいことは俺には分からない
だが、ひとつ、前からやってみたかったことがある
そう、枕投げだ!(枕抱え
先に来ていた猟兵と
ネタ被りしてしまった気がするが気にしたら負けだ
さぁ綾!男と男の勝負だ!
枕が武器、シーツが盾
飛んできた枕をシーツでガードすればセーフ
枕の直撃を受けてしまえば負けというルール
クッ、相変わらずちょこまか動くのは上手いな
だが俺の渾身の一撃で盾も貫通するくらいの…
ってグハッ!(直撃
勝負の最中オウガにもどさくさ紛れに枕ぶつける
パジャマパーティの延長で倒されるなら本望だろう?
灰神楽・綾
【梓(f25851)と】
※小豆色のジャージなパジャマ姿
……え、枕投げ?
俺はお菓子食べながら寛ぐ気満々だったのに…
ゆるふわな国に似つかわしくないほどに
闘志燃やしちゃってるよこの人
もしかしてジャージなのもこの為…?
えーって気持ちはあるけど
やる気満々の梓をほっとくのも可哀想だし
仕方ないから相手してあげようか(ウエメセ
まぁ、以前の釣り勝負の時みたいに
今回も勝つのは俺だろうけどね?
なんて不敵に挑発してみる
梓の一撃は力強いけど動きが単調だね
するりと避けつつスピード重視で枕を連続投げ
など無駄に本格的なタイマン枕投げを繰り広げる
なおUCで攻撃力増した枕をオウガにもぶつける
流れ弾が当たっただけだよ、仕方ないよね
パジャマパーティ。それは十代のうら若き乙女たちの社交の場でもある。
噂話はもちろんのこと、大人に隠れて友人たちと、やってはならないこと……つまりは夜ふかしすることを楽しむのだ。
夜に食べてはならない茶菓子を、秘密の話を暴露することを、大いに楽しむからこそ日々のストレスやフラストレーションから開放されて活き活きとした日常に戻っていくのだ。
それ故に男性には馴染みのないものであったことだろう。
近いところでUDCアースの男子学生が修学旅行で同じ部屋になった者同士でわいわい話をすると言ったものがあるかもしれない
「どうも女子会のイメージが強くて、パジャマパーティとは何をするべきなのか。詳しいことは俺にはわからない」
乱獅子・梓(白き焔は誰が為に・f25851)はきっぱりとそう宣言した。
わからないものはわからない。わかったふりをするのも馬鹿らしいと、堂々と宣言したのだ。
男らしいのかそうでないのか、まるでわからないな、と同行していた灰神楽・綾(廃戦場の揚羽・f02235)は首を傾げていた。
彼等二人は今、アリスラビリンスの不思議の国『おやすみなさいの国』へと足を踏み入れている。
ここに足を踏み入れた者は例外なく激しい睡魔に襲われる。それはもはや問答無用であり、抗うにはパジャマパーティを楽しまなければならない。
そういうわけで、梓は黒のジャージを着込み、綾は小豆色のジャージを着込んだ姿で『おやすみなさいの国』における最大のルール、『パジャマパーティを楽しむ』ことに挑んでいるのだ!
