【旅団】喫茶店の海水浴〜プールもあるよ〜
【これは旅団シナリオです。旅団「Glasses cafe」の団員だけが採用される、EXPとWPが貰えない超ショートシナリオです】
「最近暑くなってきましたよね……」
とある喫茶店のカウンターの向こう、大神・狼煙(コーヒー味・f06108)は氷の浮かぶ珈琲を集まった猟兵達に差し出した。
「というわけで、海とプールに行きませんかね?」
下心を疑ってか、はたまた差し出された珈琲を警戒してか、訝しげな顔をする猟兵達……くすり、微笑んで「ちゃんと美味しく淹れてありますよ」とグラスを勧めてから胡散臭い眼鏡が言うことには。
「いつも大変な皆様ですもの、たまには休暇があっても許されるでしょう?折角の夏、そして水着を新調したとあっては水辺に遊びに行かずしてどうするのですか!」
言ってる事はまともなのに、日頃の言動のせいかジメッとした視線を向けられるが、びくともしないのがこのオッサン。
「で、普通は海かプールを選ぶと思いますが……」
ここで話が最初に戻り、眼鏡が取り出したのは海に隣接するレジャー施設。
「なんでも一つ繋ぎに、最後は海に飛び込むスライダーが目玉のようですね」
ここで一つ、猟兵達が首を傾げた。一つ繋ぎ、とは?
「なんでも、複数のプールが連結していて、最後は海に飛び込む事になるそうですよ」
そして取り出したのはそのプールの紹介パンフレット。波打つプール、流れるプールはまぁ分かる。吸い込むプールと吹き飛ぶプールとはこれいかに?
「最後の吹き飛ぶプールから、ラストのスライダーに乗るようですね。泳ぎが苦手な人には、浮き輪や複数人で乗れるタイヤのようなフロートもあるそうですよ」
サポートは充実しているようだが、色んな意味で刺激的な事になりそうだ……複雑な顔の猟兵に対し、店主はニコリ。
「海に飛び込んだ後は、浜辺で食事を用意しておきますから、思いっきり楽しんできてくださいね」
久澄零太
というわけで世の中戦争中だけと海行こうぜ!
って感じの久澄です
夏休みの思い出を作っておきましょー
第1章 冒険
『ライブ!ライブ!ライブ!』
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POW : 肉体美、パワフルさを駆使したパフォーマンス!
SPD : 器用さ、テクニカルさを駆使したパフォーマンス!
WIZ : 知的さ、インテリジェンスを駆使したパフォーマンス!
👑1
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ノイン・フィーバー
フフフ、行きますヨー
ひとまず柱型の風船を膨らませると、それに捕まってまったり流されたりしまス。割れてなければ水中も大丈夫ですので、おぼれたりしてる人がいれば助けにいきますヨー
終盤、柱型風船の上に改めて立ち乗りし、飛び込むスライダーを疾走! 丁度ドラゴン〇ールの白桃〇の柱ゴーッの感じで空を舞い、海中へダイヴします。
ぷかーっとどざえもんムーブを楽しんでから岸にあがりましょう
焼きトウモロコシをジャグリングしながら皆さんに配りしたり、焼きアイスや焼きそばを堪能しましょう。
ん?
この正体不明の食材は……焼けばイけますかネ?
※補足 良さげなタイミングで双葉サンに触れられ頭部を爆発させてください。割るのも可
満月・双葉
アドリブ歓迎
絡み自由
但し関係の浅い男性とは接近不可
師匠、これ楽しいんですよ
でもほら、一つ難点があるんです
海底に突き刺さっちゃうんです
つまりあれです
後で助けてください
と言い残して浮き輪装備で滑っていき、海の上に浮き輪とカエルのマスコットだけ残されてたりするかもしれない
師匠、魚がいっぱーい(おめめグルグル)
皆が食べられる分だけ取っていきましょう?
狼煙に渡せばいい感じにあれこれしてくれると思いますから
皆さんにデザートとしてスイカなど用意しましたからスイカ割りとか…
大丈夫ですキチンとスイカを割りますから
僕の野生の勘も捨てたもんじゃありません意地でも師匠は殴りません安心してくださいね(良いアホ毛)
ミカエル・アレクセイ
アドリブ歓迎
絡み自由だが双葉と桜花と狼煙以外には距離あり
……双葉、その最後のオプションは沈むお前だけの限定ではないのか
取り敢えず浮き輪持っていけ
放蕩カエルに、しっかり把握しておけよと言う視線を投げつけてから見送る
まぁ、この後に滑れば問題ないだろう
………そんな事だろうと思ったと溜め息をつきながら浮き輪とカエルを見やり救出ついでに魚を捕獲して狼煙に預けに行く
双葉の身体が冷えるから二度目はなしだ
何で俺の弟子なのに水に嫌われているのやら…
スイカは角材とかで割れ
何故そこで大根が出てくるんだ
お前にぶん殴られるほど落ちぶれちゃねぇよ…
万が一弟子の野生の勘から外れた被害者が出たらご愁傷さまだ…
魅黒・神影
「実は海って入ったこと無いんだよね、楽しみだな!」
「一応泳ぐんだししっかり準備運動したほうがいいのかな?」
もちろん晴れてる日を選んでると思うけどいい感じの天気になるようちょっとだけ技能【天候操作】を使ってみたりとかをしながら準備運動を
SPDで、最初は流されるままに浮いてるけどつい楽しくなっちゃってするすると水面を泳いだり跳ねたり?
