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迷宮災厄戦③〜攻撃は最大の防御

#アリスラビリンス #戦争 #迷宮災厄戦

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「盾が守るためのものだと誰が決めた? 殴る、投げる、押し潰す! 盾は立派な武器だろうが!」
「守らなきゃ負ける? 馬鹿いうな! 攻めなきゃ勝てないだろ!」
「盾に隠れたら敵が見えない? 顔以外にも目をつけろ!」
「よっしゃ行くぞ野郎ども、突撃ィィィーーー!!」


「各々方、お集まりいただきありがとうござります。これより迷宮災厄戦の開始にござる」
 シャイニー・デュール(シャイニングサムライ・f00386)は集まった猟兵たちに頭を下げる。
「これから皆様に向かっていただくのは、『ゆうとろどきの森』という小世界。ここに住むオウガたちは皆『不気味な身体部位』を移植されているのが特徴でござる」
 本来持つ能力に加え、移植された部位を使い戦いを有利に進めてこようとするという。
「今回敵となるのは『チョコレートシールダー』というオウガにござる。敵は体が隠れる程巨大な、チョコレート製の大盾を装備しております。この盾を構えての突進や、盾からチョコを噴き出しての攻撃の相殺、さらには盾の中にこちらを封印するという技も使ってきます。この盾にはアリスも捕らえられていますが、完全に盾と一体化しており救う手立てはござりませぬ。幸いというか既に動くことはなくなっているので、一思いに溶かしてしまうのも優しさでござりましょう」
 つい直近にも似た種類のオウガが現れたが、やはり命がないならこれ以上苦しむことはない、など気休めにもならない慰めを考えるしかないだろう。幸い猟兵は盾に捕らわれても破壊すれば助けることは出来る。
「さて、今回の敵の持つ『不気味な身体部位』ですが、今回の敵はいわゆるお団子ヘアというやつをしておりまして、そのお団子が眼球となって自在に飛び回るのです。もちろん視覚は本体とつながっており、全身を盾に隠しながらも戦場を自由に把握でき申す。また完全な防御の構えを取ることができる一方、性格は攻撃的で眼球に森の中を哨戒させ、敵を発見次第即座に殺到、全員で制圧してこようとしてきます」
 戦闘前と戦闘中、双方で飛び回る眼球を活用してくるということだろう。
「眼球はかなり俊敏に動き回り常に戦況を把握していますが、裏を返せば敵は視覚に頼り切って戦っているということ。この眼球を何とかすれば敵の視界を一気に狭め、戦いを有利に進めることができましょうぞ」
 哨戒している段階で何とかするか、接敵してから対処するかは自由だが、相手の視界をどう奪うかがカギとなるかもしれない。
「まだ戦いは始まったばかり。ここで躓くわけにはまいりませぬ。どうか皆様、ご武運を!」


鳴声海矢
 こんにちは、鳴声海矢です。今回は一つ前のシナリオのアレンジ風味ですが、特に繋がりはありませんので読んでいなくても問題はありません。
 今回のプレイングボーナスはこちら。

『プレイングボーナス……「不気味な身体部位」への対抗手段を考える』

 敵は盾に全身を隠しつつ一体につき眼球を二つ飛ばし、周囲の状況を把握しています。
 敵はこの眼球の視覚にかなり依存しているため、眼球に見つからないようにする、あるいはどうにかして視力を奪うなどすると戦いを有利に進められるでしょう。
 眼球は最初は敵を探して森の中を哨戒しており、その視界に少しでも引っかかれば一斉に敵が殺到してくるので、隠れながら敵を探し不意を打つことは不可能ではありませんが難しめです。戦闘時の眼球の対処法も記載しておいた方が確実かもしれません。

 それでは、プレイングお待ちしております。
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第1章 集団戦 『パティシエ『チョコレートシールダー』』

POW   :    突撃ィィィーーー!!
【アリスが封じられた板チョコの盾】突進によって与えたダメージに応じ、対象を後退させる。【複数のチョコレートシールダー】の協力があれば威力が倍増する。
SPD   :    溶けゆく犠牲者
対象のユーベルコードに対し【アリスが封じられた盾から噴き出すチョコ】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。
WIZ   :    お前もチョコ盾の装飾にしてやる!
【装飾がないチョコの盾】から【甘い溶けたチョコ】を放ち、【チョコの盾へ封印すること】により対象の動きを一時的に封じる。

