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迷宮災厄戦④〜大きな筋肉があるところ

#アリスラビリンス #戦争 #迷宮災厄戦

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●グリモアベースにて
「大事な仕事を頼みたい」
 集まった猟兵たちを前にして、プルート・アイスマインドは至極真剣な顔で机に両肘をついていた。
 机を何処から持ちこんだのかはわからない。
 しかし指を組んだ両手に顎を乗せ、あざとい女子みたいになってる姿からは『質問とか受け付けませんよ』という空気が滲み出ている。
「行ってもらいたいのは、ほら……あの……あれだ。あれ。もう聞いたことある人もいるかもしれないが、愉快な仲間が大きくなってきぐるみになる不思議の国があるだろう。あそこあそこ」
 乗りこむとパワーアップするやつ、と付け加えるプルート。
 説明があまりに雑だった。
 なんかもうロクでもない仕事を押し付けられる気がする、ってぐらい雑だった。
 ちなみにその不思議の国について、ここで改めて説明しときますね。
 その国では愉快な仲間たちの身長が2倍になり、背中にチャックがついてるとかいう夢も希望もないきぐるみになってしまうのです。愉快な仲間である限り猟兵であろうともその影響から逃れることはできません。
 そしてその『きぐるみ化した愉快な仲間』に背中のチャックから入ると、入りこんだ者の戦闘力が数倍にパワーアップするのです。そこは夢と希望がすごい。
 ちなみに、誰かが乗りこんでる間はダメージのすべてが中の人に通るんだぜ。
「その国でオウガが愉快な仲間に乗りこみ、好き放題やってるのでな。おまえたちに倒してもらいたいのだ。これはオウガ・オリジンや猟書家たちを打倒することにも繋がる! 頼んだぞ!」
 プルートが組んでいた手を離し、ぐっとガッツポーズしてくる。
 この仕事やりがいありますよアピールがすごい。意義があることを推しすぎてて逆に面倒ごとの匂いがプンプンである。
 その証拠にプルートさん、いろいろ質問されまいともうグリモア用意してる。
 転送準備完了とばかりにめっちゃかざしてる。
「レッツゴゥ!!」
 ぴかーっと光を放ち、猟兵たちの転送を始めるグリモア。
 なんか詐欺られた感がすごい。
 そう思いながら、しかし猟兵たちは諦念の表情で転移してくのだった。

●筋肉がいっぱい
 ところ変わって、アリスラビリンス。
 身長が倍化したきぐるみ愉快な仲間たちが練り歩く町に、絶叫が響き渡っていた。
「う、うわあああああああああーーーーっっっっ!!!!!」
「ふふふふっ、あなたの中に入らせてもらいますね♪」
 通りのど真ん中で、愛らしい愉快な仲間が、いかにも童話の女の子な格好をした金髪の少女につかまっていた。愉快な仲間はじたばた暴れるが背後を取られた状態で相手を止められるはずもなく、あえなくチャックはガバーッ。
 近くを歩いていた愉快な仲間たちは、慌てて集まってオウガに組みついた。
「やめろー! リトルミッキーに勝手に入るなー!」
「あなたがたの力で私を止めることはできませんわ!」
「くううっ……な、なんて力だ! 止められないよー!」
 4、5人の愉快な仲間が抑えこみにかかるが、チャックを開けられた愉快な仲間『リトルミッキー』に入ろうとするオウガは止まらない。
 それも、そのはずである。
「こいつの腕……丸太みたいに太い!?」
「肩回りもなんて迫力なんだ……!」
「腹筋なんてバキバキすぎて鋼みたいだよ……!」
「太腿どうなっとんねん」
 口々に驚きと称賛の声をあげる愉快な仲間たち。
 オウガの少女は、バッキバキの筋骨隆々ボディだった。ふわふわワンピースの下に着ているぴっちりボディスーツには内側の筋肉の隆起がありありと浮かび、逞しい四肢は愉快な仲間(身長2倍)に絡みつかれようともビクともしない。
 圧倒的、POWER。
『うわあーーーっ!?』
「さあ、これで私もパワーアップですわ♪」
 制止する者たちを薙ぎ払い、オウガが――『純粋食人鬼筋のブレイキア』がリトルミッキーに入りこむ。
 すると……。
「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」
『リトルミッキィィィーーー!!?』
 愛らしいふわもこだったリトルミッキーの体が、見る間にムキムキのバッキバキに変異してゆく。他の愉快な仲間たちは友人の体がボコッ、ボコッとありえへん膨張を繰り返すのを見ていることしかできなかった。
 数秒後。
「これは良い乗り心地ですわ♪」
 リトルミッキーのガワは体高3mを超える筋肉の鎧と化しました。
 数倍になった筋力を確かめるようにぐっぐっと拳を開閉し、ぴょんぴょんとその場で跳ねると、ブレイキアは満足したように頷いた。
「これだけ素晴らしい筋力ならば怖いものなしですわ♪ でも鍛えなければ筋肉は衰えてゆくもの……慢心せずしっかりトレーニングしなければいけませんね♪ そのためにはまずプロテインのお茶会を♪」
『マァーーーーーーッソォォォーー!!!』
『う、うわあああああああああああああああああああああ!!?』
 ブレイキアが白いテーブルを設置した途端、どこからともなく方々から謎のバッキバキボディの人たちが現れる。
 集まった彼らにブレイキアはティーカップを配り、にっこりと笑った。
「疲れた筋肉には?」
『プロテイーーーーンッッ!!!』
 野太い掛け声とともに、ティーカップに口をつける筋肉たち。

