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迷宮災厄戦⑦〜わたくし、なんかやっちゃいまして?~

#アリスラビリンス #戦争 #迷宮災厄戦

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●近影
 ここに、1つの図書館がある。
 中には膨大な数の書籍が古今問わず集められ、長大な書架へと並べられている。
 例えば絵本。
 例えば参考書。
 例えば百科事典。
 例えば自己啓発本。
 あらゆるジャンルの書籍が並ぶ館内。だがその主題は一目見れば誰でも分かるだろう。

 ――世界の征服。

 ありとあらゆる観点から世界征服に関する記述の為された書籍がこれまでに収蔵され、これからも収蔵されてゆく独立機関。
 それがこの『世界征服大図書館』なのである。

●目次
「書物を邪な目的に用いようとするモノがいます」
 ところ変わってグリモアベース。その一角に集う猟兵を前にグリモア兵が口を開いた。
「此度の舞台はアリスラビリンスW(ワァルド)。その中の『世界征服大図書館』と呼ばれる国に在るオウガを滅していただきます」
 一見して聖職者のような身なりだが、どことなく胡散臭さが滲むグリモア兵は心底悲しげに胸元へ手を当て、言葉を続ける。
「此処は名の通り世界征服に関わる数々の書籍が収められ、オウガはこれらに因ってべらぼうに強化されております」
 通常なら本を読んだ程度で力は得られない。だが不可思議だらけの世界の作用であろうか、オウガは本を読んだだけで力を得ているという。

「そのオウガの情報ですが。簡単に申しますと……『いけ好かないお嬢様』です」
 それまで真剣だった猟兵達の間に微妙な空気が流れる。それをわざと無視して、グリモア兵は続けた。
「当該オウガは将来的に女王として力を振るうべく館内の書籍を読み漁ったのですが……女王の前段階=お嬢様とでも定義したのか、高飛車で高慢ちきで幼稚なお嬢様として振舞っているのです」
 眉尻を下げ、さも困ったとばかりに息を吐くグリモア兵。どうやら今回の敵は『悪役お嬢様』として猟兵に立ちはだかるようだ。

「お嬢様として振舞うだけで巨悪難敵と化す……恐ろしい話ですが、悪い話ばかりではありません。我々猟兵もまた、その恩恵を受けることが出来るのです」
 ざわめく猟兵達。グリモア兵曰く、どうやら書架の中には『正義の書』と呼ばれる書籍が存在しており、これを読んで『正義の味方っぽい言動・行動』をすれば、猟兵でも強化されてオウガと対等に戦えるという。
「誰が蔵書したのかは分かりません。ですがオウガの非道を止めるには『正義の書』を読み、『正義の味方』として振舞う以外に手段が無いのが現状です」

 一拍置き、グリモア兵が蛇のような薄い目で猟兵達を見回す。


カッソ
 カッソです。生きてました。

●プレイングボーナス
 このシナリオフレームには、下記の特別なプレイングボーナスがあります。
 これに基づく言動・行動を行うと有利になります。

 プレイングボーナス……「正義の味方」っぽい行動をする。

 本件では特に『お嬢様』に寄せたプレイングが有効です。皆様の心のお嬢様を奮ってご参加ください。心の中にお嬢様がいない場合、お嬢様言葉を使っていればひとまず死にはしません。
 *『正義の書』は既に発見されているものとします。

●プレイング受付について
 公開次第、断章を投稿します。末尾に受付期間を記載させていただきますので、期間内の参加をお願します。
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第1章 ボス戦 『無邪気な冥水晶・ベリアドール』

POW   :    頽唐の茉莉花
【灯籠に封じていた心の闇で出来た水晶の花弁】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
SPD   :    星芒眸の想緋
【瞳】を向けた対象に、【呪いの紅石が先端についている鎖】でダメージを与える。命中率が高い。
WIZ   :    破滅の言ノ葉
【悲惨な記憶や絶望、苦しみを誘う歌】が命中した対象を切断する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠マリアドール・シュシュです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●まえがき~お嬢様の、お嬢様による、お嬢様だらけの闘い

