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堕ちた騎士の誇り

#ダークセイヴァー

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#ダークセイヴァー


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 とある村の中央、村の住人は皆、一つの集団に跪いていた。先頭に立っているのは剣を携えた騎士、そして、その後ろにはフードを被った者たちが控えている。
「き、騎士様。こ、こちらが今日献上いたします贄でございます。」
 一人の老人が騎士の前に立って、震える声を抑えながら隣にあるものを示した。肉などが積まれた荷車、そして、十名の村人が震えながら座っている。騎士はそれらを一瞥した後に、軽く息をつく。
「足りんな」
「え?」
「気が変わった。今宵はもう少し贄をもらう。」
 事も無げに言い放った騎士は腰にある剣に片手を掛け、目の前にいた老人の首に剣を振った。一瞬、場が静寂に包まれた。老人の胴から首が離れ、老人はゆっくりと倒れ伏す。そして、それが合図だった。
「きゃあああああああああ!!」
 村人が一斉にその場から逃げ出し、騎士の後ろにいた者達がそれを追い始める。村人と騎士たちは奴隷と飼い主から一転して獲物と狩人に変わった。その光景を騎士はただ眺めていた。


 グリモアベースの作戦室にて、一人の少女が椅子に座っている。彼女の名はアイリス。グリモア猟兵の一人だ。彼女は猟兵たちを確認すると、口を開いた。
 「皆様、来てくださってありがとうございます。僭越ながら私、アイリスがグリモア猟兵として今回の任務を皆様に説明させていただきます。」
 アイリスはにこりと微笑んだ後に、真剣な面持ちとなった。
「ダークセイヴァーにおいてオブリビオンによる事件を予知しました。ダークセイヴァーはヴァンパイアと呼ばれるオブリビオンに敗北し、人間たちが支配された世界です。それ故にその世界ではあちこちで頻繁にオブリビオンによる事件が起きていたこともあって、視える光景に絶えず乱れが生じていたのですが、先日ノイズのない転移が可能な予知に成功しました。私が視たのはオブリビオンの支配下の村、アカド村で行われる虐殺です。遠くない未来でこの村はオブリビオンに蹂躙されてしまうでしょう。今回の皆さんの任務目標はアカド村を襲撃するオブリビオンの撃退です。まずは皆様をアカド村に転移いたしますので、そこで、情報収集を行ってください。おそらく、村の周囲や村の住人から何か情報が得られると思います。村の住人はオブリビオンの奴隷として接点がある為、何か情報を持っている可能性が高いです。予知では敵の全貌は視ることができなかったので、住民から情報を得られれば、うまく立ち回ることができるでしょう。彼らは猟兵について知らないので、素直に話してくれない可能性もありますが、暴力で相手に言う事を聞かせるとかはできれば控えて欲しいです。住人の方々は被害者の立場ですから。」
 アイリスは両手を合わせて要望を告げた後、伏し目がちに話を続けた。
「それと、予知で虐殺を行っていた者を少しだけ視ることができました。住民の殺害を主に行っていたのは人型の生物でした。ダークセイヴァーのヴァンパイアの性質から考えると、そちらはおそらく死体を蘇生させた存在であると考えられるのですが、それとは別に1人、明らかに別格と感じる存在がいました。まるで、騎士のような出で立ちをしていました、纏っている雰囲気は騎士とういうにはひどく不釣り合いで、例えるならば、あれは異端者とでもいうべきでしょうか。虐殺の中心にいたのはそんな存在でした。多くの事を伝えられずに申し訳ありません。では、皆様、アカド村に転移いたします。どうかお気を付けて。」
 その言葉と共にアイリスは転移の準備を始めた。


カルミナル
 皆さん、こんにちは。カルミナルです。この度は「堕ちた騎士の誇り」を閲覧いただきありがとうございます。本作はダークファンタジー世界において、王道に則ったシナリオをイメージしながら書いていきます。シリアス色が強い作品になるでしょうが、プレイングは比較的イメージしやすいフレームだと勝手に思っております。私は本作をPBWでのマスターとして初めて投稿させていただきます。楽しんでいただければ幸いです。
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第1章 冒険 『支配された村』

POW   :    強さを見せて村人を信頼させる

SPD   :    村周辺の探索を行う、村人達と密かに接触する

WIZ   :    会話や行動で信頼を得る、村人たちから情報を引き出す

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


アカド村。そこは辺境にある小さな村の一つ。平地の真ん中に位置するその村は周囲から隔絶され、ヴァンパイアたちからの蹂躙を享受している。予知によって示された村の滅亡はそう遠くない。
緋翠・華乃音
……生贄やら虐殺やら、別に俺には関係無い事だが……聞くだけで虫酸が走る。罪の無い命を無為に散らせてやる訳にはいかないな。

……さて、先ずは情報収集だが……村人から情報を聞き出すのは他の猟兵に任せておこうか。……まあ、適材適所。俺は俺のやれる事を。

取り敢えず村の周辺を探ってみようか。生贄が何度も行われているのなら、騎士やその配下の足跡(踏み折られた草木等)があるかも知れない。足跡を辿れば奴等が何処からやってくるのか判明するかも知れないしな。

何も探すのは足跡だけじゃない。こんな暗い世界だ、夜目が効くなら兎も角、松明や篝火を持っていてもおかしくはない。
その灰や足跡から痕跡を辿っていこう。



華乃音はオブリビオンたちの痕跡を探る為に村の外回りを歩いていた。そして村の南門に差し掛かった時、ふと足元に柔らかい感触を感じた。見るとそこにあったのは何かの肉だった。そして、その周りには村に向かっていく足跡と出ていく足跡が村人の数だけでは足りないくらい残されていた。暗がりのせいで見えにくくなっていたことに加え、何日か経っていたようで、足跡は薄くなっていたが、暗視を可能にする華乃音には何とか捉えることができた。
「これは…当たりみたいだな。」
 とても生活の跡とは思えない足跡を見つけた華乃音は足跡が続く道を歩いていった。
 しばらく歩くと、草木が鬱蒼と茂る暗い森を見つけた。森の暗闇はダークセイヴァーの暗さも相まって華乃音の目を以てしても見通すことができず、侵入を拒んでいた。
「これ以上は進めないか…ん?」
引き返そうとしたところで、森の入り口の近くに捨てられている木の棒が華乃音の目に留まった。近づいてよく見ると、全て先が焦げており、長さはどれも短くなっている。
「5本か…全て松明に使われていたものと考えるのが自然だろうな。最低でも5人以上の取り巻き。騎士も含めて襲撃者は6人くらい。そして、森に入る前に捨てたという事は奴らは夜目が効くという事か。多分、俺以上に。」
 華乃音は立ち上がり、森を見上げた。
「少なくとも奴らはここから来ると見て間違いないな。」
 そうして、村の方へ引き返していった。

成功 🔵​🔵​🔴​

トリテレイア・ゼロナイン
騎士としての振る舞いを自らに課すものとして、騎士の風上にも置けぬ暴虐は看過できません。

「礼儀作法」を使い、この地の騎士の振る舞いに義憤を燃やして果し合いを挑むために来訪した騎士として村人たちに振舞いましょう。
御伽噺の騎士たちに倣えばそうは難しくないはず。
実力を疑われればPOWで「怪力」「鎧砕き」で大型シールドで大岩を砕くパフォーマンスを見せましょう。

実力があり、騎士としての振る舞いもこちらが上と村人たちが判断してくれれば敵の情報を得るための協力もしてくれるはずです。

オブビリオンの騎士の恐怖と機械仕掛けの騎士擬きの騎士道、どちらが騎士として支持を得られるのでしょうか



「そこの方少しよろしいですか?」
トリテレイアは現在一人の若者に声をかけていた。若者たちはトリテレイアの巨体や人間味のなさに明らかに怯えている様子で、ある意味ではオブリビオンの騎士に対して以上の恐怖を感じていた。
「ひっ、な、なんですか?」
「ご安心ください。私はあなた方に危害を加えません。私はあなた方の力になるためにこの村に参上しました。ですので、お話を聞かせてもらえませんか。」
「は、はいぃ。」
物腰は柔らかいが、圧倒的存在感を放つ巨体が自分に顔を近づけている。そんな状況に村が襲われている時に感じている死の恐怖とは別種の恐怖を感じ、すっかり従順になっていた。しかし、トリテレイアは特に気付いた様子もなく村が襲われている様子について質問した。
「き、騎士たちの事っすか?あいつらは村に来たら真っ先に広場に向かうんです。広場にその日の贄が用意されているから。で、それを回収して帰るだけなんです。だけど、ここ最近は特に指定された贄じゃ足りないって思うことが多いみたいで、この前なんかもそうでした。急に足りないって言ったかと思うと、騎士が突然、村長の首を…それにみんなビビッて逃げ出すのと同時に取り巻き共が皆を追い回して、あいつらが満足したら死体を拾ってようやく来た道を戻っていくって感じで。」
若者は怯えてはいるものの、記憶は鮮明に残っているようで
「なるほど。ありがとうございます。無抵抗な者の虐殺。やはり騎士として許しがたい。」
「も、もういいですかね?じ、じゃあ、俺はここで失礼します。」
若者はそそくさとトリテレイアの元を離れていった。

成功 🔵​🔵​🔴​

紫洲川・珠璃
「ダークセイヴァーに来るのは初めてね、どうにも息苦しさを感じるわ」


まずは一人になった村人に騎士たちが何方から来ているのか聞きに行くわ。
集団だと口が堅くても個人なら少しくらい喋ってくれる気もするので。
もっとも箝口令をしかれているわけではないので
話してくれそうな気もするし、ダメかもしれないわね

情報が得られればその方向へ周辺探索を行うわ。
ない場合は勘ね。
洞窟、うち棄てられた漁師小屋なんかは怪しそうだけれど
もっとも彼らが人並みの行動をすれば、なのだけど
もしかしたら【殺気】の技能で敵の殺気を感じられたりするのかしら?