 ――転移してきたなり、その光景を見せつけられた猟兵たちは、そりゃもう言葉もなかったですよ。


星垣えん
 というわけで、星垣えんでございます。
 今回は迷宮災厄戦のシナリオとなっております。
 ああ、ネタ依頼だとも!
 ちなみに何処からともなくブレイキアのもとに集まってきたのは、プロテインでバッキバキになったアリス適合者の方々(SPD)です。

 本シナリオでは『きぐるみ愉快な仲間の許可を得て、乗り込んで戦う』ことでプレイングボーナスを得られます。
 戦場には、目の前で色々ありすぎて腰を抜かしてる愉快な仲間たちがいるので、彼らに頼んでみましょう。
 なお、この不思議の国では、愉快な仲間なら猟兵だとしてもきぐるみ化します。
 一緒に参加した猟兵仲間に乗りこむとかもOKですよ!

 それでは、皆様からのプレイング、お待ちしております!
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第1章 ボス戦 『純粋食人鬼筋のブレイキア』

POW   :    ふふ、貴方でトレーニングしましょう♪
レベル×1tまでの対象の【姿を1本のバーベルに変換し、そのバーベル】を掴んで持ち上げる。振り回しや周囲の地面への叩きつけも可能。
SPD   :    さあ素敵なプロテインお茶会を始めましょう?
自身の【貯蔵していた大量の元適合者プロテイン】を代償に、【同世界から召喚したアリス適合者Lv×1人】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【プロテインで異常発達した筋肉と洗脳状態】で戦う。
WIZ   :    戦闘などやめてその素晴らしい筋肉で共に鍛錬を♪
無敵の【戦闘を禁じ鍛錬のみ許す対象の超隆起筋肉】を想像から創造し、戦闘に利用できる。強力だが、能力に疑念を感じると大幅に弱体化する。

イラスト:すねいる

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は九十九・静香です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎

■行動
何やら大惨事が発生している気がするのですが(ぷるぷる)。

ま、まずは着ぐるみさんに御協力をお願いしてみましょう。
皆さん呆然とされておりますし「仲間を助ける為」と勢いで押し切れば、何方かご協力願えるのではないかとぉ。

そして『FRS』『FSS』を展開し『FBS』を四肢に嵌め飛行、【翳華】を使い『胸の谷間』を『ブラックホール』に変換しますねぇ。
『中性子星』でも『角砂糖一個分で10億t近い質量』、『ブラックホール』はそれ以上の質量ですから、これで『【UC】の対象条件』を無効化出来ますぅ。
後は、接近されない様飛び回りつつ『FRS』『FSS』の[砲撃]&[範囲攻撃」で対処しますねぇ。


黒瀬・ナナ
なんか詐欺られた感がすごいんだけれども【気合い】で頑張る!

