迷宮災厄戦⑫〜クレセントゴールドのかひご
●グリモアベース
「迷宮災厄戦の攻略お疲れ様でございます。次なる攻略地点は卵を拾ってぴかぴかに輝ける場所でございます!」
グリモアベースに集まった猟兵にぺこりとお辞儀をした金綠・シャトワヤンスの瞳が輝いていた。背後の風景が丁寧に狩り揃えられた芝生の緑が眩しい庭へと変わる。
「ザ・ゴールデンエッグスワールド。黄金ガチョウが一斉に黄金のタマゴを産む世界にてございます」
『ぐわっ』
1羽の光り輝く黄金ガチョウ(立体画像)が庭を歩く。周囲を注意深く見回し──ごろんと出てくる10㎝程度の、金ぴかのタマゴ。
「なんとこの黄金の卵、持っているとその数に応じて皆様をパワーアップさせる不思議なものなのでございます!」
シャトワヤンスが卵を手に取ると、体がうっすら黄金色に光る。
「なぜだか卵を持つとこうして自分の体が光ってしまうのです。きっと黄金の卵パワーでございますね!」
キラーンと再度目を輝かせ話を続ける。
次に浮かび上がるのは光る剣を浮かべた女性らしき存在。
「わたくしが予知しましたのは黄金の卵を同じく狙いパワーアップをはかり皆様を迎撃しようとするオウガ『ぷんすかさま』の集団でございます」
なぜそこまで怒るのか、理由は分からないが……。
「オウガ達は怒りながら黄金ガチョウを追い立て、卵を奪っては、」
ぱくん!オウガが黄金ガチョウが涙を流す中奪った黄金タマゴを丸呑みした。
「……卵は中まで黄金なので、飲み込んで貯めるのはお薦めできないのでございます。集めて運ぶのがベストかと」
黄金の卵の強度はニワトリの卵より多少硬めだが卵は卵。
オウガより数多く拾う方法。
どうやって運び、オウガに対峙するか。工夫が必要になるだろう。
「これから皆様を転送いたしますのはザ・ゴールデンエッグスワールドが一つ『飽きられたクロケー会場』でございます」
芝生がどこまでも広がる庭を切り取ったような世界。
背の低い薔薇の木には赤い薔薇が咲き誇り庭師もいないのに丁寧に揃えられた茂みがあちらこちらにある。
「まずは黄金の卵の確保でございます。オウガが怒り任せにガチョウを追いかけているので、彼らは怯えているでしょう」
一斉に卵を産み始める黄金ガチョウの安全を確保できれば卵を手にしやすいのでは社会は自分の考えを言ってみた。
「それでは皆々様、卵を集めてきらきらぴかぴかでオウガとファイト! でございます!」
猟兵が戦場へと転送され、戦闘開始と同時に無数の黄金ガチョウが卵を産み始める。
●ザ・ゴールデンエッグスワールド・飽きられたクロケー会場
「光ったわ」「金色ね」「強くなったわ」
ぶんぶんとぷんすかさまの周囲に浮かぶ剣が音を立て、庭に植えられた木を刻んでいきます。
ごくんごくんごくん。オウガが一斉に卵を飲み込みます。
ぴかぴかとオウガが光りました。
足首を掴まれさかさまにぶらんぶらんとゆすられたガチョウ達はただ、しくしくと涙を流します。
『……ぐわっ……』
茂みから恐る恐る覗き込む黄金のガチョウ。同士ガチョウの悲しみが伝わり涙します。
とことこ、とぼとぼ。
自分達が安心して卵を産めそうな木の下や茂みを探しに歩き始めるガチョウもいました。
「殺せる」「怒り殺せる」「猟兵は殺す」
「「うめ。産め。もっと早く。もっと沢山」」
ガチョウに卵をもっと産ませよう。
更にぶんぶんとオウガがガチョウを振っていました。
硅孔雀
迷宮災厄戦です。
硅孔雀です。
グリムとイソップで結構扱いの違うガチョウのお話。
●構成
集団戦:ぷんすかさま×無数。
このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「迷宮災厄戦」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
●プレイングボーナス
黄金の卵をオウガに取らせず、自分達が取る。
黄金ガチョウが産む黄金の卵の所持に比例してパワーアップします。
その証拠?として自身が黄金に光り輝きます。
黄金の卵は10㎝程度の楕円形をし、ニワトリの卵より少し殻が固いです。
が、卵は卵。あんまり乱暴にすると割れてしまうかもしれません。
●戦場情報
ザ・ゴールデンエッグスワールド・飽きられたクロケー会場。