「オォーーッホッホッホ!!!」

 グリモアを通じて『世界征服大図書館』に到着した猟兵達を、絵に描いたような高笑いが出迎える。声の主は通路中央で仁王立ちする真紅のドレスの少女――オウガ・ベリアドールであった。
「野良犬がベリアの図書館に迷い込んだかと思えば……猟兵共でしたのね。ごきげんよう」
 優雅なカーテシーの動きに合わせ波打つ彼女の銀髪は昏く輝き、『無邪気な冥水晶』の称号に相応しい美しさを放っている。もっとも、当人の表情はそれ以上に邪悪であるが。
「ベリアを止めに来たのでしょうけれど、既に書籍から力は入手済み。最強のお嬢様となったベリアには何をしても無駄無駄……な、なんですの!この光は!?」
 嬉々として語るベリアドールを、突然上空から降り注いだ光が遮る。見れば1冊の書籍がベリアドールと猟兵達の下へ降りて来ていた。更に、脳内へボンヤリとした声も届く。

≪この時を待っていた……我は正義を司る書……悪を糺す者らよ……力を貸そう≫

「ば、バカな!?正義の書など御伽噺の筈……実在したなんて!」
 正義の書の言葉に驚愕の表情を浮かべるベリアドール。片手を顔の横に添え、額に一筋の汗を浮かべた所作も忘れていない。

≪汝らの内に眠る正義の力……その全てを引き出す術を与えん……!≫

 柔らかな白光が猟兵達を包む。対するベリアドールは冷静さを取り戻したのか、使役するバクの縫いぐるみを呼び出すと悪夢を創造する紫煙を吐かせながら不敵な笑みを浮かべる。
「フ、フン!正義の書の存在には驚かされましたが、この最強のお嬢様であるベリアに勝てる筈ありませんわ!大人しく殺されてしまいなさい!オーッホッホッホ!!!」
 高笑いが再び館内に響きわたる。
 悪しきお嬢様と正義のお嬢様の容赦なき戦いが、いま始まる。
 
 
●プレイング受付期間
8月8日(土)08:30 ~ 8月13日(木)08:00
*筆者の都合により再送をお願いする場合がございます。予めご了承ください。
*再送は期間外でも可能です。
マヒル・シルバームーン
オーッホッホッホ!(対抗して高笑い)
この『正義の書』にもある通り、古来よりこう言い伝えられておりますわ
『正義は必ず勝つ』と!
ゆえに…勝った方が正義!そういうことでよろしいですわね?
…え?ダメ?微妙に正義っぽくない言動?
では仕方ありません、正統派ジャスティスお嬢様として、正々堂々立ち向かいましょう
滅んだとはいえ、血筋は良いのですよ一応!

UCを展開し、雨での攻撃と共に結界を張って防御を固め、同時に【オーラ防御】【激痛耐性】
敵の攻撃に耐えます
しかし昨今のお嬢様は耐えるだけではいけません
手を口にかざしたお嬢様ポーズで【全力魔法】で反撃です
これがわたくしのお嬢様道ですわ!オーッホッホげほげほッ!(むせた



●第1章~銀のお嬢様、降る~
 「「「「オーッホッホッホ!!!」」」」
 立ち込める紫煙が人型に凝縮し、何体ものベリアドールとなって猟兵達の前に立ちはだかる。そのうちの1体と対峙したマヒル・シルバームーン(銀の月・f03414)も負けじとお嬢様高笑いで返し、優雅を笑みを浮かべた。
「最強であろうとあなたはオウガ、すなわち悪!この『正義の書』にも書かれている通り、古来よりこう言い伝えられておりますわ……正義は必ず勝つ、と!」
 僅かに青を含んだ銀髪をバサァッと振りかざし、片手をビシィッと顔に添え、シルバームーンが見得を切る!対するベリアドールの幻は圧倒的な正義お嬢様の気迫に圧され、表情を歪めてしまう。
「フン……貴女、猟兵のクセに中々のお嬢様……」
「ゆえに勝った方が正義!そういうことでよろしいですわね?」
 イイ感じに漂い始めていた館内に微妙な沈黙が流れる。それを察知したシルバームーンが「え?ダメ?」と『正義の書』を見る。≪ちょっと正義っぽくないと思う≫と答える『正義の書』。おほん、と咳払いをして仕切り直すシルバームーン。
「……では仕方ありません。正統派ジャスティスお嬢様として、正々堂々立ち向かいましょう。えぇ、色々ありましたが血筋は良いので!」
「いや今の発言でジャスティスは少し無理がありましてよ……あら?」
 訝しむベリアドール(幻)の額にポツリと何かが当たる。拭うと、きらめく銀色の液体が手の甲に付着していた。ハッと頭上を見上げると、僅かに青を含んだ雲が漂っており。そこから銀色に輝く雨が降り注ぎ始めた。
「あぁ……なにが……ベリアが、雨に溶ける……!」
 水に触れた綿菓子のように、急速な勢いで外形が朧げになっていくベリアドールの幻影。銀の雨はその一粒一粒が高密度の魔力であり概念、使役者が敵を打てと命じれば超常的存在を溶かす強力な兵器へ変貌する。そして当の『使役者』は崩れ落ちた幻影を見つめな優雅に微笑んだ。