可愛いおねえさんスマイルと【コミュ力】を駆使して、きぐるみさん達にお願いして許可を頂くわね。
あなた達をムキムキバキバキの筋肉達磨になんてさせないし、リトルミッキーさんも必ず助けるから、力を貸してほしいのよ。
大丈夫、おねえさんがぱぱっとやっつけてきちゃうから!
大船に乗った気持ちで勝利の【宴会】の準備をしておいてね♪

ふふーん、それじゃあぱぱっと片付け……られる気がしないわ!何あの筋肉!
助けてマッスル…じゃなくて、助けてご先祖様ーっ!
【激痛耐性】と【オーラ防御】で相手の攻撃を耐え、
ご先祖様パワーを乗せた【怪力】でぶん殴る!
力こそパワーなのよ!



 暑苦しくひしめく、筋肉たち。
 めくるめく筋肉の幻想郷を前にして、夢ヶ枝・るこるはぷるぷると震えた。
「何やら大惨事が発生している気がするのですが……」
「なんか詐欺られた感がすごいわ!」
 袖を掴んできたるこるの手に手を重ね、黒瀬・ナナが不当な転移に憤る。
「けど今はこの場で頑張るしかないわね! るこるさん、きぐるみさんたちに協力をお願いしましょ!」
「そ、そうですねぇ……でないと筋肉に押しつぶされそうですぅ」
 近くのきぐるみたちに乗せてもらうべく、動き出す二人。
「皆さん、御協力をお願いしますぅ。リトルミッキーさんを助けるためなんですぅ」
「リトルミッキーを……」
「あなた達をムキムキバキバキの筋肉達磨になんてさせないし、リトルミッキーさんも必ず助けるから、力を貸してほしいのよ。大丈夫、おねえさんたちに任せて!」
「…………わかった!!」
 るこるの、ナナの頼みを、きぐるみたちが快諾する。
 背中から彼らに乗りこむ二人。
 シュシュッと拳で風を切ってパワーアップを実感したナナは勝利を確信した。
「ふふーん、それじゃあぱぱっと片付け……」
「あら、私と肉弾戦を?」
 ぬうっ、と眼前に立つブレイキア。
 太い。あまりに太い。
「られる気がしないわ! 何あの筋肉!」
 一瞬で勝利の確信が崩れた。キンニクヤベェ。
「助けてマッスル……じゃなくて、助けてご先祖様ーっ!」
「ふふ。貴女は私のトレーニング器具にしてあげますわ♪」
「あーーっ!?」
 ブレイキアが指を鳴らした途端、ナナの体が一本のバーベルに変化する。
 だがそれを掴んでいいように使おうとした瞬間、猛烈な速度できぐるみが――るこるが突っこんできた。
「ナナさんでトレーニングはさせませんよぉ」
 周囲に大量の浮遊武装――十六の砲台、八枚のビームシールド――を展開しながら、これまた四肢にはめた浮遊戦輪で空中を飛んでくるるこる。
「では貴女も一緒にトレーニングしましょう♪」
 るこるに狙いを定め、再び指を鳴らすブレイキア。
 ――しかしるこるの体は変化しない。
「これはいったい……?」
「今の私は『ブラックホール』なんですぅ」
 がばっと胸をはだけさせるるこる。すると彼女の巨大な胸の谷間に、小さな黒い円が形成されていた。
 豊乳女神の加護・翳華――己の体をブラックホールに変異させる力によって、るこるは天文学的な超質量を獲得していたのだ。
「角砂糖一個分で十億トン近いと言われる中性子星よりも重いですからねぇ。私をバーベルにはできませんよぉ」
 空中を旋回しながら、浮遊砲台からの砲撃を撃ちこむるこる。
 爆炎と煙がブレイキアを包む。連続で放たれる砲撃を防がんと、ブレイキアはバーベルを放り捨て、逞しい腕を構えて防御態勢を取ろうとした。
 その瞬間、落ちたバーベルが元の姿を取り戻す。
 ――否、元の姿ではなかった。
 鬼だ。
 巨大な鬼が、ブレイキアすら凌駕する巨大な鬼が、立っていた。
 祖霊降臨・ぬばたまの鬼姫――ユーベルコードによって祖霊の力を宿したナナは、まるで大弓を引くように、拳を振りかぶる。
「私のユーベルコードを跳ねのけたんですの……!?」
「教えてあげるわ……力こそ! パワーなのよ!!」
「何言ってるかわかりませんわー!?」
 容赦なく繰り出される剛拳が、ブレイキアを打つ。重い筋肉の塊をナナの拳は軽々と浮き上がらせ、その辺の家屋の三、四棟ごとブレイキアを吹っ飛ばした。
 なおその後、なぜバーベルから戻れたのかと尋ねたるこるにナナはこう言ったという。