体の大きさの割に結構食事は取る様子
「川とも滝とも違ってこれはこれで楽しいね!」
神樹・桜花
今年の夏も暑いですね。SPF50・PA++++の日焼け止めを塗っても焼けそうな気がしてきます。
水着を着ていますが、泳げないので海にもプールにも入れません。
せめて水に足を浸しつつ焼きもろこしでも食べるしかないでしょう(もさもさ)
(以降誰かに誘われない限り動きません)
・・・スイカ割りは楽しそうですが、私が割る側だと多分、何も面白くないでしょうね。普段からセルフスイカ割り状態ですから、誘導を無視してスイカに一直線に向かうと思います。
割られる側?それはどこぞのスイカメェンの役割では?
・・・おや、何やら騒がしいようですが。プールサイドで誰かが滑ったか何かしましたかね?
地鉛・要
なんか変なプール多いな・・・それとも近頃のプールは全部こんなものなのか?
取り合えず、ラストのスライダーはうつ伏せで頭から行くのが超!エキサイティング!らしいが・・・どうなるのか分からないから狼煙に先に行ってもらおうかな。ダメそうなら一人で行くが・・・
飯は・・・飯・・・焼きそばとか適当に買ってあとは甘いモノを買いあさるか。
例の音響兵器の歌が聞こえてきそうになったら水に潜ってよう・・・流石に見えている機関銃に当たりたくは無い。ってのは言いすぎかな?
帰り、何処かでカレー食べていかないかプール逝った後はやたらと食べたくなるんだ。
アイ・リスパー
「ふっふっふ。今年の私は一味違います!」
【高機動型強化外装】を装着して登場です!(外見は2020水着イラスト参照)
「これを装着していれば、なんと!空を飛べちゃうのです!
これなら溺れる心配はありませんね!」
スライダーでも波打つプールでもなんでも来いです。
吹き飛ぶプールから吹き飛んだところで飛翔!
華麗にスライダーに着地です!
「よーし、このまま海に飛び込めば……
って、あれ!?」
パワードスーツが暑さのあまりオーバーヒート!?
エンジンが停止し……
「へ、へるぷー!」
ただの重りとなったパワードスーツを着込んだまま、溺れるのでした。(なお足は着く
助けてもらったら、食事と焼きとうもろこしです!(じゅるり
テティス・ウルカヌス
2016水着参照
「ふっふっふー!
夏といえば海!
海といえば水着!
水着といえば天才的美少女アイドルにして国民的スターのテティスちゃんですね!」
というわけで、タダで旅行できると聞いて押しかけてきました!(★は白髪の電脳魔術士が払いました)
「せっかくの海とプールです。
ここはレジャーに来ている人々にサプライズプレゼント!
アイドルのテティスちゃんのステージを特別にタダで披露しちゃいましょうっ!」
【天使の歌】を歌って皆さんを盛り上げようとして……
「えっ、スライダーに乗った先に食事が!?
もー、そういうことは先に言ってくださいよー。
ステージは食後のお楽しみに取っておきましょう」
浜辺で店長が作った料理を食べます!
アスカ・ユークレース
慰安旅行でプールと聞いて!
意外と福利厚生しっかりしてるのですね……閑古鳥鳴いてるのに。(失礼
さて、折角の機会ですし遊び尽くしましょう!目指せ全制覇!
吹き飛ぶやつとかちょっと激しめだけど……むしろこのくらいの刺激がなくては。
タイヤも借りてきましょう。こっちの方が不規則に回ったり揺れたりしてよりスリルを味わえそうですし。
そしてフィニッシュは一番の目玉!海にダイナミックダイブするやつ!!
ひゃっはー!超楽しい、笑いが止まらない……!
揚げパンアイス食べたら……もっかいやりに行きましょう。
アドリブ絡み歓迎
ニーグラート・ジズ
泳ぐの苦手なんだよねー。水ガブ飲みしちゃうから。スライダー用の浮き輪に乗って遊ぼっかな。
え、浜辺に食事あるの?食べにいく
!!!!!!!
スライダーに乗るけど、最短で海を目指していろんなプールを突っ切るよ。
私が!真っ先に!ご飯食べる!
ついでに通りすがりに会った人も連れて行こう。
ラブリ・ライラック
余は水溜りは知っているが、海とか川とかプール?はよく知らぬのじゃ…
でもすっっっっごく楽しいところなのは皆を見ててわかるのぅ!
店長オススメの?スク水とやら着て浮き輪も用意して楽しむのじゃよ!
(…ちょっと波とか流れとか怖いのは内緒なのじゃ。誰か背中を押してくれると助かるのじゃよ…)
海にゴールしたら、食べ物とか皆に配る…余裕があればいいのぅ…
「今年の夏も暑いですね。組織指定の強力な日焼け止めを塗っても焼けそうな気がしてきます」
眩いばかりの太陽が猟兵達を照らし、桜花の愚痴を肯定するかの如く水面に照り返す日光。炎天下の扉を開けば、広がるのは区画分けされた水場の集合地。
「余は水溜りは知っているが、海とか川とかプール?はよく知らぬのじゃ……でもすっっっっごく楽しいところなのは皆を見ててわかるのぅ!」
はい、本日の現場はプールですよ!初体験らしいラブリは、人がごった返して気温を更に上げているのではないか、と思えるほどに水遊びに興ずる人々を眺めて目を輝かせる。
「ところでこれ、どうやって遊ぶのじゃ?」
紺色のワンピースタイプの水着に、白いワッペンで「らぶり」と書かれた水着に自身の色彩に合わせたのか、紅水晶の浮き輪をはめて、周りをきょろきょろ。目が合ったのは、モノクロ横縞の全身タイツ……もとい、ダイビングスーツのノイン。
「おススメは海に飛び込むフルコースらしいですシ、まずはスタート地点から流されてみてもいいかもしれませんネ」
「ほほう……ところで、おぬしの顔はどうなっておるのじゃ?」
ノインの頭は旧式テレビジョン。顔っていうか画面なのだが、そこに接触した灰色のゴムっぽい何かが、息を吹き込まれるようにリズミカルに膨らんでいく。そもそも呼吸しているのかも怪しいノインであるが、仮に呼吸していたとして、口はあの画面(テレビという名の英雄仮面だから、中の人が存在するはずという仮定)の中のはずだ。吐息が届くはずはないのだが……。
「フフフ、道化師にタネと秘密はつきものですヨ?」
ててーん!電柱フロートが完成した!!コンクリートを再現したリアルなデザインに、電線連結部分を模した持ち手が特徴だぞ!