綺麗なゴルフ場がどこまでも続くような庭の世界。薔薇の木と茂みが目立っています。
オウガが追いかけまわしているので黄金ガチョウ達は安心して卵を生める場所を探してうろうろしています。
●特記事項
黄金の卵のパワーアップ効果はこの国のみで有効です。他の戦場には持ち出せません。
それでは皆様のプレイングお待ちしています。
第1章 集団戦
『ぷんすかさま』
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POW : 燻り狂う
【怒りの感情を他人に向ける】事で【刃物の様に鋭い水晶に覆われた怪物】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
SPD : 刻み刈りヴォーパル
【無数の光り輝く剣から斬撃】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
WIZ : 怒めきずる
【アリスが生きている事への怒り】【アリスが守られている事への怒り】【アリスがまだ自分の餌になってない怒り】で自身を強化する。攻撃力、防御力、状態異常力のどれを重視するか選べる。
イラスト:そらみみ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
宇宙空間対応型・普通乗用車
んー…追いかけ回す感じでもねぇなぁ…
ガチョウ達の行先で罠を仕掛けて待ってた方が、
結果的には沢山捕まえられそうだ。
追い込み役は敵がやってくれることだしな。
なのでオレはガチョウの行先を予測して先回りしつつ、
茂みの裏とかのよさげな場所でドアを開いて、
ガチョウが逃げ込んでくるのを待つことにするぜ!
相手は必死で逃亡中のガチョウだ!
物陰が多くて硬そうで狭苦しい車の中は、魅力的に映ることだろうよ!
匂いとか見た目がアレだって?
そこは【ガジェットショータイム】でカモフラできるのの降臨を祈る!
んで、ガチョウが確保できたらドアを閉めて守りつつ卵ゲット!
後は適当に走り回って轢殺だぁ!完璧な作戦だぜヒャハハー!
「んー……」
戦場に降り立り、戦場を見渡し猟兵は考える。
(追いかけ回す感じでもねぇなぁ……)
ガチョウ達は既に動いていた。
「産め」「産め」
『ぐえーっ!』
オウガの剣から逃げる黄金ガチョウの姿を見ながら、更に考える。
敵の行動は追い込み役として十分に動いている。
ならば、と彼がぶおんという音と共に動き出す。
「相手が必死で逃亡中のガチョウならオレが安全な場所を、作ってやるぜ!」
銀に輝く躯体、否、車体。
スペースシップワールド生まれのイケメン車両宇宙空間対応型・普通乗用車(スペースセダン・f27614)がエンジンを唸らせた。
ガチョウ達は逃げている。安全な場所が見つかるまで。
物陰はどこだろう、茂みがいいか、木の影がいいか……出来ればもっと、暗くて深い穴が。
『ぐわ……ぐわ?』
茂みの裏へと足を踏み入れたガチョウ達は違和感に気が付く。ふかふかとして、頑丈そうな洞窟が目の前に。
少し暖かく振動しているそこは……卵を産むのに安全な場所に違いない!
一斉に洞窟へと乗り込んだガチョウ達の後ろでばたん、という音がする。
「おっと、音で脅かしちまったか? 大丈夫だ、安心してくれ!」
3次元音響式ナノスピーカーから聞こえる力強く、温かい声。
ユーベルコード:ガジェットショータイムで己の輝くボディを変装していたのを解除。
必死で逃亡していたガチョウ達は洞窟内を見回し、安全を確かめる。
「オレの名前は宇宙空間対応型・普通乗用車──長ければセダンとでも呼んでくんな!」
『グワン? ……ぐわー!』『ぐわ!』
鉄の馬が走り出す。速度を上げるが中の振動は最低限。正にイケメン車両のイケテクニック。
「アンタ達は安心して卵を産んでくれ、な!」
『ぐわ!』『ぐわ!』
物陰が多く、シートは柔らかい。頑丈な車体の中はクーラーも効いた最適の環境。
鉄の揺り籠にガチョウを包み込み、セダンの車体が輝く。
「卵ゲット! 完璧な作戦だぜヒャハハー!」
ガチョウ追いかけまわしていたオウガの群れが一斉に一点を向く。
ザ・ゴールデンエッグスワールドに響くのはエンジン音。そして、黄金色を纏うのは──。
「迎撃」「殺す」「刺し殺す」
ブロロロロロロ……!