『なんかいけた』

 と。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

シャーロット・キャロル
くっなんと見事な肉体美なんでしょうか!ですが愉快な仲間に迷惑をかけることはこのマイティガールが許しませんよ!

実はアイコンにもあるようにサメぐるみを着て着ぐるみヒーローなんてこともしてたりするんです私。なのでこの経験を活かせばこの状況もなんとかなるかもしれません!

「どなたかサメぐるみ愉快な仲間の方はいらっしゃいませんか!私と一緒に正義のために戦いましょう!」

もしいらっしゃったらちゃんと許可を得てから乗り込む、というより着込む?とにかく共に戦いますよ!

「シャークック!これ以上の狼藉はこのマイティシャークが許さないシャーク!」

【マイティヒートヴィジョン】もといサメビームで一気に攻撃です!

アレンジ歓迎



「猟兵の方々も、見事な筋肉をお持ちのようですわね!」
 覆いかぶさる瓦礫を軽々と持ち上げて、ブレイキアが立ち上がる。
「くっ、なんと見事な肉体美なんでしょうか! ですが愉快な仲間に迷惑をかけることはこのマイティガールが許しませんよ!」
 すぐさま周囲に目配りするシャーロット・キャロル。
「そこのあなた! 私と一緒に正義のために戦いましょう!」
「お、おいら!?」
 地面でぴちぴちしてたサメぐるみを見つけ、ぐっと肩(?)を押さえるシャーロット。
 なぜサメなのか。それは彼女が着慣れているからに他ならない。普段から着用しているサメぐるみならば、きっと存分に力を発揮できる的なアレである!
「でもおいらは陸に不慣れだし……」
「構いません! あなたのサメパワーが必要なんです!」
「サメパワーが……?」
「ええ、サメパワーが!」
「……わ、わかった! おいらの背中を開けてよ!」
「ありがとうございます!」
 みなぎる熱意でOKを得たシャーロットがサメぐるみの中に乗りこむ。
 そして――。
「シャークック! これ以上の狼藉はこのマイティシャークが許さないシャーク!」
 二足歩行するサメのきぐるみが誕生した。サメの口から顔が出てるとことか、ちょこっと突起してる程度の短い脚とか愛嬌が半端じゃない。
 だが、裏腹にそのパワーは破格!
「何と愛らしいのでしょう。是非ともバーベルにして差し上げ――」
「先手必勝! 食らえッマイティヒートヴィジョン!!」
「あーーっ!?」
 シャーロット――否、マイティシャークの双眸から放たれたレーザービームがブレイキアの貫通したァ!

大成功 🔵​🔵​🔵​

マグダレナ・クールー
な、なんたる惨いことを!!
着ぐるみさん! 着ぐるみさん聞いてますかほら腰を抜かしてないで!! あのオウガを喰らうために力をお貸しください!!
大丈夫ですわたくし強いです!! 一度着ぐるみを着て戦った経験がありますから、ね!? どうか許可を!!!