「まずは流されてみるといいと思いますヨ?浜辺では店長がお昼ご飯を用意してくれているはずですシ」
「え、浜辺に食事あるの?食べにいく!」
これに文字通り食いついたのはニーグラート。ホットドッグ型のフロートを頭の上に乗っけていた彼女は目と涎を輝かせて。
「水をがぶ飲みしちゃうから泳ぐのは苦手だったんだけど、ご飯があるならそんなこと言ってられないね!」
彼女の中で、優先順位は遊ぶ事より食べる事が上だった……。
「私が!真っ先に!ご飯食べる!いただきまーす!!」
バビュン!!白地に赤の縁取りで、おへそを見せるスタイルだったニーグラート。彼女の水着は、お腹部分に穴をあけて、お腹が空いた、ということを体現していたのかもしれない……。
「ふっふっふ。今年の私は一味違います!」
高速で走り去っていくニーグラートを見送って、腕組みドヤ顔のアイ。彼女の体は、赤のライトアーマーに包まれて……水着は!?
「これを装着していれば、なんと!空を飛べちゃうのです!これなら溺れる心配はありませんね!」
去年は浅い川で溺れかけて、ノインを投げ飛ばしてカチ割り、大爆発☆という怪奇現象めいた結末を迎えた彼女は、水に入らなければ溺れないという答えに至ったようだが……プールに来た意味ィ!!
「去年のような醜態は晒しません!華麗に海に到着して見せますね!!」
そしてホバリングする彼女は、地表を滑るようにニーグラートの後を追っていった。
「慰安旅行でプールと聞いて!意外と福利厚生しっかりしてるのですね……閑古鳥鳴いてるのに」
先の二人とは違う意味でテンションの高いアスカ、後半ぼそりとつぶやくと、水着姿をカメラに納めて回っていた店長がはっはっは。
「来店客数は少ないですが、一応黒字ですからね」
「……え?」
アスカの給料は、日給コーヒー一杯。
「ちゃんと利益とれてるなら、私の時給上げてくださいよ……!」
「技術検定に合格したら考えますよ。私もそろそろ業務の一部でも、バイトにやらせないといけませんし……」
骸骨的な意味でスケルトン水着のアスカは、疑いのジト目を狼煙にこれでもか、と突き刺してから、人が複数人で座れるサイズのタイヤフロートをコロコロ。
「気を取り直して、折角の機会ですし遊び尽くしましょう!目指せ全制覇!吹き飛ぶやつとかちょっと激しめだけど……むしろこのくらいの刺激がなくては」
ここまでやたらテンションの高いメンツが多かったが、無表情なのがこちら。
「師匠、これ楽しいんですよ」
黄薔薇のブローチが彩る黒のビキニな双葉は、ノーフェイスながらもアホ毛が荒ぶる。ローテンションに見えるが、実際にはハイテンションのようだ。
「でもほら、一つ難点があるんです。海底に突き刺さっちゃうんです。つまりあれです、後で助けてください」
「……双葉、その最後のオプションは沈むお前だけの限定ではないのか?取り敢えず浮き輪持っていけ」
既に浮き輪を掲げている双葉に、追い浮き輪をかぶせるのはお師匠様こと、ミカエル。多分この浮き輪も意味がないんだろうな、とグリモアも持ってないのに未来を見たミカエル。御蛙(みかえる)さんに「しっかり見ておけよ」という視線を送って、サムズアップを返されたが、きっと助からないのだろうな……とため息交じりにプールへ向かっていく。
「なんか変なプール多いな……それとも近頃のプールは全部こんなものなのか?」
聞こえてきた話を総合して、高速で流された後、間欠泉的な何かに吹き飛ばされて、海に突き落とされる想像をした要はウミウシフロートの上に腰かけ、プールの上をどんぶらこっこどんぶらこっこ。
「ぷ、プールとは遊び場ではなかったのじゃ……?」
さて、こちらは完全にビビってしまったラブリ、それに気づいた要、その下で脚部をウニウニしてサイドに上がってくるウミウシ……それフロートじゃなかったのかよ!?
