迷宮災厄戦⑩〜ビブリオテーケー・ラビュリントス
●図書館迷宮
『だれか……』
『こやつの……』
『首をはねよ……』
赤く染まった石像がズシンズシンと徘徊して大きな音を立てている。
ここはかつて城だった。が、今やその主――女王は戯れに殺され、思念は石像となって彷徨っている。
『おおおぉお……』
そんな石像たちが――本棚の隙間を所狭しと駆けまわっていた。埃立ち上りすぎである。
そう、ここは図書館。迷宮のようになった城の図書館から、君たちは逃げないといけない――!
●迷宮を攻略せよ
「っていう状況なわけ」
マリア・ルート(千年の王国から堕ちのびた姫・f15057)が説明するや否やなんだそれだけかと舐めた声を漏らす猟兵の首に手を当てる。
「首をはねよ――」
――が、その手はすぐに放され。
「――って感じで、石像たちはあんたらの首にタッチしてこようとするわ。タッチされたら最後、城の外の断頭台がたくさんある場所に送られるわ。拘束されないのが救いだけど」
といっても、実はこの石像、倒すことができたりする。
「遠距離攻撃とかうまくやれば倒すことはできなくはない――けど、大量にいるし、タッチされたら即終了だし、正直逃げた方が良いわよ。絶対。あと壁の破壊は考えない方が良いわよ、めっちゃ硬いし」
ロケーションは図書館で埃がかなり舞っていて別の面でも視界が悪い。が、そこをうまく逃げだせば怨念は消えてくれるだろう。
「というわけで、明確に強いオウガとかは出てこないはずだし――いっちょ、鬼ごっこで遊んでみる?」
ふふっ、と笑うマリアだが、猟兵たちの顔は真剣になっていた。
結衣謙太郎
図書館は迷宮にしやすいって誰かが言ってたような。
結衣(戦争モード)です。
図書館迷宮で鬼ごっこ!
以下詳細。
●成功条件
迷宮図書館を脱出せよ!
●苦戦以下条件
石像にタッチされ(し)てしまう。
●章構成
このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「迷宮災厄戦(ラビリンス・オウガ・ウォー)」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
今回は冒険となります。
ロケーションは埃がすごい舞っている図書館です。
脱出ルートはどこからでも構いませんが、一直線に壁とか全部を破壊してダイナミック脱出、ってのだけはしないようにお願いします。それを認めちゃうとみんなそうしちゃう可能性あるので結衣が困惑します。それ以外なら何でも構いません。窓から脱出とか実は地下があったとか。
あと鬼の石像は壊せますがまあ逃げた方が無難です。
それでは戦争シナリオということで。皆様の魂のこもったプレイングをお待ちしております。
第1章 冒険
『女王の石像から逃げろ』
|
POW : 女王の石像の集団に追いかけられながら、迷宮内をマラソンしつつ迷宮を探索する
SPD : 女王の石像に見つかる度に、全速力で振り切って安全を確保しつつ迷宮を探索する
WIZ : 女王の石像に見つからないように隠れ潜みながら迷宮を探索する
|
種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
虎鶫・夕映
【SPD】
全力で逃げるんだよぉーってことで見つかる前に駆け抜けるしかないのでUC使用して【ダッシュ】【早業】【先制攻撃】でもってして全力で振り切っていきます
【先制攻撃】といえど攻撃するわけでもなく先手撃って逃げるわけですが…
…隠れるのに使える技能があればまた違った方法があったと思うけどないものねだりしてる場合じゃないしね
水心子・静柄
石像に触れないのは面倒よね、それなら錬成カミヤドリで自身の複製を用意して、念力で操作して石像の邪魔をしながら逃げるわ。
迷路の道順なんて考えるだけ無駄ね、第六感と野生の勘でノータイムに判断して突き進むわ。念の為、曲がり角を曲がる際は複製した脇差を先行して飛ばして石像がいないか確認。後ろから追ってくる石像には足元に複製した脇差を飛ばして、足に絡まるような操作をして転けさせ、それで後続を断つ。前方から石像が来た場合は複製した脇差を飛ばして足場にして飛び越えるわ。無理そうならその前の角を曲がったり、引き返して追ってくる石像を撒くわ。