着ぐるみに武器は不要!! 使うのは己の肉体!! つまり、殴ります!! この、気合を力溜めた右手で!!
ダッシュで助走をつけ、鎧を砕く勢いで、捨て身の一撃を叩き込みます!

《ニーーーーー!! セマイ!! セマイ!!》
相変わらずうるさいですねリィー!! バーベルの盾になりたいのですか!? バーベルとチャンバラしますか!?
大人しくしないと本当にしますからね!!



「私の筋肉を貫くだなんて……ですが、それしきで屈する鍛え方はしてませんわ!」
 開いた孔から血を流すも、ブレイキアは未だ健在。
 マグダレナ・クールーは近くでへたりこんでいたハリネズミに手を差し伸べた。
「着ぐるみさん! 着ぐるみさん聞いてますかほら腰を抜かしてないで!! あのオウガを喰らうために力をお貸しください!!」
「えぇ!? だ、だめだよ怖いし……!」
「大丈夫ですわたくし強いです!! 一度着ぐるみを着て戦った経験がありますから、ね!?」
 震えるハリネズミの両肩を力強く掴むマグダレナ。
「どうか許可を!!!」
「…………わかったよ。その代わりちゃんとあいつを倒してね!」
「えぇ!」
 握手を交わし、ハリネズミの背中に潜りこむマグダレナ。
 彼女にくっついている蟹型のオウガ『リィー・アル』は閉塞感にじたばたと暴れ出した。
《ニーーーーー!! セマイ!! セマイ!!》
「相変わらずうるさいですねリィー!! バーベルの盾になりたいのですか!?」
 前方を指差しながらリィー・アルに問うマグダレナ。眼前には手近な瓦礫をバーベルに変換し、それを振りかぶって突進してくるブレイキアの姿があった。
「あなたがたをバーベルにするのは難しいとわかりましたから、トレーニング相手にすることにしますわ♪」
「いいでしょう。力勝負です!」
 わずか口端を吊り上げて、マグダレナが地を蹴った。
 その握りこんだ手には――何も持っていない。
「きぐるみに武器は不要! ただ己の肉体で……殴ります!!」
「ぐぐうっ!!?」
 バーベルの一撃をすり抜けて、右拳を打ちこむマグダレナ。
 助走と気合、そして力をこめた打突に、ブレイキアの膝は落ちていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

チル・スケイル
……(………)(腰を抜かす)
…(なんとか気を取り直し、最も近くの愉快な仲間に触れる)
貴方。貴方に要請します。
あのオウガを倒すため、貴方に乗り込みたいです。いいですね?(対象を指定する事で集団心理による拒絶を回避する算段)


…(鍛錬のみ許す?では鍛錬する)
…(オウガに氷の魔法弾を浴びせる。撃って撃って撃って撃ちまくる)
…(防がれようが撃ちまくる。妨害されても撃ちまくる)
…(魔力が溢れそうだ。これが愉快な仲間の力…ならば今のうちに、この力を少しでもモノにする)

戦闘ではありません。魔法の鍛錬に丁度いい的があるので撃っているだけです。

いいですね?