「怖がることはない、あいつらが色々おかしいだけだから」
「そうそう、狼煙さんがかかわると色々おかしいから!」
「ちょっとみーちゃん!?」
準備運動していた神影は黒い帯を胸元と腰に巻き付けたサムエンスタイルに、白い袈裟を羽織って空を見上げる。
「実は海って入ったこと無いんだよね、楽しみだな!」
その瞳が、人体の反応とは別の動きで引き絞られた。すると、視界がフォーカスされるように、雲一つない晴天に白雲が引き寄せられていき、地表を影が泳ぐ。
「うん、やっぱり少しくらいは影がないと暑すぎるよね……」
袈裟を脱ぎ、一つに束ねていた髪を丸めてまとめた神影はラブリに手を差し伸べて。
「行こ!一般の人もいるってことは、とりあえず安全は保障されてるはずだし」
「そ、そうかの……?」
こうして二人もプールに向かったところで……。
「お前は何してんの?」
白いビキニに椿のパレオを巻いておきながら、足だけ水に浸けてぱちゃぱちゃ、水を蹴って遊ぶだけで決して中に入ろうとしない桜花に、狼煙が半眼。
「着替えはしたものの、泳げませんから」
流れるプールの水流に、川を想起して昨年の旅行を思い返しているのか、ささやかな水しぶきを上げていた桜花だったが。
ドッポーン!!
「……お前、時々外道だよな」
「いや、こうでもしないとあいつ水に入らなそうでしたから」
桜花をプールに蹴り落して、殺意を込めた視線だけ残して流されていく彼女を見送った狼煙がグッと伸びを一つ。
「よし、そしたら浜辺に向かってお昼の支度でもしますかね……」
「あぁ、それなら近道があるぞ」
要の肩ぽむ、からの、グッ。
「お前もスライダーするんだよぉ!!」
「何するんですかぁあああぁぁぁ……」
要によってぶん投げられた狼煙がショートカット(飛翔)して、そのままラストのスライダーへ。そのまま海に射出されて投身自殺めいた最期を迎えた様子を、額に手を合わせた要が見届けて。
「バランスだけ崩さなければ大丈夫そうだな」
「おぉ……水に流されるのじゃ……」
流れるプールに運ばれて、浮き輪でぷかぷか流されていくラブリ。その隣を電柱の上に寝そべって漂流するノインは、画面に矢印を映して。
「慣れないうちハ、浮かんで流されているだけでもいいかもしませんネ」
「故郷の川を思い出すなぁ……」
仰向けになって脱力し、水に浮かんで流れていく神影の横を。
「!?!?!?!?」
荒ぶる桜花が流されてきた。
「え、ちょ、どうしたの!?」
「脚がつってしまったんでしょうカ?」
神影が跳ね起き立ち泳ぎ、桜花を支えてやるとノインが電柱フロートに半身乗せて。
「おのれ餓狼……!」
「ひっ!?」
凄まじい殺気に、ラブリがビックゥ!後からにゅいーんと追い付いてきた要が、ウミウシの上から桜花の魔眼を開くレベルで怒り狂う様子を見て。
「まぁ、いきなり水に蹴り落されたら、そうなるよな」
「「あっ」」
「?」
神影とノインは何かを察したが、ラブリだけ訳が分からずきょろきょろ。
「いったい何があったの……じゃぁあああ!?」
流れるプールは波打つプールへと様相を変えて、不意打ちで波に運ばれて高く持ち上げられるラブリから悲鳴と歓声が入り混じった声が漏れる。
「これが波……これが海……!あれ、でも塩の匂いがしないね?もしかして、塩素のあの匂いが塩の匂いって事なの?」
感動を覚えながらも不思議そうな顔をする神影に、要は波が上がった瞬間に遠方に見えた海を示して。
「いや、本物はあっちでここはまだプールだぞ」
「『潮』の香りモ、塩素とはちょっと違いますネ」
果たして、ノインのさりげないフォローはきちんと神影に伝わったのだろうか……。
「あの、とりあえずおろして頂いていいですか……?」
「おっと、桜花さんは泳げないのですネ」
サイドに桜花を降ろして画面上部に手を添えて、遠方をみやるとノインの画面に映るのは荒ぶる猟兵達。
「あちらはあちらでとんでもないですネ……」
「こちらもこちらで危険なようですが……!」
ようやく足がついたことで落ち着いたのも束の間、桜花は聞こえてきた声に身震い。
「ふっふっふー!夏といえば海!海といえば水着!水着といえば天才的美少女アイドルにして国民的スターの……」
白い布を重ね合わせたようなビキニ、花火を模した水色のパレオ、そして空色の髪を揺らす奴の名は……。
「テティスちゃんですね!」
はい、かの有名な音響兵器さんです。
「というわけで、タダで旅行できると聞いて押しかけてきましたが(※彼女の旅費はアイのお小遣いから天引きされています)、せっかくの海とプールです。ここはレジャーに来ている人々にサプライズプレゼント!アイドルのテティスちゃんのステージを特別にタダで披露しちゃいましょうっ!」
「やや、ステージイベント、というやつかの?」
何が始まるのじゃー?ととりあえず楽しそうな雰囲気にワクワクしてみるラブリだが、その脅威レベルを知っている要は。
「見るな、そして聞くな」
「のーじゃー!?」
ラブリの浮き輪を思いっきり引っ張って高速回転!世界がぐるぐるするラブリは何も認識できない状態に!!そして要自身もグリン!ウミウシがひっくり返って、彼も水の中へ。
「えっ、えっ、二人ともどういうこと!?」
取り残された神影が慌てふためく傍ら、桜花が脱兎。ノインは海を示して。
「アイドルサン、浜辺で狼煙サンがロケ弁を用意してますヨ。今頃BBQしてるんじゃないですかネ?」
「えっ、スライダーに乗った先に食事が!?もー、そういうことは先に言ってくださいよー。ステージは食後のお楽しみに取っておきましょう」
喜んでプールに飛び込み、流れていくテティスを見送って、ノインは敬礼。
「狼煙サン、あなたの犠牲は忘れまセン……」
先行したアイドルによって、店長がお星さまになる気がしたノインなのだった。
「ほら師匠、変わったプールがありますよ」
「……これ、安全に配慮してるんだよな?」
さーてマイルドなのはゆったり組で見てきたからこっから先はハードテイスト。具体的には吸い込むプール。
「人間ピンボール状態なんだが……?」
ミカエルが首を傾げるのも仕方がない。普通は一方向に水を流すものだが、波打つプールの先には吸水口がプールの両サイドに互い違いに設置されており、まっすぐ泳ごうとしても左右に引っ張られる仕様。
「本当に激しいのはこの先みたいなんですけうわぁああ」
「双葉……」
右に吸い込まれてるうちに、プール全体には前に進もうとする水流があるため、壁にぶつかる前に反対側に吸い込まれてジグザグに流されていく双葉を眺め、水に弄ばれる弟子を見つめるミカエルが複雑な顔をしていた。そして、この難所?を突っ切る猟兵が二名。
「ごーはーんー!!」
水流をものともせず、浮き輪にはまってとにかく前進するニーグラートと。
「逃がしませんよ!あなたに勝って、私は成長したことを証明するのです……!」
そもそも泳がずに水面を飛行してるアイ。お前らプールで遊びに来たんじゃなかったのか……?