もし運よく発見出来たらひとまず様子見
攻めるときはほかの猟兵と連携したいわ



珠璃は村の中を回りながら途方に暮れていた。
「誤算だったわ、ここまで誰にも会わないなんて。一人くらい会えるって高をくくっていたわ。…こうなったら。」
 余所者である手前、不用意に接触して村人から警戒されることを避けていた珠璃は意を決してすぐ目の間にあった民家の戸をたたいた。程なくして、扉が開き中から杖をついた老婆が出て来た。
「あらあら、こりゃまたきれいなお嬢さんが来たものじゃ。こんな老婆に何か用かい?」
「ええ、ちょっと聞きたいことがあるの。この街を襲っている騎士たちについてなのだけど…」
「はあ、岸?川でしたら、東門をでてまっすぐ行ったところにございますよ?」
「いえ、おばあさん。その岸じゃなくて、騎士。剣とか持ってる騎士の話を…」
「ああ。そうかそうか。お嬢さんも聞きたいんだねえ。叛逆の騎士の伝説を。いいよ。聞かせてあげよう。」
「えっ、いや、私は――」
 珠璃の言葉が聞こえていないようで、老婆はすらすらと話し始めてしまった。老婆の話の内容はダークセイヴァーがヴァンパイアに支配される前に存在した騎士の話であった。騎士はある大国の王に仕えていた。それほど策に優れていなかった騎士はそれでも故郷の人々のため、ひたすら剣の腕を磨き、その剣の腕前のみで近衛兵の隊長にまでのし上がったのだ。しかし、その直後にヴァンパイアたちがこの世界に現れ、騎士にある要求を突き付けた。ヴァンパイに与すること事。できなければ、お前の故郷の者たちの命はない。そんな内容の要求を突き付けられた騎士は迷いながらも、王を殺害。そして、そのままヴァンパイアの手先として人類と戦い、世界が支配される直前に人類に殺されたという内容だった。
「それって…」
「あ、あなた誰ですか?」
 声のした方向を向くと、そこには一人の少女が珠璃を怯えたような表情で見ていた。
「ああ、ごめんなさい。ちょっとあなたのおばあちゃんと話をさせてもらっていたの。もう行かせてもらうわ。」
「ええ、とっても楽しかったわ。」
「あ、そうだ。あなた、村を襲ってる騎士たちがどこから来るか知ってる。」
「え?騎士たちですか?いつも南門から入ってきますけど。」
「そうなの、ありがとう。」
 まだ状況を上手く呑み込めていない少女はあっさりと騎士たちの来る方向を教え、老婆の世話をしに戻っていった。
 珠璃は南門をでて、適当な方向にしばらく歩いていると、生物の死骸を発見した。それはダークセイヴァーの世界において魔獣と分類される生物である。しかし、特筆すべきなのはその死骸には人間くらいの大きさの爪や歯の跡が残されていることだ。
「これ、予知にいたっていう取り巻きがやったのかしら。噛みついたり引っかいたり、ゾンビみたいね。」
 珠璃は言いながらも、周囲に意識を向け、殺気を感じないかを探る。しかし、さっきどころかこの周囲からは何も感じられなかった。
「どうやら普段はこの村の近くにはいないみたいね。」
 それを確認した後、珠璃はしばらく村の外を探索するのであった。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

イヴ・クロノサージュ
得意分野:WIZ

なんて酷い現状なのでしょう...。
希望を持った人なんて誰もいません。

兎も角、まずは情報収集
村長から話をきいてみましょう
その後村人たちとお話しして
手持ちの食料を分けながら怪我している者がいれば、ユーベルコード【生まれながらの光】で皆治療してあげます。

もしもの時は、私が捕虜にでもなるしかないかな...(涙目

でも戦う意思は忘れちゃいけないです。
ひっそりと戦う武器や道具を用意してねって伝えたいです。
きっとその準備が応援でやってきたイェーガーたちの助けになるです。

そして時間ある限り全力で
弱気で泣き虫な人形は小さな勇気を振り絞って村人たちを励ましにいくのです。
皆がまた笑顔で笑えるように


リーヴァルディ・カーライル
…情報収集とか、そういうの、ホント苦手…
暴力は駄目とあらかじめ釘を刺されたし…是非も無し
探索や交流は他の人たちに任せて…まずは私達の実力を、村人にしらしめよう

…献上用の肉が積んである荷車
あれを岩のような大男じゃなくて、私みたいな小柄な人間が動かせば…
…こちらの言う事に耳を傾けてくれるかな?

…血統覚醒して、荷車を持ち上げてみることができれば、なお良し
先に他のメンバーと相談して、ヴァンパイア化している姿を村人に見せないほうが良いと判断したら、
外套で顏を隠しておくか、血統覚醒自体を使わない

「…あまり常識で私達を測らないほうが良い」
「昨日まで大丈夫だった。だから明日も…。そんなこと、誰が保証するの?」



ヴァンパイアの血を引くリーヴァルディは村人から警戒されることを避けるためにイヴと行動を共にしていた。といってもリーヴァルディの方はそもそも必要以上に話さない性格であったため、イヴは無口なリーヴァルディとの距離を掴みかねており、二人の間には全く会話が始まらない気まずい空間が形成されていた。
(何か話した方がいいですよね?協力して、情報収集するわけですし。多分大丈夫ですよね?よし…。)
「あの――」
「見つけた。」
「ふぁい!?」
「なに?」
「い、いえ。なんでもないです。」
 見ると開けた広場のような場所で数十人の村人たちが集まっていた。集まっている人は老人から子供、軽傷者や重傷者などが区別なく、荷車に肉や野菜を運んでいる。どうやら次の贄の準備をしているようだ。
「村人との交流はあなたに任せるわ。」
「わ、私ですか?うぅ、わかりました。」
 そうして、二人は村人の集まりに近づいていく。村人たちがよそ者の存在に気づき、警戒を向け、その中から、比較的身なりのいい若者が村人たちを守るように前に出て来た。
「誰だよあんたら。」
「えっと、警戒しないでください…というのは無理ですよね。私たちは猟兵という者です。この村に現れる騎士たちからあなたを守りに来ました。」
 その言葉に村人たちはざわついた。今まで自分たちの前には騎士たちと戦おうなどと考えるものは一人もいなかったからだ。ましてや、年端も行かない少女がそんなことを告げてきたことに村人のほとんどは警戒を露わにした。
「お前らみたいな子供があいつらと戦うってのかよ。」
「馬鹿言うな。」
「私たちには冗談を聞いてられるほど余裕なんてないのよ。」
 口々に反論し取り付く島もない様子の村人たちの態度に困るイヴ。すると、さっきまで後ろにいたリーヴァルディが突然荷車に向けて歩き始めた。
「なら、冗談じゃない事を見せるわ。」
 リーヴァルディは贄のために用意されていた荷車の前に立った。
「血統覚醒」
 そのつぶやきと共にリーヴァルディの瞳が真紅に変化し、その容姿もみるみる姿を変えていく。牙が伸び、体から発せられるオーラは先ほどまでの少女とは到底思えないほどの圧倒的な存在感を放ちだした。そして、村人たちはその姿に驚きながらも、世界の支配者の姿を思い出していた。ダークセイヴァーに住まうものならば知らないものはいないヴァンパイア。彼女からはそれとよく似たオーラを感じ取っていた。このリーヴァルディは貢物が大量に入った荷車を軽々と持ち上げ、それをそのまま村人たちの目の前に下して見せた。
「これで少しは私たちの力も信用できる?」
 彼女の言葉に対して村人たちは皆一様に静まり返っている。
「あ、あの、リーヴァルディさんはその、ちゃんと私の仲間なんです。あ、私の力もお見せします。」
 イヴはゆっくりと手を広げると、村人たちに聖なる光が注がれ、彼らの傷がみるみる塞がっていく。そして、全員の傷が癒えると同時に光は収まった。イヴは息も絶え絶えに村人たちを見渡すものの反応がない。しかし、村人の目には恐怖ではなく、彼女たちが何者なのかという困惑の色が浮かんでいた。イヴも反応がないことに戸惑っていると、先ほどの若者が声をあげた。
「わかったよ。話くらい聞くよ。正直何が何だか分かんないけど、あんた達が普通じゃないってことはわかったし。傷も治してくれたことには感謝しなきゃいけないし。」
「ほ、本当ですか?ありがとうございます。あ、わたし、イヴ・クロノサージュといいます。こちらはリーヴァルディ・カーライルさんです。」
「俺はこの村で村長をしているものだ。」
「…村長?ずいぶん若いのね」
「俺はオヤジの跡を継いだばかりなんだ。…オヤジはこの前騎士に殺されたから…」
「ッ!…それは失礼しました。」
「…騎士たちはただ気まぐれに人を殺すんだ。オヤジだって犠牲者の一人だ。生贄以上の人数をこの前だって何人も殺されたんだ。それでも、みんな逆らえない。だって、挑んでも殺されるだけだから。だから、贄があるから大丈夫って言い聞かせるしかない。」
 若者はどこか諦めに近い表情を浮かべながら吐き捨てた。現実逃避をしなければ、生きていくことすらできない。そんな悲痛な思いを全ての人が抱いているのだ。
「…その、騎士について何か知っていることはありませんか?」
「さあな。基本的に村を攻撃するのは取り巻きの方だ。あいつは後ろの方で眺めてるだけ。でも、あいつがやばいってことはよくわかるんだ。多分この村の全員が束になっても涼しい顔しているんだろうよ。だから、誰も逆らえない。」
「ねえ、そいつ誰かの血を吸うとかしたの?」
「いや。してねえよ。あいつは人を殺すときは剣しか使ってねえ。身の丈くらいの長さがあるやつだ。」
「なんだ、じゃあ、そいつ自体はヴァンパイアじゃないのね。」
「でも、俺たちは騎士も怖えが、取り巻きも怖い。あいつらはボロ布を頭まで被っているんだが、その下の顔が俺の隣の家に住んでいたやつで贄として奴らに渡された奴だったんだ。顔とか腐ってるみたいに爛れてて、一瞬誰だか分かんなかったけど、気付いた時には震えたよ。連れていかれたやつらはみんなこうになるんじゃないかって気づいてよ。きっと次来た時にはもっと数が増えてるんだ。」
 若者の恐怖に満ちた態度にイヴは絶句するしかなかった。この村の惨状は予め聞いていたことよりもずっとひどい。村人たちに怒る気力すらも与えず、滅びていくことだけを受け入れるようにオブリビオンは村人を追い詰めている。
「もういいだろ。これ以上は思い出したくないんだ。」
「…わかりました。気休めかもしれないですけど、希望は捨てないでください。私たちが何とかしますから」
「…生き残りたいなら戦う覚悟、しといた方がいいよ。今までは生きてこられたけど、次も大丈夫なんて、誰かが保証したの?」
「それは…」
 うつむいた若者を背に二人は村人たちから離れていった。
「あ、あのリーヴァルディさん。ありがとうございます。」
「何が?」
「その、説得を手伝ってくれたので。」
「任務だからよ。それよりも私の事はリーヴァでいいわ。」
「良いんですか?」
「長いのよ。」
「じゃ、じゃあそうさせてもらいますね。リーヴァさん。」
「ん。」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