イラスト:保志乃シホ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

春霞・遙
いわゆるシールドバッシュってやつですかね。
でも、盾で攻撃したらその後無防備になる可能性が高いし、攻撃するなら別に武器を持つことをおすすめしますよ。

【竜巻導眠符】を使用し、周囲に大量の導眠符を撒き散らします。
符によって視界を妨げ、触れた眼球を眠らせます。
導眠符は手元にも残しておいて、接近されたら本人に直接貼りつけます。
隙を突けそうであれば眼を優先して銃で穿ちます。


初志・貫鉄
即興共闘歓迎
POW

資格情報に頼り切っているっていうのはありがたいもんだな
おかげで新しいUCを身に着ける覚悟も出来たってもんだ

幾つか小石を拾い、同行者がいれば相手を背負ってからUCで姿を消すぜ
野生の勘を働かせて目玉を探し、目玉の位置から情報収集し相手の位置を予測
目玉を潰してから、すぐに移動して群がられるのを避けよう
UC代償の疲労感は、事前に食べた五段重ねバーガーで元気を限界突破、継戦能力で維持して誤魔化す

出来るだけ敵は孤立した敵を相手取る

接敵し、小石を適当な藪に投げて物音で注意を引いてから、背後に回り不意打ちマヒ攻撃、自由を奪った後に致命の一撃を入れて処理

静かに数を減らしてあげよう



 小世界『ゆうとろどきの森』の中。木々の間を翠の瞳を持った眼球がいくつも飛び回っていた。
「やはりあまり気持ちのいい光景ではありませんね」
 木の陰に隠れながら春霞・遙(子供のお医者さん・f09880)は眼球の飛ぶ様を見てそう呟く。今のところ見つかってはいないが、眼球の数は多く発見されるのは時間の問題であり、あまり時間のかかる作戦は使えないのは明らかだ。
「視覚情報に頼り切っているっていうのはありがたいもんだな。おかげで新しいUCを身に着ける覚悟も出来たってもんだ」
 初志・貫鉄(拳食合一の功徳奉士・f26667)は小石を拾いながら覇気を滾らせた。敵の索敵能力は厄介だが、だからこそそれは対応すべき力を身に着ける原動力となる。早速その力を顕現すべく、貫鉄は遙をその背に担ぎ上げた。
「一切の不浄焼き地に変ず、その威徳借り受け、不浄より身を隠す陽炎よ、我が身を包み給え」
 新たな力、【烏枢沙摩明王尊陽炎歩】を発動する貫鉄。陽炎が立ち上るが如く足元からゆらりと貫鉄の姿が揺らぐと、次の瞬間背負っている遙もろともその姿が掻き消えた。
「これは、すごい……」
「消せるのは姿だけだが……今回はこれで十分だろ」
 音や熱は消せないが、今相手にしているのは視覚が広く、それに頼り切っている敵。この上なく好相性と言える能力だ。姿を消した状態のまま、貫鉄は眼球をじっと観察し、本体の居場所を探る。
「多分、あっちに本体は溜まってるな。ほとんど散り散りに飛んでるが、あっちの方に行く時だけ纏まってることが多い」
 動き方の情報を集め、それを野生動物の動きを察する勘で分析する貫鉄。精密な位置は分からないが、大まかな方向さえ分かればとりあえずはそれでいい。
「それでは行きましょう。こちらは私にお任せを」
 貫鉄に背負われたままの遙が、懐に手を入れ無地の札の束を取り出した。
「夜の帳が下りてくる、魔法の砂も吹いてきた。さあさおやすみ、眠りなさい」
 詠唱と共に印を思い浮かべ、その札を夕に放り投げる遙。札は渦を巻きながら宙を舞い、やがて札の竜巻、【竜巻導眠符】となって当たりの目玉を包み込んだ。
 札が眼球に正面から張り付いてその視界を塞ぎ、さらにそこに込められた力が次々と眼球を眠らせていく。瞼の代わりに桃色の髪が眼球を包み込み、まるで毛玉のようになってぼとぼとと地面に落ちた。
「よし、いい感じだな」
「はい、今のうちに」