地面の振動。たちこめる土煙。黄金の煙を纏うその中心へオウガが一斉に剣を突き立てる。
ガキィン! グシャアアアアアン!
「ヒャッハー! その程度の攻撃じゃ洗車にもならねぇんだ、ぜ!!!」
「が、グガア、ギャアアアア!!!」
黄金の車体からセダンの声が響き渡る。
ザ・ゴールデン・スペシャル・カー宇宙空間対応型・普通乗用車の速度に追いつけるもの存在などいない。
エンジンが黄金の馬車を回転させ、そのままの勢いでオウガの群れを轢殺する!
「オラァ! もう一周!」
『ぐあーっ!』
「ん? 当たり前だ、アンタらの仲間は守る! 安心して卵産んでな!」
『『ぐあー!!』』
いつの間にか運転席へと集まっていた黄金ガチョウの応援と共に、オウガが倒されていく。
大成功
🔵🔵🔵
パルピ・ペルポル
ストレス与えると逆に卵産まなくなるんじゃないかしら。
それはさておき。
金の卵はフェアリーランド(何かすごくもふもふした空間)に保管するとして。
いっそ黄金ガチョウもフェアリーランドに避難してもらえばいいんじゃない?
落ち着いたら出てきてもらって。あ、卵は中に置いておいてね。
卵とガチョウを回収したらオウガ退治ね。
念動力で雨紡ぎの風糸を自らの周囲に張り巡らせておいて、敵の行動を阻害兼盾として使用するわ。
薔薇の茂みも利用して敵を誘いながら糸で絡めて切り裂いたり、穢れを知らぬ薔薇の蕾で動きを封じて攻撃するわ。
この金の卵、効果はなくなるけど卵自体は持ち帰ることは出来るのよね?
なら割れててもお持ち帰り確定ね。
「ストレス与えると逆に卵産まなくなるんじゃないかしら」
呆れた様子でパルピ・ペルポル(見た目詐欺が否定できない・f06499)が呟く。
「それはさておき。金の卵を回収させて貰うわね」
逃げ惑うガチョウ一団を見つけパルピは飛ぶ。
木陰が近いその場所には既に金の卵が転がっている。そっとパルピが近づき持っていた小さな壺を近づける。ぱっと音もなく金の卵が消えた。
『ぐえっ!?』
「あはは、大丈夫よ。すごくもふもふした空間に保管してあるわ」
ユーベルコード:フェアリーランドを展開したパルピはガチョウ達ににっこりとほほ笑む。
(あ、いっその黄金ガチョウもフェアリーランドにもらえばいいんじゃない?)