デナイル・ヒステリカル
抑圧された環境に存在するコミュニティは排他的になる可能性が高く……つまり僕のような余所者は歓迎されない可能性も高い。
「でもそれは辛い目に会っている人を助けない理由にはならないよね」

情報の収集については、誠心誠意向き合って、来る未来について一人一人説得して信頼してもらうしかないかな。
……こんな時「絶対に助ける」と確約できる会話パターンが僕にもあればいいのにな……
うん。最善を、尽くそう。

どんなに些細な情報でも集積すれば全貌の一端くらいは見えてくるはず。
得られた情報を元に、電脳ゴーグルを使用したシミュレーションで、オブリビオンの脅威についてある程度の詳細なパターンを割り出せないかやってみよう。



デナイルの周りに村に入った猟兵が全員集まり、情報を交換していた。
「じゃあ、これから電脳ゴーグルを利用して、村がどんな状況に晒されていたのか、前回の襲撃をシミュレーションでまとめてみるよ。僕が村人から聞いた情報と皆さんが持ってきた情報を合わせれば可能なはずだ。」
 デナイルは目にゴーグルを当て、起動すると、デナイルの目の前に精巧に作られた町の南門の景色が展開された。程なくして、村の外から騎士を先頭に5人の松明を持った取り巻き達が村に入ってきた。彼らはまっすぐに贄の置いてある広場に向かい、そこで跪いている村人たちの前で止まる。村人の先頭に立っていた老人、村長は騎士に向かって少し話したかと思うと、突然、騎士が村長の首をはねた。村人はその突然の出来事に恐怖し、一斉に逃げ出しそれを追うように取り巻き達は被っていたボロ布を取り払い、村人たちを追い始める。まるで腐っているかのような爛れた顔の取り巻き達は村人たちを噛み殺す、爪で引き裂くなどの理性など感じさせない動きで村を蹂躙し、まさに地獄のような光景を展開した。しばらくそれが続き、後ろに控えていた騎士が手をあげたかと思うと、取り巻き達は死体を拾い上げ、荷馬車に乗せた後に、元来た道を戻っていく。そして、騎士たちが村を出ると同時に電脳世界はブラックアウトした。
「ふう、終わった。いやあ、なんというか年齢制限が必要な内容だったな。」
 デナイルはそう嘯くものの、目は全く笑っていなかった。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 集団戦 『篝火を持つ亡者』

POW   :    篝火からの炎
【篝火から放たれる炎】が命中した対象を燃やす。放たれた【赤々と燃える】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
SPD   :    篝火の影
【篝火が造る影に触れた】対象の攻撃を予想し、回避する。
WIZ   :    新たなる亡者
戦場で死亡あるいは気絶中の対象を【自分と同じ姿の篝火を持つ亡者】に変えて操る。戦闘力は落ちる。24時間後解除される。

イラスト:トギー

👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


猟兵たちが情報をまとめている中、村がなにやら騒がしくなってきた。
「おい、急げ!また来るぞ!」
「もう?!早すぎる。」
「早く贄の用意を!」
 そんな言葉が聞こえて来た。南門の方を見ると近づいてきていたのは情報に聞いていた騎士たちとその取り巻き達。ただ、違うとするならば、予想していたよりも多い数の取り巻き。そして、篝火は松明ではなく、不思議な雰囲気を放つ杖に灯されていた。その違いに村人たちは感じた。今回はいつもとは何かが違うと。
デナイル・ヒステリカル
本来ならば周辺被害を考えて、村の外で対峙したかったんだけどね……。
「だけどまだ凄惨な出来事にはなっていない」
「ここには僕たち猟兵(イェーガー)がいる」

電脳ゴーグルを使用して敵の情報収集をするよ。前回は持っていなかった武器を警戒する。

エレクトロレギオンを使用して数の不利を埋めようか。味方の猟兵が敵を逃す事は無くても、相手の数が多ければ、取り零しが有り得るかもしれないから。

優先するべきは村人の人命、家屋資材財産。そして仲間の身の安全。
攻勢よりは守勢を重視し、もし危ない場面があれば仲間の盾となる事。
そういう命令を機械兵器に指示するよ。



広場へと続く比較的広い道を進んできた10名の亡者たちは進行方向に存在する猟兵たちを前にして立ち止まる。自分たちの目の前にあるイレギュラーな生命体に対して、紛うことなき殺意を向けていることを感じる。
「もう侵入してきたか。村の外で対峙したかったんだけどね…。仕方ない、エレクトロレギオン!」
デナイルは指を鳴らす。パチンという音が響くと同時に背後に90機にも昇る人型の機械兵器がうつむいた状態で召喚された。機体はすべて小型でおもちゃのロボットを思わせるような風貌ではあるものの、背後の道を埋め尽くすほどの数は戦場において一種の脅威を生み出している。
「全機、陣形を守備に。優先守備対象は村人、家屋や資材、そして、僕と同じ猟兵の皆さん。オブリビオンたちを一人も戦闘エリアから逃がさないように。また、各自敵の攻撃が守備対象に命中しそうになり次第、即座にカバーに入れるように展開。」
命令を受けた機械兵器たちは一斉に顔をあげ、目を光らせる。と同時にブースターを噴出し、デナイルの背後から飛び出した。半数は戦場となっている通路を囲むように展開し、もう半数は戦場の中で随時飛び回ることで機械兵器によるバトルフィールドを形成した。展開を確認したデナイルは電脳ゴーグルを再度付け直す。
「さって、どうも今日は情報にないものがいくつかあるみたいだね。相手の戦力を再評価しないといけないな。」
ゴーグルを起動し、亡者たちに目を向ける。亡者たちのもつ篝火は風が吹いても揺らめくことのない明らかに通常とは違う炎を灯しており、電脳ゴーグルからは魔法的な力が込められていることと、亡者そのもの以上の警戒対象であることが解析結果として提示された。
「皆さん、あの篝火には気を付けて。前情報がない上にどうも普通の炎ではないみたいだ。戦闘をしながら、僕が随時情報を更新していくよ。」
全員に警告を告げるとデナイルは亡者の群れの背後にいる黒い騎士に目を向ける。
「あれが騎士…悪いけど、僕たち猟兵がいる限り、予知の通りになんかさせないさ。」

成功 🔵​🔵​🔴​

トリテレイア・ゼロナイン
【POW】
普段より取り巻きの数が多い…?
間違いなく予知やシュミレーションで予見された虐殺が目的でしょう
相手が私たちを認識すればすぐに村は戦場となるでしょう
ならば騎士として振舞うこの身が取るべき行動はただ一つ、広場に集まっている住民の保護です

積極的に前に出て亡者達の攻撃から村人達を「かばい」大声で避難を促します。敵の炎は「盾受け」「武器受け」で軽減。
村人の避難がひと段落したら敵と戦う猟兵の皆様の盾として振舞いましょう