クロス・シュバルツ
アドリブ、連携可
戯れに殺された怨念……ですか。とはいえ、自身もアリスを理不尽に殺した事があるのでしょうし、それを考えれば因果応報とでもいうべきでしょうか
幸いというべきか、此処には件のハートの女王の怨念が漂っている。
それを利用する形で【紫の慟哭】を発動。怨念の闇を纏って移動速度を強化
埃に紛れて姿を隠しつつも『残像』で敵を撹乱して、『ダッシュ』で迷路を踏破
行き詰まった場合は本棚を『ジャンプ』で飛び越え別の道を探すなど試みる
埃で敵の姿を視認できなくなるのは『暗視』の応用で何となく気配を察知して回避
石像からは基本的に全速力で移動して振り切る。ルート上それが出来ない場合のみ衝撃波を放って破壊する
●迷宮の探索者たち
「戯れに殺された怨念……ですか」
クロス・シュバルツ(血と昏闇・f04034)が図書館の本の一つを本棚に戻しながら呟く。
「……とはいえ、自身もアリスを理不尽に殺した事があるのでしょうし、それを考えれば因果応報とでもいうべきでしょうか」
おそらくそれは童話の中の話だが、アリスラビリンスのハートの女王がしていないとは限らない。オウガ・オリジンの忠臣ということだしやっていてもおかしくはない。
「さて、行きますか――」
「にょえええええーーーー!!」
「え?」
シュバルツが進もうとした瞬間、多数の本と共に目の前に降ってきた虎鶫・夕映(サルトラヘビ・f28528)。
「ううぅ、失敗しちゃった……」
「失敗って、何にです?」
「あそこ」
シュバルツが夕映の指さした先を見れば石像と思いっきり壊れた手すりが見える。
「あそこ、追い詰められたからこっちにダッシュで跳びこんだんだけど、着地うまくいかなくて……」
「……ああ」
なるほど、そういうことか、とシュバルツは納得。
「……隠れるのに使える技能があればまた違った方法があったと思うけど、ないものねだりしてる場合じゃないしね」
怪力で本棚盾にするとか、息止めを使えば行けた気がしないでもないが、その考えは思いつかなかったようだ。
「……」
シュバルツが上の階の石像たちを見る。そしてふと、思案顔。
「どうしたの?」
「……あれ、怨念だけなら使えるかな、試してみますか」
シュバルツは試しに石像の怨念を纏おうとするが、纏えたのは石像から『漏れた』怨念のみ。だけど、十分だった。ここから出るための力――速さが得られればそれでいい。
「いいですか、俺から離れないでくださいね――行きますよ」
「うんっ」
素早く埃の中に姿を隠すと、本棚の影を見つけ――
「行きますよ! 跳びこみます!」
「わかった!」
素早くジャンプしてローリングしながらシュバルツは陰に入る。――が。
「わわっ、止まってー!!」
その本棚を超えてはるか向こうの本棚に激突する夕映! メガリスのオーバードライブが悪い形で動いてしまい、制御がきかなくなってしまったのだ。
「……」
ため息をつくシュバルツだった。
「大丈夫ですか」
すばやく夕映の傍によると、手を引っ張って起こす。
「ありがと、でも――ごめん」
夕映が激突した本棚はいくつか本棚を巻き込み倒れてしまっていた。
「――いや、これは利用できるかもです」
シュバルツは夕映を掴み本棚の上に乗ると、そのままジャンプする――
――迷宮を探索していたのは彼らだけではない。
ある一角には、床に多数の脇差が刺さっていた。それらが石像に踏まれ消えていく。次の瞬間には石像の前にできたのは脇差を段とした空中階段。そしてそれを上るのは――
「迷路の道順なんて考えるだけ無駄ね、とはいえずっとフリーに行ってたら逆に迷うでしょうけど」
脇差を放っていたヤドリガミ、水心子・静柄(剣の舞姫・f05492)だ。悠々と視界の下を通る石像を通りすぎれば階段から飛び降りて着地。石像を跳びこすことに成功した。石像はいつの間に、という感じにきょろきょろしている。
(ふう、それにしても徐々に石像の数が増えている気がするわ)
