迷宮災厄戦⑪〜真実の鏡と襲撃者
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「アリスラビリンスでの戦いも順調に進んでおるようじゃの」
ガングラン・ガーフィールド(ドワーフのパラディン・f00859)はそう一言告げてから、敢えて厳しい表情で続けた。
「しかし、まだ戦況は序盤じゃ。これからもどんどん難しい状況が増えていく。ま、お主らなら言うまでもないじゃろうが、気を引き締めて挑む必要があるじゃろう」
今回、オウガ・オリジンに戯れに殺された、かつての忠臣「鏡の女王」の怨念が籠もった国――真実を告げる鏡の間だ。厄介なのは、この国の至るところに存在しているという真実の鏡の存在だ。
「この国の中限定じゃが、真実の鏡はこの国の中で起きている状況に何でも答えてくれるのじゃ。ようするに、敵のオウガはこの真実の鏡の力を使ってこちらに襲いかかってくるじゃろう」
こちらの正確な位置を把握されるだけでも、敵が強力なオウガであるためにかなり厄介になる。加えて、向こうに地の利はあるのだ。奇襲を受け、こちらが一方的に瓦解する可能性も低くはない。
「じゃが、デメリットだけではない。何せ、この真実の鏡はこちらの質問にも答えてくれるからの」
真実の鏡は敵の位置や死角、ユーベルコードの弱点など、この国の内部にあるものの情報ならなんでも答えてくる。真実の鏡に対抗するためにこちらも利用する――それだけで、大きく戦況は動かせるだろう。
「お主たちに相手をしてほしいのは、牛頭の屠殺者というオウガじゃ」
アリスを捕らえ、屠殺・解体する役割を担うオウガだ。残虐にして残忍、奇襲を受ければかなり面倒な相手でもある。
「目には目を、歯には歯を、じゃ。かなり特殊な状況じゃが、上手く立ち回ればこちらが有利に動けるはずじゃ。よろしく頼んだぞ」
波多野志郎
あまりに猟兵個人のセンシティブな質問は避けてくれる真実の鏡。昨今の事情にも通じてらっしゃる……あ、どうも波多野志郎です。
今回は、真実を告げる鏡の間で鏡を利用して襲いかかってくる牛頭の屠殺者と戦っていただきます。
プレイングボーナスは、『鏡に有効な質問をする』というものになります。この有効の度合いによって、戦況は大きく変わるでしょう。皆様のアイデアをお待ち致しております。
それでは呪われた鏡の地でお会いしましょう。
第1章 ボス戦
『牛頭の屠殺者』
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POW : 心を喰らう
【アリスが抱えた恐怖や苦痛】の感情を爆発させる事により、感情の強さに比例して、自身の身体サイズと戦闘能力が増大する。
SPD : 喰い意地の張った剣
【高速回転する異形の刃】で攻撃する。また、攻撃が命中した敵の【身体をぐちゃぐちゃの挽肉にする事に愉悦】を覚え、同じ敵に攻撃する際の命中力と威力を増強する。
WIZ : 屠殺迷宮
戦場全体に、【暗く死角が多い内部構造と悪意に満ちた罠】で出来た迷路を作り出す。迷路はかなりの硬度を持ち、出口はひとつしかない。
イラスト:あなQ
👑11
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「メアリー・ベスレム」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ラブリー・ラビットクロー
マザー知ってる?
鏡よ鏡よ鏡さんってやつなんな
らぶも本で読んだ事あるぞ
【グリム童話のお妃様のセリフですね】
そーだっけ?
【そーですよ】
まーいーや
それじゃーさっそく鏡さんに聞いてみるなん
ねえ鏡さん
この迷路はどーやって無事に出たらいーのん?
ねえねえ鏡さん
罠とかあったら教えてなん
ねえねえねえ鏡さん
敵はどこにいるんだ?
ねえねえねえねえ鏡さん
敵の弱点はなあに?