不安そうに自分を見るガチョウ達を前にパルピの緑の瞳が優しく揺れる。
「いつでも出られるから安心していいわよ」
壺が触れたガチョウがぽふんと音を立て消えた。そして再び現れるガチョウ。
『ぐわぐわっ♪』
「そうね、ふわふわしてるから大丈夫だったでしょ?」
機嫌のいい仲間の様子に、パルピの元へと黄金ガチョウが集まり出す。
どうやら自分が味方だと伝えられたようだ。
「よし、卵とガチョウは回収できそうだしオウガを退治して落ち着いたら出てきても大丈夫。あ、卵は中に置いておいてね」
ガチョウ達を安心させるように撫でながらパルピは壺にガチョウをおさめていく。
壺がぼんやりと金に染まり、抱えていた自分も黄金色のオーラを纏う。
オウガのぷんすかさまは怒っていた。
「オウガ発見! こっちにおいで!」
金色の何かが飛んでいて声が聞こえる。挑発だ。怒り。
「きる、きるきるきる……がっ!」
「掛かったわね!」
金色のフェアリーと化したパルピの周囲には透明な【雨紡ぎの風糸】が自らの念動力で張り巡らされている。
「が、がぎゃっ!!!」
オウガが絡めとられ、剣でパルピを攻撃しようとしたオウガと衝突する。
敵の行動を妨害し時に自らを守る盾として利用するパルピの戦法が的中し、オウガ同士が相打ちしたのだ。
「まだまだ! さあ、こっちにおいで!」
華麗に宙を泳ぐパルピ。黄金の衣を身に纏ったその身はオウガの群れの間を縫うように舞い、敵を誘う。
怒りを爆発させる無数のオウガの剣が振り下ろされるがその切っ先は掠るどころか纏った糸に絡み取られオウガの腕ごと切り裂かれる。
薔薇の茂みの間へとパルピは飛ぶ。パルピの体は自由自在に赤薔薇と白薔薇を咲かせる木々の間を抜け。
「ギャアッ!」
白薔薇の木。その白い薔薇の蕾から伸びた茨がオウガを絡めとる。
「簡単に引っかかったわね。さあ、赤い薔薇を咲かせてもらおうかしら」
パルピのもう一つの武器拷問具【穢れを知らぬ薔薇の蕾】が完全にオウガを封じ込めた。目につくオウガは全て真っ赤な薔薇へと変わっていく。
安全を確認し、ユーベルコードで作った空間からガチョウを出しながらパルピは中を覗き込む。
「この金の卵、効果はなくなるけど卵自体は持ち帰ることは出来るのよね?」
割れていてもお持ち帰りはしたい。
産み主のガチョウ達──迷っていた彼らが声をあげる。
『ぐわ、ぐわわ!』
助けてくれたお礼と言わんばかりに嬉しそうに鳴くガチョウ達は卵を取り返すような事はしない。
「あらありがとう。綺麗だし、大切にするわね」
嬉しそうに金の卵をパルピは丁寧に撫でた。
大成功
🔵🔵🔵
トレーズ・ヘマタイト
※アドリブ自由
安心して生める場所か
刻印の異空間に大量に入れてきた建材を使い降魔錬成
砦の上にゴーレムの上半身を乗せた巨大な降魔を創る
人間は無理だがガチョウなら入れる大きさの入り口、内部には餌や水、寝床なども完備している
●呪詛を使いガチョウ達がこちらに迷い込むようにし
降魔内部で安心して卵を生めることに気付かせる
降魔内部の卵は降魔が所持していると同じであり、自然と降魔は強化されていくだろう
自分は数個の卵を体内に入れて外のガチョウを集めて回る
敵とは無理に戦わずガチョウの保護を優先し降魔の場所に戻る
敵が来れば降魔が●怪力任せに両腕の●2回攻撃で叩き潰し、敵の亡骸は自分が●捕食して、卵を回収する
以上
飽きられたクロケー会場に黒が生じる。
次に生まれる、否、開くのは紅い瞳。ブラックタールのトレーズ・ヘマタイト(骸喰らい・f05071)は戦場を見渡した。
「安心して生める場所か」
ぶるりと身を振るい、【刻印改】へと精神を集中させる。
『積み上げし物を糧として、偽りの器を生み出し、我等が道を阻む災いを、己が力を以て討ち滅ぼせ』
異空間に収めていた物品──大量に入れてきた建材が音を立て刻印から宙へと浮かんでいく。
ユーベルコード:降魔錬成(ゴウマレンセイ)が発動する。