騎士として振舞う私の前での村人の虐殺など許しはしません。
爪、牙の一筋、火の粉の一欠けらも彼らに触れさせはしません。


伊兵・ミカ
贄なんて、ひどいことするな
ぼこぼこにしてやろう

前衛なら任せて
無敵城塞を使用する
攻撃はできないけど、耐えるなら任せて
最前線に向かい、敵の攻撃を一手に引き受ける
「あいつの攻撃は俺に任せて」
戦場にいる他の猟兵に向けて声を張り上げる
体が脆いだけがクリスタリアンじゃない

防ぎ手が他にいたら、交代で戦う
攻撃手段はないから、耐える
耐えるだけなら得意だから

敵の遠距離攻撃には注意する
中衛や後衛に攻撃が飛びそうになったら、庇いにいく

倒れそうになっても守るのが俺の役目



デナイルが展開した機械兵器のフィールドを受けて、亡者たちは一斉に篝火を掲げる。すると、灯っていた炎は赤々と炎を大きくしていく。戦場の近くにいた村人を避難させていたトリテレイアは危険を察知し、亡者たちを止めるために最前線に向かおうとする。
「ぬう、もう動き出しましたか。まだ村人の非難がまだ完了していないというのに」
「なら、僕が行く。」
 避難を中断して前線を向かおうとしたトリテレイアの前に現れたクリスタリアンの少年。
「僕はミカ。ちょうど今、この村に転移されたところ、事情はまだ飲み込めてはいないけど、敵はあの亡者の群れだよね。」
「援軍ですか。これは心強い。ええ、その通りです。彼らが罪なき村人を虐殺しようとする悪しき者どもです。ご助力いただけるのであればこの場はひとまずお願いします。」
「任された。」
 その言葉を聞くや否やトリテレイアは駆け出し、大声を出しながら村人の避難を再開した。残されたミカもまた走り出し、戦闘フィールドに突入した。直進してくるミカを見つけたすべての亡者たちは掲げていた篝火を振り下ろした。すると、篝火からいくつもの火球が飛び出し、ミカめがけて一直線に襲い掛かってきた。
「無敵城塞、起動」
 ミカは腕を盾を作るように構えたかと思うと、腕の部分の六角形の宝石が急激に膨張した。腕は宝石の盾の様に変化し、飛んできた火球を全て受け止める。
「ここから先は火の粉だって通さない。」
 ミカの鉄壁の防御に加えて、周囲には機械兵器も展開することで広範囲の守備空間を展開し、文字通りの無敵の城塞を形成していた。

 それから十数分、理性が既にない亡者たちは同じ攻撃を執拗に繰り返してきた。鉄壁の防御は崩れることはなかったものの補助をしていた機械兵器は数を減らし、盾にぶつかる衝撃にミカには僅かながらも疲れが見え始めていた――
「まだ…やれる。」
「いえ、ここからはわたしが引き受けましょう。」
 ――と、ミカの頭上を何かが飛び越え目の前に影が降り立った。影は飛んできていた火球を全て受け止めた。
「ミカ様、お待たせ致しました。これよりはわたしにお任せを」
 避難行動を終えたトリテレイアはミカの前に立ち、持っていた盾を掲げ高らかに宣言をあげる。
「御伽噺に謳われる騎士たちよ。鋼のこの身、災禍を防ぐ守護の盾とならんことをここに誓わん!」
 掲げたのは自らの姿を敵の前にさらし、仲間や守るべき弱者の盾となることを誓う騎士の宣言。トリテレイアの体にはみるみるエネルギーがあふれていく。
「おおおおおお!!」
 再度飛んできた火球を掛け声を出しながら打ち払う――と同時に石の床にひびが入るほどに地面を踏みしめ、その力で一瞬で亡者の群れにさながらロケットを思わせる速度で肉薄。速度と勢いが乗った盾を振るい、亡者の群れを吹き飛ばした。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

紫洲川・珠璃
探していたけれど、敵方からお出ましね。

とにかく敵の注意が村人達に向かないように、敵の気を引く為
フォックスファイアを、ばらばらの敵へ撃ち込み、自身に注意を引き付ける。
同じ様な考えの人がいれば協力できるかもしれないわね。
私に注意を引き付ければ、他の猟兵達が攻撃し易くなるかもしれないし

できれば戦いやすい広場のようなところに誘導したいところだけど誘いにのってきてくれるかしら

敵の篝火からの炎は、私の狐火で迎撃できるのかしら、できそうならやってみるわ
影は、自身の狐火を収束してより明るい炎の明りで篝火の影を打ち消そうとする
亡者は味方が操られてしまったら、気絶者の場合は被操者が大怪我しないよう峰打ちで対応する



「皆さん、どうやら奴らの篝火が彼らの攻撃の要みたいだ。特に火球と影だ。でも、彼ら自体の知性が低い影響で攻撃の方法は非常に単調。搦め手は絶対に使ってこないから奴らの火球と影を封殺することができれば、簡単に攻略することできるよ。」
 亡者たちが吹っ飛ばされた隙をついてデナイルは猟兵たちに解析結果を伝達していた。トリテレイアと共に南門近くに戻ってきた珠璃は戦闘エリアの少し後ろに控えていた。伝達を聞いて珠璃はゆっくりと刀を鞘から抜く。
「なるほど、どうやら亡者たちは大したことなさそうね!」
 珠璃の周りを囲むように亡者たちの火球と同じくらいの大きさの狐火が16個浮かび上がる。珠璃は刀を頭の上にあげ、亡者たちに向けて、思い切り振り下ろした。
「飛びなさい。フォックスファイア!」
 10個の狐火は一斉に飛び出した。飛びながらもごうごうと燃え盛り、亡者たちの放った火球をぶつかるもののそれをかき消し、そのまま勢いが衰えることなく亡者たちに命中した。狐火の容赦のない炎が亡者たちを覆い隠していたボロ布を焼き尽くす。
「ついでにこれよ。」
その言葉に合わせて残った6つの狐火も飛びだした。しかし、狐火は亡者たちの頭上に行ったかと思うと、6つ全てが互いにぶつかり合った。すると、狐火は1つに合体し、太陽のごとき輝きを放ち始め、ダークセイヴァーの暗闇に慣れた目はその光の強さに大きなダメージを与えることになった。
「トリテレイアさん、ミカさん、デナイルさん。この場では戦いづらいわ。今なら影も潰して亡者たちは攻撃してこれないから今のうちに広場に移動を。」
「心得た。」
「わかった」
「そうだね。もう、エレクトロレギオンのバックアップも限界に近かったからね。」
 戦闘を展開していた面々は珠璃の言葉を受けて広場の方へ駆け出していった。

成功 🔵​🔵​🔴​

リーヴァルディ・カーライル
…贄を用意する必要は、無い
貴方達は巻き込まれないように、下がってなさい
…避難していない村人がいたら一声かけてから南門に向かう、ね

…事前に敵の情報を聞いた段階で、耐火性能を上げるよう『防具を改造』しておく
敵の攻撃は回避優先で行動、『第六感』が危険を訴えたら全力でその場を退避
…回避しきれない攻撃は『武器で受け』、少しでも被害を軽減する

攻撃は【限定解放・血の波濤】を主軸に…
瞬間的に吸血鬼化した『怪力』で大鎌を『なぎ払い』、
『生命力を吸収』する血色の波動を周囲に放出して『範囲攻撃』を

この亡者も元はこの村の住人…家族や友人だった
でも、生者に害を為すなら滅ぼすしかない
だから…せめて安らかに、眠らせてあげる



イヴとリーヴァルディはこの期に及んで贄を用意しようとする村長や数名の村人たちの説得をしていた。
「で、ですから、ここは危険ですから。ひとまず広場から離れてください。」
「だけど、贄を用意しないと俺たちは…」
 頑なに贄を用意しようとしている村長たちに対して、リーヴァルディは軽くため息をついた。
「…贄を用意する必要は、無い。貴方達は巻き込まれないように、下がってなさい。」
 村人たちにそれだけ言い残すと、リーヴァルディはそのまま戦闘が起きている方向を向き、歩き出した。
「あ、あの、リーヴァさん。まだ、避難が…」
「そっちは、イヴに任せる。もうすぐ珠璃達が広場に敵、連れてくる。」
「ええっ!?」
(念のために、防具の改造はやっておかないと、いけないわね)
 イヴの悲鳴を背にリーヴァルディは先ほどデナイルから受け取った伝達を受けて防具の耐火性能の強化を始めた。そして、強化が終わると同時に珠璃達が広場に入ってきた。
「リーヴァルディさん。もう少ししたら亡者たちも広場に入ってくるわ。」
「わかった。後は、任せて。」
「あなた一人で大丈夫なの?」
「ヴァンパイアのつながりなら、私が狩る」
 そう言いながら、身の丈以上もある大鎌を取り出した。すると、広場の入り口の方から複数の足音が聞こえてくる。リーヴァルディは大鎌を両手で持ち、腰に添えるように構えた状態で体勢を下げ、うつむいた。
「元はこの村の人でも、今は敵。せめて安らかに、眠らせてあげるわ…。」
 呟きと共にタッと迷いなく亡者の群れに向かって走り出す。当然自分たちに向かってくる生命体反応に対して、亡者たちは篝火を掲げる。そして、振り下ろされようとした瞬間――
「……限定解放。薙ぎ払え、血の波濤…!」
 ほんの一瞬、広場に流れる空気が変わる。恐怖、敵意、狂気、緊張、そして殺意。いくつもの感情がうずまく戦場においてその一瞬だけ強烈な殺意に満ちた空気が広場を満たす。リーヴァルディからあふれ出すヴァンパイアとしての威容はその一瞬だけ戦場の流れを自分のものとしたのだ。リーヴァルディはすでに亡者の群れに接近を完了していた。そして、腰に添えていた大鎌を風を切る音を鳴らしながら右手だけで振るう。血色の波動が広がり、先頭から5体の亡者はあまりの衝撃にはじかれるように吹き飛んでいき、地面に転がった。吹き飛んだ亡者たちはそのまま動く事なくただの死体に戻っていた。
「こいつら、結構消耗、してたみたいだし、半数くらい、持って行けた?」
 ヴァンパイア化を解除したリーヴァルディはあまり疲れを感じさせない様子で残った亡者たちを見ていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

イヴ・クロノサージュ
得意分野:WIZ
能力判定:怪力、吹き飛ばし、優しさ

若い村長さん、見てて下さい…!
これがわたしの、いやわたし達の力です……――!!