梓は静かに黒のジャージ姿のまま腕組みしたまま言う。
「だが、ひとつ、前からやってみたかったことがある―――そう、枕投げだ!」
バーン! と背後に背景色が変わりそうなほどに自信満々に梓が言うものであるから、綾は目をパチクリしてしまう。
「……え、枕投げ? 俺はお菓子食べながらくつろぐ気満々だったのに……」
えぇー……という顔をしたが、梓はもうやる気満々である。
ゆるふわな国に置いて、おおよそ最も似つかわしいほどに闘志がメラメラと燃えている梓を見て、用意されたパジャマがジャージだったことに合点が行く。
「もしかしなくても、このためにジャージ……?」
「そのとおりだ。さぁ綾! 男と男の勝負だ!」
どっせい! と梓が枕を投げつける。えぇー……という気持ちがあれど、あんなにやる気満々な梓を放っておくのもまた可愛そうであると謎の上から目線で綾は、仕方ないから相手をしてあげようとシーツで投げつけられた枕をガードする。
いつぞやの釣り勝負のときみたいに今回も勝つのは自身であろうと絶対の自身を持って綾は、鼻を鳴らして梓に向き合う。
「今回も勝つのは俺だろうけどね?」
不敵な挑発に簡単に乗ってしまうのが梓という男だ。普段であったりオブリビオンが相手であればそうでもないのに、綾が絡むと途端に子供っぽくなってしまうのだ。
「クッ、相変わらずちょこまか動くのは上手いな……だが、俺の渾身の一撃で盾も貫通するくらいの……ってグハッ!」
梓の顔面に唐突にヒットする枕。
あ、という顔をしたのは綾であったが、あんまりにも動きが単調であったために当てるのが簡単だったのだ。
「このっ! やったな!」
梓が反撃するが、するすると避けつつスピードをまして行く綾の動き。スピード重視で枕を連続で投げていく姿は、まさに移動式機関銃のようであった。
時折、無駄に力の入った枕が大ぶりで放たれるも、梓は訝しみながらも避けていく。
「梓の一撃は力強いけど、動きが単調だね。避けるのは簡単だよ」
そんな綾の挑発を受けながらも梓はまくらを放つ。
簡単に躱されてしまって、向きになる梓を尻目に次々とユーベルコード、ディメンションブレイカーで強化された枕を、どさくさに紛れて自分たちを襲おうとしていたオウガ『四つ葉の使者』たちを打ち貫いていく。
くす、とその様子を綾は微笑みながら見ていた。
流れ弾が当たっただけだから、仕方ないよね、と微笑む様子は、梓にとっては挑発の微笑み以外に見えず、余計に力の籠もった枕の一撃は当然のように綾に当たらずに、彼の背後の『四つ葉の使者』の顔面にクリーンヒットする。
「ぐっ……また、俺の負け、か……!」
がっくりと項垂れる黒ジャージ軍ならぬ梓。
対する綾は飄々とした態度で枕を指の上でくるりと回し続けている。気がつけば、枕投げ大会の周囲でバッタバタ倒れ、霧散していく『四つ葉の使者』たち。
そう、枕の流れ弾で次々とオウガが周囲で全滅しているのだ。
「仕方ないよね。俺たちのパジャマパーティ邪魔したんだし」
綾は仕方ない仕方ないと頷く。勝負に熱中しながらも、梓もまた同じようにオウガをどさくさに紛れて枕を叩きつけていたのだ。
後から勝って、綾にドヤ顔しようとしていただけに、彼もまた同じようにオウガを屠っていたことに悔しさをにじませながら―――。
「パジャマパーティの延長で倒されるなら本望だろう!?」
そんなふうに梓の悔し紛れな声が響くのだった―――。
大成功
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箒星・仄々
パジャマパーティ
折角ですから楽しみたいです♪
綿100%でふわふわの作務衣をパジャマに
和でいきましょう
大きなベッドでごろごろごろ~
体をまっすぐにのばしたまま転がって
端から端までどのくらいの時間で行けるかとか
何回回れるかとかやってみませんか?