「…………座っている場合ではありませんね」
 通りの隅に座りこんでいたチル・スケイルが不意に我に返る。
 視界にちらつく超筋肉(ブレイキア&路上で筋トレ中のアリスたち)にガチめに放心していたチルは、しかし気を取り直して愉快な仲間に接触を図った。
「貴方。貴方に要請します」
「え……おれ?」
「あのオウガを倒すため、貴方に乗り込みたいです。いいですね?」
「えっ!」
 愉快な仲間はびっくりするがチルは視線を逸らさない。名指しでお願いされては愉快な仲間も首を横に振ることはできず、彼は背中を向けた。
「……どうぞ」
「感謝します」
 愉快な仲間に入りこみ、ブレイキアへ首を向けるチル。
 だがその瞬間、腕が、脚が、腹筋が風船のように膨れ上がった。
「……これは」
「ふふふ、その筋肉がある限り戦うことはできませんわよ? さぁ私とともに鍛錬をしましょう♪」
 ブレイキアが悪意なき笑みを浮かべる。ユーベルコードでチルを筋骨隆々にした彼女には本当に善意しかないのだろう。一緒に筋トレしたいだけなのだろう。
 だが彼女にはひとつだけ誤算があった。
「……」
「あーーっ!?」
 チルが杖をかざして普通に氷の魔法弾をぶっ放してきたのです。
「やめ、やめてー!?」
「……」
 ブレイキアが身を固めるのも構わず撃ちまくるチル。
 分厚い筋肉の上から魔法弾を撃つ、撃つ、撃つ。きぐるみ効果で高まった魔力の強さを感じる彼女はどんどん撃つペースを速めてゆく。
「戦闘はできないはずですのにどうして……」
「戦闘ではありません。魔法の鍛錬に丁度いい的があるので撃っているだけです」
「な、なるほどですわーー!!」
 ザクザクと氷を刺されながら、納得してしまうブレイキア。
 鍛錬とはなにも筋トレに限らない、ということを彼女は失念していたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ビリー・ライジング
いつもは妹と一緒だが、たまには一人で頑張ってみるか。
……だがしかし、これは確かに言葉も出ないな。

乗り込む着ぐるみ:
青銅色のブリキの騎士

交渉の際には大声で呼びかける。
「おい、しっかりしろ!」
「あのオウガは着ぐるみを着る事でパワーアップしてる。俺もお前達を着れば同じ事が出来る。それしか方法はない、乗り込ませてくれ!」

とにかく召喚したアリス適合者を倒す為にUCを発動。
大声・鼓舞する事で勇気づけて、敵陣へと切り込み。

見切りによる回避や、武器受け・盾受けでの防御などで攻撃を凌ぎ、
ブレイキアの攻撃は見切りからのカウンターの2回攻撃だ!

「別に自慢じゃないが、俺も筋肉には自信があってだな。細マッチョって奴だ」



 ところでブレイキアに召喚されて筋トレを始めていたアリス適合者たちだが。
「マッソォ! マッソォ!」
「ひぃぃ! 高速スクワットしながらこっちに来るぅぅ!」
 上体を思いきり沈ませたスクワットを繰り返しながら、愉快な仲間たちを追いかけていた。
 なぜかはわからない。
 殴るなり蹴るなりできそうなものだが、彼ら彼女らはひたすら己がマッソォを見せつけるだけで、愉快な仲間たちを直接害することはなかった。
 ただその分、精神的ダメージはすごかったよね。
「マッソォ! マッソォ!」
「うわぁぁぁ筋肉が躍動しているぅぅ」
「おい、しっかりしろ!」
 迫りくるマッソォから、地べたに尻をついたまま後退するブリキの騎士を、横から走ってきたビリー・ライジングが抱え上げる。
 そのままアリスたちから距離を取ると、ビリーは騎士と顔を突き合わせた。
「オウガを倒せばあいつらの進軍(?)は止まる。だがそれには、こっちもお前達を着てパワーアップするしか方法はない! 頼む、乗り込ませてくれ!」
「私に……わかった! 力を貸そう!」
「助かる!」
 騎士の背中のチャックを開け、ブロンズ色のボディに入りこむビリー。
 彼はふもふも歩いて筋肉アリスたちの前に踊り出ると、正対したまま白金の騎士たちを召喚した。二百体は下らない荘厳なる騎士団はビリーの号令を受けて、地鳴りを起こしながらアリスたちと激突する。
『ウオオオオオオオオオオオッ!!!』
『マッソォォォォォォォォォッ!!!』
 ぶつかりあう、甲冑と筋肉。
 実力は伯仲していた。だが徐々に白金の軍勢が押してゆく。やがて筋肉アリスたちの陣形が綻ぶと、ビリーはブレイキアめがけて駆けだした。
「あなたは……あなたは私とトレーニングして下さいますの!?」
 体に無数の氷柱を刺したままのブレイキアが、歓喜の顔でビリーに拳を振り下ろす。
 それを回転して横に避けると、ビリーは『ルーンレイピア』を振るった。
 上下に二度。往復させた剣はブレイキアの筋肉の鎧に十字の傷を刻みこんだ。
「わ、私の筋肉がーー!」
「別に自慢じゃないが、俺も筋肉には自信があってだな。細マッチョって奴だ」