「あなたに与うは『ふたつめの音』……それは、世界を護る銀色の誓いですの」

「貴女よくもベリアを……不敬でしてよ!」
 幻影の向こう、ベリアドール本体が金色の瞳を向けると、手元の灯籠に巻き付いた鎖達が勢いよく襲い掛かる。数本は展開したオーラで弾いたものの、残りはシルバームーンの身体へ巻き付き、紅石に込められた呪いがダメージを与えていく。
 しかしシルバームーンは眉根を寄せるにと留まり、すぐさま先程の微笑みを顔に戻してみせた。降り注いだ銀の雨が地に染み渡り結界を形成することで、シルバームーンの能力を底上げしていたのだ。
「この程度、世界を護る結界の加護があれば何ともありませんのよ!」
 鎖の緊縛を向上した膂力だけで動かして口元に手をかざすお嬢様ポーズを決めれば、全身から聖なる光が発せられ、集約し、魔力の塊が形成されていく。
「そして昨今のお嬢様は耐えるだけではいけません。やられたらやり返す……全力返しですわ!」
「その姿勢ホントに貴女お嬢様なんですのギャーー!!!」
 朗々たる言葉の直後に魔力の塊が発射され、ベリアドールを空間ごと巻き込んで爆散!

「これがわたくしのお嬢様道ですわ!オーッホッホ げほげほッ!」
爆発の影響で土煙が立ち昇る中、シルバームーンの高笑いと噎せ返る声が館内の空気に滲んでいった。

成功 🔵​🔵​🔴​

上野・イオナ
英雄イオナ 希望を描きにただいm……えっ、お嬢様!?
それじゃあ、えーっと、お嬢様力を高めるには……。
UC【パレードナイツ】使用
カッコイイけどドレス姿に着替えて
“CelesteCarillon(チェレステカリヨン)”(アイテム、説明文じゃ少し分かりずらいけど、機械精霊的な感じで動く)と一緒に戯れてればそれっぽいかな?
(メタ的に背後にとっても)真面目に英雄を目指してたつもりだけど
その積み重ねでだいぶお嬢様になれるなドレス姿に変身出来るのが大きかっただろうけど
それじゃあ、お嬢様言葉で
「騎士団の皆さん、僕、じゃなかった、私を守ってくださいます?」
少しむず痒いねコレ
※アレンジ・連携大丈夫です