思い切りはしゃいだらトークタイム、
といきたいところですが
人喰いさんと語り合う言葉は持ちません
…愛らしいお姿ですのにお労しいです
替りにBGMを奏でます
弦を爪弾き魔力を練り上げ
属性魔力を宿した音色で攻撃
翠の音色は風の魔力
緋の音色には炎の魔力
蒼の音色は水の魔力
色づく三魔力の旋律で海へ送ります
どうぞ海で安らかにお眠り下さいね
事後は
嘗ての犠牲者アリスへも鎮魂曲を
不思議の国『おやすみなさいの国』は、パジャマパーティーを楽しむ者だけが起きていられる不思議な国。
その地に足を踏み入れた者たちは、強烈なる睡魔に襲われ例外なく眠りに落ちてしまう。だが、何事にも例外はあるのだ。
そう、パジャマパーティーを楽しむものだけが起きていられるという大前提。そこにあって、猟兵である箒星・仄々(ケットシーのシンフォニア・f07689)が身に纏うのは綿100%のふわふわの作務衣である。
言ってしまえば和テイストを取り入れたパジャマであると言えよう。
「折角ですから楽しみたいです♪」
今は迷宮災厄戦の最中である。オウガ・オリジンと猟書家。二つの勢力を相手取って戦う猟兵の中には疲労が溜まりに溜まっている者がいるだろう。
そんな時に『おやすみなさいの国』などという、とても魅力的な不思議の国があるのだとすれば、自然と吸い寄せられてしまうのもまた無理なからぬことであった。
例え、それがオウガである『四つ葉の使者』たちと興じるパジャマパーティーであってもだ。
仄々は彼を襲おうした『四つ葉の使者』たちに語りかける。
「大きなベッドでごろごろごろ~身体を真っ直ぐにのばしたまま転がって端から端までどのくらいの時間で行けるかとか何回回れるかとかやってみませんか?」
その提案は通常時であれば受け入れられることななかったことだろう。
だが、今はパジャマパーティーである。猟兵とオウガ。その垣根を越える時なのかもしれない。
何より楽しそう! と『四つ葉の使者』たちが乗ってきたのだから、パジャマパーティーの力は凄まじい。
「あはは! たくさん回ってロールケーキみたいになってしまうわ!」
「なんのなんの。まだまだ回れますよ~!」
一瞬、オウガと猟兵であるということを忘れて、『四つ葉の使者』たちと仄々は仲睦まじくはしゃぎ倒す。
ひとしきり大きなベッドの上でゴロゴロした後、次は何をしましょうかと笑い合う。
「このままトークタイムといきたいとところですが、人食いさんと語り合う言葉は持ちません……愛らしいお姿ですのにお労しいです」
カッツェンリート。懐中時計のボタンを押す仄々。たったそれだけで懐中時計は形を変えて、竪琴へと姿を変える。
それこそが蒸気機関式竪琴。拡声機能付故に、その竪琴を爪弾き練り上げられる魔力は増幅されていく。
「翠の音色は風の魔力。緋の音色には炎の魔力。蒼の音色には水の魔力……」
奏でられていく音色が次々と炎、水、風といった属性の矢へと練り上げられていく。色づく3つの魔力の旋律がユーベルコード、トリニティ・ブラストとなってオウガである『四つ葉の使者』たちへと放たれる。
次々とその体を打ち抜き、霧散して消えていく『四つ葉の使者』たち。
一時の楽しい時間を互いに共有した間柄なれど、互いに猟兵とオブリビオン。どこまでいっても互いに滅ぼすしかない存在なのだ。
故に仄々はどうか安らかにと竪琴を爪弾く。
「どうぞ海で安らかにお眠り下さいね……そして」
曲調が変わる。
それは、かつての犠牲者でもあろうアリスたちへと送る鎮魂曲。それが死せるアリスたちの心を癒やしてくれることを信じて、竪琴の音色が『おやすみなさいの国』に響き渡るのだった―――。
大成功
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佐伯・晶
人肉料理とパジャマパーティーの組み合わせが
僕にはどうしても繋げられないんだけど
オウガ様方がそういう存在というだけですの
価値観の違いですわ
僕は水色系の男物のパジャマを
私は黒系の可愛いのを着て訪れますの
人肉を食べるならどんな料理が良いか、ですの?