「ご飯は大切!UDCアースの教科書にも書いてある!」
「私は負けられないんです……去年の醜態をぬぐうためにも……!」
駄目だこいつら、慰安旅行の意味が分かってねぇ……。
「こういう時は……キャッ!楽しまないと……きゃぁ!?損ですよねっ!」
恐らく、唯一普通に楽しんでるのであろうアスカを見習ってほしいものである。本来なら複数で乗るタイヤにあえてソロライドしたアスカだが、そのせいで重心が狂い、フロートは常に回転を続け、しかしタイヤそのものの質量の関係で流され切らずに壁にぶつかってから反対側に吸い込まれる絶叫アトラクション状態に。
「こういうスリルを楽しむのが楽しいんですよー!!」
などと両手を放してぶつかりながら流されていくアスカだが、プールに落っこちる可能性があるからよい子はマネしないようにね!
「……あれ?なんだかぐるぐるしてるような……」
と、ここで急にフロートの動きが変わって、アスカが警戒してついに持ち手を掴む。ゆっくりと渦を巻いていた軌道は、だんだん小さく、速く……。
「なんだか、嫌な予感が……」
ボシュツ!
「きゃー!?」
二メートルほど真上に吹き飛んで、着水と同時にまたピンボールが始まり、一瞬固まってから、遅れて水しぶきを被り、弾けたように笑いだす彼女を見送って、ミカエルは水底を見る。
「なるほど、あちこちに水を吸い込んで噴き上げる機能が……双葉はどこ行った?」
隣を流れていたはずの、双葉がいない。
「しーしょー……」
ぐるぐるしてた。めっちゃぐるぐるしてた。気づいた時にはカエルさんが吹き飛ばされないよう浮き輪にしがみついており、噴き上げられる二秒前。
バシュッ!
「あーれー……」
あぁっと!双葉のスレンダーボディ(直喩)が浮き輪からすっぽ抜けて頭からプールに向けて落下中!この窮地にカエルさんが浮き輪をシューッ!双葉のお腹にジャキーン☆
「あのカエルさん助けてくれたのは嬉しいけど、このままだと僕上下さかさ」
ダッパーン!
「……起こしてやれ」
上半身をプールに沈めて、おしりを突き上げる形で流されていく双葉を、カエルさんが「しゃーねーなぁ」って顔でひっくり返してやるのだった。さて、ここでトップ争いの二人を見てみよう。
「くっ、速い……ていうかずるくない!?」
「過去の失敗から学んだといってください」
全力で泳ぐニーグラートと並走して飛行するアイ。トップ争いを制したのは……。
「海だー!海が見えてきたぞー!!」
「「ちょっと?!」」
水面を飛び跳ねるように泳ぐ神影である。
「え、ちょ、何あれ?」
「どどどどういうことですか!?」
思わぬ伏兵に二人とも度肝を抜かれたところで、神影は振り返ってニシシと笑い。
「ボクはもともと蛇神と龍神を祭る神社の巫女さんだからね。水場はほぉむぐらうんど?ってやつなのさ!」
どっちも水に関してなんやかんやあるアレだからか、はたまた単に滝と川に囲まれた水の里的な何かの出身故か、人外級の速度で抜き去っていく。
「むむむー……一番箸は渡さないんだからー!」
真っ先に食事にありつきたいあまり、謎の造語を生み出すニーグラートが思いっきり水をかき、前に出た瞬間、グッと水に引き込まれて、下からの水圧に打ち上げられた!