ユーベルコードで召喚されるズシンと現れる2体の機械鎧兵
文明の違う世界では、見た事のない兵器に驚くかもしれませんが
この子たちは力持ちなんですよ!(えへん)

*ウィィィ――!!*
*ゴゴッ*

機械鎧兵に機械鎧兵武装《ブラスターアーム》を装着!
亡者たちを強力なアーム《怪力》で《吹き飛ばします!》
魔導巨兵は私の傍で壁になって護衛して下さい!

言ったでしょう…?希望を捨てないで下さい、と!
機械鎧兵からプシューと熱風が吹き怯える村人たちに力強いガッツポーズをしてエールを送ります



「す、すごい。あんな小さい子が…」
 村人の一人が小さな声を漏らした。イヴは小さく微笑み、立ち尽くしていた村長に向き合った。
「若い村長さん、わたしたちはあなたたちを救うために、この村にやってきました。あなたたちはわたし達が守ります。だから、見てて下さい…!これがわたしの、いやわたし達の力です!!」
 イヴは踵を返し、亡者たちのいる方に向き直ると、虚空に向かって叫んだ。。
「お願いです…!私の騎士達、来て下さい…っ!魔導召喚―――ディメンションリンク・ガーディアン!!」
 少しの沈黙の後、突然地鳴りが響き始めた。村人たちが何事かと慌てていると、何もなかった空間から突如として、人間を優に超える大きさの機械人形がズシンという音ともにその場に現れた。村人は文明が根底から異なる存在を前に呆然と口を開けて、見上げている。
「攻撃対象はあそこにいる亡者の群れを、防御はわたしの傍で村の皆さんを一緒に守ってください!」
 命令を受けた2体の機械人形はウィィィ――!!という音を立てながら起動する。前に立って機械人形は右手に装着されている巨大な砲台を向ける。すると、砲台の先に光がみるみるたまっていき、強い光を放ち始めた。そこに内蔵されたエネルギーはすこし離れた位置にいる亡者たちにもその力の奔流が伝わっているようで、それよりも近くにいるリーヴァルディをよそにイヴたちに向けて、火球を飛ばしてきた。しかし、放たれた火球は全てイヴの近くに立っていたもう一機の機械人形に阻まれ、少々焦げ跡を残す程度のダメージしか与えることができなかった。
「臨界点、ブラスターシュート!!」
 イヴは右手をバッと亡者たちの群れに向けると、収束されていた光が一気に解放される。砲台が向けられていた方向へ一直線に放たれる極太の光線は再度放たれた火球を飲み込み、亡者たちの足元へ着弾し、爆発。残っていた亡者たちを一撃で吹き飛ばした。あまりに強い爆発で爆風が猟兵たちの肌をチリチリと小さく焦がし、着弾した広場の地面には大きな穴を開けていた。
「あ、あれ?ご、ごめんなさい。臨界点は少しやりすぎてしまったみたいです。…でも、わたしたちがこの力であなた達を守ります。ですから、もう一度言わせてください。希望を…捨てないでください!」
 プシューとクールダウンの熱風を放つ機械人形を背後にイヴは村人たちに向けて、ガッツポーズをする。村人たちはそんなイヴ達をただただ、呆然と見つめていた。しかし、その目には初めて会った絶望しきった目とは違う色を含んでいた。

成功 🔵​🔵​🔴​




第3章 ボス戦 『異端の騎士』

POW   :    ブラッドサッカー
【自らが他者に流させた血液】を代償に自身の装備武器の封印を解いて【殺戮喰血態】に変化させ、殺傷力を増す。
SPD   :    ブラックキャバリア
自身の身長の2倍の【漆黒の軍馬】を召喚し騎乗する。互いの戦闘力を強化し、生命力を共有する。
WIZ   :    フォーリングローゼス
自身の装備武器を無数の【血の色をした薔薇】の花びらに変え、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。

イラスト:神手みろふ

👑17
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「なにやら今日はいつもよりも荒れているな。」
亡者たちが一掃された広場に声が響く。ガチャッガチャッと甲冑があたる音を響かせながら歩いてきたのは先ほどまで後ろの方で戦闘を静観していた禍々しい気を放つ騎士というべき姿の者だった。
「今日が最期の日だと知っての抵抗だとしても少々、強気に出ているものだな?」
対峙した瞬間に感じる先ほどの亡者たちとは別格の存在感と禍々しさを放つ騎士は亡者たちが手も足も出なかった戦闘を見ていながらもまるで動じていないようだった。騎士は剣に手を掛け、静かな殺気を猟兵たちに向けている。
「まあいい。貴様たちを殺し、村も滅ぼした後に、その死骸はまとめて我が主の元に連れて行ってやろう。」
リーヴァルディ・カーライル
…ケホ、ケホ。すごい、爆発。
今の、もしかして敵の攻撃、だった…?
でも何だか、後ろから飛んできたような……?

…ん、ようやく本命のお出まし
さっきのが何だったのか気になるけど後回し、ね
あなたの主もあなたも、諸共に滅ぼしてあげる
それが私の誓い。過去が、私の前に立たないで

…敵の攻撃は『第六感』をたよりに回避し、
『力を溜め』た大鎌を『なぎ払い』『武器で受け』る
そうして敵の攻撃を『見切り』、隙をついて【限定解放・血の聖槍】を発動
瞬間的に吸血鬼化した『怪力』で掌打した後、
『血と生命力を吸収』する『傷口を抉る』魔杭で『2回攻撃』を行う


…ん。やっぱり剣技が主体?
じゃあさっきの爆発は一体……?



リーヴァルディは未だに残っている爆風による煙にむせていた。
「ケホ、ケホ、何?今の爆発。もしかして、あれがやった?」
 視線が騎士に向く。先ほどの爆風を目にしていたはずの騎士はなおも泰然と広場に立っている。
「後ろから、来たみたいだけど。どちらにしても、あなたもあなたの主も、滅ぼす。」
 リーヴァルディは大鎌を両手に持ち、一気に騎士との距離を詰めた。自らに向かってくる敵に対して、直立のまま騎士は手を掛けていた剣を横なぎに振るうが、それをかがんで回避する。そして、その状態のまま両腕に力を込め、大鎌を薙ぎ払った。しかし、騎士は剣を持ち手を中心に反転させ、迫りくる刃を難なく防いだ。
「私は誓いを、果たす。過去が、私の前に立たないで。」
 リーヴァルディは大鎌から手を離した。大鎌が地面に落ち、自由になった片手が騎士の胸を捉える。
「……限定解放。…刺し貫け、血の聖槍…!」
 ヴァンパイアとなったリーヴァルディの掌打が騎士の胸に叩き込まれる。直後、即座にヴァンパイア化を解除され、バチンッと一気にリーヴァルディからあふれ出ていた力が弾ける。すると、弾けた力が掌打を打ち込んでいた手に集中され、その力は血の色をした杭の形をとって、騎士の鎧を抉った。
「……なるほど。この血と生命力を吸われる感覚。そして、先ほどの力。貴様、ヴァンパイアの血を引く者だな。」
(…効いてない?)
「だから…何?」
「領主様と同じ力を引くものならば、私に相応の傷を不思議ではないと思っただけだ。最もその力は遠く及ばないがな。」
 突然、危険を感じ取ったリーヴァルディは即座にバックステップをとる。直後、リーヴァルディがいた場所に騎士が振り下ろした剣が地面にぶつかり、火花を散らす。騎士は鎧に大きな傷を残してはいるものの、いまだにその立ち振る舞いは悠々としたものだった。
(危なかった。予兆も全くなかったのに、あんなに早く剣を振るってくるなんて。でも、やっぱり剣が主体。…あれ?それなら、さっきの爆発は一体…)
 騎士と距離をとったリーヴァルディは初撃での攻防から思考を張り巡らせた。

成功 🔵​🔵​🔴​

紫洲川・珠璃
「我が主の元?聞き捨てならないけど、あなたに主にあたる人物が他にいるという事?」

異端の騎士の言葉が気になるけど、制圧しないと話を聞けなさそうね
もし切り結びながらでも、情報を聞き出せるなら主やらについて詳しく情報を得たいのだけど

敵は強大。であればこちらも全力で応じるしかないわね
すぐに妖剣解放を使って、攻撃を始めるわ
両手持ちした一刀流で戦闘
斬衝撃派で牽制しつつ肉薄、妖剣解放による速度向上とさらに【2回攻撃】での手数で切りつけるわ
全身鎧だと刃は通り辛いでしょうけど、関節の隙間、目などを狙って攻撃よ