鏡さん凄いのん
マザーに聞いたらきっと
よくわかりません(マザーの声色を真似て)
って言うぞ
な?マザー
【そうですね?】
それじゃー鏡さんの言うとおり頑張るのん!
【頑張りましょう!】
チェーンソーをメインにスピードを活かして戦うのん
ピンチの時はUCを使っちゃえ
故無・屍
……ッチ、面倒臭ェ。
この鏡のせいで言葉さえ使えりゃどんな脳筋でも奇襲が可能になるってか。
鏡への質問
野郎は鏡をいつ使った?
今はどこへ向かおうとしている?
次に野郎が到達する鏡までの距離と時間は?
野郎の居る場所に後ろから回り込むまでの最短ルートは?
質問によってこちらから奇襲が出来る状況が整ったら
追跡と忍足で向かいつつ不意打ちで暗殺攻撃、相手の使うUCに合わせてこちらもUCを発動、相手UCの破壊ないし弱体化を狙う。
その後の戦闘は怪力、限界突破、捨て身の一撃、2回攻撃、カウンター、早業などの技能を駆使して正面戦闘に持ち込む。
…今からは手前ェが解体される対象だ。
逃げられると思うんじゃねェぞ。
シャルロット・クリスティア
そうですね……では、この国の中で『障害物が多い場所』を。
そちらで迎撃しましょう。
敵もこちらを把握しているのなら、向こうから向かってきてくれるはずです。
ならば、自分自身を、相手を誘い出すための餌とすればいい。
……あぁそれと、敵の脆そうな部位を。
いくら巨大化するにしても、その位置くらいは共通でしょうしね。
……後は、単純です。
釣り出したら、その脆い部位目掛けて跳弾射撃を叩き込めばいい。
地形情報は把握している。的は向こうから来てくれる。
これだけの情報が揃っているのなら、狙った場所に弾丸を送り出すのは容易いことです。
餌の位置を把握するのは結構ですが……毒餌だとは教わらなかったようですね。
ネクロ・リビングデッド
怖ーいオウガだ! 屠殺って食べる準備だよね?
じゃあ今度はキミが食べられる番だ! 美味しいといいな!
うーん、弱点とかはみんなが聞いてくれそう!
だから死体ちゃんは鏡にこう聞くよ!
「鏡よ鏡よ鏡さん。敵のオウガが知らない落とし穴や、トラップがある場所を教えて? あ、入り辛い場所でもいいよ!」
まあ簡単に言えばそういう所で待ち伏せして、奇襲を防げたらなって思ったのでした!
駄目だったら甘んじて肉壁になるよ! 任せて!
『怪力』で攻撃を受け止めたり、『限界突破』してでもみんなを守るよ!
戦闘になったらオウガとかその辺の草とか食べて、喰らわば幸福!
ナイフとフォークで切りつけて、『大食い』するぞ!
いただきまーす!