 貫鉄と遙は僅かに言葉を交わすと、先に敵がいると辺りをつけた場所から直角になる方向へ向かってその場から離れた。
 そしてすぐさま、大量の足音がその場に向かって近づいてくる。
「舐めた真似しやがって、どこのクソ野郎だ!」
「目が見えねぇ……眠いぞちくしょう!」
 乱暴な言葉を吐きながら眼球の落ちている場所に殺到する、盾を構えた桃色髪の少女……チョコレートシールダーの集団だ。彼女たちは落ちている眼球をめいめいに拾い、札を剥がして自分の頭につけ直していく。
「傷はついてねぇが起きやしねぇ。役に立たねぇ目ん玉だな!」
 依存しきっているのを棚に上げ、自分の目玉を罵るシールダー。その様子を、左程離れていない場所から貫鉄と遙は観察していた。
「この距離でも気づかないなんて……本当に目しか使ってないんですね。貫鉄さん、大丈夫ですか?」
「ああ、栄養補給はたっぷりしてきたからな、もうちょい頑張れそうだ。だが長くは持たない。いくぜ」
 透明化はとてつもなく体力を消耗する。人一人背負い続けているのだからなおさらだ。事前に限界以上にカロリーを取って継戦能力を高めてきたが、それもいつまで持つかは分からない。貫鉄は先に拾った小石を手に取ると、集団の最後尾にいるシールダーの足元目掛けて投げつけた。
「あん?」
 足元に僅かに聞こえたがさりという音。これだけ至近で鳴った音でようやく一人が気づくというのはそれだけシールダーが音に対して注意していないということだろう。そのシールダーは集団から離れ、盾を構えながら音のしたあたりを一人探し始める。
「誰かいやが……」
「お静かに」
 音のしたあたりに捕獲用のチョコを撒き散らし声を上げようとしたシールダーに、盾の横側から突然手が叩きつけられた。それは貫鉄の背中から手を伸ばし、導眠符を直接貼り付けた遙の手だ。
 今度は全身を眠気に捕らわれ、声を上げることもできず倒れていくシールダー。
「悪いがそのままずっと寝ててもらうぜ」
 さらに貫鉄が無防備となった敵の急所に一撃を入れ、その命を奪う。シールダーはそのまま消滅し、盾も地面に落ちてばらばらに割れた。
「まず一人……ですね」
「ああ、まだあと何人かは行けそうだ。時間いっぱいまで粘るか」
 そう言って遙を乗せたまま、群れの別の端へと移動する貫鉄。二人は姿を消したまま体力の限界が来るまで、シールダーを釣りだし一人ずつ仕留めていくのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ミリア・プレスティール
ミリアは飛び回る眼球にダメージを与えるために、ハイトーンボイスの歌声による周囲への音波攻撃を行う。視界を封じた後は敵の後ろから手袋型UDC『ミトン』が攻撃を仕掛ける。
【ミリアの心情】
盾に閉じ込められたアリスさん達は助けられてませんでしたが、せめてこれ以上の被害を出さないためにも倒させてもらいます!
見えない音の攻撃は防ぎようがありませんよ!(UC発動)
ミトン、後はお願い!

※アドリブ、他の方との絡みOK


夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎

■行動
厄介な相手ですが、対処は可能ですねぇ。

彼女達が『眼球』で此方を探すなら、利用すれば相手を集められるということですぅ。
『FBS』を四肢に嵌め飛行、姿をさらし彼女達が集まるのを待ちますねぇ。

そして集まったところで【乳焔海】を使用し広域への[範囲攻撃]、『乳白色の波動と炎』で相手を包み、一気に焼払いましょう。
広範囲を覆う『波動』ですから『眼球』も巻込めますし、『炎』であれば『チョコレートの盾』を溶かし、相手の能力を封じる事も可能ですぅ。
此方は空中、仮に飛行出来ても『突進』までの間に溶かせるでしょう。
後は『盾を失った相手』から順に『FRS』『FSS』の[砲撃]で仕留めますねぇ。