妖剣解放詠唱句
「我、此処に解き放ちたるは、亡者の怨嗟。妖気解放、刀氣解放!いざ此処に力顕せ!虚鐵!!」



「リーヴァルディさん!あの騎士、直撃受けたように見えたんだけど…とんでもないわね。これは全力で行くしかないわね。」
 リーヴァルディとの激突を見ていた珠璃は刀を頭上に掲げて、意識を集中させる。
「我、此処に解き放ちたるは、亡者の怨嗟。妖気解放、刀氣解放!いざ此処に力顕せ!虚鐵!!」
 命を削る妖刀との契約を宣言する。妖刀からは禍々しい紫色の怨念があふれ出す。怨念は刀身から持ち手を伝って珠璃の全身に行き届き、体に妖刀との契約を示す紋様を刻み付けた。珠璃は一瞬顔を苦痛に歪ませるも、刀をそのまま両手で持ち、振り下ろした。
「破ッ!!」
 振り下ろされた刀は空を斬るだけに留まらず、騎士に向かって衝撃波を飛ばし、珠璃は衝撃波の後ろに追従しながら、一気に騎士に肉薄した。リーヴァルディがいる方向とは正反対の方向から飛んできた衝撃波を察知した騎士は振り返りざまに剣を強く振り抜いた。衝撃波が真っ二つに切れそのままかき消える、と同時に追従していた珠璃が切り上げる。
 ガキンッ!!!と金属と金属がぶつかり合う音が広場中に響いた。騎士はすんでの所で腕を挟み込み、小手の部分で珠璃の刀を防いでいた。
「やっぱり刀じゃ通らないみたいね。」
「領主様と同じ力に続いて、今度は妙な力を宿した女か。随分と妙な連中が紛れ込んでいるようだな!」
 騎士は腕に力を入れ、珠璃の刀を振り払った。珠璃は一度後方に飛んでから、地面を蹴り再度、騎士に跳ぶように接近し、目にもとまらぬ速さで2回切りつける。しかし、騎士はそれにギリギリのところで対応し、鍔迫り合いの状態となった。
「なるほど、この力。先ほどの娘といい、領主様の元に連れて行けばさぞお喜びになるだろうな。」
「ぐっ、それよ。あなたさっき言ってた我が主ってどういう事よ。貴方の主はヴァンパイアじゃないの?領主様ってヴァンパイアの事でしょ?」
「ふん、何をいうかと思えば、我が主など領主様に決ま…って…?」
「?」
「い…や、ちが…う。我が…主は国王陛下。ヴァンパイアではな…ううっ!いや、違う!!私が仕えるは領主様…ヴァンパイア様…ぐううっ!!」
 突如、騎士は頭を抱えながら後ずさる。自分の中にある何かを否定するかの様に何度も頭を振り、戦闘中でもありながら、完全に無防備な状態を晒していた。珠璃はその豹変ぶりに呆気にとられていたが、すぐに我に返り、再度構え直す。そして、鎧の関節部を狙って騎士に高速で接近し、勢いのままに刀を振り下ろした。
「斬ッ!!」
 刀から放たれる衝撃波と刀そのもので同時に斬りつける一閃は鎧の関節部を難なく叩き斬り、騎士の体を深々と斬りつける。鎧の隙間から鮮血が舞い散る。
「戦闘中にそんな隙だらけなのはどうかと思うわよ。」
 珠璃は刀についた血を払いながらも、騎士を警戒する。しかし、騎士はつけられた痛みを完全に無視し、なおも頭を抱え、何かを呻いている。
「主…あるじ……わが…あるじは………ガアアアアアアアアアア!!!!!」
 突然、騎士は絶叫をあげたかと思うと、剣をでたらめに振り回し始めた。周囲の物をめちゃくちゃに破壊し始め、珠璃は慌ててその場から飛び退いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
騎士と振舞うものとして貴方の凶行は看過できるものではありません
その主命を果たすのも今日を最後にして頂きます

とはいえ相手の騎士はなかなかの手練れ、まがい物の騎士の私の腕では攻撃を凌ぐので精一杯といったところでしょうか
ならば無理をしてでも届かせましょう

接近戦を挑み「盾受け」「武器受け」で攻撃を凌ぎつつ相手の体力と集中を削ります。仲間の猟兵が大技を繰り出す際にはこの身を呈して「かばい」つつ相打ち覚悟の「怪力」大盾殴打で「鎧砕き」
騎士の鎧にヒビをいれて差し上げましょう


デナイル・ヒステリカル
先ほどの亡者たちとは質の違うオブリビオンのようですね……。
剣を携えている事から、近接戦闘系だと推測できます。
「だけど、それだけしか出来ないという先入観を持ってはいけないな」
戦場は村。人の住む場所。
範囲攻撃や遠距離攻撃によって周辺被害が出ないとも限らないんだ。

引き続き、電脳ゴーグル越しに敵の情報を精査するよ。
敵の行動パターンを集積して攻撃予測を立てるよ。

敵がどう動くのか。
それを完全に予測できれば、近接攻撃が苦手でも、ある程度は打撃力になり得るんじゃないかな。
ユーベルコードを使用して、自分の動きを早め、オブリビオンに打撃を通し、周辺被害を出さないために村の外まで押し出そうとするよ。



電脳ゴーグルで騎士を解析していたデナイルは突然の騎士の乱心に戸惑っていた。
「なんなんだ?!あの騎士、いきなり暴れだして。これじゃ、攻撃予測が立てられない。」
「聞いていた会話では自分の主が誰なのか分からなくなっているようですね。」
「トリテレイアさん…今までの解析結果によれば、騎士の攻撃は剣を主に使った近接攻撃だけだ。でもこのままじゃ、いつ周りに被害が出るか分からない。だから、騎士を村の外まで追い出す。協力してくれないかい?」
 トリテレイアはいまだ暴れ回る騎士に目を向ける。
「いいでしょう。私も騎士と振舞うものとしてこれ以上の凶行は看過できるものではありません。主命の事もそして、今の事も。」
「助かるよ。なら、しばらく時間を稼いでほしいんだ。」
「承知しました。」
 トリテレイアは了承と共に騎士の元に駆け出していった。デナイルはトリテレイアを見送ると、電脳ゴーグルを再度かけなおし、今度は戦闘用のプログラムの展開を始めた。
「御伽噺に謳われる騎士たちよ。鋼のこの身、災禍を防ぐ守護の盾とならんことをここに誓わん!」
 トリテレイアは騎士に向かって駆けながら誓いをあげ、暴れ回る騎士の剣を盾で受ける。騎士は完全に冷静さを失っているにも関わらず、的確に盾では覆いきれない部分を狙って攻撃を続けてくる。そして、騎士の渾身の一撃を受け止めたところで、そのまま押し切ろうと騎士はさらに力を込めて来た。
「ウオオオオオオッ!」
「くうっ、冷静さを欠いていても手練れであることには変わりがないようですね。珠璃様がつけた傷がなく、弱っていなかったら受けきれなかったかもしれませんね…。これだけの実力がありながら、外道に堕ちるとは…」
「領主様が私に命じたのだ。我が主が私に命じたのだ。ワタシは…命令のままにぃ!!」
「ならば、その主命は今日を最後にしていただきましょう。堕ちた騎士よ!」
「トリテレイアさん、準備が終わったよ!」
 後ろから駆けてくるデナイルを認識したトリテレイアは受けていた剣を盾の角度を変えることで剣の軌道をそらし、隙ができた騎士を突き飛ばした。突き飛ばされた騎士はよろめくも、その直後にデナイルが目の前に現れ、剣を横なぎに振った。しかし、それは初めからわかっていたかのように跳びあがって回避される。
「予測通りだ。冷静でないこの状態なら絶対にそうしてくると思ったよ。」
デナイルは空中でプログラムを展開する。
「優先順位変更。ターゲット捕捉。喰らって倒れろ…!セルフ・オーバーロード!!」
 多重展開されたプログラムが起動されると同時に、デナイルは騎士の前に降り立ち、即座に騎士を殴りつける。そして、続けざまにどこからともなく取り出したバーチャル短杖でもう一撃。そこから流れるように拳と杖による連続攻撃が繰り出され、騎士はみるみるうちに村の入り口の方に押されていく。
「トリテレイアさん、合わせて!!」
「承知しました!」
 連続攻撃の最後の一発に入ろうかというところで、デナイルは声を張り上げる。その瞬間、近くに控えていたトリテレイアがデナイルの隣に並び、デナイルは拳を、トリテレイアは盾を構える。
「「おおおおおおおおおおっ!!!」」
 二人の同時の一撃によって騎士は鎧の破片を散らしながら、村の外に吹っ飛ばされていった。
「ふう、うまく決まったけど、倒してきれたって感覚はないな。」
「あの鎧の頑強さもそうですが、騎士本人のタフさもあるでしょうね。戦闘はまだ続くでしょう。鎧にひびが入った程度で諦めるとは思えないです。」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​


騎士は村の外で大の字に倒れ伏しながら考えていた。珠璃に投げかけられた問いは騎士の思考を激しく乱していた。
(私の主はヴァンパイア様。領主様は私に命じられたのだ。村を滅ぼせと。村人は皆殺しにして連れて来いと。その命を果たすことが私の誇り。)
(私の主は国王陛下。我が主は私に命じられたのだ。村を滅ぼせと。村人は皆殺しにして連れて来いと。我が主に今度こそ最後まで仕えることが私の誇り。)
 騎士の頭に浮かぶ二つの名前。一つの命令。いくら考えても、結論は出なかった。だから、騎士は自らの誇りを信じることにした。
伊兵・ミカ
うん、絶対勝とう
見た目がかなり強そうだけど
こっちだって負けない