お肉の調理方法は色々ありますわね
噛みつこうとして寝てしまった
怪物さんを撫でつつ考えますの
そういえばこの前食べたミートパイ
美味しかったですの
それが良いですの
良くそんな話題についてけるな
別に食べるつもりはないですの
でも他の命を頂く事に変わりはないですの
楽しくお喋りできましたし倒すのも忍びないですの
オウガ様方の時を停めて永遠を差し上げますわ
私はそういう存在ですの
「さあ、パジャマパーティーをはじめましょう。まずはオードブルに猟兵の鏖。そして、お次は猟兵の肉叩き。最後にミンチにしてぐちゃぐちゃにしてしまえば、食べやすくなるわね」
歌うようにオウガ『四つ葉の使者』たちは笑い合う。
パジャマパーティーとは、そういうものではないのだけれど、それでも彼女たちは彼女たちなりの理屈で持って、いびつなるパジャマパーティーを興じていた。
人肉喰らうオウガにとって、猟兵は滅ぼすべき相手。
同時に人肉であるというのなら、アリスでなくてもたっぷり食べたいと思うのがオウガというオブリビオンだ。
「人肉料理とパジャマパーティーの組み合わせが僕にはどうしても繋げられないんだけど……」
佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)は嘆息する。
以前もそうだったが、どうしたってオウガは人肉を欲する。料理するという感覚も相容れないものであるがゆえに、互いは滅ぼし合う間柄なのだろう。
不思議の国『おやすみなさいの国』に足を踏み入れた者は、必ず強烈なる睡魔に襲われる。だが、例外としてパジャマパーティーを楽しむ者だけは、睡魔に抗うことができるのだ。
それ故に晶は水色系の男物のパジャマを着ている。どうして男物かというと、元男性であるからだ。未だに女性物の、というのを選ぶのに忌避感があるのだろう。何よりゆったりしているから、眠る時はコチラのほうがいいのかも知れない。
「オウガ様方がそういう存在と言うだけですの。価値観の違いですわ」
そういう晶の隣にいるのは、ユーベルコード、邪神の恩返し(ガッデス・リペイメント)によって現れた自身と融合した邪神の分霊である。
ちゃっかり黒系の可愛いパジャマを着込んでいるのが、なんとも邪神らしい装いと言えばいいのだろうか。
そんな邪神はオウガである『四つ葉の使者』たちが放った白詰草で出来た犬型の怪物が襲いかかるのを軽くいなしながら、言葉を紡ぐ。
「猟兵さんは、人肉料理はお嫌いなのかしら? だってあんなにやわらかくって、滴る血はジューシーで、ごくごく飲み込んでしまえるほどに美味しいものなのに。貴方はどんな料理がお好きなのかしら?」
オウガである『四つ葉の使者』とは相容れぬ価値観なれど、それがユーベルコードの効果であるのであれば答えなければならない。
邪神の分霊は事も無げに応える。襲いかかる白詰草の犬型の怪物を己の権能でもって眠らせ、その頭を撫でつつ応える。
「お肉の調理方法は色々ありますわね……そういえば、この前食べたミートパイ。美味しかったですの。それが良いですの」
にっこり微笑んで言う邪神の分霊。
その隣で晶がげんなりした顔をする。
「よくそんな話題についていけるな……」
晶にとって馴染みのない価値観であっても、邪神の分霊にとってはそういうものでもないらしい。
乙女のトークがパジャマパーティーを楽しむことの一環であるのだとすれば、邪神の分霊は正しく楽しんでいただけであるのだろう。
晶にはどうしても受け入れられない価値観であるがゆえに、終始しかめっ面をしてしまう。
「別に食べるつもりはないですの。でも、他の生命をいただくことに代わりはないですの」
それは人間に置いても同じことだろう。ただ、オウガが人肉を。人が牛や豚の肉を食べるのと同じように、オウガの立場、価値観にたってみれば、当然のことであるのだから。
「ふぅ、楽しくおしゃべりできましたし、倒すのも忍びないのですの。オウガ様方の時を停めて、永遠を差し上げますわ」
邪神の分霊が指先を伸ばす。
それはゆっくりとした所作であったが、美しいものであった。
だが、次の瞬間『四つ葉の使者』たちは何も言葉を発することができなくなってしまう。それは邪神の分霊の権能。
停滞。固定。
その力の発露が生み出すのは永遠。石像とかした『四つ葉の使者』たち。もはや、それは生命と呼ぶには値しないものであった。
オウガと猟兵が違う存在であるように、邪神の分霊と言えど、別次元の存在であることは変わりない。
それを隣にいる晶はひしひしと感じていた。怖気が走るような感覚。
絶対に違う存在が隣にいて、己の中にいるという事実が晶の心に如何なる感情を去来させたのかはわからない。
けれど、たった一つだけ確かなことがある。
それは。
「私はそういう存在ですの」
たった一つの答え。
それだけが、夜の帳降りた『おやすみなさいの国』に異質なる言葉として、残っていくのだった―――。
大成功
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