岩が、材木が、藁が集まり、食むように『それ』が手足を伸ばす。『己の体』を組み上げる。
『ォ……ォオ……』
「完成したか」
トレーズの呟きに呼応するのは両腕を伸ばすゴーレムの上半身。
ガチョウ達を保護する為に下半身は強固な。
「さて……あとは」
ずず、とトレーズの周囲の空気が震え、少しづつ冷えていく。
ガチョウ達はぐるぐると迷っている。どこかで大きな音と岩山のような何かが見えた途端、なぜか寒気を感じる。
卵を生まなければ。ガチョウの一羽はふらふらと歩きだす。
そこは、自分たちが入るにはちょうどいい。ゆっくり歩むと、餌と水の入った箱が置かれ。
「そうだ。そのまま入ればいい」
呪詛の力でガチョウを降魔のいる場所に追いやったトレーズが言葉を漏らす。
ここでなら安全に卵を生める。ガチョウ達が次々と入り、砦が淡く金を纏った。
トレーズの予想した通り。
降魔内部の卵は降魔が所持していると同じであり、金の光がだんだん強くなる程に降魔は強化されていく。
自らの体内に数個卵を抱え込み、トレーズは静かに世界を歩く。
(敵とは無理に戦わない。ガチョウの保護が優先だ)
多くのガチョウを集め保護するため、降魔の場所へと帰る道を確保しトレーズは歩みを進めていった。
「殺す」「殺す」「殺す」
怒りをにじませた声、次の刹那に降りかかるのは無数の剣。
「……来たか」
ぐにゃり、とブラックタールの体を歪ませトレーズは身をよじる。
誘い込むように降魔の元へと最短ルートを辿る。愚かなオウガの頭上、空気を切る音。
「ガギャッ!!」
べちゃりと潰れる音。ゴーレムの両腕が何十回、何百回も振り下ろされる。
強化された降魔の攻撃に屠られたオウガの亡骸がずるり、と不自然に動く。
「これが卵の味、か」
亡骸ごと卵の取り込んだので味などは分からない。が、己の体を満たす黄金色の光に思わず冗談を零す。
捕食により更に卵を回収したトレーズの指揮によりオウガがその身を不格好に変えながら吹き飛んだ。
大成功
🔵🔵🔵
レパル・リオン
【カタラ】
怪人(オウガ)がガチョウさんをいじめてる!?許さーん!
あたし達でガチョウさんを見つけて守るわよ!
足の速さや視力には自信アリ!走りながらバッチリ探すわよ!
でりゃ!オーラ防御を応用して、ガチョウや卵をオーラで包むわ!これならいっぱい持ち運べるし、攻撃から守れてオトク!
怪人に卵はあげないわ!
卵を集めてスピードアップした【瞬打】!正確なつかみ攻撃で、卵を盗みとるわ!
ガチョウさん、戦いに巻き込んでごめんね…それとナミルちゃんが、本当にごめんね…
ナミルちゃん、ガチョウさんをさらっちゃダメー!
ナミル・タグイール
【カタラ】
金ぴかにゃ!金ぴか祭りにゃ!
全部ナミルのデスにゃー!
ウキウキ卵を回収。首とかのモフモフにしまっとくにゃ!
みんなの金ぴかも後でちょうだいにゃ!(強欲猫)
にゃー!ナミルまで金ぴかにゃ!最強デスにゃ!
もっと欲しいにゃ!ガチョウも欲しいにゃー!
敵から奪い取ってナミルのものにするデスにゃ。
敵の体も金ぴかで綺麗だけどーガチョウ優先にゃ!
ナミルは優しいからにゃ。【怪力】で無理やり引き剥がすにゃ!
敵の攻撃なんて無視にゃ!金ぴかにゃー!
真正面からゴリ押しで奪い取るデスにゃ!【捨て身】【略奪】
ガチョウは傷つけない、でも強奪にゃ!
…こっそりガチョウ持って帰れないかにゃ?
(怒られたらむすっとしながら従う猫
ルカ・メグロ
【カタラ】
暴走するナミルにガチョウさんを虐めるなよ、と釘を刺しておこうか。
とりあえず、ガチョウさんを何とかしなくちゃな!
まずはガチョウの保護から。
ガチョウを追いかけるオウガを狙って、左腕で殴り飛ばして、【乙女の溜息】で攻撃するぜ。
怒るのももう飽きたろ?親切な俺が、絶望を教えてやるよ。
ガチョウには俺のでっかいフードに隠れてもらおうか。3、4匹なら余裕で入るからな。
俺のフードは今、世界で一番安全な揺り籠だぜ!!