●第2章~Become a rainbow in OJOUSAMA~
 背中を丸めて咳き込むシルバームーンと魔法攻撃による爆発を、上野・イオナ(レインボードリーム・f03734)は困惑しながら長めていた。
「お嬢様って、あんなことしていいんだっけ……?」
 上野は世界を救うヒーローを目指し、これまで様々な依頼やゲームをこなしてきた。しかし世界を救う為にお嬢様として振舞うケースは寡聞であり、初見であり、未経験であった。グリモアベースで説明を受けた際に「お嬢様になるの!?僕が!?」と酷く動揺した記憶が脳裏を過る……だが戦況を見たところ、とりあえずお嬢様っぽければなんとかなるらしい、と気持ちを整理し、手にした剣型ペイントブキ『彩虹の剣』を握り直した。
「それじゃあ、えーっと、お嬢様力を高めるには……やっぱりドレスかな」
 軽く首を傾げつつ、策を練る上野の前にベリアドールの幻影が1体近づいてくる。
「あら、殿方にこんなところで立ち尽くされては困りますわ。それとも……貴女もベリア達の邪魔をしに来たのかしら」
 語気を強め、手にした灯籠を揺らす幻影。その籠の中から幾人ものアリスから搾り取った絶望や心の闇で作られた水晶の花弁が放たれ宙を舞う。対する上野も『彩虹の剣』を天に掲げ、ユーベルコードを発動させた。
「みんなー!僕に続けー!」
 館内に響き渡った号令の下、磨き上げられた白銀鎧の騎士団が出現する。それら上野を先頭に陣を形成し、臨戦態勢の幻影を真正面から見据えていた。
「僕達は絶望の闇を切り裂く虹の光!お前達の好きにはさせないぞ!」
 ユーベルコードの効果はこれで終わりではない。騎士団の先頭に立つ上野は先程までの白を基調としたコート姿から変身(ドレスアップ)を遂げていた。
 薄水色のベールで作られたスカート風のジャケット。
 白いスラックスに合わせた白いピンヒール。
 シャツは上に行くにつれ青が濃くなり、白抜きの紋様がよく映える。
 そして、少し大きめに開かれた胸元にはサファイアの首飾り。
 肩に空色の金属でできた小鳥を乗せた姿は、本物の姫と見紛いかねない可憐さを持っていた。
「よし、準備オッケー!いくぞベリアドール!英雄イオナ、希望を描……ん?なに?」
 鬨の声をあげる上野の背を徐に小突く1人の騎士。見れば陣形を組む騎士団全体が何となく不満げに上野を見ていて。再び困惑する上野に『正義の書』がモソモソと耳打ちする。
≪たぶん……あんまりお嬢様っぽくない振る舞いだからだと思う≫
「えぇ……。確かにそういう条件だけど……なんかむず痒いなぁ」
 これも世界を救うため。思うところはあるが諦めて気持ちを切り替えた上野は肩に止まる空色の小鳥型オルゴール『CelesteCarillon』を指先に移らせ、軽く口づけをしてやる。そして目元にかかる空色の髪をそっとたくし上げ、騎士団やベリアドールへ見えるように流し目を入れつつ微笑んだ。

「騎士団の皆さん。どうか私を……守ってくださいませんか?」

 ウオオオオオオオオ!!!!!!と野太い歓声が湧き上がり、不覚にもちょっとときめいてしまった幻影めがけ一斉に突撃していく。その様子を見た上野は気恥ずかしさから気勢を削がれてしまったものの、騎士団が幻影を圧し潰し、ベリアドール本体の発した水晶の花弁がぶつかり合う音で我に返ると、彼らに続くため剣を構え疾走。紅い花弁と剣戟の乱戦を潜り抜け、衣装の端々を煤けさせたベリアドールに相対するやいなや、袈裟がけに剣を振るう!
「それじゃ改めて。英雄イオナ、希望を描きにただいま参上……ですわよ!」

大成功 🔵​🔵​🔵​

アリソン・リンドベルイ
【WIZ 庭園迷宮・四季彩の匣】
―――私が『正義の味方』や『お嬢様』になれるかは判らないけれど…そうね、可能な限り頑張るのよ。
【空中浮遊、礼儀作法、ダンス、コミュ力】で少しだけ地面から浮き上がりつつ、ベリアドールさんに声をかけるのよ。……ええ、ごきげんよう。オウガと猟兵という双方の事情が無ければお茶会にお誘いしたいところですけれど……残念ですが、戦わねばならないのが生まれの宿命でしょうか。【生命力吸収、範囲攻撃】……花々の迷宮を展開、ヘデラの緑蔓と緑指の杖の力を開放。身を隠しつつ、生命力を吸い上げます。【動物と話す】で、愛鳥のイスカと何となく意思疎通をして、迷路の上空から動きを見張って貰います



●第三章
「くぅぅ……なんなのコイツら!ベリアに向けて爆破だの斬撃だのと!」
 ドレスの乱れもそのままにベリアドールが通路の一角へ身を隠す。服の一部には血も滲み、着実に追い詰められている事を物語っている。親指の爪を噛み、苦渋の表情で反撃の策を練っていたその時。