それは気のせいではない。実際に石像の数は進むにつれ増えている。そしてそれは、重要な場所に近づいているのに他ならない、つまり。
(ゴールが近いってことね)
もう少しだ、と自分を鼓舞して先へ進む。と、何やら大きな激突音がした! 思わず物陰に逃げ込む静柄。埃が昇る中慎重に見れば、下の方で何やら本棚が倒れたようだ。その中心に一人の少女がいる。あの子がぶつかったのだろうか。あ、もう一人男の人も来た。
――と思えば、男の人の方が女の人を掴み、本棚をつたいながらこっちにジャンプしてくるではないか。思わず後ずさる静柄。
「うー、荒いよ使い方」
「しょうがないですよ、もとはといえば君がぶつかったのが原因でしょう」
静柄の目の前にいる二人。彼らも探索者だろうか。
「それくらいのジャンプなら自分もできるって――」
「いや、ここまでの状況から見るに――」
と、警戒していた静柄があることに気づいた。
「二人とも、後ろ」
2人が後ろを向けば――石像が、見つめていた。すぐ近くで。
「にゃああああ!?!?」
「うわぁああああ!?!?」
全速力で逃げ出す夕映とシュバルツ。それを追う静柄。夕映がメガリスオーバーリミットで断トツ先頭、次いでシュバルツ、最後に静柄という列だ。
「くっ、これでどうにかならない!?」
静柄が追ってくる石像の足元に脇差を飛ばして転ばせる。ズシン、という大きな音が響く。これでどうにかなる――と思っていた。
「うわー、前から来たー!」
「だから走りすぎなんですって!」
夕映が前から石像を連れてきてしまった! こうなれば後退するか? いや、転ばせた石像が怖い――どうすれば、とシュバルツが横に目をやれば、埃の奥に何か――
「道です! こっちに逃げますよ!」
「うん!」
「ええ!」
素早く3人が横に逃げる、が、石像がこの横道にも入ってきた! しかも――
「なっ、行き止まりですか!?」
「嘘!?」
「いた!」
全力ダッシュしてまた激突した夕映含め、行き止まりという状況に驚愕。万事休す! もしや夕映がダッシュしたのはこの壁を壊せないかというつもりだったのだろうが――無理なようだ。
「くっ、応戦するしかないですか!」
シュバルツが衝撃波で追う石像に攻撃する。効いてはいるようだが、それでも歩みは止まらない。じわじわ追い詰められていく――そんな中。静柄が何か見つけた。
「……? この本棚、本が足りてないわね」
壁に並ぶ本棚の一つに、明らかに不自然な、本が一つはいるほどの隙間を見つけた静柄。あからさまに怪しいそれに注目する中、夕映が起き上がる。
「あいたたた、ダメか……もう、ダメなのかな」
弱気になった夕映の頭から一つの本が落ちる。静柄がそれを手に取って上を見れば、到底手が届かないような位置にあった本が落ちたようで。衝撃で落ちたのか。
試しに静柄がそれを本棚に入れれば、壁が大きな音を立てて開く!
「なるほど――隠してたわけね。お手柄よ」
「――ああ、今回は役に立ちましたね」
後退を続けながら合流したシュバルツも汗をかきながら夕映をほめる。なぜなら、向こうにあったのは――彼らの目に飛び込んできたのは――
「扉だー!」
そう、迷宮の扉! すなわち――出口! 言うまでもなく進む先は同じ! 跳びこむような勢いで、扉に体当たりすれば、それは壊れるように開いて――3人を外へ放り出す!
「うわあああ!?!?!?」
――2階から!
落ちてゆく3人。その瞬間に動いたのが夕映だ。静柄を左手に、シュバルツを右手に掴むと、体勢を整え、地面に着地! 足がめり込む夕映! しかし両手の二人は無事! 夕映の力持ちが功を奏した!
夕映が足を抜きながら二人を下ろせば、次々に石像が窓から落ちて、壊れていく。しかし、それは地面に激突して壊れるのではなく、空で全身に亀裂が入り、何かが解放されるような壊れ方だった。
「……これで怨念が解放されるといいのですが」
シュバルツが用のなくなった図書館迷宮、そこから広がる空を見ながらふと、呟いた。
こうして、迷宮の怨念はここにまた一つ、解放された。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