木霊・ウタ
心情
アリスを救えないのは悔しいけど
せめて解放しよう

戦闘
炎を灯とし森を進む

見つけた目玉は炎の剣風で迎撃

当然見つかって殺到してくるよな
うん好都合だ(にやり

敵本体の姿を見つけたら
獄炎纏う焔摩天を天に掲げ
急速燃焼による強烈な輝きを放ち視界を灼く

その隙に爆炎噴射で一気に間合いを詰め
体ごと剣を回転させて薙ぎ払い
板チョコごと砕き
炎渦で溶かす
眼球も巻き込むぜ

その後も同様に視界封じる炎を織り交ぜ戦う
目を閉じたり眼球を離れさせるなら
その死角を利用して攻撃

オウガ
チョコや人の命を弄ぶ愚に
気づかないとは可哀想に
紅蓮に抱かれて眠れ

事後
ココアの香りの中
救えなかったアリスと
オウガへ鎮魂の調

糖分補給に板チョコを齧る



 戦いの始まった森の中を、続けて三人の猟兵が進んでいた。
 先頭を歩くのは、得意とする炎を松明代わりに灯した木霊・ウタ(地獄が歌うは希望・f03893)だ。
「アリスを救えないのは悔しいけど、せめて解放しよう」
 直前に戦った同種の相手に続き、またしても犠牲者を救うことができない歯痒さ。それを噛み殺しながら、自分にできるせめてもの事として、敵を倒してその骸を解放することを誓う。
「厄介な相手ですが、対処は可能ですねぇ」
 夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)もウタとは別動であったが、直前の戦いに参加していた。攻城戦と屋外でのゲリラ戦、近づかせず一方的に攻撃したがる者と見つけ次第直接襲い掛かってくる者、戦場も性格も真逆の敵だが、それ故対処のし様はある。るこるは今回の敵に対してどう戦うかを考えながら接敵に備えた。
「盾に閉じ込められたアリスさん達は助けられてませんでしたが、せめてこれ以上の被害を出さないためにも倒させてもらいます!」
 ミリア・プレスティール(被虐少女と手袋守護霊・f16609)は二人と違い直前の戦いには参加していない。だがそれとは関係なく、この戦場に臨むその士気は高い。相棒である手袋型の守護霊『ミトン』も、普段のいたずらはなりを潜め敵を倒しミリアを守るために臨戦態勢を解いていない。
 やがて三人の目の前に、木々の間を縫って飛び交ういくつもの眼球が現れた。
 眼球は各々別に飛び回っていたが、一つの緑の瞳が猟兵たちを捕らえると、他の眼球もその場に集まって一斉に三人を取り囲んで見つめた。
「そんなに見つめられると火が出ちまうぜ……顔じゃなくてこっちからな!」
 その目玉の群れに、ウタは躊躇なく剣を振るい炎を放った。いくつかの眼球が炎に巻かれて焼け落ちるが、炎から逃れた眼球は猟兵たちを観察するように多方から取り囲む。
「それでは、たくさん集まってくださいねぇ」
 るこるは戦輪『FBS』を四肢にはめてふわりと浮き、眼球の前にその豊かな姿態を惜しげもなく見せつけた。どうせ音声は相手に届かないのだ、何を言っても敵に策がばれることはない。
「いたぞ、こっちだ!」
「囲んで潰せ!」
 眼球で見た映像を頼りに来たのだろう、どたどたと足音を響かせ、チョコレートシールダーの群れが猟兵の前に現れた。
「ま、そりゃ殺到してくるよな。うん好都合だ」
「お待ちしておりましたぁ」
 にやりと笑うウタに、挑発するようにふわふわと浮くるこる。その姿に苛立ったか、何体ものシールダーが盾を構え横に並んだ。
「馬鹿にしてんのか? 思い知らせてやる! 野郎ども、突撃ィィィーーー!!」
 盾を突き出し一斉に突進するシールダーたち。前にいた二人のうちウタはその突進を炎を噴き出しチョコの盾を溶かすことで軽減し躱すが、るこるは空中で防御することもできず、まともに受けて跳ね飛ばされてしまった。
「あ~れぇ~」
 悲鳴を上げながら森の奥へ飛んでいくるこる。早くも一人仕留めたと、シールダーたちは笑みを浮かべさらにミリアに向き直る。
「大したことねぇな! お前はチョコ濡れにしてしまいこんでやろうか!」