「……ごきげんよう」
 穏やかさと幼さを感じさせる声が頭上からかけられた。

「なにやつ!?」
振り返ったベリアドールの視界に映ったのは、桃色の靴と華奢な脚。恐る恐る視線をあげると、眠たげなアリソン・リンドベルイ(貪婪なる植物相・f21599)と目が合った。
「あなたがベリアドールお嬢様かしら?」
「え、えぇそうですけれど。貴女……まさか猟兵?」
 宙に浮いたままカーテシーをしてみせるリンドベルイを訝し気に見遣るベリアドール。背格好こそ先に出会った猟兵と大差ないが、あまりに静かな登場で出方に困っているようだった。
「私はアリソン。あなたの言う通り猟兵であり、お嬢様よ……たぶん」
 自信なさげに名乗るリンドベルイ。実際のところ日々の生活や嗜好からしてお嬢様適正度は高いのだが、いざお嬢様をやれと言われると何が正解か判らないのが実情であった。しかし、必要なのはお嬢様『っぽい振る舞い』である。つまりお嬢様っぽければ大体大丈夫なのであり。
「貴女の名前など興味ないわ!どこの馬の骨とも知らないお嬢様は、ここでお紅茶の藻屑にしてやりますわよ!」
 自らが最強のお嬢様であると決め込んでいるベリアドールにとっては問題なく通じているようだった。ベリアドールを濃密な紫煙が取り囲み、同じような姿へと形成されていく。先のバクが放った悪夢の煙がベリアドールによってかき集められていく。
「おいでなさい、ベリアの幻影よ!私達で挟み撃ちすればこの程度、造作もありませんわ!」
 たちまちのうちにベリアドールが2人、リンドベルイの前で高笑いを響かせる。同時に、手にした灯籠の鎖も活性化して動き始めていた。
「そうですね……私達はオウガと猟兵、戦わねばならないのが生まれ持った宿命でしょうか」
 対するリンドベルイも静かに溜息を吐き覚悟を決める。お嬢様にはお嬢様をぶつけるしかないのだ、と。
「できることなら穏やかに済ませたかったのですが、仕方ありません。あなた達は季節の巡りに閉じ込めてあげ……差し上げましょう!」
 パチリとリンドベルイが指を鳴らすと、にわかに書架や床に多種多様な植物が巻き付いていく。更にその下から朽ちたレンガ造りの壁がせり上がり、複雑な道を構成していく。咄嗟にベリアドール達が鎖を放つもすでに遅く、静謐な書架は緑に浸食された廃墟と化していた。
「なんですのこのおしゃれ空間は!?それに鎖も貫通しないだなんて!」
「とにかくココを出ますわよ!あの娘をなんとしてもぎゃふ、ん……と…あれ?」
 苛立ちも露に廃墟を進もうとしたベリアドール達は、その時ようやく自身の足が微動だにしないことに気付いた。はしたなさも忘れてドレスの裾を持ち上げると、紫がかった紅葉ににた植物が脚に絡みつき根を張っているのが見えてしまった。
「なに、これ……ベリアの脚が、動かな……っ!」
「それに……なんだか力も抜けて、しまいますわ……!」
 力なく頽れるベリアドールの本体。幻影は既に外形が崩れかかっている。彼女達に絡みついているのはヘデラと呼ばれる常緑植物の蔓――リンドベルイが作り上げた廃墟に忍ばせたマジックアイテムの一種である。これを同じくマジックアイテムである『緑指の杖』と名付けた成長を司る林檎の枝を用いてヘデラの成長を促進、橙色の羽を持つ『夕景のイスカ』と呼ぶ愛鳥が上空から敵を見つけ次第ヘデラを伸ばし、ベリアドール達から身を隠したまま生命力を“収穫”する作戦である。
「お茶会をしながら、穏やかに解決できれば良かったのだけれど。ままならないものね」
 イスカから幻影が力尽きて消えた報告を聞いたリンドベルイは崩れた壁の一部へ腰掛けたまま、そばに咲くヒヤシンスをそっと撫でたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

空葉・千種
アドリブ歓迎

敵相手であろうと余裕を忘れず柔和な笑顔を浮かべて優雅な一礼
本来ならば、礼節を持って話し合うべきですが…この世界の平和のためお退きいただきますね?
(落ち着いて私…服が激安量販店で買ったコスプレだからってなんだというの…!
大丈夫、友達にはお嬢様もそれなりにいる
猟兵のみんな…私にお嬢様力を分けて…!)

わたくしには(お嬢様力の高い)武器はございませんので指定UCでスフィンクスの遺伝子を取り込み
図書館にふさわしくない笑い声を払い除けますわ!
(これ、姿でごまかしてるけど要は巨大化して力でゴリ押しだよね…)
わたくしにも慈悲がございます
(私の語彙力的に)早めに立ち去られたほうが身のためですわよ?