ゾシエ・バシュカ
目の前のことを着実にこなしていきましょう。
敵はひとり。数と地の利をとればなんとかなるはずです。
鏡に尋ねるのは敵味方の位置。これらは絶えず把握したい。
敵に遭遇しても味方の助力が望めないなら逃げます。一対一で戦いたい相手ではないので。
敵が通れない狭い道を鏡に尋ねて利用します。
迷宮の罠は暗視、ダッシュ、ジャンプ、念動力を駆使して避ける。
戦闘は味方がある程度揃ってから。
蛇の剣(フランベルジュ状の黒剣)を構えて間合いをとりつつ戦います。
激痛耐性と生命力吸収頼みで多少のダメージは無視。
暗がりの多い迷路なら影剣も大いに役立つはず。
【邪視】の効果が現れたら、剣に血を与えて同調・変形。隙を突いて畳みかけます。
御剣・刀也
真実を告げる鏡ね
俺はそんなもんに興味はない
何千、何万と繰り返した基礎、そして闘い
そこから得たものを俺は信じる
聞いただけで答えてくれる。確かに強い力だろう
が、そんなもんより、俺は磨き上げた俺の力を信じる
第六感で敵の気配を探りつつ、自分の戦い方を知って攻撃してくるのならば、勇気で相手に防がれることなど恐れず、捨て身の一撃を持ってその防御事相手を斬り捨てる
心を喰らうで体のサイズと戦闘能力が向上しても、特に恐れることなく、第六感、見切り、残像で避け、カウンターで斬り捨てる
「何でも聞けば答えてくれる。便利な鏡だな。が、そんなもので揺らぐようなぬるい鍛え方はしてねぇし、闘いもしてねぇ。お前らじゃ役不足だ¥
秋津洲・瑞穂
「いえわたし、アリスではないので」
情報があるに越したことはないけど、うーん。
ま、対等にさせてもらいましょう。優位は要らない。
「牛頭の屠殺者はどこ?」
居場所さえ判れば、野生の勘10/聞き耳10/暗視10も
含めて奇襲も避けられる。
さて、さっさと終わらせて農業支援に戻らないと。
「新当流太刀術、秋津洲瑞穂。参ります」
ダッシュ20/ジャンプ20で駆け、
鎧無視攻撃40/2回攻撃40の剣刃一閃で斬る。
相手の攻撃は野生の勘10/見切り20/残像40で回避。
継戦能力10もあるから止まらないわよ。
隙があればでいいけど敵の眼前で、残像を残して空中へ。
直上の死角から垂直降下の串刺し20アタック。
「秋津洲流、狩三狐!」
●The Mirror world.
その国は、無数の鏡があるだけの世界だった。
「……ッチ、面倒臭ェ。この鏡のせいで言葉さえ使えりゃどんな脳筋でも奇襲が可能になるってか」
一つの鏡を見上げ、故無・屍(ロスト・エクウェス・f29031)は吐き捨てる。
『はい、その通りです』
「……ああ、そうかい」
求めていない事まで返してくれる、小さな親切余計なお世話の典型例だ。屍は、周囲を改めて見回した。
(「こんな代物が、どこにでもあるってか」)
面倒極まりェ、と屍は改めて問いかける。
「野郎は鏡をいつ使った?」
『今、現在進行系で使用しています』
「今はどこへ向かおうとしている?」
『鏡の指示に従って、自分を狙う者の場所へ向かっています』
「次に野郎が到達する鏡までの距離と時間は?」
『0秒です』
それは、これだけありァな、と屍はため息をこぼす。なるほど、向こうも馬鹿ではないらしい。
(「自分が質問すれば、鏡で特定される。だから、『短い間隔で質問を繰り返して』情報の確定をズラしてやがる」)
ようするに、後出しジャンケンの法則だ。先に出した相手の手が『確定』してから質問すれば、ジャンケンに必ず勝てるという『インチキ』だ。これは逆を言うと、手を決めなければ決して負けが『確定』しない、という防御法にも繋がるのだ。