大成功 🔵​🔵​🔵​

宇宙空間対応型・普通乗用車
筋肉に憧れる、筋肉を信仰し、筋肉にフェティッシュを感じる。
筋肉に対する圧倒的な愛、敵ながら天晴だぜ…

故にオレは真正面からの力比べを挑ませてもらうぜ!
見ての通りオレには筋肉はねぇ…
だが、オレにはこの熱く燃え滾る原動機が!
力を伝えるギアシャフトが!大地を掴むタイヤがある!
これに愉快な仲間のパワー補正が加われば!
その見事な筋肉にだって遅れは取らねぇ!
てめぇが筋肉で人間の限界に挑むってなら!
オレは科学技術で車体の限界に挑んでやるぜぇ!
というわけでそこの愉快なお仲間さん。ちょっと着させてくれるかい?

そんなわけでお互い準備はできたなさぁ行くぞ!
【瞬速展開カタパルト】で正面衝突だヒャッハー!



 自慢の筋肉を裂かれたオウガの悲鳴が、空に響く。
 美しく研磨された白い車体にその音響を感じて、宇宙空間対応型・普通乗用車はヘッドランプをパッと灯した。
「筋肉に憧れる、筋肉を信仰し、筋肉にフェティッシュを感じる。
 筋肉に対する圧倒的な愛、敵ながら天晴だぜ……」
 普通乗用車の心臓(エンジン)が、ひときわ大きく拍動する。
「見ての通りオレには筋肉はねぇ……だが、オレにはこの熱く燃え滾る原動機が! 力を伝えるギアシャフトが! 大地を掴むタイヤがある! これに愉快な仲間のパワー補正が加わればその見事な筋肉にだって後れは取らねぇ!」
 搭載された『18EXA超高精細カメラアイ』にて周囲を探る普通乗用車。
 するとちょうど近くに車型きぐるみが!
「てめぇが筋肉で人間の限界に挑むってんなら! オレは科学技術で車体の限界に挑んでやるぜぇ! というわけでそこの愉快なお仲間さん。ちょっと着させてくれるかい?」
「えぇっ! まぁいいけど……」
「助かる!」
 かなり素直な車ぐるみさんに乗りこむ普通乗用車。いい感じに設けられていた四つの穴からタイヤを出した彼はユーベルコードを発動した。
「正面衝突だヒャッハーーーー!!!」
 瞬間、爆速で発進する普通乗用車。
 そのスピードたるや無法。行く手を塞ぐ筋肉アリスたちを圧倒的速力で(しかしソフトタッチで)ぶっ飛ばして、暴走車は瞬く間にブレイキアに特攻していた。
「オラァァァーーーーーー!!!」
「このパワーは……と、止まりませんわーー!?」
 普通乗用車のフロントバンパーが、筋肉オウガに激突。路上をゴムボールのように跳ねまわったブレイキアは――やがて勢いを失って、数百m先で止まった。
 大木のように雄々しかった少女が消滅する。
「……ん……」
「ここ、は……私はいったい……?」
 ブレイキアが消えると、筋肉アリスたちが続々と我に返る。肥大した筋肉もしゅるしゅると縮んで、彼らは元の頼りない姿へと戻っていた。
「一件落着ってところだぜ」
 愉快な仲間たちがアリスたちを気遣うのを見て、普通乗用車がフッと微笑む。
 つい十数秒前に自分が彼らを轢いたことは、覚えてません。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年08月11日


挿絵イラスト