前衛で攻撃手でいく!
綾止刺剣で攻撃していく
敵の攻撃をよく見て、避けられるところは避ける!
目測なんだけどね
武器受けで攻撃を受けよう
味方が攻撃を受けそうになったら、武器受けで庇いながら戦う

「大丈夫?」
「まだ敵はピンピンしてるよ。頑張ろう!」
「弱音を吐きたくなるけど負けない!」


緋翠・華乃音
……随分と強気だな。追い込まれた末の強がりには見えないが……まあ、その傲りが仇になる。

戦法
先ずは遠距離からの狙撃だな。
「地形の利用」を行い、狙撃に適した場所での「スナイパー」
視界が悪ければ「視力」「暗視」で命中率の底上げを。
基本は「援護射撃」にて他猟兵のアシスト。
敵の攻撃や接近で狙撃を行えなくなったら近接戦闘に移行。
拳銃やナイフ、鋼糸等の多彩な武器を使い分けつつ、手数や技能で翻弄。
動体視力の良さを生かして敵の攻撃「見切り」ながら隙を見ては「二回攻撃」



吹っ飛んでいった騎士を追って最初に着いたミカはいまだ倒れ伏している騎士を目にする。その直後、騎士の体が動き、立ちあがった。リーヴァルディ、によって激しく損傷し、デナイル、トリテレイアによって砕かれた鎧の胸の部分からは騎士の体が露出している。しかし、いまだに騎士が疲弊している様子は見られない。しかし、剣を元々持っていた手から反対の手に持ち替えていることから珠璃からの刀傷を受けた肩はもはや使い物にならないことがわかった。
「あれだけ攻撃を喰らっていたのにまだ敵はピンピンしてるよ。よし、頑張ろう!」
 そう意気込んでいるとミカを視界にとらえた騎士は一直線にミカの目の前に飛び込んできた。騎士は腰のあたりで構えていた剣を斜めに斬り上げる。ミカは慌てて後方に飛び退く。しかし、ミカが体制を直しきる前に再度騎士は距離を詰め――ようとしたところで、騎士は急停止した。直後、騎士の足元が銃弾で穿たれた。銃弾が飛んできた方向を見ると、そこには村の塀の上に立っている華乃音が狙撃銃を構えていた。
「俺が援護する。君は前衛を」
「わ、わかったよ。」
 ミカはバスタードソードを構え、騎士と数合、剣をぶつけ合う。騎士の剣技がミカを上回っているものの片腕がほとんど使えないことに加え、今まで受けて来たダメージによる動きの鈍さや暗闇による視界の悪さもものともしない華乃音の精密な援護射撃を受け、少しずつ騎士は圧されていく。そして、何合目かの打ち合いで華乃音の射撃が騎士の剣の軌道を逸らし、大きな隙が生まれた。
「今だ!これでも、くらえ!綾止刺剣!!」
 ミカはバスタードソードを上段に構え、騎士の頭に向けて思い切り振り下ろした。当たれば、鎧もろとも切断する強烈な一撃を前に騎士は何の躊躇いもなくもう使い物にならない片腕を盾にした。
「なっ!!」
「ワタシハ…ワガアルジノタメニ…スベテヲササゲル…」
 騎士の片腕が地面に落ちる。しかし、騎士は何事もないかのように剣を振るう。騎士の行動に動揺するミカは迫りくる剣への対応が遅れ、思わず目をつぶった瞬間――
「――隙有り、だな」
 騎士の背後より華乃音の声が響く。村の塀から騎士の背後まで文字通り、一瞬で移動した華乃音は拳銃を突き付けていた。
「チェックメイト…」
 高速で引かれる引き金。拳銃から発射された複数の弾丸はほぼ同じタイミングで騎士に着弾し、鎧に小さな傷跡を残し、大きな衝撃を与えた。騎士は一瞬、華乃音を見ると動きを止めた。
「ブラックキャバリア…」
 地の底から響くような声と共に、突如騎士の傍らに騎士の2倍ほどの大きさの漆黒の軍馬が出現する。軍馬は華乃音に突進し、ミカを後ろ脚で蹴り飛ばした。少しの血を吹きながら2人はそのまま吹き飛ばされていった。
「ワガアイバヨ。オマエト…ワタシハ…ツネニヒトツダ。…ブラッドサッカー。」
 騎士は軍馬にまたがると剣を掲げる。すると、先ほどのミカと華乃音の血が騎士の剣に集まっていく。そして、吸収が終わると剣の形が変化を始め、剣身の両側から刃が3本ずつ互い違いに出ているような形状に変化した。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

イヴ・クロノサージュ
得意分野:WIZ
能力判定:戦闘知識、情報収集、怪力、吹き飛ばし、空中戦、盾受け、拠点防御、優しさ

いよいよ黒幕の登場ですか...。
フルカスタムされた魔導巨兵の出番ですね!
魔導巨兵は装備品の拠点防御用の広範囲シールドで
村人さんたちを大きく囲います

機械鎧兵は前線に向かい別の猟兵さんと連携をお願いします

私は機械の翼で空中に飛び
相手の弱点を分析して考えましょうか
他の猟兵さんがトドメをさせれば最高の結果ですね
サポート重視でみんなを支えます
敵に狙われたら怖いですけどね...

撃破出来れば村の人々や村長さんとお話して
じゃがいもの作りかたを伝えたり
機械鎧兵の説明しながら復興手伝ったりしてから
帰還できるといいですね


ルヴァイド・レヴォルジニアス
▼心情
遠慮ばっかりしてる嬢ちゃんがいるな
ここはちょっくら花を添えてあげなきゃいけないじゃん?
ウォーマシンとして力を貸してあげようと思う
一番非力そうで機械に詳しいヤツにパイロットになって貰おうか(他の猟兵を乗せる)

うちの旅団の団長か
乗ってみたいと言ってるヤツがいいな。勿論、無理矢理は乗せないぜ

▼戦闘
心情は本音だけどさ
パイロットには基本的に機械音声でアシストするぜ

陸戦フレームは5.5mの巨体、うまくいけば踏み潰せるぜ
武装はアームドフォートから放たれる《二連装荷電粒子砲》だ

▼台詞
ハジメマシテ
ワタシは最新型機械鎧兵・黒龍鎧兵
アナタの戦闘をサポートシマス。
ドウゾ、オ乗リ下サイ。

コノ村ヲ救イマショウ!!


クー・フロスト
▼心情
仲間がピンチときいてやってきた!
つよそおな黒騎士さんだなあ!
どれ、私もみんなの助力出来れば!

▼行動
魔法戦士として最前線で戦う!
配給されたルーンソードをぶんぶんぶんっ

他の猟兵さんの強力なユーベルコードを正確に当てれるように
ブレイクスクエアで脚狙いましょ!脚!

こかしたところで、他の猟兵さんが強力なユーベルコードで
大ダメージ狙えればめっちゃいい感じ

あと弱点?サポートさんが何かわかれば教えてほしいね!
私もみんなに伝えよーう!

黒騎士さん撃破したら
同旅団以外の人の他の猟兵さんとお話してみよう

実はわたしこれが初めての冒険だから
みんなの武勇伝聞かせてほしいな!
カッコ良い戦い方とかさ!
あたし憧れるのねっ!