シャルロット・クリスティア(彷徨える弾の行方・f00330)は屍と鏡のやり取りに考え込み、口を開いた。
「そうですね……では、この国の中で『障害物が多い場所』を」
『――六ケ所あります。もっとも近いのはここから北東へ直進。徒歩で誤差三分内、十五分圏内です』
「そちらで迎撃しましょう。敵もこちらを把握しているのなら、向こうから向かってきてくれるはずです。ならば、自分自身を、相手を誘い出すための餌とすればいい」
シャルロットのこの判断は、無数ある中の一つの正解だ。相手は、いつかは必ず自分達の居場所に到達する――ならば、その戦場だけでも自分達で決めるという方法だ。
「マザー知ってる? 鏡よ鏡よ鏡さんってやつなんな。らぶも本で読んだ事あるぞ」
【グリム童話のお妃様のセリフですね】
ラブリー・ラビットクロー(とオフライン非通信端末【ビッグマザー】・f26591)のマメ知識の披露に、スマートフォンのビッグマザーは答えた。その答えに、ラブリーは小首を傾げる。
「そーだっけ?」
【そーですよ】
そうである。ちなみに、出典は白雪姫だ。
「まーいーや。それじゃーさっそく鏡さんに聞いてみるなん」
コホン、と咳払い。ラブリーは問いを放つ。
「ねえ鏡さん。この迷路はどーやって無事に出たらいーのん?」
『七十八通りのルートがあります。ですが、現状オウガ牛頭の屠殺者が行動中なため、完全な無事は確保されません』
「ねえねえ鏡さん。罠とかあったら教えてなん」
『ニ百八十四箇所あります。最も近いのは、二メートル先の落とし穴です』
ラブリーは、鏡の欠片を投げてみた。ばこん! と落とし穴が作動した。
「ねえねえねえ鏡さん。敵はどこにいるんだ?」
『鏡の指示に従い、移動中です。確定していません』
「ねえねえねえねえ鏡さん、敵の弱点はなあに?」
『顎下、喉仏位置の喉となります。頭部の形状上、もっとも死角になります』
立て板に水、というようにスラスラと答える鏡に、ラブリーはビッグマザーを見て言った。
「鏡さん凄いのん。マザーに聞いたらきっと、よくわかりませんって言うぞ」
【そうですね?】
マザーの声を真似て言うラブリーにビッグマザーは正直に答えるのみだ。ラブリーはビッグマザーを手に元気に言った。
「それじゃー鏡さんの言うとおり頑張るのん!」
【頑張りましょう!】
●鏡よ、鏡。
シャルロットの決めた戦場へ、到着した。その間も、ネクロ・リビングデッド(死体ちゃん・f29050)は鏡へと問いかけていた。
「鏡よ鏡よ鏡さん。敵のオウガが知らない落とし穴や、トラップがある場所を教えて? あ、入り辛い場所でもいいよ!」
『この場でもっとも入り辛い場所はここより西、四メートル。鏡の折り重なった場所となります』
「お、あそこだね」
ネクロは見る。人の背丈よりも大きい鏡、それが倒れて出来た洞穴がそこにはあった。
『特に牛頭の屠殺者の心を食らうにとって、閉所は鬼門です。巨大化中の身動きが制限されます』
「大きくなるのも大変なんだね。あ、死体ちゃんって呼んでね?」
『承知しました、死体ちゃん』
そんなネクロと鏡のやり取りを見て、ゾシエ・バシュカ(蛇の魔女・f07825)も手近な鏡に視線を向ける。
「敵が通れない狭い道はあるでしょうか?」
『三十八箇所、巨大化後は九百六十五箇所あります。もっとも近いのはここより西三メートル。鏡の折り重なった場所と南東の鏡の密集地帯です』
ゾシエは、その返答に鏡の折り重なった場所と密集地帯を見た。なるほど、入り辛い、と入れないは違うという事ですか、とゾシエは納得する。質問も考えなくてはいけないのだろう。