「うわー!?」
「「……」」
それは、ほんの一瞬だった。打ち上げられたニーグラートの体を、浮き輪が駆け上がるも、途中の『山』にぶつかり引き留められた、その刹那。アイと神影の目から光が消えた。
「なんでしょう、つい最近もお友達とショッピングしてたら同じようなことがあったような……」
「いや、いいんだ、ないほうが和服が綺麗に着られるし……」
それぞれ、己に言い聞かせて、見えたのはラストのスライダー。その少し手前に、ひときわ大きな渦が描かれる。
「あれが噴水ですね!」
「あ、ずるい!」
本来であれば、水で吹き飛ばされて乗るところだが、そもそも水面上を飛行した風圧で水をまき上げて、その飛沫で涼を得ていたアイには関係ない。
「ここで空を飛べる利点が活きましたね!お先に失礼します♪」
タイミングを無視してスライダーに飛び乗ったアイは両足をやや広げて腰を落とし、滞空したまま姿勢制御。あとはスライダーの道なりに従って海に飛び込むだけ……なのだが。
「よーし、このまま海に飛び込めば……って、あれ?」
速度が出ない。高度もじわじわ下がって、なんだかバランスもとりづらいような……?
「まさか……」
眼前に電磁パネルを展開すると。
「オーバーヒートしてますー!?しかもシステムシャットダウンまであと五びょ……四秒!?待って待って、せめて心の準備を……」
「よし、追い付いた!」
「ちょっと待ってくださいー!?」
アイの緊急事態を知らない神影が追い付いてしまい、電子音が響いてアイは落下。しかも軽鎧とはいえ立派な装甲。重量の関係で水で流しきれずその場で停止して。
「ななな、なんで止まるのさー!?」
ごっちん☆
「あうぅ、すみません……」
アイの後頭部に額を打ち付けた神影も強制停止、からの。
「私のご飯は渡さないんだよー!!」
「「お願いだから止まってぇえええ!?」」
二人の悲鳴空しく、むにっ。
「ちょ、海まで行けないとご飯食べられないんだよー!?」
「「……」」
涙目のニーグラートに対して、神影とアイは背中の感触に感情を失った。でもまだ後続がいるんですよねー。
「ラストのスライダーはうつ伏せで頭から行くのが超!エキサイティング!らしいと聞いていたが、なるほど」
直立不動の恰好で頭から突っ込んでくる、地鉛弾と化した要さんですね。
「「「ちょ、ちょっとすとーっぷ
!?」」」
「む?」
緊急事態と察した要はウミウシを足場にジャンプ、体を丸めて三人の頭上を回転しながら通過して、再び頭からシャーッ。そして彼の置き土産が、ぬちょぉ。
「ぴゃっ!?冷たいんだけどコレ!?」
ニーグラートは犠牲になったのだ。
「あ、でもちょっとずつ滑っているような気が……」
「ウミウシが押してくれてるみたいだね。これである程度勢いがつけば……」
などと三人が安堵したころ、外では。
「すごい勢いじゃのー……」
打ちあがる猟兵達を前にラブリがおろおろする傍ら、ノインは乗っていた電柱フロートを投擲して。
「大丈夫ですヨ。ハプニングでもない限り、存分に楽しめるようになっているはずですカラ」
スマイリーサインを残して、噴き上がる水に乗って跳躍。電柱に飛び乗ると腰を落として、両手を腰裏に当てて。
「ピュッ!」
奇声を残してスライダーの中へ……さて、事件現場に視点を戻すか。
「ゆっくりですが、これならいけますね……!」
「ていうか、アイちゃんが転がってくれれば万事解決じゃない?」
「嫌ですよ怖いじゃないですかー!」
「……あのさ、今更なんだけど」
ふと、神影があることに気づく。
「僕たちがこうなってるってこと、後ろの人たち気づいてないんじゃ……」
「「あっ」」
かーらーの。
「おや、お詰まりのようですネ。丸太のお届けですヨ!」
「「「やっぱりー
!?」」」
電柱がウミウシにヒット!ウミウシからニーグラートが射出!ニーグラートに突き飛ばされて神影とアイがもみくちゃになりながらゴロゴロ……。
「いーやー!?」
「く、こうなったら仕方ない……最後の手段だ!」
見えてきたのは青空と青い海。二つの同じ色彩を前に、神影の笑顔にアイは希望を見出すが。
「君一人で飛んでくれ」
突きつけられたのは、絶望だった。
「え、どういう意味で……」
「おりゃー!!」
装甲を纏っている分重量のあるアイだが、神影は神影でぶっ飛んだ怪力の持ち主。寝転がったまま、背負い投げの要領でアイを投げ捨てて、自分は足から海へどっぽーん!
「へ、へるぷー!」
少し離れて沈んだアイは海の藻屑となったのだ……。
「いやー!沈んじゃいますー!?」
ごぼぼ……沈みゆくアイを、要が引っ張り上げて。
「ここ、足つくぞ?」
「……」
立たされたアイは装甲以上に真っ赤に染まり、自ら海の底へと帰っていった。
「ふふ、やっぱりここが一番の目玉みたいね!!」
さーて未だスライダーを滑っているのはアスカさん。ここにきて大型のフロートが絶叫マシンと化した。具体的には、大きすぎて壁を駆け上がってしまい、スライダーの中をグルングルン螺旋を描いて滑っていく。聞こえてくる先に行った猟兵達の声から、どんなフィニッシュなのかと期待していると。
「あっ、双葉さ……」
「えっ」
普通に座って滑っていた双葉に追い付いてしまい、衝突!フロートと浮き輪がぶつかっただけだからお互いに怪我はないが、双葉が急加速して吹き飛ばされていく……!