「お願いです…!私の騎士達、来て下さい…っ!魔導召喚―――ディメンションリンク・ガーディアン!!」
再び現れた2機の兵は1機が村人の護衛になり、もう1機はイヴに追従していく。イヴが騎士がいるはずの村の入り口に着くと、そこには軍馬に乗った騎士がいた。
「あれは…馬ですか?なんだか状況が変わっているみたいですね。とにかく攻撃を――」
「おーい、だんちょーう!」
「え?ルヴァイドさん!クーさんも!来てくれたんですか?」
「ええ、仲間がピンチと聞いてやってきたわ!相手はあのつよそおな黒騎士さんね!」
「オレらはあんたに協力するぜ。なんなら、団長、あんたがオレに乗るかい?」
「…そうですね。なら、ルヴァイドさん。あなたに乗せてください。クーさんは馬の脚を狙ってください。動きが止められるはずです。」
「よっし。なら行くぜ!Code_Levide Les Volgianias; ―――承認。陸戦フレーム、スタンバイ。▼召喚サレタ装備ヲ装着シテ下サイ。」
イヴは召喚された陸戦フレームを装着する。
「ハジメマシテ。ワタシは最新型機械鎧兵・黒龍鎧兵。アナタの戦闘をサポートシマス。ドウゾ、オ乗リ下サイ。」
「わたしに対してもその口調じゃなくてもいいんですよ?」
「仕様なんだ。我慢してくれ。」
「ふふ、わかりました。では、まずは私の機械鎧兵と共に騎士を牽制します!」
 イヴが召喚した機械鎧兵とルヴァイドに乗ったイヴは同時にブラスターアームを発射する。亡者たちを吹き飛ばした巨大な光線とは違い、連射性の高い光弾が騎士を狙って発射される。騎士は馬を走らせ、地面が次々と抉れるほどの光弾の雨の隙間をスルスルと避け、イヴが召喚した機械鎧兵の真下まで到達し、通り過ぎざまに剣を一閃した。騎士が通り過ぎると、機械鎧兵の足が両足とも切断され、そのまま地面に倒れ伏した。巻き起こる土煙を背に騎士は馬を止め、今度はイヴたちの方を向くと、再び駆け出した。
「くすくすっ、真正面から来るのね。こっちに来るなら容赦しないわよ!」
「やっべ、団長のドSスイッチ入れちまった。」
 さらに出力を上げ騎士を狙い撃ちするが、それを全て回避していき、いよいよイヴの真下に近づいてきたところで、クーが飛び出した。
「いくわよ!」
 クーはルーンソードを振り回し、騎士に直接斬りかかる。しかし、騎士は馬を急速に加速させ、難なく回避され、クーは飛び掛かった勢いのまま、地面をゴロンと転がった。
「いってててて。外れた。」
「クー!あなたは脚を――」
「わかってるわよ!」
 イヴに返答を返すと、クーはルーンソードを腰の近くで構えた。
「これが私の十八番だよっ!なぎ倒すっ!《ブレイクスクエア!!》」
 ルーンソードを横なぎに振るうと同時にクーを中心に衝撃波が円形に放たれる。円そのものはあまり大きくはなかったが、クーをよけたばかりでまだ近くにいた騎士の軍馬の脚に直撃する。軍馬は大きくいななきながら、その前足を折った。
「今です。ブラスターアーム。高出力、スタンバイ!ルヴァイドさん、二連装荷電粒子砲を!」
「任せなっ!」
 倒れた機械鎧兵の反対側になるように位置どっていたイヴは合図をする。倒れ伏していた機械鎧兵は砲台だけを騎士の方に向け、ブラスターアームとルヴァイドが持っていた二連装荷電粒子砲はエネルギーをためていく。
「発射!」
 掛け声とともに、亡者たちを吹き飛ばした光線より少しだけ細い光線が2本同時に放たれる左右から放たれる。しかし、巨大な光線を前にしても騎士は一切慌てた様子も見せず、光線が着弾するすんでのところで、突然馬を踏み台にして跳びあがった。
「なっ!まさか上に跳んで避けるつもりかよ!」
「でも、いくらなんでもイヴさんのブラスターアームと二連装荷電粒子砲を避けきるなんて…」
 2本の光線がぶつかり合う中心にいた軍馬は再び大きくいななきながら、消滅していく。騎士は直撃こそ避けたものの、光線の相殺によって広がってきたドーム状のエネルギー波に空中で巻き込まれ、ダメージを負いながらそのまま地面に投げ出された。騎士は錐もみに数度転がった後に地面にそのまま倒れ伏した。
「倒したの?」
「さあな、直撃しなくてもあれだけのエネルギーを受けて動ける気もしないが。」
 戦闘状態を解除した3人は騎士にゆっくり近づいていく。そして、3人がもう少しで剣の届く範囲に入るところで、騎士の腕が近くに落としていた剣を掴んだ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

紫洲川・珠璃
「どうやら何か葛藤があるようね」
できればもう少し会話を引き延ばして話を聞き出しつつ揺さぶれれないかしら

とはいえ倒れたのも一時的でしょうし、きついけれどもう一度妖剣解放を使用して再度攻撃はするわ
額に玉の汗を浮かべつつ再度妖剣解放
引き続き手数と速度を生かした高速度戦法で攪乱しつつ、隙を伺いながら全力の一手を打ち込む機会を狙うわ

狙いがつけば
「正直この単純な方法もどうかと思うけど・・・騎士たる本分を思い出せッ!!」
といいつつ、多少の被害は気にせず全力の一撃を仕掛けるわ

オブリビオンなので正気を取り戻すような事があるのかわからないけれど
仕留められればそれでいいし、無理でも決定打につなげる一手にはなる、はず



騎士は剣を杖の様に支えにして、なおも立ち上がった。しかし、その体が小刻みに震え、今にも倒れそうになるほどに傷ついている。
「まだ、立てるんですね。」
 騎士の執念のようにすら感じられるタフさにイヴの頬に冷たい汗が伝う。3人が再度戦闘態勢に入ろうとしたところで、珠璃が後ろから歩いてきた。
「待って、後は私がやるわ。あなた達の能力はすぐに戦闘に入れないモノでしょ?」
「珠璃さん…わかりました。後はお願いします。」
 3人は村の方に下がっていく。珠璃は傷ついた騎士を前にして、刀に手を掛ける。
「さっきの取り乱し様から見て、どうやら何か葛藤があったようね。あなたは一体何者なの?あなたの主はヴァンパイアではないの?」
「ヴァンパイア…ダト?チガウ…我ガ主ハ国王陛下ダ。私は陛下に仕える忠実な騎士。ソレコソガ今ノ私ノ唯一ノ誇リナノダ。」
「…やはりあなたはおばあさんが話してくれた人類を裏切ったっていう騎士なのね。オブリビオンになっても国王に仕えようとしているなんてね…。でも、それなら、何故ヴァンパイアに従っているの?あなたの主は国王なんでしょう?」
「ヴァンパイアニ従ッテイル?フザケルナ!私ハ陛下に従ッテイルノダ!陛下ハ領主ノ館デ統ベテオラレル。私ハ陛下ニ命ジラレタノダ!!村ヲ滅ボセト、村人ヲ全テ連レテコイト!私ハ!今度コソ!!忠義ヲ果タスノダ!!!」
 騎士は勢いよく地面から剣を引き抜き、珠璃に突撃してくる。
「ッ!妖剣解放!!」
 騎士の突撃に珠璃は即座に刀を引き抜き、妖剣の怨念を解放する。二度目の解放の負荷によって体中に苦痛が走り、額に玉のような汗が浮かぶ。珠璃はそれを無視し、騎士の斬撃を回避する。騎士の周囲を高速で動きまわりながら刀を振るうものの、騎士はそれら全てに対応していく。そして、数合の打ち合いの末、珠璃が真正面から上段に刀を振り下ろし、鍔迫り合いの形になった。
「ヴァンパイアの敵だった国王がオブリビオンになるなんて考えられない。そもそも、おばあさんはもちろん、村の人は領主が国王だなんて一度も言っていなかった。つまり、あなたはヴァンパイアがその国王に見えているのね!」
「違ウ!私ハ陛下に仕エテイルノダ!今度コソ仕エネバナラナイノダ!!」
 悲痛さすら感じさせる絶叫と共に騎士はますます剣に力を込めていき、珠璃が徐々に押され始めていた。そして、騎士は力任せに珠璃を弾き飛ばし、剣を両手に持ち、上段に構えた。
「誰かに仕える。…その意思は間違っていないわ。でも、仕える相手は間違えているのよ。」
(…ここで、決めるわ。)
 珠璃は意識を騎士の剣に集中させ、足に力を込める。剣が振り下ろされる。騎士振るった一撃はズドォンと轟音を響かせる。地面にたたきつけられた衝撃は周囲の地面の土を巨大な土の壁を作るかの如く跳ね上げた。しかし、振り下ろされたその先に珠璃は五体満足の姿で立っていた。高速移動によって剣が到達する直前にわずかに体を剣の軌道の真横に外し、紙一重の回避を行っていたのだ。珠理は刀を鞘にしまい、呼吸を整え、精神を極限まで集中させていた。
「正直この単純な方法もどうかと思うけど…騎士たる本分を思い出せッ!!」
 鞘から一気に引き抜かれた刀身は珠璃の全力を乗せて、騎士の鎧から露出した胸に向かって放たれる。もろくなっていた胸の周囲の鎧も容易く両断し、その内側にある騎士の体を真一文字に切り裂いた。騎士は数秒沈黙した後に、力が抜けたように膝を地面につかせ、そのまま倒れ伏した。
 「私ハ…仕エネバナラナイ。カツテ裏切ッテシマッタ国王陛下ニ…私ノ中ニイル…ヴァンパイアニ跪ク悪鬼ニ…屈スルワケニハイカナイ…私ノ誇リニカケテ、我ガ主に、忠義ヲ…」
 騎士は倒れ伏しながらもうわ言の様に言葉を紡いでいる。しかし、騎士の体は珠璃の一撃によって限界を迎えており、足から徐々に風化する様にボロボロと崩れていっている。かろうじて言葉を紡げているのはオブリビオンとしての身体機能か、はたまた、騎士としての強靭な精神によるものか。すると、突然、騎士はゆっくりと首だけを上げた。しかし、空は変わらず、夜に包まれた暗闇のままだ。その姿は騎士にしか見えない何かが映っているかの様に空を見上げ、そっと手を伸ばした。
「オオ、我ガ主。何故、空ニ…アア、ソウダッタノデスカ…。アナタハズットソコニ居ラレタノデスカ…。…ソウカ、私ハマタ、主ヲ裏切ッテイタノデスネ………………………。陛下ハ愚カナ私ヲ忠義ノ騎士ト、言ッテクダサルノデスカ…アリガトウ、ございます。その言葉で…生前の、悔いを…今の私の、誇りを……果たす………ことが…でき、ました。我が、主………今……そちら、に…」
 騎士はその言葉を最後に力尽きたかのように風化が顔にまで広がり、全身が一瞬で砕け散った。その場には騎士だった砂の固まりだけが残されている。

成功 🔵​🔵​🔴​



最終結果:成功

完成日:2018年12月29日


挿絵イラスト