「野郎の居る場所に後ろから回り込むまでの最短ルートは?」
屍が、改めてそう問いかけた瞬間だ。
『――確定しました。これより十三秒後、上空より降ってきます。ですので――』
鏡の答えの意味を察知し、屍が動いた。
「――――!?」
ギィン! と鈍い金属音と、地面が砕ける音がした。上空から降り立った牛頭の屠殺者、その肉断ち包丁が、御剣・刀也(真紅の荒獅子・f00225)が抜きかけの獅子吼で受け止めたのだ。
「ハハ! すごいね! 鏡に質問していないのは誰かって聞いたら、お兄さんだって聞いたのに!」
牛頭の屠殺者は、野太い声で子供のように笑う。それに刀也はつまらなそうに視線を向けた。
「真実を告げる鏡ね。俺はそんなもんに興味はない。何千、何万と繰り返した基礎、そして闘い、そこから得たものを俺は信じる」
迷いのない言葉、視線。刀也は静かに告げた。
「聞いただけで答えてくれる。確かに強い力だろうが、そんなもんより、俺は磨き上げた俺の力を信じる」
「あははははははは! 格好いい! でも――」
『背後から奇襲が――』
屍が、既に動いていた。アビス・チェルナムの斬撃に、牛頭は歪曲した剣を重ね――ようとして、大きく後退した。暗黒剣・罪喰い、己の寿命を代償とした事象破壊エネルギーを籠めたいかなる効果によっても止められない剣閃が、牛頭の喰い意地の張った剣を止めたのだ。
「なるほど、クソ面倒な使い方してやがる」
「危険があったら、全部の鏡を使って教えてくれる? って聞いてるからね!」
ズシャ! と着地し、牛頭の屠殺者は身構える。鏡からの囁きが、いくつもの重なる。それに耳だけを傾けながら、笑った。
「いいなぁ。柔らかくして丸めてハンバーグとか、美味しくなりそう!」
「いえわたし、アリスではないので」
御免被ります、と秋津洲・瑞穂(狐の巫女・f06230)は神獣刀を構える。そして、まっすぐに言ってのけた。
「新当流太刀術、秋津洲瑞穂。参ります」
「そんなに農作業に早く戻りたいの?」
『そのようです』
「当然です」
瑞穂は鏡と共に即答して、牛頭の屠殺者へと駆け出した。
●真実と現実の違い
牛頭の屠殺者が、鏡の指示に従い動く。その動きは正確で、文字通り背中にも目がついているような状態だった。
「怖ーいオウガだ! 屠殺って食べる準備だよね? じゃあ今度はキミが食べられる番だ! 美味しいといいな!」
『死体ちゃんには美味しいです』
「そっか!」
鏡からの太鼓判をもらって、ネクロが駆ける。ナイフとフォークを手に襲いかかるネクロに、牛頭は豪快な振り下ろしの一撃で迎撃した。
「おっと――」
ネクロの頭に、歪んだ刃が振り下ろされる。だが、振り切る前に牛頭はのけぞって後方へ跳んだ。
「あなたは既に檻の中……正面から飛んでいくばかりが、弾ではありませんよ」
「あははは! 鏡に教えてもらってないとマズかったよ!?」
シャルロットの災厄の檻(パンドラ・ジェイル)の跳弾が、顎下から穿とうとしていたのだ。シャルロットにとって、かわされても痛くも痒くもない――既に、敵は銃弾の檻の中にいるのだから。
「うわっはー、こわーい!」
【嘘ですね】
「なのねん」
ビッグマザーの指摘を肯定し、ラブリーはラビットファングアンドハッピーチェーンソーエッジのソーチェーンを唸らせながら迫る。速度勝負のラブリーに、牛頭の屠殺者は肉断ち包丁を、鏡の指示に合わせて振るった。
ギ、ギギギギギギギギギギギギギギギギギギギン! と火花を散らしながら、互いの武器が鎬を削る!