●第四章~memento domine~
 館内のにそびえ立つ煉瓦の壁。その一角に備え付けられた扉がゆっくりと開く。
「で、出れ、ました、わ」
 中から現れたのは全身を植物の蔦で覆われた、ドレス姿のオウガ――ベリアドール。彼女はリンドベルイによる煉瓦の廃墟でできた迷路を、植物による捕縛と攻撃から必死で逃げ回りながら、事前に読んでいた指南書(『悪役令嬢ですがダンジョンマスターの姪であることが判明しました』、略称れだめ』)の知識を基に走破したのである。その顔は極度の疲労と生命力の奪取によって蒼白に染まり、凝った意匠のドレスはボロ切れのような有様。呼び出した悪夢も打ち破られて満身創痍のベリアドールであったが、ふと眼前に気配を感じて顔を上げる。

「ご、ごきげんよう。貴方がこの図書館の侵略者かしら?」
 そこには鬼気迫る表情のベリアドールにたじろぎながら、淡い黄色のドレスを纏った空葉・千種(新聞購読10社達成の改造人間・f16500)がカーテシーをしていた。

「ごきげんよう……貴女も、猟兵なの」
 疲弊しきっていてもお嬢様からアイサツされたら返すのが礼儀。身じろぐ度に蔦や葉を落としながらカーテシーで応え、ベリアドールが空葉を睨めつける。
「はい。お嬢様同士礼節をもって話し合いを、と言いたいところですが。この世界の平和の為にあなたを倒させていただきますね?」
 胸元に手を添え柔らかく微笑む空葉。一見優雅で余裕を感じさせる所作だが、その内心は緊張と不安でいっぱいいっぱいだった。
(ううぅ、落ち着いて私!服は確かに量販店のコスプレだけど、それが何だっていうの!それに立ち振る舞いとか?言葉選びとか?そういうのは友達のリアルお嬢様がやってるの見てたし……みんな、どうか私にお嬢様力を分けてくれ!)
 微笑む空葉を見ていたベリアドールは、しかし顔を伏せ肩を震わせ、最後には大きな笑い声をあげ始める。
「ふふ……っふふふ……おーーっほっほっほ!!!この冥水晶と呼ばれるベリアが、こんなところで倒れる訳ありませんわ!必ず貴女を倒し、ベリアは真の女王へと進化するのよ!」
 狂気の滲んだ甲高い笑い声に反応し、ベリアドールの持つ灯籠から水晶の花弁が花吹雪さながらに噴出する。その様を(内心で慄きながら)笑顔で見ていた空葉が、静かに項へ手を伸ばす。そこに生えるレトロなレバーをパチリと『ON』へ動かしながら、ベリアドールへ語り掛けた。
「わたくしには、お嬢様として相応しい武器がございません。なので……わたくし自身の手で、貴女を倒しますわ!」
 宣言と共に構えた両腕に金色の毛が生え、肉球が盛り上がり、鋭い爪が生えていく。更に空葉自身の体格を十数倍に巨大化させながら人獣一体の姿へと変異した!
「くぅぅぅらぁぁぁえぇぇぇ!!!」
 ライオンさながらに四つん這い状態の空葉は、辺り構わず花弁で切り裂き続けるベリアドールに向け前脚を振り降ろす。対するベリアドールは花弁の嵐の中心で灯籠を抱きかかえ、迫りくる肉球を力なく見上げたまま微笑むと。

「これもまた…正義≪お嬢様≫の力……なのですわね」

 モフッとした衝撃に圧し潰され、ちょっと心地よさを覚えながら粒子となって消えていった。


「わたくしにも慈悲があります。どうか、安らかな最期でありますように……」
 足の隙間から何処かへ飛んでいく粒子と、塵となって消えていく水晶の花弁を見て決着を感じ取った空葉は変身を解除し、中空を見上げながら静かに祈る……ベリアドールは確かに悪であったが、お嬢様力は十分だったよ、と。
 『正義の書』は満足げに書架の中に消えていき、空葉もまたグリモア兵によって他の猟兵達と共に家路につき、食事をし、風呂へ入り、支度を済ませて布団に入る。そうして眠りに入る直前。
(ていうか最後の攻撃ってゴリ押しじゃん)
 空葉は天井を見上げながら、静かにそう思ったのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年08月19日
宿敵 『無邪気な冥水晶・ベリアドール』 を撃破!


挿絵イラスト