「あ、あれはあれで楽しそう……ゴクリ」
アスカって、実は絶叫系が好きなのではなかろうか……で、吹き飛ばされた双葉の方は。
「し、ししょー!?」
「ん?」
双葉の末路を事前に聞かされていたから、受け止めてやろうと先に滑っていたミカエルが、後方から吹っ飛んできた双葉をひょいと『回避』。
「なんで避けるんですかぁあああぁぁぁ……」
「すまん、反射的に……」
よし、カメラ的には双葉を追っかけるのが楽しい、そんな気がするというわけでフィニッシュ地点は……。
「アイキャンフライ……」
ノインが電柱に乗ったまま、風に乗っていた。そして空中を滑っていた電柱はやがて運動エネルギーを失い、少しずつ高度を落とし……。
「あ、フィーバーさんごめんなさい!?」
「エッ」
凄まじい速度で突っ込んできた双葉で空中で衝突、そして大気に駆け巡る稲妻……ドボン。二人が海中に消えて数秒後。
ドッバーン!!
「ひゃっはー!」
何があったか知らないアスカはスライダーから飛び出すなり、両手を放していたものだからタイヤから放り出されて、天高く上る水柱に飛び込んでしまい、更なる高みへ。
「あ、綺麗……」
打ち上げられて空中で仰向けになった彼女が見たものは、水飛沫が太陽を受けて輝く虹。刹那の邂逅の後、重力に引かれて頭から海へどっぽーん!
「ぷはっ!」
水中で丸まって体勢を整え、すぐに海面に顔を出せばそばにタイヤが落ちてくる。頭を振って、水を落として顔をぬぐえば。
「超楽しい、笑いが止まらない……!」
こちらには満足していただけたようだが?
「……何やってんだ双葉?」
「師匠、魚がいっぱーい。皆が食べられる分だけ取っていきましょう?狼煙に渡せばいい感じにあれこれしてくれると思いますから」
ひび割れて何も写さなくなったまま、ぷかぁ……するノインの上に爆発に巻き込まれて気絶した魚を並べている双葉を見て、ミカエルは頭を抱えたとかなんとか。
「みんな遅い!」
猟兵達が浜辺に上がると、割と後に滑ってきたはずのニーグラートと、テティスが既に食事していた。
「あと二分遅かったら私が全部食べちゃってたんだからね!」
ずぞー、大型の鉄板から直接焼きそばを食べているニーグラートだが、どう見ても彼女の後ろには数十人分が食べつくした後がある。
「この焼きそば美味しいですね!やはり海で食べるから潮焼きそばということなんでしょうか!?」
テティスはテティスで、ドヤ顔の食レポをかますが、塩の字が違うし食べているのはソース焼きそばというカオス。これには給仕を務めるラブリも苦笑しか出ない。
「本人が楽しそうなら……いいのか、のう?」
「気にしたら負けだろう」
ずぞずぞ、焼きそばをすすりながら、要は遠い目。いつあの音響兵器が歌いだすか、気が気でないのだろう。
「あ、トウモロコシがありますネ。これ焼きましょウ」
「グリルに火を起こすのじゃー」
ラブリがグリルに炭を入れると、何故か勝手に火が灯る。ゆっくりと赤熱していくそれを眺めて、ノインが拍手。
「ラブリサン、器用ですネ」
「余、何もしてないんじゃよ……?」
「では、狼煙サンの謎技術でしょうカ……?」
ノインの画面に?が浮かび、双葉がきょろきょろ。
「その狼煙はどこ行ったんですか?」
「店主殿なら……」
ラブリが示した先には、スイカ。その更に向こうで。
「おいコラふざけんなよナマクラァ!?」
「何を言っているのか分かりませんね?私はスイカを狙っているのです、ほら目隠しだってしてるじゃありませんか」
後ろも見ずにジグザグバックステップする狼煙と、その後を正確に追従しながら袈裟切を繰り出す桜花が鬼ごっこしてた。
「……桜花さん、目隠ししてるんですよね?その割には足さばきが尋常じゃなく正確なんですけど……」
普通、視覚を封じられると人はまっすぐ動くことすらできないものだが、桜花は直線どころか、直角に曲がってすら見せる。きっと、細かいことを気にしたら負けだ、そんな気がして双葉は思考を放棄した。
「あの、さすがに店長が危ないんじゃ……」
アイが止めに入ろうとして。
「トウモロコシ焼けましたヨ」
「焼きとうもろこし!」
ノインの声にくるっとIターン。
「はてさて、アイサンには何味が当たるでしょうカ?」
「い、色が違います
……!?」
ノインがジャグリングする焼きもろこしは、赤、緑、白、茶、黒の五色。ぐるぐる回しているようで、さりげなく一本抜きとれるように投げているノインへ、アイが狙いを定めて。
「ではこれで!」
意を決してつかんだのは黒。口にすれば……。
「ソースかと思ったら焦がし醤油が香ばしいです……!」
「だめですよ白髪ちゃん!」
「白髪ちゃん!?」
テティスからつけられたあだ名に、アイが硬直していると自称アイドルは緑の焼きもろこしを取って。
「食レポは見ている人に味が伝わらないと意味がないんです!では、こちらの青のりがかかった焼きとうもろこしをいただきましょう!」
しゃく、もぐもぐ。
「ちょっと変わった青のりですね!滑らかな舌触りの中にさわやかな味がして、まさに青のりです!」
「青のり……?」
アイは訝しんだ。青のりなのに、滑らかとはこれいかに?そもそも、青のりは薬味的な何かであるが、爽やかというより、香りを楽しむきらいがある。
「もー、そんなに欲しいんですか?じゃあ特別に一口あげますね!」
「え、結構で……んぐっ!?」