 盾を構えそこからチョコを発車しようとするシールダー。だがそれより早くミリアは胸の前で両手を組み、大きく息を吸いこんだ。
「見えない音の攻撃は防ぎようがありませんよ! どうか私の側に近づかないで……Laaaー!」
 ミリアの喉からハイトーンボイスの歌声が響き渡り、それは衝撃波となって辺りを切り裂く。
「ぐえっ!」
「目、目がっ!」
「ちくしょう、見えねぇっ!」
 目に見えない音の無差別な攻撃は、辺りを舞う眼球とシールダー本体をまとめて攻撃した。シールダーは反撃用のチョコを辺りにぶちまけるが、脆い目に纏めてダメージを受けたせいで視界が歪み、あらぬ方向へ出されたチョコが誰にも届かない音波を留めるだけにとどまっていた。
 だが指向性がなく無差別な音は敵味方の区別なく切り刻んでしまう。シールダーの前で剣を構えていたウタもまた音に切り裂かれ、血を流していた。その血は腕を伝い、手に持った剣まで濡らしている。
「こりゃ凄い威力だな……おかげで火力が出せそうだ!」
 ウタは血を流したまま凄絶な笑みを浮かべ、鉄塊剣『焔摩天』を天に高く掲げた。
「よーく見やがれ!」
 掛け声と共に焔摩天が爆発するかのように獄炎を纏う。それは強烈な熱と光で辺りを照らし炙り、傷ついていた眼球の網膜をを強すぎる光で破壊した。その巨大な炎の焚き付けは、今ウタが流した血を元とした【ブレイズフレイム】の炎だ。
 ウタはそのまま焔摩天を横倒しにして後ろに構え、噴きあがる炎をロケットのように使いシールダーへと高速で詰め寄った。
「チョコや人の命を弄ぶ愚に気づかないとは可哀想に。紅蓮に抱かれて眠れ」
 ウタはそう言いながら、炎の角度を調整し体ごと剣を回転させて薙ぎ払う。炎がチョコを溶かし、剣が盾を砕き、シールダーたちに浅くないダメージを負わせていく。
「大いなる豊饒の女神の象徴せし欠片、その裁きの理をここに」
 そしてその業炎の乱舞に重なるよう聞こえたのは、さっき遠くに吹き飛ばされたはずのるこるの声だ。その声と共に乳白色の波動があたりを包み、とりわけシールダーたちを濃く取り囲む。
 そして次の瞬間、シールダーのまわりの波動は白い炎と化し、一気に燃え上がった。シールダーを囲む炎が赤から白へと塗り替えられて行き、すでに小さく砕けていたチョコの盾を液体を超えてただの炭へと変えていく。
「るこるさん、大丈夫でしたか!?」
「ええ、おかげさまで。それよりもウタさんがぁ……」
「俺は心配ないさ。元々そのつもりでここに立ってたんだ」
 今るこるの使った【豊乳女神の加護・乳焔海】の射程はミリアの【レゾナンスソング】より広い。故にわざと吹き飛ばされて距離を取ることで、敵の油断を誘いつつ安全圏から攻撃できたのだ。逆にウタは切り裂かれて出した自分の血が武器になる関係上、同士討ちが必ずしも悪いことになるとは限らない。それぞれの技の特性を活かした連携が、シールダーたちを追い込んでいた。
 最早盾はなく、空飛ぶ眼球たちも焼き落とされて使い物にならない。
「ミトン、後はお願い!」
 ミリアの指示を受け、ミトンがシールダーの群れに怒涛のラッシュを見舞った。それに続くようにるこるの『FSS』と『FRS』の砲撃、ウタの死角からの斬撃もシールダーたちを捕らえる。赤白二色の炎の中、強烈な打撃を受けたシールダーたちは焼きすぎた炭が割れるように体が崩れ、消滅していった。
「お疲れさん……良かったら食うか?」
 溶けたチョコの匂いが漂う中、ウヤは溶けないよう厳重に持ってきた板チョコを二人に差し出す。
「ありがとうございますぅ。疲れた時は糖分が欲しくなりますからぁ」
「あ、じゃあ私も……ミトン、変なことしないでね?」
 二人ともチョコを受け取りめいめいに口に入れていく。ウタもまた自身のチョコを一口齧るが、二口目に行く前にその口は別のものを紡ぎ出す。己のせいではないとはいえ二度も救えなかったアリスと、狂気に生きざるを得なかったオウガたちがせめて安らかに眠れるようにと願いを込めて。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年08月07日


挿絵イラスト