戦いが終わったら、ガチョウさんには乱暴に扱ったことを謝るよ。
あと、うちの団長が暴走したことも……。
こら、そこ!ガチョウさんを持ち帰ろうとしない!!
ナミルは正座でお説教だ!
「金ぴかにゃ! 金ぴか祭りにゃ! 全部ナミルのデスにゃー!」
『ぐわっ!?』
目に飛び込む金色の羽根。もふもふしたその体の下にあるのは金ぴかの卵。
ウキウキしながらナミル・タグイール(呪飾獣・f00003)が卵を拾い上げ首元、己のモフモフポイントに仕舞い込む。
みんなも金ぴかも後でちょうだいにゃ!と声を弾ませるナミルを呆れたように青い瞳を震わせルカ・メグロ(ヴァージャ・コン・ギータ・f22085)がため息をつく。
「ガチョウさんを虐めるなよ」
「いじめてないにゃ! 金ぴかを集めるための交渉デスにゃ!」
大好きな金ぴか財宝に見劣りしない卵を撫で、もふっと仕舞い込み──あっとルカが声を上げる。
「ナミル、その体」
「にゃー! ナミルまで金ぴかにゃ! 最強デスにゃ!」
金の卵が集まる首元から金のオーラが波打ち、ナミルが照らされる。この世界での金の卵の効果にルカも目を見開き卵を拾い上げた。その時だ。
「あっ!」
「どうしたにゃレパル?」
ピンクの尻尾をぴんと立てたレパル・リオン(魔法猟兵イェーガー・レパル・f15574)へと二人が視線を向ける。レパルの赤い瞳は、怒りに燃えあがろうとしていた。
「怪人(オウガ)がガチョウさんをいじめてる!? 許さーん!」
先程からナミルとルカのやり取りから少し離れた距離でガチョウを見ていたレパルの目が捉えたもの。
オウガがの集団が剣を振り回し、地面を必死に走る彼らをさかさまに持ち上げる。
「怪人……オウガだって!?」
ルカが左の拳をぎゅっと握る。猟兵としての本能といわんばかりに左腕に宿ったドラゴンのオウガ「ギータ」が震える。
「怪人に卵はあげないわ! あたし達でガチョウさんを見つけて守るわよ!」
ぐわぐわとガチョウ達が悲鳴を上げている。その声を耳にした時、悪の怪人(オブリビオン)と戦う『魔法猟兵イェーガー・レパル』の体のエンジンは起動する。
少し離れている場所への移動は全速力がいいと咄嗟に判断し、レパルの体が動き出す。
鍛え上げられた肉体、優れた視力を最大限に活用し走りながら探索をすると告げたレパルの後をナミルとルカが追う。
「こらー! ガチョウさんをいじめるなー!」
木々や茂みのない開けた野には無数の卵。ガチョウ達。そしてオウガ。
全く息の荒れていないレパルの通る声にオウガは一斉に振り向いた。ぎらぎらと怒りの感情のみに支配された目を動かすそれをぐいと睨みつけ。
「ナミル! ルカ! ガチョウさん達を守らないと、ね!」
レパルが二人を見やった後素早く構えた。
「もっと欲しいにゃ! ガチョウも欲しいにゃー!」
敵から奪い取って自分の物にするデスにゃ!とナミルの目が輝く。
「ああ! ガチョウが守るぜ!」
ガチョウを追いかけまわすオウガ。その一団を間を裂くようにルカの左腕が大きく振り上げられる。
ドラゴンのオウガ「ギータ」の力をコントロールしながら殴り、ガチョウをオウガから引き離す。
「邪魔するな。殺す」「殺す」
怒りをますます強めたオウガ、自分に向かってくる殺意を軽く躱しながらルカは笑う。
「……!」
オウガの瞳が曇り、空中に浮く勢いで見えない何かに殴り続けられる。
「怒るのももう飽きたろ? 親切な俺が、絶望を教えてやるよ」
ルカのユーベルコード:乙女の溜息(ススピーロ・デ・ギータ)は既に発動していた。拳が命中したオウガに与えられたのは死に至る病。
オウガ自身の体が急速に病に蝕まれ、まるで殴られているかのように自壊している──オウガにとっての絶望が、さらに与えられているのだ。
「猟兵だ」「殺せ」「殺す」
レパルの近くにいたオウガの一団がユーベルコードの気配に注意を彼女から反らし、怒りの攻撃をしようと動き始める。
オウガが抱えていた卵とガチョウが乱暴に空中を舞い、地面へと落下しようとした──その時!