「――――」
そこへ、蛇の剣〈サーペンタイン〉を振りかぶったゾシエが襲いかかる。それを牛頭の屠殺者は、寸前で身を引いてかいくぐった。
「忙しいなぁ! もう!」
いや、忙しいですんでいる方がおかしいのだ。これもすべて鏡の答えによる結果だった。この国限定のインチキを最大限に活かした、そして身体能力に優れたオウガだからこその拮抗。
「なァるほどなァ。だが――」
「ああ、弱点も見えて来たな」
屍の至った答えに、鏡ではなく刀也が答えた。そして、瑞穂が神獣刀を手に告げた。
「どんなに正確な答えが返ってきても、対応しきれない連携なら無意味ですよね?」
「うっわーい、脳筋極まってるぞ―!?」
牛頭の屠殺者は口調こそふざけているものの、声色に余裕はない。まず、戦場を選択された――この点が大きい。鏡や瓦礫、障害物の多いここでは巨大化すれば対応しきれなくなる。この時点で、牛頭はユーベルコードの一つを封じられたのも同じなのだ。
「餌の位置を把握するのは結構ですが……毒餌だとは教わらなかったようですね」
『そのようです』
シャルロットの皮肉に、鏡が律儀に答えてくれた。シャルロットのマギテック・ショットガンの散弾が、跳弾していく。その散弾一つ一つが、牛頭の屠殺者を囲んでいき――そこへ刀也が飛び込んだ。
「おいおい!?」
跳弾の嵐へ、ためらう事なく――第六感で弾丸の隙間をくぐり抜け、刀也は獅子吼を薙ぎ払った。
「何でも聞けば答えてくれる。便利な鏡だな。が、そんなもので揺らぐようなぬるい鍛え方はしてねぇし、闘いもしてねぇ。お前らじゃ役不足だ」
ドォ! と牛頭の屠殺者が吹き飛ばされた。かろうじて肉断ち包丁で受け止めたものの、衝撃は殺しきれなかったのだ。地面を転がった牛頭の屠殺者は、ふと自分が転がり込んだ場所に気付いた。
「こ、こ……痛ッ!?」
「視られていますよ。わたしの、瞳に」
入り辛いと言われた、鏡と瓦礫の洞窟だ。そこに来る、鏡からの指示に従って待っていたゾシエの邪視(イーヴルアイ)が与える激痛に、牛頭は唸る。
「ああ、もう! 狭いなぁ!!」
「でしょうね」
そして、蛇の剣〈サーペンタイン〉の斬撃が牛頭の脇腹を切り裂いた。その一撃が引き金となり――ついに、牛頭の屠殺者が、キレた。
『ここでの巨大化は――』
「うるさい!!」
ゴォ! と瓦礫と鏡を吹き飛ばしながら、牛頭は巨大化する! しかし、その一瞬の溜め、瓦礫と鏡を吹き飛ばす時間は――致命的だった。
「秋津洲流、狩三狐!」
残像を残すほどの速度で跳躍した瑞穂が、神獣刀を巨大化した牛頭の頭上に突き立てたのだ。その痛みに、牛頭は激しく頭を振るう――そして、瑞穂は最大の弱点を指摘した。
「大きくなって、聞こえるの? 鏡の声」
そう、鏡が耳から遠すぎるのだ。これでは、鏡の答えは聞こえない!
「が、あああああああああああああああああああああああああああああ!!」
高速回転する異形の刃を、牛頭の屠殺者は振り下ろした。それに合わせて動いたのは、屍だ。
「……今からは手前ェが解体される対象だ。逃げられると思うんじゃねェぞ」
高速回転する異形の刃が、屍の暗黒剣・罪喰いの剣閃に止められる。それも承知の上だったのか、牛頭は逆の肉断ち包丁をふりかざした。
『死体ちゃん、おすすめは親指の付け根です。あそこが人体でもっとも動かすため、肉が柔らかいです』
「本当!? いただきまーす!」
鏡の豆知識に、喰らわば幸福(イート・イート・イート)のハイテンションで跳んだネクロが肉断ち包丁を握る手の、親指へと噛み付いた。その痛みに、肉断ち包丁が手から引っこ抜けて明後日の方向に飛んでいった。
「ボクは! 食べるのは好きだけど、食べられるのは嫌いなんだよ!」
【みんなそうなのでは?】
牛頭の屠殺者の叫びに、ビッグマザーは正論を吐く。それと同時、アルジャーノンエフェクトで自身を強化して跳んだラブリーが、ラビットファングアンドハッピーチェーンソーエッジを振り上げた。
「終わり―なのねん」
【終わりです】
ラブリーとビッグマザーの宣言通り、牛頭の屠殺者は喉の死角を大きく断ち切られる。ズン……! と巨大化したまま、牛頭の屠殺者はついに地面へと倒れ伏した……。
大成功
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