その正体を見極めようと見つめていたら、欲しがっていると勘違いされて無理やり口に突っ込まれた。そのお味は……。
「―――!?」
声ならぬ悲鳴を上げて水を求めて荒れ狂うアイへ、ラブリが大慌てでコーラを渡す。芸人枠でもないのにコーラ瓶一気飲みを成功させたアイが荒い呼吸をしていると。
「ワサビ味も行けるかと思ったのですガ……厳しかったですカネ?」
「青のりまったく関係ないじゃないですかー!!」
ノインからの答え合わせに泣きそうになったとかなんとか。
「そんなに叫んで……何かありましたか?」
とっ捕まえた狼煙の頭をスイカに叩きつけ、カチ割ってきた桜花が戻ってくると、双葉が大根をぶんぶん。
「姉御、僕もスイカ割やりたいんですけど、まだありますか?」
「確かそこに二つか三つ……まずは目隠ししましょうか」
と、桜花が双葉の目元に桜模様の手ぬぐいを縛ると、スイカをセット。
「待て。スイカは角材とかで割れ、何故そこで大根が出てくるんだ」
「大丈夫ですキチンとスイカを割りますから。僕の野生の勘も捨てたもんじゃありません。意地でも師匠は殴りません安心してくださいね」
きゅぴん☆直立する美しきアホ毛に、ミカエルはやれやれ、首を振って。
「お前にぶん殴られるほど落ちぶれちゃねぇよ……万が一弟子の野生の勘から外れた被害者が出たらご愁傷さまだ……」
双葉が大根を砂浜に突き立てて、額を当ててぐるぐるしている一方で、アスカとラブリは違うものをぐるぐるしていた。
「も、もう少し……」
「これ以上は限界なのじゃ……!」
「いやでもほら、この辺りで、こう、こう……!」
ぐる、ぐる、ちょん。
「できたのじゃ……」
ほっと胸を撫でおろしたラブリの手には、サクサクパリパリのデニッシュクロワッサンを半分にカットしたコーンの上に乗った、ソフトクリームが……。
「これがクロワッサンアイス……」
受け取ってサクサク生地に染み込むバニラを堪能するアスカの横で、ノインが油の入った大鍋からコロネを揚げて。
「お熱いですカラ、お気をつけテ」
「任せるのじゃ!」
厚手の手袋で受け取って、チョコとバニラのミックスをぐるぐる。
「こっちが揚げパンアイスじゃな!」
「えへへ、実はこっちの方がお店で相談してた時から気になってまして……」
アスカが受け取った時点でアイスは溶けかけており、バニラの香りとチョコの濃厚な甘みが、パンに染み込んでいく……。かじりつけば、サクサクふわふわの揚げパンから、ひんやりトロリと、二つのアイスが蕩けだすスイーツ。
「こういう夏もいいですね……」
アスカの表情も蕩けたところで、ニーグラートが待っていたのが。
「右!右!」
「双葉さん行き過ぎです、左ですよ」
双葉によるスイカ割。すでに皮ごと一玉食べてるのはご愛敬。
「真逆の意見が出るってことは、この辺り……僕の勘が囁いている、ここだって。スイカの匂いもするし!!」
双葉が思いっきり大根を振り下ろした、直後。
「あれ、双葉ちゃん何し……」
ドゴォン!!
「……スイカが狼煙の声でしゃべった?」
双葉が手拭いを解くと、そこには大根の爆風で皮が吹き飛んで上半分が真っ赤になってるスイカと、首から上が砂浜に埋没した狼煙。
「……なんで?」
双葉が感じたスイカの匂いは、さっき桜花が狼煙を叩きつけて割った時のものだった。
「桜花さん、あれ狙ったの?」
「まさか。双葉さんならきっと回避してくれると、あえて店長の横に設置しただけですよ」
たこ焼きを頬張りながら、撃沈した狼煙の周りで慌てふためく双葉を眺める神影に、桜花はただ、微笑むだけだった。
「イカ焼き焼けましたヨー」
「わーい!」
「いただきまーす!!」
ニーグラートと神影が同時に動く。まさかの、神影が大食い枠、だと?二人が食べている間に、ノインは鉄板に食材を置き、アタッシュケースでバァン!じぅうう……。
「たこせん?海で食べるって、なんだか贅沢な気分だね」
焼きあがったものを神影がかじると、ノインが首を傾げた。
「イイエ、なにか焼きですネ」
「なにか?イカじゃなくて?」
パリパリ、言われてみれば、エビともカニともつかぬ不思議な味で、よく見たら足が十三本……。
「美味しければいいじゃない!おかわり!!」
「そ、そうだよね、うん」
ニーグラートの食欲に便乗して、神影は考えない事にした。
「ふむ、ここはいろんなシーフードがとれるんだな」
なにか焼きで焼きそばを挟んで食べていた要が、ピコッと電球を浮かべて。
「夕飯はシーフードカレーにしようぜ。何故かプールの後って、やたら食いたくなるんだ」
「それなら、もう少し食材を集めなくてはのぅ」
ニーグラートと神影にほぼ食い尽くされた食材を眺めてラブリが唸ると、アスカがタイヤをころころ。
「その辺は店長に任せて、もう一回行きましょう?めいっぱい遊ばないと損です!」
かくして、猟兵達の休日は日が暮れるまで続く……。
「で、みんな遊びに行ったのか」
「らしいですよ」
取り残された狼煙が釣り糸を垂らし、隣で泳げない事を理由に残った桜花が釣果を見つめる。
「お子様は元気だねぇ……」
「何ですか年寄りみたいなことを……あ、このお刺身美味しいです」
「夕飯用の魚を勝手に食うんじゃねぇ!?」
大成功
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