「でりゃ!」
レパルの体から放たれたオーラがガチョウや卵をオーラで包む。ぐわ!と驚いた顔を見せたガチョウだが、レパルのオーラを感じたのかどこか嬉しそうだ。
(これならいっぱい持ち運べるし、攻撃から守れてオトク!)
己のオーラの中に、金色のキラキラしたものが混じる。金の卵の力がレパルを包み込んだ。
「体が軽い……これなら!」
ルカの元へと駆けだしたオウガの群れへ意識を向け、レパルが追走する。あっという間に追いついたレパルはその勢いを利用しユーベルコード:瞬打(チーターヒット)を発動。
「ガチョウさんも卵も守る! あたしが相手よ!」
「グググ、ガァッ!!!!」
正確無比な超高速の打撃が正確無比に人型をとっているオウガの急所を突く。オウガ達の体から飛び出した卵を空中キャッチで盗み取る。
「ガチョウ。俺のフードに隠れな!」
ルカの元へと逃げ出すガチョウをひょいと持ち上げフードの中へと移動させる。
「俺のフードは今、世界で一番安全な揺り籠だぜ!!」
数匹のガチョウが歓喜の声を上げた。
「殺せない?」「殺す」「殺す」
猟兵達の攻撃により瓦解しはじめたオウガ達の群れは、それでも尚怒りの感情をむき出しにしながら金のオーラを纏う。
その手にはガチョウを握ったものもいる。
(敵の体も金ぴかで綺麗だけどーガチョウ優先にゃ!……ナミルは優しいからにゃ!)
ガチョウを傷つけない。そして手に入れる。敵を倒す。ナミルの黄金色の脳みそが出した答え。
敵の真正面を取るように素早く移動し、構える。
「攻撃なんて無視にゃ! 金ぴかにゃー!」
答えは真正面からゴリ押しで奪い取る、デスにゃ!ユーベルコード:欲しいにゃ欲しいにゃ!(ヨコセニャヨコセニャ)で筋力が強化されたナミルの腕。
金に光り輝くオウガを数人纏めて持ち上げ、ガチョウと卵を引き剥がす。
敵陣に乗り込む捨て身の略奪だが、ルカが、レパルが、猟兵達がそれぞれ卵とガチョウを確保するペースが上がれば数の差など時間の問題だ。
光り輝く太陽の様な光がオウガの群れを完全にかき消した。
飽きられたクロケー会場でぐわぐわとガチョウが鳴く。
フードの中からガチョウを出したルカが困ったように笑う。
「ちょっと乱暴だったかな。すまなかったな」
ぐわーとガチョウが鳴く。
「うちの団長が暴走したことも……」
「ガチョウさん、戦いに巻き込んでごめんね……それとナミルちゃんが、本当にごめんね……」
レパルもまたガチョウ達に謝り。二人の視線とガチョウ達の困惑した瞳の先に──こそこそと動くナミルの姿。
「こら、そこ! ガチョウさんを持ち帰ろうとしない!!」
「にゃっ!」
こっそりとガチョウを持ち上げていたナミルの行動の意味。それを二人はすぐに理解していた。
「ナミルちゃん、ガチョウさんをさらっちゃダメー!」
ガチョウはレパルの手で捕まえられ。
「ナミル、正座でお説教だ!」
「えー……にゃ」
むすっとした顔で、しかし指示には従いちょこんと正座をするナミルと彼女を見下ろし説教を開始したルカ様子を呆れた顔で見つめるレパル。
ふわふわとした感触が足に当たる。顔を向けると、ガチョウ達が抜けたのであろう己の金の羽根を差し出していた。
「もしかして……お礼?」
猟兵達の活躍に感謝するようにガチョウ達は嬉しそうに鳴いた。
大成功
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